説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】 反応性樹脂層との接着性に優れ、低温で低湿度の条件下でも反応性樹脂層と十分な接着性を示し、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物表面に樹脂層を積層する際のプライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂および硬化剤を含み、エポキシ樹脂全体の重量に対して水を0.1〜20重量%含有するエポキシ樹脂組成物。エポキシ樹脂と水を含む硬化剤を混合することにより得られるエポキシ樹脂組成物は好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、コンクリート、自然石、セラミックなどの構造物の表層に樹脂層を積層する際のプライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、反応性樹脂を積層する際の被接着性に優れており、プライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表面には、防水、防食、剥落防止などの目的で樹脂層が形成されることがある。これらの樹脂としてはポリウレア、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂などが使用されている。中でも、ポリウレア、ポリウレタンは、幅広い環境温度において強靭で破壊しにくく、他の樹脂では補強繊維シートを必要とするような用途でも、単独で使用できることがあり、高性能の被覆樹脂として注目されている。
【0003】
このような樹脂層を有する表面構造体を構成するときに、接着力を確保し、ピンホール生成を防止する目的で、通常プライマーが用いられる。プライマーとしては、ポリウレア、ポリウレタンを樹脂層とする場合、溶剤系ウレタンプライマー、溶剤系エポキシプライマーなどが使用されている。
【0004】
溶剤系プライマーでは溶剤が大気中に放出されるため、環境問題の観点からその使用には制約があった。また、構造体がコンクリート構造体の場合には、表面には、細かい孔が存在するため、従来の溶剤系プライマーではコンクリート表面に塗膜を完全に形成させることは困難であった。そこで本出願人は、コンクリートなどの構造物に使用できる無溶剤系エポキシ樹脂プライマーを提案した(例えば特開2005−187683号公報)。
【0005】
構造体表面に樹脂層を形成させる施工現場では、プライマーは全ての季節で施工可能であることが好ましいが、無溶剤エポキシ樹脂を現場施工のプライマーとして使用する場合は、低温、低湿度の条件でプライマーを塗布し、硬化後に樹脂を積層すると、プライマーの被接着性が十分でなく、必要な接着性が得られない場合があった。冬期の気象条件では、低温でありかつ低湿度となる場合も多く、接着性確保のため工事に制約を生じており、このような気象条件においても問題なく積層可能な被接着力に優れるプライマーが求められていた。
【0006】
本発明者らは、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表面に樹脂層を形成させるのに、低温で低湿度の条件下でも十分な接着力を有するプライマーに好適なエポキシ樹脂の開発に鋭意努力した結果、本発明に到達したものである。
【0007】
【特許文献1】特開2005−187683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、反応性樹脂層との接着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明は、低温で低湿度の条件下でも反応性樹脂層と十分な接着性を示すエポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明は、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物表面に樹脂層を積層する際のプライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂に成分として水を含む組成物をプライマーとして使用することにより0℃〜40℃、湿度10〜100%といった低温、低湿度の条件を含む広範囲な環境温度で十分な接着力を有する積層体が得られることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂および硬化剤を含み、エポキシ樹脂全体の重量に対して水を0.1〜20重量%含有するエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0010】
前記エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂と水を含む硬化剤を混合することにより得られるエポキシ樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
【0011】
前記硬化剤が、脂環式ポリアミンまたはその変性品である前記エポキシ樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
【0012】
前記エポキシ樹脂組成物が、その100重量部に対し、シランカップリング剤を0.1〜5重量部の割合で含有するエポキシ樹脂組成物は、本発明の好ましい態様である。
【0013】
本発明は、金属構造体、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に適用できる前記したエポキシ樹脂組成物からなるプライマーを提供する。
【0014】
また本発明は、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上に硬化性樹脂組成物を供給して樹脂層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法を提供する。
【0015】
