説明

エレベータシステム

【課題】安全性と、アベイラビリティと、を両立させ、例えば、かご内乗客の安全性を確保しつつエレベータの不要な非常停止(乗客の閉じ込め)を回避する。
【解決手段】乗りかご20に設けられたかごドア21のドア開き異常を検出して乗りかごの走行を制御するエレベータシステムにおいて、各階において、乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置しているか否かを検出するドアゾーンセンサ27と、かごドア21の移動量を検出するドア位置センサ24の信号に基づいて、乗りかごのかごドア開き量を算出する安全制御コントローラ10と、を備え、ドアゾーンセンサ27により乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、かごドア開き量に応じて乗りかご20の走行を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開き異常に対して乗客の安全を確保するエレベータシステムに関し、特に、ドアの開き状態の誤検出を無くし、より安全性とサービス性の向上を図ったものに好適である。
【背景技術】
【0002】
エレベータかごドアのドア開き異常(戸開異常)は、エレベータのドアが本来開いていてはいけない場所(例えば、階と階の間)で、故障等によりドアが開く異常である。ドア開き異常は、機械式のスイッチ(ゲートスイッチと呼ばれるマイクロスイッチ)を設けて、ドアが閉まっている時にスイッチが動作(オン)してドア閉じ状態と検出され、オフとなることでドア開き状態と判別される。
【0003】
また、別のセンサは、かごドアが開くことを許可されたドア開き可、あるいは不可な位置であるかどうかを検出し、エレベータの制御装置は、ドア開き不可の位置でゲートスイッチがオフの場合、かごドア開き異常と判断してかごを非常停止させる。
【0004】
さらに、ドアが完全に閉じられた後にエレベータを起動すること、起動後、走行中に振動等によりドアが開く方向に移動して、エレベータを急停止し、乗客をかごの中に閉じ込めたままの状態としないこと、のため、かごドアが閉じ端に接近したことを検出する第1スイッチと、かごドアが閉じ端に完全に達したことを検出する第2スイッチと、を設け、第1と第2スイッチが共に閉路した状態のときにエレベータの起動すること、第1スイッチのオン信号の出力後に第2スイッチのオン信号が一瞬でも出力されればその信号状態を保持して、かごの走行を継続維持させること、が知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−144859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術においては、第2スイッチの場合は良いが、第1のスイッチは機械式スイッチであるので、ドア開閉毎にスイッチがオンオフ動作するため、接点の摩耗やばねの劣化、かごの揺れ(例えば、レールのゆがみによるものや乗客が故意に揺らすなどエレベータかごの故障ではない揺れ)により、接点が離れてオフ状態になり、エレベータの故障ではないにも関わらず、エレベータが非常停止し、乗客をかご内に閉じ込める恐れがある。
【0007】
さらに、いずれのスイッチも機械式スイッチであるので、単純にスイッチが動作したか否かの単一的な判定でドア開きの安全性を判定することになり、非常停止(乗客の閉じ込め)が発生しやすい可能性がある。つまり、潜在的に閉じ込めや長期の動作停止を起こす可能性があり、エレベータ利用者全体に対する利便性(アベイラビリティ)が損なわれ易い。
【0008】
また、第1および第2のスイッチの検出位置の設定が困難であり、例えば、閉じ端から離れた位置で検出すると、かごドアの開きを見逃すことになり、逆に、閉じ端から近い位置で検出すると、小石等による誤動作でエレベータが非常停止させられることが起こりやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、長期間の信頼性を確保し、安全性と、アベイラビリティ(availability可用性:高い=故障が少なく、正常な状態で使い続けることができる。:低い=システムは頻繁にエラーや故障が発生し、修理や修復などが多くなるため、正常に運用できる時間は少なくなる。)と、を両立させ、例えば、かご内乗客の安全性を確保しつつエレベータの不要な非常停止(乗客の閉じ込め)や動作停止継続を回避することにある。
また、他の目的は、乗客により安心感のあるサービスとするため、エレベータのドア開き異常が起こった場合等に対して詳細で適切な情報をかご内の乗客に通知することにある。
なお、本発明は、上記目的の少なくともいずれかを達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、乗りかごに設けられたかごドアのドア開き異常を検出して前記乗りかごの走行を制御するエレベータシステムにおいて、各階において、前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置しているか否かを検出するドアゾーンセンサと、前記かごドアの移動量を検出するドア位置センサの信号に基づいて、前記乗りかごのかごドア開き量を算出する安全制御コントローラと、を備え、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量に応じて前記乗りかごの走行を制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、かごドア開き量に応じて乗りかごの走行を制御するので、ドア開き異常に対してかご内乗客の安全性を確保しつつエレベータの不要な非常停止(乗客の閉じ込め)を回避することができる。したがって、安全性とアベイラビリティとを両立させ、乗客の安心感,利便性を損なうことのないサービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における一実施の形態を示す全体構成図。
