説明

エレベータ救助運転システムおよび方法

【課題】複数のエレベータ装置のうちの一部のエレベータ装置が停電時のバックアップ用バッテリを備えている場合、効率的、かつ、漏れのない救出運転を可能とするエレベータ救助運転システムおよび方法を提供する。
【解決手段】平常時には商用電力で動作する複数のエレベータ装置と、一部のエレベータ装置のそれぞれに接続され対応するエレベータ装置にそれぞれ電力を供給するバッテリと、商用電源からの受電電圧を監視し受電電圧が検出されないときに停電検出信号を出力する停電検出装置と、停電検出信号を受信したときに発電を行う非常時用発電装置と、停電検出信号を受信したときに非常時用発電装置によって発電された電力の供給対象とするエレベータ装置を選択する給電対象選択装置を備える。給電対象選択装置は、バッテリが接続されていないエレベータ装置への非常時用発電装置からの電力供給を優先する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、停電時のエレベータ救助運転を行うシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごが昇降中に停電が発生すると、乗りかごが昇降路の途中に停止し、乗りかごの搭乗者は乗りかごに閉じ込められる。この事態を解消するために、通常、自家発電機またはバッテリからの電力をエレベータ装置に供給し、救出運転が実行される。救出運転は、できるだけ速やかに行う必要がある。複数のエレベータ装置がある場合には、効率的、かつ、漏れなく救出運転を行う必要がある。
【0003】
エレベータ装置の救出運転に関しては多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、火災等が発生したときに車いす利用者等の弱者用の専用乗場ボタンが押されたことを検出すると、その階への救出運転を優先する発明が開示されている。しかし、この発明によっても、複数のエレベータ装置がある場合には、漏れなく救出運転することは解決されない。また、特許文献2には、乗りかごの昇降速度を下げて複数のエレベータ装置のすべてを一斉に救出運転させる発明が開示されている。しかし、この発明によって昇降速度を下げても、所要電力が大きいため自家発電機の容量を超過し、故障する虞がある。特許文献3には、停電発生時の自家発電による避難階または最寄りの階への救出運転を、搭乗者が多い乗りかごから順に行い、乗りかご荷重が無く、戸開操作も乗りかご呼び操作もないエレベータ装置については救出運転を行わない発明が開示されている。しかし、この発明によると、乗りかご荷重を検出する装置の誤動作または故障により、救出運転の漏れが生じる虞がある。特許文献4には、停電時に自家発電機を始動させ、その出力電圧が所定値に達するまでの間はバッテリからの電力によって救出運転を実行し、自家発電機の出力電圧が所定値に達すると自家発電機からの電力によって救出運転を実行する発明が開示されている。しかし、この発明によると、電力の供給源をバッテリから自家発電機に切替える際に故障が発生する可能性がある。
【0004】
一方、自家発電機の容量は、自家発電機の設置スペースおよびコストを考慮して、多くの場合、1つのエレベータ装置が動作可能な容量しかない。すべてのエレベータ装置の救出運転を行うためにはエレベータ装置に比例する大容量の自家発電機が必要となるが、大容量の自家発電機をエレベータ装置の救出運転用に設けることは現実的ではない。このような現実を踏まえると、複数のエレベータ装置がある場合に、効率的、かつ、漏れなく救出運転を行う課題は解決されているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4124616号公報
【特許文献2】特開平5−246641号公報
【特許文献3】特開平11−209019号公報
【特許文献4】特開2002−137875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数のエレベータ装置のうちの一部のエレベータ装置が停電時のバックアップ用バッテリを備えている場合、効率的、かつ、漏れのない救出運転を可能とするエレベータ救助運転システムまたは方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるエレベータ救助運転システムは、停電が発生していない平常時には商用電源から供給される電力によって動作する複数のエレベータ装置と、複数のエレベータ装置のうちの一部のエレベータ装置のそれぞれに接続され対応するエレベータ装置にそれぞれ電力を供給するバッテリと、商用電源からの受電電圧を監視し受電電圧が検出されないときに停電が発生したと判断し停電検出信号を出力する停電検出装置と、停電検出信号を受信したときに発電を行う非常時用発電装置とを備える。それぞれのエレベータ装置は、乗りかごと、乗りかごを昇降させる巻上機と、巻上機を駆動するエレベータ駆動装置と、少なくともエレベータ駆動装置を制御する制御装置とを含む。また、本システムは、停電検出信号を受信したときに非常時用発電装置によって発電された電力の供給対象とするエレベータ装置を選択する給電対象選択装置を備える。給電対象選択装置は、バッテリが接続されていないエレベータ装置への非常時用発電装置からの電力供給を優先する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図である。
【図2】第1の実施形態におけるエレベータ装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態における停電発生時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図である。
【図5】第2の実施形態における停電発生時の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】第3の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図である。
【図7】第3の実施形態におけるエレベータ装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図8】第4の実施形態におけるエレベータ装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図9】第5の実施形態におけるエレベータ装置の一例を表す機能ブロック図である。
【図10】第6の実施形態におけるエレベータ装置の一例を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜、図面を参照しながら本発明の一例としての実施形態の説明を行う。尚、それぞれの図において、同一の部分または対応する部分には同一の参照符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1ないし図3を参照しながら第1の実施形態の説明を行う。図1に第1の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図を示す。尚、この図は、本実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。エレベータ救助運転システムは、N個のエレベータ装置102を含む。ここで、Nは複数である。
