説明

エレベータのドラフト風対策ドア装置

【課題】ホールドアの自閉装置を増強したりドア駆動モータの出力を高めたりすることなく、ホールドアがドラフト風の風圧の影響を受ける状態のときに、その風圧による影響に打ち勝ってホールドアを的確に閉じ切り位置にまで移動させてホールドアを完全閉合させることができるエレベータのドラフト風対策ドア装置を提供する。
【解決手段】エレベータ昇降路内のドラフト風の状態を検出するためのドラフト風検出装置と、エレベータホールにおけるホールドア13が戸閉方向に移動して閉じ切り位置に達する直前にそのホールドア13の戸閉方向への移動を補助することが可能な戸閉動作補助装置60とを具備し、ドラフト風検出装置が検出するドラフト風の強さが所定のしきい値以上のときに、戸閉動作補助装置60を動作させてホールドア13を閉じ切り位置にまで移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、エレベータ昇降路内で発生するドラフト風に対する対策を施したエレベータのドラフト風対策ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建屋の昇降路内に吊り下げられたかごを備え、このかごが巻上機による駆動で昇降路内で上下に昇降移動する。かごにはかごドアが、建屋の各階のエレベータホールにはホールドアがそれぞれ設けられ、かごが目的階に着床して停止した際に、かごドアとホールドアとが連動して開き、乗客の乗り降りが可能となる。
【0003】
かごには、かごドアを駆動するためのドア駆動モータが設けられ、このドア駆動モータの動力でかごドアが開閉移動する。かごドアには係合装置が設けられ、この係合装置がガゴの移動に応じて各階のホールドアのインターロック装置に係合することが可能となっている。すなわち、かごが目的階に着床停止し、かごドアが戸開し始めるときに、その動作でかごドアの係合装置がホールドアのインターロック装置に係合し、この係合でインターロック装置によるホールドアのロックが解除されるとともに、そのホールドアがドア駆動モータの動力でかごドアと一体的に戸開方向に移動し、ドアの開放が達成される。
【0004】
ホールドアには、ウエイトやばねなどを用いる自閉装置が設けられ、この自閉装置によりホールドアは常時戸閉方向に所定の力で付勢されている。ホールドアが戸開するときには、その自閉装置による付勢力に抗して戸開方向に移動する。
【0005】
戸開後の戸閉時には、かごドアとホールドアとがドア駆動モータの動力で一体的に戸閉方向に移動し、閉じ切り位置(戸当り位置)に達する直前にかごドアの係合装置とホールドアのインターロック装置との係合が外れる。そしてかごドアはドア駆動モータの動力で閉じ切り位置にまで移動し、閉じ切りが達成される。
【0006】
一方、係合が外れた後のホールドアは、自閉装置による付勢力で閉じ切り位置にまで移動し、閉じ切りが達成されるとともに、インターロック装置によりロックされる。この後、かごが次の目的階に向って移動する。
【0007】
ところで、かごが昇降する昇降路内には、気圧や気温などの気象変動に応じる空気の流れつまりドラフト風が発生する。このドラフト風は昇降路の延伸方向(上下方向)に沿う空気の流れで、特に高層建屋の昇降路内では大きなドラフト風が発生する。
【0008】
そして、そのドラフト風の風圧でエレベータのドアに過負荷が加わり、その開閉動作に支障が生じることがある。そこで、ドラフト風の風圧による過負荷を検出し、その検出に基づいてかごドアを駆動するドア駆動モータのトルクを制御し、ドアの開閉力を補正するような手段が採られることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−12961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、ドアの戸閉動作時には、一定の区間まではかごドアとホールドアとがドア駆動モータの動力で一体的に戸閉方向に移動するが、閉じ切り位置に達する直前にはかごドアとホールドアとの係合が外れ、その後にはかごドアはドア駆動モータの動力で、ホールドアは自閉装置の付勢力でそれぞれ閉じ切り位置にまで移動する。
【0011】
