説明

エンジンの排気装置

【課題】 配管密度を高めたコア部を備えるスターリングエンジンの多管式熱交換器を設ける場合に、エンジンとスターリングエンジンとを含むシステム全体としての性能向上効果を得ることが可能なエンジンの排気装置を提供する。
【解決手段】 エンジンの排気装置は、スターリングエンジン10Aに設けられ、複数回に亘って伝熱管71を折り返すことで配管密度が高められたコア部Cを有する加熱器47と、コア部Cを収容する第1の排気通路E1と、第2の排気通路E2とを形成する排気通路部101Aと、排気通路部101Aにおける排気通路を第1の排気通路E1とする場合と、第1の排気通路E1および第2の排気通路E2とする場合とを切り替えることが可能な第1の切替弁102Aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの排気装置に関し、特にスターリングエンジンの加熱器が設けられたエンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車やバス、トラック等の車両に搭載される内燃機関の排熱や工場排熱を回収するために、スターリングエンジンが注目されてきている。スターリングエンジンは高い熱効率が期待できる上に、作動流体を外から加熱する外燃機関であるために、熱源を問わず、ソーラー、地熱、排熱といった各種の低温度差代替エネルギーを活用でき、省エネルギーに役立つという利点がある。
エンジンの排気通路に取り付け可能なスターリングエンジンを開示している点で、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1で開示されている。また圧力損失を考慮した排気の流通制御を行う技術を開示している点で、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−106010号公報
【特許文献2】特開2004−100481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スターリングエンジンの加熱器としては、具体的には多管式熱交換器(shell and tube exchanger, tubular exchanger)を用いることが考えられる。この点、多管式熱交換器では配管を高密度に備えることで、配管の本数を増やすことができることから、これにより伝熱面積を増大させて高い熱交換性能を得ることができる。ところが、配管の配置を詰めることで配管の高密度化を図ることには限度がある。この点、これに対して更なる高密度化を図るためには、配管を複数回に亘って折り返すことで、配管密度を高めることが考えられる。そしてこのようにして配管の高密度化を図ったコア部を備えた加熱器によれば、さらに高い熱交換性能を得ることができる。またかかる加熱器によれば、さらに熱変形による応力の緩和を図ることもできる。
【0005】
しかしながら、エンジンの排気通路にスターリングエンジンの加熱器を設ける場合には、加熱器が排気ガスの流通抵抗となることから、圧力損失が発生することになる。この点、加熱器が上述のようにして配管の高密度化を図ったコア部を備える場合には、その分圧力損失も大きくなる。このためこの場合には、例えばエンジン高負荷時などにエンジンの出力が大きく低下する状況が発生し、この結果、場合によってはエンジンとスターリングエンジンとを含むシステム全体としての性能向上効果を得ることが困難な状況が発生することが考えられる。
【0006】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、配管密度を高めたコア部を備えるスターリングエンジンの多管式熱交換器を設ける場合に、エンジンとスターリングエンジンとを含むシステム全体としての性能向上効果を得ることが可能なエンジンの排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明はスターリングエンジンに設けられ、複数回に亘って配管を折り返すことで配管密度が高められたコア部を有するとともに、前記スターリングエンジンの作動流体とエンジンの排気ガスとの間での熱交換を行う多管式の熱交換器と、前記熱交換器が設けられるとともに、前記コア部を収容する第1の排気通路と、前記コア部と前記スターリングエンジンの本体との間に設けられる第2の排気通路とを形成する排気通路部と、前記排気通路部における排気通路を前記第1の排気通路とする場合と、前記第1および第2の排気通路とする場合とを切り替えることが可能な切替手段とを備えたエンジンの排気装置である。
【0008】
また本発明は前記第2の排気通路が、前記加熱器のうち、前記コア部よりも配管密度が低い領域である構成であることが好ましい。
【0009】
また本発明は前記排気通路部が、前記熱交換器を迂回する第3の排気通路をさらに形成し、前記切替手段が、前記排気通路部における排気通路を前記第1の排気通路とする場合と、前記第1および第2の排気通路の代わりに、前記第1、第2および第3の排気通路のうち、少なくとも前記第1の排気通路を含む2以上の排気通路とする場合とを切り替えることが可能な構成であることが好ましい。
【0010】
また本発明は前記エンジンの排気ガスが前記熱交換器を通過する際に圧力損失が発生し、前記エンジンの出力が低下することに対して、前記スターリングエンジンの出力から圧力損失による前記エンジンの出力低下分を引いて得られる前記スターリングエンジンの出力と前記エンジンの出力低下分との差が大きくなるように前記切替手段を制御する制御手段をさらに備えた構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配管密度を高めたコア部を備えるスターリングエンジンの多管式熱交換器を設ける場合に、エンジンとスターリングエンジンとを含むシステム全体としての性能向上効果を得ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のエンジンの排気装置についての概略構成図である。