【0011】
図2に1つのエレベータ装置102の一例を表す機能ブロック図を示す。この図も、本実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。1つのエレベータ装置102は、1つの乗りかご202を含む。乗りかご202には、乗りかご内制御装置204が載置されている。一実施形態において、乗りかご内制御装置204は、乗りかご内で操作された内容を、後ほど述べる制御装置210に伝達するとともに、制御装置210からの乗りかご202に関連する情報、指示を受け、受けた情報、指示に基づいた処理を実行する。乗りかご内制御装置204は、例えば、操作盤に収容された乗りかご呼び登録ボタンが押されると、押されたボタンに対応する着床階を表すデータを制御装置210に伝達する。制御装置210によって乗りかご呼びが登録されると、その旨を表すデータが乗りかご内制御装置204に伝達され、乗りかご内制御装置204は乗りかご呼びが登録された階床に対応する乗りかご呼び登録ボタンを点灯させる。
【0012】
乗りかご202を収容する乗りかご枠は、図示しないメインロープを介して、巻上機206によって昇降路を走行する。巻上機206は、巻上機206に備えられた誘導電動機等の電動機によって回動する。巻上機206の電動機は、駆動装置208によって駆動される。駆動装置208として、インバータ、特に、巻上機206の電動機の回動、したがって乗りかご202の走行を細かく制御することができるPWM方式のインバータを用いることができる。駆動装置208は、その出力が、乗りかご202が滑らかに走行するような電圧になるように、制御装置210によって制御される。制御装置210は、このような駆動装置208の制御の他、乗りかご202の走行に関わる事項に関する制御および指示、および乗りかご、乗り場、エレベータ装置の外部からの情報を受け取る役割も担う。
【0013】
尚、一実施形態において、エレベータ装置102に外部から供給される電力は、制御装置210および駆動装置208に並列的に供給され、乗りかご202には駆動装置208によって生成される電力の一部が供給される。
【0014】
図1に戻り、それぞれのエレベータ装置102は、停電が発生していない平常時には、電力会社から供給される商用電源104の電力(商用電力)によって稼働する。商用電源104を受電する受電盤には、図示しないブレーカとともに、受電電圧を監視する停電検出装置106が設けられている。停電検出装置106は、受電電圧が検出されないときに停電が発生したと判断し、停電検出信号を出力する。停電検出信号は、エレベータ救助運転システム用またはエレベータ救助運転システムが設置されている建物用の自家発電機108に伝達される。本願における自家発電機108は、停電という非常事態が発生したときにエレベータ装置102に電力を供給する非常時用発電装置である。自家発電機108は、通常、化石燃料等の燃料を燃焼させることによって発電を行う発電装置であり、例えば、ディーゼル発電機である。停電検出信号を受信すると、自家発電機108は発電を開始する。自家発電機108は、停電検出信号を受信していない状態においても、発電を行ってもよい。
【0015】
N個のエレベータ装置102のうちの一部のエレベータ装置102のそれぞれには、バッテリ110が接続されている。図1においてはエレベータ装置No.2にのみバッテリ110が接続されているが、これは例示であって、エレベータ救助運転システムに含まれるバッテリの数および当該バッテリが接続されるエレベータ装置102の数は任意である。すなわち、例えば、エレベータ装置No.3に、エレベータ装置No.2に接続されているバッテリとは別のバッテリを接続してもよい。停電が発生したときに、エレベータ装置No.2を稼働させる電力を商用電源からの電力からバッテリ110からの電力に切り替えることができる。この場合、バッテリ110が接続されているエレベータ装置No.2の乗りかごを停電時自動着床運転によって最寄り階に着床させることができる。
【0016】
停電検出信号は、給電対象選択装置112および各エレベータ装置102の制御装置210にも伝達される。給電対象選択装置112は、自家発電機108によって発電された電力(自家発電電力)の供給対象とするエレベータ装置102を選択するとともに、自家発電電力を受け、受けた自家発電電力を選択したエレベータ装置102に供給する。給電対象選択装置112には、バッテリ110が接続されているエレベータ装置102を表す情報が予め保存されている。自家発電電力を送電するために、自家発電機108と給電対象選択装置112の間、および給電対象選択装置112と各エレベータ装置102の間は、通常、普通の火災においても燃えないような耐火電線を用いて配線される。
【0017】
尚、給電対象選択装置112、制御装置210、乗りかご内制御装置204、および停電検出装置106等は、マイクロコンピュータ、ROM、RAMまたは磁気記憶装置等のハードウェア資源と、エレベータ制御に必要なソフトウェアを含む、いわゆる組み込みシステムによって実装することができる。また、これらの装置は、ハードウェアによって実装することもできる。
【0018】
停電発生時の本実施形態における動作を、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。前述したように、停電が発生すると、停電検出装置106は停電検出信号を出力する。S302において、給電対象選択装置112および自家発電機108は停電検出信号を受信する。他の実施形態においては、自家発電機108は停電検出信号を受信しない。次にS304で、自家発電機108は自ら自家発電機108を起動し、自家発電を開始する。他の実施形態においては、停電検出信号を受信した給電対象選択装置112が自家発電機108を起動し、自家発電を開始させる。次いでS306で、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の給電対象選択装置112による選択が開始される。例えば、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の候補をエレベータ装置No.1と設定する。S308で、給電対象選択装置112は、候補として設定したエレベータ装置No.1にバッテリ110が接続されているか否かを、保存されている情報と照合することによって判断する。エレベータ装置No.1にはバッテリ110が接続されていないため、S310に進み、エレベータ装置No.1を自家発電電力の供給対象として選択する。次にS312で、給電対象選択装置112はエレベータ装置No.1に自家発電電力を供給し、自家発電電力の供給を受けたエレベータ装置No.1は自家発電時管制運転を実行する。すなわち、エレベータ装置No.1の制御装置210は、対応する乗りかご202を、例えば、避難階または最寄り階に走行させる。尚、本願においては、避難階と最寄り階を総称して、目的階と言うことがある。エレベータ装置No.1における自家発電時管制運転が完了すると、S314で、エレベータ装置No.1の制御装置210は、自家発電時管制運転が完了した旨を給電対象選択装置112に送信し、給電対象選択装置112は、エレベータ装置No.1における自家発電時管制運転が完了した旨の情報を受信する。
