説明

エレベータのドア開閉装置

【課題】乗客が降りている最中に開閉ドアが閉じてしまうことを防止できるエレベータのドア開閉装置を提供する。
【解決手段】実施形態のエレベータのドア開閉装置は複数の荷重検出器と制御部を備えている。荷重検出器はエレベータの乗りかご内の乗客による荷重を検出可能でありかつ乗りかごの床に複数設けられている。制御部はステップS10で乗りかごが着床してドアが開いた後に複数の荷重検出器が検出した結果に基いてドアに近づく乗客を抽出する。制御部はステップS11で抽出した前記乗客のドアに近づく移動速度を推定する。制御部はステップS13で推定した移動速度に基いてドアが閉じるのを遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、乗客を収容する乗りかごが昇降路内を移動することにより、乗りかごを任意の階の乗り場間に移動させて、乗客を任意の階の乗り場間に移動させる。そして、エレベータは、乗りかごが任意の乗り場に着床すると、この乗りかごの開閉ドアを開き、乗客を乗り降りさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−121964号公報
【特許文献2】特開2009−190847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、開閉ドアが開いてから所定時間が経過すると、この開閉ドアを閉じるために、乗客が降りようとしても、所定時間経過後に開閉ドアが閉じてしまう虞があった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乗客が降りている最中に開閉ドアが閉じてしまうことを防止できるエレベータのドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータのドア開閉装置は、複数の荷重検出部と抽出手段と速度推定手段とドア制御手段を備えている。荷重検出部は乗りかご内の乗客による荷重を検出可能でありかつ前記乗りかごの床に複数設けられている。抽出手段は、前記乗りかごが着床して開閉ドアが開いた後に、前記複数の荷重検出器が検出した結果に基いて、前記開閉ドアに近づく乗客を抽出する。速度推定手段は、前記抽出手段が抽出した前記乗客の前記開閉ドアに近づく移動速度を推定する。ドア制御手段は、前記速度推定手段が推定した移動速度に基いて、前記開閉ドアが閉じるのを遅らせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の内側から出入り口をみた正面図である。
【図3】図3は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の圧力検出器の斜視図である。
【図4】図4は、図3に示された圧力検出器が乗客に踏まれた状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態に係るエレベータの乗り場の正面図である。
【図6】図6は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の内側から出入り口をみた他の正面図である。
【図9】図9は、実施形態に係る変形例のエレベータのドア開閉装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図、図2は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の内側から出入り口をみた正面図、図3は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の圧力検出器の斜視図、図4は、図3に示された圧力検出器が乗客に踏まれた状態を示す斜視図、図5は、実施形態に係るエレベータの乗り場の正面図、図6は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の構成を示すブロック図、図7は、実施形態に係るエレベータのドア開閉装置の制御部の処理の一例を示すフローチャート、図8は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の内側から出入り口をみた他の正面図である。
【0009】