【図2】実施例2のエンジンの排気装置についての概略構成図である。
【図3】実施例3のエンジンの排気装置についての概略構成図である。
【図4】排気ガスの流速に応じたスターリングエンジンの出力と損失動力の変化を示す図である。
【図5】実施例3におけるECUの動作をフローチャートで示す図である。
【図6】実施例4のエンジンの排気装置についての概略構成図である。
【図7】実施例5のエンジンの排気装置についての概略構成図である。
【図8】排気ガスの流量に応じた圧力損失の変化を示す図である。
【図9】実施例5におけるECUの動作をフローチャートで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本実施例にかかるエンジンの排気装置についての概略構成図である。スターリングエンジン10Aは2気筒α型のスターリングエンジンであり、クランク軸線CLの延伸方向と気筒配列方向Xとが互いに平行になるように直列平行に配置された一対の気筒である高温側気筒20および低温側気筒30を有している。気筒20、30は図示しないピストンおよびシリンダをそれぞれ備えている。気筒20、30は、冷却器45、再生器46、加熱器47を介して互いに接続されている。
【0015】
冷却器45は低温側気筒30の上部に固定されており、作動流体を冷却する。
再生器46は冷却器45の上部に固定されており、作動流体との間で熱の授受を行う。具体的には再生器46は、作動流体が高温側気筒20から低温側気筒30へと流れる時には作動流体から熱を受け取り、低温側気筒30から高温側気筒20へと流れる時には蓄えられた熱を作動流体に放出する。
加熱器47は再生器46の上部と高温側気筒20の上部とに固定されており、作動流体を加熱する。加熱器47は具体的にはエンジン(図示省略)の排気管100Aの内部に配置されており、エンジンの排気ガスと作動流体との間での熱交換を行う。
【0016】
スターリングエンジン10Aでは、作動流体が冷却器45、再生器46および加熱器47で熱の授受を行いながら気筒20、30間を往復流動する。そしてこれに応じて気筒20、30が備えるピストンそれぞれが往復運動する。これらピストンの往復運動はクランク軸113Aで回転運動に変換され、これによりスターリングエンジン10Aの出力が取り出される。
作動流体には空気が適用されている。但しこれに限られず、作動流体には例えばHe、H、N等の気体を適用することができる。
【0017】
次に加熱器47についてさらに具体的に説明する。ここで、加熱器47は多管式の熱交換器となっており、作動流体を流通させる配管として複数の伝熱管71を備える。伝熱管71は、その中心軸に対して軸対称となる形状を有しており、具体的には概ねM字状の形状を有している。伝熱管71には具体的にはSUSチューブが用いられている。
複数の伝熱管71は伝熱管群70を構成する。伝熱管群70は具体的には1列状の集合をなすように配置される複数の伝熱管71で構成される。さらに具体的には伝熱管群70は、互いに直列平行に、且つ等間隔で配置される複数の伝熱管71で構成される。この点、加熱器47を備えるスターリングエンジン10Aが、排気ガスの流通方向V1に対してクランク軸線CLの延伸方向(換言すれば気筒配列方向X)が平行になるように配置されているのに対して、伝熱管群70を構成する複数の伝熱管71は、具体的には気筒配列方向Xに沿って互いに直列に配置されるようになっている。伝熱管群70を構成する複数の伝熱管71それぞれは互いに等長で、且つ同形状となっている。
【0018】
伝熱管群70は、一端部と、他端部と、立ち上がり部と、立ち下がり部と、折り返し部とを備えている。
一端部は高温側気筒20側に設けられる端部となっており、他端部は低温側気筒30側に設けられる端部となっている。
立ち上がり部は、伝熱管群70が一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がるように延伸した中間の部分となっている。
立ち下がり部は、伝熱管群70が一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち下がるように延伸した中間の部分となっている。
折り返し部は、立ち上がり部と立ち下がり部とを折り返すようにして(換言すれば裏返すようにして)結ぶ部分となっている。折り返し部は具体的には、伝熱管群70が一端を始点として延伸していると見た場合に、立ち上がり部に対して立ち下がり部を折り返すようにして、立ち上がり部と立ち下がり部とを結ぶ2つの折り返し部と、立ち下がり部に対して立ち上がり部を折り返すようにして、立ち上がり部と立ち下がり部とを結ぶ1つの折り返し部とで構成されている。
【0019】
かかる伝熱管群70は、方向Zに沿って複数設けられることで加熱器47を構成している。この点、加熱器47では、伝熱管群70それぞれのうち、立ち上がり部、立ち下がり部および折り返し部からなる部分それぞれが加熱器47の中間部を、一端部および他端部からなる部分それぞれが加熱器47の両端部をそれぞれ構成している。そして加熱器47の中間部では、伝熱管群70それぞれが複数(ここでは3つ)の折り返し部を備えることで、伝熱管群70を構成する伝熱管71それぞれが複数回(ここでは3回)に亘って折り返された状態になっている。そして加熱器47の中間部は、複数回に亘って伝熱管71を折り返すことで配管密度が高められたコア部Cとなっている。
【0020】