【0019】
次いでS316で、給電対象選択装置112は、バッテリ110が接続されておらず自家発電電力の供給を受ける全てのエレベータ装置102の自家発電時管制運転が完了したか否かを判断する。未だ、エレベータ装置No.1のみの自家発電時管制運転が完了した状態であるためS306に戻り、給電対象選択装置112は、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の次の候補をエレベータ装置No.2に設定する。次にS308で、給電対象選択装置112は、候補として設定したエレベータ装置No.2にバッテリ110が接続されているか否かを、保存されている情報と照合することによって判断する。エレベータ装置No.2にはバッテリ110が接続されているため、エレベータ装置No.2を自家発電電力の供給対象から除外し、再びS310に戻る。以降、前述した動作を繰り返す。S316で、給電対象選択装置112によってバッテリ110が接続されておらず自家発電電力の供給を受ける全てのエレベータ装置102の自家発電時管制運転が完了したと判断されると、処理は終了する。
【0020】
図1に示した場合について本実施形態における動作を説明したが、この場合にはエレベータ装置No.2のみにバッテリが接続されているため、エレベータ装置No.2を除いた全てのエレベータ装置102が自家発電電力の供給対象として選択され、自家発電電力による自家発電時管制運転が実行される。以上の説明から明らかなように、本実施形態において、給電対象選択装置112は、バッテリ110が接続されていないエレベータ装置102への自家発電機108からの電力供給を優先する。
【0021】
自家発電電力の供給対象として選択されなかったエレベータ装置No.2においては、前述したように、制御装置210は対応する乗りかご202を停電時自動着床運転によって最寄り階に着床させる。尚、本願においては、自家発電時管制運転と停電時自動着床運転を総称して、救出運転と呼ぶ。
【0022】
図3に示したフローチャートを参照しながら説明を行った停電発生時の本実施形態における動作は、種々変形することができる。図3に示したフローチャートにおいては、候補としたエレベータ装置102にバッテリ110が接続されているか否かをS308で判断し、バッテリ110が接続されていないエレベータ装置102を自家発電電力の供給対象としてS310で選択した後、S312で、給電対象選択装置112は、選択されたエレベータ装置102に自家発電電力を供給し、自家発電電力の供給を受けたエレベータ装置102において自家発電時管制運転が実行される。すなわち、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の選択後に選択されたエレベータ装置102における自家発電時管制運転を実行する動作が逐次的に繰り返されている。自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の選択は極めて短時間で処理することができる一方、自家発電時管制運転の実行には多少の時間を要する。この点に着目すれば、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の選択の判断を全てのエレベータ装置102について行った後、順次、選択されたエレベータ装置102に自家発電電力を供給し、自家発電電力の供給を受けたエレベータ装置102において自家発電時管制運転を実行する方法もある。また、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102が最初に選択された時点で、当該エレベータ装置102に自家発電電力を供給するが、並行して、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の選択の判断が行われていない全てのエレベータ装置102について選択の判断を行う方法もある。
【0023】
本実施形態によれば、バッテリ110を備えているエレベータ装置102については停電時における最寄り階までの運転をバッテリ110から供給される電力によって行わせ、自家発電電力の供給対象から除外し、バッテリ110を備えていないエレベータ装置102については停電時における目的階までの運転を自家発電機108から供給される電力によって行い、自家発電時管制運転と停電時自動着床運転を並行して実行することによって、救出運転を効率良く、かつ、漏れなく実行することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図4および図5を参照しながら第2の実施形態の説明を行う。第2の実施形態の構成には、第1の実施形態の構成に、バッテリ110の残容量を検出し、検出した残容量を表す情報を給電対象選択装置112に伝達するバッテリ残容量計が付加されている。図4に第2の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図を示す。尚、この図は、本実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。また、第1の実施形態と同一の内容については説明を省略する。
【0025】
バッテリ110にはバッテリ残容量計402が接続されている。バッテリ残容量計402は、バッテリ110の残容量を検出し、検出した残容量を表す情報を給電対象選択装置112に伝達する。
【0026】
給電対象選択装置112は、バッテリ残容量計402から受信した情報によって表されるバッテリ110の残容量が、バッテリ110が接続されたエレベータ装置102における停電時自動着床運転を実行可能な容量か否かを判断し、当該エレベータ装置102を自家発電機108からの電力供給対象に加えるか否かを判断する。
【0027】