前記硬化性樹脂組成物は、ポリウレタン、ポリウレア、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などから選ばれる組成物であるが、ポリウレタンまたはポリウレアを含む組成物である前記表面構造体の構築方法は、本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、反応性樹脂層との接着性に優れたエポキシ樹脂組成物が提供される。
本発明により、低温で低湿度の条件下でも反応性樹脂層と十分な接着性を示すエポキシ樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物表面に樹脂層を積層する際のプライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物が提供される。
さらに本発明によって、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上に硬化性樹脂組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレアなどの樹脂層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、エポキシ樹脂および硬化剤を含み、エポキシ樹脂全体の重量に対して水を0.1〜20重量%含有するエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、金属構造体、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に適用するプライマーとして好適に使用できるものである。本発明のエポキシ樹脂をプライマーとして使用することにより、温度0℃〜40℃、湿度10〜100%の条件にて十分な接着力を有する積層体を得ることが可能となる。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物からなるプライマーが、コンクリートなどの構造物の表層に浸透してコンクリート下地及び樹脂層と強固に接着する。またコンクリート表面が湿潤状態にある場合においても、本発明のエポキシ樹脂プライマーとシランカップリング剤を併用することによって同様の性能を発現できる。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂プライマーは、有機溶剤を希釈剤として使用しない無溶剤型とするのが好ましい。無剤溶剤エポキシ樹脂プライマーとは、粘度調整の目的などで使用される有機溶剤を実質的に含有しないプライマーをいう。無溶剤エポキシ樹脂プライマーを使用することによって、大気中に放散される成分が少ないので、有機溶剤による健康及び環境への懸念が低減され、安心して作業することができるとともに、プライマーを適用した構造体自体の環境への懸念も低減することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂全体の重量に対して水を0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜7重量%、より好ましくは0.3〜5重量%含有する。水は主剤および/または硬化剤に加えることができるが、硬化剤に加えることが好ましい。
主剤と硬化剤に異なる成分を配合するなどして、2液を混合したときに化学反応により水を生成させて、生成した水を0.1〜20重量%含むようにすることもできる。上記硬化剤に水を加える態様がより好ましい。
【0022】
水を加えるときに相溶化剤を加えることができる。相溶化剤としては、親水性の有機物で硬化剤の成分と反応しない物質であればよい。相溶化剤の例として、グリセリン、エチレングリコール、ポプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミンなどを挙げることができる。中でもトリエタノールアミンが好ましい。相溶化剤の量はエポキシ樹脂全体の重量に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜7重量%、より好ましくは0.3〜5重量%であることが望ましい。
【0023】
エポキシ樹脂プライマーとしては、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液を主剤(A液)とし、その硬化剤を主成分とする硬化剤液(B液)とからなる2液型のものを挙げることができる。
【0024】
樹脂液(A液)と硬化剤液(B液)の両液を混合した後の組成物において、作業性およびコンクリート表層への浸透性の観点から、B型粘度計により測定した20℃における粘度が、20〜5000mPa・s、好ましくは50〜3000mPa・sの範囲内にあるものが好ましい。
【0025】
A液としては、主剤であるエポキシ樹脂と共に、必要に応じ反応性希釈剤、チクソトロピー性付与剤、表面張力低下剤、カップリング剤などが配合される。
【0026】
エポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂、例えば、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル;グリシジルアミン型エポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン;線状脂肪族エポキサイド、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油;脂環族エポキシサイド、例えば、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレートなどが挙げられる。好ましくは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のような粘度の低い液状エポキシ樹脂であり、この樹脂は、耐薬品性に優れ、又環境上好ましいものとしても使用される。
【0027】
