説明

エレベーターの遠隔点検装置

【課題】費用を抑えつつ操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができるエレベーターの遠隔点検装置の提供。
【解決手段】かご1内に乗降する乗客を検出する通過センサー16と、かご1内の荷重を計測する荷重センサー17と、カメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報のうち操作盤5が操作されたときから所定の時間の間における映像情報を記録する録画装置10とを備え、この録画装置10は、記録した操作盤5の各機器の映像情報のうちかご1内の乗客が一人のときに取得された映像情報を通過センサー16及び荷重センサー17に基づいて判別して保存し、記録した操作盤5の各機器の映像情報のうちかご1内に乗客がいないとき、あるいはかご1内に乗客が複数人いるときに取得された映像情報を通過センサー16及び荷重センサー17に基づいて判別して保存しない映像保存手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご内に設けられた映像取得手段によって取得した映像情報に基づいてエレベーターの各装置を遠隔で点検するエレベーターの遠隔点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、従来よりかご内や乗場に設置され、かご内や乗場の映像情報を取得する映像取得手段、例えばカメラを備えており、このカメラで撮影した映像を利用することによってかご内や乗場において発生する事故やエレベーターに備えられた機器の故障等の原因を特定している。
【0003】
実際には、かご内や乗場のカメラで撮影された映像情報は、エレベーターが設置された建物と離れた場所に位置する管制センターに送信され、この管制センターにおいて管理者が受信した映像を元にかご内や乗場において発生する事故の有無を発見したり、あるいはエレベーターの機器の故障等の原因を調査している。そして、事故や機器の故障等の原因が判明した場合には、管制センターから作業者に連絡して修理等のメンテナンス作業を早急に行っている。
【0004】
このように、かご内や乗場のカメラで撮影された映像を管制センターから遠隔で確認する従来技術の1つとして、かごの運転履歴、及び操作盤の操作履歴を含めたエレベーター履歴情報と、かごの内部を撮影する撮影手段、すなわち映像取得手段からの画像情報とを互いに時系列的に対応付けて監視情報として記録可能であり、公衆回線網を介して遠隔監視センター、すなわち管制センターの管理盤と通信可能な監視情報記録部を備え、監視情報記録部は、かごの運転を制御する運転制御部によってかごの運転異常が検出されると、記録している監視情報の中から、かごの運転異常の検出時点を含む所定の時間分の監視情報を読み出し、読み出された監視情報を管理盤に送るエレベーターの監視記録システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に開示された従来技術のエレベーターの監視記録システムでは、監視情報記録部に記録されている監視情報の中からかごの運転異常の検出時点を含む所定時間分の監視情報が読み出され、読み出された監視情報を映像として管理者がエレベーターの状態、例えばエレベーターに設けられた操作盤の機器の故障等を確認することにより、これらの機器の動作確認にかかる時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−46245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、管制センターにおいて管理者がかご内の操作盤の各機器が故障しているかどうかを確認する作業を行うときには、映し出された映像から乗客がかご内の操作盤を操作して各機器が正常に動作している場面を見る必要がある。しかし、上述した特許文献1に開示された従来技術のエレベーターの監視記録システムにおける監視情報記録部によって所定時間分の監視情報の映像が読み出されても、例えば読み出された映像に乗客が複数人映っている場合には、操作盤の各機器がこれらの乗客の陰に隠れて映像から確認できないことがある。また、読み出された映像に乗客が映し出されていない場合には、操作盤の各機器が乗客の操作によって反応する状況を確認することができず、操作盤の各機器の作動状況を適切に把握することができない虞がある。
【0008】