したがって、ドラフト風の風圧に応じてかごドアを駆動するドア駆動モータのトルクを制御してドアの開閉力を補正するような手段では、かごドアとホールドアとの係合が外れたときに、かごドアはそのドア駆動モータの動力で閉じ切り位置にまで移動させることができても、ホールドアにはドア駆動モータの動力が伝達されないから、風圧の影響で閉じ切り位置にまで移動させることが困難となり、そのホールドアを完全に閉じ切ることができなくなることがある。すなわち、ホールドアは自閉装置により常時戸閉方向に付勢されているが、その付勢力よりも風圧の影響が上回るようなときに、ホールドアを完全に閉じ切ることができなくなる。
【0012】
そこで、ウエイトやばねを用いる自閉装置の付勢力を増強することが考えられるが、自閉装置の付勢力を増強し過ぎると、ホールドアとかごドアとをドア駆動モータで戸開方向に移動させる戸開時の負荷が増し、ドア駆動モータの出力規格を高めなければならず、電力を無駄に消費し、また逆に戸閉時にホールドアが閉じ切り位置に達するときの移動速度が増し、戸当り時に大きな騒音が生じ、エレベータホールの乗客に不快感、不安感を抱かせてしまうことになる。
【0013】
この発明の実施形態は、このような課題に着目し、自閉装置を増強したりドア駆動モータの出力を高めたりすることなく、ホールドアがドラフト風の風圧の影響を受ける状態のときに、その風圧による影響に打ち勝ってホールドアを的確に閉じ切り位置にまで移動させてホールドアを完全に閉合させることができるエレベータのドラフト風対策ドア装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、エレベータ昇降路内のドラフト風の状態を検出するドラフト風検出手段と、エレベータホールにおけるホールドアが戸閉方向に移動して閉じ切り位置に達する直前にそのホールドアの戸閉方向への移動を補助することが可能な戸閉動作補助装置と、前記ドラフト風検出手段が検出するドラフト風の状態に応じて前記戸閉動作補助装置を動作させる制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明は、前記制御手段が、前記ドラフト風検出手段が検出するドラフト風の強さが所定のしきい値以上であるときに、前記戸閉動作補助装置を動作させる制御を行なうことを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明は、前記戸閉動作補助装置が、前記制御手段により制御される駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記ホールドアを戸閉方向に押圧する押圧部材と、前記ホールドアが閉じ切り位置に達した後に前記押圧部材を駆動前の元位置に復帰させるばね部材とを具備することを特徴としている。
【0017】
請求項4の発明は、前記戸閉動作補助装置が、前記制御手段により制御される駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記ホールドアを戸閉方向に押圧するカム部材とを具備することを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、前記戸閉動作補助装置が動作し、前記ホールドアが閉じ切り位置に達したときに、それを検出して前記制御手段に信号を出力する閉じ切り検出手段を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明は、前記ドラフト風検出手段が、ドラフト風が流通する風洞と、この風洞内に設けられ、ドラフト風の流通に応じて回転する羽根車と、この羽根車の回転速度に基づいてドラフト風の強さを検出する検出器とを備えて成り、前記昇降路内の下部又は上部に配設されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す構成図。
【図2】そのエレベータのかごドアの正面図。
【図3】そのエレベータのホールドアの正面図。
【図4】そのエレベータの戸閉動作補助装置を示す正面図。
【図5】そのエレベータのドラフト風検出装置を示す正面図。
【図6】そのエレベータのドラフト風検出装置を示す平面図。
【図7】そのエレベータの制御回路の構成を示すブロック図。
【図8】そのエレベータの戸開動作時の状態を示す正面図。
【図9】そのエレベータの戸閉動作時の状態を示す正面図。
