エネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法
【課題】ステップ応答制御においてエネルギー使用量が一定値を超えないように、かつ設定値への追従特性が損なわれないようにする。
【解決手段】電力総和抑制制御装置は、各制御ループの操作量を特定の値にした場合の昇温時間を推定する昇温時間推定部(11)と、各制御ループの制御量を昇温時間の間に設定値変更に応じた量だけ変化させるのに必要な出力を推定し、使用電力総量が割当総電力を超えない必要出力を各制御ループの操作量出力上限値とする電力抑制部(15〜17)と、総電力実測値が割当総電力より大きい場合に補正係数を小さくする第1の補正係数更新部(21)と、総電力実測値が割当総電力より小さい場合に補正係数HSを大きくする第2の補正係数更新部(22)と、操作量出力上限値に補正係数を乗じて補正する出力上限値補正部(23)と、制御部(24−i)とを備える。
【解決手段】電力総和抑制制御装置は、各制御ループの操作量を特定の値にした場合の昇温時間を推定する昇温時間推定部(11)と、各制御ループの制御量を昇温時間の間に設定値変更に応じた量だけ変化させるのに必要な出力を推定し、使用電力総量が割当総電力を超えない必要出力を各制御ループの操作量出力上限値とする電力抑制部(15〜17)と、総電力実測値が割当総電力より大きい場合に補正係数を小さくする第1の補正係数更新部(21)と、総電力実測値が割当総電力より小さい場合に補正係数HSを大きくする第2の補正係数更新部(22)と、操作量出力上限値に補正係数を乗じて補正する出力上限値補正部(23)と、制御部(24−i)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に係り、特にステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
特に複数の電気ヒータを備える加熱装置では、立ち上げ時(複数の電気ヒータが設置されている領域の一斉昇温時)に同時供給される総電力を抑制するために、以下のような手法が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたリフロー装置では、立ち上げ時の消費電流を低減するために、ヒータの近傍が熱的に飽和してから次のヒータを立ち上げるようにして、立ち上げ時間帯をずらすようにしていた。
特許文献2に開示された半導体ウエハの処理装置では、装置立ち上げ時に一時に大電力が消費されないように、各ヒータに対して時間的にずらしながら電力を供給するようにしていた。
【0004】
特許文献3に開示された基板処理装置では、電力供給部から同時に供給される最大電力を小さくするために、所定の立ち上げ順序に従って、各熱処理部を1台ずつ順次立ち上げていくようにしていた。
特許文献4に開示された加熱装置では、装置立ち上げ時の過度の消費電流による電力障害を防止するために、まずコンベアより下方に位置するヒータに対し必要とする電力を供給し、かつコンベアより上方に位置するヒータへ供給される電力を制限して、合計消費電力を一定値以下に制御し、炉体内の温度の上昇に伴って温度を切換パラメータとして、コンベアより下方に位置するヒータへの供給電力を減少させるように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2885047号公報
【特許文献2】特開平11−126743号公報
【特許文献3】特開平11−204412号公報
【特許文献4】特許第4426155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献4に開示された技術は、いずれも複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する方式であるため、昇温効率が悪くなる、すなわちステップ応答時における制御量PV(温度)の設定値SPへの追従特性が悪くなるという問題点があった。
【0007】
製造装置では、複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する場合、装置の立ち上げに要する時間や立ち上げに要する電力には多少のばらつきが必ずあるため、余裕のある時間差を与えて立ち上げの切換判断をする必要がある。したがって、例えば4系統の加熱制御系を備える加熱装置を立ち上げる(昇温する)場合に、加熱制御系を別々に順次立ち上げていくと、結果的に1系統の立ち上げ時間を単純に4倍した時間以上の時間が使われることになる。
【0008】
また、立ち上げの切換判断を行ないやすくするために、特許文献4に開示された技術のように特定の位置のヒータに対して決められた順序で電力を供給していくような工夫が考えられる。しかし、特許文献4に開示された技術は、全く同じパターンの立ち上げ時においてのみ通用する方法であり、製造条件などに応じて昇温要求が変化する場合には適用できない。複数のヒータに同時に電力を供給する通常の同時昇温という最も効率的な方法から乖離した方法になればなるほど、昇温効率が低下するか、適用対象が限られるかの、いずれかの問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の制御系に関し、ステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができるエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、前記エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制手段が利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制手段と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、前記電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制手段が利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新手段と、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新手段と、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のエネルギー総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、前記エネルギー抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制ステップで利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制ステップで利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制ステップと、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、前記電力抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制ステップで利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制ステップで利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新ステップと、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新ステップと、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定し、各制御ループLiの制御量PViを制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が割当総エネルギーを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御(設定値SPiのステップ変更が行なわれ、制御量PViの設定値SPiへの追従のために制御機能が利用されている状態)においてエネルギー使用量が割当総エネルギーを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総エネルギー実測値が割当総エネルギーより大きい場合、あるいは総エネルギー実測値が割当総エネルギーより小さい場合に、エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、エネルギー抑制手段が利用する割当総エネルギーの値、またはエネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかを補正することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
なお、上記のように本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総エネルギー実測値が割当総エネルギーより大きい場合、あるいは総エネルギー実測値が割当総エネルギーより小さい場合というのは、総エネルギー実測値が割当総エネルギーに一致すべき状況において両者が一致していない状況を意味しており、このときの両者間の誤差を「ずれ」と称するものとする。
【0021】
また、本発明では、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定し、各制御ループLiの制御量PViを制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総電力実測値PRが割当総電力PWより大きい場合、あるいは総電力実測値PRが割当総電力PWより小さい場合に、電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、電力抑制手段が利用する割当総電力PWの値、または電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかを補正することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】3ゾーンの温度変化に伴う総電力の変化を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る制御系のブロック線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の原理]
例として加熱装置を取り上げて説明する。例えば複数の加熱制御系に時間差を設けて順次立ち上げると、結果的に電力に余裕のある時間帯が生じることは避けられないので、その電力の余裕が装置の立ち上げ完了を遅らせる非効率分になることに、発明者は着眼した。単純に言えば、設定値SPのステップ変更が行なわれた際に、制御量PVの設定値SPへの追従制御が行なわれていない状態を多く発生させていることになる。
【0024】
また、制御ループ間の干渉がある加熱制御系では、先に立ち上げ完了した制御ループに、後から立ち上がる制御ループからの干渉による昇温外乱が発生するので、制御の整定までに余計な時間がかかり非効率になる。したがって、使用する総電力を一定値以内に抑えて各制御ループの同時昇温をしながら、各制御ループが極力同時に昇温を完了するように「完了のタイミング」を合わせることが、最も効率的な装置の立ち上げ方になる。
【0025】
そこで、制御ループの代表的な昇温能力(例えば最大出力時の昇温レート)を予め記憶しておき、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定し、昇温完了までの推定時間と操作量出力上限に対応する使用電力とを簡易的に求める。あるいは、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定する推定式を実験データに基づいて求め、その比較的高精度な推定式を備えるようにしてもよい。
各制御ループの昇温完了時間が概ね等しくなり、かつ使用電力の合計が割当総電力以内で最大になる操作量出力上限の組み合わせを、前記昇温完了までの推定時間を適宜修正しながら求めれば、最も効率的な立ち上げ方に近づけることができる。
【0026】
小型の調節計では、アルゴリズム記憶容量や1制御周期当りの演算量も限られている。したがって、各制御ループにおける最大出力時(操作量MViが最大値の時)の昇温時間をまず算出し、算出した各ループの昇温時間から最大のものを抽出し、その昇温時間近傍を所要時間とした場合に各ループの出力上限を低くできる度合を求め、合計が割当総電力以内になるかどうかを判定し、割当総電力を超える場合は、前記所要時間を数パーセント程度大きくして、各ループの出力上限を低くできる度合を再度求めるという演算手順が好ましい。以上が本発明の基本原理である。
【0027】
ただし、使用電力の合計が割当総電力以内で最大になる操作量出力上限値の組み合わせを求めるためには、各制御ループの操作量MViが最大値100%のときの最大出力時電力値CTmiを用いて使用電力の合計値を算出する必要がある。各制御ループの最大出力時電力値CTmiとしては、予め記憶している値を使用することになるが、この最大出力時電力値CTmiが必ずしも精度良く得られるとは限らない。また、ヒータの抵抗値は、ヒータ温度やヒータ劣化などの影響で変化する場合がある。図1は3つの制御ゾーンをそれぞれヒータで加熱する加熱装置において、ヒータの抵抗値が制御ゾーンの温度の変化に伴って変化し、結果的に各ヒータの消費電力値の総和である総電力が変化する様子を示す図である。図1の100が総電力の変化を示している。このように、ヒータの抵抗値が変化すると、最大出力時電力値CTmiの精度を維持することは難しくなる。したがって、実際の使用電力が割当総電力PWと整合しなくなる(すなわち、ずれが生じる)ことが有り得るので、上記の基本原理に基づいて算出した操作量出力上限値を補正する必要があるが、操作量出力上限値を補正する場合、このようなずれを厳密に考慮する必要がある。
【0028】
総電力抑制としての目的を考慮すれば、操作量出力上限値の補正が必要なずれが生じている状況は、総電力が評価されるべき下記状況に限られている。
(a)操作量出力上限値が算出されて昇温を開始した後の出力飽和状態(全ての操作量が操作量出力上限値に一致している状態)において、総電力実測値が割当総電力PWを上回っている状況。
(b)操作量出力上限値が算出されて昇温を開始した後の出力飽和状態において、総電力実測値が割当総電力PWを下回っている状況。
【0029】
ここで、発明者は下記の点に着眼した。
(A)上記(a)、(b)の状況は時間的に継続して発生するので、PID制御周期毎に逐次的に修正することが可能である。すなわち、1回の何らかの処理で、操作量出力上限値を正確に補正できなくてもよい。
(B)また、(a)、(b)の状況の解消は、最終的に帳尻が合えば問題ないものなので、ずれの要因を正確に特定する必要はない。すなわち、例えばどの制御ループがずれの原因になっているのかとか、ヒータ温度、ヒータ劣化、非線形性などの何れがずれの原因になっているのかとかは、解明されなくてもよい。
(C)そして、ずれの要因自体は、いずれにしろ急激に発生する現象ではないので、操作量出力上限値の早急な補正動作は必要ではない。すなわち、緩やかな補正動作を継続的に実行していれば、十分に対応できる。
【0030】
以上の(A)、(B)、(C)の点から、上記(a)、(b)の状況の発生のみをPID制御周期毎に常時継続的に検出し、上記(a)、(b)の状況が発生している場合に操作量出力上限値の微小な補正処理を実行し、その微小な補正処理を継続して積み重ねるようにすれば、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現できることに想到した。