このように、上述のエレベーターの監視記録システムでは、操作盤の各機器の作動状況を確認するのに不要な監視情報の映像も含まれているので、乗客が操作盤の各機器を操作している状況が映し出された映像を探すのに時間がかかり、操作盤の各機器の動作確認における作業効率が悪くなっている。さらに、操作盤の各機器の作動状況を確認するのに不要な監視情報も管制センターに伝送されるので、伝送情報量が多くなり、通信費用がかかることが問題になっている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、費用を抑えつつ操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができるエレベーターの遠隔点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベーターの遠隔点検装置は、かご内に設けられ、複数の機器から構成される操作盤と、前記かご内に設けられ、前記操作盤の各機器の映像情報を取得する映像取得手段と、この映像取得手段によって取得した前記映像情報を監視する管制センターとを備え、この管制センターにおいて前記映像取得手段によって取得した前記映像情報から前記操作盤の各機器の作動状況を遠隔で確認するエレベーターの遠隔点検装置において、前記かごに設けられ、前記かご内に乗降する乗客を検出する乗客検出手段と、前記かご内の荷重を計測する荷重計測手段と、前記映像取得手段によって取得した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記操作盤が操作されたときから所定の時間の間における前記映像情報を記録する記録手段とを備え、この記録手段は、記録した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記かご内の乗客が一人のときに取得された前記映像情報を前記乗客検出手段及び前記荷重計測手段に基づいて判別して保存し、記録した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記かご内に乗客がいないとき、あるいは前記かご内に乗客が複数人いるときに取得された前記映像情報を前記乗客検出手段及び前記荷重計測手段に基づいて判別して保存しない映像保存手段を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、記録手段が映像取得手段によって取得した操作盤の各機器の映像情報のうち操作盤が操作されたときから所定の時間の間における映像情報を記録し、記録された映像情報のうち映像保存手段によって乗客がかご内に一人しかいない状態の映像情報だけが乗客検出手段及び荷重計測手段に基づいて判別して保存される。ここで、記録手段に保存された映像情報には乗客が一人しか映っていないので、操作盤の各機器が複数人の乗客の陰に隠れて映像から確認できないことを防ぐことができる。また、映像保存手段によって乗客が映し出されていない映像は保存されないので、管制センターの管理者がこのような操作盤の各機器が乗客の操作によって反応する状況を確認できない映像に時間をとられることもない。従って、管理者が、映像保存手段によって記録手段に保存された映像情報から操作盤の各機器の作動状況を確認するのに適した映像を迅速に取り出すことができるので、取り出した映像から操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができる。
【0012】
さらに、本発明は、記録手段に記録された映像情報の全てが管制センターへ伝送されるのではなく、記録された映像情報のうち乗客がかご内に一人しかいない状態の映像情報、すなわち操作盤の各機器の作動状況を確認するのに適した映像情報だけが管制センターへ伝送されるので、管制センターへの伝送情報量を減少させることができ、通信にかかる費用を低減することができる。このように、費用を抑えつつ操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベーターの遠隔点検装置は、前記発明において、前記記録手段の前記映像保存手段によって保存された前記操作盤の各機器の前記映像情報を前記管制センターへ伝送する伝送手段を備え、この伝送手段は電話回線又はブロードバンド回線から成ることを特徴としている。このように構成すると、電話回線又はブロードバンド回線によって記録手段の映像保存手段に保存された操作盤の各機器の映像情報が管制センターへ伝送されるので、エレベーターと管制センターとの接続において安定した通信環境を実現することができる。これにより、操作盤の各機器の映像情報を短時間で安価にエレベーターから管制センターへ伝送することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベーターの遠隔点検装置は、前記発明において、前記記録手段の前記映像保存手段によって保存された前記操作盤の各機器の前記映像情報を同一画面上に並べて表示する表示手段を備えたことを特徴としている。