【図10】この発明の他の実施形態における戸閉動作補助装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1には、この発明の一実施形態に係るエレベータの全体の構成を示してあり、建物の昇降路1の上部には機械室2が設けられ、この機械室2内に駆動装置としての巻上機3が設置されている。巻上機3はトラクションシーブ4を備え、このトラクションシーブ4にメインロープ5が巻き掛けられている。メインロープ5の両端側は昇降路1内に引き落とされ、その一方側の端部でかご6が、他端側の端部でつり合い重り7がそれぞれ支持されている。
【0023】
そして巻上機3が起動し、トラクションシーブ4が回転してメインロープ5が走行することによりかご6及びつり合い重り7が互いに逆方向に昇降移動する。機械室2にはエレベータの運行を制御する制御手段としての制御盤10が設けられ、この制御盤10により巻上機3が制御されてかご6が目的階に向って移動する。
【0024】
建物の各階のエレベータホール11には昇降路1に通じる乗降口12が設けられ、これら乗降口12にそれぞれホールドア13が設置され、これらホールドア13により乗降口12が開閉される。かご6の前面にはかごドア16が設けられ、かご6が目的階のエレベータホール11に着床して停止した際に、かごドア16とそのエレベータホール11のホールドア13とが連動して開き、これによりかご6に対する乗客の乗り降りが可能となる。
【0025】
図2にはかごドア16の正面図を示してある。図2はかごドア16をかご6の正面側から見た正面図である。かごドア16は、例えば左右に並ぶ一対のドアパネル16a,16bを備えている。ドアパネル16a,16bはそれぞれ上部にドアハンガー17を有し、これらドアハンガー17にそれぞれハンガーローラ18が複数ずつ回転自在に取り付けられている。
【0026】
かご6の前面にはドア枠20が設けられ、このドア枠20の上部に支持ベース21が取り付けられ、この支持ベース21の前面にハンガーレール22が水平に取り付けられている。そして、ドアパネル16a,16bの各ハンガーローラ18がハンガーレール22の上縁に転動自在に掛け合わされ、ドアパネル16a,16bがハンガーレール22の下方に懸架されている。
【0027】
ドア枠20の上部には駆動源としてのドア駆動モータ25が設置されている。また、支持ベース21には複数のプーリ26が回転自在に取り付けられ、これらプーリ26とドア駆動モータ25とに渡ってワイヤ27が掛け渡され、このワイヤ27にドアパネル16a,16bのドアハンガー17が連結されている。そして、ドア駆動モータ25が一方向に回転するときのワイヤ27の走行で、左右に並ぶドアパネル16a,16bがハンガーレール22に沿って互いに離間する戸開方向に移動し、またドア駆動モータ25が逆方向に回転するときのワイヤ27の走行で、ドアパネル16a,16bがハンガーレール22に沿って互いに接近する戸閉方向に移動する。そしてドア枠20の上部には、ドアパネル16a,16bの開閉を検出するドアスイッチ28が設けられている。
【0028】
かごドア16には係合装置30が設けられている。この係合装置30は、かごドア16の一方のドアパネル16aの表面に取り付けられたベースプレート31を備えている。ベースプレート31の上下部には、それぞれピン32を介してリンクバー33が回動自在に取り付けられている。これらリンクバー33は水平に対して傾斜し、その両端部には係合ベーン34a,34bがそれぞれピン35を介して回動自在に取り付けられている。係合ベーン34a,34bは垂直に配置されて互いに対向し、リンクバー33が回動することで、互いに平行移動してその係合ベーン34a,34bの対向間隔幅が変化するようになっている。
【0029】
図3には、各エレベータホール11の乗降口12に設けられたホールドア13の正面図を示してある。図3はホールドア13を昇降路1側から見た正面図である。ホールドア13は、かごドア16のドアパネル16a,16bに対応する一対のドアパネル13a,13bを備えている。ドアパネル13a,13bは左右に並び、それぞれ上部にドアハンガー37を有し、これらドアハンガー37にそれぞれハンガーローラ38が複数ずつ回転自在に取り付けられている。
【0030】
乗降口12の昇降路1側には、ドア枠40が設けられ、このドア枠40の上部に支持ベース41が取り付けられ、この支持ベース41の前面にハンガーレール42が水平に取り付けられている。そして、ドアパネル13a,13bの各ハンガーローラ38がハンガーレール42の上縁に転動自在に掛け合わされ、ドアパネル13a,13bがハンガーレール42の下方に懸架されている。
【0031】
