説明

エレベータの火災管制システム

本発明は、エレベータホールへ火煙が及ぶまでの時間を各階毎に予測演算して避難時間とし、この避難時間が避難階からかごを新たに救出応答させるのに要する時間よりも長い階は救出対象階と判定し、短い階は非救出対象階と判定し、更に、救出を行う順番を救出対象階毎に決定して順番に救出運転を行うようにしたものである。このため、エレベータを火災発生時の避難手段として救出対象階の残留者を救出することができる。また、順番を決定してエレベータの救出運転を行うようにしたので、火災の実状に合った救出運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、建物で火災が発生した場合に、建物内の残留者をエレベータで救出するようにしたエレベータの火災管制システムに関するものである。
【背景技術】
建物内の残留者を救出する従来のエレベータの火災管制システムは、例えば、日本国特開平5−8954号公報によれば、サービス階を複数のゾーンに分割し、各ゾーンを各別にエレベータ群でサービスするようにした建物において、火災が発生すると、火災発生階が含まれるゾーンをサービスするエレベータ群を最優先して火災管制運転をし、次に火災発生階の属するゾーンに隣接する上階のゾーンをサービスするエレベータ群を優先して火災管制運転するようにしたものが開示されている。
また、日本国特開平10−182029号公報には、火災が発生すると、火災が発生した階以外の階へかごを誘導して、かご内の乗客を避難させるようにしたものが開示されている。
ところで、建物は所定の床面積ごとに防火区画されており、火災は各防火区画から他の防火区画へ延焼することはないようになっている。エレベータの昇降路も防火区画されていて各階と遮断されている。
また、火災は被害を増大させることがある反面、スプリンクラ消火装置が作動して大事に至らない場合も多い。更に、残留者数は建物の種別及び階によって区々である。
このように、建物の火災は多様性を有しているので、火災時のエレベータのサービスを予め画一的に設定しておくことは建物火災の実態に適さない、という問題があった。
この発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、火災が発生した場合、建物及び火災の実状に合わせてエレベータを運転して残留者の救出を図ることを目的とする。
【発明の開示】
1.この発明は、建物に設置された火災感知器が作動すると救出運転によって建物内の残留者を避難階まで救出するエレベータの火災管制運転システムにおいて、エレベータホールへ火煙が及ぶまでの時間を各階毎に予測演算して避難時間とし、この避難時間が避難階からかごを新たに救出応答させるのに要する時間よりも長い階は救出対象階と判定し、短い階は非救出対象階と判定し、更に、救出を行う順番を救出対象階毎に決定して順番に救出運転を行うようにしたものである。
このため、火災発生時の避難手段としてエレベータを利用することができると共に、火煙を避けて救出対象階の残留者を救出することができる。
また、順番を決定してエレベータの救出運転を行うようにしたので、火災の実状に合った救出運転が可能となる。
2.また、この発明は、救出運転の順番を、エレベータホールへ火煙が及ぶまでの時間である避難時間が短い救出対象階から順に救出運転を行うようにしたものである。
このため、緊急を要する階から優先して残留者を救出することができる。
3.更に、この発明は、救出運転の順番を、残留者数が多い救出対象階から順に救出運転を行うようにしたものである。
このため、救出運転の進行によって各階の残留者数が略均一になり、略同時に救出を終了させることができる。
4.更にまた、この発明は、第3項に記載の発明の残留者数を、各階の在籍者名簿に予め登録された在籍者から非常階段利用の避難者を予測して減じた人数を初期値とし、それ迄にエレベータの救出運転で救出された避難者数を上記初期値から減じた人数を残留者数としたものである。
このため、救出運転の結果を反映させた現時点の残留者数を把握することができる。
5.更にまた、この発明は、第3項に記載の発明の残留者数を、エレベータを利用して各階へ入った人数からエレベータを利用して各階から出た人数を各階毎に減じた差人数としたものである。
このため、在籍者名簿によらなくても各階の残留者数を把握できるので、外来者の多い建物であっても、この発明に係るエレベータの火災管制運転システムを適用することができる。
6.更にまた、この発明は、各階のエレベータホールに設置された撮影手段によって撮影された映像から残留者数を検出するようにしたものである。
このため、エレベータを利用して避難しようとする現実の残留者数を的確に検出することができる。
7.更にまた、この発明は、救出運転手段を、救出運転順決定手段によって決定された順番に救出対象階を選択し、この選択された救出対象階へ向けて全号機のかごを避難階から一斉に起動させて残留者を救出するようにしたものである。
このため、全号機のかごが略同時に救出対象階へ到着して残留者を救出するので、避難行動がパニック状態になるのを抑止することができる。
8.更にまた、この発明は、救出運転手段を、救出運転順決定手段によって決定された順番に選択された救出対象階の残留者を避難階まで輸送するのに必要な台数のかごを割り当てて避難階から一斉に起動させて救出運転させ、残余のかごは次の順番以降の救出対象階の残留者を避難階まで輸送するのに必要な台数のかごを順番に従って順次割り当ててそれぞれ避難階から一斉に起動させて救出運転させるようにしたものである。
このため、一の救出対象階に対して余剰のかごが割り当てられることがないので、救出運転における輸送力を向上させることができ、残留者数を救出し終えるのに要する時間を短縮することができる。
9.更にまた、この発明は、エレベータホールに、救出対象階判定手段による判定結果を示す乗場用救出運転表示手段を設けたものである。
