説明

エポキシプレポリマー、並びに、これを用いたエポキシ樹脂組成物、硬化物、半硬化物、プリプレグ及び複合基板

【課題】熱伝導性に優れるエポキシプレポリマー等を提供すること。
【解決手段】メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と、下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られる、エポキシプレポリマー。
【化1】


(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れるエポキシプレポリマー、並びに、これを用いたエポキシ樹脂組成物、硬化物、半硬化物、プリプレグ及び複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高熱伝導率を有する樹脂組成物として、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂と硬化剤を含むものが知られている。例えば、特許文献1には、ビフェニル骨格を有する特定構造のエポキシ化合物と4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のフェノール化合物とを反応させたエポキシ樹脂(エポキシプレポリマー)に、1,5−ジアミノナフタレン等のアミン系硬化剤を配合したものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3885664号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、熱伝導性が不十分で未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、熱伝導性に優れるエポキシプレポリマー、並びに、これを用いたエポキシ樹脂組成物、硬化物、半硬化物、プリプレグ及び複合基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマーを用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(10)を提供する。
(1)メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と、下記式で表される3核体ビスフェノールと
【化1】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
を反応させることにより得られる、エポキシプレポリマー。
(2)前記3核体ビスフェノールが、下記式で表されるアルキル1置換の3核体ビスフェノールから選択される少なくとも1種である、
【化2】

(式中、R,R,Rは、アルキル基である。)
上記(1)に記載のエポキシプレポリマー。
(3)前記メソゲン骨格が、下記式で表される、
【化3】

(式中、R21,R22,R23,R24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、kは2以上の数である。)
上記(1)又は(2)に記載のエポキシプレポリマー。
(4)前記エポキシ化合物が、ビフェニル骨格と2個以上のエポキシ基とを有するグリシジルエーテル類である、
上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のエポキシプレポリマー。
(5)メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化4】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物。
(6)メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化5】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を、硬化させて得られる、
硬化物。
(7)スメクチック液晶を呈する、
上記(6)に記載の硬化物。
(8)メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化6】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を、半硬化させて得られる、
半硬化物。
(9)芯材と、
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化7】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を半硬化させて得られる半硬化物と
を少なくとも有する、プリプレグ。
(10)メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化8】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物と、
硬化物の一面または両面に積層された金属層と、
を有する複合基板。
【0008】
また、本発明は、以下(11)〜(12)を提供するものとも言える。
(11)メソゲン骨格と、下記式で表される3核体骨格と、2個以上のエポキシ基とを有する、
【化9】

(式中、Rは、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基であり、Xは、酸素原子である。)
エポキシプレポリマー。
(12)前記3核体骨格が、下記式で表される3核体骨格から選択される少なくとも1種である、
【化10】

(式中、Rは、アルキル基であり、Xは、酸素原子である。)
上記(11)に記載のエポキシプレポリマー。
【0009】
本発明者らが、上記のエポキシプレポリマーを含むエポキシ樹脂組成物及びその硬化物の特性を測定したところ、従来に比して、熱伝導性が格別に高められることが判明した。かかる効果が奏される作用機構の詳細は、未だ明らかではないものの、例えば、以下のとおり推定される。
【0010】
すなわち、上記のエポキシプレポリマーには、分子内に3核体(トリスフェニル骨格)が導入されているので、従来に比して、組成物中の芳香族環の密度が高められる。また、組成物中において、トリスフェニル骨格とメソゲン骨格とのスタッキングによる高次構造が形成され、比較的に秩序度の高い液晶相が形成され易い傾向にあるとも考えられる。そのため、上記のエポキシプレポリマーを用いた硬化物は、熱伝導性が飛躍的に向上されたものとなる。但し、作用は、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱伝導性に優れるエポキシプレポリマーが実現され、これにより、熱伝導性に優れるエポキシ樹脂組成物、硬化物、半硬化物、プリプレグ及び複合基板を簡易且つ低コストで提供することができ、よって、生産性及び経済性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、この実施の形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【0013】
本実施形態のエポキシプレポリマーは、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と特定の3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られる。
【0014】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル類やグリシジルエステル類、グリシジルアミン類等にメソゲン骨格が導入されたものが挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0015】
ここでメソゲン骨格とは、液晶性の発現に寄与する部分構造を意味する。その具体例としては、例えば、下記式で示されるものが挙げられる。
【化11】