支持ベース41の両端部にはそれぞれプーリ43が回転自在に取り付けられ、これらプーリ43間にワイヤ44が走行可能に掛け渡され、このワイヤ44の互いに平行に延びる部分の上部側に一方のドアパネル13aのドアハンガー37が連結され、下部側に他方のドアパネル13bのドアハンガー37が連結されている。そして、ワイヤ44が走行することで、左右に並ぶドアパネル13a,13bがハンガーレール42に沿って互いに離間する戸開方向や互いに接近する戸閉方向に移動する。
【0032】
各階のホールドア13には、かごドア16の係合装置30と係合可能なインターロック装置45が設けられている。このインターロック装置45は、ホールドア13の一方のドアパネル13aの表面(エレベータホール11側から見た裏面)に取り付けられた連動レバー46及びロックレバー47を備えている。
【0033】
連動レバー46は、ほぼ直角に交わる二つのアーム部48,49を有するほぼL形状をなし、その中間屈曲部がピン50を介してドアパネル13aに回動自在に支持されている。そしてピン50には第1のローラ51が回転自在に取り付けられている。ピン50の上方側に延びるアーム部48の先端部には第2のローラ52が回転自在に取り付けられている。通常時には、第1のローラ51の中心と第2のローラ52の中心とを結ぶ仮想線が垂直線に対して傾斜する状態にある。
【0034】
ロックレバー47は、基部がピン54を介してドアパネル13aのドアハンガー37に回動自在に取り付けられ、先端部が鉤状のロック部55となっている。そして、支持ベース41にはロック部55と係脱可能なロック材56が取り付けられている。ロックレバー47の先端上部には、ホールドア13が戸閉方向に移動して閉じ切り位置に達し、ロック部55がロック材56に係合してホールドア13の閉じ切りが完全に達成されたことを検出する閉じ切り検出手段としての閉じ切り検出器58が設けられている。
【0035】
連動レバー46のアーム部49はほぼ水平方向に延び、このアーム部49の先端部とロックレバー47の中間部とが連結バー57で連結され、連動レバー46の動作が連結バー57を介してロックレバー47に伝達されるようになっている。
【0036】
ホールドア13には、ウエイトやばねなどを用いてそのドアパネル13a,13bを常時戸閉方向に付勢する自閉装置(図示せず)が設けられている。さらにその自閉装置とは別に、ドアパネル13a,13bを戸閉方向に付勢することが可能な戸閉動作補助装置60がドア枠40に取り付けられている。
【0037】
戸閉動作補助装置60は、図3及び図4に示すように、駆動源としてのソレノイド61と、このソレノイド61の励磁により駆動されるプランジャ62と、このプランジャ62の先端部に取り付けられた押圧部材63と、プランジャ62を復帰動作させるばね部材64とを備えている。
【0038】
ドアパネル13a,13bにおけるドアハンガー37の戸開方向側の上端角部は斜めに破断され、一方のドアパネル13aのドアハンガー37における斜めの破断部が受け部37aとなっている。そして、ドアパネル13a,13bが戸開状態から戸閉方向に移動して閉じ切り位置に達する直前の位置で、前記受け部37aが戸閉動作補助装置60の押圧部材63に対向するようになっている。
【0039】
戸閉動作補助装置60のプランジャ62は上下方向に延び、その下端部に押圧部材63が取り付けられ、この押圧部材63の下面が前記受け部37aと同じ角度で傾斜する押し部63aとなっている。通常時には、プランジャ62はばね部材64により押圧部材63の押し部63aがドアハンガー37の受け部37aと離間する位置に保持されている。
【0040】
一方、建屋の昇降路1内には、図1に示すように、昇降路1内で発生するドラフト風の状態を検出する検出装置68が設けられている。この検出装置68は、ドラフト風がより強く発生する傾向のある昇降路1内の上下部に設けることが好ましく、この実施形態では例えば昇降路1内の下部に配設されている。
【0041】
検出装置68は、図5及び図6に示すように、ドラフト風が流通する風洞69と、この風洞69内に設けられ、ドラフト風の強さに応じて回転する羽根車70と、この羽根車70の回転速度に基づいてドラフト風の強さを検出する検出器71とを備えている。
【0042】
図7には制御回路の構成を示してある。制御手段としての制御盤10には、エレベータの運行上の各種の指令信号と共に、ドラフト風検出装置68が検出する検出信号、閉じ切り検出器58が検出する検出信号が送られる。そしてその各信号に基づいて、制御盤10により巻上機3、ドア駆動モータ25、戸閉動作補助装置60のソレノイド61が制御される。