排気管100Aは排気通路部101Aを備えている。加熱器47は具体的には排気管100Aのうち、排気通路部101Aに設けられている。排気通路部101Aはコア部Cを収容する第1の排気通路E1と、コア部Cとスターリングエンジン10Aの本体(スターリングエンジン10Aのうち、加熱器47を除く部分)との間に設けられる第2の排気通路E2とを形成している。この点、排気通路部101Aは具体的には、第1の排気通路E1と第2の排気通路E2とを区分する第1の仕切り板105Aを備えている。第1の仕切り板105Aは、排気通路E1、E2を気筒配列方向Xに沿って互いに並列に延伸するように区分している。また、排気通路E1、E2を排気通路部101Aのうち、加熱器47よりも上流側の部分および下流側の部分で互いに連通するように区分している。
第2の排気通路E2は加熱器47の両端部を収容しており、加熱器47のうち、コア部Cよりも配管密度が低い領域となっている。
【0021】
排気通路部101Aには第1の切替弁102Aが設けられている。第1の切替弁102Aは第2の排気通路E2の連通状態を切替可能な弁となっている。第1の切替弁102Aは第2の排気通路E2の入口部に対して設けられている。このように設けられた第1の切替弁102Aは、開弁時に第2の排気通路E2を連通するとともに、閉弁時に第2の排気通路E2を遮断する。第1の切替弁102Aは第2の排気通路E2の出口部に対して設けられてもよい。
【0022】
第1の切替弁102Aは、排気通路部101Aにおける排気通路(排気通路部101Aにおいて排気ガスが流通する排気通路)を第1の排気通路E1とする場合と、第1および第2の排気通路E1、E2とする場合とを切り替えることが可能な切替手段に相当している。
本実施例では加熱器47と、排気通路部101Aと、第1および第2の切替弁102A、103Aとでエンジンの排気装置が実現されている。
【0023】
次に本実施例にかかるエンジンの排気装置の作用効果について説明する。この排気装置では、第1の排気通路E1に排気ガスを流通させることで、加熱器47のうち、その中心部であるコア部Cで熱交換を行うことができる。そしてこれにより、高い熱交換性能を得ることができる。しかし、コア部Cは高い熱交換性能を得るために高密度となっている。このため、エンジン高負荷時などに排気ガス流量が大きくなると、大きな圧力損失が発生する結果、エンジンの出力が大きく低下する状況が発生し得る。
【0024】
これに対してこの排気装置では、第1の切替弁102Aで、排気通路部101Aにおける排気通路を第1の排気通路E1とする場合と、少なくとも第1の排気通路E1を含む排気通路として、排気通路E1、E2とする場合とを切り替えることができる。このためこの排気装置では、第1の排気通路E1のみに排気ガスを流通させていた状態で圧力損失が高まった場合でも、排気通路E1、E2に排気ガスを流通させるようにすることで、コア部Cで行われる熱交換を継続しつつ圧力損失を低減できる。また第2の排気通路E2に排気を流通させることで、熱損失の発生を極力抑制できる。そしてこれにより、高い熱交換性能を確保しつつエンジンの出力低下を抑制できる。このためこの排気装置は、配管密度を高めたコア部Cを備える加熱器47を設ける場合に、エンジンとスターリングエンジン10Aとを含むシステム全体としての性能向上効果を得ることができる。
【実施例2】
【0025】
図2は本実施例にかかるエンジンの排気装置についての概略構成図である。本実施例にかかるエンジンの排気装置は、排気管100Aの代わりに排気管100A´を備える点と、第1の切替弁102Aを第2の排気通路E2の出口部に対して設けている点と、第2の切替弁103Aをさらに備える点以外、実施例1にかかるエンジンの排気装置と実質的に同一である。なお、第1の切替弁102Aは第2の排気通路E2の入口部に対して設けられてもよい。
【0026】
排気管100A´は、排気通路部101Aの代わりに排気通路部101A´を備えている。排気通路部101A´は排気通路部101Aと比較し、さらに加熱器47を迂回する第3の排気通路E3を形成している。この点、排気通路部101A´は具体的には、第1の排気通路E1と第3の排気通路E3とを区分する第2の仕切り板106Aをさらに備えている。第2の仕切り板106Aは、排気通路E1、E3を気筒配列方向Xに沿って互いに並列に延伸するように区分しており、さらにこれら排気通路E1、E3を排気通路部101A´のうち、加熱器47よりも上流側の部分および下流側の部分で互いに連通するように区分している。
【0027】
第2の切替弁103Aは、第3の排気通路E3の連通状態を切替可能な弁となっている。第2の切替弁103Aは、第3の排気通路E3の出口部に対して設けられている。このように設けられた第2の切替弁103Aは、開弁時に第3の排気通路E3を連通するとともに、閉弁時に第3の排気通路E3を遮断する。第2の切替弁103Aは、第3の排気通路E3の入口部に対して設けられてもよい。
第1および第2の切替弁102A、103Aは、排気通路部101A´における排気通路を第1の排気通路E1とする場合と、第1および第2の排気通路E1、E2の代わりに、第1、第2および第3の排気通路E1、E2、E3のうち、少なくとも第1の排気通路E1を含む2以上の排気通路とする場合とを切り替えることが可能な切替手段に相当している。
本実施例では加熱器47と、排気通路部101A´と、第1および第2の切替弁102A、103Aとでエンジンの排気装置が実現されている。
【0028】
次に本実施例にかかるエンジンの排気装置の作用効果について説明する。この排気装置では、切替弁102A、l03Aで、排気通路部101A´における排気通路を第1の排気通路E1とする場合と、排気通路E1、E2、E3のうち、少なくとも第1の排気通路E1を含む2以上の排気通路とする場合とを切り替えることができる。このためこの排気装置では、第1の排気通路E1のみに排気ガスを流通させていた状態で圧力損失が高まった場合でも、排気通路E1、E2のほか、排気通路E1、E3、または排気通路E1、E2、E3に排気ガスを流通させるようにすることができる。このためこの排気装置では、排気通路部101A´における排気通路に加熱器47を迂回する第3の排気通路E3を含むようにすることで、コア部Cで行われる熱交換を継続しつつ、より好適に圧力損失を低減することができる。