図1に示す本実施形態のエレベータ1は、建造物(建築物ともいう)の昇降路内に設置されて、乗りかご2内の操作盤22(図2に示す)の各階に対応した行き先階ボタン27の操作による行き先階登録及び各階の乗り場23に設けられた操作盤24(図5に示す)の呼びボタン25,26の操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物の所望の階に運搬する。
【0010】
操作盤22に設けられた行き先階ボタン27は、建造物の各階に対応して設けられている。乗りかご2内の乗客が移動を希望する階に対応する行き先階ボタン27が、操作される。操作盤22は、行き先階ボタン27が操作されると、この行き先階ボタン27が操作されたことを示す行き先階をエレベータ制御部9に登録する。
【0011】
操作盤24には、図5に示すように、上階呼びボタン25と、下階呼びボタン26とが上から順に設けられている。上階呼びボタン25は、乗り場23に位置する乗客が上の階の乗り場23へ移動する際に用いられる。下階呼びボタン26は、乗り場23に位置する乗客が下の階の乗り場23へ移動する際に用いられる。操作盤24は、呼びボタン25,26が操作されると、これらのボタン25,26が操作されたことを示す呼び登録をエレベータ制御部9に登録する。
【0012】
昇降路は、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。また、昇降路の内部のエレベータ停止階となる各階には、各階の所定の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出するかご着床検出装置8(図1に示す)がそれぞれ設けられている。各かご着床検出装置8は、乗りかご2の設けられた図示しない検知板により、各階の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出すると、着床位置検出信号をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0013】
エレベータ1は、図1に示すように、開閉ドアとしての乗り場用ドア28(図5に示す)と、一対のかご用ガイドレール3と、乗りかご2と、カウンタウェイト4と、一対のウェイト用ガイドレール5と、メインロープ6と、駆動機構7と、コンペンセーション装置10と、非常停止装置11と、エレベータ制御部9と、ドア開閉装置29(図6に示す)と、を備えている。
【0014】
乗り場用ドア28は、建造物の各乗り場23に設けられている。乗り場用ドア28は、ドア用モータ30(図6に示す)の駆動力により、建造物の各乗り場23に設けられた出入り口31(図5に示す)を開閉する。
【0015】
かご用ガイドレール3は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いの間に乗りかご2を位置づけているとともに、この乗りかご2を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0016】
乗りかご2は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご2は、かご枠12と、乗客を収容するかご室13とを備えている。かご枠12は、一対のかご用ガイドレール3間に位置することのできる大きさの枠状に形成されている。かご枠12は、水平方向と平行な下梁14と、水平方向と平行でかつ下梁14の上方に設けられた上梁15と、下梁14と上梁15の両端同士を連結した一対の側梁16とを備えている。下梁14と上梁15は、水平梁をなしている。
【0017】
かご室13は、図2に示す開閉ドアとしての乗りかご用ドア32が設けられた箱状に形成されて、内側に乗客などを収容可能である。乗りかご用ドア32は、ドア用モータ33(図6に示す)の駆動力により、乗りかご2に設けられた出入り口34(図1に示す)を開閉する。かご室13は、下梁14上に重ねられ、かつ一対の側梁16間に挟まれた状態で、かご枠12に取り付けられている。かご室13は、かご枠12に支えられる。かご室13内には、エレベータ1の各種の操作を行うための操作盤22が設けられている。また、乗りかご2には、開閉ドアの開閉動作を検出する開閉検出センサが取り付けられている。開閉検出センサは、開閉ドアの開閉動作を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0018】
カウンタウェイト4は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。
【0019】