停電発生時の本実施形態における動作を、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、給電対象選択装置112にはバッテリ残容量計402からバッテリ110の残容量を表す情報は既に伝達されている状態が想定されている。本実施形態において、S302ないしS308、およびS312ないしS316における動作は、図3に示した第1の実施形態における動作と同一である。本実施形態においては、S308で、候補として設定したエレベータ装置102にバッテリ110が接続されていると給電対象選択装置112によって判断されると、S509に進み、給電対象選択装置112は、バッテリ残容量計402から受信した情報によって表されるバッテリ110の残容量が、バッテリ110が接続されたエレベータ装置102における停電時自動着床運転を実行可能な容量か否かを判断する。バッテリ110の残容量が十分であるとS509で判断されると、S306に戻り、給電対象選択装置112は、自家発電電力の供給対象とするエレベータ装置102の次の候補を設定する。一方、バッテリ110の残容量が十分ではないとS509で判断されると、S310に進み、給電対象選択装置112は、残容量が不十分なバッテリ110が接続されているエレベータ装置102も自家発電電力の供給対象として選択する。次にS312に進むが、以降の動作は第1の実施形態における動作と同じである。
【0028】
本実施形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて、バッテリの残容量不足が原因でバッテリを備えたエレベータ装置の救出運転が不可能となる事態を回避することができる。
【0029】
(第3の実施形態)
図6および図7を参照しながら第3の実施形態の説明を行う。第3の実施形態の構成には、第1の実施形態または第2の実施形態の構成に、乗りかご202を収容する乗りかご枠に取り付けられ、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置が付加されている。本実施形態においては、自家発電電力の供給対象として選択された複数のエレベータ装置102に対する自家発電電力の供給の優先順位を、乗りかご202に積載されている重量に応じて、給電対象選択装置112によって判断する。このため、各エレベータ装置102と給電対象選択装置112間で通信を行うためのデータ伝送路も付加されている。
【0030】
図6に、第2の実施形態を基とした第3の実施形態の機能構成の概要を説明するための機能ブロック図を示す。尚、この図は、本実施形態に関連する機能要素と、それらの関連を示すものであって、構成要素の物理的配置あるいは物理的構成を表すものではない。また、第2の実施形態と同一の内容については説明を省略する。図6に示したエレベータ救助運転システムの実施形態の構成には、図4に示したエレベータ救助運転システムの第2の実施形態の構成に、各エレベータ装置102と給電対象選択装置112を結ぶデータ伝送路602が付加されている。このデータ伝送路602は、給電対象選択装置112と各エレベータ装置102間で通信を行うためのものであり、本実施形態においては給電対象選択装置112に、各エレベータ装置102の、例えば、制御装置210から対応する乗りかご202に積載されている重量のデータを、データ伝送路602を介して、伝送する。
【0031】
図7に、本実施形態におけるエレベータ装置102の一例を表す機能ブロック図を示す。本実施形態におけるエレベータ装置102には、図2に示した形態に加え、積載重量検出装置702が設けられている。積載重量検出装置702は、乗りかご202を収容する乗りかご枠に取り付けられ、乗りかごに積載されている重量を検出する。検出された乗りかごに積載されている重量のデータは、乗りかご内制御装置204を介して、制御装置210に伝達される。尚、乗りかご内制御装置204は、例えば、乗り場で多数の利用者が乗りかご202に乗り込んだ結果、積載重量検出装置702によって検出された乗りかご202に積載されている重量が乗りかごの定格積載重量を超えている場合には、操作盤に設けられた戸閉ボタンが押されたときでも、乗りかご202のドアを閉じないような制御を行う。前述したように、エレベータ装置102の制御装置210は、対応する乗りかご202に積載されている重量データを、データ伝送路602を介して、給電対象選択装置112に伝送する。
【0032】
乗りかご202に積載されている重量データを各エレベータ装置102の制御装置210から受信すると、給電対象選択装置112は、自家発電機108からの電力供給対象として選択したエレベータ装置102に対する自家発電電力供給の優先順位を、乗りかごに積載されている重量に応じて、判断する。
【0033】
優先順位の判断方法には、いくつかの方法がある。第1の方法は、積載されている重量が大きな乗りかご202を含むエレベータ装置102に対する自家発電電力供給を優先する。この方法によれば、積載されている重量が大きな乗りかご202には多数の利用者が搭乗していると推定されるため、救出される利用者数の時間的な推移は早く立ち上がると考えられる。
【0034】
第2の方法は、積載されている重量が小さな乗りかご202を含むエレベータ装置102に対する自家発電電力供給を優先する。この方法は、救出運転中に自家発電機108の発電能力が低下する場合を想定した考え方に基づく。ロープ式エレベータは、乗りかご202に定格積載重量の1/2の荷重があるときに、乗りかごと釣合重りが釣り合い、巻上機206のブレーキを開放しても、乗りかごは移動しない。乗りかご202に定格積載重量の1/2を超える荷重があるときに巻上機206のブレーキを開放すると、乗りかご202は下降する。反対に、乗りかご202の荷重が定格積載重量の1/2未満であるときに巻上機206のブレーキを開放すると、釣合重りが下降し、乗りかご202は上昇する。避難階は、多くの場合、1階であるため、救助運転においては乗りかご202を下降させる必要がある。上昇しようとする乗りかごを下降させるときには、巻上機に大量の電力を供給する必要がある。したがって、救出運転中に自家発電機108の発電能力が低下すると、荷重が定格積載重量の1/2未満である乗りかご202を下降させることが困難になる虞があるが、荷重が定格積載重量の1/2を超える乗りかご202を下降させることが困難になる虞は相対的に小さい。このような考えによると、積載されている重量が小さな乗りかご202を含むエレベータ装置102に対する自家発電電力供給を優先することになる。
【0035】
第3の方法は、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力のピーク値(最大値)に着目した優先順位の判断方法である。前述したように、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力は、乗りかご202に積載されている重量に依存する。給電対象選択装置112は、乗りかご202が停電によって停止した位置から目的階までの救出運転が乗りかごを上昇させる運転であるのか下降させる運転であるのかという救出運転方向と、乗りかご202に積載されている重量に基づいて、救出運転において必要な自家発電電力のピーク値を見積もる。給電対象選択装置112は、見積もった電力のピーク値に応じて、自家発電電力の供給を行うエレベータ装置102の優先順位を判断する。乗りかご202に積載されている重量は、救出運転において必要な自家発電電力のピーク値に影響するため、この方法も、自家発電電力の供給を行うエレベータ装置102の優先順位を、乗りかご202に積載されている重量に応じて判断する方法である。