(式中、R21,R22,R23,R24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、kは2以上の数である。)
【0016】
これらの中でも、メソゲン骨格は、下記式で表されるものが好ましい。
【化12】

(式中、R21,R22,R23,R24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、kは2以上の数である。)
【0017】
とりわけ、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、熱伝導性をより一層高める観点から、分子中にビフェニル骨格を有するものであることがより好ましく、より具体的には、分子中にビフェニル骨格と2個以上のエポキシ基とを有するグリシジルエーテル類(例えば、ビフェニルグリシジルエーテルやテトラメチルビフェニルグリシジルエーテル等)であることが特に好ましい。
【0018】
3核体ビスフェノールは、下記式で表される、アルキル置換されたトリスフェニル骨格を有するフェノール性化合物、すなわち、アルキル置換された4,4’’−ジヒドロキシ−p−トリフェニルである。
【化13】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
【0019】
とりわけ、上記の3核体ビスフェノールは、合成が容易であり、低コストで量産可能であるとの観点から、下記式で表されるアルキル1置換の3核体ビスフェノールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【化14】

(式中、R,R,Rは、アルキル基である。)
【0020】
上記の3核体ビスフェノールは、少なくとも1以上のアルキル基を有する。このようなアルキル置換体は、無置換体に比して、合成が極めて容易であるばかりか、溶剤への溶解性にも優れているので、これを用いることにより、生産性及び経済性がより一層高められるとともに、取り扱い性の向上が図られる。
【0021】
ここで、アルキル基とは、直鎖、分岐、環状のいずれであっても構わず、特に限定されないが、直鎖であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましい。また、アルキル置換数は、特に限定されないが、好ましくは1〜6である。
【0022】
上記のメソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3核体ビスフェノールとの反応は、通常、溶媒中で、必要によっては触媒を加え、熱を印加することにより行われる。これにより、エポキシ基とフェノール性水酸基とが反応して、メソゲン骨格と3核体骨格と2個以上のエポキシ基とを有するエポキシプレポリマーが生成される。かかるエポキシプレポリマーは、メソゲン骨格と3核体骨格とが配列した高次構造を有するものであり、その高次構造によって高熱伝導性が発現されるものと考えられる。
【0023】
ここで用いる溶媒は、上記のメソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3核体ビスフェノールとを溶解又は分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0024】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3核体ビスフェノールとの配合量は、特に限定されず、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基の数と3核体ビスフェノールに含まれるフェノール性水酸基の数に応じた当量比になるように、適宜、設定すればよい。典型的には、2官能のエポキシ化合物及び3核体ビスフェノールを用いる場合には、当量比を0.5程度に設定するのが一般的である。なお、上述したメソゲン骨格を有するエポキシ化合物及び3核体ビスフェノールは、各々1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、温度条件は、特に限定されるものではないが、通常、120〜200度の範囲で適宜設定すればよい。
【0025】
エポキシ樹脂組成物は、上述したエポキシプレポリマーと硬化剤とを少なくとも含有する。ここで用いられる硬化剤としては、アミン系化合物やイミダゾール系化合物、及びこれらの誘導体等、当業界において公知のものを適宜使用することができる。
【0026】
より一層の高熱伝導性を実現する観点から、硬化剤として、ビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤を用いることが好ましい。このような硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類や芳香族アミン類にビフェニルアラルキル骨格が導入されたものが挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0027】
ビフェニルアラルキル骨格の具体例としては、例えば、下記式で示されるものが挙げられる。
【化15】

(式中、R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20は、それぞれ水素原子又は1価のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Xは、水素原子又は水酸基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Aは、水酸基または1価のアルキル基であり、lは、平均値で、1より大きな数であり、n、mは、それぞれ1以上の整数である。但し、Zは、少なくとも1個以上の水酸基を有する基である。)
【0028】
とりわけ、工業的な合成の容易さの観点から、ビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤は、下記式で表されるものが好ましい。
【化16】

