説明

エレクトレットメルトブロー不織布

【課題】捕集性能に優れ、かつ環境に優しいエレクトレットメルトブロー不織布、および該不織布からなるフィルターを提供する。
【解決手段】ポリオレフィンを含む海成分、脂肪族ポリエステルを含む複数島成分を有する海島型複合繊維からなるエレクトレットメルトブロー不織布であり、ポリオレフィン/脂肪族ポリエステルの重量比が55/45〜90/10であることを特徴とするエレクトレットメルトブロー不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトレットメルトブロー不織布、および該不織布からなるエアフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布製造法の一つであるメルトブロー法は、一般に、紡糸口金から押し出された熱可塑性ポリマーを熱風噴射することにより繊維状に細化し、該繊維の自己融着特性を利用してウェブとして形成せしめる方法であり、スパンボンド法等の他の不織布製造法に比べて複雑な工程を必要とせず、また数10μmから数μm以下の細い繊維が容易に得られることから、エアフィルター製品の濾材、電池セパレータ等々に幅広く使用されている。
【0003】
エアフィルターに要求される性能は、ミクロなダストを多く捕集できる「高捕集性能」、および、エアフィルター内部を気体が通過する際に抵抗が少ない「低圧力損失特性」である。
【0004】
圧力損失が低い濾材を得るためには、構成する繊維シートが太繊度であることが適しているが、その一方、シート内の繊維間の空隙が広くなるため、捕集性能が低下する。このように、「高捕集性能」を有することと「低圧力損失特性」を有することは相反する関係にあるものであり、この問題点を解決する方法として、繊維シートをエレクトレット化し、物理的作用に加えて静電気的作用を利用することにより、高捕集かつ低圧力損失を同時に満足させる試みがなされている。
【0005】
例えば、アース電極上に繊維状シートを接触させた状態で、該アース電極と繊維シートを共に移動させながら非接触型印加電極で、高圧印加を行なって連続的にエレクトレット化する、エレクトレット繊維状シートの製造法が提案されている(特許文献1)。これは、繊維状シート内に、電子の注入、イオンの移動、双極子の配向などを生ぜしめることで分極させ、シートに電荷を付与するというものである。
【0006】
また、不織布を構成する繊維に対して、添加剤を添加することにより、高捕集性能を有しかつ低圧力損失特性を持つ不織布を得る方法が提案され、例えば、高分子重合体に、ヒンダードアミン系、含窒素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール系あるいはフェノール系の安定剤から選ばれた少なくとも1種を配合してなる材料からなり、かつ100℃以上における熱刺激脱分極電流からのトラップ電荷量が2.0×10−10クーロン/cm以上であるという耐熱性エレクトレット材料が提案されている(特許文献2)。
【0007】
これらエレクトレット繊維シートは、電荷量を多く保持することができ、捕集性能が優れるという点から非導電性繊維が主に用いられてきた。非導電性繊維の材料としては特に、ポリオレフィンが主に用いられてきたが、ポリオレフィンは石油由来の資源であり、非分解性のため廃棄する際に焼却しなければならず、環境問題への影響が懸念される。
【0008】
そこで近年は環境負荷低減の観点から、自然資源を原料とした生分解性ポリマーの研究が活発となっており、中でも力学特性やコスト等の面から注目を集めているのが脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸である。しかしながら、ポリ乳酸をメルトブロー法で不織布に製造した場合、ポリオレフィンを用いた不織布ほど細い繊維径が得られず、高捕集性能が得られないという問題があった(特許文献3)。
【特許文献1】特開昭61−289177号公報
【特許文献2】特開昭63−280408号公報
【特許文献3】特開2007−197857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、捕集性能に優れ、かつ環境に優しいエレクトレットメルトブロー不織布、および該不織布からなるフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエレクトレットメルトブロー不織布は、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、次の構成を有するものである。
【0011】
(1)ポリオレフィンを含む海成分及び脂肪族ポリエステルを含む複数の島成分を有する海島型複合繊維からなる不織布であり、ポリオレフィン/脂肪族ポリエステルの重量比が55/45〜90/10であることを特徴とするエレクトレットメルトブロー不織布。
【0012】
(2)前記不織布にヒンダードアミン系添加剤及びトリアジン系添加剤のうちの少なくとも1種を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする(1)に記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【0013】
(3)前記ポリオレフィンがヒンダードアミン系添加剤及びトリアジン系添加剤のうちの少なくとも1種を0.5〜5.0重量%含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【0014】