このように構成すると、管制センターの管理者が表示手段によって同一画面上に並べて表示された操作盤の各機器の映像情報から操作盤の各機器の映像情報における取得可否を一目で把握することができるので、管理者による操作盤の各機器の動作確認にかかる時間を大幅に削減することができると共に、管理者の管理作業にかかる負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエレベーターの遠隔点検装置は、かご内に設けられ、複数の機器から構成される操作盤と、かご内に設けられ、操作盤の各機器の映像情報を取得する映像取得手段と、この映像取得手段によって取得した映像情報を監視する管制センターとを備えている。また、本発明のエレベーターの遠隔点検装置は、かごに設けられ、かご内に乗降する乗客を検出する乗客検出手段と、かご内の荷重を計測する荷重計測手段と、映像取得手段によって取得した操作盤の各機器の映像情報のうち操作盤が操作されたときから所定の時間の間における映像情報を記録する記録手段とを備え、この記録手段は、記録した操作盤の各機器の映像情報のうちかご内の乗客が一人のときに取得された映像情報を乗客検出手段及び荷重計測手段に基づいて判別して保存し、記録した操作盤の各機器の映像情報のうちかご内に乗客がいないとき、あるいはかご内に乗客が複数人いるときに取得された映像情報を乗客検出手段及び荷重計測手段に基づいて判別して保存しない映像保存手段を有している。そのため、この映像保存手段によって記録手段に保存された映像情報から乗客がかご内に一人しかいない状態の映像情報、すなわち操作盤の各機器の作動状況を確認するのに適した映像を迅速に取り出すことができるので、取り出した映像から操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができる。さらに、記録手段に記録された映像情報のうち操作盤の各機器の作動状況を確認するのに適した映像情報だけが管制センターへ伝送されるので、管制センターへの伝送情報量を減少させることができ、通信にかかる費用を低減することができる。このように、費用を抑えつつ操作盤の各機器の作動状況を容易に確認することができるので、従来よりも操作盤の各機器の動作確認における作業効率及び経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るエレベーターの遠隔点検装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示す本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るエレベーターの遠隔点検装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0018】
本発明に係る遠隔点検装置の一実施形態は、例えば図1に示すエレベーターに備えられ、このエレベーターは、図示しない建物の昇降路内に設けられたかご1と、昇降路の上部に設けられた巻上機4とを備えている。この巻上機4は、回転可能に軸支された図示しないメインシーブを有している。
【0019】
また、エレベーターは、一端がかご1の上部に取り付けられ、巻上機4のメインシーブに掛けられた主ロープ3と、この主ロープ3の他端に取り付けられ、プレート2aが積層状態で積層されて形成された釣合い錘2と、巻上機4の駆動を制御する後述の制御装置9とを備えている。従って、制御装置9から指令を受けた巻上機4が駆動することによってメインシーブが回転し、このメインシーブと主ロープ3との摩擦力を利用することにより、かご1が釣合い錘2と相対的に昇降するようになっている。なお、巻上機4と制御装置9は図示しない通信ケーブルで接続されている。
【0020】
本発明に係るエレベーターの遠隔点検装置の一実施形態は、かご1内に設けられ、複数の機器から構成される操作盤5と、かご1内に設けられ、操作盤5の各機器の映像情報を取得する映像取得手段とを備えている。この映像取得手段は、例えばかご1内の上部の隅に取り付けられたカメラ6から成り、かご1内の乗客の手が操作盤5を操作している状況を撮影できるようにカメラ6のレンズが操作盤5へ向けられている。なお、かご1には、図示しないドアが開閉可能に設けられており、このドアはかご1内の乗客が操作盤5の各機器のうち開閉釦を押すことによって開閉するようになっている。また、操作盤5には、開閉釦の他に各階床への呼び登録釦等が設けられている。
【0021】