(式中、R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20は、それぞれ水素原子又は1価のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、lは、平均値で、1より大きな数である。)
【0029】
ビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤は、取り扱い性の観点から、アモルファス性の硬化剤であることが好ましく、他の観点から表現すると、融点を持たないものであることが好ましい。
【0030】
また、ビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤は、比較的に低温から易成形性を発現させて取り扱い性を高める観点から、軟化点が110度以下であることが好ましく、より好ましくは100度度以下、さらに好ましくは90度以下、特に好ましくは、80度以下である。
【0031】
上述したメソゲン骨格を有するエポキシ化合物とビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤との配合割合は、特に限定されないが、各々の固形分換算で、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物100質量部に対し、5〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物、またはビフェニルアラルキル骨格を有する硬化剤が過度に多いと、樹脂硬化物の耐熱性が低下する傾向にある。
【0032】
なお、エポキシ樹脂組成物は、上記のエポキシプレポリマーを2種以上含んでいても、上記のエポキシプレポリマー以外のエポキシ化合物或いはエポキシプレポリマー、例えば、メソゲン骨格を有さないエポキシ化合物等を含んでいてもよい。また、2種以上の硬化剤を併用しても構わない。
【0033】
エポキシ樹脂組成物は、通常、溶媒中に均一に溶解又は分散させて使用される。ここで用いる溶媒は、上記のエポキシ化合物及び硬化剤を溶解又は分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、アセトン等及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上記2成分以外の他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、ホスフィン類やイミダゾール(2−エチル−4−メチルイミダゾール)類等の硬化触媒(硬化促進剤)、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、アルミナやシリカ等の無機充填剤、ガラス繊維やセラミックス繊維等の繊維類、織布、不織布、ハロゲンやリン化合物等の難燃剤、希釈剤、可塑剤、滑剤等が挙げられ、これらは、当業界において公知のものから適宜選択して用いればよい。
【0035】
上記のエポキシ樹脂組成物に熱を印加し乾燥することにより、エポキシ樹脂組成物が半硬化した、所謂Bステージ状態の半硬化物が得られる。半硬化物の製造方法は、定法にしたがって行えばよく、特に限定されない。一般的には、例えば、上記のエポキシ樹脂組成物を所定形状の金型内に保持した状態で熱を印加し乾燥する方法や、上記のエポキシ樹脂組成物をPET等の樹脂フィルムや金属板等の支持体上に塗布した後に熱を印加し乾燥する方法等が挙げられる。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、例えば、60〜150度で1〜120分程度、好ましくは70〜120度で10〜90分程度の条件下で半硬化させることができ、従来に比して、比較的に低温で処理が行なえる点において、優位性を有する。
【0036】
上記のエポキシ樹脂組成物或いは半硬化物に熱を印加し、硬化反応を十分に進めることにより、硬化物が得られる。硬化物の製造方法は、定法にしたがって行えばよく、特に限定されない。熱印加条件は、一般的には、100〜200度で1〜300分程度である。なお、硬化物の製造は、加圧条件下で行ってもよい。
【0037】
かくして得られる硬化物の熱伝導率は、0.35(W/m・K)以上であることが好ましく、より好ましくは0.38(W/m・K)以上、さらに好ましくは0.40(W/m・K)以上である。
【0038】
また、上記の硬化物は、スメクチック液晶を呈するものであることが好ましい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を用いた場合、通常、その硬化物は、偏光顕微鏡による観察下で、シュリーレン状のネマチック液晶を呈するものとなる。しかしながら、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と3核体ビスフェノールとを反応させて得られるエポキシプレポリマーを用いた場合、驚くべきことに、偏光顕微鏡による観察下で、その硬化物がスメクチック液晶を呈する傾向にあり、このようなスメクチック液晶を呈するものは、その熱伝導性が格別に優れる傾向にある。
【0039】
なお、上記のエポキシ樹脂組成物を半硬化することにより、半硬化物が作成される。また、上記のエポキシ樹脂組成物を芯材に塗布或いは浸漬する等して含浸させた後、乾燥及び半硬化させることにより、プリプレグを作製することができる。そして、このプリプレグと金属板や金属箔等の金属層とを積層し、硬化及び必要に応じ加熱加圧成形することにより、金属張積層板(複合基板)を作製することができる。但し、これらの作製方法は、上記したものに限定されない。
【0040】
プリプレグにおいて用いられる芯材としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ガラス繊維、金属繊維、天然繊維、合成繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の合成繊維等から得られる織布又は不織布等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの芯材は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、芯材の厚さは、プリプレグ又は積層板の厚さや、所望の機械的強度及び寸法安定性等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、通常、0.03〜0.20mm程度である。
【0041】
複合基板において用いられる金属層としては、各種公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、CuやAl等の金属板や金属箔が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、金属層の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、3〜150μm程度である。
【実施例】
【0042】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態を詳細に説明する。なお、以下において、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を各々意味する。
【0043】
<エポキシプレポリマー及びエポキシ樹脂組成物>
(実施例1)
三口フラスコ中に、下記式で表される2官能の結晶性エポキシ化合物(商品名:YL6121H、ジャパンエポキシレジン製、エポキシ当量175)50質量部、及び、3核体ビスフェノール(4,4’’−ジヒドロキシ−3−メチル−p−トリフェニル、略号:DHTP−M、当量138)21.17質量部を仕込み(当量比0.5)、さらに、固形分が30質量%となるようにメチルエチルケトン166質量部を加えて、還流がかかるように温度設定した後に撹拌を行う。そして、容器内で還流がかかっていることを確認し、12時間撹拌反応を行った後、室温に冷却することで、実施例1のエポキシプレポリマーを合成した。このエポキシプレポリマー溶液中に、下記式で表されるビフェニルアラルキル型硬化剤(商品名:HE200C、エアウォーター製、当量212、平均n=1.2、軟化点=75度)14.07質量部(当量比0.5)、及び硬化触媒(2−エチル−4−メチルイミダゾール、略号:2E4Mz、四国化成製)0.1825質量部を混ぜ合わせ、均一に分散させることにより、実施例1のエポキシ樹脂組成物を作製した。
YL6121H
【化17】

