説明

エマルジョン粒子およびそれを用いたスクリーン印刷用マスクの作製方法

【課題】耐溶剤性に優れた樹脂層を形成するためのエマルジョン粒子、および樹脂層の突起、隔壁および埋まり等の欠陥のない均一な樹脂層を開口部の内壁に形成するスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供する。
【解決手段】開口部を有したスクリーン印刷用マスクに、芯重合体がブロック化されたイソシアネート基および活性水素基を含有する高絶縁性媒体中に分散したエマルジョン粒子、および、該粒子を電着することにより、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成するスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐溶剤性に優れたエマルジョン粒子およびそれを用いた開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、プリント配線基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。このプリント配線基板への電子部品の高密度実装化においては、プリント配線基板面に電子部品を実装するためにクリーム半田を印刷し、半田端子に電子部品を搭載した後にリフロー炉で加熱して半田付けを行う。上記クリーム半田の印刷方法としては、スクリーン印刷による工程が広く用いられている。一般的にスクリーン印刷は、パターン状の開口部が形成されたスクリーン印刷用マスクを印刷すべき被印刷基板の上面にセットし、スクリーン印刷用マスクのスキージ面にクリーム半田等のペースト材料を供給してスキージによって掻き寄せることによって、ペースト材料を開口部を通してパターン上に転写印刷する方法である。
【0003】
しかしながら、スクリーン印刷用マスクを用いてクリーム半田を印刷する際、パターンが高密度かつ高精細になると、クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性が悪化する。また、近年、環境面の問題からクリーム半田の素材も無鉛化の動きが高まっており、その対策の一環として、鉛を含まない鉛フリー半田がクリーム半田の素材として用いられるようになってきている。鉛フリーのクリーム半田は、従来のクリーム半田に比べ転写性に劣る傾向がある。クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性の悪化により、半田端子の突起や欠け、ひび割れ、抜け等の欠陥が発生し、歩留まり低下の大きな原因となっていた。
【0004】
このような問題を解決するために、スクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成したスクリーン印刷用マスクが提案されている。これによれば、樹脂を塗布することで開口部の内壁に樹脂層を形成し、内壁の凹凸を平滑とすることで、クリーム半田と内壁の摩擦が減少し、クリーム半田の抜け性を向上させている。また、開口部の内壁にクリーム半田とのはじき性または滑り性の良好な化合物(例えば、ポリシロキサン、フッ素樹脂、シリコン樹脂等)を形成することで、クリーム半田の抜け性を向上させている。しかしながら、樹脂層を内壁に形成する手段としては、ディップ法、スプレー法、刷毛塗り、スピンコート等が採用されており、これらの方法では、開口部の内壁に樹脂層を均一に形成することが困難であり、また、図8に示すような、樹脂層の突起9、隔壁10または埋まり11等の欠陥が発生してしまい、大きな問題となっている。(例えば、特許文献1〜6)。
【0005】
また、スクリーン印刷用マスクを繰り返し使用することにより、スクリーン印刷用マスクの開口部に付着して残存するクリーム半田が発生する。この際、アルコール類やプロピレングリコール類といった溶剤によって洗浄する必要が生じる。そのため、洗浄剤等の溶剤に耐えうる樹脂層の形成が必要であった。
【特許文献1】実開昭63―37256号公報
【特許文献2】特開平1−299088号公報
【特許文献3】特開平4―357093号公報
【特許文献4】特開平6―219070号公報
【特許文献5】特開平8−290686号公報
【特許文献6】特開2002―192850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐溶剤性に優れた樹脂層を形成するためのエマルジョン粒子、および樹脂層の突起、隔壁および埋まり等の欠陥のない均一な樹脂層を開口部の内壁に形成するスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは検討した結果、高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該該芯重合体がブロック化されたイソシアネート基および活性水素基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子で上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
また、上記活性水素基が水酸基であり、上記芯重合体が3級アミノ基を含有するとより好ましい。
【0009】
また、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部を有したスクリーン印刷用マスクに本発明のエマルジョン粒子を電着し、次に加熱によってブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、該イソシアネート基と活性水素基とを反応させることによって該樹脂層を形成することを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法で上記課題が解決されることを見出した。
