エンジンマウント変位測定方法
【課題】計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定できるエンジンマウント変位測定方法を提供する。
【解決手段】車両1を定盤11の上に配置して、車両1の車軸方向に基づいて車両基準の座標系P(x、y、z)を決定し、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器21、51の原点位置と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて所定の座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置を算出する。これにより、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【解決手段】車両1を定盤11の上に配置して、車両1の車軸方向に基づいて車両基準の座標系P(x、y、z)を決定し、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器21、51の原点位置と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて所定の座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置を算出する。これにより、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内におけるエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンルーム内におけるエンジンマウントの変位を測定する場合、マウントとブラケットを止めているボルトの先端の挙動を計測器によって計測している。計測器で計測したボルト先端の挙動の方向は、計測器基準の座標系で示される。従って、車両に対するエンジンマウントの変位を得るためには、車両基準の座標系で表す必要がある。従来は、作業者が計測器を取り付ける際に、計測器基準の座標系が車両基準の座標系に一致するように、作業者の感覚によって調整されていた。
【0003】
尚、特許文献1には、車両開口部の複数点の三次元座標値を、固有座標系を有する計測器で測定して、カーライン(車両)座標系に変換する座標軸変換方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−240807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した作業者による調整の場合、個人差が生ずるおそれがあり、正確性に欠けることは否めない。また、車両基準の座標系を決定する方法は確立されていない。しかしながら、計測器基準の座標系を車両基準の座標系に一致させて、車両に対するエンジンマウントの変位を測定することが要請されている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定できるエンジンマウント変位測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のエンジンマウント変位測定方法は、計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法において、車両を定盤上に配置し、定盤の鉛直方向を前記車両のz軸方向として決定し、車両の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定することにより、車両基準の座標系を決定するステップと、車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、下記の座標変換行列式
【数1】
により、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するステップと、を含むことを特徴としている。
【0008】
本発明のエンジンマウント変位測定方法によれば、車両を定盤上に配置して、定盤の鉛直方向を車両のz軸方向として決定し、車両の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定するので、車両基準の座標系を簡単に決定することができる。
【0009】
そして、車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するので、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両基準の座標系を簡単に決定することができ、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出することができるので、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法の座標系の概要を示す図。
【図2】車両基準の座標系を説明する図。
【図3】車両基準の座標系を決定する方法である実施例1を示す図。
【図4】図3の矢印K方向から示す側面図。
【図5】車両基準の座標系を決定する方法である実施例2を示す図。
【図6】実施例2における治具の使用方法を示す図。
【図7】車両基準の座標系に対するエンジンマウントの変位を測定する方法である実施例3を示す図。
【図8】平面板の構成を説明する図。
【図9】実施例3における座標変換方法を説明する図。
【図10】実施例4における座標変換方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図1を用いて説明する。
【0013】
本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法では、まず、車両基準の座標系PP(x、y、z)を決定する(ステップS1)。そして、計測器でエンジンマウント4の変位を測定し(ステップS2)、その測定した変位を計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)から車両基準の座標系P(x、y、z)に変換して、車両1に対する変位として示す(ステップS3)。
【0014】
[車両基準の座標系Pの決定:ステップS1]
車両基準の座標系P(x、y、z)は、車両1を定盤11上に配置し、定盤11の鉛直方向を車両1のz軸方向として決定し、車両1の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両1の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定する。これらの、x軸、y軸、z軸方向によって、図1に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)が決定される。