このため、エレベータホールの残留者はエレベータが救出応答するか否か容易に判断することができる。
10.更にまた、この発明は、かご内に、救出運転を示すかご用救出運転表示手段を設けたものである。
このため、かご内の乗客に緊急事態の発生を容易に知得させることができる。
11.更にまた、この発明は、各階のエレベータホールに防火戸を設け、非救出対象階と判定された階のエレベータホールを防火戸で区画するようにしたものである。
このため、エレベータホールと居室とを遮断して火災の拡大を阻止することができと共に、救出運転されなくなったエレベータホールに残留者が集中するのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの全体構成を示すブロック図である。
図2は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムを用いた建物の縦断面図である。
図3は、図2のIII−III線断面を矢視した横断面図である。
図4は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの電気回路を示すブロック図である。
図5は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの避難者数テーブル33aの内容を示す図である。
図6は、エレベータの運転曲線を示す説明用図である。
図7は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの救出応答時間テーブル33bの内容を示す図である。
図8は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムのエレベータ関連の火災感知器動作テーブル33cの内容を示す図である。
図9は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの居室関連の火災感知器動作テーブル33dの内容を示す図である。
図10は、火災が発生した場合のエレベータホールEhの温度上昇を示す説明用図である。
図11は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの避難時間テーブル33eの内容を示す図である。
図12は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの救出運転順テーブル33fの内容を示す図である。
図13は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの残留者テーブル33gの内容を示す図である。
図14は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの機械室及び昇降路の火災感知器動作検出プログラムの流れ図である。
図15は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムのエレベータホールの火災感知器動作検出プログラムの流れ図である。
図16は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの居室の火災感知器動作検出プログラムの流れ図である。
図17は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの避難時間演算プログラム及び救出運転順決定プログラムの流れ図である。
図18は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの救出対象階判定プログラム及び救出運転指令プログラムの流れ図である。
図19は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの火災管制システムの残留者数演算プログラムの流れ図である。
図20は、この発明の実施の形態2に係るエレベータの火災管制システムの救出運転順テーブル33hの内容を示す図である。
図21は、この発明の実施の形態3に係るエレベータの火災管制システムの残留者テーブル33iの内容を示す図である。
図22は、この発明の実施の形態3に係るエレベータの火災管制システムの残留者数演算プログラムの流れ図である。
図23は、この発明の実施の形態4に係るエレベータの火災管制システムの残留者数演算手段を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
実施の形態1.
図1から図19は、この発明に係るエレベータの火災管制システムの実施の形態1を示す。
この実施の形態1は、残留者数を、各階の在籍者名簿に予め登録された在籍者数から演算するものとし、また、救出運転の順番を、避難時間の短い救出対象階から順に行うようにしたものである。
図1はシステムの全体構成を示すブロック図で、かご2は巻上機1によって昇降駆動され、かご戸3によって出入口が開閉される。また、火災が発生して救出運転に切り替ったことを乗客8に知らせるかご用救出運転表示手段CAが設けられている。
建物の避難階F1は、火災対策が特別になされた階であって、火災時にかご2が救出対象階との間を往復して建物内の残留者を救出するのに使用される。居室Rm部分には火災感知器Fdが設けられている。エレベータホールEhには、火災感知器Fde、温度検出器TD及び乗場用救出運転表示手段HAが取り付けられている。この乗場用救出運転表示手段HAは、その階が救出対象階として判定されているか否かを表示してエレベータホールEhの残留者Mrsに知らせる。
火災感知器動作検出手段11は、火災感知器Fd、Fdeが動作したことを検出すると有意信号を発生する。避難時間演算手段12は、火災感知器動作検出手段11の有意信号によって作動して、図10に示したとおり、温度検出器TDによって検出されたエレベータホールEhの現在温度TEpから限界温度TEmxに達するまでの時間、即ち、避難時間Teを演算する。救出応答時間演算手段13は、図6に示したエレベータの運転曲線に基いて、避難階F1から救出対象階へかご2が昇降して戸開きする迄に要する時間、即ち、救出応答時間Trsを演算する。