【0010】
さらに、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部を有したスクリーン印刷用マスクのスキージ面に保護シートを貼り付ける工程、開口部の内壁および被印刷基板接触面に本発明のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子を加熱によってフィルム化する工程、保護シートを除去する工程、加熱によってブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ該イソシアネート基と活性水素基とを反応させる工程を含むことを特徴とスクリーン印刷用マスクの作製方法で上記課題が解決されることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
樹脂層をスクリーン印刷用マスクの開口部の内壁に形成するには、本発明のエマルジョン粒子を使用する。エマルジョン粒子は、正または負に帯電している。スクリーン印刷用マスクはステンレス等の金属材料で形成されているため、導電性を有しており、表面が同電位である。図11に示したように、スクリーン印刷用マスク1に対向するように電極12を設置し、スクリーン印刷用マスク1を接地して適正なバイアス電圧を印加すると、電界に従って帯電したエマルジョン粒子13がスクリーン印刷用マスク1方向に電気泳動する。電気泳動によって、スクリーン印刷用マスク方向に近づいてきたエマルジョン粒子は、電位が0に近いところから付着するため、接地したスクリーン印刷用マスクの表面を覆うようにしてエマルジョン粒子が付着する。そのため、電着法によるエマルジョン粒子の付着によっては、樹脂層の突起、隔壁および埋まり等の欠陥が生じない。一方、従来の樹脂層形成方式(例えば、ディップ、スプレー法)では、表面張力によって開口部のエッジ部に塗布液がたまる問題や、開口が鋭角のある形状である鋭角部分に塗布液がたまる問題や、塗布液の垂れや乾燥ムラの問題が発生し、均一な薄膜を形成することが難しい。水系の電着方式で樹脂層を形成する方法は、開口部の内部に空気が混入する問題があるほか、高絶縁性媒体を用いた場合と比較して所定の膜厚を形成するための消費電流が多く、生産性、省エネルギーの点で問題がある。
【0012】
本発明のエマルジョン粒子は、スクリーン印刷用マスクに電着する時には粒子形状であり、電着後にフィルム状に形状変化する必要がある。エマルジョン粒子をフィルム状に変形させるためには、加熱等の手段による。このため、エマルジョン粒子は、保存条件下で安定に粒子形状を保持でき、電着後には容易にフィルム化が可能であり、さらには樹脂層が溶剤に溶けない特性が必要である。本発明のエマルジョン粒子は、イソシアネート基がブロック化されていることで樹脂の分子量を低くできガラス転移温度が低い温度範囲に設定できる。よって、低温にて容易にフィルム化することができる。また、フィルム化した後にさらにガラス転移温度よりも高温の条件にて処理することでイソシアネート基が発生し、発生したイソシアネート基と活性水素基とが反応することで、樹脂層の架橋が起こり、耐溶剤性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係わる高絶縁性媒体としては、直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素およびこれらのハロゲン置換体が挙げられる。例として、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。商品名として、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(EXXON)、IP1620(商品名、出光石油化学(株))等がある。これらの高絶縁性媒体は単独もしくは混合して用いることができる。
【0014】
本発明に係わる分散剤は、単量体(M1)を重合して得られる高絶縁性媒体に可溶の重合体である。分散剤の質量平均分子量は、1000以上が好ましく、これ未満の分子量ではエマルジョン粒子の分散安定性が低下し、エマルジョン粒子の凝集、沈降が生じやすくなる。分散剤の分子量の上限は特に定められていないが、分子量が100万を超える場合には重合体溶液の粘度が上昇し、取り扱い難くなる。単量体(M1)としては、一般式化1もしくは化2で示されるような化合物を少なくとも50質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましい。これ以外の重合成分としては、下記の単量体(M2)やブロック化されたイソシアネート基を有する単量体や活性水素基有する単量体を、生成する分散剤の高絶縁性媒体に対する溶解度を損なわない範囲で含有させることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
(化1中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。また、連結基Tは−COO−基もしくは−CONH−基を表す)。
【0017】
【化2】

【0018】
(化2中、Rは炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。)。
【0019】