ウェイト用ガイドレール5は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いの間にカウンタウェイト4を位置づけているとともに、このカウンタウェイト4を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0020】
メインロープ6は、一端部に乗りかご2が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト4が固定されている。メインロープ6は、駆動機構7の駆動シーブ17に掛渡されて、乗りかご2とカウンタウェイト4とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープ6は、巻き上げ機により移動されることで、乗りかご2とカウンタウェイト4とを釣瓶式に昇降させる。
【0021】
駆動機構7は、図1に示すように、例えば、昇降路の上部に設けられた機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、周知の巻き上げ機と、メインロープ6が掛け渡されて巻き上げ機により回転駆動される駆動シーブ17と、図示しないブレーキと、ロータリエンコーダなどを備えている。ブレーキは、例えば、電磁ブレーキであり、エレベータ制御部9により巻き上げ機を制動する制動状態あるいは巻き上げ機を開放する開放状態のいずれかに動作制御される。ブレーキは、乗りかご2が各階に着床すると制動状態となり、乗りかご2の昇降中には開放状態となる。ロータリエンコーダは、駆動シーブ17の回転を検出するものであり、乗りかご2の速度に関する速度情報としての駆動シーブ17の回転数を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。駆動機構7は、巻き上げ機が駆動シーブ17を回転駆動することにより、メインロープ6を昇降路内で移動させて、乗りかご2とカウンタウェイト4を昇降させる。
【0022】
コンペンセーション装置10は、一端が乗りかご2に取り付けられ他端がカウンタウェイト4に取り付けられたコンペンロープ19と、このコンペンロープ19に掛けられたコンペンシーブ20を備えている。コンペンセーション装置10は、昇降中の乗りかご2やカウンタウェイト4の振動を抑制するとともに、乗りかご2とカウンタウェイト4が昇降路内を昇降する際のメインロープ6の重量を相殺する。
【0023】
非常停止装置11は、図1に示すように、乗りかご2の底面に取り付けられた一対の非常止機構21などを備えている。非常停止装置11は、乗りかご2が予め定められた所定の速度よりも高速で降下すると、非常止機構21がかご用ガイドレール3に対して乗りかご2を停止させる。
【0024】
エレベータ制御部9は、前述した機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部9には、図1に示すように、乗りかご2に一端が取り付けられたテールコード18が接続している。テールコード18は、動力線や伝送線を束ねたコードであり、乗りかご2内の操作盤22とエレベータ制御部9とを接続している。エレベータ制御部9は、乗りかご2の操作盤22の行き先階ボタン27や、各階の乗り場23の操作盤24の呼びボタン25,26、駆動機構7、ドア用モータ30,33などとも接続して、エレベータ1全体の制御をつかさどる。特に、エレベータ制御部9は、ドア28,32を一旦開いた後、予め定められた時間が経過すると、ドア28,32を閉じる。
【0025】
ドア開閉装置29は、図6に示すように、複数の荷重検出部としての荷重検出器35と、表示手段としての表示部36と、制御部37とを備えている。荷重検出器35は、図2及び図8に示すように、乗りかご2の床上に互いに外縁が密接する状態で設けられている。荷重検出器35は、平面形状が四角形に形成されている。複数の荷重検出器35で、乗りかご2の床が覆われている。荷重検出器35は、図3及び図4に示すように、複数の第1ループ電極38と、複数の第2ループ電極39と、弾性シート40と、金属シート41とを備えている。
【0026】