救出対象階判定手段14は、避難時間演算手段12による各階の避難時間Teと救出応答時間演算手段13によるその階迄の救出応答時間Trsとを比較し、避難時間Teが救出応答時間Trs以上の場合に救出対象階と判定する。救出運転順決定手段15は、避難時間Teが短い階から順番に救出運転を行う避難時間順方式に従って決定する。救出運転手段16は、救出対象階判定手段14によって判定された救出対象階について救出運転順決定手段15によって判定された順番に救出運転を行う。
図2は、エレベータの火災管制システムを用いた建物の縦断面図で、避難階を1階F1とし、2階2Fから5階5Fからなる。
ここで、末尾の数字を除く部分の符号が図1と同一となるものは図1と同一であって、末尾の数字は異なる場所に取り付けられたことを示すものである。例えば、HA1は避難階F1に取り付けられた乗場用救出運転表示手段を示し、Fd1は2階F2の居室Rm部分に取り付けられた火災感知器を示す。以下、総称する場合は末尾の数字を省略する。
図2において、かご2は釣合錘7と共に昇降路F6内に収納され、機械室F7に設置された巻上機1によって昇降駆動される。位置スイッチ9(1)〜9(5)は各階F1〜F5に取り付けられており、かご2が到着すると作動する。総称する場合は位置スイッチ9とする。かご2が到着するとかご戸3が開閉し、かご戸3が閉じるとドアスイッチ5が作動する。2階F2〜5階F5の各エレベータホールEh2〜Eh5には防火戸Fp1〜Fp4が取り付けられていて必要時に閉鎖される。各機器は機械室F7に設置されたエレベータ制御装置10に接続されている。
図3は図2のIII−III線断面であって、4階F4の平面を示す。
同様に、末尾の数字を除く符合が図1と同一の部分は図1と同一物であって、末尾の数字は4階F4に取り付けられたことを示すものである。
図3において、エレベータホールEh4の両側には非常階段STが設けられており、非常階段利用避難者Ms3が避難するようになっている。
図4は火災管制システムの電気回路を示すブロック図である。
CPU31のバスラインには、ROM32が接続されている。このROM32には機械室F7、昇降路F6及びエレベータホールEhに取り付けられた火災感知器Fde1、Fde2及びFde3〜Fde5(以下、エレベータ関連の火災感知器として総称する場合はFdeとする。)が動作したことを検出するプログラム、居室Rmに取り付けられた火災感知器Fdが動作したことを検出するプログラム、避難時間Teを演算するプログラム、救出運転の順番を決定するプログラム、救出対象階であるか否かを判定するプログラム、救出運転を指令するプログラム、及び残留者Mrsの数を演算するプログラムが、それぞれ記録されている。
RAM33には、各階の避難者数テーブル33a、避難階F1から各階へエレベータで救出に向かう場合の時間が記録された救出応答時間テーブル33b、エレベータ関連の火災感知器Fdeの動作情況が記録される火災感知器動作テーブル33c、居室Rmに取り付けられた火災感知器Fdの動作情況が記録される火災感知器動作テーブル33d、エレベータホールEhに火災が及ぶ迄の時間が記録された避難時間テーブル33e、避難時間の短い順に救出運転の順番が記録される救出運転順テーブル33f、各階で救出を待っている残留者の数が記録される残留者数テーブル33g、及び一時的なデータが記録されるメモリからなる。
入力回路34は、火災感知器Fde、Fd、温度検出器TD、ドアスイッチ5、秤装置6、及びエレベータ制御回路35が接続されている。エレベータ制御回路35からは、かご2の位置及び起動停止の信号が入力される。
出力回路35は、エレベータ制御回路35、かご用救出運転表示手段CA、各階に取り付けられた乗場用救出運転表示手段HA、及びエレベータホールEhを区画する防火戸FPに接続されている。
なお、CPU31、ROM32、RAM33、入力回路34及び出力回路35並びにエレベータ運転回路35は、エレベータ制御装置10に組み込まれている。また、RAM33に書き込まれるデータは、各機器からの動作信号の外に、人為操作によっても書き込まれる。
図5は、避難者数テーブル33aの内容を示す図で、図2に示した建物について例示したものである。階FL(j)は階名が記録されたメモリ番地である。同様に、在籍者数Mn(j)は、各階の在籍者名簿に予め登録された在籍者の数が記録されたメモリ番地である。非常階段利用避難者数Ms(j)は、在籍者のうち非常階段STを利用して避難すると予測される人数が記録されたメモリ番地である。エレベータ利用避難者数Me(j)は、在籍者のうちエレベータを利用して避難すると予測される人数が記録されたメモリ番地である。
従って、j=1のとき、階FL(j)は階FL1となり、その番地には2階2Fが記録されている。同様に在籍者数Mn1には2階2Fの在籍者数=300人が記録されている。非常階段利用避難者数Ms1には2階2Fの非常階段利用避難者数=290人が記録されている。エレベータ利用避難者数Me1には2階2Fのエレベータ利用避難者数=10人が記録されている。
なお、階FL(j)は階名が記録されたメモリ番地であるが、以下の説明においては、その番地に記録された階名を指すこともある。即ち、j=1のときの階FL1は2階2Fを意味する。在籍者数Mn(j)、非常階段利用避難者数Ms(j)及びエレベータ利用避難者数Me(j)についても同様に、各番地に記録された内容を指すこともある。
図6は、エレベータの運転曲線を示し、かご2が救出に向かうのに要する救出応答時間Trsは、加速時間Taと、定格速度で昇降する時間Tmと、減速時間Trと、戸開時間Tdoと救出対象階で避難者がかご2に乗り込む乗車時間Tgoと戸閉時間Tdcの合計時間からなる。