(4)前記ポリオレフィンがポリプロピレンからなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【0015】
(5)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【0016】
(6)前記不織布が、2枚以上の不織布が積層されてなる積層不織布であって、その少なくとも1層が(1)〜(5)のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布で構成されていることを特徴とする不織布。
【0017】
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布または(6)に記載の不織布からなることを特徴とするエアフィルター。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、捕集性能に優れ、かつ環境に優しいエレクトレットメルトブロー不織布、および該不織布からなるフィルターを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ポリオレフィンを含む海成分及び脂肪族ポリエステルを含む複数の島成分を有する海島型複合繊維からなるエレクトレットメルトブロー不織布であり、ポリオレフィン/脂肪族ポリエステルの重量比が55/45〜90/10であることを特徴とするものである。
【0020】
以下本発明について詳細に説明する。
【0021】
まず、メルトブロー不織布は、不織布製造法の一つであるメルトブロー法により製造されるもので、一般に、紡糸口金から押し出された熱可塑性ポリマーを熱風噴射することにより繊維状に細化し、該繊維の自己融着特性を利用してウェブとして形成せしめる方法である。スパンボンド法等、他の不織布製造法に比べて複雑な工程を必要とせず、また数10μmから数μm以下の細い繊維が容易に得られる。本発明においては、このメルトブロー法を用いて不織布を製造する。メルトブロー法における紡糸条件としては、ポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力等があるが、これら紡糸条件の最適化を行うことで、所望の繊維径を有する不織布が得られる。
【0022】
本発明のエレクトレットメルトブロー不織布は、ポリオレフィンを含む海成分と脂肪族ポリエステルを含む複数の島成分を有する海島型複合繊維により構成されるものである。本発明でいう海島型複合繊維は、言い換えれば多芯型の芯鞘型構造を有するものであり、すなわち、該海島型複合繊維の断面を観たとき、海成分であるポリオレフィンが、複数の島成分である脂肪族ポリエステルの全てを被覆する構造を有するものであればよい。
かかる海成分を構成するポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンやこれらの共重合体およびその変性物を単独または混合して用いることができるが、耐熱性が優れているという点でポリプロピレンが好ましい。かかるポリプロピレンの重量平均分子量は1万〜10万が好ましく、さらに好ましくは1万〜5万である。かかるポリプロピレンの重量平均分子量が1万未満の場合、低粘度のため糸形成が困難となり、紡糸性不良となるため好ましくない方向である。逆に重量平均分子量が10万を超える場合、粘度が高いため繊維の細径化が困難となり好ましくない方向である。
【0023】
また、島成分を構成する脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらのブレンド物、共重合体、変性物等を用いることができる。
【0024】
中でもポリ乳酸は熱安定性の面から最も好ましいものである。かかるポリ乳酸としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体や、D−乳酸とL−乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)などが挙げられる。これらの中でも結晶化速度が向上する点から、D−乳酸とL−乳酸の共重合体やステレオコンプレックスが好ましい。
【0025】
本発明において、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るためには、ポリ乳酸として光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることがさらに好ましい。
【0026】
ポリ乳酸の重量平均分子量は5万〜25万が好ましく、さらに好ましくは7万〜20万である。かかるポリ乳酸の重量平均分子量が5万未満の場合、低粘度のため糸形成が困難となり、紡糸性不良となるため好ましくない方向である。逆に重量平均分子量が25万を超える場合、粘度が高いため繊維の細径化が困難となり好ましくない方向である。
【0027】
かかる海島構造を形成する方法は特に限定されるものではなく、メルトブロー製布機の押出機ホッパーに2種類のポリマーチップを混合して供給し、押出機内で混練りし、直接口金へ供給するブレンド紡糸法や、あらかじめ、2種類のポリマーを混練押出機や静止混練機等で混練りしてポリマーアロイチップを作製し、これを押出機内で溶融し口金部へ供給する方法が挙げられるが、島成分ポリマーの分散性という点から、後者の方法が好ましい。