A液に配合することが可能な反応性希釈剤としては、多価アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノ又はジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノ又はジグリシジルエーテル、炭素数が8以上、さらには10以上の長鎖アルキレングリコールのモノ又はジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。反応性希釈剤としては、そのほか、オクチレンオキサイドのようなオレフィンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、3−(ペンタデシル)フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジペンテンモノオキサイド、α−ピネンオキサイド等のモノエポキシ化合物をはじめとする低粘度のモノまたはポリエポキシ化合物を挙げることができる。
【0028】
A液に使用可能なチクソトロピー性付与剤としては、ケイ酸系(微粒子無水ケイ酸ないしヒュームドシリカ)、含水ケイ素マグネシウム系(セピオライト、クリソスタイル等)、ケイ酸アルミニウム系(モンモリロナイト系ベントナイト、ゼオライト等)などの無機化合物、層間に有機分子を吸着させた有機ベントナイトのような有機化した無機化合物、ポリヒドロキシカルボン酸またはそのアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ジベンザルソルビット、ある種の界面活性剤などの有機化合物などを例示することができる。
【0029】
A液に使用可能な表面張力低下剤としては、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、シリコーン変性ポリアクリレート、ポリシロキサンなどを挙げることができる。上記チクソトロピー性付与剤の中にも表面張力低下作用を有するものがあるので、そのチクソトロピー性付与剤を表面張力低下剤として兼用することもできる。
【0030】
A液に配合可能なカップリング剤としては、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、クロムカップリング剤、有機リン酸カップリング剤などが挙げられるが、とくにシランカップリング剤の使用が好ましい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの不飽和基又はエポキシ基含有珪素化合物などを挙げることができる。これらの中ではとくにエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用すると、コンクリート表層が湿潤状態にある場合においても、優れた特性を有するプライマー層を形成させることができるので好ましい。
【0031】
A液の配合組成として、例えばエポキシ樹脂及び反応性希釈剤の合計量を100重量部とするときに、エポキシ樹脂の割合を60〜100重量部、好ましくは65〜90重量部に対し、反応性希釈剤を40〜0重量部、好ましくは35〜10重量部の割合とし、またエポキシ樹脂及び反応性希釈剤の合計量を100重量部に対し、チクソトロピー性付与剤を0〜10重量部、表面張力低下剤を0〜3重量部、カップリング剤を0.1〜5重量部となるような割合とすることができる。
【0032】
本発明のB液として好ましく使用される硬化剤は、常温で液状である硬化剤であって、さらに好ましくは常温硬化型の硬化剤である。液状でかつ常温硬化型の硬化剤として、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、ポリアミドポリアミン又はポリメルカプタン等があるが、本発明ではこれらの中で、特に脂環式ポリアミン、及びその変性品が好ましい。具体的には、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン(いわゆる環状脂肪族ポリアミン)及びその変性化合物である。この変性化合物としては、エポキシ樹脂を付加反応させたものの他、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの付加反応物、アクリロニトリルの付加反応物又はマンニッヒ付加ポリアミン型硬化剤が挙げられる。これらの液状ポリアミンは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
固体である芳香族ポリアミン等は、本発明の効果を阻害しない範囲で、液状ポリアミンに併用してもよい。
【0033】
上記硬化剤液のB液にも、先に述べたチクソトロピー性付与剤、表面張力低下剤、カップリング剤などを配合しておくこともできる。例えばカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有珪素化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有珪素化合物などを配合することができる。
【0034】
また、A液及びB液の一方あるいは双方に、必要に応じ可塑剤、軟化剤をはじめとする粘度低下ないし相溶性向上のための添加剤を含有させることができる。そのほかにも、エポキシ樹脂接着剤に用いられる種々の添加剤を含有させることもできる。
【0035】
本発明のエポキシ組成物は、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に樹脂層が積層されて形成されている表面構造体を構築する際のプライマーとして好適に使用されるものである。本発明のエポキシ樹脂組成物をプライマーとして使用することにより5℃〜40℃、湿度10〜100%の条件でも十分な接着力を有する積層体が得られる。
【0036】
また、本発明によれば、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に、本発明のエポキシ樹脂に成分として水を含む組成物からなるプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上にポリウレタンまたはポリウレアなどの硬化性樹脂組成物を供給して樹脂層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法が提供される。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂からなるプライマー層を形成させる方法及び樹脂層を形成させる方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜選択して採用することができる。