【0031】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、被加熱物を加熱するための加熱処理炉1と、加熱処理炉1の内部に設置された複数の制御アクチュエータであるヒータH1〜H4と、それぞれヒータH1〜H4によって加熱される加熱処理炉1内の制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを測定する複数の温度センサS1〜S4と、ヒータH1〜H4に出力する操作量MV1〜MV4を算出する電力総和抑制制御装置2と、電力総和抑制制御装置2から出力された操作量MV1〜MV4に応じた電力をそれぞれヒータH1〜H4に供給する電力調整器3−1〜3−4とから構成される。この図2に示した加熱装置においては、電力総和抑制制御装置2が制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを制御する制御ループが、4個形成されていることになる。
【0032】
図3は電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。電力総和抑制制御装置2は、上位PC4から割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力部10と、各制御ループLi(i=1〜nであり、nは2以上の整数、図2の例ではn=4)の操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを推定する昇温時間推定部11と、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定部15と、各制御ループLiの必要出力MUiと最大出力時電力値CTmiとから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部16と、使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部17と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値入力部20と、昇温開始後の出力飽和状態において総電力実測値PRが割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを小さく更新する第1の補正係数更新部21と、昇温開始後の出力飽和状態において総電力実測値PRが割当総電力PWより小さい場合に補正係数HSを大きく更新する第2の補正係数更新部22と、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正部23と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iとから構成される。
【0033】
昇温時間推定部11は、制御量PVi変更量算出部12と、制御量PVi変化レート算出部13と、昇温時間算出部14とから構成される。この昇温時間推定部11は、制御量変化時間推定手段を構成している。
探索処理部17は、昇温時間設定部18と、割当総電力判定部19とから構成される。必要出力推定部15と使用電力合計算出部16と探索処理部17とは、電力抑制手段を構成している。
【0034】
制御部24−iは、設定値SPi入力部25−iと、制御量PVi入力部26−iと、PID制御演算部27−iと、出力上限処理部28−iと、操作量MVi出力部29−iとから構成される。
【0035】
図4は本実施の形態の制御系のブロック線図である。各制御ループLiは、制御部24−iと、制御対象Piとから構成される。後述のように、制御部24−iは、設定値SPiと制御量PViとから操作量MViを算出して、この操作量MViを制御対象Piに出力する。図2の例では、制御対象PiはヒータHiが加熱する加熱処理炉1であるが、操作量MViの実際の出力先は電力調整器3−iであり、操作量MViに応じた電力が電力調整器3−iからヒータHiに供給される。
【0036】
各制御ループLiの操作量MViが最大値100%のときの最大出力時電力値CTmiは、各制御ループLiの消費電力値(具体的にはヒータHiの消費電力値)から推定することも可能である。しかし、本実施の形態では、この推定においても未知の非線形性が含まれ、ずれの原因になることを想定しているので、最大出力時電力値CTmiを推定する処理は採用しないものとする。
本実施の形態では、補正係数HS(初期値1.0)を導入し、補正係数HSを逐次更新するものとし、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに同じ補正係数HSを乗じる。
【0037】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図5、図6は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。なお、図5のA,Bは、それぞれ図6のA,Bと接続されていることは言うまでもない。
割当総電力入力部10は、電力を管理する電力デマンド管理システムのコンピュータである上位PC4から、ヒータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する(図5ステップS100)。
【0038】
探索処理部17の昇温時間設定部18は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS101においてYES)、操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0039】
まず、昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12は、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとを取得して、各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS102)。
ΔPVi=SPi−PVi ・・・(1)
【0040】
制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御部24−iに入力される。なお、設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS102よりも後ろのステップで行われるので、制御部24−iに入力される制御量PViをステップS102の時点で取得すれば、この制御量PViは設定値変更前の制御量となる。
【0041】
続いて、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13は、各制御ループLiの制御部24−iから設定値変更前の操作量MViを取得し、設定値SPiの変更に伴う制御量PViの変化のレート(速度)THiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS103)。
THi=THoi{100.0/(100.0−MVi)} ・・・(2)
【0042】
設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS103よりも後ろのステップで行われるので、制御部24−iから出力されている操作量MViをステップS103の時点で取得すれば、この操作量MViは設定値変更前の操作量となる。式(2)において、THoiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MVi=0.0%の状態から最大出力MVi=100.0%にしたとき(すなわち操作量上昇幅が100.0%のとき)の制御量PViの変化レート値である。つまり、式(2)は、変化レート値THoiを操作量上昇幅(100.0−MVi)で換算する数式である。本実施の形態では加熱装置の例で説明しているので、制御量PViの変化レートTHiは昇温レート[sec./℃]である。
【0043】
次に、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14は、各制御ループLiの制御量PViをΔPViだけ変化させるのに必要な制御量変化時間である昇温時間TLiを、制御量PViの変化レートTHiと変更量ΔPViとから次式により制御ループLi毎に推定する(ステップS104)。
TLi=THiΔPVi ・・・(3)
【0044】
そして、昇温時間算出部14は、各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを選出する(ステップS105)。
TL=max(TLi) ・・・(4)
式(4)において、max( )は最大値選出演算関数である。以上のステップS102〜S105の処理により、昇温時間TLを推定することができる。
【0045】
次に、探索処理部17の割当総電力判定部19は、制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させる場合の全ヒータの使用電力TWを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0046】
まず、必要出力推定部15は、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViを取得し、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS106)。
MUi={100.0THoi/(TL/ΔPVi)}+MVi ・・・(5)
式(5)は、式(2)において、分母の100.0をMUiに置換し、THiをTL/ΔPViに置換して、MUiについて解くことにより得られる数式である。
【0047】
続いて、使用電力合計算出部16は、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(ステップS107)。
【0048】
【数1】
【0049】
式(6)において、CTmiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MViが最大値100.0%の場合のヒータHiの使用電力値である。
探索処理部17の割当総電力判定部19は、TW≦PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない場合は(ステップS108においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(ステップS109)。
【0050】
また、割当総電力判定部19は、TW>PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超える場合は、昇温時間設定部18に指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(ステップS110)、ステップS106に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PW以下になるまで、ステップS106〜S108,S110の処理が繰り返される。
【0051】
次に、総電力実測値入力部20は、昇温開始時から所定時間(例えば数sec.)が経過したかどうかを判定し(図6ステップS111)、所定時間が経過した場合にはステップS112に進み、所定時間が経過していない場合にはステップS120に進む。
総電力実測値入力部20は、昇温開始時から所定時間が経過した場合、各制御ループLiの現在の消費電力値(具体的にはヒータHiの消費電力値)の総和である総電力実測値PRをリアルタイムに計測する計測手段(不図示)から、総電力実測値PRを取得する(ステップS112)。なお、計測手段を電力総和抑制制御装置2内に設けるようにしてもよい。
【0052】
第1の補正係数更新部21は、制御部24−iから出力される操作量MViに基づいて、昇温開始後の出力飽和状態であるかどうかを判定する(ステップS113)。第1の補正係数更新部21は、全ての操作量MViがそれぞれ対応する操作量出力上限値OHiあるいはOHxiに到達している場合、昇温開始後の出力飽和状態であると判定する。第1の補正係数更新部21は、電力総和抑制制御装置2による現在の制御の状態が昇温開始後の出力飽和状態の場合、総電力実測値PRと割当総電力PWとを比較し(ステップS114)、総電力実測値PRが割当総電力PWより大きいと判定した場合に、補正係数HSが現時点の数値よりも所定の第1の割合(本実施の形態では1%)だけ小さくなるように更新する(ステップS115)。
【0053】
なお、第1の補正係数更新部21は、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、ステップS113の判定に操作量出力上限値OHiを採用する。すなわち、第1の補正係数更新部21は、ステップS113〜S115の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHi AND PR>PW THEN HS←0.99HS
・・・(7)
【0054】
また、第1の補正係数更新部21は、後述のように出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、ステップS113の判定に操作量出力上限値OHxiを採用する。すなわち、第1の補正係数更新部21は、ステップS113〜S115の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHxi AND PR>PW THEN HS←0.99HS
・・・(8)
【0055】
第2の補正係数更新部22は、制御部24−iから出力される操作量MViに基づいて、昇温開始後の出力飽和状態であるかどうかを判定する(ステップS116)。第1の補正係数更新部21と同様に、第2の補正係数更新部22は、全ての操作量MViがそれぞれ対応する操作量出力上限値OHiあるいはOHxiに到達している場合、昇温開始後の出力飽和状態であると判定する。第2の補正係数更新部22は、電力総和抑制制御装置2による現在の制御の状態が昇温開始後の出力飽和状態の場合、総電力実測値PRと割当総電力PWとを比較し(ステップS117)、総電力実測値PRが割当総電力PWより小さいと判定した場合に、補正係数HSが現時点の数値よりも所定の第2の割合(本実施の形態では0.1%)だけ大きくなるように更新する(ステップS118)。
【0056】
なお、第2の補正係数更新部22は、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、ステップS116の判定に操作量出力上限値OHiを採用する。すなわち、第2の補正係数更新部22は、ステップS116〜S118の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHi AND PR<PW THEN HS←1.001HS
・・・(9)
【0057】
また、第2の補正係数更新部22は、出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、ステップS116の判定に操作量出力上限値OHxiを採用する。すなわち、第2の補正係数更新部22は、ステップS116〜S118の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHxi AND PR<PW THEN HS←1.001HS
・・・(10)
【0058】
なお、本実施の形態において補正係数HSを大きくすることは、使用電力が大きくなることを意味しているが、本発明は電力抑制を目的としているため、補正係数HSを小さくする度合い(1%)に比べて、補正係数HSを大きくする度合い(0.1%)を緩やかにしている。
【0059】
出力上限値補正部23は、割当総電力判定部19が設定した操作量出力上限値OHiを次式により補正した操作量出力上限値OHxiを、制御ループLi毎に算出する(ステップS119)。