【0015】
[計測器による測定:ステップS2]
エンジンマウント4の変位は、計測器によって測定する。計測器による測定方法は、例えば、エンジンルーム内でエンジンマウント4とブラケットとを締結しているボルトのボルト先端に計測器を対向配置して、ボルト先端の挙動を計測することによって行われる。
【0016】
[座標系の変換:ステップS3]
計測器で測定したエンジンマウント4の変位は、図1に示すように、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)で示されるものである。従って、車両1に対する変位で示すべく、車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する。座標系の変換処理は、例えばコンピュータ等の演算処理装置(図示せず)によって行われる。
【0017】
ここでは、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器の原点位置(A、B、C)と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(L、M、N)とを用いて、下記の座標変換行列式に基づいて、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置(l、m、n)を算出する。
【数2】
【0018】
上記した本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法によれば、車両基準の座標系P(x、y、z)の決定(ステップS1)において、鉛直方向(z軸方向)と車軸方向(y軸方向)を基準としているので、車両基準の座標系P(x、y、z)を簡単に決定することができる。
【0019】
そして、座標系の変換において、車両基準の座標系Pにおける計測器の原点位置(A、B、C)と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(L、M、N)とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(l、m、n)を算出するので、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウント4の変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【0020】
次に、車両基準の座標系P(x、y、z)を決定する方法の具体例について、図2から図6を用いて説明する。図2は、車両基準の座標系P(x、y、z)を示し、図3および図4は実施例1、図5および図6は実施例2を示す。
【0021】
実施例1では、図3および図4に示すように、治具12を使用して、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定する。治具12は、左右の車輪間隔以上の長さを有する直線部材からなり、断面が略直角2等辺三角形状を有している。
【0022】
車両1を定盤11の上に配置し、左右のタイヤ2の空気圧を同一とした上で、治具12を定盤11の上に載せて、左右のタイヤ2、3に均等な推力で押し当てる(図4を参照)。これにより、治具12の延在する方向と、車両1の車軸方向とを一致させることができ、図2に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を簡単に決定することができる。
【0023】
実施例2では、図5および図6に示すように、治具13を使用して、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定する。治具13は、左右の車輪間隔以上の長さと、車両1のタイヤ2、3が乗り越え可能な直径からなる一対の平行棒13a、13bを有している。
【0024】
治具13を定盤1の上に載せて車両1で乗り越え、左右のタイヤ2、3を、一対の平行棒13a、13bの間に落とし込む。これにより、治具13の延在する方向と、車両1の車軸方向とを一致させることができ、図2に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を簡単に決定することができる。
【0025】
次に、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)を車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する方法の具体例について、図7から図10を用いて説明する。図7〜図9は実施例3を示し、図10は実施例4を示す。
【0026】
実施例3では、6軸計測が可能な複数の計測器21の各座標系Q(X、Y、Z)を、それぞれ車両基準の座標系Pに変換する方法について説明する。ここでは、カメラ装置31と平面板41が用いられる。
【0027】
複数の計測器21は、エンジンルーム内に存在する複数のエンジンマウントにそれぞれ対応する位置に配置されており、各エンジンマウントの変位を個々に計測する。
【0028】
カメラ装置31は、図7に示すように、フレーム枠体32に移動可能に支持されている。フレーム枠体32は、下部フレーム33と、下部フレーム33を定盤11の上でy軸方向に配置した場合に、エンジンルームの上方でy軸方向に配置される上部フレーム34と、同様に車両1の左右両側で上下に延在して上部フレーム34と下部フレーム33の両端部を連結する側部フレーム35、36を有している。
【0029】
フレーム枠体32は、上記した実施例1の治具12、または、実施例2の治具13と同様の形状を有する下部フレーム33を有しており、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定できるように構成されている。従って、フレーム枠体32は、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向とz軸方向を含むyz平面に沿って延在するように定盤11の上に配置することができる。
【0030】
そして、フレーム枠体32に沿ってカメラ装置31を移動させることによって、フレーム枠体32に支持されたカメラ装置31の座標系を、車両基準の座標系P(x、y、z)に一致させることができる。
【0031】
平面板41は、平面を決定するための少なくとも3つ以上のポイント42、43、44が表面41aに刻印されており、これらのポイント42〜44間の距離d1〜d3が既知である構成を有している。平面板41は、図9に示すように、カメラ装置31と各計測器21の両方から同時に計測可能な位置に設置される。従って、各計測器21の位置(原点)と、姿勢(座標系)を取得することができ、各計測器21の座標系Qを、車両基準の座標系P(x、y、z)に変換することができる。