【0038】
コンクリート構造物表面にエポキシ樹脂プライマーを塗布するに当って、A液とB液が配合される。A液とB液の配合割合は、使用するエポキシ樹脂や硬化剤の種類やその含有量などによっても異なるが、エポキシ当量/活性水素当量の比に基づく必要量に、実験的に定めた最適量を参考にして決めればよく、例えばA液100重量部に対し、B液10〜100重量部、とくに20〜80重量部となるような割合で使用することができる。
【0039】
エポキシ樹脂や硬化剤、あるいはその他添加剤の種類及び配合量を適宜選択することにより、A液とB液の混合後の20℃における粘度が20〜5000mPa・s、好ましく50〜3000mPa・sとなるように調製することが好ましい。
【0040】
本発明の表面構造体の構築を、コンクリート構造物に適用する場合、屋上防水、地下構造物の防水、橋梁の床版防水、橋梁の桁端部防水、上水道関連施設の防水、下水道関連施設の防食、用水路表面の保護・補修、取水ダム水叩き部の保護・補修、塩害防止コーティング、アルカリ骨材反応抑制コーティング、凍害防止コーティング、表面剥落防止などに好ましく適用できるが、特にコンクリート構築物の表面剥落防止に顕著な効果を発揮するので、本発明の最も好ましい態様である。
【0041】
本発明の無溶剤エポキシ樹脂プライマーとしてはまた、コンクリート構造物表層が湿潤状態にあるようなものに塗布する場合には、前述のシランカップリング剤を併用する方法に加え、エポキシ樹脂及び/又は硬化剤にポリエーテル骨格のような親水性基を有するものを少なくとも一部に使用するのがよい。このような混合液を、はけ塗り等の手段によりコンクリート構造物表層に塗布することにより、所望の引張強度を有するプライマー層を形成させることができる。プライマー層の層厚みとしては、0.02〜0.4mm程度が好適である。このようなプライマー層を有することにより、コンクリート構造物とポリウレタン又はポリウレア層を強固に接着させることができると共に、後記するポリウレタン又はポリウレアと積層構造にすることより、−20〜60℃の範囲において、コンクリート片の変位に追随し、相応の応力に耐えることができる表面構造体を形成することができる。
【0042】
本発明のコンクリート表面構造体の樹脂層を構成する樹脂は、ポリウレタン、ポリウレア、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる.特に速硬化形のポリウレタンまたはポリウレアに対して本発明の効果が顕著に現れる。
【0043】
本発明で使用されるポリウレタンまたはポリウレアとしては、脆化温度が−25℃以下、とくに−30℃以下のものが好ましい。ポリウレタン又はポリウレアとして上記のような性状のものを使用することにより、−20〜60℃の範囲において、コンクリート片の変位に追随し、相応の応力に耐えることができる表面構造体を形成することができる。
【0044】
ポリウレタンまたはポリウレアとして具体的には、イソシアネート基を2個以上有するポリウレタンプレポリマーと水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する硬化剤によって形成させることができる。
【0045】
このようなウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する化合物とを反応させることによって得ることができる。とくに活性水素化合物として、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールあるいはその他のポリオール等を1種又は2種以上組み合わせて形成させたウレタンプレポリマーが好適である。
【0046】
ウレタンプレポリマーの調製に使用できる上記ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類;p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;上記各ポリイソシアネートをカルボジイミド変性又はイソシアヌレート変性したもの等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して用いることができる。好ましくは、取り扱い易さの点から2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類が用いられる。
【0047】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコールなどの他に、活性水素を二個以上有する低分子量活性水素化合物、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類等の一種又は二種以上の存在下でプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダム共重合体を挙げることができる。
【0048】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なポリエステルポリオールとしては、例えば多塩基酸と多価アルコールを脱水縮合させて得られる重合体;ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの縮合体;ラクトンの開環重合体等が好適に用いられる。上記多塩基酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸、等を挙げることができる。また多価アルコールとしては、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール類;グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類が用いられ得る。より具体的には両末端がジオール成分であるポリエチレンアジぺート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)、ポリ(ヘキサメチレングリコール−1,6−カーボネート)、ポリカプロラクトンなどを例示することができる。