OHxi=OHiHS ・・・(11)
【0060】
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。各制御ループLiの設定値SPiは、加熱装置のユーザによって設定され、設定値SPi入力部25−iを介してPID制御演算部27−iに入力される(ステップS120)。
各制御ループLiの制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御量PVi入力部26−iを介してPID制御演算部27−iに入力される(ステップS121)。
【0061】
PID制御演算部27−iは、設定値SPiと制御量PViに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MViを算出する(ステップS122)。
MVi=(100/PBi){1+(1/TIis)+TDis}(SPi−PVi)
・・・(12)
PBiは比例帯、TIiは積分時間、TDiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0062】
出力上限処理部28−iは、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS123)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(13)
すなわち、出力上限処理部28−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行う。
【0063】
また、出力上限処理部28−iは、出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS123)。
IF MVi>OHxi THEN MVi=OHxi ・・・(14)
すなわち、出力上限処理部28−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHxiより大きい場合、操作量MVi=OHxiとする上限処理を行う。
【0064】
操作量MVi出力部29−iは、出力上限処理部28−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は電力調整器3−i)に出力する(ステップS124)。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS120〜S124の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS101〜S124の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS125においてYES)、一定時間毎に行う。なお、ステップS102〜S110の処理は、各制御ループLiの設定値SPiのうち少なくとも1つが変更されたときに行われる。
【0065】
ステップS112〜S118の処理により補正係数HSが逐次的に更新され、適切な補正量に近づく。一旦昇温が完了しあらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際は、補正係数HSを初期値1.0に戻してもよいし、逐次的に更新された補正係数HSの値を継続して使用してもよい。補正係数HSを初期値1.0に戻さずに継続的に使用する方法は、装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束する状況において有効である。
【0066】
なお、操作量出力上限値OHiの補正処理は、昇温開始から数sec.経過するまでは実施しないことが好ましい。その理由は、リアルタイムに計測される総電力実測値PRは操作量MViの変化(上昇)に対して瞬時に追従するとは限らず、通常は数秒遅れて追従するので、総電力実測値PRと割当総電力PWとの比較判定が正確に実行できない時間帯が数秒生じるからである。そこで、本実施の形態では、ステップS111の判定処理により、昇温開始時から所定時間(例えば数sec.)が経過するまでは、ステップS112〜S119の処理を実施しないようにしている。
【0067】
3ループの制御系で、割当総電力PWを300Wとするシミュレーション結果を図7(A)、図7(B)に示す。図中の左軸は設定値SP1,SP2,SP3、制御量PV1,PV2,PV3および操作量MV1,MV2,MV3であり、右軸は割当総電力PWおよび総電力実測値PR、横軸は時間である。なお、ここでは操作量MV1,MV2,MV3だけでなく、設定値SP1,SP2,SP3および制御量PV1,PV2,PV3も%単位で表示している。
【0068】
図7(A)、図7(B)の例では、500sec.の時点で設定値SP1,SP2,SP3を20%から46%に変更し、昇温を開始している。このとき、操作量出力上限値OHiの微小な更新処理に伴い、操作量MViの高出力状態が緩やかに変化している。図7(A)の例では、500sec.以降で総電力実測値PRが割当総電力PW=300Wに満たないため、昇温開始から所定時間(20sec.)が経過すると、総電力実測値PRを増やす方向に操作量出力上限値OHiを逐次更新する動作が実施される。一方、図7(B)の例では、500sec.以降で総電力実測値PRが割当総電力PW=300Wを超えるため、昇温開始から所定時間(20sec.)が経過すると、総電力実測値PRを減らす方向に操作量出力上限値OHiを逐次更新する動作が実施される。
【0069】
こうして、本実施の形態では、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。
また、本実施の形態では、上記(a)、(b)の状況が発生している場合に操作量出力上限値OHiの微小な補正処理を継続して実行することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、操作量MVi自体を直接的に変化させるのではなく、操作量出力上限値OHiを変化させるので、操作量MViには無意味な上下動は発生しない。すなわち、PID制御演算への悪影響が発生することがなく、不自然さのない制御応答波形を得ることができる。
【0071】
本実施の形態の電力総和抑制制御装置2における処理の順序は図5、図6に示したとおりでなくてもよいことは言うまでもない。また、図5、図6の例では、割当総電力PWの情報を1回だけ受信するようになっているが、上位PC4は必要に応じて情報を送信し、これにより割当総電力PWの値が随時更新されるようになっていてもよい。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態によって装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際に、補正量を反映して操作量出力上限値OHiを算出する方法であり、割当総電力PWに補正係数HSを乗じる。これにより、さらに安定的にずれを補正することができる。本実施の形態においても加熱装置全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図2の符号を用いて説明する。
【0073】
図8は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電力総和抑制制御装置2は、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iと、割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正部30と、使用電力総量TWが割当総電力PWxを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部17aとから構成される。
【0074】
探索処理部17aは、昇温時間設定部18aと、割当総電力判定部19aとから構成される。必要出力推定部15と使用電力合計算出部16と探索処理部17aとは、電力抑制手段を構成している。
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、本実施の形態の構成と第1の実施の形態の構成を組み合わせることが好ましい。この場合、図3と図8で、符号が同じ重複する構成は省いてよいことは言うまでもない。具体的には、電力総和抑制制御装置2の構成として、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16と、探索処理部17,17aと、総電力実測値入力部20と、第1の補正係数更新部21と、第2の補正係数更新部22と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、割当総電力補正部30とを備えていればよい。
【0075】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図9は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。
割当総電力入力部10の処理(図9のステップS200)は、図5のステップS100と同じなので、説明は省略する。
【0076】
割当総電力補正部30は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS201においてYES)、割当総電力PWを次式により補正した割当総電力PWxを算出する(ステップS202)。
PWx=PWHS ・・・(15)
【0077】
昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12の処理(ステップS203)、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13の処理(ステップS204)、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14の処理(ステップS205,S206)は、それぞれ図5のステップS102,S103,S104,S105と同じなので、説明は省略する。また、必要出力推定部15の処理(ステップS207)、使用電力合計算出部16の処理(ステップS208)は、それぞれ図5のステップS106,S107と同じなので、説明は省略する。
【0078】
探索処理部17aの割当総電力判定部19aは、TW≦PWx、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWxを超えない場合は(ステップS209においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(ステップS210)。
【0079】
また、割当総電力判定部19aは、TW>PWx、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWxを超える場合は、昇温時間設定部18aに指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(ステップS211)、ステップS207に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PWx以下になるまで、ステップS207〜S209,S211の処理が繰り返される。
【0080】
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。設定値SPi入力部25−iの処理(ステップS212)、制御量PVi入力部26−iの処理(ステップS213)、PID制御演算部27−iの処理(ステップS214)は、それぞれ図6のステップS120,S121,S122と同じなので、説明は省略する。
【0081】
出力上限処理部28−iの処理(ステップS215)は、図6のステップS123と同様であるが、本実施の形態では、第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、図6のステップS112〜S119の処理は実施されない。したがって、出力上限処理部28−iは、割当総電力判定部19aによって設定された操作量出力上限値OHiに基づいて、上記の式(13)により操作量MViの上限処理を行う(ステップS215)。
【0082】
操作量MVi出力部29−iの処理(ステップS216)は、図6のステップS124と同じなので、説明は省略する。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS212〜S216の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS201〜S216の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS217においてYES)、一定時間毎に行う。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて更に安定的にずれを補正することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定している。したがって、最初の昇温操作では、図9の処理を実施せずに、図5、図6の処理を実施すればよく、補正係数HSの値が収束した後の昇温操作(例えば2回目以降の昇温操作)では、図9の処理を実施すればよく、図5、図6の処理を実施しなくてもよい。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態によって装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際に、補正量を反映して操作量出力上限値OHiを算出する方法であり、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiに同じ補正係数HSの逆数を乗じる。これにより、さらに安定的にずれを補正することができる。本実施の形態においても加熱装置全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図2の符号を用いて説明する。
【0085】
図10は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電力総和抑制制御装置2は、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、探索処理部17と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iと、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正部31と、各制御ループLiの必要出力MUiと最大出力時電力値CTmxiとから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部16bとから構成される。
【0086】
必要出力推定部15と使用電力合計算出部16bと探索処理部17とは、電力抑制手段を構成している。
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、本実施の形態の構成と第1の実施の形態の構成を組み合わせることが好ましい。この場合、図3と図10で、符号が同じ重複する構成は省いてよいことは言うまでもない。具体的には、電力総和抑制制御装置2の構成として、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16,16bと、探索処理部17と、総電力実測値入力部20と、第1の補正係数更新部21と、第2の補正係数更新部22と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、最大出力時電力値補正部31とを備えていればよい。
【0087】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図11は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。