【実施例3】
【0029】
図3は本実施例にかかるエンジンの排気装置についての概略構成図である。本実施例にかかるエンジンの排気装置は、第1および第2の切替弁102A、103Aの代わりに、第1および第2の切替弁102B、103Bを切替手段として備える点と、ECU80Aをさらに備える点以外、実施例2にかかるエンジンの排気装置と実質的に同一である。すなわち本実施例では、加熱器47と、排気通路部101A´と、第1および第2の切替弁102B、103Bと、ECU80Aとでエンジンの排気装置が実現されている。第1および第2の切替弁102B、103Bは電磁弁など電子制御が可能な弁となっている点以外、第1および第2の切替弁102A、103Aと実質的に同一である。
【0030】
ECU80Aは図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータと入出力回路とを備えている。
ECU80Aには、第1および第2の切替弁102B、103Bなどの各種の制御対象が電気的に接続されている。
またECU80Aには各種のセンサ・スイッチ類が電気的に接続されている。この点、ECU80Aには例えばスターリングエンジン10Aの出力を検出するための第1のセンサ群91が電気的に接続されている。またECU80Aには、排気ガスが加熱器47を通過する際に圧力損失が発生し、エンジンの出力が低下することに対して、圧力損失によるエンジンの出力低下分(以下、損失動力と称す)を検出するための第2のセンサ群92が電気的に接続されている。
第1のセンサ群91には具体的には例えばスターリングエンジン10Aの回転数NSEを検出するための回転数NSE検出センサを含むことができる。
第2のセンサ群92には具体的には例えばエンジンの回転数NEを検出するための回転数NEセンサや、エンジンの吸入空気量を計測するエアフロメータや、エンジンの加速要求を行うアクセルペダルの開度を検出するためのアクセル開度センサや、エンジンの排圧を検出するための排圧センサを含むことができる。
【0031】
ROMはCPUが実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納するための構成である。CPUがROMに格納されたプログラムに基づき必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、ECU80Aでは各種の制御手段や判定手段や検出手段などが機能的に実現される。
【0032】
例えばECU80Aでは、スターリングエンジン10Aの出力から損失動力を引いて得られるスターリングエンジン10Aの出力と損失動力との差が大きくなるように第1および第2の切替弁102B、103Bを制御する制御手段が機能的に実現される。
この点、排気通路部101A´における排気通路を第1の排気通路E1とした場合に、スターリングエンジン10Aの出力(SE出力)と損失動力とは、具体的には排気ガスの流速に応じて図4に示すように変化する。図4に示すようにスターリングエンジン10Aの出力は、排気ガスの流速に比例して次第に高まるようになっている。一方、損失動力は、排気ガスの流速が高まるにつれて次第に放物線状に高まり、さらに排気ガスの流速が所定値v1以上になった場合にスターリングエンジン10Aの出力を上回るようになっている。
【0033】
このため、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力との差(式:スターリングエンジン10Aの出力−損失動力)が大きくなるように切替弁102B、103Bを制御するにあたり、制御手段は具体的には、排気ガスの流速に応じて切替弁102B、103Bを制御するように実現される。
またスターリングエンジン10Aの出力と損失動力との差(式:スターリングエンジン10Aの出力−損失動力)が大きくなるように切替弁102B、103Bを制御するにあたり、制御手段は具体的には、排気通路部101A´における排気通路を拡大するように切替弁102B、103Bを制御するよう実現される。
【0034】
さらに排気ガスの流速に応じて排気通路部101A´における排気通路を拡大するにあたり、制御手段は具体的には以下に示すように実現される。
まず制御手段は、排気ガスの流速が第1の所定値v1よりも小さい場合には、排気通路部101A´における排気通路を第1の排気通路E1とするように切替弁102B、103Bを制御するよう実現される。このとき制御手段は具体的には、切替弁102B、103Bを閉弁するための制御を行うように実現される。
また制御手段は、排気ガスの流速が第1の所定値v1以上、且つ第2の所定値v2よりも小さい場合には、排気通路部101A´における排気通路を排気通路E1、E2とするように切替弁102B、103Bを制御するよう実現される。このとき制御手段は具体的には、第1の切替弁102Bを開弁するとともに、第2の切替弁103Bを閉弁するための制御を行うように実現される。
さらに制御手段は、排気ガスの流速が第2の所定値v2以上である場合には、排気通路部101A´における排気通路を排気通路E1、E2、E3とするように切替弁102B、103Bを制御するよう実現される。このとき制御手段は具体的には切替弁102B、103Bを開弁するための制御を行うよう実現される。
この点、所定値v1、v2は排気通路部101A´における排気通路を拡大した場合に、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力の差(式:スターリングエンジン10Aの出力−損失動力)が大きくなる排気ガスの流速となっている。
【0035】
なお、所定値v1は排気通路部101A´における排気通路が第1の排気通路E1である場合に、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力とが等しくなる排気ガスの流速となっているが、これに限られず例えば所定値v1よりも小さい値に設定されてもよい。