【図2】一実施の形態による安全制御コントローラのブロック図。
【図3】一実施の形態によるドア開き保護システムのブロック図。
【図4】従来技術と一実施の形態とによるドア開き異常の違いを説明グラフ。
【図5】一実施の形態によるかごドア開き検出時の保護動作を説明するグラフ。
【図6】一実施の形態によるドア位置検出を示すブロック図。
【図7】一実施の形態によるドア開き異常に対する保護動作を説明するグラフ。
【図8】他の実施の形態によるドア開き異常に対する保護動作を説明するグラフ。
【図9】一実施の形態による安全制御コントローラのフローチャート。
【図10】一実施の形態による安全制御コントローラの詳細フローチャート。
【図11】一実施の形態によるかご内情報の表示例を示す正面図。
【図12】さらに、他の実施の形態によるドア開き異常に対する保護動作を説明するグラフ。
【図13】一実施の形態によるかごドア開き量の異常を判定するブロック図。
【図14】一実施の形態によるかごドア開き量の異常判定を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一実施の形態について詳細を説明する。
電子安全化されたエレベータシステムは、安全装置として安全制御コントローラ(例えば、二重化構成の高信頼なマイコンで実装)を中心とする電子装置で構成される。安全制御コントローラは、入力される複数のセンサや安全スイッチの情報を組み合わせてエレベータの安全状態を判定する。安全状態の判定処理はソフトウエアを用いたより高度で高機能な安全制御が実現可能となる。また、従来の機械式安全システムは、スイッチやリレーで異常を判定するため、一次元的な判定のみであったが、電子安全化されたエレベータシステムは、安全制御コントローラ上でのソフトウエアによる判定処理のため、複数の状態信号を組み合わせた多次元のより高度な判定が可能となる。
【0014】
本エレベータシステムは、かごドアの位置をセンサで連続的に検出して、この信号を安全制御コントローラに取り込んで、かごドアの開き量(開き幅,開き距離)を算出し、かごドアの開き量に応じてより適切にかご内乗客の安全を確保して運転制御する。
【0015】
図1は、エレベータシステムを示す全体構成図であり、エレベータの乗りかご20と釣合いおもり60が主ロープで結ばれて、モータ43で駆動されるシーブ(綱車)44の回転によって、乗りかご20が上下に移動する。モータ43は、主電源40からの交流電力を主電源コンタクタ41を介して電力変換器(インバータ)42によって任意の周波数の交流電力に変換させて可変速度で駆動される。電力変換器42はエレベータの運転制御全般を担う運転制御コントローラ11によって制御される。
【0016】
安全制御コントローラ10はエレベータの安全全般を担うコントローラであり、運転制御コントローラとは処理的に独立している。安全制御コントローラ10は、例えば乗りかごのドア21の閉じ端の開き量(符号26で示す距離)をドア位置センサ24,かごドアを駆動するドアモータ23のエンコーダ22の信号から算出して、ドア開きの異常が発生したと判定した場合にはかご内情報通知装置29,安全制御コントローラ10,主電源コンタクタ41,ブレーキ用コンタクタ47の内の必要なものに指令を出力する。
【0017】
エレベータの乗りかご20には、左右に2枚のかごドア21が備え付けられている(本例は中央開き、片側開も同様)。かごドア21はベルトを介してドアモータ23で駆動されて開閉する。かごドアの開閉は、ビルの各階に設定されたドア解錠ゾーン(ドアゾーン)と呼ばれるドア開閉が可能な位置でのみ許可される。ドアゾーンセンサ27はドア解錠ゾーン(ドア開閉可能位置:ドアゾーン)を検出する。
【0018】
乗りかごに設けられたドアゾーンセンサ27が、各階に取り付けられた被検出板28(図示していないが各階毎に取り付けられている)を検出することによって、その階のドア開きが可能な位置を検出する。ドアゾーンセンサは光電センサ,渦電流センサ,磁気センサ,静電容量センサなどを用いる。
【0019】
ドア解錠ゾーン以外でかごドアが開くことは、かご内の乗客にとって安全性を損なう。例えば、階と階の間でドアが開くと最悪の場合、乗客が転落する恐れがあり、また階間走行中にドアが開いてその隙間から手などが出ると怪我などとなる可能性がある。
【0020】
ドア位置センサ24と被検出体25、およびドアモータ23の回転量を検出するエンコーダ22によって、かごドアの移動量(移動距離)を検出して、これらの信号によりかごドアの開き量を安全制御コントローラ10で検出する(算出する)。そのため、ドアゾーンセンサ27,ドア位置センサ24およびドアモータのエンコーダ22の信号はそれぞれ安全制御コントローラ10に入力されている。また、安全制御コントローラ10に入力する安全関連信号としては、防振ゴム30のたわみ量から乗りかご内の積載重量(かご内乗り人数に関係)を検出する荷重センサ31の出力信号、ドアモータ23の電流センサの信号(信号線のみ図示)、ドア付近の乗客を検出する乗客検出センサ51の信号、乗りかごの速度を検出するガバナ13に取り付けられたガバナエンコーダ14の信号がある。