割当総電力入力部10の処理(図11のステップS300)は、図5のステップS100と同じなので、説明は省略する。
【0088】
最大出力時電力値補正部31は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS301においてYES)、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiを次式により補正した最大出力時電力値CTmxiを、制御ループLi毎に算出する(ステップS302)。
CTmxi=CTmi/HS ・・・(16)
【0089】
昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12の処理(ステップS303)、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13の処理(ステップS304)、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14の処理(ステップS305,S306)は、それぞれ図5のステップS102,S103,S104,S105と同じなので、説明は省略する。また、必要出力推定部15の処理(ステップS307)は、図5のステップS106と同じなので、説明は省略する。
【0090】
次に、使用電力合計算出部16bは、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(ステップS308)。
【0091】
【数2】
【0092】
割当総電力判定部19の処理(ステップS309〜S311)は、図5のステップS108〜S110と同じなので、説明は省略する。
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。設定値SPi入力部25−iの処理(ステップS312)、制御量PVi入力部26−iの処理(ステップS313)、PID制御演算部27−iの処理(ステップS314)は、それぞれ図6のステップS120,S121,S122と同じなので、説明は省略する。
【0093】
出力上限処理部28−iの処理(ステップS315)は、図6のステップS123と同様であるが、本実施の形態では、第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、図6のステップS112〜S119の処理は実施されない。したがって、出力上限処理部28−iは、割当総電力判定部19によって設定された操作量出力上限値OHiに基づいて、上記の式(13)により操作量MViの上限処理を行う(ステップS315)。
【0094】
操作量MVi出力部29−iの処理(ステップS316)は、図6のステップS124と同じなので、説明は省略する。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS312〜S316の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS301〜S316の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS317においてYES)、一定時間毎に行う。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて更に安定的にずれを補正することができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定している。したがって、最初の昇温操作では、図11の処理を実施せずに、図5、図6の処理を実施すればよく、補正係数HSの値が収束した後の昇温操作(例えば2回目以降の昇温操作)では、図11の処理を実施すればよく、図5、図6の処理を実施しなくてもよい。
【0096】
[第4の実施の形態]
第1〜第3の実施の形態では、電力量に基づいて操作量出力上限値OHi、割当総電力PW、最大出力時電力値CTmiを補正しているが、これに限るものではなく、例えば燃料使用量などのエネルギー量に基づいて補正を行なうようにしてもよい。すなわち、本発明は、第1〜第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を、「エネルギー」あるいは「パワー」に置き換えた形態を権利範囲に含む。
【0097】
第1の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図12に示し、第2の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図13に示し、第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図14に示す。
【0098】
図12のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部116と、探索処理部117と、総エネルギー実測値入力部120と、第1の補正係数更新部121と、第2の補正係数更新部122とから構成される。探索処理部117は、昇温時間設定部18と、割当総エネルギー判定部119とから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116と探索処理部117とは、エネルギー抑制手段を構成している。図12に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第1の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0099】
図13のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、割当総エネルギー補正部130と、使用エネルギー合計算出部116と、探索処理部117aとから構成される。探索処理部117aは、昇温時間設定部18aと、割当総エネルギー判定部119aとから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116と探索処理部117aとは、エネルギー抑制手段を構成している。図13に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第2の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0100】
図14のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部116bと、探索処理部117と、最大出力時エネルギー値補正部131とから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116bと探索処理部117とは、エネルギー抑制手段を構成している。図14に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第3の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0101】
なお、本発明は、加熱制御に限らず、例えば冷却装置による冷却温度制御や、換気風量による環境制御(有害物質VOC(Volatile Organic Compounas)や細菌などの制御)の電力総和抑制、エネルギー総和抑制にも適用することができる。
【0102】
第1〜第4の実施の形態で説明した電力総和抑制制御装置とエネルギー総和抑制制御装置とは、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…割当総電力入力部、11…昇温時間推定部、12…制御量PVi変更量算出部、13…制御量PVi変化レート算出部、14…昇温時間算出部、15…必要出力推定部、16,16b…使用電力合計算出部、17,17a,117,117a…探索処理部、18,18a…昇温時間設定部、19,19a…割当総電力判定部、20…総電力実測値入力部、21,121…第1の補正係数更新部、22,122…第2の補正係数更新部、23…出力上限値補正部、24−i…制御部、25−i…設定値SPi入力部、26−i…制御量PVi入力部、27−i…PID制御演算部、28−i…出力上限処理部、29−i…操作量MVi出力部、30…割当総電力補正部、31…最大出力時電力値補正部、110…割当総エネルギー入力部、116,116b…使用エネルギー合計算出部、119…割当総エネルギー判定部、120…総エネルギー実測値入力部、130…割当総エネルギー補正部、131…最大出力時エネルギー値補正部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に係り、特にステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
特に複数の電気ヒータを備える加熱装置では、立ち上げ時(複数の電気ヒータが設置されている領域の一斉昇温時)に同時供給される総電力を抑制するために、以下のような手法が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたリフロー装置では、立ち上げ時の消費電流を低減するために、ヒータの近傍が熱的に飽和してから次のヒータを立ち上げるようにして、立ち上げ時間帯をずらすようにしていた。
特許文献2に開示された半導体ウエハの処理装置では、装置立ち上げ時に一時に大電力が消費されないように、各ヒータに対して時間的にずらしながら電力を供給するようにしていた。
【0004】
特許文献3に開示された基板処理装置では、電力供給部から同時に供給される最大電力を小さくするために、所定の立ち上げ順序に従って、各熱処理部を1台ずつ順次立ち上げていくようにしていた。
特許文献4に開示された加熱装置では、装置立ち上げ時の過度の消費電流による電力障害を防止するために、まずコンベアより下方に位置するヒータに対し必要とする電力を供給し、かつコンベアより上方に位置するヒータへ供給される電力を制限して、合計消費電力を一定値以下に制御し、炉体内の温度の上昇に伴って温度を切換パラメータとして、コンベアより下方に位置するヒータへの供給電力を減少させるように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2885047号公報
【特許文献2】特開平11−126743号公報
【特許文献3】特開平11−204412号公報
【特許文献4】特許第4426155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献4に開示された技術は、いずれも複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する方式であるため、昇温効率が悪くなる、すなわちステップ応答時における制御量PV(温度)の設定値SPへの追従特性が悪くなるという問題点があった。
【0007】
製造装置では、複数のヒータに時間差を設けて電力を供給する場合、装置の立ち上げに要する時間や立ち上げに要する電力には多少のばらつきが必ずあるため、余裕のある時間差を与えて立ち上げの切換判断をする必要がある。したがって、例えば4系統の加熱制御系を備える加熱装置を立ち上げる(昇温する)場合に、加熱制御系を別々に順次立ち上げていくと、結果的に1系統の立ち上げ時間を単純に4倍した時間以上の時間が使われることになる。
【0008】
また、立ち上げの切換判断を行ないやすくするために、特許文献4に開示された技術のように特定の位置のヒータに対して決められた順序で電力を供給していくような工夫が考えられる。しかし、特許文献4に開示された技術は、全く同じパターンの立ち上げ時においてのみ通用する方法であり、製造条件などに応じて昇温要求が変化する場合には適用できない。複数のヒータに同時に電力を供給する通常の同時昇温という最も効率的な方法から乖離した方法になればなるほど、昇温効率が低下するか、適用対象が限られるかの、いずれかの問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の制御系に関し、ステップ応答制御においてエネルギー使用量(例えば電力使用量)が指定された一定値を超えないように、かつ設定値への追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができるエネルギー総和抑制制御装置、電力総和抑制制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエネルギー総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、前記エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制手段が利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制手段と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、前記電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制手段が利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新手段と、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新手段と、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電力総和抑制制御装置は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正手段と、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のエネルギー総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、前記エネルギー抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制ステップで利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制ステップで利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制ステップと、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、前記電力抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制ステップで利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制ステップで利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新ステップと、昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新ステップと、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の電力総和抑制制御方法は、複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正ステップと、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定し、各制御ループLiの制御量PViを制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が割当総エネルギーを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御(設定値SPiのステップ変更が行なわれ、制御量PViの設定値SPiへの追従のために制御機能が利用されている状態)においてエネルギー使用量が割当総エネルギーを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総エネルギー実測値が割当総エネルギーより大きい場合、あるいは総エネルギー実測値が割当総エネルギーより小さい場合に、エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、エネルギー抑制手段が利用する割当総エネルギーの値、またはエネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかを補正することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