また、制御手段は排気ガスの流速の代わりに、排気ガスの流速と同様にスターリングエンジン10Aの出力と損失動力との関係を指標可能なパラメータとして、例えば排気ガスの流量に応じて切替弁102B、103Bを制御するように実現することもできる。また、排気ガスの流速或いは流量に応じて切替弁102B、103Bを制御するにあたっては、制御手段は具体的には排気ガスの流速或いは流量と相関関係を有するパラメータ(例えば回転数NEや吸入空気量)に基づき制御を行うように実現することができ、このとき排気ガスの流速或いは流量は例えばかかるパラメータに応じてマップデータで予め設定しておくことができる。
また切替弁102B、103Bを制御するにあたって、制御手段は例えばセンサ群91、92の出力に基づき、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力とを直接的に検出することで、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力とに基づき、切替弁102B、103Bを制御するように実現されてもよい。
【0036】
次にECU80Aの動作を図5に示すフローチャートを用いて説明する。ECU80Aは、排気ガスの流速が所定値v1よりも小さいか否かを判定する(ステップS1)。肯定判定であれば、ECU80Aは切替弁102B、103Bを閉弁する(ステップS3)。これにより、排気通路部101A´における排気通路が第1の排気通路E1となる。一方、ステップS1で否定判定であれば、ECU80Aは、排気ガスの流速が所定値v1以上、且つ所定値v2よりも小さいか否かを判定する(ステップS2)。肯定判定であれば、ECU80Aは第1の切替弁102Bを開弁するとともに、第2の切替弁103Bを閉弁する(ステップS4)。これにより、排気通路部101A´における排気通路が排気通路E1、E2になる。一方、ステップS2で否定判定であれば、排気ガスの流速が所定値v2以上であることになる。このためステップS3で否定判定であれば、ECU80Aは切替弁102B、103Bを開弁する(ステップS5)。これにより、排気通路部101A´における排気通路が排気通路E1、E2、E3となる。
【0037】
次に本実施例にかかるエンジンの排気装置の作用効果について説明する。ここで、この排気装置では排気ガスが配管密度を高めたコア部Cを通過するため、エンジンの出力が圧力損失で大きく低下し易くなっている。このためこの排気装置では、損失動力が大きくなることでシステム全体としての性能向上効果を得ることが困難になる状況が発生し得る。
これに対してこの排気装置では、ECU80Aが、スターリングエンジン10Aの出力と損失動力との差(式:スターリングエンジン10Aの出力−損失動力)が大きくなるように第1および第2の切替弁102B、103Bを制御する。このためこの排気装置は、システム全体としての性能向上効果を確実に得ることができる点でさらに好適である。
【0038】
またこの排気装置では、排気通路部101A´における排気通路を拡大するにあたり、加熱器47を迂回する第3の排気通路E3を利用する前に、まず第2の排気通路E2を利用するようにしている。この点、第2の排気通路E2には加熱器47の両端部が含まれることから、まず第2の排気通路E2を利用する場合には、コア部Cを迂回させた排気ガスからも熱エネルギーを回収することができる。このためこの排気装置は、システム全体としての性能向上効果を得るにあたり、熱損失の発生を極力抑制できる点でも、システム全体としての性能向上効果をより好適に得ることができる。
【実施例4】
【0039】
図6は本実施例にかかるエンジンの排気装置についての概略構成図である。本実施例にかかる排気装置は、第1および第2の切替弁102A、103Aの代わりに、第1および第2の切替弁102C、103Cを切替手段として備えている点以外、実施例2にかかるエンジンの排気装置と実質的に同一のものとなっている。すなわち本実施例では、加熱器47と、排気通路部101A´と、第1および第2の切替弁102C、103Cとでエンジンの排気装置が実現されている。
【0040】
第1の切替弁102Cは、第2の排気通路E2の入口部に対して設けられており、第2の排気通路E2の連通状態を切り替えるにあたって、第1および第2の排気通路E1、E2の圧力差に応じて第2の排気通路E2の連通状態を切替可能な機械式の弁となっている点以外、第1の切替弁102Aと実質的に同一のものとなっている。
第2の切替弁103Cは、第3の排気通路E3の出口部に対して設けられており、第3の排気通路E3の連通状態を切り替えるにあたって、第1および第3の排気通路E1、E3の圧力差に応じて第3の排気通路E3の連通状態を切替可能な機械式の弁となっている点以外、第2の切替弁103Aと実質的に同一のものとなっている。
【0041】
第1の切替弁102Cは具体的には第1の排気通路E1側から第2の排気通路E2側に向かって開弁するように設けられている。そして第1の切替弁102Cは排気通路部101A´のうち、加熱器47よりも上流側の部分において、第1の排気通路E1と第2の排気通路E2の圧力差(式:第1の排気通路E1の圧力−第2の排気通路E2の圧力)が第1の所定値よりも大きくなった場合に開弁するようになっている。
第2の切替弁103Cは具体的には第3の排気通路E3側から第1の排気通路E1側に向かって開弁するように設けられている。そして第2の切替弁103Cは排気通路部101A´のうち、加熱器47よりも下流側の部分において、第3の排気通路E3と第1の排気通路E1の圧力差(式:第3の排気通路E3の圧力−第1の排気通路E1の圧力)が第2の所定値よりも大きくなった場合に開弁するようになっている。
【0042】
