説明

エポキシビニルエステル樹脂、その製造法、感光性樹脂組成物、その硬化物、酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂、アルカリ現像性感光性樹脂組成物、及びその硬化物

【課題】 保存安定性と光感度に優れた感光性樹脂組成物、及びその硬化物を提供する。
【解決手段】 エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを反応されて得られるエポキシビニルエステル樹脂であって、かつ、その分子構造中、不飽和一塩基酸の付加位置が下記一般式(2)


〔式中、Rはアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造であるものの割合が約95モル%以上であるエポキシビニルエステル樹脂、及び、光重合開始剤を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸とを所定の条件下に反応させて得られる新規なエポキシビニルエステル樹脂、その製造方法、該エポキシビニルエステルに更に多塩基酸無水物を反応させる新規な酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂、感光性樹脂組成物、及びこれらの硬化物に関する。特に、プリント配線板等のオーバーコート、アンダーコート、絶縁コートなどの永久保護膜、ビルドアップ基板の層間絶縁材料、電子部品用の光硬化性接着剤等、或いはプリント配線板に適した希アルカリ溶液で現像可能なソルダーレジストインキに好適な感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の技術分野では、表面実装技術の向上によりプリント配線板の高集積化は加速度的に進んでおり、さらに高密度、高信頼性に加え、量産性や経済性を兼ね備えたレジストパターンの形成方法が求められている。このため、ソルダーレジストインキの高密度化に対する要求も一層厳しく、従来用のスクリーン印刷に替わってより解像度の高い写真法を利用した写真現像に利用できるアルカリ現像可能なソルダーレジストインキが使用されるようになってきている。
【0003】
一方、近年、前記プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板が広く用いられるようになってきており、その為、これに用いられるソルダーレジストインキもその硬化物において可撓性を有し、かつ、解像度の高い写真現像に使用できるものが望まれている。
【0004】
この様な用途に適用し得るソルダーレジストインキとしては、従来、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂にアクリル酸を反応せしめ、次いで該反応によって生じる水酸基に酸無水物を反応させて得られる酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂を主剤として用い、これに希釈剤、光重合開始剤、エポキシ樹脂を配合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上記のビスフェノール型エポキシ樹脂から誘導される酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂は、該樹脂の合成反応時や保管時、及び樹脂組成物とした際に増粘等の経時変化や場合によってはゲル化を起こすものであった。
【0005】
そこで、従来より、エポキシビニルエステル樹脂の合成反応時の経時変化、ゲル化を防止する方法として、エポキシ基のβ-位にメチル基を導入した、所謂メチルエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸を反応させた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
然し乍ら、メチルエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸との反応は反応性が著しく低く、エポキシ基が残存した場合には、硬化剤であるエポキシ樹脂との当量比バランスが崩れて硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性、耐湿性、密着性の低下を招いていた。その為、メチルエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸とを反応させるには、触媒を大量に使用する必要があり、例えば、前記特許文献2に記載されている通り、反応触媒であるイミダゾールをエポキシ樹脂100部に対して1部も使用する必要があった。ところが、メチルエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸とを反応との反応において触媒を多量に使用した場合、副反応によって不飽和二重結合どうしの重合を招き、生成した樹脂中の二重結合が消失したり、分子量が増大してしまうものであった。
【0007】
従って、メチルエピクロルヒドリン型エポキシ樹脂と重合性不飽和一塩基酸とを従来法によって反応させて得られるビニルエステル樹脂を更に酸無水物で変性して酸ペンダント型ビニルエステル樹脂にしてソルダーレジストインキに応用しても場合、十分な光感度が得られず、アルカリ現像性も低く実用に供することのできないものであった。
【特許文献1】特開平05−43654号公報
【特許文献2】特開昭49−53682号公報
【特許文献3】特開昭50−72990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ビニルエステル樹脂自体の保存安定性に優れると共に、光感度に優れるビニルエステル樹脂、その製造方法、保存安定性と光感度に優れた感光性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに、光感度に加えアルカリ現像性も良好な酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂、その製造方法、アルカリ現像性感光性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを、特定量の重合禁止剤の存在下、特定のモル比で反応させることにより、何ら副反応を生ずることなく、ほぼ完全にビニルエステル化反応でき、得られた樹脂は優れた光感度を有し、更に、該樹脂を多塩基酸無水物(C)と反応させて得られる酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂はアルカリ現像性も飛躍的に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応されて得られるエポキシビニルエステル樹脂であって、かつ、その分子構造中の
下記一般式(1)
【0011】
【化1】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A1、及び
下記一般式(2)
【0012】
【化2】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A2のモル基準での存在比[A1/A2]が、0.05以下であることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂に関する。
【0013】
本発明は、更に、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応されて得られるエポキシビニルエステル樹脂であって、かつ、その分子構造中の
下記一般式(1)
【0014】
【化3】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A1、
下記一般式(2)
【0015】
【化4】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A2、及び
下記一般式(3)
【0016】
【化5】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A3
のモル基準での存在比[(A1+A3)/(A2)]が、0.05以下であることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂に関する。
【0017】
本発明は、更に、エポキシ基のβ-位に、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを触媒及び重合禁止剤の存在下に反応させる製造方法であって、前記重合禁止剤をエポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)との合計に対して、100〜2000ppmとなる割合で用い、かつ、エポキシ樹脂(A)中のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で反応させることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂の製造方法に関する。
【0018】
本発明は、更に、前記エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とを必須成分とする特徴とする感光性樹脂組成物。
【0019】
本発明は、更に、前記エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とを必須成分とする特徴とする感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【0020】
本発明は、更に、前記エポキシビニルエステル樹脂に、更に、多塩基酸化合物を反応させた構造を有することを特徴とする酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂に関する。
【0021】
本発明は、更に、エポキシ基のβ-位に、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを、
前記エポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)との合計に対して、100〜2000ppmとなる割合で重合禁止剤を用い、かつ、前記エポキシ樹脂(A)中のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で触媒の存在下に反応させ、
次いで、得られたエポキシビニルエステル樹脂に、多塩基酸無水物(C)を反応させることを特徴とする酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂の製造方法に関する。
【0022】
本発明は、更に、酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とエポキシ樹脂とを必須成分とすることを特徴とするアルカリ現像性感光性樹脂組成物に関する。
【0023】
本発明は、更に、酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とエポキシ樹脂とを必須成分とすることを特徴とする感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ビニルエステル樹脂自体の保存安定性に優れると共に、光感度に優れるビニルエステル樹脂、その製造方法、保存安定性と光感度に優れるエポキシビニルエステル樹脂組成物、及びその硬化物、並びに、光感度に加えアルカリ現像性も良好な酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂、その製造方法、酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂組成物、及びその硬化物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明のエポキシビニルエステル樹脂は、前記した通り、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応させて得られるものである。このようにエポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応させた場合、通常、その分子末端には下記の一般式(1)
【0027】
【化6】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A1、
下記一般式(2)
【0028】
【化7】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A2を理論上含み得る。
【0029】
そして、本発明のエポキシビニルエステル樹脂は、前記構造A1と前記構造A2とのモル基準での存在比[A1/A2]が、0.05以下であること特徴としており、それによってエポキシビニルエステル樹脂自体のゲル化を防止できて保存安定性に優れたものとなる。更に、前記エポキシビニルエステル樹脂中には、上記構造A1及び構造A2の他、下記一般式(3)
【0030】
【化8】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A3も含有され得ること、及び、該構造も保存時におけるゲル化の原因となることから、前記エポキシビニルエステル樹脂は、構造A2のモル数に対する構造A1と構造A3との合計のモル数の比率[(A1+A3)/A2]が0.05以下となるものであることが保存安定性の改善効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
【0031】
この点につき詳述すれば、例えばエポキシ基にアルキル基を有しない通常のエポキシ樹脂とアクリル酸とを反応させた場合、下記に示す通り、通常、2級の水酸基又は1級水酸基を生成する。
【0032】
【化9】