【0049】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なその他のポリオールとしては、例えばアクリルポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール、ヒマシ油の誘導体、トール油の誘導体、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール等の他、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオール等も好適に用いられる。
【0050】
これらポリオール化合物としては、数平均分子量が100〜10,000、とくに300〜5000のものが好ましく、所望に応じ単独であるいは二種以上混合して用いることができる。
【0051】
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基1モルに対して、ポリイソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基が1モルを越える割合で、すなわち、化学当量比(NCO/OH)が1を越える配合として、ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを、必要に応じて加熱して、反応させることで得ることができる。このようなウレタンプレポリマーは、通常、その分子両末端にイソシアネート基を有する。ウレタンプレポリマーとして、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基とポリイソシアネート化合物の中に含まれるイソシアネート基の化学当量比(NCO/OH)を1.6〜20の割合でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、23℃において液状を呈するものが、作業性、硬化物の物性等といった点からより好ましい。
【0052】
本発明のコンクリート表面構造体を形成するポリウレタン又はポリウレアは、上記ウレタンプレポリマーを、必要に応じその他添加剤を配合した硬化性組成物として、硬化剤によって硬化させることによって形成させることができる。
【0053】
硬化剤としては、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。例えば水;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1、6−へキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−トリヒドロキシブタン、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、フラクトース、キシリトール、アラビトール、ソルビトール及びマンニトールなどの多価アルコール;エタノールアミンのような低分子アミノアルコール;アンモニア、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレエンヘキサミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、3,3′−ジクロロ−4、4′−ジアミノ−ジフェニルメタンなどの低分子ポリアミン化合物、また先に挙げたウレタンプレポリマーの調製の際に使用できる、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド又はその混合物を反応させて得られるポリエーテル末端に有するヒドロキシル基をアンモニアと反応させてアミノ基に置換することによって得られるポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミンなどのポリエーテルポリアミンを挙げることができる。これら硬化剤の中では、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンを使用することが好ましいが、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンに他の1種類以上の低分子ポリオール又は低分子ポリアミンを組み合わせて使用することもできる。これら硬化剤は、水以外の場合には、ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基1モルに対して、低分子化合物中の活性水素が、約0.8モル以上の割合、好ましくは約0.95〜1.2モルであることが好ましい。
【0054】
ポリウレタンには、目的物に施工後、ポリウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と大気中の水分とを反応させることにより硬化させる一液型と、ポリウレタンプレポリマーを含む主剤とポリオールなどの硬化剤とを、施工時混合して硬化させる二液型とがある。一液型ポリウレタンは施工が簡単であることから、好適に利用できるポリウレタンの例である。本発明においては、二液型ポリウレタンも好適に使用することができる。
【0055】
一液型ポリウレタンは湿気硬化性といわれており、ポリイソシアネートと湿気(水分)が反応して、イソシアネートと水との反応物の脱炭酸によって生成したアミンが、残りのポリイソシアネートと反応し硬化する反応を利用したもので、湿気硬化性組成物として利用される(特開平4−279620号公報参照)。また、英国特許1064841、ドイツ特許3607996A、特開平11−335650号公報などに記載されたような、ポリアルジミン、ポリケチミン、ポリエナミンなどとポリイソシアネートとからなる湿気硬化性組成物を一液型ポリウレタンとして利用することもできる。
【0056】
ウレタンプレポリマー及び硬化剤のほかに、任意に配合することができる添加剤としては、可塑剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、硬化促進触媒、老化防止剤などを例示することができる。
【0057】