複数の第1ループ電極38は、互いに間隔をあけて平行に設けられている。第1ループ電極38には、電源から電力が供給される。複数の第2ループ電極39は、互いに間隔をあけて平行に設けられている。第2ループ電極39は、第1ループ電極38上に、第1ループ電極38から間隔をあけて重ねられている。第1ループ電極38の長手方向と第2ループ電極39の長手方向とは、互いに直交している。第1ループ電極38と第2ループ電極39とが交差する箇所は、一つの荷重検出器35に複数設けられている。第1ループ電極38と第2ループ電極39とが交差する箇所間の間隔は、一般的な乗客の足の幅よりも5cm程度狭い。第1ループ電極38と第2ループ電極39とは、荷重検出器35上に乗客が乗っても、相対的な位置が変化しない(相対的な位置一定となる)ように設けられている。第2ループ電極39は、制御部37に接続している。
【0027】
弾性シート40は、ゴムなどの弾性を有する合成樹脂で構成され、薄手の平板状に形成されている。弾性シート40は、第2ループ電極39上に重ねられている。弾性シート40は、乗客に乗られると、図4に示すように、乗られた箇所がこの乗客の荷重により厚みが薄くなる方向に弾性変形する。金属シート41は、アルミニウム合金などの導電性を有する金属で構成され、薄手の平板状に形成されている。金属シート41は、弾性シート40上に重ねられている。金属シート41は、乗客に乗られると、図4に示すように、弾性シート40の弾性変形により、弾性シート40の表面に沿って乗客により乗られた箇所が凹むように(湾曲するように)弾性変形する。
【0028】
前述した荷重検出器35は、第1ループ電極38を流れる電流が、金属シート41により、第2ループ電極39にも流れる。このときの第1ループ電極38と第2ループ電極39との結合の度合いは、金属シート41と第2ループ電極39との間の距離により変化するため、荷重検出器35上に乗客が乗って、弾性シート40が薄くなるように弾性変形すると、第2ループ電極39内を流れる電流の値が、金属シート41の移動距離に応じて変化する。荷重検出器35は、第2ループ電極39が制御部37に接続して、この第2ループ電極39内を流れる電流の値を制御部37に向かって出力することで、乗りかご2内の乗客により荷重を検出可能でかつ検出した結果を制御部37に向かって出力する。荷重検出器35は、各第2ループ電極39の複数の第1ループ電極38と交差する箇所における前述した荷重に応じた情報を制御部37に向かって出力する。
【0029】
表示部36は、図5に示すように、建造物の各階の乗り場23に設けられている。本実施形態では、表示部36は、乗り場23の操作盤24の上方に設けられている。表示部36は、表示器42と、音声出力部43とを備えている。表示器42は、周知の液晶ディスプレイ、蛍光表示管などの情報を表示可能な機器で構成されている。表示器42は、制御部37の命令通りの情報を表示する。音声出力部43は、周知のスピーカを備え、制御部37の命令通りの音声を出力する。なお、本実施形態では、表示器42が、音声出力部43の上方に配置されている。このように構成された表示部36は、制御部37が後述するステップS13にて、乗客の移動速度に基いて、ドア28,32が閉じるのを遅らせたことを表示する。
【0030】
制御部37は、乗りかご2の操作盤22内に設けられ、図示しないRAM、ROM、CPU、タイマ、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。制御部37は、図2に示すように、行き先階ボタン27の下方に設けられている。制御部37は、複数の荷重検出器35と接続し、表示部36及びエレベータ制御部9とテールコード18を介して接続して、ドア開閉装置29全体の制御をつかさどる。制御部37は、例えば、出入り口34の中央を原点とした、各荷重検出器35のループ電極38,39同士の交差する箇所の座標を予め記憶している。
【0031】
制御部37は、エレベータ1の運転時には、図7に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行する。図7に示されたフローチャートのステップS1では、まず、制御部37は、ドア28,32が閉じかつエレベータ制御部9に乗りかご2内の操作盤22からの行き先階登録があるか否かを判定し、あると判定すると、ステップS2に進み、ないと判定するとステップS1を繰り返す。このように、制御部37は、乗りかご2内の操作盤22からの行き先階登録があると判定すると乗りかご2内に乗客が乗っていると判定し、行き先階登録がないと判定すると乗りかご2内に乗客が一人も乗っていないと判定する。
【0032】