【0033】
そして、当該2級水酸基又は1級水酸基はその活性が高いために以下に示す通り、α−グリコール基を生成し、該α−グリコール基が連鎖的に重合反応を引き起こして得られるビニルエステル樹脂は分子量分布が広く高粘度化し、更にはゲル化を招くものであった。
【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
従って、本発明ではα−グリコール生成の要因となる構造A1、構造A3の生成を抑制し、それらの含有率を低減することで極めて優れた保存安定性を発現するに至ったものである。
【0038】
前記一般式(1)乃至一般式(3)においてRは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、前記一般式(1)におけるRは、水素原子またはメチル基である。
【0039】
また、前記構造A1、構造A2、及び構造A3は、具体的には、下記条件で測定される13C−NMR測定により算出することができる。
【0040】
[13C−NMR測定条件]
装置 :日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGBCM(1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:30℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0041】
また、本発明のエポキシビニルエステル樹脂は、α−グリコール基が0.10meq/g以下であることが、耐マイグレーション性、はんだ耐熱性、耐メッキ液性等の信頼性が飛躍的に向上する点から好ましい。このようなエポキシビニルエステル樹脂を得るためには、その前駆体であるエポキシ樹脂(A)中のα−グリコール基は0.10meq/g以下であることが好ましい。
【0042】
本発明のエポキシビニルエステル樹脂は、前記した通り、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応させて得られるものであり、ここで前記エポキシ樹脂(A)は、具体的には、フェノール系化合物(x1)と、β−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)との反応によって得られるものが好ましい。
【0043】
ここで用いるフェノール系化合物(x1)は、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のジヒドロキシベンゼン類;1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等のビフェノール類;ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、
ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)プロパン等のビスナフトール類;フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/アセトアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/サリチルアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/サリチルアルデヒド重縮合物等のフェノール類/アルデヒド類重縮合物;1−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物等のナフトール類/アルデヒド類重縮合物;フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物、フェノール/テトラヒドロインデン重付加物、フェノール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、フェノール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、フェノール/α−ピネン重付加物、フェノール/β−ピネン重付加物、フェノール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/ジシクロペンタジエン重付加物、オルソクレゾール/テトラヒドロインデン重付加物、オルソクレゾール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、オルソクレゾール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、オルソクレゾール/α−ピネン重付加物等のフェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物;1−ナフトール/ジシクロペンタジエン重付加物、1−ナフトール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、1−ナフトール/5−ビニルノルボルナジエン重付加物、1−ナフトール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/β−ピネン重付加物、1−ナフトール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/β−ピネン重付加物、オルソクレゾール/リモネン重付加物等のナフトール類/脂肪族環状ジエン類重付加物;フェノール/p−キシレンジクロライド重縮合物、フェノール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、オルトクレゾール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、フェノール類/アラルキル化剤との重縮合物;1−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、2−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、1−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、2−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物等のナフトール類/アラルキル化剤との重縮合物、及び、これらの化合物の芳香核に置換基としてアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子を有する化合物が挙げられる。
【0044】
これらのフェノール系化合物(x1)のなかでも、耐熱性、感光性に優れる低粘度エポキシ樹脂中間体が得られることから、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類が好ましい。
【0045】
これらの中でも、硬化物の表面平滑性に優れる点からビスフェノール類、ビフェノール類が好ましく、感光性に優れる点からフェノール類/アルデヒド類重縮合物が好ましく、耐熱性、及び耐湿性に優れる点からフェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物が好ましい。
【0046】
従って、フェノール系化合物(x1)としてビスフェノール類を用いた場合、前記エポキシ樹脂(A)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂となる。かかるビスフェノール型エポキシ樹脂は、フレキシブルプリント基板用途における可とう性、及び平面平滑性とのバランスの点からエポキシ当量170〜500g/当量であることが好ましい。
【0047】
また、フェノール系化合物(x1)としてビフェノール類を用いた場合、前記エポキシ樹脂(A)は、ビフェニル型エポキシ樹脂となる。かかるビフェニル型エポキシ樹脂は硬化物の表面平滑性の点からエポキシ当量150〜300g/当量であることが好ましい。
【0048】
また、フェノール系化合物(x1)としてフェノール類/アルデヒド類重縮合物を用いた場合、前記エポキシ樹脂(A)は、ノボラック型エポキシ樹脂となる。かかるノボラック型エポキシ樹脂は、流動性、感光性、及び酸変性後のアルカリ現像性とのバランスの点から150℃における溶融粘度が1〜30ポイズであることが好ましい。
【0049】
更に、フェノール系化合物(x1)としてフェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物を用いた場合、前記エポキシ樹脂(A)は、フェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物型エポキシ樹脂となる。かかる
フェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物型エポキシ樹脂は、耐熱性、感光性、及び酸変性後のアルカリ現像性とのバランスの点から150℃における溶融粘度が1〜20ポイズであることが好ましい。
【0050】
次に、上記エポキシ樹脂(A)と反応させるフェノール系化合物(x1)と反応させるβ−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)は、具体的には、β−メチルエピクロロヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピヨードヒドリン等のβ−メチルエピハロヒドリン;β−エチルエピクロロヒドリン、β−エチルエピブロモヒドリン、β−エチルエピヨードヒドリン等のβ−エチルエピハロヒドリン;β−プロピルエピクロロヒドリン、β−プロピルエピブロモヒドリン、β−プロピルエピヨードヒドリン等のβ−プロピルエピハロヒドリン;β−ブチルエピクロロヒドリン、β−ブチルエピブロモヒドリン、β−ブチルエピヨードヒドリン等のβ−ブチルエピハロヒドリン等が挙げられる。これらのなかでも前記フェノール系化合物との反応性が良好で、流動性に優れる低粘度エポキシ樹脂が得られることからβ−メチルエピハロヒドリンが好ましく、更にその入手が容易であることからβ−メチルエピクロロヒドリンが最も好ましい。なお、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリンは、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。
【0051】
以上詳述したフェノール系化合物(x1)とβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)とを反応させる方法は、具体的には、これらの溶解混合物に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒として用い反応させる方法が挙げられる。
【0052】
また、前記反応においてはアルカリ金属水酸化物を反応開始前に一度に添加しても良いし、或いは、アルカリ金属水酸化物を連続的乃至断続的に反応系に添加しながら反応を行っても良い。反応温度は、特に限定されるものではないが、20〜120℃の範囲であることが反応性の点から好ましく、反応時間は1〜10時間の範囲が挙げあれる。
【0053】
β−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の使用量は、理論分子構造体量と釜得量(生産性)の兼ね合いから、フェノール系化合物(x1)中の水酸基1当量に対して、通常、0.3〜20当量の範囲となる量であることが好ましい。即ち、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)が0.3当量よりも少ない場合、生成したβ−アルキル置換グリシジルエーテル基と未反応フェノール性水酸基が反応してオリゴマー化反応し易くなり、エポキシ樹脂(a)の粘度の増大を招くことになる。一方、20当量を越える場合、フェノール系化合物(x1)のフェノール性水酸基がβ−アルキル置換グリシジルエーテル基に置換された構造(理論構造体:n=0体)を有する低分子量エポキシ樹脂の含有量が高くなるものの、生産性を低下させることになる。よって、これらのバランスの点から特に2.5〜10当量となる量であることがより好ましい。