【0036】
第4の方法は、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力の積算値、すなわちエネルギーに着目した優先順位の判断方法である。前述したように、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力は、乗りかご202に積載されている重量に依存する。したがって、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力の積算値も乗りかご202に積載されている重量に依存する。給電対象選択装置112は、救出運転において必要な自家発電電力の積算値を見積もる。給電対象選択装置112は、見積もった電力の積算値に応じて、自家発電電力の供給を行うエレベータ装置102の優先順位を判断する。乗りかご202に積載されている重量は、救出運転を実行する際に必要な自家発電電力の積算値に影響するため、この方法も、自家発電電力の供給を行うエレベータ装置102の優先順位を、乗りかご202に積載されている重量に応じて判断する方法である。
【0037】
以上、第2の実施形態を基とした第3の実施形態の構成、動作に関する説明を行った。以上の説明から明らかなように、第1の実施形態を基とした実施形態としても、自家発電電力の供給対象として選択された複数のエレベータ装置102に対する自家発電電力の供給の優先順位を給電対象選択装置112によって判断することができる。したがって、第1の実施形態の構成に、乗りかご202を収容する乗りかご枠に取り付けられ、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置702を付加し、給電対象選択装置112は、付加された伝送路602を介して受信される各積載重量検出装置702によって検出された乗りかごに積載されている重量に応じて、自家発電機108からの電力供給対象として選択したエレベータ装置102に対する自家発電電力供給の優先順位を判断する構成としてもよい。
【0038】
本実施形態によれば、第1の実施形態または第2の実施形態の効果に加えて、搭乗者の数が多い乗リかごを先に救出運転可能とする等の、自家発電機からの電力供給対象として選択したエレベータ装置に対する自家発電電力供給の優先順位を決めることができる。
【0039】
(第4の実施形態)
図8を参照しながら第3の実施形態を基とした第4の実施形態の説明を行う。第4の実施形態の構成には、第3の実施形態の構成に、停電時における乗りかご202の昇降速度を平常時における乗りかご昇降速度から異なる昇降速度に変更する昇降速度変更装置が付加されている。本実施形態においては、停電時における乗りかご202の昇降速度は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかご202に積載されている重量に応じて、昇降速度変更装置によって変更される。
【0040】
第3の実施形態と、第3の実施形態を基とした第4の実施形態の機能構成で異なる点は、エレベータ装置102の機能構成のみにあり、第3の実施形態を基とした第4の実施形態の機能構成の概要は、既に説明を行った図6によって表される。
【0041】
図8に、本実施形態におけるエレベータ装置102の一例を表す機能ブロック図を示す。本実施形態におけるエレベータ装置102には、図7に示したエレベータ装置102の形態に加え、昇降速度変更装置802が設けられている。昇降速度変更装置802は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかごに積載されている重量のデータを、乗りかご内制御装置204を介して、受信する。昇降速度変更装置802は、乗りかごに積載されている重量データを、乗りかご内制御装置204を介して、積載重量検出装置702から受信すると、停電時における乗りかご昇降速度を平常時における乗りかご昇降速度から異なる昇降速度に変更する。この昇降速度の変更は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかご202に積載されている重量に応じて行う。昇降速度変更装置802は、例えば、乗りかご202の積載重量が定格積載量の9/10であるときには乗りかご昇降速度を平常時における値の1/2に変更し、積載重量が定格積載量の3/10であるときには、乗りかご昇降速度を平常時における値の4/5に変更する。この乗りかご昇降速度の変更方法は説明のための例示であって、本実施形態を限定するものではない。一般的に表現すると、積載重量が大きなときには平常時における乗りかご昇降速度から相対的に大幅に小さな乗りかご昇降速度に変更し、積載重量が小さなときには平常時における乗りかご昇降速度に比較的近い値の乗りかご昇降速度に下げる。
【0042】
尚、昇降速度変更装置802は、マイクロコンピュータ、ROM、RAMまたは磁気記憶装置等のハードウェア資源と、エレベータ制御に必要なソフトウェアを含む、いわゆる組み込みシステムによって実装することができる。また、これらの装置は、ハードウェアによって実装することもできる。
【0043】
昇降速度変更装置802によって変更された乗りかご昇降速度は制御装置210に伝達され、制御装置210は、伝達された乗りかご昇降速度に応じた救出運転を実行する。
【0044】
乗りかご昇降速度を積載重量に応じて変更する理由を述べる。乗りかごを昇降させる際に巻上機のモータの駆動に要する瞬時電力は、乗りかごが静止している状態から所定の昇降速度で走行するまでの加速期間、または乗りかごが所定の昇降速度で走行している状態から静止するまでの減速期間で大きくなり、所定の昇降速度で走行している期間に要する瞬時電力は、加速期間または減速期間における値に比較して小さい。したがって自家発電機108およびバッテリ110の電力容量は、乗りかごが所定の昇降速度で走行している期間を前提とした電力容量よりも大きな値とする必要がある。乗りかごの加速期間または減速期間における巻上機のモータの駆動に要する瞬時電力は、概ね、加速度減速度に比例する。また、巻上機に吊り下げられている乗りかご枠と乗りかご枠に載置されている乗りかごを含むすべてのものの総重量にも、概ね、比例する。この総重量には積載重量が含まれる。説明を簡潔にするため加速度のみについいて述べると、加速度は徐々に増加し所定の一定値に達し、その後、徐々に減少しゼロになるように制御されている。加速度がゼロになる時点は、乗りかごは一定の昇降速度での走行を開始する時点である。ここで、強制的に乗りかごの前記一定の昇降速度を小さくすると、加速度は所定の一定値に達せず、所定の一定値より小さな値に制限される。したがって、強制的に乗りかごの前記一定の昇降速度を、積載重量が大きいときには大幅に小さくすることによって、巻上機のモータの駆動の消費電力を下げることができる。
【0045】