ステップS2では、制御部37は、乗りかご2内の操作盤22からエレベータ制御部9に行き先階登録が一つのみ登録されているか否かを判定し、行き先階登録が一つのみ登録されていると判定するとステップS3に進み、行き先階登録が二つ以上登録されていると判定するとステップS4に進む。こうして、ステップS2では、制御部37は、エレベータ制御部9の乗りかご2内の操作盤22からの行き先階登録が一つのみ登録されていると、乗りかご2内の乗客が例えば一人などの少数であると判定し、行き先階登録が二つ以上登録されていると、乗りかご2内の乗客が例えば二人以上などの多数であると判定する。
【0033】
このようなステップS2は、乗りかご2内の操作盤22から一つのみの行き先階が登録されているか複数の行き先階が登録されているかを判定する判定手段をなしている。また、ステップS2は、操作盤22から一つのみの行き先階が登録されていると判定すると、複数の荷重検出器35のうち乗りかご用ドア32寄りの一部の荷重検出器35が検出した結果に基いて、後述するステップS10にて乗りかご用ドア32に近づく乗客を抽出させ、操作盤22から複数の行き先階が登録されていると判定すると、複数の荷重検出器35のうち乗りかご用ドア32寄りの一部の荷重検出器35を含みかつ一つのみの行き先階が登録されている場合よりも多くの荷重検出器35が検出した結果に基いて、ステップS10にて乗りかご用ドア32に近づく乗客を抽出させる検出範囲変更手段をなしている。
【0034】
ステップS3では、制御部37は、複数の荷重検出器35のうちの出入り口34即ち乗りかご用ドア32寄りの一部の荷重検出器35(図8中に密な平行斜線で示す)の第1ループ電極38に電源からの電力を印加する。なお、本実施形態では、ステップS3では、複数の荷重検出器35のうちの乗りかご用ドア32寄りの半分の荷重検出器35の第1ループ電極38に印加される。ステップS4では、制御部37は、全ての荷重検出器35の第1ループ電極38に電源からの電力を印加する。こうして、ステップS4では、ステップS3において第1ループ電極38に印加する乗りかご用ドア32寄りの一部の荷重検出器35を含みかつステップS3よりも多くの荷重検出器35の第1ループ電極38に印加する。
【0035】
ステップS5では、制御部37は、第1ループ電極38に印加された荷重検出器35の第2ループ電極39の電流値に基いて、乗りかご2内の乗客を抽出する。制御部37は、第2ループ電極39の電流値が、予め定められた所定値以上となる荷重検出器35が荷重を検出していると判定し、前記電流値が予め定められた所定値を下回る荷重検出器35が荷重を検出していないと判定する。制御部37は、荷重を検出している荷重検出器35の前述した交差する箇所上に乗客が存在していると判定し、この第2ループ電極39の電流値が予め定められた所定値以上となる荷重検出器35の前述した交差する箇所を乗客として抽出して、記憶して、ステップS6に進む。ステップS6では、制御部37は、互いに隣り合いかつ前述したように荷重を検出している荷重検出器35の前述した交差する箇所で囲まれた面積を算出し、この面積が抽出完了後又は前回図7に示されたフローチャートを実行後から予め定められた所定面積まで広がったか否かを判定する。即ち、ステップS6では、ステップS5で抽出した乗客の面積が所定面積まで広がっているか否かを判定し、抽出した乗客のうちの一つが所定面積まで広がっていると判定すると、ステップS7に進み、抽出した乗客の全てが所定面積まで広がっていないと判定すると、ステップS8に進む。なお、この所定面積とは、想定される乗客の最大の足の面積より即ち起立状態の乗客を検出する際の面積も大きく、倒れた乗客を十分に判定できる値とするのが望ましい。即ち、所定面積とは乗りかご2内の乗客が倒れたことを検出可能な面積をなしている。
【0036】
ステップS7では、制御部37は、所定面積を超えた乗客が、ステップS6後から予め定められた所定時間を越えて変化しないか(一定であるか)否かを判定し、所定時間を越えて変化しないと(一定であると)ステップS9に進み、所定時間内に変化すると(一定でないと)ステップS5に戻る。こうして、制御部37は、所定面積を超えた乗客が所定時間変化しないと、乗りかご2内の乗客が倒れているなどの乗客に異常があると判定する。ステップS9では、制御部37は、乗りかご2が最も近い(最寄り)の階の乗り場23に向かうように、エレベータ制御部9に向かって命令し、エレベータ制御部9が、最寄りの階の乗り場23に乗りかご2が向かうように駆動機構7などを制御する。そして、制御部37は、乗りかご2が最寄りの階の乗り場23に着床して、ドア28,32が開くと、エレベータ制御部9にドア28,32を開き続けさせることを命令し、エレベータ制御部9がドア28,32を開き続けるようにドア用モータ30,33を制御する。さらに、制御部37は、乗りかご2が着床した乗り場23に設けられた表示部36の表示器42に、乗りかご2内の乗客に異常がある旨を表示させるとともに、音声出力部43から乗りかご2内の乗客に異常がある旨を示す音声を出力して、乗りかご2内の乗客の救助を第三者などに促して、フローチャートを終了する。このようなステップS9は、複数の荷重検出器35の荷重を検出している面積が予め定められた所定面積を超え、かつ予め定められた所定時間、一定であると、乗りかご2を最寄の乗り場23で着床させて、ドア28,32を開いて維持する非常停止手段をなしている。