【0028】
ここで、海島型複合繊維に用いられるポリオレフィンと脂肪族ポリエステルの重量比(ポリオレフィン/脂肪族ポリエステル)は、55/45〜90/10の範囲であることが必要であり、好ましくは55/45〜70/30である。海成分のポリオレフィンの重量比が90/100を超えて多くなる場合は、脂肪族ポリエステルがその生分解性を発揮できないことがあるため好ましくなく、また55/100未満の場合は、エレクトレット帯電性が低下し、高捕集性能が得られないため、好ましくない。
【0029】
本発明のエレクトレットメルトブロー不織布は、目付が1〜80g/mであることが好ましい。より好ましくは1〜70g/m、さらに好ましくは1〜60g/mである。また、平均繊維径が1〜20μmであることが好ましい。より好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは1〜10μmである。すなわち、平均繊維径が該範囲内であれば、紡糸性や捕集性能についてより高い効果が得られる。
【0030】
本発明の不織布はエレクトレット化されていることが必要である。エレクトレット化処理は不織布シート単層でも、他のシートと積層した積層不織布シートに実施しても構わない。エレクトレット化の方法としては、特に限定されるものではないが、コロナ荷電法、または不織布シートに水または水溶性有機溶剤水溶液を付与した後に乾燥させることによりエレクトレット化する方法(例えば、特表平9−501604号公報、特開2002−249978号公報等に記載されている方法)が好適に用いられる。コロナ荷電法の場合は15kV/cm以上、好ましくは20kV/cm以上の電界強度が適している。
【0031】
また、耐候性を向上させ、エレクトレット性能を良くする観点から、本発明の不織布にヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。
【0032】
ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](チバ・ジャパン(株)製、キマソーブ(R)944LD)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(チバ・ジャパン(株)製、チヌビン(R)622LD)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・ジャパン(株)製、チヌビン(R)144)などが挙げられる。
【0033】
また、トリアジン系添加剤としては、前述のポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](チバ・ジャパン(株)製、キマソーブ(R)944LD)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(チバ・ジャパン(株)製、チヌビン(R)1577FF)などを挙げることができる。これらのなかでも特にヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0034】
ヒンダードアミン系化合物及び/又はトリアジン系化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン中に含有させる場合は、不織布全重量に対して0.5〜5.0重量%の範囲であることが好ましく、0.7〜3重量%の範囲であることがより好ましい。また、不織布もしくは繊維表面に付着させるなどの場合は、不織布全重量に対して0.1〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
さらに、上記化合物の他に、熱安定剤、耐候剤、重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の不織布シートに使用されている通常の添加剤を添加してもよい。
【0036】
さらに、本発明のエレクトレットメルトブロー不織布は、他のシートと積層して積層繊維不織布にしてもよい。たとえば、不織布シートとそれよりも剛性の高いシートを積層して製品強力を向上させて使用することや、脱臭・抗菌等機能性を有するシートと組み合わせて使用することは好ましい。積層方法は、特に限定されないが、接着剤を用いて2種類の不織布を貼り合わせる方法や、メルトブロー法以外の製法で製造した不織布シートの上にメルトブロー法により積層する方法が挙げられる。その他、2種類の不織布を貼り合わせる方法としては、湿気硬化型ウレタン樹脂をスプレー法で散布する方法、熱可塑性樹脂、熱融着繊維を散布し熱路を通して貼り合わせる方法などあるが、2種類の不織布を貼り合わせることが出来れば方法は特に限定しない。
【0037】
しかし、使用用途がフィルターに使用する不織布であるので、圧損上昇が生じる貼り合わせ方法は好ましくない。その点で、湿気硬化型ウレタン樹脂によるスプレー法は、2枚の不織布をプレスすることなく貼り合わせることが可能なため、貼り合わせ時の圧力損失の上昇が少なく好ましい方法である。
【0038】
本発明のエレクトレットメルトブロー不織布は、フィルターの濾材として用いることができる。該濾材は、エアフィルター全般、なかでも空調用フィルター、空気清浄機用フィルター、自動車キャビンフィルターの高性能用途に好適であるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げてより具体的に本発明を説明する。実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。