なお、上記のように本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総エネルギー実測値が割当総エネルギーより大きい場合、あるいは総エネルギー実測値が割当総エネルギーより小さい場合というのは、総エネルギー実測値が割当総エネルギーに一致すべき状況において両者が一致していない状況を意味しており、このときの両者間の誤差を「ずれ」と称するものとする。
【0021】
また、本発明では、各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定し、各制御ループLiの制御量PViを制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定することにより、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。また、本発明では、操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、総電力実測値PRが割当総電力PWより大きい場合、あるいは総電力実測値PRが割当総電力PWより小さい場合に、電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、電力抑制手段が利用する割当総電力PWの値、または電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかを補正することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】3ゾーンの温度変化に伴う総電力の変化を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る制御系のブロック線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る電力総和抑制制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係るエネルギー総和抑制制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の原理]
例として加熱装置を取り上げて説明する。例えば複数の加熱制御系に時間差を設けて順次立ち上げると、結果的に電力に余裕のある時間帯が生じることは避けられないので、その電力の余裕が装置の立ち上げ完了を遅らせる非効率分になることに、発明者は着眼した。単純に言えば、設定値SPのステップ変更が行なわれた際に、制御量PVの設定値SPへの追従制御が行なわれていない状態を多く発生させていることになる。
【0024】
また、制御ループ間の干渉がある加熱制御系では、先に立ち上げ完了した制御ループに、後から立ち上がる制御ループからの干渉による昇温外乱が発生するので、制御の整定までに余計な時間がかかり非効率になる。したがって、使用する総電力を一定値以内に抑えて各制御ループの同時昇温をしながら、各制御ループが極力同時に昇温を完了するように「完了のタイミング」を合わせることが、最も効率的な装置の立ち上げ方になる。
【0025】
そこで、制御ループの代表的な昇温能力(例えば最大出力時の昇温レート)を予め記憶しておき、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定し、昇温完了までの推定時間と操作量出力上限に対応する使用電力とを簡易的に求める。あるいは、操作量MVを設定値変更前の値(現在値)から特定の出力値(例えば最大値)にした場合の昇温レートを推定する推定式を実験データに基づいて求め、その比較的高精度な推定式を備えるようにしてもよい。
各制御ループの昇温完了時間が概ね等しくなり、かつ使用電力の合計が割当総電力以内で最大になる操作量出力上限の組み合わせを、前記昇温完了までの推定時間を適宜修正しながら求めれば、最も効率的な立ち上げ方に近づけることができる。
【0026】
小型の調節計では、アルゴリズム記憶容量や1制御周期当りの演算量も限られている。したがって、各制御ループにおける最大出力時(操作量MViが最大値の時)の昇温時間をまず算出し、算出した各ループの昇温時間から最大のものを抽出し、その昇温時間近傍を所要時間とした場合に各ループの出力上限を低くできる度合を求め、合計が割当総電力以内になるかどうかを判定し、割当総電力を超える場合は、前記所要時間を数パーセント程度大きくして、各ループの出力上限を低くできる度合を再度求めるという演算手順が好ましい。以上が本発明の基本原理である。
【0027】
ただし、使用電力の合計が割当総電力以内で最大になる操作量出力上限値の組み合わせを求めるためには、各制御ループの操作量MViが最大値100%のときの最大出力時電力値CTmiを用いて使用電力の合計値を算出する必要がある。各制御ループの最大出力時電力値CTmiとしては、予め記憶している値を使用することになるが、この最大出力時電力値CTmiが必ずしも精度良く得られるとは限らない。また、ヒータの抵抗値は、ヒータ温度やヒータ劣化などの影響で変化する場合がある。図1は3つの制御ゾーンをそれぞれヒータで加熱する加熱装置において、ヒータの抵抗値が制御ゾーンの温度の変化に伴って変化し、結果的に各ヒータの消費電力値の総和である総電力が変化する様子を示す図である。図1の100が総電力の変化を示している。このように、ヒータの抵抗値が変化すると、最大出力時電力値CTmiの精度を維持することは難しくなる。したがって、実際の使用電力が割当総電力PWと整合しなくなる(すなわち、ずれが生じる)ことが有り得るので、上記の基本原理に基づいて算出した操作量出力上限値を補正する必要があるが、操作量出力上限値を補正する場合、このようなずれを厳密に考慮する必要がある。
【0028】
総電力抑制としての目的を考慮すれば、操作量出力上限値の補正が必要なずれが生じている状況は、総電力が評価されるべき下記状況に限られている。
(a)操作量出力上限値が算出されて昇温を開始した後の出力飽和状態(全ての操作量が操作量出力上限値に一致している状態)において、総電力実測値が割当総電力PWを上回っている状況。
(b)操作量出力上限値が算出されて昇温を開始した後の出力飽和状態において、総電力実測値が割当総電力PWを下回っている状況。
【0029】
ここで、発明者は下記の点に着眼した。
(A)上記(a)、(b)の状況は時間的に継続して発生するので、PID制御周期毎に逐次的に修正することが可能である。すなわち、1回の何らかの処理で、操作量出力上限値を正確に補正できなくてもよい。
(B)また、(a)、(b)の状況の解消は、最終的に帳尻が合えば問題ないものなので、ずれの要因を正確に特定する必要はない。すなわち、例えばどの制御ループがずれの原因になっているのかとか、ヒータ温度、ヒータ劣化、非線形性などの何れがずれの原因になっているのかとかは、解明されなくてもよい。
(C)そして、ずれの要因自体は、いずれにしろ急激に発生する現象ではないので、操作量出力上限値の早急な補正動作は必要ではない。すなわち、緩やかな補正動作を継続的に実行していれば、十分に対応できる。
【0030】
以上の(A)、(B)、(C)の点から、上記(a)、(b)の状況の発生のみをPID制御周期毎に常時継続的に検出し、上記(a)、(b)の状況が発生している場合に操作量出力上限値の微小な補正処理を実行し、その微小な補正処理を継続して積み重ねるようにすれば、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現できることに想到した。
【0031】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、被加熱物を加熱するための加熱処理炉1と、加熱処理炉1の内部に設置された複数の制御アクチュエータであるヒータH1〜H4と、それぞれヒータH1〜H4によって加熱される加熱処理炉1内の制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを測定する複数の温度センサS1〜S4と、ヒータH1〜H4に出力する操作量MV1〜MV4を算出する電力総和抑制制御装置2と、電力総和抑制制御装置2から出力された操作量MV1〜MV4に応じた電力をそれぞれヒータH1〜H4に供給する電力調整器3−1〜3−4とから構成される。この図2に示した加熱装置においては、電力総和抑制制御装置2が制御ゾーンZ1〜Z4の温度PVを制御する制御ループが、4個形成されていることになる。
【0032】
図3は電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。電力総和抑制制御装置2は、上位PC4から割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力部10と、各制御ループLi(i=1〜nであり、nは2以上の整数、図2の例ではn=4)の操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを推定する昇温時間推定部11と、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定部15と、各制御ループLiの必要出力MUiと最大出力時電力値CTmiとから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部16と、使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部17と、各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値入力部20と、昇温開始後の出力飽和状態において総電力実測値PRが割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを小さく更新する第1の補正係数更新部21と、昇温開始後の出力飽和状態において総電力実測値PRが割当総電力PWより小さい場合に補正係数HSを大きく更新する第2の補正係数更新部22と、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正部23と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iとから構成される。
【0033】
昇温時間推定部11は、制御量PVi変更量算出部12と、制御量PVi変化レート算出部13と、昇温時間算出部14とから構成される。この昇温時間推定部11は、制御量変化時間推定手段を構成している。
探索処理部17は、昇温時間設定部18と、割当総電力判定部19とから構成される。必要出力推定部15と使用電力合計算出部16と探索処理部17とは、電力抑制手段を構成している。
【0034】
制御部24−iは、設定値SPi入力部25−iと、制御量PVi入力部26−iと、PID制御演算部27−iと、出力上限処理部28−iと、操作量MVi出力部29−iとから構成される。
【0035】
図4は本実施の形態の制御系のブロック線図である。各制御ループLiは、制御部24−iと、制御対象Piとから構成される。後述のように、制御部24−iは、設定値SPiと制御量PViとから操作量MViを算出して、この操作量MViを制御対象Piに出力する。図2の例では、制御対象PiはヒータHiが加熱する加熱処理炉1であるが、操作量MViの実際の出力先は電力調整器3−iであり、操作量MViに応じた電力が電力調整器3−iからヒータHiに供給される。
【0036】
各制御ループLiの操作量MViが最大値100%のときの最大出力時電力値CTmiは、各制御ループLiの消費電力値(具体的にはヒータHiの消費電力値)から推定することも可能である。しかし、本実施の形態では、この推定においても未知の非線形性が含まれ、ずれの原因になることを想定しているので、最大出力時電力値CTmiを推定する処理は採用しないものとする。
本実施の形態では、補正係数HS(初期値1.0)を導入し、補正係数HSを逐次更新するものとし、各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに同じ補正係数HSを乗じる。
【0037】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図5、図6は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。なお、図5のA,Bは、それぞれ図6のA,Bと接続されていることは言うまでもない。
割当総電力入力部10は、電力を管理する電力デマンド管理システムのコンピュータである上位PC4から、ヒータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する(図5ステップS100)。
【0038】
探索処理部17の昇温時間設定部18は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS101においてYES)、操作量MViを現在値から最大値100.0%にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0039】
まず、昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12は、各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとを取得して、各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS102)。
ΔPVi=SPi−PVi ・・・(1)
【0040】
制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御部24−iに入力される。なお、設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS102よりも後ろのステップで行われるので、制御部24−iに入力される制御量PViをステップS102の時点で取得すれば、この制御量PViは設定値変更前の制御量となる。
【0041】
続いて、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13は、各制御ループLiの制御部24−iから設定値変更前の操作量MViを取得し、設定値SPiの変更に伴う制御量PViの変化のレート(速度)THiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS103)。
THi=THoi{100.0/(100.0−MVi)} ・・・(2)
【0042】
設定値SPiと制御量PViとに応じた制御はステップS103よりも後ろのステップで行われるので、制御部24−iから出力されている操作量MViをステップS103の時点で取得すれば、この操作量MViは設定値変更前の操作量となる。式(2)において、THoiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MVi=0.0%の状態から最大出力MVi=100.0%にしたとき(すなわち操作量上昇幅が100.0%のとき)の制御量PViの変化レート値である。つまり、式(2)は、変化レート値THoiを操作量上昇幅(100.0−MVi)で換算する数式である。本実施の形態では加熱装置の例で説明しているので、制御量PViの変化レートTHiは昇温レート[sec./℃]である。
