説明

エンジンのターボチャージシステム

【課題】排気ガスの騒音を低減させ、インシュレータを省略して、排気効率を向上させるとともに、シリンダーヘッドの熱害を防止することができるエンジンのターボチャージシステムを提供する。
【解決手段】本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムは、シリンダーヘッドの両側面に装着されている一対の排気マニホールドと、前記一対の排気マニホールドに各々連結されていて、排気ガスのエネルギーを利用して吸入する空気の量を増加させる一対のターボチャージャーと、前記一対の排気マニホールドを互いに連結させるクロスオーバーパイプと、を含み、前記クロスオーバーパイプは、シリンダーヘッド内に設置され、外側パイプと内側パイプとが離隔されて設けられた2重構造を有し、両端がピストンリングで固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのターボチャージシステムに係り、より詳細には、エンジンのシリンダーヘッドの両側に装着された排気マニホールド(exhaust manifold)を連結させるクロスオーバーパイプ(cross over pipe)をシリンダーヘッドの内部に設置し、前記クロスオーバーパイプを二重パイプ構造に形成することによって、排気ガスのエネルギー損失を最小にするエンジンのターボチャージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンは、排気量と同程度の混合気を吸入しなければならないが、実際には、排気量の80%程度の混合気しか吸入することができない。したがって、吸入する空気の量を増加させるために、バルブ数を増加したりバルブの直径を大きくして、ターボチャージャー(turbo charger)を利用して強制的に空気を吸入している。
【0003】
一般に、ターボチャージシステム(turbo charge system)は、吸気マニホールド(intake manifold)及び排気マニホールドに連結されたターボチャージャーを利用して、吸気マニホールドに吸入される空気の量を増加させるシステムである。具体的には、排気マニホールドを流れる排気ガスを利用してターボチャージャーのタービンを強制的に回転させると、前記タービンに連結されたコンプレッサーが回転して、吸気マニホールドに空気が強制的に吸入される。
【0004】
このようなターボチャージシステムは、高温、高圧の排気ガスがタービンを通過して低温、低圧の排気ガスに変化し、それによって排気ガスのエネルギーがタービンに伝達されて、タービンを回転させる。したがって、高温、高圧の排気ガスがタービンハウジングに流入することによって、ターボチャージャーの効率が向上する。
【0005】
従来のターボチャージシステムは、シリンダーヘッドの両側面に一対の吸気マニホールド及び排気マニホールドが装着されていて、前記一対の排気マニホールドが各々第1、2ターボチャージャーに連結されていた。また、第1、2ターボチャージャーは、シリンダーヘッドに装着された吸気マニホールドに連結されていた。したがって、排気マニホールドから排気ガスが第1、2ターボチャージャーに吸入されると、第1、2ターボチャージャーのタービンが回転する。
【0006】
この場合、タービンの回転によってタービンに連結されたコンプレッサーが回転して、吸気マニホールドに空気が強制的に流入する。また、一対の排気マニホールドは、クロスオーバーパイプ(cross over pipe)によって連結されている。したがって、エンジンが高速または高負荷領域で作動する場合には、第1、2ターボチャージャーを全て作動させ、エンジンが中低速または低負荷領域で作動する場合には、一対の排気マニホールドから排出される排気ガスをクロスオーバーパイプを通じて1つの排気マニホールドに集め、集められた排気ガスが第1、2ターボチャージャーのうちの1つのターボチャージャーのタービンを回転させるようにして、ターボチャージャーの効率を向上させる。
【0007】
しかし、従来のターボチャージシステムでは、クロスオーバーパイプがシリンダーヘッドの外部に設置されたので、排気ガスの騒音が大きく、シリンダーヘッドの外観が良くなかった。また、クロスオーバーパイプが著しく屈曲され、その長さが長いので、排気損失が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−259576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、シリンダーヘッドの両側に装着された一対の排気マニホールドを連結させるクロスオーバーパイプをシリンダーヘッドの内部に設置することによって、排気ガスの騒音を低減させ、インシュレータを省略して、排気効率を向上させることができるエンジンのターボチャージシステムを提供することを目的とする。
また、前記クロスオーバーパイプを二重パイプ構造に形成することによって、シリンダーヘッドの熱害を防止することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムは、シリンダーヘッドの両側面に装着されている一対の排気マニホールドと、一対の排気マニホールドに各々連結されていて、排気ガスのエネルギーを利用して吸入する空気の量を増加させる一対のターボチャージャーと、一対の排気マニホールドを互いに連結させるクロスオーバーパイプと、を含み、クロスオーバーパイプは、シリンダーヘッド内に設置され、かつ内側パイプ及び外側パイプを含む二重パイプ構造に形成され、内側パイプは、外側パイプから設定された距離だけ離隔して配置され、内側パイプの両端は、外側パイプの内面に形成されたピストンリングによって固定されることを特徴とする。
【0011】