【0021】
安全制御コントローラ10は、ドア位置センサ24による被検出体25の検出信号と、ドアモータのエンコーダ22の信号と、からドア閉じ端の位置を算出し、かごドア開き量(符号26で示した長さ)を算出する。ドア位置センサは反射式光学センサを用いることが良く、被検出体には反射率が異なるマーカ列が備えられたものを用いる。被検出体のマーカの数をカウントすることによって、ドア位置の移動量を検出する。図において、ドアが完全に閉じた状態から少し開くケースを想定した場合、被検出体25の左端からの距離Yをドア位置センサ24によりマーカ列をカウントすることで検出し、距離Y,ドア位置センサのドア閉じ端からの距離A,被検出体のドア閉じ端からの距離Bを用いて、A−(B+Y)を計算することにより、かごドア開き量を算出する。
【0022】
安全制御コントローラ10は、かごドア開き量に基づいてドア開き異常を判定して、ドア開き異常と判定した場合には、対応する安全制御動作を定めて、かご内情報通知装置29,運転制御コントローラ11,主電源コンタクタ41,ブレーキ用コンタクタ47に動作指令を出力する。
【0023】
かご内情報通知装置29は音声や画像,映像によってかご内の乗客に情報を通知する。ドア開き異常と判定された場合、かご内情報通知装置29は、安全制御コントローラ10から送られた異常判定結果、かごドア開き量,安全動作制御の内容に関する情報に基づいて、かごドア開き異常に対する注意の通知,かごドア開き量の通知,異常、あるいは異常に対する安全動作に関連した通知を行う。
【0024】
運転制御コントローラ11はエレベータの運転制御を行い、ドア開き異常と判定された場合、安全制御コントローラ10に基づいて、ドア開き量に応じたエレベータの運転速度(乗りかごの走行速度)の変更を実施する。その詳細は図4により説明する。ドアの開き量に応じて危険度合いが変わるとし、ドア開き量が小さい場合(危険性が小さい場合)には、かごの速度を下げて運転を継続させ、かご内乗客の安全性を保ちつつ、エレベータのアベイラビリティ(可用性)を維持するような制御を実施する。ドア開き異常と判定されて、速度を下げて運転する場合、運転制御コントローラではシーブ44またはモータ43のエンコーダ45信号をフィードバックさせて所望の回転速度となるように電力変換器42を制御する。
【0025】
主電源コンタクタ41,ブレーキ用コンタクタ47は、それぞれ乗りかご駆動のための主電源,ブレーキ作動に関わるブレーキ電源を遮断するもので、これらが遮断されると、電源遮断、ブレーキ動作のためのかごが非常停止させられる。ドア開き量が大きい場合には乗客の安全性を優先してこの非常停止の安全動作が実施される。
【0026】
タイマー50はかごドア開きを検出した場合、開き量と生じた時間を計測する。安全制御コントローラ10において、タイマーの時刻情報を基に開き量とその発生時間を計測して、ドア開き量と発生時間に応じてドア開き異常を判定する。ドア開き量と時間を組み合わせて異常判定することにより、過渡的なかごの揺れやいたずらなどによる一時的なドア開きを異常と誤判定することを回避する。
【0027】
通信装置12は、ドア開き異常の判定がなされた場合に、判定結果、ドア開き量、選定した安全制御などの情報を運転制御コントローラ11から受取り、エレベータの保守会社へ送信する。送信された情報に基づいてエレベータの保守会社では必要な安全措置が実施される。
【0028】
図2は安全制御コントローラブロック図を示し、符号A01で囲まれた領域が安全制御コントローラによる安全制御の処理全体を表している。以下、各処理の流れを説明する。
かごドア端位置算出手段A10は、ドア位置センサ信号とドアモータのエンコーダ信号とからかごドア端位置を算出し、つまり、ドア位置センサ24が被検出体25を検出した位置,被検出体25のドア上の位置(ドア端を基準にした位置),ドアモータのエンコーダによるドアの移動量などから計算する。算出に必要とされるドアセンサの位置,被検出体の位置などのデータは、センサ位置データ蓄積手段A30にあらかじめ記録されている。
【0029】
かごドア開き量算出手段A16は算出されたかごドア端位置からかごドアの開き量を検出する。例えば、中央開き式ドアの場合、(完全戸閉時のドア端基準位置−算出したドア端位置)×2となる。
【0030】
かご速度算出手段A11は、ガバナエンコーダ信号から時間当たりのパルス数をカウントすることにより、かごの速度を算出する。かご速度算出値は、ドア開き量と合わせてかご速度制限の動作判定、ドア開き量に応じた最高速度制限時にかご速度が最高速度制限以下にあるか否かの判定などに用いる。かご内人数算出手段A12は、かご内荷重センサ信号から、例えば一人当たりの平均体重よりかご内の人数を算出する。
【0031】
かご内人数のデータは、ドア開き量と組み合わせて人数に応じて適応的にドア開き異常を判定する。ドア解錠ゾーン判定手段A13は、ドアゾーンセンサからのドア解錠ゾーン検出信号により乗りかごがドア解錠ゾーン(ドア開閉が可能な位置)にあるか否かを判定する。
【0032】
ドアモータ電流判定手段A14は、ドアモータ電流センサが検出したドアモータ電流検出値からドアモータが正常に作用しているかどうか(必要なトルクを発生しているかどうか)を判定する。例えばモータ電流が所定値以上を満たすかどうか判定する。
【0033】
乗客検知判定手段A15は、かごドア付近の乗客の存在を検出する乗客検出センサの信号からかごドア付近に乗客が存在するか否かを判定する。
【0034】