【0043】
次に、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14は、各制御ループLiの制御量PViをΔPViだけ変化させるのに必要な制御量変化時間である昇温時間TLiを、制御量PViの変化レートTHiと変更量ΔPViとから次式により制御ループLi毎に推定する(ステップS104)。
TLi=THiΔPVi ・・・(3)
【0044】
そして、昇温時間算出部14は、各制御ループLiの昇温時間TLiのうちの最大値TLを選出する(ステップS105)。
TL=max(TLi) ・・・(4)
式(4)において、max( )は最大値選出演算関数である。以上のステップS102〜S105の処理により、昇温時間TLを推定することができる。
【0045】
次に、探索処理部17の割当総電力判定部19は、制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させる場合の全ヒータの使用電力TWを求める処理を、以下のように行なわせる。
【0046】
まず、必要出力推定部15は、各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViを取得し、各制御ループLiの制御量PViを昇温時間TLの間に変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを次式により制御ループLi毎に算出する(ステップS106)。
MUi={100.0THoi/(TL/ΔPVi)}+MVi ・・・(5)
式(5)は、式(2)において、分母の100.0をMUiに置換し、THiをTL/ΔPViに置換して、MUiについて解くことにより得られる数式である。
【0047】
続いて、使用電力合計算出部16は、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(ステップS107)。
【0048】
【数1】
【0049】
式(6)において、CTmiは制御ループLi毎に予め記憶されている値であり、操作量MViが最大値100.0%の場合のヒータHiの使用電力値である。
探索処理部17の割当総電力判定部19は、TW≦PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超えない場合は(ステップS108においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(ステップS109)。
【0050】
また、割当総電力判定部19は、TW>PW、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWを超える場合は、昇温時間設定部18に指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(ステップS110)、ステップS106に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PW以下になるまで、ステップS106〜S108,S110の処理が繰り返される。
【0051】
次に、総電力実測値入力部20は、昇温開始時から所定時間(例えば数sec.)が経過したかどうかを判定し(図6ステップS111)、所定時間が経過した場合にはステップS112に進み、所定時間が経過していない場合にはステップS120に進む。
総電力実測値入力部20は、昇温開始時から所定時間が経過した場合、各制御ループLiの現在の消費電力値(具体的にはヒータHiの消費電力値)の総和である総電力実測値PRをリアルタイムに計測する計測手段(不図示)から、総電力実測値PRを取得する(ステップS112)。なお、計測手段を電力総和抑制制御装置2内に設けるようにしてもよい。
【0052】
第1の補正係数更新部21は、制御部24−iから出力される操作量MViに基づいて、昇温開始後の出力飽和状態であるかどうかを判定する(ステップS113)。第1の補正係数更新部21は、全ての操作量MViがそれぞれ対応する操作量出力上限値OHiあるいはOHxiに到達している場合、昇温開始後の出力飽和状態であると判定する。第1の補正係数更新部21は、電力総和抑制制御装置2による現在の制御の状態が昇温開始後の出力飽和状態の場合、総電力実測値PRと割当総電力PWとを比較し(ステップS114)、総電力実測値PRが割当総電力PWより大きいと判定した場合に、補正係数HSが現時点の数値よりも所定の第1の割合(本実施の形態では1%)だけ小さくなるように更新する(ステップS115)。
【0053】
なお、第1の補正係数更新部21は、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、ステップS113の判定に操作量出力上限値OHiを採用する。すなわち、第1の補正係数更新部21は、ステップS113〜S115の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHi AND PR>PW THEN HS←0.99HS
・・・(7)
【0054】
また、第1の補正係数更新部21は、後述のように出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、ステップS113の判定に操作量出力上限値OHxiを採用する。すなわち、第1の補正係数更新部21は、ステップS113〜S115の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHxi AND PR>PW THEN HS←0.99HS
・・・(8)
【0055】
第2の補正係数更新部22は、制御部24−iから出力される操作量MViに基づいて、昇温開始後の出力飽和状態であるかどうかを判定する(ステップS116)。第1の補正係数更新部21と同様に、第2の補正係数更新部22は、全ての操作量MViがそれぞれ対応する操作量出力上限値OHiあるいはOHxiに到達している場合、昇温開始後の出力飽和状態であると判定する。第2の補正係数更新部22は、電力総和抑制制御装置2による現在の制御の状態が昇温開始後の出力飽和状態の場合、総電力実測値PRと割当総電力PWとを比較し(ステップS117)、総電力実測値PRが割当総電力PWより小さいと判定した場合に、補正係数HSが現時点の数値よりも所定の第2の割合(本実施の形態では0.1%)だけ大きくなるように更新する(ステップS118)。
【0056】
なお、第2の補正係数更新部22は、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、ステップS116の判定に操作量出力上限値OHiを採用する。すなわち、第2の補正係数更新部22は、ステップS116〜S118の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHi AND PR<PW THEN HS←1.001HS
・・・(9)
【0057】
また、第2の補正係数更新部22は、出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、ステップS116の判定に操作量出力上限値OHxiを採用する。すなわち、第2の補正係数更新部22は、ステップS116〜S118の処理として次式のような処理を行なう。
IF MVi=OHxi AND PR<PW THEN HS←1.001HS
・・・(10)
【0058】
なお、本実施の形態において補正係数HSを大きくすることは、使用電力が大きくなることを意味しているが、本発明は電力抑制を目的としているため、補正係数HSを小さくする度合い(1%)に比べて、補正係数HSを大きくする度合い(0.1%)を緩やかにしている。
【0059】
出力上限値補正部23は、割当総電力判定部19が設定した操作量出力上限値OHiを次式により補正した操作量出力上限値OHxiを、制御ループLi毎に算出する(ステップS119)。
OHxi=OHiHS ・・・(11)
【0060】
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。各制御ループLiの設定値SPiは、加熱装置のユーザによって設定され、設定値SPi入力部25−iを介してPID制御演算部27−iに入力される(ステップS120)。
各制御ループLiの制御量PVi(温度)は、温度センサSiによって測定され、制御量PVi入力部26−iを介してPID制御演算部27−iに入力される(ステップS121)。
【0061】
PID制御演算部27−iは、設定値SPiと制御量PViに基づいて、以下の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MViを算出する(ステップS122)。
MVi=(100/PBi){1+(1/TIis)+TDis}(SPi−PVi)
・・・(12)
PBiは比例帯、TIiは積分時間、TDiは微分時間、sはラプラス演算子である。
【0062】
出力上限処理部28−iは、昇温開始時に操作量出力上限値OHiが設定され、このOHiを補正する操作量出力上限値OHxiが設定されていない場合には、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS123)。
IF MVi>OHi THEN MVi=OHi ・・・(13)
すなわち、出力上限処理部28−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHiより大きい場合、操作量MVi=OHiとする上限処理を行う。
【0063】
また、出力上限処理部28−iは、出力上限値補正部23によって操作量出力上限値OHxiが設定された後は、以下の式のような操作量MViの上限処理を行う(ステップS123)。
IF MVi>OHxi THEN MVi=OHxi ・・・(14)
すなわち、出力上限処理部28−iは、操作量MViが操作量出力上限値OHxiより大きい場合、操作量MVi=OHxiとする上限処理を行う。
【0064】
操作量MVi出力部29−iは、出力上限処理部28−iによって上限処理された操作量MViを制御対象(実際の出力先は電力調整器3−i)に出力する(ステップS124)。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS120〜S124の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS101〜S124の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS125においてYES)、一定時間毎に行う。なお、ステップS102〜S110の処理は、各制御ループLiの設定値SPiのうち少なくとも1つが変更されたときに行われる。
【0065】
ステップS112〜S118の処理により補正係数HSが逐次的に更新され、適切な補正量に近づく。一旦昇温が完了しあらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際は、補正係数HSを初期値1.0に戻してもよいし、逐次的に更新された補正係数HSの値を継続して使用してもよい。補正係数HSを初期値1.0に戻さずに継続的に使用する方法は、装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束する状況において有効である。
【0066】
なお、操作量出力上限値OHiの補正処理は、昇温開始から数sec.経過するまでは実施しないことが好ましい。その理由は、リアルタイムに計測される総電力実測値PRは操作量MViの変化(上昇)に対して瞬時に追従するとは限らず、通常は数秒遅れて追従するので、総電力実測値PRと割当総電力PWとの比較判定が正確に実行できない時間帯が数秒生じるからである。そこで、本実施の形態では、ステップS111の判定処理により、昇温開始時から所定時間(例えば数sec.)が経過するまでは、ステップS112〜S119の処理を実施しないようにしている。
【0067】
3ループの制御系で、割当総電力PWを300Wとするシミュレーション結果を図7(A)、図7(B)に示す。図中の左軸は設定値SP1,SP2,SP3、制御量PV1,PV2,PV3および操作量MV1,MV2,MV3であり、右軸は割当総電力PWおよび総電力実測値PR、横軸は時間である。なお、ここでは操作量MV1,MV2,MV3だけでなく、設定値SP1,SP2,SP3および制御量PV1,PV2,PV3も%単位で表示している。
【0068】
図7(A)、図7(B)の例では、500sec.の時点で設定値SP1,SP2,SP3を20%から46%に変更し、昇温を開始している。このとき、操作量出力上限値OHiの微小な更新処理に伴い、操作量MViの高出力状態が緩やかに変化している。図7(A)の例では、500sec.以降で総電力実測値PRが割当総電力PW=300Wに満たないため、昇温開始から所定時間(20sec.)が経過すると、総電力実測値PRを増やす方向に操作量出力上限値OHiを逐次更新する動作が実施される。一方、図7(B)の例では、500sec.以降で総電力実測値PRが割当総電力PW=300Wを超えるため、昇温開始から所定時間(20sec.)が経過すると、総電力実測値PRを減らす方向に操作量出力上限値OHiを逐次更新する動作が実施される。
【0069】
こうして、本実施の形態では、複数の制御系に関し、ステップ応答制御において電力使用量が割当総電力PWを超えないように、かつ制御量PViの設定値SPiへの追従特性が可能な限り損なわれないように、制御を行うことができる。
また、本実施の形態では、上記(a)、(b)の状況が発生している場合に操作量出力上限値OHiの微小な補正処理を継続して実行することで、逐次的かつ安定的にずれを補正する動作を実現することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、操作量MVi自体を直接的に変化させるのではなく、操作量出力上限値OHiを変化させるので、操作量MViには無意味な上下動は発生しない。すなわち、PID制御演算への悪影響が発生することがなく、不自然さのない制御応答波形を得ることができる。
【0071】
本実施の形態の電力総和抑制制御装置2における処理の順序は図5、図6に示したとおりでなくてもよいことは言うまでもない。また、図5、図6の例では、割当総電力PWの情報を1回だけ受信するようになっているが、上位PC4は必要に応じて情報を送信し、これにより割当総電力PWの値が随時更新されるようになっていてもよい。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態によって装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際に、補正量を反映して操作量出力上限値OHiを算出する方法であり、割当総電力PWに補正係数HSを乗じる。これにより、さらに安定的にずれを補正することができる。本実施の形態においても加熱装置全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図2の符号を用いて説明する。
【0073】
図8は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電力総和抑制制御装置2は、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iと、割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正部30と、使用電力総量TWが割当総電力PWxを超えない必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理部17aとから構成される。