以上、第3の実施形態を基とした第4の実施形態の構成、動作に関する説明を行った。第3の実施形態を基とした第4の実施形態の構成は、第1の実施形態の構成に追加された構成要素を含む。第1の実施形態の構成に追加された構成要素としては、バッテリ残容量計402、データ伝送路602、積載重量検出装置702および昇降速度変更装置802がある。これらの追加された構成要素のうち、バッテリ残容量計402およびデータ伝送路602は、乗りかご昇降速度を乗りかご積載重量に応じて変更するために必須の構成要素ではない。したがって、乗りかご昇降速度を乗りかご積載重量に応じて変更するためには、第1の実施形態の構成に、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置702および昇降速度変更装置802を付加した実施形態としてもよい。
【0046】
また、第3の実施形態を基とした第4の実施形態の構成は、第2の実施形態の構成に追加された構成要素を含む。第2の実施形態の構成に追加された構成要素としては、データ伝送路602、積載重量検出装置702および昇降速度変更装置802がある。乗りかご昇降速度を乗りかご積載重量に応じて変更するためには、第2の実施形態の構成に、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置702および昇降速度変更装置802を付加した実施形態としてもよい。
【0047】
以上説明を行った実施形態によれば、第1の実施形態ないし第3の実施形態の効果に加えて、救出運転の際に自家発電機からエレベータ装置に供給する電力を低減することが可能となる。
【0048】
(第5の実施形態)
図9を参照しながら第4の実施形態を基とした第5の実施形態の説明を行う。第5の実施形態の構成には、第4の実施形態の構成に、停電時における乗りかご202の昇降加速度を平常時における乗りかご昇降加速度から異なる昇降加速度に変更する昇降加速度変更装置が付加されている。本実施形態においては、停電時における乗りかご202の昇降加速度は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかご202に積載されている重量に応じて、昇降加速度変更装置によって変更される。
【0049】
第4の実施形態と、第4の実施形態を基とした第5の実施形態の機能構成で異なる点は、エレベータ装置102の機能構成のみにあり、第4の実施形態を基とした第5の実施形態の機能構成の概要は、既に説明を行った図6によって表される。
【0050】
図9に、本実施形態におけるエレベータ装置102の一例を表す機能ブロック図を示す。本実施形態におけるエレベータ装置102には、図8に示したエレベータ装置102の形態に加え、昇降加速度変更装置902が設けられている。昇降加速度変更装置902は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかごに積載されている重量のデータを、乗りかご内制御装置204を介して、受信する。昇降加速度変更装置902は、乗りかごに積載されている重量データを、乗りかご内制御装置204を介して、積載重量検出装置702から受信すると、停電時における乗りかご昇降加速度を平常時における乗りかご昇降加速度から異なる昇降加速度に変更する。この昇降加速度の変更は、積載重量検出装置702によって検出された乗りかご202に積載されている重量に応じて行う。昇降加速度変更装置902は、例えば、乗りかご202の積載重量が定格積載量の9/10であるときには乗りかご昇降加速度を平常時における値の1/3に変更し、積載重量が定格積載量の3/10であるときには、乗りかご昇降加速度を平常時における値の2/3に変更する。この乗りかご昇降加速度の変更方法は説明のための例示であって、本実施形態を限定するものではない。一般的に表現すると、積載重量が大きなときには平常時における乗りかご昇降加速度から相対的に大幅に小さな乗りかご昇降加速度に変更し、積載重量が小さなときには平常時における乗りかご昇降加速度に比較的近い値の乗りかご昇降加速度に下げる。
【0051】
尚、昇降加速度変更装置902は、マイクロコンピュータ、ROM、RAMまたは磁気記憶装置等のハードウェア資源と、エレベータ制御に必要なソフトウェアを含む、いわゆる組み込みシステムによって実装することができる。また、これらの装置は、ハードウェアによって実装することもできる。
【0052】
昇降加速度変更装置902によって変更された乗りかご昇降速度は制御装置210に伝達され、制御装置210は、伝達された乗りかご加昇降速度に応じた救出運転を実行する。
【0053】
乗りかご昇降加速度を積載重量に応じて変更する理由を述べる。第4の実施形態の説明に記載したように、乗りかごを昇降させる際に巻上機のモータの駆動に要する電力は、乗りかごの加速期間または減速期間で大きく、一定速度で乗りかごが走行している期間の所要電力は小さい。また、乗りかごの加速期間または減速期間における巻上機のモータの駆動に要する電力は、概ね、加速度減速度に比例するとともに、乗りかごの積載重量が大きいほど大きい。したがって、乗りかごの積載重量が大きいときには、乗りかご昇降加速度を停電が発生していないときの乗りかご昇降加速度から小さくなるように変更すれば、巻上機のモータの駆動の消費電力を下げることができる。
【0054】
以上、第4の実施形態を基とした第5の実施形態の構成、動作に関する説明を行った。第4の実施形態を基とした第5の実施形態の構成は、第1の実施形態の構成に追加された構成要素を含む。第1の実施形態の構成に追加された構成要素としては、バッテリ残容量計402、データ伝送路602、積載重量検出装置702、昇降速度変更装置802および昇降加速度変更装置902がある。これらの追加された構成要素のうち、バッテリ残容量計402、伝送路602およびデータ昇降速度変更装置802は、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するために必須の構成要素ではない。したがって、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するためには、第1の実施形態の構成に、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置702および昇降加速度変更装置902を付加した実施形態としてもよい。
【0055】
また、第4の実施形態を基とした第5の実施形態の構成は、第2の実施形態の構成に追加された構成要素を含む。第2の実施形態の構成に追加された構成要素としては、データ伝送路602、積載重量検出装置702、データ昇降速度変更装置802および昇降加速度変更装置902がある。これらの追加された構成要素のうち、伝送路602およびデータ昇降速度変更装置802は、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するために必須の構成要素ではない。したがって、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するためには、第2の実施形態の構成に、乗りかご202に積載されている重量を検出する積載重量検出装置702および昇降加速度変更装置902を付加した実施形態としてもよい。