本発明に係わる芯重合体は、高絶縁性媒体に可溶である単量体(M2)の重合体であり、重合により該高絶縁性媒体に不溶となるものである。このような単量体(M2)の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル等の炭素数1から炭素数6までの脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニルエステル、或いはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の炭素数1から6までのアルキルエステル類又はアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、スチレンおよびその誘導体、ジビニルベンゼン、或いは、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。これ以外の重合成分としては、ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体や活性水素基有する単量体を含有させる。
【0020】
本発明のエマルジョン粒子は、ブロック化されたイソシアネート基を含有する。ブロック化されたイソシアネート基とは、イソシアネート基をブロック剤と反応させて得られ、加熱をすることでブロック剤が開裂しイソシアネート基が発生する官能基である。ブロック化されたイソシアネート基を芯重合体に含有させる方法は、ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体(M3)を芯重合体の単量体の一成分として使用するか、重合体の側鎖にイソシアネート基を形成した後にブロック剤と反応させる方法がある。ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p―エチルフェノール、p―tert―ブチルフェノール等のフェノール系、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセルソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系、アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系、その他イミド系、アミン系、イミダゾール系、ピラゾール系、尿素系、カルバミン酸系、イミン系、ホロドアルドキシム、アセトアルドキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ソーダ系、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系、ラクタム系等がある。
【0021】
ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体(M3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−ブチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−メチリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−プロピリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル等がある。
【0022】
芯重合体を合成する際の単量体(M3)の配合比率は、粒子の凝集等が発現しない範囲内で含有させることができ、芯重合体の全単量体100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内で使用することが好ましく、1〜30質量部の範囲内で使用することがより好ましい。1質量部より少ないと樹脂層の耐溶剤性が不足することがあり、30質量部より多いとエマルジョン粒子の凝集が発生しやすくなる。また、単量体(M3)を、分散剤の単量体として配合することも可能である。この場合、分散剤の高絶縁性媒体に対する溶解度を損なわない範囲内で配合することができ、芯重合体の全単量体100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のエマルジョン粒子は、活性水素基を含有する。活性水素基としては、イソシアネートと反応可能であれば特に限定されないが、例えば、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、シラノール基等が挙げられる。活性水素基を分散剤または/および芯重合体に含有させるためには、活性水素基を有する単量体(M4)を分散剤または/および芯重合体の単量体の成分として使用する。活性水素を含有する単量体(M4)としては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸−トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル酸―グリセリン、(メタ)アクリル酸−ペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。単量体(M4)の分散剤または/および芯重合体への配合比率は、粒子の凝集等が発生しない範囲内で含有させることができ、ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体(M3)の配合量1モルに対して、0.1〜10モルの範囲内で使用することが好ましい。
【0024】
本発明に係わる芯重合体は、3級アミノ基を含有することが好ましい。3級アミノ基を含有することで、エマルジョン粒子の分散状態が良好になり、また加熱時に開裂したイソシアネート基と活性水素基との反応がスムーズに進むという優れた効果が得られる。トリエチルアミン等の3級アミノ基を有する低分子化合物を芯重合体内に添加してもよいし、3級アミノ基を有する単量体(M5)を芯重合体の単量体の成分として使用してもよい。単量体(M5)としては一般式化3で示されるような化合物が挙げられる。単量体(M5)を芯重合体に配合する場合は、芯重合体の全単量体100質量部に対して0.01〜50質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