ドア開き量の時間平均算出手段A31は、ドア開き量算出手段で求めたドア開き量とタイマーの時間からドア開き量の時間平均値を算出する。ドア開き量の時間平均値によってドア開き異常を判定する。したがって、異常ではない一時的なドア開きの誤検出を回避して、長時間発生するようなドア開き異常を適切に判別することができる。
【0035】
ドア開き量に応じた保護動作判定手段A20は、算出したかごドア開き量およびその他の情報に基づいて、乗りかごのドア開き異常の危険度合いを判定して、必要な安全方策(保護動作)の実施を判定する。具体的には、かごドア開き量からその開き量に応じたかご内情報通知装置による注意・警告の通知(図11で説明),開き量に応じたかごの運行速度制限(図4,図5,図7,図8で説明),開き量とかご内乗り人数に応じた運行速度制限と非常停止(図12で説明),ドア開き量およびその発生時間に応じた非常停止(図13で説明)などを実施する。
【0036】
ドア開き量に応じてどのような保護動作を実施するかの情報はあらかじめドア開き量に応じた保護動作情報蓄積手段A21に記憶され蓄積されており、これに基づいて対応する保護動作が選定される。保護動作情報蓄積手段A21には、例えば、後述する図4(c),図7,図8,図12,図13に示すようなドア開き量に対するかごの最高速度の特性,ドア開き量とかご内人数に対する非常停止の判定特性,ドア開き量と発生時間による非常停止の判定特性などがデータベース化されている。
【0037】
保護動作に応じた制御指令設定手段A22は、判定した保護動作に応じた安全制御指令が運転制御コントローラ,ブレーキ電源コンタクタ,主電源コンタクタ,かご内情報通知装置へ出力される。例えば、モータ制御による停止指令,かご速度制限の制限値指令は運転制御コントローラに出力され、巻上機ブレーキによる非常停止指令はブレーキ電源,主電源遮断指令は主電源コンタクタ,かご内乗客通知指令はかご内情報通知装置へそれぞれ出力される。
【0038】
図3は安全制御コントローラによるドア開き保護システムを示し、かごドアパネルB02に取り付けられた被検出体(図は磁気式なマーカが埋め込まれたもの)を位置センサA(B03)、位置センサB(B04)で検出する。2つのセンサは磁気マーカ列の数をカウントすることによってかごドアの位置を検出する。
【0039】
安全制御コントローラA(B05)およびB(B06)は、それぞれ2つのセンサの信号を入力して、検出したマーカ列をカウントし、ドアの位置または移動量を算出する。被検出体のマーカ列による位置と被検出体のドア端との関係より、ドア端の位置を検出してドア開き量を算出する。
【0040】
位置センサAおよびBの出力信号は安全制御コントローラ内で比較され、いずれかのセンサに異常が発生した場合、比較結果の差によりその異常を検出する。また安全制御コントローラも二重化構成となっており、両者の演算結果を相互比較することによって、どちらかのコントローラにエラー(ハードまたはソフトエラー)が発生した場合には比較結果により検知する。
【0041】
算出されたドア開き量から制御指令テーブル(B10)の情報に従って、ドア開き量に応じた制御指令をかご内情報通知装置,運転制御コントローラ,主電源コンタクタおよびブレーキ電源コンタクタに出力する。例えば、ドア開き量が大きい場合には、危険度が高いため、主電源コンタクタおよびブレーキ電源コンタクタに電源遮断指令を出力してかごの非常停止を実施する。つまり、非常停止実施が判定された場合は、安全制御コントローラAおよびBそれぞれから信号が出力されて、ブレーキ電源のコンタクタ(B07,B08)、主電源のコンタクタ(B09,B10)がそれぞれ遮断されて、エレベータかごが非常停止させられる。ここで、ブレーキ電源のコンタクタ(B07,B08)、主電源のコンタクタ(B09,B10)は共に二重系で構成されており、A系またはB系のいずれかが故障した場合でも片方が動作するため、より確実にかごを非常停止させることができる。運転制御コントローラへの指令(制御停止指令,かご速度制限指令)やかご内情報通知装置への指令も同様にそれぞれの安全制御コントローラからそれぞれの装置へ出力される。
【0042】
図4は、ドア開き異常に対する保護を示し、図4(a)は従来のドア開き異常に対する保護であり、横軸にかごドア開き量(かごがドア解錠ゾーン外にあることを仮定)を取った軸で見ると、開き量10mmを境にして、10mm以下では安全、10mm以上では異常という単純なロジックで機械式スイッチにより安全性を判定している。10mm程度のドア開きはゴミや小石がドアに詰まると容易に発生するため、必ずしもドアの異常・故障ではないにも関わらず、異常と判定されてかごを非常停止させてしまい乗客の閉じ込めを生じる可能性がある。
【0043】
図4(b)も従来(特許文献1に記載)のドア開き異常に対する保護であり、機械式スイッチを2つ設けることによって、10mm以下は安全、15mm以下は最寄り階停止、それ以上は非常停止という判定を行っている。この場合、15mm以下は最寄り階停止とすることで10−15mmでのドア開きによる乗客閉じ込めを回避することができるが、結局はドア開き異常としているため、その後はエレベータを停止継続させることなり、利用者に不便を強いることになる。
【0044】