戸開閉時間Tocは一定であり、乗込み人数をかご2の定員とすれば乗車時間Tgoも一定となる。従って、救出応答時間Trsは避難階F1からの距離Dsが定まれば演算することができる。
図7は、救出応答時間テーブル33bの具体例を示し、定格速度90m/min、定員11人のエレベータで、図2に示した建物の避難階F1から各階へ救出に向かうのに要する救出応答時間Trsを例示したものである。
ここで、k=1の場合、階FL1には2階2Fが記録され、避難階F1からの距離Ds1には3mが記録され、加速時間Taには1.5秒、定格速度時間Tm1には0.5秒、加速時間には1.5秒、戸開閉時間Tocには4秒、乗車時間Tgoには11人が乗車するものとして9秒が記録されている。従って、救出応答時間Trsは各時間を合計して、19.5秒となる。以下、同様である。
なお、k=1の場合の階FL1と図5のj=1の場合の階FL1とは、それぞれ異なったメモリ番地を指す。詳述するとk=1は(C+1)番地を意味し、j=1は(B+1)番地を意味する。従って、k=1の階FL1とj=1の階FL1とは、それぞれ異なった番地に記録され、同一番地が重複して使用されることはない。以下同様である。
図8は、エレベータ関連の火災感知器の動作情況が記録された火災感知器動作テーブル33cの内容を示し、図2に示した建物について例示したものである。
g=1の場合、メモリ番地Fde1には火災感知器Fde1が記録され、メモリ番地FL1には火災感知器Fde1が取り付けられた階である機械室F7が記録され、メモリ番地FNe1には動作情況を示す「OFF」が記録されている。g=2は、昇降路F6の火災感知器Fde2の動作情況が記録されている。g=3〜g=6では、エレベータホールEhの火災感知器Fde3〜Fde6の動作情況が記録されている。以下同様である。
図9は居室Rm関連の火災感知器動作テーブル33dの内容を示す図で、図2に示した建物について例示したものである。
m=1の場合、メモリ番地Fd1には火災感知器Fd1が記録され、その火災感知器Fd1が取り付けられた階が記録されたメモリ番地FL1には2階F2が記録され、火災感知器Fd1の動作情況が記録されたメモリ番地FN1には「OFF」が記録されている。
以下同様であって、m=22のメモリ番地Fd22に記録された火災感知器Fd22は、メモリ番地FL22の記載から4階4Fに設置され、その動作状況はメモリ番地FN22に「ON」と記録され、動作したことを示している。m=23の場合も同様であって、火災感知器Fd23は動作したことを示している。
図10は、火災が発生してからの時間経過によるエレベータホールEhの温度上昇を示す図である。
即ち、エレベータホールEhの室温は温度検出器TDによって検出される。救出運転を行うのに許容される室温の最高温度を限界温度TEmxとすると、その室温が、現在室温TEpから限界温度TEmxに達する迄の時間が避難時間Teとなる。避難時間Teは時間経過と共に減少するとは限らない。現実にはスプリンクラが作動し、消火活動がなされるので、現在室温TEpは低下することも想定される。低下した場合は、避難時間Teは長くなる。このため、避難時間TeはエレベータホールEhの室温を温度検出器TDによって常時検出して演算する必要がある。
図11は、避難時間テーブル33eの内容を示す図で、図2に示した建物について例示したものである。
i=1の場合、メモリ番地FL1には2階F2が記録され、メモリ番地TEp1には温度検出器TD1から読み取られたエレベータホールEh1の現在室温TEp=24°Cが記録され、メモリ番地Te1には避難時間Te=90分が記録される。以下、同様である。
図12は、救出運転順テーブル33fの内容を示す図で、図11に示した避難時間テーブル33eに記録された避難時間Teが短い階から順番に配列したものである。
p=1の場合は、避難時間テーブル33eのi=4の各値が記録される。即ち、図12においてメモリ番地FL1には4階F4、メモリ番地Te1には10分が記録される。以下、同様である。
なお、既に述べたとおり、p=1の場合のメモリ番地FL1と図11のi=1の場合のメモリ番地FL1とは、それぞれ異なったメモリ番地である。詳述するとp=1は(U+1)番地を意味し、i=1は(A+1)番地を意味する。従って、それぞれ異なった番地であり、同一番地が重複して使用されることはない。メモリ番地Te1についても同様である。
図13は、残留者テーブル33gの内容を示す図で、図5の避難者数テーブル33aに記録されたエレベータ利用避難者数Meを初期値とし、それ迄にエレベータの救出運転で救出された避難者数を上記初期値から減じた人数を各階ごとに演算して残存者数Mrsとして記録したものである。従って、救出運転によって救出される迄は、エレベータ利用避難者数Meと残存者数Mrsは同値となる。
即ち、h=1の場合、階を示すメモリ番地FL1には2階F2が記録され、メモリ番地Me1には避難者数テーブル33aから転記されたエレベータ利用避難者数=10人が記録され、メモリ番地Mrs1には残留者数=10人が記録される。以下、同様である。
なお、h=3では、メモリ番地Me3に300人と記録され、メモリ番地Mrs3に260人と記録されている。40人がエレベータによって既に救出されたことを意味する。
次に、図14から図19に基いて、エレベータの火災管制システムの動作を説明する。この動作は、所定の時間間隔で繰り返される。
図14は、機械室F7及び昇降路F6に取り付けられた火災感知器Fde1及びFde2の動作を検出するプログラムである。
手順S11で、機械室F7の火災感知器Fde1が動作したか調べる。動作した場合は手順S12で火災感知器動作テーブル33cの動作情況を示すメモリ番地FNe1(以下、動作情況FNe1という。)を「ON」に設定する。手順S13で、かご2を避難階F1へ帰着させるようにエレベータ制御回路35に指令する。手順S14で、かご2が避難階F1へ帰着し、戸開きした後戸閉して待機状態になるのを待って、手順S15で運転モードDMを運転休止に設定する。手順S16で、かご用及び乗場用救出運転表示手段CA及びHAに、「運転休止」の案内表示をして処理を終了する。従って、この場合は救出運転は行われない。