【0054】
また、前記アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)を留出させ、更に分液し水は除去しβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)は反応系内に連続的に戻す方法がエポキシ樹脂(a)の純度が向上する点から好ましい。
【0055】
また、当該反応は、上記したアルカリ金属水酸化物を触媒として用いる方法の他に、フェノール系化合物(x1)とβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)との溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該フェノール系化合物(x1)のハロヒドリンエーテル化物を得、次いで、これに、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法を採用してもよい。
【0056】
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量としては、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の使用量に対し通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜60質量%である。
【0057】
このようにして得られたβ−アルキル置換グリシジルエーテル化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下で未反応のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)や他の添加溶媒などを除去する。また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)等を回収した後に得られる粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。反応温度としては通常50〜120℃、反応時間としては通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、粗エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0058】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することによりエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0059】
以上、詳述したエポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応させて本発明のエポキシビニルエステル樹脂を製造するには、以下の本発明の製造方法によって工業的に生産することができる。
【0060】
即ち、本発明の製造方法は、エポキシ基のβ-位に、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを、
前記エポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)との合計に対して、100〜2000ppmとなる割合で重合禁止剤を用い、かつ、前記エポキシ樹脂(A)中のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で触媒の存在下に反応させることを特徴とするものである。
【0061】
ここで特筆すべきは、前記した通り、エポキシ基のβ-位に、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)との反応は反応性が著しく低く、その為、反応後、エポキシ基が残存した場合には、硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性、耐湿性、密着性の低下を招いてしまうものであった。一方、触媒を多量に使用した場合には副反応によって不飽和二重結合どうしの重合を招き、生成した樹脂中の二重結合が消失したり、分子量が増大してしまうものであった。これに対して本発明では100〜2000ppmとなる割合で重合禁止剤を用い、かつ、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で反応させることにより、極めて良好に反応し、前記した構造A1、構造A3を殆ど生成しないビニルエステル樹脂が得られる点にある。
【0062】
反応条件は、エポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)中の「β-位にアルキル基置換基を有するエポキシ基」1化学当量に対し、不飽和一塩基酸(B)中のカルボン酸基0.90〜1.10化学当量となる比率で、必要に応じて触媒(エステル化触媒)を用いて反応させて得ることができる。反応は、初期から同反応比率にて一括反応させてもよいし、或いは、順次反応させることで最終的に官能基の反応比率が同比率となる方法であってもよい。
【0063】
また、当該反応はエステル化触媒の存在下に行うことが好ましく、かかるエステル化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリンもしくはジアザビシクロオクタンの如き3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類;2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルスチビン、アニオン交換樹脂等が挙げられる。該触媒の使用量は反応混合物に対して、0.01〜0.5質量%、特に0.05〜0.5質量%となる範囲であることが、反応性に優れる点から好ましい。
【0064】
本発明においては、エポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)の合計量に対して、100〜2000ppmとなる範囲で重合禁止剤を用いることにより、反応中の重合防止やゲル化を抑制することができる。ここで重合禁止剤は、例えばp−ベンゾキノン、アントラキノン、1,4−ナフトキノン、p−トルキノン、メトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅等の銅酸;フェノチアジン等の硫黄類が好ましく、特にその効果が顕著であることから、メトキノン、ハイドロキノンが好ましい。
【0065】
また、前記反応は希釈剤の存在下に行うこともできる。ここで使用し得る希釈剤は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類等が挙げられる。これらのなかでも、特に高温条件での反応が可能な点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを単独で使用するか、または、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート若しくはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと芳香族炭化水素類とを併用することが好ましい。
【0066】
前記反応における反応温度は、エステル化触媒の添加時期を問わず、60〜150℃なる範囲であることが反応を好適に進行させることができる点から好ましいが、反応時間が短く、経済的に優位であることから、中でも80〜130℃であることが更に好ましい。
【0067】
エステル化触媒はエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)と不飽和一塩基酸(b)とを反応させる際に添加(一括添加)すれば良いが、エステル化触媒の一部を添加(一次添加)して反応を進行させた後、更に連続的乃至断続的にエステル化触媒を添加(二次添加)する方法(多段添加)を採用しても良い。一次添加と二次添加で用いる際の触媒量は特に限定されないが、一次添加で総触媒量の50〜90%を添加し、二次添加で残りを添加することが好ましい。
【0068】
このようにして得られたエポキシビニルエステル樹脂は、副反応が抑制された結果、未反応のまま残存するエポキシ樹脂(A)の量を低減できる。具体的には、下記の条件下でのGPC測定において、前記エポキシ樹脂(A)のn=0体の存在割合(面積%)に対する、反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の合計存在割合(面積%)、後者/前者が0.80以上となる。
[GPC測定条件]
装置:東ソー株式会社製 HLC−8220 GPC
カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL
G2000HXL+G2000HXL+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物は、以上詳述したエポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とを必須成分とすることを特徴としている。
【0070】
ここで使用し得る光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、シクロロアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、P,P−ビスジエチルアミノベンゾヘェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のケタール類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,4,6−トリス−S−トリアジン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらのなかでも、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1は、反応性が高く好ましい。また、これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明において、光重合開始剤の量は、特に制限されるものではないが、エポキシビニルエステル樹脂100質量部に対して、通常0.1〜30質量部の範囲であることが好ましい。即ち、0.1質量部以上においては、エポキシビニルエステル樹脂の硬化反応が良好に進行し、また、30質量部以下では硬化塗膜の機械物性が良好なものとなる。感度、硬化塗膜の機械物性などの面から、なかでも前記配合量は0.5〜20質量部の範囲であることが好ましい。
【0072】
次に本発明の酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂について詳述するに、酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂は、上述したエポキシビニルエステル樹脂中の水酸基に多塩基酸無水物(C)を反応させて得られるものである。
【0073】
ここで多塩基酸無水物(C)は、例えば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、ドデシル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,4-ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、3−ブテニル−5,6−ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレン−テトラヒドロ無水フタル酸、7−メチル−3,6−エンドメチレン-テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水クロレンド酸、無水トロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも電食性、現像性に優れることから、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0074】
酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂中の酸価は、特に限定されるものではないが、30〜140mgKOH/gの範囲のものが好ましく、中でもアルカリ水溶液に対する溶解性が良好で現像性に優れ、レジスト塗膜の性能にも優れる点で酸価が40〜120mgKOH/gの範囲のものが特に好ましい。
【0075】
上記した本発明の酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂は、前記エポキシビニルエステル樹脂に、多塩基酸無水物(C)を反応させることによって、工業的に生産することができる。
【0076】
エポキシビニルエステル樹脂と多塩基酸無水物(C)とを反応させる方法は、具体的には、エポキシビニルエステル樹脂の二級水酸基1.0モルに対し、前記多塩基酸無水物(C)の酸無水物基を0.75〜1.0モルとなる割合で反応させる方法が挙げられる。また、反応終了後、多塩基酸無水物(C)が系内に残存する場合、製品化した際にゲル化を生じる可能性があるため、当該反応は十分進行させる必要があり、その反応温度が60〜130℃の範囲であることが好ましく、また、反応時間は1〜10時間の範囲であることが好ましい。
【0077】
次に、本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物は、前記した酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とエポキシ樹脂とを必須成分とするものであり、前記した感光性樹脂組成物に更にエポキシ樹脂を含有させたものである。従って、光重合開始剤は、前記したものが何れも使用できる。
【0078】
また、エポキシ樹脂としては、特に限定されず種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。またブチルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、脂肪鎖カルボン酸グリシジルエステルなどの反応性希釈剤型のエポキシ樹脂や、脂環式エポキシ樹脂などの液状エポキシ樹脂なども挙げられる。また前記他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0079】
なかでも、軟化点(アモルファス性状のエポキシ樹脂の場合)、融点(結晶性エポキシ樹脂の場合)が50℃以上のエポキシ樹脂が、乾燥後タックのない皮膜を形成することができ好ましく、硬化性や耐熱性、作業性のバランスを考慮すると、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂などが好ましい。このエポキシ樹脂の使用量の好適な範囲は、通常、前記酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂中のカルボキシル基1当量あたり、該エポキシ樹脂のエポキシ基が0.2〜3.0当量となる割合である。なかでも密着性、半田耐熱性に優れる点から1.0〜1.5当量となる割合が好ましい。
【0080】
酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂のカルボキシル基とエポキシ樹脂との反応を促進するために、イミダゾールや3級アミン、3級アミン塩などの硬化促進剤を用いることもできる。
【0081】
前記した感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物には、反応性希釈剤を用いることができる。反応性希釈剤としては種々のものが使用でき、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、メラミン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、あるいはヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール、又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0082】
また、本発明の感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物には、更に顔料、充填剤、添加剤等を配合することができる。例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料;酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ、カーボンブラック、タルク、クレー等の充填剤;ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤;シラン系、チタン系等のカップリング剤;フッ素系界面活性剤等のレベリング剤;アエロジル等のレオロジーコントロール剤;顔料分散剤:ハジキ防止剤;消泡剤等の添加剤等が挙げられる。また必要に応じてガラス繊維、ガラス布、炭素繊維等の強化材を含有する事ができる。また必要に応じて難燃付与剤も添加できる。この難燃付与剤としては種々のものが使用できるが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物;赤リンや各種燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物;メラミン或いはその誘導体などの窒素原子含有化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が例示できる。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、現像性、耐溶剤性、はんだ耐熱性、絶縁抵抗等の特性を高いレベルで満足し、特に、プリント配線板等のオーバーコート、アンダーコート、絶縁コートなどの永久保護膜、ビルドアップ基板の層間絶縁材料、電子部品用の光硬化性接着剤等、或いはプリント配線板に適した希アルカリ溶液で現像可能なソルダーレジストインキ、その他、導電ペースト、に好適な用いることができる。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物をプリント配線基板材料用に調製するには、前記感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤や2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、あるいはヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール、又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類等の反応性希釈剤に溶解させてワニス状組成物として用いることができる。この際の有機溶剤(反応性希釈剤)は、本発明のエポキシビニルエステル樹脂組成物と該溶剤(反応性希釈剤)の混合物100質量部当たり、10〜70質量部、好ましくは15〜65質量部、特に好ましくは15〜65質量部となるように調製することが好ましい。
【0085】
次いで、得られたワニス状組成物をガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して積層板を得ることができる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物からレジストインキを調製するには、感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物の配合物を均一になるまで3本ロール、ペイントシェーカー等の機械的手段により混合分散させることにより得ることができる。ここで、エポキシビニルエステル樹脂或いは酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂の使用量は、特に制限されるものではないが、感度、タック性の改善効果が良好なものとなり、更に硬化物の耐熱性、耐溶剤性に優れる点からソルダーレジストインキ組成物中10〜70質量%が好ましく、特に30〜60質量%となる範囲であることが好ましい。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物から導電ペーストを調製するには、エポキシビニルエステル樹脂、重合開始剤、必要に応じて有機溶媒(反応性希釈剤)、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を配合することによって得られる。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物から電子部品用接着剤を調整するにはエポキシビニルエステル樹脂、光重合開始剤、必要に応じて有機溶媒(反応性希釈剤)充填剤等の配合物を均一になるまで3本ロール、ペイントシェーカー等の機械的手段により混合分散させることにより得ることができる。ここで、エポキシビニルエステル樹脂の使用量は、特に制限されるものではないが、硬化性、密着性の改善効果が良好なものとなり、更に硬化物の耐熱性、耐溶剤性に優れる点から電子部品接着剤組成物中10〜70質量%が好ましく、特に30〜60質量%となる範囲であることが好ましい。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物から層間絶縁材料を調製するには、前記感光性樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤や2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、あるいはヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール、又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類等の反応性希釈剤に溶解させてワニス状組成物として用いることができる。この際の有機溶剤(反応性希釈剤)は、本発明のエポキシビニルエステル樹脂組成物と該溶剤(反応性希釈剤)の混合物100質量部当たり、10〜70質量部、好ましくは15〜65質量部、特に好ましくは15〜65質量部となるように調製することが好ましい。
【0090】
本発明の硬化物は、前記した感光性樹脂組成物、アルカリ現像性感光性樹脂組成物を光硬化させて得ることができる。また、アルカリ現像性感光性樹脂組成物の場合には、光硬化させた後、更に、熱硬化させることによって得ることができる。かかる硬化物は、成型物、積層物、注型物、接着剤の硬化物、塗膜、フィルムとして利用できる。例えば、電子部品接着剤用組成物の場合は、該組成物を光照射、或いは加熱などを用いて硬化(流動性の低下)、さらに80〜200℃で0.1〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【実施例】
【0091】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。なお、以下に記載の部及び%は、特に断りがない限り質量基準である。なお、下記の各実施例及び比較例において13C−NMR及びGPCの測定条件は以下の通りである。
[13C−NMR測定条件]
装置 :日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGBCM(1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:30℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0092】
[GPC測定条件]
装置:東ソー株式会社製 HLC−8220 GPC
カラム:東ソー株式会社製 TSK−GEL
G2000HXL+G2000HXL+G3000HXL+G4000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
検出器:RI
【0093】
実施例1 下記構造式
【0094】
【化13】