図4(c)は、本実施例によるドア開き異常に対する保護であり、横軸のドア開き量の軸(C20)に対して縦軸にかご速度の軸(C21)を加えた2次元の軸により、安全性とアベイラビリティの両立を図っている。つまり、かごドアの開き量(開き幅,開き距離)に応じてかごの速度(最高速度)を変える(下げる)ことで、かご内の乗客の安全性を確保とエレベータの運行継続との両立を保つものである。具体的には、線C10で表されるかごドア開き量に対する速度許可値を設定する。速度許可値の特性(線C10)は、かごドアの開き量に応じて、その開き量が大きいほどかごの速度(最高速度,制限速度)を下げてエレベータを運転継続させる特性になっている。検出されたドア開き量に対して、速度許可値以下ならば安全と考えて速度許可値以下でのかごの運行継続を実施する。速度許可値の特徴は定格速度からドア開き量が大きくなるに従って速度許可値(速度制限値,許可される最高速度)が小さくなり、所定の開き量以上では速度ゼロ、即ち非常停止とする特性となっている。
【0045】
ドア開きに対する安全性の判定という点で言うと、0−10mmのドア開き(C11の領域)は安全と見なし、10−100mmのドア開き(C12の領域)は条件付きで安全と見なして低速での運転継続を許可する。100mmを超えたドア開き(C13の領域)に対しては異常と見なして即座に巻上機ブレーキによる非常停止を実施する。尚、10−100mmのドア開き(C12の領域)でも許可速度を超えた場合には危険と見なしてかごを非常停止させる(詳細な速度変更の動作は図5にて説明する)。また、100mmはあくまで一例として定めた値になる。
【0046】
ドア開き量に応じてかごの速度を変えるという安全制御を実施することにより、ドアの開き量に応じた適正な安全方策を実施することができ、かご内乗客の安全を保ちつつ、エレベータの運行を継続させて利用者の利便性(アベイラビリティ)を維持することが可能となる。
【0047】
図4(c)に示すドア開き量に応じたかご速度の変更(制限)は安全制御コントローラが判定して、運転制御コントローラに指令を送り、速度の変更は運転制御コントローラで実施する。またかご開き量に応じたかご速度許容値の特性(符号C17)はかご開き量毎の安全動作を決めるしきい値(安全制御指令を決めるしきい値)としてテーブルなどのデータ形式で安全制御コントローラ内に予め記憶されている。
【0048】
図5は、かごドア開き検出時の保護動作の例を表している。図5(a)は横軸を時間、縦軸をドア開き量にとったグラフにおいて、点線D01で示した時刻において、ドア開き異常が発生したことを示している。発生したドア開き異常はかごが走行中(ドア解錠ゾーンにいない状態)に小石がドアに挟まるなどして、ドアが少し開いた状況を想定している。
【0049】
図5(b)は従来技術(機械式スイッチ)によるかご動作であり、所定量以上のかごドア開きを検出すると、危険と判定して、直ちに巻上機ブレーキによる非常制動を実施して、かごを非常停止させる。このため、かご内の乗客はエレベータの保守員が到着するまでの時間、かご内に閉じ込められることになる。実際には小石が挟まった程度のドア開きであれば、非常停止させる必要はない。
【0050】
図5(c)は本実施例による保護動作例であり、ドア開きを検出後、ブレーキの制動ではなくモータ制御によりいったんかごを停止させて、その後にドア開き量に応じた制限速度でかごの運転を再開する。以下、図5(c)の動作を説明する。
通常走行時にD02の時点でかごドア開きの発生を安全制御コントローラで判定して、この判定信号を運転制御コントローラに送り、運転制御コントローラがモータ制御によってかごを一度停止させる。その後、運転制御コントローラでは、安全制御コントローラから送られた速度制限値に基づいて、最高速度をその速度制限値以下に設定して、その制限速度(図5(c)の点線)以下で運転を再開して、その後も運転を継続させる。制限速度以下での運転はエレベータの保守員による点検で正常が確認されるまで継続される。尚、図11で詳しく説明するが、かごドア開きを検出した場合にはかご内情報通知装置を用いて、音声または映像によって、かごドアが開いていることの注意警告を合わせて実施する。これにより、乗客に起こったことが明確になるので安心感を与えることができる。
【0051】
図5(d)は図5(c)とは異なる保護動作例であり、この場合はエレベータを止めずに運転状態のまま速度制限を実施するものである。以下、図5(c)の動作を説明する。 通常の走行時にD02の時点でかごドア開きの発生を安全制御コントローラが判定すると、安全制御コントローラは運転制御コントローラに開き量に応じた速度制限指令を出力する。運転制御コントローラは受取った速度制限指令に応じて、直ちに最高速度を制限速度以下とする速度パタン(速度と時間または速度と位置で表されるかごの運行パタン)を作成し直して、修正した速度パタンに従ってかごを運行させる。その後も制限速度に従って運転を継続させる。この場合も図5(c)と同様の効果を得ることができる。
【0052】
図6はドア位置検出手段の例を示し、図6(a)は位置センサE02(反射型光電センサ,渦電流型近接センサ,誘導型近接センサなど)とドアモータE04のエンコーダE05の情報を組み合わせてドア開き量(開き距離)を算出する。基準位置は、かごドアE01上にある被検出体E03を反射型光電センサ、又は渦電流型近接センサ、あるいは誘導型近接センサで検出され、基準位置からの移動量をドアモータのエンコーダの回転量から算出して加算する。ドア端の位置は、基準位置+移動量として検出するものである。
【0053】
図6(b)は、基準位置となる被検出体E11がドア上に多数置かれており、これらの被検出体の検出とドアモータのエンコーダ情報からドア端の位置を検出する。センサE10は例えばRFID(Radio Frequency IDentification)リーダ又は反射型光電センサであり、被検出体E11はRFIDタグ又は切り欠きで情報が埋め込まれた反射板とする。各被検出体に埋め込まれた情報を順に検出することによって、かごドア上の絶対位置が検出され、その間の移動量はドアモータのエンコーダ情報から補間する。図6(b)で示すものは、基準位置の指標となる被検出体の数が多いのでより正確にかごドア端の位置を算出できる。