[化3中、Rは水素原子またはメチル基を、Aは−O−または−NH−基を、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
【0027】
本発明のエマルジョン粒子は、分散剤と芯重合体からなり、分散剤と芯重合体がウレタン結合によって結合していることが好ましい。分散剤と芯重合体をウレタン結合で結合する方法は、分散剤に水酸基を含有させたのち、イソシアネート基と重合性2重結合基を有する単量体のイソシアネート基と分散剤の水酸基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性2重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法、また、分散剤にイソシアネート基を含有させたのち、水酸基と重合性2重結合基を有する単量体の水酸基と分散剤のイソシアネート基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性2重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法等が挙げられる。分散剤と芯重合体がウレタン結合で結合されていることで、エマルジョン粒子の経時安定性を向上させることが可能となる。
【0028】
本発明のエマルジョン粒子の分散剤と芯重合体の配合比は、分散状態の維持の観点から、分散剤100質量部に対して、芯重合体が50〜5000質量部の範囲内であることが好ましく、さらには100〜2000質量部の範囲で使用することが好ましい。また、エマルジョン粒子のコールターカウンター法で測定した平均粒径は、樹脂層としての厚みの確保、分散状態の維持の観点から、0.05から1.0μmの範囲であることが好ましく、さらには0.1から0.6μmの範囲にあることが好ましい。
【0029】
本発明のエマルジョン粒子は、従来公知の重合方法によって作製することができる。例えば、アニオン重合あるいはカチオン重合等のイオン重合法、また、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を用いるラジカル重合法して得られるラジカル重合法、また、重付加あるいは重縮合反応による方法が挙げられる。
【0030】
本発明に係わるエマルジョン粒子は、電着することにより樹脂層を形成できる。この場合、粒子をプラスもしくはマイナスの荷電粒子とせしめ、適正な電界を印加しながらエマルジョン粒子を電着する。そのため、エマルジョン粒子の液に適当な電荷制御剤を添加することにより、該エマルジョン粒子に電荷を付与することとなる。電荷制御剤としては、例えば、特開平6−51567号公報等に示される化合物、またはホモゲノールL18(商品名、花王社製)等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤を用いることが可能である。また、電着特性に悪影響を及ぼさない範囲で着色剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0031】
本発明に係わる開口部を有したスクリーン印刷用マスクとは、スキージ面にペースト材をのせ、スキージで掻き寄せる事でクリーム半田等のペースト材を被印刷基板上に転写する事ができるものであれば、いずれの方式で作製したスクリーン印刷用マスクも使用する事ができる。例えば、ソリッドマスク、サスペンドマスク、または、メタルマスク(エッチング法、レーザー法、アディティブ法、機械加工法)等、いずれのものも使用可能である。材質は、電着可能であるために、導電性材料であることが好ましく、具体的には、ステンレス、ニッケル等の一般的なものを適用できる。また、スクリーン印刷用マスクの開口パターンについても特に制限はなく、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形および八角形等の多角形、その他、ひょうたん形、ダンベル形等の不定形等が挙げられる。
【0032】
本発明に係わる、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの例を図1〜7に示した。図1〜3は、スクリーン印刷用マスクとしてメタルマスクを適用した例である。図1は、開口部5の内壁のみに樹脂層2を形成したものである。図2は、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したものである。図3は、全表面に樹脂層2を形成したものである。図1および2のようにスキージ面3に樹脂層2が形成されていない場合、スキージが高い押し込み圧力で何回も接触すると、樹脂層2の耐久性が不足していると樹脂剥がれが発生することがある。剥がれた樹脂層2がペースト材と混入してしまうため、スキージ面3には樹脂層2が無い方が好ましい。図4〜7は、ソリッドマスクおよびサスペンドマスクのようなスキージ面3にメッシュ6を形成してなるスクリーン印刷板用マスクの例である。図4は開口部5の内壁および開口部のメッシュ6周囲に樹脂層2を形成したものである。図5はメッシュ6のスキージ面3以外の全表面に樹脂層2を形成したものである。図6および7は全表面に樹脂層2を形成したものである。樹脂層2を形成する前後における開口部5の開口面積の差を小さくするために、樹脂層2の厚みは、0.1μmから5μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが、0.1μmよりも薄くなると、スクリーン印刷用マスク1と樹脂層2との密着性が低下する場合がある。また、5μmよりも厚くなると均一な膜形成が困難となる場合がある。