(式中、nの平均は0.1である。)
で表されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−1)の合成
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.0モル)とβ−メチルエピクロルヒドリン1065g(10.0モル)、n−ブタノール213gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液180g(2.20モル)を5時間かけて滴下した、次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のβ−メチルエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(E−1)357gを得た。この樹脂(E−1)のエポキシ当量は213g/eq.、粘度は63,000mPa・s(25℃、キャノンフェンスケ法)、α−グリコール基含有量0.03meq/gであった。また、前記構造式におけるn=0体の含有率はGPC測定で74.3面積%であった。以下、このエポキシ樹脂におけるn=0体を「A−n=0体」と略記する(以下の実施例及び比較例も同様)。
【0095】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにエポキシ樹脂(E−1)213g(1当量)、アクリル酸72g(1当量)、重合禁止剤としてハイドロキノン0.09g(300ppm)を仕込み、70℃で加熱攪拌し、均一溶解させた。その後、触媒としてトリフェニルホスフィン 0.29g(1000ppm)を添加して、90℃まで昇温し、更に同温度で2時間反応させた。その後、更に触媒としてトリフェニルホスフィン 0.29g(1000ppm)を追加添加し、120℃で5時間反応を行い、一般式(13)で示されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gを得た。得られたエポキシビニルエステル樹脂のGPCチャートを図1に、13C−NMRチャートを図2に示す。
【0096】
該エポキシビニルエステル樹脂(VE−1)は、エポキシ当量15000g/eq.以上、酸価2.8mgKOH/g、α−グリコール基含有量0.04meq/gであった。
【0097】
13C−NMRから、構造A1のピーク積分値の相加平均値(A)は殆ど観測されず(実質的にゼロ)、及び構造A3のピーク積分値の相加平均値(A)も殆ど観測されず(実質的にゼロ)であったため、前記構造A1と前記構造A2とのモル基準での存在比[A1/A2×100]は0モル%、及び、構造A2のモル数に対する構造A1と構造A3との合計のモル数の比率[(A1+A3)/A2]は0モル%であった。
【0098】
得られた反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の存在比率は、GPC測定において69.6面積%(未反応n=0体は未検出、片末端反応物4.2面積%、両末端反応物65.4面積%)であった。なお、n=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物を
併せて「C−n=0体」と表記する(以下の実施例及び比較例も同様)。
従って、反応前後のn=0体の含有率の比〔(C−n=0体)/(A−n=0体)〕は、69.6/74.3=0.94であった。
【0099】
実施例2 下記構造式
【0100】
【化14】