外側パイプの一端は、ガスケットと一体に形成され、内側パイプは、ベローズ構造に形成され、外側パイプには、少なくとも1つ以上の空気孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、シリンダーヘッドの両側面に装着されている一対の排気マニホールドと、一対の排気マニホールドのうちの少なくとも1つに連結されていて、排気ガスのエネルギーを利用して吸入する空気の量を増加させるターボチャージャーと、シリンダーヘッド内に設置されていて、一対の排気マニホールドを互いに連結させるクロスオーバーパイプと、を含み、クロスオーバーパイプは、内側パイプ及び外側パイプを含む二重パイプ構造に形成され、内側パイプは、外側パイプから設定された距離だけ離隔して配置され、内側パイプの両端は、外側パイプの内面に形成されたピストンリングによって固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クロスオーバーパイプをシリンダーヘッドの内部に設置するので、クロスオーバーパイプの長さが短くなって、排気損失が低減され、排気ガスの騒音が低減される。また、インシュレータを省略することができるので、排気効率が向上し、外観も良くなる。
また、クロスオーバーパイプを内側パイプ及び外側パイプからなる二重パイプ構造に形成し、内側パイプ及び外側パイプを設定された距離だけ離隔させるので、シリンダーヘッドの熱害を防止することができる。
また、排気ガスと直接接触する内側パイプをベローズ構造に形成するので、内側パイプの熱変形による破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムを示した正面図である。
【図2】本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムにおけるクロスオーバーパイプの設置構造を示した概略図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図3のA部分の拡大図である。
【図5】図3のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を添付した図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムを示した正面図である。
図1に示す通り、本発明のターボチャージシステムは、エンジンに装着され、エンジンは、シリンダーヘッド10及びシリンダーブロック15を含む。
シリンダーヘッド10は、その上部に吸気マニホールド25が装着されていて、その両側に排気マニホールド20が装着されている。前記シリンダーヘッド10には、混合気の吸入のために、吸気バルブ、吸気カムが装着されていて、排気ガスの排出のために、排気バルブ、排気カムが装着されている。
【0017】
また、シリンダーヘッド10の両側の排気マニホールド20は、図2に示したように、クロスオーバーパイプ(cross over pipe)30によって連結され、クロスオーバーパイプ30は、シリンダーヘッド10の内部に設置されている。
シリンダーブロック15の内部には、シリンダーが装着されていて、シリンダーの内部には、混合気の爆発力によって往復運動をするピストンが装着されている。また、シリンダーブロック15には、ピストンの往復運動によって回転するクランク軸が装着されていて、ピストン及びクランク軸を連結させるコネクティングロッドが装着されている。シリンダーブロック15には、冷却水が流れる冷却水通路が形成されている。また、シリンダーブロック15の両側に、第1、2ターボチャージャー50、55が装着されていて、第1、2ターボチャージャー50、55は、各々一対の排気マニホールド20に連結されている。
【0018】
本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムでは、2つのターボチャージャー50、55が装着されていることを説明したが、1つのターボチャージャーが装着されていてもよい。この場合、前記一対の排気マニホールド20のうちの1つの排気マニホールド20は、ターボチャージャーに連結されて、排気ガスをターボチャージャーに流入させる。また、他の1つの排気マニホールド20は、クロスオーバーパイプ30を通じて1つの排気マニホールド20に排気ガスを流入させる。
【0019】
第1、2ターボチャージャー50、55は、各々前記一対の排気マニホールド20に連結されて、排気マニホールド20から流入する排気ガスによってタービンが回転する。また、第1、2ターボチャージャー50、55は、各々吸気マニホールド25に連結されて、空気を強制的に吸気マニホールド25に流入させる。
本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムは、2段ターボチャージシステムを使用する。即ち、中低速または低負荷状態では、排気ガスを第1、2ターボチャージャー50、55のうちの1つのターボチャージャー50に流入させ、高速または高負荷状態では、排気ガスを第1、2ターボチャージャー50、55の両方に流入させる。
【0020】
以下、図2乃至図5を参照して、本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムにおける排気マニホールド及びクロスオーバーパイプの連結構造をより詳細に説明する。
図2は本発明の実施例によるエンジンのターボチャージシステムにおけるクロスオーバーパイプの設置構造を示した概略図であり、図3は図2のIII−III断面図であり、図4は図3のA部分の拡大図であり、図5は図3のB部分の拡大図である。