手順S11で、機械室F7の火災感知器Fde1が動作していなかった場合は、手順S17へ移り、昇降路F6の火災感知器Fde2が動作したか調べる。動作した場合は、動作情況FNe2を「ON」に設定して順S13へ移り、以下上記のとおり処理される。
手順S17で、昇降路F6の火災感知器Fde2が動作していなかった場合は図15に示す処理に移る。
図15は、エレベータホールEhに取り付けられた火災感知器Fde3〜Fde6の動作を検出するプログラムである。
手順S21でg=3に設定し、手順S22で2階F2の火災感知器Fde3が動作したか調べる。動作した場合は、手順S23で火災感知器動作テーブル33cの動作情況FNe3を「ON」に設定する。手順S24で、階FL3=2階F2のエレベータホールEh2の防火戸FP1に対し閉鎖指令を出す。手順S25で、運転モードDMが未だ救出運転指令になっていない場合は、手順S26で救出運転指令に設定して手順S27で避難階F1へかご2を帰着させるようにエレベータ制御回路35に指令する。手順S28で救出運転表示手段CA及びHAに、「救出運転」の案内表示をする。手順S25で、既に救出運転指令になっている場合は、手順S28へ移って上記表示をして手順S30へ移る。
手順S22で火災感知器Fde3が動作していない場合は手順S29へ移り、火災感知器動作テーブル33cの動作情況Ne3を「OFF」に設定して手順S30へ移る。
手順S30及び手順S31を介してエレベータホールEhに取り付けられた最後の火災感知器Fde(g)まで処理をして図16に示す処理に移る。
図16は、居室Rmに取り付けられた火災感知器Fd(m)の動作を検出するプログラムである。
手順S41で、m=1に設定する。ここで、変数mは、図9に示す火災感知器動作テーブル33dに係るものであることを示す。手順S42及び手順S43で火災感知器Fd1が動作したか調べる。動作した場合は、手順S44で火災感知器動作テーブル33dの動作情況FN1を「ON」に設定する。手順S45で、運転モードDMが未だ救出運転指令になっていない場合は、手順S46で救出運転指令に設定して手順S47で避難階F1へかご2を帰着させるようにエレベータ制御回路35に指令する。手順S48で救出運転表示手段CA及びHAに、「救出運転」の案内表示をする。手順S45で、既に救出運転指令になっている場合は、手順S48へ移って上記表示をして手順S50へ移る。
手順S43で火災感知器Fd1が動作していない場合は手順S49へ移り、火災感知器動作テーブル33dの動作情況FN3を「OFF」に設定して手順S50へ移る。
手順S50及び手順S51を介してエレベータホールEhに取り付けられた最後の火災感知器Fd(m)まで処理をして図17に示す処理に移る。
図17は、避難時間Teを演算して救出運転順を決定するプログラムである。
手順S61で、運転モードDMは救出運転指令になっているか調べる。
救出運転指令になっていない場合は手順S72へ移り、運転モードDMを平常運転指令に設定して処理を終了する。
救出運転指令になっている場合は、手順S62でi=1に設定する。ここで、変数iは、図11に示す避難時間テーブル33eに係るものであるから、階FL1=2階2Fとなる。手順S63で、階FL1=2階2FのエレベータホールEh2の現在室温TEpを温度検出器TD1から読み取り、避難時間テーブル33eの現在室温TEp1へ記録する。手順S64で、室温TEpに対する避難時間Teを図10に基いて演算して避難時間テーブル33eの避難時間Te1へ記録する。手順S65及び手順S66を介して変数iが最後になるまで上記処理を繰り返して避難時間テーブル33eを完成させた後手順S67へ移る。
手順S67から手順S71は、避難時間テーブル33eに基いて救出運転の順番を決定する処理である。
救出運転は高階を優先するものとする。そこで、手順S67から手順S70の処理によって、低階から高階の順番に配列された避難時間テーブル33eから、高階から低階の順番に配列を替えて救出運転順テーブル33fを作成する。更に、手順S71で、救出運転順テーブル33fについて避難時間Te(p)が最短の階FL(p)を最先、即ちp=1のメモリ番地に記録し、以下増大する順に階FL(p)を配列替えをして救出運転順テーブル33fを完成させた後、図18に示す処理に移る。ここで、手順S71の配置替えの処理は周知されているので詳細は省く。
図18は、救出対象階の判定と、所定の順番に救出運転を指令するプログラムである。
手順S81で、かご2が全台避難階F1へ帰着して戸閉待機の状態にあるか調べる。戸閉待機の状態の状態にない場合は、図19に示す処理へ移る。戸閉待機の状態になっている場合は、手順S82で救出運転可能なかごの台数をエレベータ制御回路10から検出してかご台数Navに書き込む。手順S83で、変数p=1に設定する。手順S84で、救出運転順テーブル33fから避難時間Te1=10分を読み取る。手順S85で、階FL1の救出応答時間Trs(k)を読み取る。即ち、変数pは、図12に示す救出運転順テーブル33fに係るものであるから、階FL1=4階4Fとなる。従って、救出応答時間Trs(k)は図7において、4階4Fの救出応答時間Trs(4)=29.5秒となる。手順S86で、避難時間Te1=10分と救出応答時間Trs(4)=29.5秒が比較される。避難時間Te1=10分の方が長いので手順S89へ移り、階FL1の残留者数Mrs(h)を読み取る。ここでも同様に、階FL1=4階4Fであるから、図13において、残留者数Mrs4=260人となる。従って、手順S90から手順S91へ移り、残留者数Mrs4=260人を救出するために必要なかご台数Ncarを算出する。即ち、かご2の定員をCap=11人とすると、必要かご台数Ncar=(残留者数Mrs4=260人)/(かご定員Cap=11人)=23.6台となる。小数点以下を切り上げて必要かご台数Ncar=24台となる。必要かご台数Ncarは運転可能かご台数Nav=4台以上であるから、手順S93へ移り、運転可能な全台数Navのかご2に対して階FL1=4階4Fへ救出運転指令を出して図19のプログラムへ移る。上記救出運転指令に基いてエレベータ運転回路35はかご2を4階4Fまで運転する。