【0054】
図6(c)はセンサE12を光学式リーダ、磁気検出センサ、被検出体E13をバーコード、磁気式マーカとしたもので、ドア上に細かくスケール(定規)が置かれているのと同じ状態でセンサから直接ドアの位置を検出する方法となる。この場合はドアモータのエンコーダの情報は用いずにドア位置を検出することができる。
【0055】
図7は、図4(c)および図5に示したドア開き量に応じたかご速度変更による保護動作の内容を示し、横軸F20はかごドア開き量、縦軸F21はかご速度を表し、線F01はドア開き量に応じたかご速度許可値(かご速度制限値、許容されるかご最高速度)の特性である。2次元のグラフ上において、かご速度許可値の特性線F01より下の領域(F05、F02)は安全(F05の領域)と条件付き安全(F02の領域)の領域であり、通常通りの運転もしくは制限速度以下での運転による運転継続が許可されている。点線で囲まれた領域F04はドア開き異常発生時に一時的にその領域の状態にあることを許可された領域で、モータ制御による停止(図5(c)の場合)または速度制限(図5(d)の場合)により、速やか速度許可値F01より下の状態に移行されるように保護制御が実施される。領域F04より外側の領域F30では、ドア開き異常と見なす領域で、即座に巻上機ブレーキによる非常停止が実施される。図7に示したドア開き量に応じた制限速度の特性(線F01)が図2のドア開き量に応じた保護動作情報蓄積手段A21に記憶される。
【0056】
図8は、図7のかご速度許可値の特性を、その時のかご内乗り人数に応じて変更する例を示す。図8のグラフの横軸、縦軸は図7と同じであり、かご内の乗車人数に従ってかご速度許可値の特性が線F12,線F11,線F10と乗車人数が増えるに連れて変化させる。
【0057】
これは、かご内の乗車人数が増えるほど乗客の安全により配慮して速度許可値を下げるものであり、例えば、乗車人数が満員に近い場合(乗車人数が非常に多い場合)には、ドアに近い位置に乗客がいる可能性があり、線F10のように速度許可値を下げてより低い速度、又はかごを止めるようにして、乗客の安全を守る。逆に乗車人数が少ない場合は、かご内情報通知装置によって注意通知することによって、乗客はドアが離れた位置に移るため、相対的に危険性は小さくなるので、線F13のように速度許可値を上げてより速い速度で運転させることによって、乗客の利便性を挙げる。
【0058】
つまり、ドア開き量とかご内乗車人数に応じて、かごドア保護動作パラメータ(この場合はかご速度許可値の変更)を調整することにより、乗客の安全性とエレベータ利用者全体の利便性の両立を図った安全制御となる。
【0059】
図9は安全制御コントローラの動作フローチャートであり、各種センサ,検出デバイスから検出データが入力される(G01)。入力されたデータより、ドア解錠ソーン検出センサの検出データからかご位置がドア解錠ゾーン内にあるか否かが判定される(G02)。
【0060】
かごがドア解錠ゾーン内にある場合はドアが開いても全く問題はなく、ドア解錠ゾーン外の場合を対象にして次の処理へ進む。かごがドア解錠ゾーン外の場合、かごドア端位置を算出する(G03)。
【0061】
かごドア端位置はドア位置センサおよびドアモータのエンコーダの信号より算出される。算出されたかごドア端位置より、かごドア開き量を算出する(G04)。かごドア開き量からその開き量に応じた保護動作の実施を判定する(G05)。保護動作は、かごドア開き量からその開き量に応じたかご内情報通知装置による注意・警告の通知(図11)、開き量に応じたかごの運行速度制限(図4,図5,図7,図8)、開き量とかご内乗り人数に応じた運行速度制限と非常停止(図12),ドア開き量およびその発生時間に応じた非常停止(図13)などである。いずれも算出されたドア開き量に基づいて保護動作の実施の要否が判定される。
【0062】
保護動作の実施が必要と判定された場合は次の処理へ進む(G06)。ドアモータ電流が所定値以上あるか否かが判定する(G07)。ドアモータのトルクが必要量出力されているかどうかを判定するもので、仮にかごドアが開いていてもドアモータ電流が所定値以上あれば、モータトルクが生じており、ドアはこれ以上開かないようにモータによって制御されていることを確認する。モータ電流が所定値よりも小さい場合はトルクが確保されていないため、さらにドアが開く危険性があり、かごを非常停止させる。
【0063】
ドアモータが所定値以上ある場合は、判定した保護制御に従った安全制御が実行される(G08)。保護動作について運転制御コントローラによる保護動作が必要な場合は(G09)、判定した保護動作に従った運転制御が実行される(G10)。例えばドア開き量に応じてかご速度を変更する。
【0064】
図10は、ドア開きに従ったかご速度変更の動作フローチャートを示し、図5(c)に示した動作を実行する。ごドア端位置を算出し(H01)、かごドア開き量を算出する(H02)。ガバナエンコーダの回転量信号から乗りかごの速度を算出する(H03)。算出したかごドア開き量からその開き量に応じたかご速度制限値を設定する(H04)。
【0065】
算出されたかご速度が制限値以上かどうかを判定して(H05)、制限値以下の場合は、安全制御コントローラから運転制御コントローラへ速度制限値を送信した上でそのままかご運転を継続させる(H06)(以降の運転では運転制御コントローラが速度制限値に従って制御を実施する)。