【0056】
さらに、第4の実施形態を基とした第5の実施形態の構成は、第3の実施形態の構成に追加された構成要素を含む。第3の実施形態の構成に追加された構成要素としては、データ昇降速度変更装置802および昇降加速度変更装置902がある。これらの追加された構成要素のうち、データ昇降速度変更装置802は、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するために必須の構成要素ではない。したがって、乗りかご昇降加速度を乗りかご積載重量に応じて変更するためには、第3の実施形態の構成に、昇降加速度変更装置902を付加した実施形態としてもよい。
【0057】
以上説明を行った実施形態によれば、第4の実施形態と同様に、第1の実施形態ないし第3の実施形態の効果に加えて、救出運転の際に自家発電機からエレベータ装置に供給する電力を低減することが可能となる。
【0058】
(第6の実施形態)
図10を参照しながら第5の実施形態を基とした第6の実施形態の説明を行う。図10に示す第6の実施形態の構成には、第5の実施形態の構成に、音声アナウンス装置および表示装置が付加されている。音声アナウンス装置および表示装置の両方を設ける方が好ましいが、音声アナウンス装置および表示装置の少なくとも一方を備えた構成としてもよい。本実施形態においては、音声アナウンス装置および表示装置の少なくとも一方は、制御装置210からの指示にしたがって、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を乗りかご202内で報知する。
【0059】
第5の実施形態と、第5の実施形態を基とした第6の実施形態の機能構成で異なる点は、エレベータ装置102の機能構成のみにあり、第5の実施形態を基とした第6の実施形態の機能構成の概要は、既に説明を行った図6によって表される。
【0060】
図10に、本実施形態におけるエレベータ装置102の一例を表す機能ブロック図を示す。図10に示す本実施形態におけるエレベータ装置102には、図9に示したエレベータ装置102の形態に加え、音声アナウンス装置1002および表示装置1004が設けられている。音声アナウンス装置1002は、制御装置210からの指示にしたがって、例えば、「停電のため1階に移動します。到着後、速やかにエレベータから降りて下さい。」等の停電発生時の救出運転の手順を乗りかご202内で音声放送する。一実施形態において、音声アナウンス装置1002は、制御装置210からの指示にしたがって、例えば、「停電のため、ゆっくりと移動しています。」等の停電発生時の救出運転の進行状況を乗りかご202内で音声放送する。表示装置1004は、音声アナウンス装置1002によって乗りかご202内で音声放送される内容と同様の内容、すなわち、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を制御装置210からの指示にしたがって、乗りかご202内で表示する。表示装置1004として、乗りかごに設けられている操作盤内の表示装置あるいは乗りかごに設けられているディスプレイ装置を用いることもできる。
【0061】
以上、第5の実施形態を基とした第6の実施形態の構成、動作に関する説明を行った。しかし、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を乗りかご202内で報知することを可能とする実施形態は、図10に示した第5の実施形態を基とした第6の実施形態に限定されるものではない。例えば、前述した実施形態1ないし実施形態4におけるエレベータ装置102において、乗りかご内制御装置204に接続され、制御装置210からの指示にしたがって、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を乗りかご202内で報知する音声アナウンス装置1002および表示装置1004の少なくとも一方を付加した実施形態としてもよい。
【0062】
以上説明を行った実施形態によれば、第1の実施形態ないし第5の実施形態の効果に加えて、停電発生時に乗りかご内に情報を報知することによって、乗りかごに搭乗しているエレベータ利用者に状況を伝達し、当該エレベータ利用者の不安を和らげることができる。
【0063】
以上の実施形態に関する記載においては、自家発電機の容量が小さく、1つのエレベータ装置のみの救出運転しかできず、複数のエレベータ装置の救出運転は同時にはできない場合を想定して説明を行った。しかし、自家発電機の容量が比較的大きく、複数、例えば2つのエレベータ装置の救出運転を同時に実行することができる場合には、自家発電機から2つのエレベータ装置に同時に電力供給する。このように、複数のエレベータ装置に自家発電機からの電力を同時に供給し、電力供給を受けた複数のエレベータ装置が同時に救出運転を実行することによって、すべてのエレベータ装置の救出運転に要する時間が短縮され、乗りかごに搭乗していたエレベータ利用者全員を早く乗りかごから解放することができる。
【0064】
以上、説明を行った実施形態によれば、複数のエレベータ装置のうちの一部のエレベータ装置が停電時のバックアップ用バッテリを備えている場合、自家発電時管制運転と停電時自動着床運転を並行して実行することによって、効率的、かつ、漏れのない救出運転を可能とするエレベータ救助運転システムおよび方法が提供される。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
102…エレベータ装置、 104…商用電源、 106…停電検出装置、
108…自家発電機、 110…バッテリ、 112…給電対象選択装置、
202…乗りかご、 204…乗りかご内制御装置、 206…巻上機、
208…駆動装置、 210…制御装置、 402…バッテリ残容量計、
602…データ伝送路、 702…積載重量検出装置、
802…昇降速度変更装置、 902…昇降加速度変更装置、
1002…音声アナウンス装置、 1004…表示装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、
乗りかごと、
前記乗りかごを昇降させる巻上機と、
この巻上機を駆動するエレベータ駆動装置と、
少なくとも前記エレベータ駆動装置を制御する制御装置と
を含み、停電が発生していない平常時には商用電源から供給される電力によって動作する複数のエレベータ装置と、
前記商用電源からの受電電圧を監視し、前記受電電圧が検出されないときに停電が発生したと判断し停電検出信号を出力する停電検出装置と、
前記停電検出信号を受信したときに発電を行う非常時用発電装置と、
前記複数のエレベータ装置のうちの一部のエレベータ装置のそれぞれに接続され、接続された前記エレベータ装置にそれぞれ電力を供給するバッテリと、