【0032】
実施例4では、6軸計測ができない複数の計測器51の各座標系Q(X、Y、Z)を、それぞれ車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する方法について説明する。ここでは、実施例3と同様に、カメラ装置31と平面板41が用いられる。
【0033】
各計測器51は、エンジンルーム内に存在する複数のエンジンマウントにそれぞれ対応する位置に配置されており、各エンジンマウントの変位を個々に計測する。
【0034】
平面板41は、図10に示すように、計測器基準の座標系Qの一面(xy平面とyz平面とxz平面のいずれか一つ)と同一平面を有するように各計測器51に設置される。
【0035】
平面板41は、実施例3と同様に、平面を決定するための少なくとも3つ以上のポイント42、43、44が表面41aに刻印されており、これらのポイント42〜44間の距離d1〜d3が既知であり、更に加えて、平面板41から計測器51の原点までの距離が既知とされる。
【0036】
カメラ装置31をフレーム枠体32に沿って移動させ、各計測器51および平面板41のポイント42〜44が確認できる位置で固定し、そのときの座標(0、Y1、Z1)をフレーム枠体32に記された目盛りで読みとる。これを各計測器51毎に求めて、各計測器51の座標系Q(X、Y、Z)を車両基準の座標系P(x、y、z)に変換することができる。
【0037】
上記したエンジンマウント変位測定方法によれば、車両1を定盤11上に配置して、定盤11の鉛直方向を車両1のz軸方向として決定し、車両1の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両1の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定するので、車両基準の座標系P(x、y、z)を簡単に決定することができる。
【0038】
そして、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器21、51の原点位置と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するので、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【0039】
尚、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の治具12、13は、具体例の一つであり、車両1の車軸方向を決定できる構造を有するものであればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2、3 タイヤ
11 定盤
12、13 治具
21 計測器
31 カメラ装置
32 フレーム枠体
33 下部フレーム
41 平面板
41a 表面
42、43、44 ポイント
51 計測器
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内におけるエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンルーム内におけるエンジンマウントの変位を測定する場合、マウントとブラケットを止めているボルトの先端の挙動を計測器によって計測している。計測器で計測したボルト先端の挙動の方向は、計測器基準の座標系で示される。従って、車両に対するエンジンマウントの変位を得るためには、車両基準の座標系で表す必要がある。従来は、作業者が計測器を取り付ける際に、計測器基準の座標系が車両基準の座標系に一致するように、作業者の感覚によって調整されていた。
【0003】
尚、特許文献1には、車両開口部の複数点の三次元座標値を、固有座標系を有する計測器で測定して、カーライン(車両)座標系に変換する座標軸変換方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−240807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した作業者による調整の場合、個人差が生ずるおそれがあり、正確性に欠けることは否めない。また、車両基準の座標系を決定する方法は確立されていない。しかしながら、計測器基準の座標系を車両基準の座標系に一致させて、車両に対するエンジンマウントの変位を測定することが要請されている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定できるエンジンマウント変位測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のエンジンマウント変位測定方法は、計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法において、車両を定盤上に配置し、定盤の鉛直方向を前記車両のz軸方向として決定し、車両の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定することにより、車両基準の座標系を決定するステップと、車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、下記の座標変換行列式
【数1】
により、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するステップと、を含むことを特徴としている。
【0008】
本発明のエンジンマウント変位測定方法によれば、車両を定盤上に配置して、定盤の鉛直方向を車両のz軸方向として決定し、車両の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定するので、車両基準の座標系を簡単に決定することができる。
【0009】
そして、車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するので、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両基準の座標系を簡単に決定することができ、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出することができるので、車両基準の座標系におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法の座標系の概要を示す図。
【図2】車両基準の座標系を説明する図。
【図3】車両基準の座標系を決定する方法である実施例1を示す図。
【図4】図3の矢印K方向から示す側面図。
【図5】車両基準の座標系を決定する方法である実施例2を示す図。
【図6】実施例2における治具の使用方法を示す図。