(式中、Rの水素原子及びテトラヒドロ無水フタル酸残基は、それぞれ独立的、且つランダムに存在するものであり、また、nの平均は0.1である。)
で表される酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂(PVE−1)の合成
実施例1で得られたエポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gとテトラヒドロ無水フタル酸137g(ビニルエステル化によって生成した水酸基の数:酸無水物の数=1.0:0.9)とを、ブチルカルビトールアセテート180g中で、触媒としてトリフェニルホスフィン 0.42g(1000ppm)を添加して、120℃で6時間反応させ、上記構造式で示される、酸価が119mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(PVE−1)614gを得た。
【0101】
実施例3 下記構造式
【0102】
【化15】


(式中、nの平均は4.7である。)
で表されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−2)の合成
ビスフェノールA228g(1.0モル)を用いる代わりにオルソクレゾールノボラック(水酸基当量 120g/eq、軟化点 90℃)240gとする他は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(E−2)368gを得た。この樹脂(E−2)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量は256g/eq.、軟化点86℃(ボール&リング法)、ICI粘度10.0dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.03meq/g、GPC測定でのn=0体量は8.1面積%であることが確認された。
次いで、エポキシ樹脂(E−1)213g(1当量)を用いる代わりに該エポキシ樹脂(E−2)256g(1当量)とする以外は、実施例1と同様にして上記構造式で示されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−2)328gを得た。該エポキシビニルエステル樹脂(VE−2)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量15000g/eq.以上、酸価1.6mgKOH/g、軟化点79℃、ICI粘度8.8dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.04meq/gであった。
13C−NMRから、構造A1のピーク積分値の相加平均値(A)は殆ど観測されず(実質的にゼロ)、及び構造A3のピーク積分値の相加平均値(A)は殆ど観測されず(実質的にゼロ)であったため、前記構造A1と前記構造A2とのモル基準での存在比[A1/A2×100]は0モル%、及び、構造A2のモル数に対する構造A1と構造A3との合計のモル数の比率[(A1+A3)/A2]は0モル%であった。
【0103】
得られた反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の存在比率は、GPC測定において6.6面積%(未反応n=0体は0.1面積%、片末端反応物1.1面積%、両末端反応物5.4面積%)であった。
従って、反応前後のn=0体の比率〔(C−n=0体)/(A−n=0体)〕は、6.6/8.1=0.81であった。
【0104】
実施例4 下記構造式
【0105】
【化16】