HE200C
【化18】

【0044】
(実施例2)
硬化剤を、下記式で表されるビフェニルアラルキル型硬化剤(商品名:MEH7851、明和化成製、当量212、平均n=10、軟化点=73度)に代えたこと以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2のエポキシ樹脂組成物を作製した。
MEH7851
【化19】

【0045】
(比較例1)
三口フラスコ中で、2官能の結晶性エポキシ化合物(商品名:YL6121H、ジャパンエポキシレジン製、エポキシ当量175)100質量部、及び、下記式で表されるDHBP(ジヒドロキシビフェニル)28.53質量部を仕込み(当量93)、さらに、固形分が50質量%となるようにメチルエチルケトン128.53質量部を加えて、還流がかかるように温度設定した後に撹拌を行う。YL6121H及びDHBPが溶解したのを確認し、12時間撹拌反応を行った後、室温冷却することで、比較例1のエポキシプレポリマーを合成した。このエポキシプレポリマー溶液中に、ビフェニルアラルキル型硬化剤(商品名:HE200C、エアウォーター製、当量212、平均n=1.2、軟化点=75度)28.15質量部(当量比0.5)、及び硬化触媒(2−エチル−4−メチルイミダゾール、略号:2E4Mz、四国化成製)0.3355質量部を混ぜ合わせ、均一に分散させることにより、比較例1のエポキシ樹脂組成物を作製した。
DHBP
【化20】