【0033】
本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクを例にとって、工程順に図9〜12にて詳説する。まず、開口部5を有したスクリーン印刷用マスク(図9)に保護シート7を貼り付ける(図10)。次に、樹脂層2に用いられるエマルジョン粒子13を高絶縁性媒体中に分散させた液中にて、被印刷基板接触面4に対向するように電極12を設置する(図11)した。次に、スクリーン印刷用マスク1および電極12の間に適正な電位差を生じさせ、エマルジョン粒子13をスクリーン印刷用マスク1の方向へ電気泳動させ、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4へエマルジョン粒子13を付着させる。次に、スクリーン印刷用マスク1を液中から取り出し、高絶縁媒体を蒸発させる。次いで、電着法によって付着したエマルジョン粒子13を、加熱、圧力、光、水、溶剤等によってフィルム化させて定着させる(図12)。続いて、保護シート7を剥離する。次に、加熱によって、ブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、該イソシアネート基と活性水素基とを反応させることにより、樹脂層2を開口部の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクが作製できる(図2)。
【0034】
次に、アルカリ水溶液に溶解する性質を有する保護シートを使用した場合のスクリーン印刷用マスクの作製方法を説明する。まず、開口部を有したスクリーン印刷用マスクにアルカリ可溶性の保護シートを貼り付ける。次に、樹脂層に用いられるエマルジョン粒子を高絶縁性媒体中に分散させた液中にて、被印刷基板接触面に対向するように電極を設置する。次いで、スクリーン印刷用マスクおよび電極の間に適正な電位差を生じさせ、エマルジョン粒子をスクリーン印刷用マスクの方向へ電気泳動させ、開口部の内壁および被印刷基板接触面へエマルジョン粒子を付着させる。続いて、スクリーン印刷用マスクを液中から取り出し、高絶縁媒体を蒸発させる。電着法によって付着したエマルジョン粒子を、加熱、圧力、光、水、溶剤等によってフィルム化させて定着させた後、アルカリ水溶液によってアルカリ可溶性保護シートを溶解除去する。次に、加熱によって、ブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、該イソシアネート基と活性水素基とを反応させることにより、樹脂層2を開口部の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクが作製できる(図2)。
【0035】
本発明のエマルジョン粒子は、活性水素基が水酸基であることが好ましい。つまり、本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法において、アルカリ水溶液に溶解する性質を有する保護シートを使用した場合のスクリーン印刷用マスクの作製方法に適用した場合、フィルム化したエマルジョン粒子がアルカリ水溶液に溶けない性質を有することが必要である。この際、活性水素基として水酸基を使用することで、フィルム化したエマルジョン粒子のアルカリ水溶液への溶解性が、他の活性水素基(例えば、カルボキシル基等)と比較して非常に低くできる。
【0036】
本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部5の内壁にのみ樹脂層2が形成してなるスクリーン印刷用マスク(図1)の作製方法では、図13のように、開口部5と同じ位置が開口している保護シート(以下、非開口保護層8)をスクリーン印刷用マスク1の被印刷基板接触面4に形成して、その後、上記と同様にして、電着法によってエマルジョン粒子を付着させて作製できる。このような非開口保護層8の形成方法は、レーザーによって開口部を形成する方法、非開口保護層に感光性をもたせスクリーン印刷用マスクと同じパターンのフォトマスを利用して開口部のパターンを露光し現像処理等を行う方法、スクリーン印刷用マスクの開口部からアルカリ現像液を通して開口する方法等が適用できるが、スクリーン印刷板用マスクの開口部と同位置が開口している非開口保護層であればどのようなものでも適用できる(例えば、特許文献、特開2004−311867号公報、特開平3−57697号公報、特開2006―173597号公報)。
【0037】
また、本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法において、全表面に樹脂層2が形成してなるスクリーン印刷用マスク(図3、図6、図7)の作製方法は、保護シートを貼り付けないで電着処理を行うことで達成する。電着する際に、スクリーン印刷用マスクに対向する電極は、被印刷基板接触面側のみに設置してもよいし、被印刷基板接触面側およびスキージ面側の両方に設置しても良い。
【0038】
エマルジョン粒子を電着する方法は、図11のようにスクリーン印刷用マスクと電極の間に適正なバイアス電圧を印加する。例えば、スクリーン印刷用マスクと対向するように並列に並べた電極の間に挿入し、電極の上下からスクリーン印刷用マスクの両面に液を供給して電着する横水平搬送の装置(例えば、特開平6−224541号公報、特開2004−163605号公報等)や、スクリーン印刷用マスクを略鉛直に保持し液の入った槽内に浸した後、該スクリーン印刷用マスクの両側に略鉛直に対向して配置された電極で、略鉛直に該スクリーン印刷用マスクを固定して電着処理を施す装置(例えば、特開2002−132049号公報)等が、電着装置として適用可能である。
【0039】