(式中、Rの水素原子及びテトラヒドロ無水フタル酸残基は、それぞれ独立的、且つランダムに存在するものであり、また、nの平均は4.7である。)
で酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂(PVE−2)の合成
エポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gをエポキシビニルエステル樹脂(VE−2)328gとし、120℃で10時間反応させた以外は、実施例3と同様にして、上記構造式で示される、酸価が108mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(PVE−2)664gを得た。
【0106】
実施例5 下記構造式
【0107】
【化17】

(式中、nの平均は1.0である。)
【0108】
で表されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−3)の合成
ビスフェノールA228g(1.0モル)を用いる代わりにジシクロペンタジエン−フェノール(新日本石油化学株式会社製 日石特殊フェノールDPP−6125 水酸基当量 185g/eq、軟化点 125℃)185gとする他は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(E−3)247gを得た。この樹脂(E−3)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量は322g/eq.、軟化点103℃(ボール&リング法)、ICI粘度17dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.07meq/gであった。また、GPC測定でのn=0体量は26.2面積%であることが確認された。
その後、エポキシ樹脂(E−1)213g(1当量)を用いる代わりに該エポキシ樹脂(E−3)322g(1当量)とする以外は、実施例1と同様にして上記構造式で示されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−3)394gを得た。該エポキシビニルエステル樹脂(VE−3)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量15000g/eq.以上、酸価1.8mgKOH/g、軟化点91℃、ICI粘度17.7dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.07meq/gであった。
また、得られた反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の存在比率は、GPC測定において21.2面積%(未反応n=0体は0.8面積%、片末端反応物3.7面積%、両末端反応物16.7面積%)であることが確認された。
従って、反応前後のn=0体の比率〔(C−n=0体)/(A−n=0体)〕は、21.2/26.2=0.81であった。
【0109】
実施例6 下記構造式
【0110】
【化18】

(式中、Rの水素原子及びテトラヒドロ無水フタル酸残基は、それぞれ独立的、且つランダムに存在するものであり、また、nの平均は1.0である。)
で表される酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂(PVE−3)の合成
実施例2においてエポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gをエポキシビニルエステル樹脂(VE−3)394gとし、120℃で10時間反応させた以外は、実施例2と同様にして、上記構造式で示される、酸価が95mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(PVE−3)758gを得た。
【0111】
比較例1 下記構造式
【0112】
【化19】

(式中、nの平均は0.1である。)
で表される比較用ビスフェノールA型エポキシビニルエステル樹脂の合成
エポキシ樹脂(E−1)の変わりに、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 EPICLON 850−S エポキシ当量;188g/eq 粘度;13,500mPa.s、α−グリコール基含有量0.02meq/g、GPC測定でのn=0体量は82.3面積%である)188g(1当量)とする以外は、実施例1と同様にして上記構造式で示されるエポキシビニルエステル樹脂(VE−4)260gを得た。得られたエポキシビニルエステル樹脂の13C−NMRチャートを図3に示す。
該エポキシビニルエステル樹脂(VE−4)は、エポキシ当量15000g/eq.以上、酸価2.6mgKOH/g、α−グリコール基含有量0.16meq/gであった。
また、13C−NMRから、一般式(1)構造ピーク積分値の相加平均値(A)は5.5mmであった。一般式(2)構造ピーク積分値の相加平均値(A)は28.0mmであったため、一般式(1)構造の比率[(A1/A2)×100=19.6モル%であった。
一般式(3)構造ピーク積分値の相加平均値(A)は2.8mmであった。従って、一般式(3)構造の比率[(A/A2)×100=10.0モル%であった。及び、一般式(1)構造と一般式(3)構造の合計モル比率[(A+A)/A2×100]=29.6モル%であった。
得られた反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の存在比率は、GPC測定において65.4面積%(未反応n=0体は未検出、片末端反応物0.1面積%、両末端反応物65.3面積%)であった。
従って、反応前後のn=0体の比率〔(C−n=0体)/(A−n=0体)〕は、65.4/82.3=0.79であった。
【0113】
比較例2 下記構造式
【0114】
【化20】


(式中、Rの水素原子及びテトラヒドロ無水フタル酸残基は、それぞれ独立的、且つランダムに存在するものであり、また、nの平均は0.1である。)
で表される比較用酸ペンダント型ビスフェノールA型エポキシビニルエステル樹脂の合成
で表されるエポキシビニルエステル樹脂(PVE−4)の合成
エポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gをエポキシビニルエステル樹脂(VE−4)260gとし、120℃で4時間反応させた以外は、実施例2と同様にして酸価が127mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(PVE−4)567gを得た。
【0115】
比較例3 下記構造式
【0116】
【化21】

(式中、nの平均は3.1である。)
で表される比較用クレゾールノボラック型エポキシビニルエステル樹脂(VE−5)の合成
【0117】
ビスフェノールA228g(1.0モル)を用いる代わりにオルソクレゾールノボラック(水酸基当量 120g/eq、軟化点 90℃)240gとし、β−メチルエピクロルヒドリン1065g(10.0モル)を用いる代わりにエピクロルヒドリン925g(10.0モル)とする以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(E−5)340gを得た。この樹脂(E−2)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量は202g/eq.、軟化点68℃(ボール&リング法)、ICI粘度3.0dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.03meq/g、GPC測定でのn=0体量は8.4面積%であることが確認された。
その後、エポキシ樹脂(E−1)213g(1当量)を用いる代わりに該エポキシ樹脂(E−5)202g(1当量)とする以外は、実施例1と同様にしてエポキシビニルエステル樹脂(VE−5)274gを得た。該エポキシビニルエステル樹脂(VE−5)は、常温で固形形状であり、エポキシ当量15000g/eq.以上、酸価0.6mgKOH/g、軟化点67℃、ICI粘度6.1dPa.s(150℃)、α−グリコール基含有量0.19meq/gであった。
13C−NMRから、一般式(1)構造の比率[(A1/A2)×100=22.5モル%であった。また、一般式(3)構造の比率[(A/A2)×100=9.4モル%であった。及び、一般式(1)構造と一般式(3)構造の合計モル比率[(A+A)/A2×100]=31.9モル%であった。
得られた反応生成物中のn=0体の未反応エポキシ樹脂、n=0体の片末端反応物、n=0体の両末端反応物の存在比率は、GPC測定において5.4面積%(未反応n=0体は0.2面積%、片末端反応物0.5面積%、両末端反応物4.7面積%)であった。
従って、反応前後のn=0体の比率〔(C−n=0体)/(A−n=0体)〕は、5.4/8.4=0.64であった。
【0118】
比較例4 下記構造式
【0119】
【化22】