【0040】
(1)目付
タテ×ヨコ=15cm×15cmのシートの重量を測定し、得られた値を1m当たりの値に換算し、目付(g/m)とした。
【0041】
(2)平均繊維径
不織布シートの任意の場所から、タテ×ヨコ=1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影した。倍率は2000倍とし、写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定し、平均した値を平均繊維径とした。
【0042】
(3)捕集性能、圧力損失
不織布シートの縦方向10カ所でタテ×ヨコ=15cm×15cmの測定用サンプルを採取し、それぞれのサンプルについて、図1に示す捕集性能測定装置で測定した。この捕集性能測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側にダスト収納箱2を連結し、下流側に流量計3、流量調整バルブ4、ブロワ5を連結している。また、サンプルホルダー1にパーティクルカウンター6を使用し、切替コック7を介して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。さらにサンプルホルダー1は圧力計8を備え、サンプルM上流、下流での静圧差を読み取ることができる。捕集性能の測定にあたっては、ポリスチレン0.309U 10%溶液(メーカー:ナカライテスク(株))を蒸留水で200倍まで希釈し、ダスト収納箱2に充填する。次にサンプルMをホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が1.5m/minになるように流量調整バルブ4で調整し、ダスト濃度を1万〜4万個/2.83×10−4(0.01ft)の範囲で安定させ、サンプルMの上流のダスト個数Dおよび下流のダスト個数dをパーティクルカウンター6(リオン社製、KC−01B)で1サンプル当り10回測定し、JIS K−0901に基づいて下記計算式にて0.3〜0.5μm粒子の捕集性能(%)を求めた。10サンプルの平均値を最終的な捕集性能とした。
捕集性能(%)=〔1−(d/D)〕×100
ただし、
d:下流ダストの10回測定トータル個数
D:上流のダストの10回測定トータル個数
高捕集の繊維シートほど、下流のダスト個数が少なくなるため、捕集性能の値は高くなる。
【0043】
また、圧力損失は捕集性能測定時のサンプルM上流、下流の静圧差を圧力計8で読み取り求めた。10サンプルの平均値を最終的な圧力損失とした。
【0044】
(4)QF値
濾過性能の指標となるQF値は、前記捕集性能および圧力損失を用いて以下の式により計算される。低圧力損失かつ高捕集性能であるほどQF値は高くなり、濾過性能が良好であることを示す。
QF値(Pa−1)=−[ln(1−[捕集効率(%)]/100)]/[圧力損失(Pa)]
[実施例1]
キマソーブ(R)944(チバ・ジャパン(株)製)を1重量%添加したポリプロピレン(MFR=840)とポリ乳酸(MFR=129、%D=1.4)を、ブレンド比7/3の割合で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0045】
このチップを使用し、直径が0.4mmの吐出孔を有する口金(孔ピッチ:1mm、孔数:151ホール、幅:150mm)を用いて、メルトブロー法により、ポリマー吐出量32g/分、ノズル温度225℃、エア圧力0.19MPaの条件で噴射し、捕集コンベア速度を調整することによって目付が30g/mの不織布を得た。
【0046】
得られた不織布シートを純水/イソプロパノールの生成比が70/30からなる混合水溶液に含浸させ、次いで自然乾燥することにより、エレクトレット化メルトブロー不織布を得た。このエレクトレットメルトブロー不織布の特性値を測定し、表1に示した。
【0047】
[比較例1]
実施例1で使用したポリプロピレンとポリ乳酸をブレンド比95/5の割合で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0048】
このチップを使用し、実施例1と同様の方法により目付が30g/mの不織布を得た。
【0049】
得られた不織布を実施例1と同様の方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0050】
[比較例2]
実施例1で使用したポリプロピレンとポリ乳酸をブレンド比50/50の割合で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0051】
このチップを使用し、実施例1と同様の方法により目付が30g/mの不織布を得た。
【0052】
得られた不織布を実施例1と同様の方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0053】
[比較例3]
実施例1で使用したポリプロピレンとポリ乳酸をブレンド比30/70の割合で混練し、ポリマーアロイチップを得た。
【0054】
このチップを使用し、実施例1と同様の方法により目付が30g/mの不織布を得た。
【0055】
得られた不織布を実施例1と同様の方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0056】