そして、本実施形態は、カメラ6によって撮影された映像情報を監視する管制センター15を備え、この管制センター15においてカメラ6によって撮影された映像情報から操作盤5の各機器の作動状況を遠隔で確認するようにしている。具体的には、本実施形態は、操作盤5の操作に応じてかご1の昇降動作やドアの開閉動作等を制御する前述の制御装置9と、カメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報を記録する記録手段、すなわち録画装置10と、この録画装置10に記録された映像情報を管制センター15へ送信すると共に、管制センター15から各種の情報を受信する情報装置13とを備えている。
【0022】
本実施形態は、操作盤5と制御装置9とを接続し、操作盤5に入力された入力情報を出力信号として操作盤5から制御装置9へ伝送する通信ケーブル7と、カメラ6と録画装置10とを接続すると共に、カメラ6によって撮影された映像情報をカメラ6から録画装置10へ伝送する通信ケーブル8と、制御装置9と録画装置10とを接続し、録画装置10の録画を開始する録画開始信号を制御装置9から録画装置10へ伝送する通信ケーブル11と、録画装置10と情報装置13とを接続し、後述するように録画装置10に保存された映像情報を録画装置10から情報装置13へ送信する通信ケーブル12とを備えている。
【0023】
上述の録画装置10は、かご1内のカメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報のうち操作盤5が操作されたときから所定の時間の間における映像情報を記録するようになっている。すなわち、かご1内の乗客によって操作盤5の機器が操作されると、操作盤5は乗客による入力情報を通信ケーブル7を介して制御装置9へ送信し、操作盤5の入力情報を受信した制御装置9は通信ケーブル11を介して録画装置10へ録画開始信号を送信する。そして、録画装置10が録画開始信号を受信すると、録画装置10は、カメラ6で撮影された操作盤5の映像情報の記録を開始し、所定の時間の間、記録する。
【0024】
また、本実施形態は、かご1に設けられ、かご1内に乗降する乗客を検出する乗客検出手段と、かご1内の荷重を計測する荷重計測手段とを備えている。乗客検出手段は、例えばかご1のドアの入口の両側に設けられた一対の通過センサー16から成っている。これらの通過センサー16は、例えば赤外線を発行する発光器と、この発光器によって発光された赤外線を受光する受光器とから成り、ドアが開いてから乗客が乗降する際に発光器から発光された赤外線を横切ることによって乗客の乗降を検出するようになっている。荷重計測手段は、かご1の下部に設けられ、かご1内に乗車した乗客の体重等を測定する荷重センサー17とから成っている。なお、これらの通過センサー16及び荷重センサー17は図示しない通信ケーブルを介して録画装置10に接続されており、通過センサー16によって検出された乗客の通過情報、及び荷重センサー17によって計測されたかご1内の荷重情報は録画装置10へ送信される。
【0025】
そして、本実施形態は、上述の記録手段、すなわち録画装置10は、図示されないが、記録した操作盤5の各機器の映像情報のうちかご1内の乗客が一人のときに取得された映像情報を通過センサー16及び荷重センサー17に基づいて判別して保存し、記録した操作盤5の各機器の映像情報のうちかご1内に乗客がいないとき、あるいはかご1内に乗客が複数人いるときに取得された映像情報を通過センサー16及び荷重センサー17に基づいて判別して保存しない映像保存手段を有している。
【0026】
具体的には、録画装置10の映像保存手段は、例えばかご1内のドアが開く際に荷重センサー17によって計測されたかご1内の荷重情報に基づいてかご1内に乗客がいないと判断し、その後かご1のドアが開いてから通過センサー16によって検出された通過情報に基づいて乗客の乗降回数が1回であると判断した場合には、カメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報を記録し続け、記録開始から所定の時間が経過した後に当該映像情報を保存するようになっている。
【0027】
ここで、かご1のドアが開く前にかご1内に乗客がいない場合に、かご1のドアが開いてから通過センサー16が乗客の乗降を複数回検出したときには、かご1内に乗客が複数人乗車していることになる。また、かご1のドアが開く前にかご1内に乗客がいない場合に、かご1のドアが開いてから通過センサー16が乗客の乗降を全く検出しなかったときには、かご1内に乗客が乗車していないことになる。
【0028】