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルの他、リン酸エステル、ノルマルパラフィン、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン、またはステアリン酸メチルエステル、パルミチン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステル、牛脂脂肪酸メチルエステル、ヌカ脂肪酸メチルエステル、植物脂肪酸メチルエステル、パルミチン酸ブチルエステル及び植物脂肪酸ブチルエステルなどの脂肪酸エステル及びその他各種液状成分が挙げられ、これらは単独または2種以上混合して用いられ得る。
【0058】
界面活性剤としては、消泡剤、顔料や充填剤の湿潤分散剤、乳化剤、粘性改良剤などの特性に応じて各種界面活性剤が単独もしくは二種以上混合して添加され得る。
【0059】
硬化物を着色するために、顔料としてはアゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、ベンガラ等各種無機顔料を用いることができる。
【0060】
充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、ケイ藻土、及びこれらを脂肪酸や脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理したもの等を挙げることができる。
【0061】
ウレタンプレポリマーと硬化剤の反応を促進するための硬化促進触媒としては、N−アルキルベンジルアミン、N−アルキル脂肪族ポリアミン、トリエチレンジアミン、N−アルキルピペラジン、N−アルキルモルホリン、ジモルホリノジエチルエーテル、オクテン酸錫やジブチル錫ジラウレート、有機酸鉛塩または有機酸ビスマス塩のような有機金属化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは二種以上混合して用いられ得る。速硬化型のポリウレタンには、有機酸鉛塩または有機酸ビスマス塩を使用することが好ましく、環境への負荷を考慮すると有機酸ビスマス塩を使用することがより好ましい。有機酸ビスマス塩としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸およびこれらの2種以上を主成分とする樹脂酸ビスマスなどの脂環族系有機酸のビスマス塩、安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などの芳香族系有機酸のビスマス塩、オクチル酸、ネオデカン酸、ネオドデカン酸などの炭素原子数8〜20の脂肪酸ビスマス塩が挙げられる. また、有機酸ビスマス塩を使用する場合には更に助触媒のような効果を示す有機酸を加えてもよい。係る有機酸としては、安息香酸、フタル酸、o−クロロ安息酸等の芳香族カルボン酸、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。硬化促進触媒および助触媒は、硬化剤に配合され、好ましくは2−エチルヘキサン酸が、ポリオールとの相容性に優れ好ましい。
【0062】
老化防止剤はポリウレタン又はポリウレアの層を、光、酸素、熱等から保護するために用いられ、老化防止剤として一般的に用いられるものには光安定剤や酸化防止剤等があり、光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ヒンダードアミン系、ニッケル系等が挙げられる。また、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等が挙げられる。
【0063】
本発明における好ましい態様であるコンクリート表面構造体は、コンクリート構造物に形成させたエポキシ樹脂プライマー層上に、上記のようなウレタンプレポリマー、硬化剤及び任意に配合される添加剤からなる硬化性組成物を塗布し、硬化させることによって、ポリウレタン又はポリウレアの0.3〜10mm、好ましくは0.5〜3mmの層を形成させることによって構築される。塗布方法はスプレー塗布、はけ塗りなど任意の方法によって行なうことができるが、短時間で施工が可能であるところから、スプレー塗布によるのが好ましい。速硬化型のポリウレタンまたはポリウレアの積層は、通常専用吹き付け機にて先端衝突混合ガンを使用して行なうのが好ましい。
【0064】
ウレタンプレポリマー、硬化剤及び任意に配合される添加剤からなる硬化性組成物は、塗布作業性を考慮すると、コテ塗り等スプレー装置を使わずに手作業又はこれに準ずる方法で塗布する場合には、適宜粘度を調製して行なうことが好ましい。またウレタンプレポリマーの分子量、硬化剤や硬化促進触媒の種類、添加量等を選択することによって、23℃においてJIS K5600−1−1で規定される指触乾燥時間が、2液衝突混合型スプレー装置を使用する場合は1〜120秒となるように、また手作業又はこれに準ずる方法で塗布する場合は10〜200分となるように、それぞれ調製するのが好ましい。さらにウレタンプレポリマーや硬化剤の種類、及びその他添加剤の種類や配合量によって、引張強度、引張破断伸び、脆化温度等が所望の値となるように調製することができる。
【0065】
本発明のコンクリート表面構造体は、上記のようなエポキシ樹脂プライマー層とポリウレタン又はポリウレアの層との積層構造とすることにより、繊維シートを使用することなく、充分な剥落防止効果を発揮することができる。
【0066】
上記のごとく構築された表面構造体の耐候性、その他の性質を付与する目的で、ポリウレタン又はポリウレアの層の表面にトップコート層を設けてもよい。このようなトップコート層として、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはこれらの変性樹脂などを使用することができる。トップコート層としては、例えば0.05〜0.4mm程度の厚みに形成するのが効果的である。また上記ポリウレタン又はポリウレアの層を保護する目的で、ポリウレタン又はポリウレアの層の表面に、あるいはトップコート層の表面に、直接又はプライマー層を介して、厚みが2mm程度以下、好ましくは1〜2mm程度の保護層を設けることができる。保護層は、上記ポリウレタン又はポリウレアの層への接着性が良好で、通常の改修サイクルでは劣化せず、上記表面構造体の保護の目的を果たすものであれば材質を選ばないが、上記ポリウレタン又はポリウレアと同じ材料を使用することができる。この場合は改修で保護層を除去するときに、表面構造体における上記ポリウレタン又はポリウレアの層と保護層の相違が明確となるように、両者を異なる色に着色しておくのがよい。このような保護層を設ける場合には、さらにその上に上記のようなトップコート層を設けることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら制限されるものではない。