手順S92で、残留者数Mrs(h)が減少して運転可能な全台数Navのかご2を必要としない場合は、手順S94へ移り、必要かご台数Ncarを階FL(p)へ向けて救出指令を出す。手順S95で、残台数(Nav−Ncar)を新たに運転可能かご台数Navとして設定する。手順S96で、最後の順番の階FL(p)まで救出運転がなされた場合は図19に示すプログラムへ移る。最後の順番ではない場合は、手順S97を介して手順S84へ移り、次の順番の階階FL(p)の避難時間Te(p)を読み取り、以下、上記処理を繰り返す。
手順S86で、現在室温TEpが上昇して避難時間Te(p)が短くなり、救出応答時間Trs(k)を下回った場合は、手順S87へ移り、その階FL(p)の防火戸FPの閉鎖を指令する。手順S88で、階FL(p)の乗場用救出運転表示手段HAに「救出運転不能」を表示して手順S96へ移る。最後の順番の階FL(p)まで救出運転がなされた場合は図19に示すプログラムへ移る。
図19は、各階の残留者数を演算するプログラムである。救出運転によって残留者数が変動するので、その変動に対応して残留者数を修正するものである。
手順S101で変数h=1に設定する。手順S102で、かご2の号機番号を示す変数nc=1に設定する。手順S103で、1号機のかご2が階FL(h)、即ち、階FL1に停止しているか調べる。変数hは、図13に示す残留者テーブル33gに係るものであるから、階FL1=2階2Fとなる。
手順S103と手順S104は、かご2の積載荷重Wcを秤装置6で量るタイミングを検出する処理である。即ち、手順S103でかご2が2階2Fに停止しているかチェックし、手順S104で戸3が閉じて避難階F1へ向けて起動する直前であるかチェックする。上記両条件が成立しない場合は手順S107へ移る。上記両条件が成立する場合は、手順S105で、秤装置6の出力を読み取って積載荷重Wcを算出する。この積載荷重Wcを乗客8の1人当りの体重=65kgで割って乗車人数Menを算出する。手順S106で、(残留者数Mrs1−乗車人数Men)を演算し、その結果を新たな残留者数として残留者数Mrs1に書き込む。この書込みによって残留者数Mrs1は修正されたことになる。手順S107及び手順S108で、次の号機について同様の処理を行う。最後の号機まで処理したならば、手順S109と手順S110で、h=2、即ち、階FL2=3階F3について同様の処理を行う。手順S109で、最後の階まで処理したならば終了する。
以上で、救出運転の一巡の処理を終了する。所定の時間間隔を置いて、図14の手順S11から処理が再開され、火災状況の変化に対応した救出運転が行われる。
上記実施の形態1によれば、エレベータホールEhへ火煙が及ぶまでの避難時間Teを各階毎に予測演算し、この避難時間Teが避難階F1からかご2を新たに救出応答させるのに要する救出応答時間Trsよりも長い階は救出対象階と判定し、短い階は非救出対象階と判定し、救出対象階について残留者を救出するようにしたので、火災がエレベータに及ぶ迄の間に救出運転を行うことができる。
また、救出運転の順番を、避難時間Teが短い救出対象階から順に救出運転を行うようにしたので、緊急を要する階から優先して残留者を救出することができ、火災の実状に合った救出運転が可能となる。
更に、各階の在籍者名簿に予め登録された在籍者数から非常階段利用の避難者数を予測して減じた人数をエレベータ利用の避難者数Meとし、それ迄にエレベータの救出運転で救出された人数を上記避難者数Meから減じた人数を残留者数Mrsとしたので、外来者が少ない事務所ビルの場合は、残留者数Mrsを正確に把握することができると共に、残留者Mrsの居なくなった階へは、かご2は運転されないので、効率的な救出運転が可能となる。
更にまた、選択された救出対象階へ向けて全号機のかご2を避難階F1から一斉に起動させて全号機のかご2が略同時に救出対象階へ到着するようにしたので、避難行動がパニック状態になるのを抑止することができる。
更にまた、救出対象階の残留者Mrsを避難階F1まで輸送するのに必要な台数のかご2を割り当てて避難階F1から一斉に起動させて救出運転させ、残余のかご2は次の順番以降の救出対象階の残留者Mrsを避難階F1まで輸送するのに必要な台数のかご2を順次割り当ててそれぞれ避難階F1から一斉に起動させて救出運転させるようにしたので、一の救出対象階に対して余剰のかご2が割り当てられることがないので、救出運転における輸送力を向上させることができ、残留者数を短時間で救出することができる。
更にまた、エレベータホールに、乗場用救出運転表示手段HAを設けて救出運転の情況を表示するようにしたので、エレベータホールEhの残留者Mrsはエレベータが救出応答するか否か容易に判断することができる。
更にまた、かご2内にも救出運転を示すかご用救出運転表示手段CAを設けたので、かご2内の乗客8に緊急事態の発生を容易に知得させることができる。
更にまた、各階のエレベータホールEhに防火戸FPを設け、非救出対象階と判定された階のエレベータホールEhを防火戸FPで区画するようにしたので、エレベータホールEhと居室Rmとを遮断して火災の拡大を阻止することができと共に、残留者MrsがエレベータホールEhに集中するのを阻止することができる。
なお、上記実施の形態1では建物を5階としたが、これに限られるものではない。建物に合わせて各データテーブル33a〜33gに相当するデータテーブルを作成することにより各種の建物に適用することができる。このことは上記記載から容易に類推できる。
実施の形態2.