次に本実施例にかかるエンジンの排気装置の作用効果について説明する。この排気装置では、排気通路部101A´における排気通路を第1の排気通路E1とした状態で排気ガスの流速が高まるにつれて、第1の排気通路E1のうち、加熱器47よりも上流側の部分および第3の排気通路E3で、第1の排気通路E1のうち、加熱器47よりも下流側の部分および第2の排気通路E2よりも圧力が高まるようになっている。このためこの排気装置では、排気ガスの流速が高まった場合に、第1および第2の切替弁102C、103Cを機械的に開弁することで圧力損失を低減できる。またこの排気装置では、第1および第2の切替弁102C、103Cの開弁圧を設定するにあたり、第1の所定値のほうが第2の所定値よりも小さくなるようにすることで、排気通路を拡大するにあたり、実施例3にかかるエンジンの排気装置と同様にまず第2の排気通路E2を利用することもできる。このためこの排気装置は、実施例3にかかるエンジンの排気装置と比較して、ECU80Aを不要化することでさらにコスト的に有利な構成とすることができる。
【実施例5】
【0043】
図7は本実施例にかかるエンジンの排気装置についての概略構成図である。スターリングエンジン10Bは、一対の気筒として気筒20、30を複数(ここでは2つ)有する4気筒以上の多気筒スターリングエンジンとなっている点と、これに伴いクランク軸113Aの代わりに、複数の一対の気筒それぞれが備えるピストンそれぞれの往復運動を回転運動に変換するクランク軸113Bを備えている点以外、スターリングエンジン10Aと実質的に同一のものとなっている。
一方、これに伴い本実施例にかかるエンジンの排気装置は、加熱器47を備えるにあたり、複数の一対の気筒それぞれについての加熱器47それぞれを備えている点と、排気通路部101A´の代わりに排気通路部101Bを備えている点と、第1および第2の切替弁102A、103Aの代わりに、第1、第2および第3の切替弁102D、103D、104を切替手段として備えている点と、ECU80Bをさらに備えている点以外、実施例2にかかるエンジンの排気装置と実質的に同一のものとなっている。
すなわち本実施例では、複数の一対の気筒それぞれについての加熱器47それぞれと、排気通路部101Bと、第1、第2および第3の切替弁102D、103D、104と、ECU80Bとでエンジンの排気装置が実現されている。
【0044】
排気通路部101Bは、第1、第2および第3の排気通路E1、E2、E3の代わりに、第1、第2および第3の排気通路E1´、E2´、E3´を形成している点と、これに伴い第1および第2の仕切り板105A、106Aの代わりに、第1および第2の仕切り板105B、106Bを備えている点以外、排気通路部101A´と実質的に同一のものとなっている。なお、排気管100Bは排気通路部101A´の代わりに排気通路部101Bを備えている点以外、排気管100A´と実質的に同一のものとなっている。
【0045】
第1の排気通路E1´は、第1の排気通路E1と同様に加熱器47のコア部Cを収容する。一方、複数の一対の気筒を有するスターリングエンジン10Bでは、第1の排気通路E1´が複数の一対の気筒それぞれにつき、コア部Cを収容するように形成されている。このためスターリングエンジン10Bでは、第1の排気通路E1´が複数の一対の気筒毎に形成されている。
第2の排気通路E2´は、第2の排気通路E2と同様にコア部Cとスターリングエンジン10Bの本体(スターリングエンジン10Bのうち、加熱器47それぞれを除く部分)との間に設けられる。一方、複数の一対の気筒を有するスターリングエンジン10Bでは、第2の排気通路E2´が複数の一対の気筒それぞれにつき、コア部Cとスターリングエンジン10Bの本体との間に設けられるように形成されている。このためスターリングエンジン10Bでは、第2の排気通路E2´が複数の一対の気筒毎に形成されている。そして第2の排気通路E2´は、一対の気筒それぞれにつき、加熱器47のうち、コア部Cよりも配管密度が低い領域として形成されている。
第3の排気通路E3´は、第3の排気通路E3と同様に加熱器47を迂回する。一方、複数の一対の気筒を有するスターリングエンジン10Bでは、第3の排気通路E3´が、複数の一対の気筒それぞれについての加熱器47全体を迂回するように形成されている。
【0046】
第1の仕切り板105Bは第1の排気通路E1´と第2の排気通路E2´とを、第2の仕切り板106Bは第1の排気通路E1´と第3の排気通路E3´とをそれぞれ区分しており、これら仕切り板105B、106Bは第1、第2および第3の排気通路E1´、E2´、E3´を気筒配列方向Xに沿って互いに並列に延伸するように区分している。この点、第1の仕切り板105Bは複数の一対の気筒毎に設けられている。このため、排気通路E1´、E2´は複数の一対の気筒それぞれにつき、排気通路部101Bのうち、加熱器47よりも上流側の部分および下流側の部分で互いに連通している。一方、排気通路E1´、E3´は、排気通路部101Bのうち、複数の一対の気筒それぞれについての加熱器47全体よりも上流側の部分および下流側の部分で互いに連通している。
【0047】
排気通路部101Bには、第1、第2および第3の切替弁102D、103D、104が設けられている。
第1の切替弁102Dは、第1の切替弁102Aと同様に第2の排気通路E2´の連通状態を切替可能な弁となっている。一方、排気通路部101Bでは、第1の切替弁102Dが具体的には複数の一対の気筒のうち、最も下流側に位置する一対の気筒に対応する第2の排気通路E2´の出口部に対して設けられるようになっている。
第2の切替弁103Dは、第2の切替弁103Aと同様に第3の排気通路E3´の連通状態を切替可能な弁となっている。第2の切替弁103Dは具体的には、第3の排気通路E3´の出口部に対して設けられている。なお、第2の切替弁103Dは、例えば第3の排気通路E3´の入口部に対して設けられてもよい。
【0048】