本発明に係わる保護シートとは、スクリーン印刷用マスクに貼り付けることが可能であり、エマルジョン粒子を分散する高絶縁性媒体に触れることがあっても溶解せず、電着処理およびエマルジョン粒子の定着処理による加熱、加圧、光、水等の処理にさらされた後においても、容易にスクリーン印刷用マスクから剥離でき、剥離した後でも粘着物がスクリーン印刷用マスクに残存しないものであれば、いずれのものでも良い。例えば、エレップマスキングN−380(商品名、日東電工株式会社)、ペイントエース720A(商品名、日東電工株式会社)、SPV−K100(商品名、日東電工株式会社)、スコッチメッキ用マスキングテープ851A(商品名、住友3M株式会社)、スコッチ耐熱マスキングテープ214−3MNE(商品名、住友3M株式会社)、マスキングテープNo2311(商品名、ニチバン株式会社)等が挙げられるがこれに限定されるものではない。また、保護シートはアルカリ水溶液に溶解する性質を持っていてもよい。そのようなアルカリ可溶性の保護シートの成分としては、カルボン酸基、カルボン酸アミド基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホンイミド基、ホスホン酸基を有する単量体を重合してなる共重合体、及びフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。カルボン酸基を有する単量体の共重合体としては、スチレンとマレイン酸モノエステルとの共重合体、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそれらのアルキルエステル、アリールエステルまたはアラルキルエステルとの二元以上の共重合体が挙げられる。また、酢酸ビニルまたは安息香酸ビニルとクロトン酸との共重合体が挙げられる。フェノール樹脂中特に好ましいものは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、あるいはp−クレゾールとホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとを酸性条件下で縮合させたノボラック樹脂を挙げる事ができる。また、これらに、可塑剤、着色剤等を含有していてもよい。これらの成分を、キャリアフィルムの上に積層し、シート状にすることによって、ラミネーター等によって貼り付けが容易となる。キャリアフィルムとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。また、回路基板製造用のネガ型ドライフィルムフォトレジストも適用できる。具体的には、例えばデュポンMRCドライフィルム株式会社のリストン、日立化成工業株式会社のフォテック、旭化成エレクトロニクス株式会社のサンフォート等を使用することができる。
【0040】
アルカリ可溶性の保護シートを使用した場合、樹脂シートをアルカリ水溶液によって除去する方法は、スプレーまたはディップ等の方法が適用できる。アルカリ水溶液としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸および炭酸アルカリ金属塩、リン酸および炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物の水溶液、エタノールアミン類、エチレンジアミン、プロパンジアミン類、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物等を水に希釈したものが挙げられる。
【0041】
保護シートをスクリーン印刷用マスクに貼り付ける方法は、貼り付け面にむらや波打ちを生じさせることなく、空気やゴミを混入することなくできれば、何れの方法であっても良い。例えば、プリント基板用の熱ゴムロールを圧力で押し当てて熱圧着する装置を用いる。
【0042】
ブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、該イソシアネート基と活性水素基とを反応させるための加熱温度は、使用するブロック化されたイソシアネート基が90モル%以上開裂する温度以上であり、スクリーン印刷用マスクが耐えうる温度以下とすることが好ましい。使用する成分にもよるが、80〜400℃の範囲内であることが好ましい。80℃以下であると、エマルジョン粒子の保存安定性が悪化する場合がある。
【実施例】
【0043】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0044】
エマルジョン粒子の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコ内に、表1に示す(1)を入れ窒素置換した後、80℃に加熱し、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4.8質量部を添加した。温度を80℃のままで保ち、7時間反応させた。次に、65℃に温度を下げ、表1に示す(2)を添加し、温度を65℃のままで保ち、3時間反応させ、濃度33.5質量%の分散剤1〜3の溶液を得た。
【0045】
次に、攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコ内に、表2に示す量の分散剤、単量体、溶剤を入れ窒素置換した後、70℃に加熱し、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4―ジメチルバレロニトリル)を0.4質量部添加した。温度を70℃のままで保ち、8時間反応させて、実施例1〜7および比較例1〜3のエマルジョン粒子を合成した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