【0074】
探索処理部17aは、昇温時間設定部18aと、割当総電力判定部19aとから構成される。必要出力推定部15と使用電力合計算出部16と探索処理部17aとは、電力抑制手段を構成している。
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、本実施の形態の構成と第1の実施の形態の構成を組み合わせることが好ましい。この場合、図3と図8で、符号が同じ重複する構成は省いてよいことは言うまでもない。具体的には、電力総和抑制制御装置2の構成として、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16と、探索処理部17,17aと、総電力実測値入力部20と、第1の補正係数更新部21と、第2の補正係数更新部22と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、割当総電力補正部30とを備えていればよい。
【0075】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図9は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。
割当総電力入力部10の処理(図9のステップS200)は、図5のステップS100と同じなので、説明は省略する。
【0076】
割当総電力補正部30は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS201においてYES)、割当総電力PWを次式により補正した割当総電力PWxを算出する(ステップS202)。
PWx=PWHS ・・・(15)
【0077】
昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12の処理(ステップS203)、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13の処理(ステップS204)、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14の処理(ステップS205,S206)は、それぞれ図5のステップS102,S103,S104,S105と同じなので、説明は省略する。また、必要出力推定部15の処理(ステップS207)、使用電力合計算出部16の処理(ステップS208)は、それぞれ図5のステップS106,S107と同じなので、説明は省略する。
【0078】
探索処理部17aの割当総電力判定部19aは、TW≦PWx、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWxを超えない場合は(ステップS209においてYES)、各制御ループLiの必要出力MUiをそれぞれ各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する(ステップS210)。
【0079】
また、割当総電力判定部19aは、TW>PWx、すなわち使用電力総量TWが割当総電力PWxを超える場合は、昇温時間設定部18aに指示して、昇温時間TLを現在の値の例えば1.05倍に延長させて(ステップS211)、ステップS207に戻る。こうして、使用電力総量TWが割当総電力PWx以下になるまで、ステップS207〜S209,S211の処理が繰り返される。
【0080】
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。設定値SPi入力部25−iの処理(ステップS212)、制御量PVi入力部26−iの処理(ステップS213)、PID制御演算部27−iの処理(ステップS214)は、それぞれ図6のステップS120,S121,S122と同じなので、説明は省略する。
【0081】
出力上限処理部28−iの処理(ステップS215)は、図6のステップS123と同様であるが、本実施の形態では、第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、図6のステップS112〜S119の処理は実施されない。したがって、出力上限処理部28−iは、割当総電力判定部19aによって設定された操作量出力上限値OHiに基づいて、上記の式(13)により操作量MViの上限処理を行う(ステップS215)。
【0082】
操作量MVi出力部29−iの処理(ステップS216)は、図6のステップS124と同じなので、説明は省略する。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS212〜S216の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS201〜S216の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS217においてYES)、一定時間毎に行う。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて更に安定的にずれを補正することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定している。したがって、最初の昇温操作では、図9の処理を実施せずに、図5、図6の処理を実施すればよく、補正係数HSの値が収束した後の昇温操作(例えば2回目以降の昇温操作)では、図9の処理を実施すればよく、図5、図6の処理を実施しなくてもよい。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態によって装置の普遍的な特徴を反映して補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作(設定値SPiの変更操作)が行われる際に、補正量を反映して操作量出力上限値OHiを算出する方法であり、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiに同じ補正係数HSの逆数を乗じる。これにより、さらに安定的にずれを補正することができる。本実施の形態においても加熱装置全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図2の符号を用いて説明する。
【0085】
図10は本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態の電力総和抑制制御装置2は、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、探索処理部17と、制御ループLi毎に設けられた制御部24−iと、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正部31と、各制御ループLiの必要出力MUiと最大出力時電力値CTmxiとから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出部16bとから構成される。
【0086】
必要出力推定部15と使用電力合計算出部16bと探索処理部17とは、電力抑制手段を構成している。
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、本実施の形態の構成と第1の実施の形態の構成を組み合わせることが好ましい。この場合、図3と図10で、符号が同じ重複する構成は省いてよいことは言うまでもない。具体的には、電力総和抑制制御装置2の構成として、割当総電力入力部10と、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、使用電力合計算出部16,16bと、探索処理部17と、総電力実測値入力部20と、第1の補正係数更新部21と、第2の補正係数更新部22と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、最大出力時電力値補正部31とを備えていればよい。
【0087】
以下、本実施の形態の電力総和抑制制御装置2の動作を説明する。図11は電力総和抑制制御装置2の動作を示すフローチャートである。
割当総電力入力部10の処理(図11のステップS300)は、図5のステップS100と同じなので、説明は省略する。
【0088】
最大出力時電力値補正部31は、加熱装置のユーザ等によって各制御ループLiの設定値SPiが変更され、昇温が開始されたとき(ステップS301においてYES)、各制御ループLiの最大出力時電力値CTmiを次式により補正した最大出力時電力値CTmxiを、制御ループLi毎に算出する(ステップS302)。
CTmxi=CTmi/HS ・・・(16)
【0089】
昇温時間推定部11の制御量PVi変更量算出部12の処理(ステップS303)、昇温時間推定部11の制御量PVi変化レート算出部13の処理(ステップS304)、昇温時間推定部11の昇温時間算出部14の処理(ステップS305,S306)は、それぞれ図5のステップS102,S103,S104,S105と同じなので、説明は省略する。また、必要出力推定部15の処理(ステップS307)は、図5のステップS106と同じなので、説明は省略する。
【0090】
次に、使用電力合計算出部16bは、各制御ループLiの必要出力MUiから各ヒータHiの使用電力の総和である使用電力総量TWを次式により算出する(ステップS308)。
【0091】
【数2】
【0092】
割当総電力判定部19の処理(ステップS309〜S311)は、図5のステップS108〜S110と同じなので、説明は省略する。
次に、制御部24−iは、制御ループLiの操作量MViを以下のとおりに算出する。設定値SPi入力部25−iの処理(ステップS312)、制御量PVi入力部26−iの処理(ステップS313)、PID制御演算部27−iの処理(ステップS314)は、それぞれ図6のステップS120,S121,S122と同じなので、説明は省略する。
【0093】
出力上限処理部28−iの処理(ステップS315)は、図6のステップS123と同様であるが、本実施の形態では、第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定しているので、図6のステップS112〜S119の処理は実施されない。したがって、出力上限処理部28−iは、割当総電力判定部19によって設定された操作量出力上限値OHiに基づいて、上記の式(13)により操作量MViの上限処理を行う(ステップS315)。
【0094】
操作量MVi出力部29−iの処理(ステップS316)は、図6のステップS124と同じなので、説明は省略する。制御部24−iは制御ループLi毎に設けられているので、ステップS312〜S316の処理は制御ループLi毎に実施されることになる。
電力総和抑制制御装置2は、以上のようなステップS301〜S316の処理を例えばユーザの指示によって制御が終了するまで(ステップS317においてYES)、一定時間毎に行う。
こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と比べて更に安定的にずれを補正することができる。
【0095】
なお、本実施の形態では、上記のとおり第1の実施の形態によって補正係数HSの値が収束した状況において、あらためて別の昇温操作が行われる場合を想定している。したがって、最初の昇温操作では、図11の処理を実施せずに、図5、図6の処理を実施すればよく、補正係数HSの値が収束した後の昇温操作(例えば2回目以降の昇温操作)では、図11の処理を実施すればよく、図5、図6の処理を実施しなくてもよい。
【0096】
[第4の実施の形態]
第1〜第3の実施の形態では、電力量に基づいて操作量出力上限値OHi、割当総電力PW、最大出力時電力値CTmiを補正しているが、これに限るものではなく、例えば燃料使用量などのエネルギー量に基づいて補正を行なうようにしてもよい。すなわち、本発明は、第1〜第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を、「エネルギー」あるいは「パワー」に置き換えた形態を権利範囲に含む。
【0097】
第1の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図12に示し、第2の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図13に示し、第3の実施の形態の電力総和抑制制御装置2で用いる「電力」という物理量を「エネルギー」に置き換えたエネルギー総和抑制制御装置の構成を図14に示す。
【0098】
図12のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、出力上限値補正部23と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部116と、探索処理部117と、総エネルギー実測値入力部120と、第1の補正係数更新部121と、第2の補正係数更新部122とから構成される。探索処理部117は、昇温時間設定部18と、割当総エネルギー判定部119とから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116と探索処理部117とは、エネルギー抑制手段を構成している。図12に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第1の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0099】
図13のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、割当総エネルギー補正部130と、使用エネルギー合計算出部116と、探索処理部117aとから構成される。探索処理部117aは、昇温時間設定部18aと、割当総エネルギー判定部119aとから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116と探索処理部117aとは、エネルギー抑制手段を構成している。図13に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第2の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0100】
図14のエネルギー総和抑制制御装置は、昇温時間推定部11と、必要出力推定部15と、制御部24−iと、割当総エネルギー入力部110と、使用エネルギー合計算出部116bと、探索処理部117と、最大出力時エネルギー値補正部131とから構成される。必要出力推定部15と使用エネルギー合計算出部116bと探索処理部117とは、エネルギー抑制手段を構成している。図14に示したエネルギー総和抑制制御装置の構成は、第3の実施の形態において「電力」を「エネルギー」に置き換えたものに相当するので、詳細な説明は省略する。
【0101】
なお、本発明は、加熱制御に限らず、例えば冷却装置による冷却温度制御や、換気風量による環境制御(有害物質VOC(Volatile Organic Compounas)や細菌などの制御)の電力総和抑制、エネルギー総和抑制にも適用することができる。
【0102】
第1〜第4の実施の形態で説明した電力総和抑制制御装置とエネルギー総和抑制制御装置とは、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…割当総電力入力部、11…昇温時間推定部、12…制御量PVi変更量算出部、13…制御量PVi変化レート算出部、14…昇温時間算出部、15…必要出力推定部、16,16b…使用電力合計算出部、17,17a,117,117a…探索処理部、18,18a…昇温時間設定部、19,19a…割当総電力判定部、20…総電力実測値入力部、21,121…第1の補正係数更新部、22,122…第2の補正係数更新部、23…出力上限値補正部、24−i…制御部、25−i…設定値SPi入力部、26−i…制御量PVi入力部、27−i…PID制御演算部、28−i…出力上限処理部、29−i…操作量MVi出力部、30…割当総電力補正部、31…最大出力時電力値補正部、110…割当総エネルギー入力部、116,116b…使用エネルギー合計算出部、119…割当総エネルギー判定部、120…総エネルギー実測値入力部、130…割当総エネルギー補正部、131…最大出力時エネルギー値補正部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、