【図7】車両基準の座標系に対するエンジンマウントの変位を測定する方法である実施例3を示す図。
【図8】平面板の構成を説明する図。
【図9】実施例3における座標変換方法を説明する図。
【図10】実施例4における座標変換方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図1を用いて説明する。
【0013】
本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法では、まず、車両基準の座標系PP(x、y、z)を決定する(ステップS1)。そして、計測器でエンジンマウント4の変位を測定し(ステップS2)、その測定した変位を計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)から車両基準の座標系P(x、y、z)に変換して、車両1に対する変位として示す(ステップS3)。
【0014】
[車両基準の座標系Pの決定:ステップS1]
車両基準の座標系P(x、y、z)は、車両1を定盤11上に配置し、定盤11の鉛直方向を車両1のz軸方向として決定し、車両1の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両1の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定する。これらの、x軸、y軸、z軸方向によって、図1に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)が決定される。
【0015】
[計測器による測定:ステップS2]
エンジンマウント4の変位は、計測器によって測定する。計測器による測定方法は、例えば、エンジンルーム内でエンジンマウント4とブラケットとを締結しているボルトのボルト先端に計測器を対向配置して、ボルト先端の挙動を計測することによって行われる。
【0016】
[座標系の変換:ステップS3]
計測器で測定したエンジンマウント4の変位は、図1に示すように、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)で示されるものである。従って、車両1に対する変位で示すべく、車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する。座標系の変換処理は、例えばコンピュータ等の演算処理装置(図示せず)によって行われる。
【0017】
ここでは、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器の原点位置(A、B、C)と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(L、M、N)とを用いて、下記の座標変換行列式に基づいて、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置(l、m、n)を算出する。
【数2】
【0018】
上記した本実施の形態におけるエンジンマウント変位測定方法によれば、車両基準の座標系P(x、y、z)の決定(ステップS1)において、鉛直方向(z軸方向)と車軸方向(y軸方向)を基準としているので、車両基準の座標系P(x、y、z)を簡単に決定することができる。
【0019】
そして、座標系の変換において、車両基準の座標系Pにおける計測器の原点位置(A、B、C)と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(L、M、N)とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウント4の三次元位置(l、m、n)を算出するので、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウント4の変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【0020】
次に、車両基準の座標系P(x、y、z)を決定する方法の具体例について、図2から図6を用いて説明する。図2は、車両基準の座標系P(x、y、z)を示し、図3および図4は実施例1、図5および図6は実施例2を示す。
【0021】
実施例1では、図3および図4に示すように、治具12を使用して、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定する。治具12は、左右の車輪間隔以上の長さを有する直線部材からなり、断面が略直角2等辺三角形状を有している。
【0022】
車両1を定盤11の上に配置し、左右のタイヤ2の空気圧を同一とした上で、治具12を定盤11の上に載せて、左右のタイヤ2、3に均等な推力で押し当てる(図4を参照)。これにより、治具12の延在する方向と、車両1の車軸方向とを一致させることができ、図2に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を簡単に決定することができる。
【0023】
実施例2では、図5および図6に示すように、治具13を使用して、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定する。治具13は、左右の車輪間隔以上の長さと、車両1のタイヤ2、3が乗り越え可能な直径からなる一対の平行棒13a、13bを有している。
【0024】
治具13を定盤1の上に載せて車両1で乗り越え、左右のタイヤ2、3を、一対の平行棒13a、13bの間に落とし込む。これにより、治具13の延在する方向と、車両1の車軸方向とを一致させることができ、図2に示すように、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を簡単に決定することができる。
【0025】
次に、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)を車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する方法の具体例について、図7から図10を用いて説明する。図7〜図9は実施例3を示し、図10は実施例4を示す。
【0026】
実施例3では、6軸計測が可能な複数の計測器21の各座標系Q(X、Y、Z)を、それぞれ車両基準の座標系Pに変換する方法について説明する。ここでは、カメラ装置31と平面板41が用いられる。
【0027】
複数の計測器21は、エンジンルーム内に存在する複数のエンジンマウントにそれぞれ対応する位置に配置されており、各エンジンマウントの変位を個々に計測する。
【0028】