・ 1 IP1620;IPソルベント1620(商品名、出光石油化学(株)製)
・ 2 カレンズMOI;(商品名、昭和電工(株)製)、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
・ 3 DBU;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン
・ 4 カレンズMOI−BM;(商品名、昭和電工(株)製)、メタアクリル酸2−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、
・ 5 カレンズMOI−BP;(商品名、昭和電工(株)製)、メタアクリル酸2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル
【0049】
実施例1〜5および比較例1、2のエマルジョン粒子は良好に合成ができた。比較例3に示した、ブロック化されていないイソシアネート基を有する単量体(カレンズMOI、商品名、昭和電工(株)製)を芯重合体の単量体に使用した場合は、多量の沈殿物が発生し、良好なエマルジョン粒子が合成できなかった。得られた実施例1〜5および比較例1、2のエマルジョン粒子において、固形分1質量部に対して0.02質量部の電荷制御剤(オクタデシルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体;質量組成比 3/1、無水マレイン酸加水分解率 45%、質量平均分子量 1.3万)を添加した後、固形分濃度が1質量%になるようにIP1620(商品名、出光石油化学社製)で希釈し、粒子に正電荷を付与した。実施例1〜5および比較例1、2のエマルジョン粒子は、電荷制御剤を加えたのち、30日間放置したが、沈降は発生せず良好な分散状態であった。
【0050】
スクリーン印刷用マスクへの樹脂層の形成
厚さ80μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、スクリーン印刷用マスクを作製した。次に、図11に示す構造を有する電着装置を用いて、スクリーン印刷用マスクの全表面に、上記で作製した実施例1〜5、および比較例1、2のエマルジョン粒子をそれぞれ用いて、印加電圧120V、20秒間の条件により、電着した。次いで、IP1620(商品名、出光石油化学(株)製)を冷風で乾燥させた。次に、80℃3分の条件でエマルジョン粒子をフィルム状として定着させた。次に、実施例1〜5で作製したものを180℃2時間の条件下にさらし、ブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、イソシアネート基と活性水素基とを反応させた。一方、比較例1,2で作製したものも180℃2時間の条件下にさらした。開口部を顕微鏡にて観察したところ、樹脂層の突起、隔壁および埋まりがない、全表面に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクを作製することができた。
【0051】
実施例1〜5のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材としてクリーム半田を100回繰り返しスクリーン印刷したところ、クリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができた。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルと2−プロパノールの1/1混合溶剤で、半田ペーストを超音波洗浄したところ、樹脂層の膨潤は発生しなかった。一方、比較例1、2のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材としてクリーム半田を繰り返しスクリーン印刷したところ、20回の繰り返しであればクリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができたが、30回目では、樹脂の膨潤による剥がれが発生した。また、プロピレングリコールと2−プロパノールの1/1混合溶剤で、半田ペーストを超音波洗浄したところ、2分で樹脂層の膨潤が発生し、良好な印刷が行えなくなった。
【0052】
保護シートを用いたスクリーン印刷用マスクへの樹脂層の形成
厚さ80μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、スクリーン印刷用マスクを作製した。次に、ラミネーターを用いて、市販のドライフィルムフォトレジスト(サンフォートAQ2575、旭化成エレクトロニクス株式会社製)を80℃、0.1MPaの圧力で貼り付けた。次いで、図11に示す構造を有する電着装置を用いて、スクリーン印刷用マスクの開口部の内壁および被印刷基板接触面に、上記で作製した実施例1〜5、および比較例1,2をそれぞれ用いて、印加電圧120V、20秒間の条件により電着した。次いで、IP1620(商品名、出光石油化学(株)製)を冷風で乾燥させた後、80℃3分の条件で粒子をフィルム状として定着させた。次に、ドライフィルムフォトレジストのポリエチレンテレフタレート層を手で剥がしたのち、1質量部の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)にてスプレー圧0.1MPaの条件下、ドライフィルムフォトレジストを溶出除去した。この際、実施例4,5および比較例2のエマルジョン粒子で作製したものは、樹脂層にカルボキシル基を含有しているため、被印刷基板接触面の樹脂層が一部剥がれたが、内壁の樹脂層は残存していることを確認した。次に、水洗浄後、水分を冷風で除去した。次に、実施例1〜5で作製したものを180℃2時間の条件下にさらし、ブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、イソシアネート基と活性水素基とを反応させた。一方、比較例1,2で作製したものも180℃2時間の条件下にさらした。開口部を顕微鏡にて観察したところ、樹脂層の突起、隔壁および埋まりがない、開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクを作製することができた。