図2及び図3に示した通り、シリンダーヘッド10の両側の排気マニホールド20は、クロスオーバーパイプ30によって連結され、クロスオーバーパイプ30は、シリンダーヘッド10の内部に設置されている。したがって、クロスオーバーパイプ30の長さが短くなって、排気損失を防止することができ、エンジンの外観が良くなる。
【0021】
クロスオーバーパイプ30は、内側パイプ34が外側パイプ32内に設置される二重パイプ構造に形成されている。排気ガスの温度は通常750〜800℃であるので、クロスオーバーパイプ30をシリンダーヘッド10の内部に設置する場合、排気ガスの熱によってシリンダーヘッド10の耐久性が低下する。したがって、このようなシリンダーヘッド10の熱害(heat damage)を防止するために、クロスオーバーパイプ30は、二重パイプ構造に形成される。
【0022】
また、内側パイプ34を通過する高温の排気ガスによってシリンダーヘッド10が熱害を被らないように、内側パイプ34は、外側パイプ32から設定された距離だけ離隔して配置される。
内側パイプ34は、熱変形による破損を防止するために、ベローズ構造(bellows structure)36に形成されている。また、排気ガスから放出される熱を発散させるために、クロスオーバーパイプ30には、少なくとも1つ以上の空気孔44が形成されている。空気孔44は、クロスオーバーパイプ30の上下に形成され、互いに対応する位置に形成されるのが好ましい。
【0023】
図4及び図5に示した通り、内側パイプ34の両端は、外側パイプ32の内面に形成されたピストンリング38、40によって固定される。図5に示したように、外側パイプ32の両端のうちの排気マニホールド20と連結される一端は、排気ガスが外側パイプ32及び内側パイプの間のスキ間に流入するのを防止するために、ガスケット42と一体に形成されている。外側パイプ32及びガスケット42は、同一材質から構成することができる。また、ガスケット42は、ピストンリング40と一体に形成することができる。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0025】
10 シリンダーヘッド
15 シリンダーブロック
20 排気マニホールド
25 吸気マニホールド
30 クロスオーバーパイプ
32 外側パイプ
34 内側パイプ
50、55 第1、第2ターボチャージャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーヘッドの両側面に装着されている一対の排気マニホールドと、前記一対の排気マニホールドに各々連結されていて、排気ガスのエネルギーを利用して吸入する空気の量を増加させる一対のターボチャージャーと、前記一対の排気マニホールドを互いに連結させるクロスオーバーパイプと、を含み、
前記クロスオーバーパイプは、シリンダーヘッド内に設置され、かつ内側パイプ及び外側パイプを含む二重パイプ構造に形成され、
前記内側パイプは、前記外側パイプから設定された距離だけ離隔して配置され、
前記内側パイプの両端は、前記外側パイプの内面に形成されたピストンリングによって固定されていることを特徴とするエンジンのターボチャージシステム。
【請求項2】
前記外側パイプの一端は、ガスケットと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのターボチャージシステム。
【請求項3】
前記内側パイプは、ベローズ構造に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのターボチャージシステム。
【請求項4】
前記外側パイプには、少なくとも1つ以上の空気孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンのターボチャージシステム。
【請求項5】
シリンダーヘッドの両側面に装着されている一対の排気マニホールドと、前記一対の排気マニホールドのうちの少なくとも1つに連結されていて、排気ガスのエネルギーを利用して吸入する空気の量を増加させるターボチャージャーと、前記シリンダーヘッド内に設置されていて、前記一対の排気マニホールドを互いに連結させるクロスオーバーパイプと、を含み、
前記クロスオーバーパイプは、内側パイプ及び外側パイプを含む二重パイプ構造に形成され、
前記内側パイプは、前記外側パイプから設定された距離だけ離隔して配置され、
前記内側パイプの両端は、前記外側パイプの内面に形成されたピストンリングによって固定されていることを特徴とするエンジンのターボチャージシステム。
【請求項6】
前記外側パイプの一端は、ガスケットと一体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のエンジンのターボチャージシステム。
【請求項7】
前記内側パイプは、更にベローズ構造に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のエンジンのターボチャージシステム。
【請求項8】
前記外側パイプには、更に少なくとも1つ以上の空気孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のエンジンのターボチャージシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100822(P2013−100822A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10318(P2013−10318)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2007−314112(P2007−314112)の分割
【原出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】