【0068】
(実施例1)
エポキシプライマーの調整
液状エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(エピコート807:ジャパンエポキシレジン(株)品)、反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル(EX212:ナガセケムテックス(株)品)、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーティング・シリコーン(株)品)を使用し、表1に示す配合で計量したものを電動撹拌機にて十分撹拌してプライマーの主剤とした。
硬化剤として、脂環式の親水性ポリアミン(ダイトクラールX-5663H:大都産業(株)品)に精製水とトリエタノールアミンを表1に示す配合で計量したものを電動撹拌機にて十分撹拌してプライマーの硬化剤とした。
【0069】
接着試験
JIS A 5304に規定される30cmコンクリート舗装用平板をサンダー処理した面に、1)で調整したエポキシ樹脂の主剤と硬化剤を重量比で2:1で混合したプライマーを、ローラーにて200g/mの割合で塗布した。 そのまま一定の温度及び湿度にて24時間保持し、プライマー塗布面に樹脂層としてポリウレタン(リムスプレーF1000:三井化学産資(株)製)をガスマー社 H-2000吹付け機にて2mm厚にて塗布した。
一定温度で7日保持した後、JIS A 6209に準拠して4×4cmの金属冶具を貼り付け、垂直方向への接着試験を行った。プライマー塗布時の温度および湿度、ポリウレタン吹付け時の温度および湿度の条件と接着試験結果を表1に示す。接着強度はすべて、1.5N/mmを示し、下地コンクリート層またはプライマー層が破壊した。プライマーとポリウレタンの界面での剥離は認められなかった。
【0070】
(実施例2)
実施例1のポリウレタンの代わりにポリウレア(スワエールA-100)を樹脂層として使用し、実施例1と同様に接着試験を行なった。結果を表2に示す。接着強度はすべて、1.5N/mmを示し、下地コンクリート層またはプライマー層で剥離した。プライマーとポリウレタンの界面での剥離は認められなかった。
【0071】
(比較例1)
実施例1の硬化剤の代わりに、脂環式の親水性ポリアミン(ダイトクラールX-5663H:大都産業(株)品)を用い、実施例と同様に接着試験を行なった。この時、エポキシ樹脂塗布時の温度は6℃、湿度は25%、塗布後の24時間の保持時は、温度1〜8℃、湿度25〜55%、ポリウレタン塗布時の温度は5℃、湿度は30%であった。
接着試験結果は、接着強度0.8N/mmで、プライマーとポリウレタンの界面で剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により、反応性樹脂層との接着性に優れ、低温で低湿度の条件下でも反応性樹脂層と十分な接着性を示すエポキシ樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物表面に樹脂層を積層する際のプライマーとして好適に使用できるエポキシ樹脂組成物が提供される。
さらに本発明によって、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、エポキシ樹脂に成分として水を含む組成物をプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上に硬化性樹脂組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレアなどの樹脂層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法が提供される。
本発明のエポキシ樹脂に成分として水を含む組成物をプライマーとして使用することにより、0℃〜40℃、湿度10〜100%といった低温の条件を含む幅広い環境条件で十分な接着力を有する積層体を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂および硬化剤を含み、エポキシ樹脂全体の重量に対して水を0.1〜20重量%含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂と、水を含む硬化剤を混合することにより得られる請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前期硬化剤が、脂環式ポリアミンまたはその変性品であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂組成物が、その100重量部に対し、シランカップリング剤を0.1〜5重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
金属構造体、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に適用できる請求項1〜5のいずれかに記載されたエポキシ樹脂組成物からなるプライマー。
【請求項7】
金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上に硬化性樹脂組成物を供給して樹脂層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂組成物が、ポリウレタンまたはポリウレアを含む組成物であることを特徴とする請求項7に記載の表面構造体の構築方法。

【公開番号】特開2008−75033(P2008−75033A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258127(P2006−258127)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000175021)三井化学産資株式会社 (47)
【Fターム(参考)】