【0053】
実施例1〜5のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材としてクリーム半田を100回繰り返しスクリーン印刷したところ、クリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができた。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルと2−プロパノールの1/1混合溶剤で、半田ペーストを超音波洗浄したところ、樹脂層の膨潤は発生しなかった。一方、比較例1、2のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材としてクリーム半田を繰り返しスクリーン印刷したところ、20回の繰り返しであればクリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができたが、30回目では、樹脂の剥がれが発生した。また、プロピレングリコールと2−プロパノールの1/1混合溶剤で、半田ペーストを超音波洗浄したところ、2分で樹脂層の膨潤が発生し、良好な印刷が行えなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のエマルジョン粒子およびスクリーン印刷用マスクの作製方法は、広くスクリーン印刷の用途に適用可能であり、例えば、ペースト材としては、導電性材料、絶縁性材料、色材、封止材料、接着材料、レジスト材料、処理薬剤等を、スクリーン印刷によって任意の基材上にパターン形成を行う用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したメタルマスクの断面図。
【図2】開口部の内壁および被印刷基板接触面に形成したメタルマスクの断面図。
【図3】全表面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図。
【図4】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図。
【図5】開口部の内壁および被印刷基板接触面に形成したソリッドマスクの断面図。
【図6】全表面に樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図。
【図7】全表面に樹脂層を形成したサスペンドマスクの断面図。
【図8】樹脂層の突起、隔壁、埋まりの概念図。
【図9】開口部を有したスクリーン印刷用マスクの断面図。
【図10】マスキングシートを貼り付けたスクリーン印刷用マスクの断面図。
【図11】電着装置の概念図。
【図12】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法における一工程を表す断面図。
【図13】非開口保護層をスクリーン印刷用マスクの被印刷基板接触面に形成した断面図。
【符号の説明】
【0056】
1 スクリーン印刷用マスク
2 樹脂層
3 スキージ面
4 被印刷基板接触面
5 開口部
6 メッシュ
7 マスキングシート
8 非開口保護層
9 樹脂層の突起
10 隔壁
11 埋まり
12 電極
13 エマルジョン粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がブロック化されたイソシアネート基および活性水素基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子。
【請求項2】
上記活性水素基が水酸基であり、上記芯重合体が3級アミノ基を含有することを特徴とする請求項1に記載のエマルジョン粒子。
【請求項3】
少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部を有したスクリーン印刷用マスクに請求項1または2に記載のエマルジョン粒子を電着し、次に加熱によってブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ、該イソシアネート基と活性水素基とを反応させることによって該樹脂層を形成することを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項4】
少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部を有したスクリーン印刷用マスクのスキージ面に保護シートを貼り付ける工程、開口部の内壁および被印刷基板接触面に請求項1または2に記載のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子を加熱によってフィルム化する工程、保護シートを除去する工程、加熱によってブロック化されたイソシアネート基からイソシアネート基を発生させ該イソシアネート基と活性水素基とを反応させる工程を含むことを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−201850(P2008−201850A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36884(P2007−36884)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】