【0043】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0044】
かご6の昇降移動時には、各階のエレベータホール11のホールドア13及びかごドア16が戸閉状態にある。そして、ホールドア13においては、図8(A)に示すように、ロックレバー47のロック部55がロック材56に係合し、この係合でドアパネル13a,13bが互いにロックされ、その開放が不能となっている。
【0045】
この状態から、かご6が目的階に移動して着床停止するときに、その目的階におけるホールドア13のインターロック装置45が、かごドア16における係合装置30の一対の係合ベーン34a,34b間に相対的に介入する。
【0046】
この状態で、ドア駆動モータ25が駆動されてかごドア16のドアパネル16a,16bが戸開方向に移動する。そしてこの移動の直後に、図8(B)に示すように、一方の係合ベーン34aがインターロック装置45の第2のローラ52に当接し、この当接で連動レバー46が時計方向に回動し、この回動で連結バー57を介してロックレバー47が上方に押し上げられ、時計方向に回動し、この回動でロック部55とロック材56との係合が外れる。そしてドアパネル16aがさらに戸開方向に移動することで、係合ベーン34aが第1のローラ51に当接し、この当接の力でリンクバー33が回動し、その傾斜の角度が大きくなり、一方の係合ベーン34aが上昇し、他方の係合ベーン34bが下降してその両係合ベーン34a,34b間の間隔幅が狭まる。なお、係合ベーン34aの上昇状態は係合ベーン34bとかご枠41との間に渡って設けられたカムローラ機構(図示せず)により保持される。
【0047】
そして、両係合ベーン34a,34b間の間隔幅が狭まることで、その両係合ベーン34a,34bで第1のローラ51が挟まれ、これによりかごドア16のドアパネル16aとホールドア13のドアパネル13aとが互いに係合し、この係合でかごドア16のドアパネル16aとホールドア13のドアパネル13aとが一体的に戸開方向に移動する。なお、ホールドア13及びかごドア16の他方のドアパネル13b,16bもその一方のドアパネル13a,16aと連動して戸開方向に移動する。また、ホールドア13のドアパネル13a,13bが戸開方向に移動するときには、そのドアパネル13a,13bはホールドア13の自閉装置に抗して移動する。
【0048】
そして、ホールドア13及びかごドア16の戸開により乗客の乗り降りが可能となる。乗り降りが終了した後には、ドア駆動モータ25が逆回転し、かごドア16のドアパネル16a,16bとホールドア13のドアパネル13a,13bとが一体的に戸閉方向に移動する。
【0049】
そして、ドアパネル13a,13b,16a,16bが閉じ切り位置の手前側直前の位置に達したときに、カムローラ機構の解除動作で一方の係合ベーン34aが下降し、他方の係合ベーン34bが上昇してその両係合ベーン34a,34b間の間隔幅が開き、係合装置30とインターロック装置45との係合が解除される。
【0050】
図9(A)には、ドアパネル13a,13b,16a,16bが閉じ切り位置の手前側直前の位置に達したときの状態を、図9(B)には、ドアパネル13a,13b,16a,16bが閉じ切り位置に達したときの状態をそれぞれ示してある。なお、図9(A),(B)においては、かごドア16の係合装置30を省略してある。
【0051】
係合装置30とインターロック装置45との係合が解除された後には、かごドア16のドアパネル16a,16bはドア駆動モータ25の動力で戸閉方向に移動し、閉じ切り位置にまで達して停止し、ホールドア13のドアパネル13a,13bは自閉装置の付勢力で戸閉方向に移動し、閉じ切り位置にまで達して停止する。
【0052】
また、両係合ベーン34a,34b間の間隔幅が開いて係合が解除されることで、連動レバー46が自重で反時計方向に回動し、この回動で連結バー57が下降し、ロックレバー47が自重で反時計方向に回動し、そのロック部55がロック材56に係合し、この係合でホールドア13の両ドアパネル13a,13bが互いにロックされ、その開放が不能となる。この後、かご6が次の目的階に向って移動する。
【0053】