【0066】
かご速度が制限値を超えている場合は、安全制御コントローラから運転制御コントローラにモータ制御によるかご停止指令が送信されて、運転制御コントローラではモータ制御によってかごの停止が実施される(H07)。さらに安全制御コントローラから運転制御コントローラに対してかご速度制限値指令が送信される(H08)。運転制御コントローラでは、一度かごを停止させた後、かご速度制限値に従って、最高速度を制限してかごの運転を再開させる。
【0067】
その後、速度制限値に従った状態で運転が継続される(保守員により安全性が確認されると速度制限は解除される)。但し、所定時間経過後からはかご速度が制限値を超えていないかが常にチェックされており(H09)、制限値を超えた場合は、何らかの異常が発生したと見なして巻上機ブレーキによる非常停止が実施される。
【0068】
図11はかご内情報通知装置の表示例を示し、かご内情報通知装置は、算出したドア開き量に応じてその情報を音声および/または画像でかご内乗客に通知する。図11(a)はドア開きを検知した場合の情報通知の例であり、情報通知画面(K01)上にドア開き量(この場合は2cm)の情報(K02)と、ドアに近づかないようにという警告情報(K03)と、を合わせて表示している。警告メッセージは開き量が大きいほど、警告の度合いを強調したメッセージとする。
【0069】
安全制御コントローラにおいて、かごドア開きを検出した場合、その開き量に応じて即座にこのような注意情報を通知することにより、乗客の注意が促されて、より安全な状況へと乗客を促すことができる。
【0070】
図11(b)はドア開き量に応じて速度変更する場合の情報通知の例を表している。図5(c)の速度変更動作に対応するもので、ドアの開き量に関連した情報と、一旦、停止後に低速で運転させると言う、運転に関連した情報が乗客へ通知されている。この情報通知により、かご内乗客はドア開きへの注意が促されると同時にその後の運転方法に関する情報も通知されるので、エレベータの運行に関する情報を事前に知ることができる。図11(c)は同じく速度変更する場合の情報通知の例で、図5(d)の速度変更動作に対応する。速度の変更情報を通知するので、かご内乗客は、変更されたことを理解し、安心感を得られる。
【0071】
図12は、かごドア開き量とかご内乗車人数(かご内積載重量と同じ)に応じた保護動作の例を表している。図12のグラフにおいて、横軸(M11)はかごドアの開き量、縦軸(M10)はかご内の乗車率を表している。線M01は、ドア開き量とかご内乗車率に応じて定められたドア開き異常の判定特性であり、線M01より下では安全と見なしてエレベータの運転が継続され、線M01より上ではドア開き異常と見なして巻上機ブレーキによる非常停止を実施する。
【0072】
線M01は、ドア開き量に応じたかご内乗車人数の許容値(制限値,許可値)と見なすこともでき、ドア開き量に対して、乗車人数が許容値を超えた場合にはドア開き異常と見なしてかごを非常停止を実施する。これにより、乗車人数が増えるほど、かご内の余裕スペースが無くなるため、かごドア付近に近づく可能性が高くなることに対応したものとなる。
【0073】
かごドア開き量が大きくなるほど、かご内乗車人数(かご内積載重量と同じ)の許容値が小さくなるような特性としている。つまり、かご内乗車率(かご内積載重量と同じ)が大きい場合は、ドア開き量の異常判定値を小さく、かご内乗車率が小さい場合はドア開き量の異常判定値を大きくして、ドア開き量に応じたドア開き異常の判定を実施している。
【0074】
ドア開き量とかご内乗車人数に応じてドア開き異常(かごの非常停止実施)を判定することにより、ドア開き量と乗車人数に応じた危険度合いを判定でき、かご内の乗客の安全性と利用者全体の利便性を両立したより適切なドア開き保護が可能となる。また、かご内乗客の安全性を保ちながら、かごの非常停止(閉じ込めやその後のエレベータの利用停止につながる)を回避してエレベータの運転を継続させることができる。
【0075】
図13は、かごドア開き量と時間による異常判定法の制御ブロック図を示し、かごドア開き量算出手段P01でかごドア開き量が算出され、タイマー手段(時計と同じ)P02によりかごドアが開いている時間が計測される。ドア開き量の時間平均算出手段P03では、(Σ(ドア開き量)×△t)/Tを計算することにより、ドア開き量の時間平均値を算出する。△tはドア開き量検出のサンプリング時間、Tは平均値を演算する時間範囲を表している。Tは例えば数秒(3〜10秒程度)の時間長となる。算出されたドア開き量の時間平均値を所定のしきい値と比較することによってドア開き異常の判定を実施する(P04)。しきい値を超えた場合には異常と判定されて、非常停止手段により、巻上機ブレーキによる非常停止が実施される。
【0076】
図14は図13で示したかごドア開き量と時間による異常判定法に基づいた安全制御動作を示している。図14(a)は異常とは言えない一時的なドア開き(かごの揺れなどで一時的にドアが開いた場合やいたずらで一時的に開いた場合に対応)に対する動作の例である。ドア開き量の実際の波形が図のように一時的にドア開き量が増加する山型の波形になるのに対して、その時間平均値は図のように平たくされて図のようになり、結果的に判定値よりも小さくなるため、ドア開き異常とは判定されない。図14(b)の波形は実際のドア開き異常とすべき長時間のドア開きの場合の波形で、実際の波形と時間平均値は定常状態で一致し、その結果、判定値よりも大きくなり、ドア開き異常と判定される。ドア開き量の時間平均値(3〜10秒程度の時間長に対する平均)でドア開異常を判定することによって、異常ではない一時的なドア開き異常の誤検出を回避することでき、かご内乗客の安全性を保ちながら、かごの非常停止(閉じ込めやその後のエレベータの利用停止につながる)を回避してエレベータの運転をより適切に継続させることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 安全制御コントローラ