カメラ装置31は、図7に示すように、フレーム枠体32に移動可能に支持されている。フレーム枠体32は、下部フレーム33と、下部フレーム33を定盤11の上でy軸方向に配置した場合に、エンジンルームの上方でy軸方向に配置される上部フレーム34と、同様に車両1の左右両側で上下に延在して上部フレーム34と下部フレーム33の両端部を連結する側部フレーム35、36を有している。
【0029】
フレーム枠体32は、上記した実施例1の治具12、または、実施例2の治具13と同様の形状を有する下部フレーム33を有しており、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向を決定できるように構成されている。従って、フレーム枠体32は、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるy軸方向とz軸方向を含むyz平面に沿って延在するように定盤11の上に配置することができる。
【0030】
そして、フレーム枠体32に沿ってカメラ装置31を移動させることによって、フレーム枠体32に支持されたカメラ装置31の座標系を、車両基準の座標系P(x、y、z)に一致させることができる。
【0031】
平面板41は、平面を決定するための少なくとも3つ以上のポイント42、43、44が表面41aに刻印されており、これらのポイント42〜44間の距離d1〜d3が既知である構成を有している。平面板41は、図9に示すように、カメラ装置31と各計測器21の両方から同時に計測可能な位置に設置される。従って、各計測器21の位置(原点)と、姿勢(座標系)を取得することができ、各計測器21の座標系Qを、車両基準の座標系P(x、y、z)に変換することができる。
【0032】
実施例4では、6軸計測ができない複数の計測器51の各座標系Q(X、Y、Z)を、それぞれ車両基準の座標系P(x、y、z)に変換する方法について説明する。ここでは、実施例3と同様に、カメラ装置31と平面板41が用いられる。
【0033】
各計測器51は、エンジンルーム内に存在する複数のエンジンマウントにそれぞれ対応する位置に配置されており、各エンジンマウントの変位を個々に計測する。
【0034】
平面板41は、図10に示すように、計測器基準の座標系Qの一面(xy平面とyz平面とxz平面のいずれか一つ)と同一平面を有するように各計測器51に設置される。
【0035】
平面板41は、実施例3と同様に、平面を決定するための少なくとも3つ以上のポイント42、43、44が表面41aに刻印されており、これらのポイント42〜44間の距離d1〜d3が既知であり、更に加えて、平面板41から計測器51の原点までの距離が既知とされる。
【0036】
カメラ装置31をフレーム枠体32に沿って移動させ、各計測器51および平面板41のポイント42〜44が確認できる位置で固定し、そのときの座標(0、Y1、Z1)をフレーム枠体32に記された目盛りで読みとる。これを各計測器51毎に求めて、各計測器51の座標系Q(X、Y、Z)を車両基準の座標系P(x、y、z)に変換することができる。
【0037】
上記したエンジンマウント変位測定方法によれば、車両1を定盤11上に配置して、定盤11の鉛直方向を車両1のz軸方向として決定し、車両1の車軸方向をy軸方向として決定し、z軸方向とy軸方向に直交する方向を車両1の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定するので、車両基準の座標系P(x、y、z)を簡単に決定することができる。
【0038】
そして、車両基準の座標系P(x、y、z)における計測器21、51の原点位置と、計測器基準の座標系Q(X、Y、Z)におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、座標変換行列式により、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するので、車両基準の座標系P(x、y、z)におけるエンジンマウントの変位を迅速且つ正確に測定することができる。
【0039】
尚、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の治具12、13は、具体例の一つであり、車両1の車軸方向を決定できる構造を有するものであればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2、3 タイヤ
11 定盤
12、13 治具
21 計測器
31 カメラ装置
32 フレーム枠体
33 下部フレーム
41 平面板
41a 表面
42、43、44 ポイント
51 計測器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法において、
車両を定盤上に配置し、前記定盤の鉛直方向を前記車両のz軸方向として決定し、前記車両の車軸方向をy軸方向として決定し、前記z軸方向とy軸方向に直交する方向を前記車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定することにより、車両基準の座標系を決定するステップと、
前記車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、下記の座標変換行列式
【数1】
により、前記車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するステップと、
を含むことを特徴とするエンジンマウント変位測定方法。
【請求項1】
計測器を用いて車両に対するエンジンマウントの変位を測定するエンジンマウント変位測定方法において、
車両を定盤上に配置し、前記定盤の鉛直方向を前記車両のz軸方向として決定し、前記車両の車軸方向をy軸方向として決定し、前記z軸方向とy軸方向に直交する方向を前記車両の前後方向に沿う方向であるx軸方向として一義的に決定することにより、車両基準の座標系を決定するステップと、
前記車両基準の座標系における計測器の原点位置と、計測器基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置とを用いて、下記の座標変換行列式
【数1】
により、前記車両基準の座標系におけるエンジンマウントの三次元位置を算出するステップと、
を含むことを特徴とするエンジンマウント変位測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−185715(P2010−185715A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28807(P2009−28807)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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