各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、
前記エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制手段が利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御装置。
【請求項2】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制手段と、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、
前記電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制手段が利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項3】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新手段と、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新手段と、
各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項4】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項5】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項6】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、
各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、
前記エネルギー抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制ステップで利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制ステップで利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御方法。
【請求項7】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制ステップと、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、
前記電力抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制ステップで利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制ステップで利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項8】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新ステップと、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新ステップと、
各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項9】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項10】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項1】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制手段と、
各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、
前記エネルギー抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制手段が利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制手段が利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御装置。
【請求項2】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制手段と、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新手段と、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新手段と、
前記電力抑制手段が算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制手段が利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制手段が利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項3】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得手段と、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新手段と、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新手段と、
各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正手段による補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項4】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項5】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力手段と、
各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正手段と、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出手段と、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出手段と、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出手段と、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定手段と、
前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出手段と、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定手段と前記使用電力合計算出手段とに処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理手段と、
制御ループLi毎に設けられ、設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御手段とを備えることを特徴とする電力総和抑制制御装置。
【請求項6】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータのエネルギー使用量を規定する割当総エネルギーの情報を受信する割当総エネルギー入力ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用エネルギーの総和である使用エネルギー総量を算出し、この使用エネルギー総量が前記割当総エネルギーを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定するエネルギー抑制ステップと、
各制御ループLiの消費エネルギー値の総和である総エネルギー実測値を取得する総エネルギー実測値取得ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより大きい場合に前記総エネルギー実測値が小さくなるように補正係数を所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総エネルギー実測値が前記割当総エネルギーより小さい場合に前記総エネルギー実測値が大きくなるように前記補正係数を所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、
前記エネルギー抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記エネルギー抑制ステップで利用する前記割当総エネルギーの値、または前記エネルギー抑制ステップで利用する最大出力時消費エネルギー値の何れかに前記補正係数を乗じる補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とするエネルギー総和抑制制御方法。
【請求項7】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の制御量変化時間を推定する制御量変化時間推定ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記制御量変化時間の間に設定値SPiの変更に応じた量だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定し、この必要出力MUiから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出し、この使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索して、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する電力抑制ステップと、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に前記総電力実測値PRが小さくなるように補正係数HSを所定の第1の割合だけ更新する第1の補正係数更新ステップと、
前記操作量出力上限値OHi設定後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記総電力実測値PRが大きくなるように前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ更新する第2の補正係数更新ステップと、
前記電力抑制ステップで算出した操作量出力上限値OHi、前記電力抑制ステップで利用する前記割当総電力PWの値、または前記電力抑制ステップで利用する最大出力時電力値CTmiの何れかに前記補正係数HSを乗じる補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項8】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
各制御ループLiの消費電力値の総和である総電力実測値PRを取得する総電力実測値取得ステップと、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより大きい場合に補正係数HSを所定の第1の割合だけ小さく更新する第1の補正係数更新ステップと、
昇温開始後の出力飽和状態において、前記総電力実測値PRが前記割当総電力PWより小さい場合に前記補正係数HSを所定の第2の割合だけ大きく更新する第2の補正係数更新ステップと、
各制御ループLiの操作量出力上限値OHiに前記補正係数HSを乗じて補正した操作量出力上限値OHxiを算出する出力上限値補正ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されていないときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行し、前記出力上限値補正ステップによる補正処理が実施されたときは前記操作量MViを前記操作量出力上限値OHxi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項9】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
前記割当総電力PWに補正係数HSを乗じて補正した割当総電力PWxを算出する割当総電力補正ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWxを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【請求項10】
複数の制御ループLi(i=1〜n)の制御アクチュエータの電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信する割当総電力入力ステップと、
各制御ループLiの既知の最大出力時電力値CTmiに補正係数HSを乗じて補正した最大出力時電力値CTmxiを算出する最大出力時電力値補正ステップと、
各制御ループLiの変更後の設定値SPiと設定値変更前の制御量PViとから各制御ループLiの制御量PViの変更量ΔPViを算出する制御量変更量算出ステップと、
各制御ループLiの設定値変更前の操作量MViから制御量PViの変化レートTHiを算出する制御量変化レート算出ステップと、
各制御ループLiの操作量MViを現在値から特定の出力値にした場合の各制御ループLiの昇温時間TLiを前記変更量ΔPViと前記変化レートTHiとから推定し、前記昇温時間TLiのうちの最大値である昇温時間TLを選出する昇温時間算出ステップと、
各制御ループLiの制御量PViを前記昇温時間TLの間に前記変更量ΔPVi分だけ変化させるのに必要な操作量である必要出力MUiを推定する必要出力推定ステップと、
前記必要出力MUiと前記最大出力時電力値CTmxiとから各制御アクチュエータの使用電力の総和である使用電力総量TWを算出する使用電力合計算出ステップと、
前記昇温時間TLを逐次変更しながら前記必要出力推定ステップと前記使用電力合計算出ステップの処理を実行させ、前記使用電力総量TWが前記割当総電力PWを超えない前記必要出力MUiの組み合わせを探索し、最終的に得られた必要出力MUiを各制御ループLiの操作量出力上限値OHiとして設定する探索処理ステップと、
設定値SPiと制御量PViを入力として制御演算により操作量MViを算出し、操作量MViを前記操作量出力上限値OHi以下に制限する上限処理を実行して、上限処理後の操作量MViを対応する制御ループLiの制御アクチュエータに出力する制御ステップとを備えることを特徴とする電力総和抑制制御方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2013−41319(P2013−41319A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175908(P2011−175908)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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