(式中、Rの水素原子及びテトラヒドロ無水フタル酸残基は、それぞれ独立的、且つランダムに存在するものであり、また、nの平均は3.1である。)
で表される酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂(PVE−5)の合成
エポキシビニルエステル樹脂(VE−1)285gをエポキシビニルエステル樹脂(VE−5)274gとし、120℃で8時間反応させた以外は、実施例2と同様にして、上記構造式で示される、酸価が122mgKOH/gの樹脂を70%含有する樹脂溶液(PVE−2)587gを得た。
【0120】
【表1】

【0121】
(表中、「イルガキュア 651」はチバガイギー製2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノンである。)
【0122】
【表2】

【0123】
(表中、「エピクロン N−680」は大日本インキ化学工業株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量211g/eq、軟化点86℃)である。)
【0124】
次に、この主剤(100部)と硬化剤(30部)を混合した後、この混合物を予め回路の形成されたプリント配線板(銅箔35μm、線幅500μm、線間500μm)上に15〜25μmの厚みになるようスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃で20分間乾燥させた後、レジストパターンフィルム(ネガマスク)を接触させ、オーク製作所製メタルハライドランプ露光装置を用いて、60秒間露光した。未露光部分を1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて60秒間現像を行い、その後熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間加熱処理を行った。次いで、以下に示す方法を用いて、レジストの特性について評価した結果を表1に示す。
【0125】
(現像性)
○・・・現像時に完全にインキが除去され、完全に現像された(目視評価)。
×・・・現像時、少しでも残渣が残り、現像されない部分があった(目視評価)。
(耐溶剤性)
レジスト硬化膜をアセトンに20分間浸漬しその状態を目視した。
○・・・全く変化無し。
×・・・フクレやハクリが発生した。
【0126】
(はんだ耐熱性)
JIS C 6481試験法に従い、260℃ではんだ浴への試験片の10秒浸漬を3回行い、外観の変化を確認した。表には10秒浸漬を3回行った時の外観の変化状況を記した。
○・・・外観変化無し。
△・・・硬化膜の変色が認められるもの
×・・・硬化膜の浮き、剥れ、半田潜りあり
【0127】
(絶縁抵抗)
レジストパターンが形成されたプリント配線板を、60℃、90%RHの雰囲気下で24Vに印加し、400時間後の絶縁抵抗値を東亜電波製SM−10E(500V印加)を用いて測定した。
【0128】
(保存安定性)
エポキシビニルエステル樹脂単独を、ガラス製マヨネーズ瓶に100g秤量し、60℃乾燥機内に放置、経時的に樹脂がゲル化するまでの日数を測定した。(目視判断) 日数が長いほど、保存安定性が良好であることを示す。
【0129】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】実施例1で得られたエポキシビニルエステル樹脂のGPCチャート図である。
【図2】実施例1で得られたエポキシビニルエステル樹脂の13C−NMRチャート図である。
【図3】比較例1で得られたエポキシビニルエステル樹脂の13C−NMRチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応されて得られるエポキシビニルエステル樹脂であって、かつ、その分子構造中の
下記一般式(1)
【化1】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A1、及び
下記一般式(2)
【化2】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A2のモル基準での存在比[A1/A2]が、0.05以下であることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項2】
エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを反応されて得られるエポキシビニルエステル樹脂であって、かつ、その分子構造中の
下記一般式(1)
【化3】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕で表される構造A1、
下記一般式(2)
【化4】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A2、及び
下記一般式(3)
【化5】

〔式中、Rは炭素原子数1〜4であるアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。〕
で表される構造A3
のモル基準での存在比[(A1+A3)/A2]が0.05以下であることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1又は2記載のエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂である請求項1又は2記載のエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するビフェニル型エポキシ樹脂である請求項1又は2記載のエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(A)が、エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するフェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物型エポキシ樹脂である請求項1又は2記載のエポキシビニルエステル樹脂。
【請求項7】
エポキシ基のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)とを触媒及び重合禁止剤の存在下に反応させる製造方法であって、前記重合禁止剤をエポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)との合計に対して、100〜2000ppmとなる割合で用い、かつ、エポキシ樹脂(A)中のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で反応させることを特徴とするエポキシビニルエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一つに記載されたエポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とを含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか一つに記載されたエポキシビニルエステル樹脂に、更に、多塩基酸化合物を反応させた構造を有することを特徴とする酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂。
【請求項11】
エポキシ基のβ-位に、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(A)と、不飽和一塩基酸(B)とを、
前記エポキシ樹脂(A)と不飽和一塩基酸(B)との合計に対して、100〜2000ppmとなる割合で重合禁止剤を用い、かつ、前記エポキシ樹脂(A)中のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として導入したエポキシ基1化学当量あたり、不飽和一塩基酸(B)を、0.90〜1.10化学当量となる割合で触媒の存在下に反応させ、
次いで、得られたエポキシビニルエステル樹脂に、多塩基酸無水物(C)を反応させることを特徴とする酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の酸ペンダント型エポキシビニルエステル樹脂と光重合開始剤とエポキシ樹脂とを必須成分とすることを特徴とするアルカリ現像性感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12記載のアルカリ現像性感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326933(P2007−326933A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158415(P2006−158415)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】