このような場合には、かご1内に乗客が1人だけいる状態ではないので、録画装置10の映像保存手段が、かご1内のドアが開く際に荷重センサー17によって計測されたかご1内の荷重情報に基づいてかご1内に乗客がいないと判断し、その後かご1のドアが開いてから通過センサー16によって検出された通過情報に基づいて乗客の乗降回数が複数回であり、あるいは乗客の乗降回数が0回であると判断した場合には、制御装置9から録画開始信号を受信してもカメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報の記録を開始しないようになっている。また、録画装置10の映像保存手段は、かご1内のドアが開く際に荷重センサー17によって計測されたかご1内の荷重情報に基づいてかご1内に乗客がいると判断した場合も、制御装置9から録画開始信号を受信してもカメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報の記録を開始しないようになっている。
【0029】
一方、録画装置10の映像保存手段は、カメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報の記録が開始された後に、当該映像情報の記録が行われている間に荷重センサー17によって再度計測されたかご1内の荷重情報に基づいてかご1内に乗客が複数人いると判断した場合には、当該映像情報の記録を中止して消去するようになっている。
【0030】
また、本実施形態は、録画装置10の映像保存手段によって上述したように保存された操作盤5の各機器の映像情報を管制センター15へ伝送する伝送手段を備え、この伝送手段は、例えば電話回線14から成っている。すなわち、電話回線14は情報装置13と管制センター15との間に接続されている。
【0031】
さらに、本実施形態は、録画装置10の映像保存手段によって上述したように保存された操作盤5の各機器の映像情報を同一画面上に並べて表示する図示しない表示手段を備え、この表示手段は、例えば保存された操作盤5の各機器の映像情報を操作盤5の機器毎に分けて表示するモニタから成っており、表示された操作盤5の機器のうち選択された機器の映像を拡大して表示するようになっている。なお、モニタは管制センター15内に設けられており、管制センター15において管理者がモニタに表示された操作盤5の各機器の映像を見て各機器の作動状況を確認するようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
図2は図1に示す本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0034】
本実施形態では、図2に示すようにまず制御装置9が、かご1が着床階に到着しているか、すなわちかご1が着床レベルにあるかどうか、及びかご1のドアが閉まっているかどうかを確認する。一方、録画装置10の映像保存手段は、荷重センサー17からかご1内の荷重情報を受信し、受信した荷重情報に基づいてかご1内に乗客がいるかどうか、すなわちかご1内が無負荷であるかどうかを判断する(ステップ(以下、Sと記す)1)。
【0035】
次に、制御装置9が、かご1が着床レベルにあって、かご1のドアが閉まっていることを確認し、さらに録画装置10の映像保存手段が、荷重センサー17から受信した荷重情報に基づいてかご1が無負荷であると判断した場合には、録画装置10の映像保存手段は、かご1のドアが開くまで待機し、かご1のドアが開いてから通過センサー16によって検出された通過情報に基づいて乗客のかご1への乗降回数をカウントし、カウントした値が1回であるかどうかを判断する(S2)。録画装置10の映像保存手段が、カウントした値が1回であると判断した場合には、制御装置9が、乗客によってかご1内の操作盤5が操作されたかどうか、すなわち操作盤5から出力信号を受信したかどうかを判断する(S3)。
【0036】
そして、制御装置9が操作盤5から出力信号を受信したと判断した場合には、制御装置9は通信ケーブル11を介して録画装置10へ録画開始信号を送信する。録画開始信号を受信した録画装置10は、カメラ6によって撮影された操作盤5の映像情報の記録を開始し、所定の時間の間、記録する。
【0037】
一方、手順S1において制御装置9が、かご1が着床レベルになく、あるいはかご1のドアが閉まっていないことを確認した場合、あるいは録画装置10の映像保存手段がかご1内が無負荷でないと判断した場合には、最初の手順に戻って手順S1の動作を再度行う。また、手順S2において録画装置10の映像保存手段が、通過センサー16によって検出されたカウント値が1回でない、すなわちカウント値が0回あるいは2回以上であると判断した場合には、最初の手順に戻って手順S1の動作を再度行う。従って、この場合には、録画装置10の映像保存手段は、制御装置9から録画開始信号を受信しても操作盤5の各機器の映像情報の記録を開始しない。さらに、手順S3において制御装置9が操作盤5から出力信号を受信していないと判断した場合にも、最初の手順に戻って手順S1の動作を再度行う。