11 運転制御コントローラ
20 乗りかご
21 かごドア
22 エンコーダ
23 ドアモータ
24 ドア位置センサ
25 被検出体
27 ドアゾーンセンサ
28 被検出板
29 かご内情報通知装置
30 防振ゴム
31 荷重センサ
41 主電源コンタクタ
42 電力変換器
43 モータ
44 シーブ
46 ブレーキ
47 ブレーキ用コンタクタ
50 タイマー
51 乗客検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに設けられたかごドアのドア開き異常を検出して前記乗りかごの走行を制御するエレベータシステムにおいて、
各階において、前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置しているか否かを検出するドアゾーンセンサと、
前記かごドアの移動量を検出するドア位置センサの信号に基づいて、前記乗りかごのかごドア開き量を算出する安全制御コントローラと、
を備え、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量に応じて前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかご内にかご内情報通知装置を設け、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記安全制御コントローラは前記かごドア開き量に基づいて乗客に異常、あるいは異常に対する安全動作に関連した通知を行うことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量が大きくなるほど小さくなり、所定の前記かごドア開き量で停止とする速度許可値を定め、前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかご内にかご内情報通知装置を設け、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量が大きくなるほど小さくなり、所定の前記かごドア開き量で停止とする速度許可値を定め、前記乗りかごの走行を制御すると共に、それに関連した通知を乗客へ行うことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、記乗りかご内にかご内情報通知装置を設け、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量に応じた注意情報を乗客へ通知し、その後、前記かごドア開き量が大きくなるほど小さくなり、所定の前記かごドア開き量で停止とする速度許可値を定め、前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかご内にかご内情報通知装置を設け、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量が大きくなるほど小さくなり、所定の前記かごドア開き量で停止とする速度許可値で前記乗りかごの運転を継続し、前記かごドア開き量と運転に関連した情報を乗客へ通知することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、かご内乗車率を求め、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量と、前記かご内乗車率と、に応じて前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のものにおいて、前記かごドアが開いている時間を計測し、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量と、前記かごドアが開いている時間と、に応じて前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のものにおいて、前記かごドアが開いている時間を計測し、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量の前記時間での平均値に応じて前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のものにおいて、前記かごドアを駆動するドアモータの電流を検出し、前記ドアゾーンセンサにより前記乗りかごがドア開き可能なドアゾーンに位置していないと検出された場合、前記かごドア開き量と、前記ドアモータの電流と、に応じて前記乗りかごの走行を制御することを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−121695(P2012−121695A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274183(P2010−274183)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】