図20は実施の形態2を示す。この実施の形態2は、残留者数が多い救出対象階から順番に救出運転を行うようにしたものである。
即ち、図20は残留者数順に配列された救出運転順テーブル33hを示し、図13の残留者テーブル33gに示す各階の残留者数Mrsを多い順に配列したものである。その配列は、図17の手順S67〜手順S71に準ずる処理によって作成されるものであり、容易に類推されるので、詳細は省略する。
上記実施の形態2によれば、救出運転の進行によって各階の残留者数Mrsが略均一になり、略同時に救出を終了させることができる。
実施の形態3.
図21及び図22は実施の形態3を示す。この実施の形態3は、残留者数を、エレベータを利用して階へ入った人数からエレベータを利用して階から出た人数を減じた差人数を各階毎に集計したものである。実施の形態1における図13の残留者テーブル33gと図19の残留者数演算プログラムに替えて、図21の残留者テーブル33iと図22の残留者数演算プログラムを使用して救出運転を行うようにしたものである。
図21は、残留者テーブル33iの内容を示し、階FL(h)には各階名が記録され、到着者数Mr(h)にはかご2から階FL(h)へ入った人数の集計値が各階毎に記録され、出発者数Ms(h)には階FL(h)からかご2へ入った人数の集計値が各階毎に記録される。エレベータ利用避難率α(h)にはエレベータを利用して避難すると思われる人数の割合が各階毎に記録される。残留者数Mrs(h)には、{Mr(h)−Ms(h)}×α(h)の演算結果が各階毎に記録される。
図22は、各階の残留者数を演算するプログラムで、残留者テーブル33iを構築するものである。
手順S121で、かご2の号機番号を示す変数nc=1に設定する。手順S122で、変数h=1に設定する。手順S123で、1号機のかご2が階FL(h)、即ち、階FL1に停止しているか調べる。変数hは、図21に示す残留者テーブル33iに係るものであるから、階FL1=2階2Fとなる。階FL1に停止していなければ、手順S123、手順S124及び手順S125によって各階FL(h)毎に1号機が停止しているか調べる。いずれの階FL(h)にも停止していなければ、手順S136及び手順S137により、順次に号機番号を進めて最後の号機まで調べる。
手順S123〜手順S129は、到着者数Mr(h)を演算する処理である。手順S123で、1号機のかご2が階FL1=2階2Fに停止した場合は手順S126へ移り、かご2が到着後かご戸3を開く直前であるか調べる。即ち、手順S126は、かご2の積載荷重Wcを秤装置6で量るタイミングを検出する処理である。戸開直前の場合は手順S127へ移り、秤装置6の出力を読み取って積載荷重Wcを算出する。この積載荷重Wcを乗客8の1人当りの体重=65kgで割って乗車人数Menを算出する。手順S128で、それまでの階FL1への到着者数Mr1に上記乗車人数Menを加算する。手順S129で、加算した値を新たな到着者数Mr1として記録する。他の階FL(h)も同様の処理が行われる。
手順S130〜手順S135は、出発者数Ms(h)を演算する処理である。手順S123で1号機のかご2が階FL1=2階2Fに停止し、手順S130で、かご2がかご戸3を閉じて起動直前であるか調べる。即ち、手順S130は、かご2の積載荷重Wcを秤装置6で量るタイミングを検出する処理である。起動直前の場合は手順S131へ移り、秤装置6の出力を読み取って積載荷重Wcを算出する。この積載荷重Wcを乗客8の1人当りの体重=65kgで割って乗車人数Menを算出する。手順S132で、それまでの出発者数Ms1に上記乗車人数Menを加算して新たな出発者数Ms1とする。手順S133で、それ迄に階FL1=2階2Fに到着した到着者数Mr1から出発者数Ms1を減算して差人数Δm(=Mr1−Ms1)を算出する。手順S134で、差人数Δmに階FL1=2階F2のエレベータ利用避難率α1=1/30を乗じた値を、それ迄の残留者数Mrs1に加算して新たな残留者数Mrs1とする。手順S135で、修正された新たな出発者数Ms1及び残留者数Mrs1を残留者テーブル33iに記録する。
他の階FL(h)についても同様に、手順S126及び手順S130のタイミングで到着者数Mr(h)及び出発者数Ms(h)を演算して残留者数Mrs(h)を算出する。
以上により作成された残留者テーブル33iによっても、実施の形態1及び2と同様に、エレベータによる火災時の救出運転が可能となる。
上記実施の形態3によれば、エレベータを利用した人数から残留者数残留者数Mrs(h)を演算するようにしたので、在籍者名簿によらなくても各階の残留者数Mrs(h)を把握でき、外来者の多い建物における残留者数の把握に有益である。
実施の形態4.