【0037】
ステップS8では、制御部37は、乗りかご2が所望の階の乗り場23に着床して、ドア28,32が開いているか否かを判定して、乗りかご2が所望の階の乗り場23に着床してドア28,32が開いていると判定するとステップS10に進み、ドア28,32が開いていないと判定するとステップS8を繰り返す。こうして、制御部37は、乗りかご2が所望の階の乗り場23に着床して、ドア28,32が開くまで、ステップS8を繰り返す。
【0038】
ステップS10では、制御部37は、以下のように、ドア28,32に近づく乗客を抽出し、ドア28,32に近づく乗客をあるか否かを判定する。例えば、ドア28,32が開いてから予め定められた時間内に、荷重検出器35により検出された乗客(荷重を検出しているループ電極38,39が交差している箇所)のうち荷重を検出しなくなったループ電極38,39が交差している箇所が、生じたのち、例えば1秒などの予め定められた所定時間内に荷重を検出しなくなったループ電極38,39が交差している箇所からの距離が、例えば1mなどの予め定められた所定距離内の荷重を検出し始めたループ電極38,39が交差している箇所が生じると、荷重を検出しなくなったループ電極38,39が交差している箇所と荷重を検出し始めたループ電極38,39が交差している箇所とが同一の乗客による荷重とし、乗客が移動していると判定する。そして、制御部37は、荷重を検出しなくなったループ電極38,39が交差している箇所の例えば原点からの距離よりも、荷重を検出し始めたループ電極38,39が交差している箇所の例えば原点からの距離が短い場合、検出した乗客がドア28,32に近づいていると判定する。こうして、制御部37は、ドア28,32に近づく乗客を抽出するとともに、ドア28,32に近づく乗客があるとステップS11に進み、ドア28,32に近づく乗客がないとフローチャートを終了する。このように、ステップS10は、乗りかご2が所望の階に着床してドア28,32が開いた後に、複数の荷重検出器35が検出した結果に基いて、ドア28,32に近づく乗客を抽出する抽出手段をなしている。
【0039】
ステップS11では、制御部37は、ステップS10にて抽出した荷重を検出しなくなったループ電極38,39が交差している箇所と荷重を検出し始めたループ電極38,39が交差している箇所との距離と、荷重を検出しなくなってから再度荷重を検出し始めたまでの時間とにより、ドア28,32に向かっていると抽出した乗客の移動速度を推定して、ステップS12に進む。このように、ステップS11は、ステップS10にて抽出した乗客のドア28,32に近づく移動速度を推定する速度推定手段をなしている。
【0040】
ステップS12では、制御部37は、ステップS11にて推定した乗客の移動速度に基いて、ドア28,32が閉まる前に乗客が出入り口31,34に到達できるか否かを判定し、到達できると判定するとフローチャートを終了し、到達できないと判定するとステップS13に進む。ステップS13では、制御部37は、ステップS11にて推定した乗客の移動速度に基いて、ドア28,32に向かう乗客が出入り口31,34に到達可能となるまで、ドア28,32の開放時間を延長する。さらに、制御部37は、ドア28,32の開放時間が延長されたことを示す情報を、乗りかご2が着床している乗り場23の表示部36の表示器42に表示させるとともに、音声出力部43から音声情報を出力させて、フローチャートを終了する。このように、ステップS13は、前記ステップS11にて推定した移動速度に基いて、乗客が出入り口31,34に到達できるまで、ドア28,32を開いているように、ドア28,32が閉じるのを遅らせるドア制御手段をなしている。
【0041】