[比較例4]
実施例1で使用したポリプロピレンを用い、実施例1と同様の方法により目付が30g/mの不織布を得た。
【0057】
得られた不織布を実施例1と同様の方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0058】
[比較例5]
実施例1で使用したポリ乳酸を用い、実施例1と同様の方法により目付が30g/mの不織布を得た。
【0059】
得られた不織布を実施例1と同様の方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0060】
[比較例6]
キマソーブ(R)944(チバ・ジャパン(株)製)を1重量%添加したポリプロピレン(MFR=40)とポリ乳酸(MFR=43、%D=1.3)をそれぞれ230℃で溶融し、ポリ乳酸樹脂を芯成分、ポリプロピレン樹脂を鞘成分とし、口金温度235℃、鞘成分比率11vol%で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、温度60℃のカレンダーロールにて仮圧着し、繊維径11μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた不織布を水面吸引法によりエレクトレット加工した後、特性値を測定し、表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、海成分にポリプロピレン、ポリ乳酸、島成分にポリ乳酸を用いて、海成分の重量%を70%としたポリマーアロイチップをメルトブロー紡糸に使用した実施例1では、ポリプロピレン単成分をメルトブロー紡糸に用いた比較例4並の平均繊維径・捕集効率を有するエレクトレットメルトブロー不織布が得られた。
【0063】
また、海成分の重量%を5%とした比較例1は、実施例1並みの捕集性能が得られたが、生分解性が期待できない。
【0064】
一方、海成分の重量%を50、70%およびポリ乳酸単成分をメルトブロー紡糸に用いた比較例2、3、5は、実施例1対比でやや高い平均繊維径を有するエレクトレットメルトブロー不織布が得られ、捕集性能も低下しているものであった。
【0065】
また、比較例6に記載した、ポリ乳酸を芯、ポリプロピレンを鞘とし、さらに鞘の重量%が11%であるスパンボンド紡糸により得られた芯鞘複合繊維からなるエレクトレット不織布は、実施例1対比で太繊度となり、捕集性能も大きく低下したものであった。
【0066】
以上のように海島型複合繊維を構成するポリマー種の重量比を制限することにより、捕集性能に優れ、かつ環境に優しいエレクトレットメルトブロー不織布を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により捕集性能に優れ、かつ環境に優しいエレクトレットメルトブロー不織布が得られ、濾材として特にエアフィルターに好ましく用いることができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】捕集性能および圧力損失の測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0069】
1:ホルダー
2:ダスト収納箱
3:流量計
4:流量調整バルブ
5:ブロワ
6:パーティクルカウンター
7:切替コック
8:圧力計
M:測定サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む海成分及び脂肪族ポリエステルを含む複数の島成分を有する海島型複合繊維からなる不織布であり、ポリオレフィン/脂肪族ポリエステルの重量比が55/45〜90/10であることを特徴とするエレクトレットメルトブロー不織布。
【請求項2】
前記不織布が、ヒンダードアミン系添加剤及びトリアジン系添加剤のうちの少なくとも1種を0.1〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【請求項3】
前記ポリオレフィンがヒンダードアミン系添加剤及びトリアジン系添加剤のうちの少なくとも1種を0.5〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【請求項4】
前記ポリオレフィンがポリプロピレンからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布。
【請求項6】
前記不織布が、2枚以上の不織布が積層されてなる積層不織布であって、その少なくとも1層が請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布で構成されていることを特徴とする不織布。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトレットメルトブロー不織布または請求項6に記載の不織布からなることを特徴とするエアフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2009−203580(P2009−203580A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47353(P2008−47353)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】