第3の切替弁104は、複数の一対の気筒のうち、最も下流側に位置する一対の気筒を除くその他の一対の気筒それぞれにつき、対応する第2の排気通路E2´の連通状態を切替可能な弁となっている。この点、第3の切替弁104は具体的には、複数の一対の気筒のうち、最も下流側に位置する一対の気筒を除くその他の一対の気筒それぞれにつき、対応する第2の排気通路E2´の出口部に対して設けられるようになっている。そして第3の切替弁104は、対応する第2の排気通路E2´を連通する場合に、対応する第2の排気通路E2´を第1の排気通路E1´に連通する場合(半開の場合)と、第1の排気通路E1´および対応する排気通路E2´と隣り合うようにして下流側に設けられた他の第2の排気通路E2´に連通する場合(全開の場合)とを切替可能な弁となっている。
【0049】
切替弁102D、103D、104はともに電子制御が可能な弁となっており、ECU80Bに電気的に接続されている。この点、ECU80Bは切替弁102A、103Aの代わりに、これら切替弁102D、103D、104が制御対象として電気的に接続される点と、制御手段が以下に示すように実現される点以外、ECU80Aと実質的に同一のものとなっている。
ECU80Bでは、制御手段がスターリングエンジン10Bの出力から損失動力を引いて得られるスターリングエンジン10Bの出力と損失動力との差が大きくなるように切替弁102D、103D、104を制御するよう実現される。また切替弁102D、103D、104を制御するにあたり、制御手段は具体的には排気通路部101Bにおける排気通路を拡大するように切替弁102D、103D、104を制御するよう実現され、さらに排気ガスの流量に応じて切替弁102D、103D、104を制御するように実現される。なお、制御手段は排気ガスの流量の代わりに、例えば排気ガスの流速に応じて切替弁102D、103D、104を制御するように実現することもできる。
【0050】
排気通路部101Bにおける排気通路を第1の排気通路E1´それぞれとした場合、圧力損失は排気ガスの流量に応じて図8に示すように高まるようになっている。これに対して制御手段はさらに具体的には以下に示すように実現される。
まず制御手段は、排気ガスの流量が第1の流量Q1よりも小さい場合には、排気通路部101Bにおける排気通路を第1の排気通路E1´それぞれとするように切替弁102D、103D、104を制御するよう実現される。
このとき制御手段は具体的には、切替弁102D、103D、104を閉弁するための制御を行うように実現される。
【0051】
また制御手段は、排気ガスの流量が第1の流量Q1以上、且つ第2の流量Q2よりも小さい場合には、排気通路部101Bにおける排気通路を第1の排気通路E1´それぞれ、および第2の排気通路E2´それぞれのうち、上流側に位置する排気通路とするように切替弁102D、103D、104を制御するよう実現される。
このとき制御手段は具体的には、切替弁102D、103Dを閉弁するとともに、切替弁104を半開にするための制御を行うように実現される。
【0052】
また制御手段は、排気ガスの流量が第2の流量Q2以上、且つ第3の流量Q3よりも小さい場合には、排気通路部101Bにおける排気通路を第1の排気通路E1´それぞれ、および第2の排気通路E2´それぞれとするように切替弁102D、103D、104を制御するように実現される。
このとき制御手段は具体的には、切替弁103Dを閉弁するとともに、切替弁102D、104を開弁するための制御を行うように実現される。なお、この場合に切替弁104は全開となる。
第2の排気通路E2´それぞれに関し、制御手段は排気ガスの流量が高まるにつれて、複数の一対の気筒それぞれについての第2の排気通路E2´それぞれを上流側から順に連通するように切替弁102D、103D、104を制御するよう実現される。
【0053】
また制御手段は、排気ガスの流量が第3の流量Q3以上である場合には、排気通路部101Bにおける排気通路を第1の排気通路E1´それぞれ、第2の排気通路E2´それぞれ、および第3の排気通路E3´とするように切替弁102D、103D、104を制御するように実現される。
このとき制御手段は具体的には、切替弁102D、103D、104を開弁するための制御を行うように実現される。
第1の流量Q1は設計流量、第2の流量Q2は過剰流量、第3の流量Q3は更なる過剰流量となっており、この順で次第に値が大きくなるように設定されている。これら流量Q1、Q2、Q3は、排気通路部101Bにおける排気通路を拡大した場合に、スターリングエンジン10Bの出力と損失動力との差(式:スターリングエンジン10Aの出力−損失動力)が大きくなるような排気ガスの流量にそれぞれ設定することができる。
【0054】
次にECU80Bの動作を図9に示すフローチャートを用いて説明する。ECU80Bは、排気ガスの流量が第1の流量Q1よりも小さいか否かを判定する(ステップS11)。肯定判定であれば、ECU80Bは、切替弁102D、103D、104を閉弁する(ステップS14)。これにより、排気通路部101Bにおける排気通路が第1の排気通路E1´それぞれとなる。一方、ステップS11で否定判定であれば、ECU80Bは、排気ガスの流量が第1の流量Q1以上、且つ第2の流量Q2よりも小さいか否かを判定する(ステップS12)。肯定判定であれば、ECU80Bは切替弁102D、103Dを閉弁するとともに、第3の切替弁104を半開にする(ステップS15)。これにより、排気通路部101Bにおける排気通路が、第1の排気通路E1´それぞれ、および第2の排気通路E2´それぞれのうち、上流側に位置する排気通路となる。
【0055】