実施形態にかかるエレベータ1のドア開閉装置29によれば、ステップS10にて抽出した乗客のドア28,32に近づく移動速度に基いて、ステップS13にてドア28,32が開き続けるように閉じるのを遅らせるので、乗客が出入り口31,34に到達する前にドア28,32が閉じることを防止できる。したがって、乗客が降りている最中や降りる前にドア28,32が閉じてしまうことを防止することができる。よって、乗客が乗りかご2から安全に乗り降りすることができる。また、乗り降り中にドア28,32が閉じることを防止するために、乗り場23や乗りかご2内の操作盤22,24を操作する必要もなくなる。このため、必要なくドア28,32が閉じようとすることを防止でき、省エネルギに貢献できるとともに、乗客に必要のない操作を強いる必要がなくなる。
【0042】
一つのみの行き先階が登録されていると、複数の荷重検出器35のうちのドア28,32寄りの荷重検出器35の検出した結果に基いて、ドア28,32に近づく乗客を抽出し、この乗客の移動速度を推定して、ドア28,32の閉じるのを遅らせる。このように、一つのみの行き先階が登録されている即ち乗りかご2内に少数の乗客のみが乗り込んでいる場合に、一般的に操作盤22寄りに少数の乗客が位置することとなる。したがって、必要最低限の荷重検出器35が検出した結果により、ドア28,32の閉じる動作を制御することとなるので、乗客を抽出するための消費電力を抑制でき、省エネルギに貢献することができる。
【0043】
乗り場23に乗客の移動速度に基いてドア28,32が閉じるのを遅らせていることを表示する表示部36を設けている。このため、乗客の移動速度に基いてドア28,32が閉じるのを遅らせていること即ちドア28,32が開いている状態が延長されていることを、乗り場23の乗り込もうとする乗客が把握することができる。
【0044】
また、荷重検出器35が荷重を検出している面積が、所定面積まで広がって予め定められた所定時間経過すると、乗りかご2を最寄階に着床させる。このように、乗りかご2内の乗客が急病などにより倒れるなどして、動けなくなる状態を検出して、最寄階でドア28,32を開いたまま乗りかご2を着床させることとなる。したがって、乗りかご2内で倒れた乗客を迅速に救助することができる。
【0045】
[変形例]
以下、前述した実施形態のエレベータのドア開閉装置の変形例について説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図9は、実施形態に係る変形例のエレベータのドア開閉装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0046】
本変形例では、制御部37は、ステップS1において、ドア28,32が閉じかつエレベータ制御部9に乗りかご2内の操作盤22からの行き先階登録がないと判定するとステップS6aに進む。ステップS6aでは、制御部37は、複数の荷重検出器35のうち少なくとも一つの荷重検出器35が乗客による荷重を検出しているか否かを判定し、荷重を検出していると、ステップS9aに進み、検出していないとステップS1に戻る。
【0047】
ステップS9aでは、制御部37は、乗りかご2が最も近い(最寄り)の階の乗り場23に向かうように、エレベータ制御部9に向かって命令し、エレベータ制御部9が、最寄りの階の乗り場23に乗りかご2が向かうように駆動機構7などを制御する。そして、制御部37は、乗りかご2が最寄りの階の乗り場23に着床して、ドア28,32が開くと、エレベータ制御部9にドア28,32を開き続けさせることを命令し、エレベータ制御部9がドア28,32を開き続けるようにドア用モータ30,33を制御する。
【0048】
さらに、制御部37は、乗りかご2が着床した乗り場23に設けられた表示部36の表示器42に、乗りかご2内の乗客に異常がある旨を表示させるとともに、音声出力部43から乗りかご2内の乗客に異常がある旨を示す音声を出力して、乗りかご2内の乗客の救助を第三者などに促して、フローチャートを終了する。このようなステップS9aは、乗りかご2内の操作盤22から登録された行き先階が零であり、かつ、複数の荷重検出器35のうち少なくとも一つの荷重検出器35が乗客による荷重を検出していると、乗りかご2を最寄の乗り場23で着床させて、ドア28,32を開いて維持する非常停止手段をなしている。また、本変形例では、制御部37は、ステップS5にて、乗客を抽出した後、ステップS8に進む。
【0049】