【0046】
(比較例2)
硬化剤を、ビフェニルアラルキル型硬化剤(商品名:MEH7851、明和化成製、当量212、平均n=10、軟化点=73度)に代えたこと以外は、比較例1と同様に処理して、比較例2のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0047】
<半硬化物及び硬化物>
上記の操作で得られた実施例1及び2のエポキシ樹脂組成物をPETフィルム上に塗布し、これを100℃で15分間の乾燥処理を行い、溶媒除去を行うと共にBステージ化させることにより、実施例1及び2の半硬化物を作製した。得られたBステージ状態の半硬化物を所定の金型に詰め、これをハンドプレス機を用いて185℃25MPaで15分間のプレスを行い、その後、185℃で3時間アフターキュアを行うことにより、実施例1及び2の硬化物を作製した。
【0048】
上記の操作で得られた比較例1及び2のエポキシ樹脂組成物をPETフィルム上に塗布し、これを100℃で30分間の乾燥処理を行い、溶媒除去を行うと共にBステージ化させることにより、比較例1及び2の半硬化物を作製した。得られたBステージ状態の半硬化物を所定の金型に詰め、これをハンドプレス機を用いて185℃25MPaで15分間のプレスを行い、その後、185℃で3時間アフターキュアを行うことにより、比較例1及び2の硬化物を作製した。
【0049】
表1に、実施例1及び2、並びに、比較例1及び2のエポキシ樹脂組成物及び硬化物の物性を評価した結果を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
なお、評価方法は、以下の通りである。
硬化物の熱伝導率測定
硬化物を1mmφの円盤状に打ち抜き、測定用サンプルを作成する。得られた測定用サンプルを、熱伝導率測定装置(商品名:TCシリーズ、アルバック理工製)を用いて、熱伝導率の測定を行う。比熱はサファイアを標準サンプルとしてDSCにて測定を行い、下記式(1)に測定値を入れることで、熱伝導率の計算を行った。
λ=α・Cp・r …(1)
α:熱拡散率
Cp:比熱
r:密度
【0052】
また、図1及び2に、実施例1及び比較例1の硬化物を、偏光顕微鏡(商品名:OPTIHOT、株式会社ニコン製)を用いて直交ニコル下で観察した結果を示す。その結果、比較例1の硬化物では、シュリーレン状のネマチック液晶が観察される一方で、実施例1の硬化物では、スメクチック液晶が観察されることが判明した。このことから、3核体ビスフェノール用いたエポキシプレポリマーは、これを用いていないエポキシプレポリマーに比して、比較的に秩序度の高い液晶相が形成されていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明した通り、本発明のエポキシプレポリマー、並びに、これを用いたエポキシ樹脂組成物、硬化物、半硬化物、プリプレグ及び複合基板は、熱伝導性に優れるので、高熱伝導性が要求される電子機器材料の分野において、電子部品搭載基板、放熱シート、絶縁材料等のモジュール及び電子部品として、広く且つ有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の硬化物の偏光顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の硬化物の偏光顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と、
下記式で表される3核体ビスフェノールと
【化1】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
を反応させることにより得られる、エポキシプレポリマー。
【請求項2】
前記3核体ビスフェノールが、下記式で表されるアルキル1置換の3核体ビスフェノールから選択される少なくとも1種である、
【化2】

(式中、R,R,Rは、アルキル基である。)
請求項1に記載のエポキシプレポリマー。
【請求項3】
前記メソゲン骨格が、下記式で表される、
【化3】

(式中、R21,R22,R23,R24は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、kは2以上の数である。)
請求項1又は2に記載のエポキシプレポリマー。
【請求項4】
前記エポキシ化合物が、ビフェニル骨格と2個以上のエポキシ基とを有するグリシジルエーテル類である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシプレポリマー。
【請求項5】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化4】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化5】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を、硬化させて得られる、
硬化物。
【請求項7】
スメクチック液晶を呈する、
請求項6に記載の硬化物。
【請求項8】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化6】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を、半硬化させて得られる、
半硬化物。
【請求項9】
芯材と、
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化7】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を半硬化させて得られる半硬化物と
を少なくとも有する、プリプレグ。
【請求項10】
メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と下記式で表される3核体ビスフェノールとを反応させることにより得られるエポキシプレポリマー、及び、硬化剤を含有する、
【化8】

(式中、R,R,R,R,R,R,R,R,R,R10,R11,R12は、それぞれ水素原子又はアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはアルキル基である。)
エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物と、
硬化物の一面または両面に積層された金属層と、
を有する複合基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84042(P2010−84042A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255768(P2008−255768)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】