以上の説明は、昇降路1内で発生するドラフト風の強さが一定未満の場合である。ドラフト風の強さが一定以上のときには、係合装置30とインターロック装置45との係合解除後のホールドア13のドアパネル13a,13bが自閉装置の付勢力で戸閉方向に移動しようとするときに、そのドラフト風の風圧の影響でドアパネル13a,13bが閉じ切り位置にまで移動せず、ホールドア13の完全閉合が達成されないことがある。
【0054】
そこで、この実施形態では、昇降路1内で発生するドラフト風の強さが検出装置68により逐次検出され、その信号が制御盤10に送られる。制御盤10は、検出装置68が検出するドラフト風の強さが所定のしきい値未満であるか、しきい値以上であるかを比較して判定する比較判定部10aを有している。
【0055】
この比較判定部10aで検出装置68が検出するドラフト風の強さがしきい値以上であると判定されたときには、係合装置30とインターロック装置45との係合が解除された状態で、ホールドア13のドアパネル13a,13bが閉じ切り位置の手前側直前の位置にあるときに、図4(A)及び図9(A)の状態から、戸閉動作補助装置60のソレノイド61が励磁され、この励磁によるソレノイド61の駆動力で図4(B)及び図9(B)に示すように、プランジャ62が押圧部材63と一体にばね部材64に抗して下方に突出し、押圧部材63の押圧部63aがドアパネル13aの受け部37aに当接し、その受け部37aが押圧される。
【0056】
押圧部63a及び受け部37aは斜めに傾斜しているから、押圧部63aによる押圧力はドアパネル13aを戸閉方向に移動させる力として作用し、したがってドアパネル13aには自閉装置による付勢力と戸閉動作補助装置60による押圧力とが加わる。このためホールドア13がドラフト風の一定以上の風圧を受ける状態にあっても、その風圧による影響に打ち勝ってドアパネル13a,13bが戸閉方向に移動し、完全に閉じ切り位置にまで達し、ホールドア13の完全閉合を達成することができる。
【0057】
ドアパネル13a,13bが閉じ切り位置に達したときには、それが閉じ切り検出器58により検出され、その信号が制御盤10に送られる。そしてこの信号に応じて、制御盤10による制御で戸閉動作補助装置60におけるソレノイド61の励磁が解除され、プランジャ62が押圧部材63と一体にばね部材64の付勢力で上昇し、元位置に復帰する。
【0058】
ところで、この実施形態では、昇降路1内で発生するドラフト風の強さが所定のしきい値以上のときに、戸閉動作補助装置60を動作させている。ドラフト風の強さに関係なく、戸閉動作補助装置60を動作させることも考えられるが、この場合には、ドラフト風が弱く、ホールドア13の戸閉動作にその風圧の影響が及ばないときでも、ホールドア13には自閉装置による付勢力と戸閉動作補助装置60による押圧力とが加わり、この結果、ホールドア13のドアパネル13a,13bが閉じ切り位置にまで移動するときの勢いが増し、戸当り時の衝撃が大きくなって大きな衝撃音が発生し、乗客に不快感や不安感を抱かせてしまう。
【0059】
ところが、この発明の実施形態では、ドラフト風の強さが所定のしきい値以上で、ホールドア13の戸閉動作にその風圧の影響が及ぶとき、つまりホールドア13の戸閉方向の移動に一定以上の抵抗が加わっているときにのみ、戸閉動作補助装置60を動作させる構成であるから、ドアパネル13a,13bが閉じ切り位置にまで移動するときの勢いが特に増すことがなく、したがって戸当り時に大きな衝撃音が発生せず、乗客に不快感や不安感を抱かせるような不都合を防止することができる。
【0060】
図10にはこの発明の他の実施形態における戸閉動作補助装置60の構成を示してある。この戸閉動作補助装置60は、駆動源としてのモータ73と、このモータ73により回転駆動されるカム部材74とを備えている。カム部材74は、その回転中心に対して偏心するカム面74aを有している。
【0061】
そして、ホールドア13が閉じ切り位置の手前側直前の位置に達したときに、制御盤10による制御で戸閉動作補助装置60のモータ73が通電され、このモータ73によりカム部材74が回転駆動される。カム部材74の回転に応じてこのカム部材74のカム面74aがドアパネル13aの受け部37aに接触し、さらに回転することでドアパネル13aが戸閉方向に押圧され、閉じ切り位置にまで移動する。ドアパネル13aが閉じ切り位置にまで移動した後には、カム部材74がさらに回転してカム面74aが受け部37aから離脱し、元位置に復帰し、停止する。
【0062】