【0038】
次に、手順S3において制御装置9が操作盤5から出力信号を受信したと判断した後に、録画装置10によって操作盤5の各機器の映像情報の記録が開始された場合には、録画装置10の映像保存手段が、荷重センサー17によって再度計測されたかご1内の荷重情報に基づいてかご1内に乗客が一人だけいるかどうかを判断する(S4)。
【0039】
録画装置10の映像保存手段が、かご1内に乗客が一人だけでない、すなわちかご1内に乗客が複数人いる、あるいはかご1内に乗客が一人もいないと判断した場合には、操作盤5の映像情報の記録を中止して消去し(S10)、最初の手順に戻って手順S1の動作を再度行う。一方、手順S4において録画装置10の映像保存手段が、かご1内に乗客が一人だけいると判断した場合には、操作盤5の映像情報の記録を開始してから所定の時間が経過した後に記録を終了して保存する(S6)。
【0040】
そして、録画装置10の映像保存手段が、操作盤5の各機器の映像情報の全てが揃ったかどうかを判断する(S7)。そして、録画装置10の映像保存手段が、操作盤5の各機器の映像情報の全てが揃っていない、すなわち操作盤5の各機器の映像情報のうちまだ保存されていない機器の映像情報があると判断した場合には、最初の手順に戻って手順S1の動作を再度行う。一方、手順S7において録画装置10の映像保存手段が、操作盤5の各機器の映像情報の全てが揃ったと判断した場合には、録画装置10は、保存した操作盤5の各機器の映像情報を情報装置13を介して電話回線14によって管制センター15へ伝送する(S8)。そして、管制センター15において受信した操作盤5の各機器の映像情報がモニタによって同一画面上に操作盤5の機器毎に並べて表示されるので、管制センター15内の管理者がモニタを見て操作盤5の各機器の作動状況を確認し(S9)、本実施形態の動作を終了する。
【0041】
このように構成した本実施形態は、手順S3において録画装置10がカメラ6によって撮影された操作盤5の各機器の映像情報のうち操作盤5が操作されたときから所定の時間の間における映像情報を記録し、手順S6において記録された映像情報のうち映像保存手段によって乗客がかご1内に一人しかいない状態の映像情報だけが通過センサー16の通過情報及び荷重センサー17の荷重情報に基づいて判別して保存される。そのため、録画装置10に保存された映像情報には乗客が一人しか映っていないので、操作盤5の各機器が複数人の乗客の陰に隠れて映像から確認できないことを防ぐことができる。
【0042】
また、かご1内に乗客が一人だけでない、すなわちかご1内に乗客が複数人いる、あるいはかご1内に乗客が一人もいない場合には、手順S3において録画装置10の映像保存手段によって操作盤5の映像情報の記録が開始されず、あるいは手順S3において操作盤5の映像情報が記録されても手順S10において映像保存手段によって当該映像情報の記録が中止して消去されるので、乗客が映し出されていない映像情報や乗客が複数人映し出された映像情報は保存されない。そのため、管制センター15の管理者がこのような操作盤15の各機器が乗客の操作によって反応する状況を確認できない映像に時間をとられることもない。従って、管理者が、映像保存手段によって録画装置10に保存された映像情報から操作盤5の各機器の作動状況を確認するのに適した映像を迅速に取り出すことができるので、取り出した映像から操作盤5の各機器の作動状況を容易に確認することができる。
【0043】
さらに、本実施形態は、上述したように記録された映像情報のうち乗客がかご1内に一人しかいない状態の映像情報、すなわち操作盤5の各機器の作動状況を確認するのに適した映像情報だけが電話回線14によって管制センター15へ伝送されるので、管制センター15への伝送情報量を減少させることができ、通信にかかる費用を低減することができる。このように、費用を抑えつつ操作盤5の各機器の作動状況を容易に確認することができるので、操作盤5の各機器の動作確認における作業効率及び経済性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態は、情報装置13と管制センター15との間を電話回線14で接続し、手順S8において録画装置10の映像保存手段によって保存された操作盤5の各機器の映像情報を管制センター15へ伝送することにより、エレベーターと管制センター15との接続において安定した通信環境を実現することができる。これにより、操作盤5の各機器の映像情報を短時間で安価にエレベーターから管制センター15へ伝送することができる。