前記停電検出信号を受信したときに前記非常時用発電装置によって発電された電力の供給対象とする前記エレベータ装置を選択する給電対象選択装置とを備え、
前記給電対象選択装置は、前記バッテリが接続されていない前記エレベータ装置への前記非常時用発電装置からの電力供給を優先することを特徴とするエレベータ救助運転システム。
【請求項2】
前記システムは、前記バッテリの残容量を検出し、検出した前記残容量を表す情報を前記給電対象選択装置に伝達するバッテリ残容量検出装置を、さらに、備え、
前記給電対象選択装置は、伝達された前記バッテリ残容量に応じて、前記バッテリが接続されている前記エレベータ装置を前記非常時用発電装置からの電力供給対象に加えるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ救助運転システム。
【請求項3】
前記エレベータ装置は、
前記乗りかごを収容する乗りかご枠に取り付けられ前記乗りかごに積載されている重量を検出する積載重量検出装置を、さらに、備え、
前記給電対象選択装置は、前記積載重量検出装置によって検出された前記乗りかごに積載されている前記重量に応じて、前記非常時用発電装置からの電力供給対象として選択した前記エレベータ装置に対する非常時用発電電力供給の優先順位を判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ救助運転システム。
【請求項4】
前記エレベータ装置は、
前記乗りかごを収容する乗りかご枠に取り付けられ前記乗りかごに積載されている重量を検出する積載重量検出装置と、
この積載重量検出装置によって検出された前記乗りかごに積載されている前記重量に応じて、停電時における前記乗りかご昇降速度を平常時における前記乗りかご昇降速度から異なる昇降速度に変更する昇降速度変更装置を、さらに、備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ救助運転システム。
【請求項5】
前記エレベータ装置は、
前記乗りかごを収容する乗りかご枠に取り付けられ前記乗りかごに積載されている重量を検出する積載重量検出装置と、
この積載重量検出装置によって検出された前記乗りかごに積載されている前記重量に応じて、停電時における前記乗りかご昇降加速度を平常時における前記乗りかご昇降加速度から異なる昇降加速度に変更する昇降加速度変更装置を、さらに、備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ救助運転システム。
【請求項6】
前記エレベータ装置は、
前記制御装置からの指示にしたがって、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を前記乗りかご内で報知する音声アナウンス装置および表示装置の少なくとも一方を、さらに、備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ救助運転システム。
【請求項7】
停電が発生していない平常時には商用電源から供給される電力によって動作する複数のエレベータ装置と、前記複数のエレベータ装置に接続された非常時用発電装置と、前記複数のエレベータ装置の一部のエレベータ装置のそれぞれに接続されたバッテリとを備えたシステムであって、停電発生時には救助運転を実行するエレベータ救助運転システムにおいて、
停電を検出し停電検出信号を生成するステップと、
前記停電検出信号を受信したときに非常時用発電を開始するステップと、
非常時用発電電力の供給対象の前記エレベータ装置の候補を設定するステップと、
前記候補として設定された前記エレベータ装置に前記バッテリが接続されているか否かを判断する判断ステップと
この判断ステップにおいて前記バッテリが接続されていると判断された前記エレベータ装置を非常時用発電電力の供給対象として選択するステップと、
前記非常時用発電電力の供給対象として選択された前記エレベータ装置に前記非常時用発電電力を優先的に供給するステップと
を含むことを特徴とするエレベータ救助運転方法。
【請求項8】
前記方法は、
前記バッテリの残容量を検出するステップと、
このステップにおいて検出された前記残容量が、前記バッテリが接続された前記エレベータ装置における救助運転を実行するために十分な容量か否かを判断するステップと、
このステップにおいて前記バッテリの前記残容量が不十分であると判断されたときに、前記残容量が不十分であると判断された前記バッテリに接続された前記エレベータ装置を前記非常時用発電電力の供給対象として選択するステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項7に記載のエレベータ救助運転方法。
【請求項9】
前記方法は、
前記エレベータ装置の乗りかごの積載重量を検出するステップと、
このステップにおいて検出された前記積載重量に応じて、前記非常時用発電電力の供給対象として選択された前記エレベータ装置に対する非常時用発電電力供給の優先順位を判断するステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータ救助運転方法。
【請求項10】
前記方法は、
前記エレベータ装置の乗りかごの積載重量を検出するステップと、
このステップにおいて検出された前記積載重量に応じて、停電時における前記乗りかごの昇降速度を平常時における前記乗りかごの昇降速度から異なる昇降速度に変更するステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータ救助運転方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記エレベータ装置の乗りかごの積載重量を検出するステップと、
このステップにおいて検出された前記積載重量に応じて、停電時における前記乗りかごの昇降加速度を平常時における前記乗りかごの昇降加速度から異なる昇降加速度に変更するステップと
を、さらに、含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータ救助運転方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記エレベータ装置の制御装置からの指示にしたがって、停電発生時の救出運転の手順、および救出運転の進行状況の少なくとも一方を、前記乗りかご内で聴覚的または視覚的に報知するステップを、さらに、含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータ救助運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−188229(P2012−188229A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53037(P2011−53037)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】