このような戸閉動作補助装置60においても、前記実施形態の場合と同様に、ドアパネル13aの戸閉時に、そのドアパネル13aに自閉装置による付勢力と戸閉動作補助装置60による押圧力とが加わり、したがってホールドア13がドラフト風の風圧を受ける状態にあっても、その風圧による影響に打ち消してドアパネル13a,13bを完全に閉じ切り位置にまで移動させてホールドア13の完全閉合を達成することができる。
【0063】
なお、以上において説明したこの発明の幾つかの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この発明の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。その実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…昇降路
3…巻上機
6…かご
10…制御盤
11…エレベータホール
13…ホールドア
13a.13b…ドアパネル
16…かごドア
16a.16b…ドアパネル
25…ドア駆動モータ
30…係合装置
34a.34b…係合ベーン
45…インターロック装置
46…連動レバー
47…ロックレバー
51…第1のローラ
52…第2のローラ
56…ロック材
58…閉じ切り検出器
60…戸閉動作補助装置
61…ソレノイド
62…プランジャ
63…押圧部材
68…ドラフト風検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ昇降路内のドラフト風の状態を検出するドラフト風検出手段と、
エレベータホールにおけるホールドアが戸閉方向に移動して閉じ切り位置に達する直前にそのホールドアの戸閉方向への移動を補助することが可能な戸閉動作補助装置と、
前記ドラフト風検出手段が検出するドラフト風の状態に応じて前記戸閉動作補助装置を動作させる制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータのドラフト風対策ドア装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ドラフト風検出手段が検出するドラフト風の強さが所定のしきい値以上であるときに、前記戸閉動作補助装置を動作させる制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドラフト風対策ドア装置。
【請求項3】
前記戸閉動作補助装置は、前記制御手段により制御される駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記ホールドアを戸閉方向に押圧する押圧部材と、前記ホールドアが閉じ切り位置に達した後に前記押圧部材を駆動前の元位置に復帰させるばね部材とを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータのドラフト風対策ドア装置。
【請求項4】
前記戸閉動作補助装置は、前記制御手段により制御される駆動源と、前記駆動源により駆動されて前記ホールドアを戸閉方向に押圧するカム部材とを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータのドラフト風対策ドア装置。
【請求項5】
前記戸閉動作補助装置が動作し、前記ホールドアが閉じ切り位置に達したときに、それを検出して前記制御手段に信号を出力する閉じ切り検出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータのドラフト風対策ドア装置。
【請求項6】
前記ドラフト風検出手段は、ドラフト風が流通する風洞と、この風洞内に設けられ、ドラフト風の流通に応じて回転する羽根車と、この羽根車の回転速度に基づいてドラフト風の強さを検出する検出器とを備えて成り、前記昇降路内の下部又は上部に配設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエレベータのドラフト風対策ドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−180209(P2012−180209A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45490(P2011−45490)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】