変形例にかかるエレベータ1のドア開閉装置29によれば、乗りかご2内の操作盤22からの行き先階登録が零であり、少なくとも一つの荷重検出器35が乗客による荷重を検出していると、乗りかご2を最寄階に着床させる。このように、乗りかご2内の乗客が急病などにより倒れるなどして、動けなくなる状態を検出して、最寄階でドア28,32を開いたまま乗りかご2を着床させることとなる。したがって、乗りかご2内で倒れた乗客を迅速に救助することができる。
【0050】
本発明では、制御部37が実行するフローチャートを適宜変更しても良い。即ち、ステップS3で駆動する荷重検出器35の数を適宜変更しても良い。また、前述した実施形態のステップS6では、抽出した乗客の面積が前述した所定面積まで広がったか否かを判定したが、本発明では、抽出した乗客の面積が予め定められた所定面積を超えているか否かを判定しても良い。この場合、抽出した乗客のうちの一つが所定面積を超えていると判定すると、ステップS7に進み、抽出した乗客の全てが所定面積を下回っていると判定すると、ステップS8に進む。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 エレベータ
2 乗りかご
22 操作盤
24 操作盤
28 乗り場用ドア(開閉ドア)
29 ドア開閉装置
32 乗りかご用ドア(開閉ドア)
35 荷重検出器(荷重検出部)
36 表示部(表示手段)
37 制御部
S2 判定手段、検出範囲変更手段
S9,S9a 非常停止手段
S10 抽出手段
S11 速度推定手段
S13 ドア制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の乗客による荷重を検出可能でありかつ前記乗りかごの床に複数設けられた荷重検出部と、
前記乗りかごが着床して開閉ドアが開いた後に、前記複数の荷重検出器が検出した結果に基いて、前記開閉ドアに近づく乗客を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した前記乗客の前記開閉ドアに近づく移動速度を推定する速度推定手段と、
前記速度推定手段が推定した移動速度に基いて、前記開閉ドアが閉じるのを遅らせるドア制御手段と、
を備えることを特徴とする、
エレベータのドア開閉装置。
【請求項2】
前記乗りかご内の操作盤から一つのみの行き先階が登録されているか複数の行き先階が登録されているかを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記操作盤から一つのみの行き先階が登録されていると判定すると、前記複数の荷重検出部のうち前記開閉ドア寄りの一部の荷重検出部が検出した結果に基いて、前記抽出手段に前記開閉ドアに近づく乗客を抽出させ、かつ、前記判定手段が前記操作盤から複数の行き先階が登録されていると判定すると、前記複数の荷重検出部のうち前記開閉ドア寄りの一部の荷重検出部を含みかつ一つのみの行き先階が登録されている場合よりも多くの荷重検出部が検出した結果に基いて、前記抽出手段に前記開閉ドアに近づく乗客を抽出させる検出範囲変更手段と、
を備えることを特徴とする、
請求項1記載のエレベータのドア開閉装置。
【請求項3】
前記乗り場に設けられ、かつ、前記ドア制御手段が、前記速度推定手段が推定した前記移動速度に基いて、前記開閉ドアが閉じるのを遅らせたことを表示する表示手段を備えることを特徴とする、
請求項1又は請求項2記載のエレベータのドア開閉装置。
【請求項4】
前記複数の荷重検出部の前記荷重を検出している面積が、前記乗客が倒れたことを検出可能な面積まで広がり、かつ予め定められた所定時間、一定であると、前記乗りかごを最寄の乗り場で着床させて、前記開閉ドアを開いて維持する非常停止手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のエレベータのドア開閉装置。
【請求項5】
前記乗りかご内の操作盤から登録された行き先階が零であり、かつ、前記複数の荷重検出部のうち少なくとも一つの荷重検出部が前記荷重を検出していると、前記乗りかごを最寄の乗り場で着床させて、前記開閉ドアを開いて維持する非常停止手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のエレベータのドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60248(P2013−60248A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198813(P2011−198813)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】