一方、ステップS12で否定判定であれば、ECU80Bは、排気ガスの流量が第2の流量Q2以上、且つ第3の流量Q3よりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。肯定判定であれば、ECU80Bは第2の切替弁103Dを閉弁するとともに、切替弁102D、104を開弁する(ステップS16)。これにより、排気通路部101Bにおける排気通路が、第1の排気通路E1´それぞれ、および第2の排気通路E2´それぞれとなる。一方、ステップS13で否定判定であれば、排気ガスの流量が第3の流量Q3以上であることになる。このためステップS13で否定判定であれば、ECU80Bは切替弁102D、103D、104を開弁する(ステップS17)。これにより、排気通路部101Bにおける排気通路が、第1の排気通路E1´それぞれ、第2の排気通路E2´それぞれ、および第3の排気通路E3´となる。
【0056】
次に本実施例にかかるエンジンの排気装置の作用効果について説明する。この排気装置でも、排気ガスの流量に応じて切替弁102D、103D、104を制御することで圧力損失を低減し、これによりシステム全体としての性能向上効果を得ることができる。またこの排気装置でも、排気通路を拡大するにあたり、第3の排気通路E3´を利用する前にまず第2の排気通路E2´を利用することで、熱損失の発生を極力抑制できる。
さらにこの排気装置では、第2の排気通路E2´それぞれを連通するにあたり、排気ガスの流量が高まるにつれて、複数の一対の気筒それぞれについての第2の排気通路E2´それぞれを上流側から順に連通する。このためこの排気装置では、連通した第2の排気通路E2´からその直後に位置するコア部C1に排気を流通させることができる。そしてこれによりこの排気装置では、更なる熱エネルギーの回収を図ることができ、この結果、スターリングエンジン10Bの出力を確保できる点で、システム全体としての性能向上効果をさらに好適に得ることができる。
【0057】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
例えば上述した実施例では、概ねM字状の形状を有する伝熱管71が配管密度を高めている場合について説明した。しかしながら、本発明においては必ずしもこれに限られず、多管式の熱交換器が備える配管は、複数回に亘って折り返されることで配管密度を高めることを可能とする適宜の形状を有していてよい。
また上述した実施例4では、第2の排気通路E2の入口部に対して設けた第1の切替弁102Cと、第3の排気通路E3の出口部に対して設けた第2の切替弁103Cとで切替手段を実現した場合について説明した。しかしながら、本発明においてはこれに限られず、同様の切替手段は、例えば第2の排気通路の出口部に対して設けられ、第1および第2の排気通路の圧力差に応じて第2の排気通路の連通状態を切替可能な機械式の第1の切替弁と、第3の排気通路の入口部に対して設けられ、第1および第3の排気通路の圧力差に応じて第3の排気通路の連通状態を切替可能な機械式の第2の切替弁とで実現することもできる。
また例えば上述した実施例でECUによって機能的に実現される制御手段は、その他の電子制御装置や専用の電子回路などのハードウェアやこれらの組み合わせによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
スターリングエンジン 10A、10B
加熱器 47
ECU 80A、80B
排気通路部 101A、101A´、101B
第1の切替弁 102A、102B、102C、102D
第2の切替弁 103A、103B、103C、103D
第3の切替弁 104


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スターリングエンジンに設けられ、複数回に亘って配管を折り返すことで配管密度が高められたコア部を有するとともに、前記スターリングエンジンの作動流体とエンジンの排気ガスとの間での熱交換を行う多管式の熱交換器と、
前記熱交換器が設けられるとともに、前記コア部を収容する第1の排気通路と、前記コア部と前記スターリングエンジンの本体との間に設けられる第2の排気通路とを形成する排気通路部と、
前記排気通路部における排気通路を前記第1の排気通路とする場合と、前記第1および第2の排気通路とする場合とを切り替えることが可能な切替手段とを備えたエンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの排気装置であって、
前記第2の排気通路が、前記加熱器のうち、前記コア部よりも配管密度が低い領域であるエンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のエンジンの排気装置であって、
前記排気通路部が、前記熱交換器を迂回する第3の排気通路をさらに形成し、
前記切替手段が、前記排気通路部における排気通路を前記第1の排気通路とする場合と、前記第1および第2の排気通路の代わりに、前記第1、第2および第3の排気通路のうち、少なくとも前記第1の排気通路を含む2以上の排気通路とする場合とを切り替えることが可能なエンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載のエンジンの排気装置であって、
前記エンジンの排気ガスが前記熱交換器を通過する際に圧力損失が発生し、前記エンジンの出力が低下することに対して、前記スターリングエンジンの出力から圧力損失による前記エンジンの出力低下分を引いて得られる前記スターリングエンジンの出力と前記エンジンの出力低下分との差が大きくなるように前記切替手段を制御する制御手段をさらに備えたエンジンの排気装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52487(P2012−52487A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197097(P2010−197097)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】