【0045】
また、本実施形態は、手順S9において管理センター15のモニタが、電話回線14によって伝送された操作盤5の各機器の映像情報を同一画面上に並べて表示することにより、管制センター15の管理者がモニタに表示された当該映像情報から操作盤5の各機器の映像情報における取得可否を一目で把握することができるので、管理者による操作盤5の各機器の動作確認にかかる時間を大幅に削減することができると共に、管理者の管理作業にかかる負担を軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態は、モニタが電話回線14によって伝送された操作盤5の各機器の映像情報を操作盤5の機器毎に分けて表示する機能を有しているので、操作盤5の機器のうち異常が発生した機器の特定を迅速に行うことができる。さらに、モニタは表示した操作盤5の機器のうち選択された機器の映像を拡大して表示する機能を有しているので、管理者が操作盤5の機器のうちいずれか1つの機器を選択して取り出すことによって当該機器の映像を詳細に確認することができる。これにより、当該映像情報を利用する管理者の利便性を向上させることができる。
【0047】
なお、上述した本実施形態では、伝送手段が電話回線14から成る場合について説明したが、この場合に限らず、伝送手段は、例えばブロードバンドから成っていても良い。この場合には、録画装置10の映像保存手段によって保存された映像情報のうち比較的容量の大きな映像情報のデータであっても管制センター15へ低コストで伝送することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 かご
2 釣合い錘
4 巻上機
5 操作盤
6 カメラ(映像取得手段)
7,8,11,12 通信ケーブル
9 制御装置
10 録画装置(記録手段)
13 情報装置
14 電話回線(伝送手段)
15 管制センター
16 通過センサー(乗客検出手段)
17 荷重センサー(荷重計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内に設けられ、複数の機器から構成される操作盤と、前記かご内に設けられ、前記操作盤の各機器の映像情報を取得する映像取得手段と、この映像取得手段によって取得した前記映像情報を監視する管制センターとを備え、この管制センターにおいて前記映像取得手段によって取得した前記映像情報から前記操作盤の各機器の作動状況を遠隔で確認するエレベーターの遠隔点検装置において、
前記かごに設けられ、前記かご内に乗降する乗客を検出する乗客検出手段と、
前記かご内の荷重を計測する荷重計測手段と、
前記映像取得手段によって取得した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記操作盤が操作されたときから所定の時間の間における前記映像情報を記録する記録手段とを備え、
この記録手段は、
記録した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記かご内の乗客が一人のときに取得された前記映像情報を前記乗客検出手段及び前記荷重計測手段に基づいて判別して保存し、記録した前記操作盤の各機器の前記映像情報のうち前記かご内に乗客がいないとき、あるいは前記かご内に乗客が複数人いるときに取得された前記映像情報を前記乗客検出手段及び前記荷重計測手段に基づいて判別して保存しない映像保存手段を有することを特徴とするエレベーターの遠隔点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの遠隔点検装置において、
前記記録手段の前記映像保存手段によって保存された前記操作盤の各機器の前記映像情報を前記管制センターへ伝送する伝送手段を備え、
この伝送手段は電話回線又はブロードバンド回線から成ることを特徴とするエレベーターの遠隔点検装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベーターの遠隔点検装置において、
前記記録手段の前記映像保存手段によって保存された前記操作盤の各機器の前記映像情報を同一画面上に並べて表示する表示手段を備えたことを特徴とするエレベーターの遠隔点検装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−171783(P2012−171783A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38625(P2011−38625)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】