図23は実施の形態4を示す。この実施の形態4は、各階のエレベータホールに設置された撮影手段によって撮影された映像から残留者数を検出するようにしたものである。
図23は残留者数演算手段の構成を示すブロック図である。図中、図4と同符号は同一部分を示す。
撮影手段であるテレビカメラ41でエレベータホールEhを撮影し、無人のエレベータホールEhを予め撮影してその画像を背景画像記憶手段42に記憶させておく。画像サンプル手段43は一定の周期でテレビカメラ41から画像を取り込む。減算手段44は、背景画像記憶手段42の背景画像と画像サンプル手段43の画像との差分画像を出力する。この差分画像は絶対値演算手段45で絶対値画像に変換される。この絶対値画像の各画素は、2値化手段46で所定の基準値βと比較され、基準値β以下の場合は画素値を「0」、即ち「変化無し」とし、基準値βよりも大きい場合は画素値を「1」、即ち「変化有り」とする。変化面積演算手段47で画素値=1の画素をカウントして変化面積Sを演算する。割算手段48で変化面積Sを、エレベータホールEhの残留者の画像の1人当りの占有面積γで割って残留者数Mrsを算出する。この残留者数Mrsは各階毎に演算されて入力回路34を介してRAM33の残留者テーブル33g又は33iの残留者数Mrs(h)に記録される。
上記実施の形態4によれば、各階のエレベータホールに設置された撮影手段によって撮影された映像から残留者数を検出するようにしたので、エレベータを利用して避難しようとする現実の残留者数を的確に検出することができ、火災時の実状に合ったエレベータによる救出運転が可能となる。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明にかかるエレベータの火災管制運転システムは、エレベータの設置された建物において、火災発生時の避難手段として広く利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置された火災感知器が作動すると救出運転によって上記建物内の残留者を避難階まで救出するエレベータの火災管制運転システムにおいて、エレベータホールへ火煙が及ぶまでの時間を各階毎に予測演算して避難時間とする避難時間演算手段と、上記避難時間が上記避難階から上記かごを新たに救出応答させるのに要する時間よりも長い上記階は救出対象階と判定し、短い上記階は非救出対象階と判定する救出対象階判定手段と、上記救出を行う順番を上記救出対象階毎に決定する救出運転順決定手段と、上記順番に従って上記かごの救出運転を行う救出運転手段とを備えたエレベータの火災管制運転システム。
【請求項2】
救出運転順決定手段を、避難時間が短い救出対象階から順番に救出運転を行うように決定する避難時間順方式とした請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項3】
救出運転順決定手段を、残留者数が多い救出対象階から順番に救出運転を行うように決定する残留者数順方式とした請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項4】
残留者数は、各階の在籍者名簿に予め登録された在籍者から非常階段利用の避難者を予測して減じた人数を初期値とし、それ迄にエレベータの救出運転で救出された避難者数を上記初期値から減じた人数とした請求項3に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項5】
残留者数は、エレベータを利用して各階へ入った人数から上記エレベータを利用して上記各階から出た人数を上記各階毎に減じた差人数とした請求項3に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項6】
残留者数は、各階のエレベータホールに設置された撮影手段によって撮影された映像から検出された人数とした請求項3に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項7】
救出運転手段を、救出運転順決定手段によって決定された順番に救出対象階を選択し、この選択された救出対象階へ向けて全号機のかごを避難階から一斉に起動させて残留者を救出するものとした請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項8】
救出運転手段を、救出運転順決定手段によって決定された順番に救出対象階を選択し、この選択された救出対象階の残留者を避難階まで輸送するのに必要な台数のかごを割り当てて上記避難階から一斉に起動させて救出運転させ、残余の上記かごは次の順番以降の上記救出対象階の上記残留者を上記避難階まで輸送するのに必要な台数の上記かごを上記順番に従って上記救出対象階に順次割り当ててそれぞれ上記避難階から一斉に起動させて救出運転させるものとした請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項9】
エレベータホールに、救出対象階判定手段の判定結果を示す乗場用救出運転表示手段を設けた請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項10】
かご内に、救出運転を示すかご用救出運転表示手段を設けた請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システム。
【請求項11】
請求項1に記載のエレベータの火災管制運転システムにおいて、各階のエレベータホールに防火戸を設け、救出対象階判定手段によって判定された非救出対象階の上記エレベータホールを上記防火戸で区画するようにしたエレベータの火災管制運転システム。

【国際公開番号】WO2004/101418
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571841(P2004−571841)
【国際出願番号】PCT/JP2003/005977
【国際出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】