説明

エンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたエンジン部品

【課題】エンジンオイルの変性に起因するオイルスラッジの付着及び堆積防止に有効なエンジン部品用コーティング組成物及びそれを被覆したオイルリング等のエンジン部品を提供する。
【解決手段】アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、及び親油基を含有するエンジン部品用コーティング組成物をエンジン部品に被覆する。また、前記組成にさらに、ポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を含有させたエンジン部品用コーティング組成物をエンジン部品に被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたエンジン部品に関し、さらに詳しくは、エンジンの潤滑油の変性に起因するオイルスラッジの付着及び堆積防止に有効なエンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたオイルリング等のエンジン部品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、エンジンの長期間の運転に伴い、潤滑油が加熱され、ブローバイガスに曝されることにより、潤滑油中に炭化水素の未燃焼生成物やオイル添加剤の変性物が混在する。また、ディーゼルエンジンでは潤滑油中にカーボンの微粒子も混在する。このような未燃焼生成物、オイル添加剤変性物及びカーボン微粒子を総じて、一般に「オイルスラッジ」と言うが、オイルスラッジがエンジン部品に付着及び堆積すると、部品を摩耗させたり、潤滑油の通路を塞いだりすることにより、各種エンジン部品の機能に支障を及ぼすことがある。
【0003】
図1に示すコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリング(2ピース型オイルリング)1は、軸方向上下に形成された一対のレール部2とその間を連結するウェブ3とから構成され、合口を有する円環状のオイルリング本体4と、オイルリング本体4を径方向外方に押圧するコイルエキスパンダ5からなる。このような2ピース型オイルリング1では、オイルスラッジが、コイルエキスパンダ5外周面やオイルリング本体4の内周溝部6に付着及び堆積して、潤滑油の通路を塞ぐ可能性がある。オイルスラッジは、オイル孔7や外周溝部8にも付着及び堆積し、オイル孔7を塞ぐ可能性が高い。オイル孔7が塞がれるとオイルコントロール機能が発揮されず、潤滑油の消費量が増大する恐れがある。また、コイルエキスパンダ5のピッチ間にオイルスラッジが付着及び堆積すると、潤滑油の通路が塞がれるだけでなく、コイルエキスパンダ5の伸縮性が失われてしまう。特に、コイルエキスパンダ5を低張力仕様とした場合には、ピッチ間に付着及び堆積したオイルスラッジにより、オイルリング本体4をシリンダ内壁面に押圧する力が減少し、2ピース型オイルリング1の追従性が低下する恐れがある。
【0004】
一方、図2に示すスチール組合せオイルコントロールリング(3ピース型オイルリング)10は、合口を有する一対の円環状サイドレール11と、サイドレール11を支持するスペーサエキスパンダ12からなる。3ピース型オイルリング10ではサイドレール11がスペーサエキスパンダの耳部13の角度により、半径方向及び軸方向に分力を持って押圧され、シリンダ壁面およびリング溝の上下面においてシール機能を発揮する。特に、軸方向幅、即ちh1寸法を小さくした薄幅化3ピース型オイルリングは、シリンダ壁面に対する追従性が良く、サイドシール機能もあることから、低張力にしてもオイル消費を増加させることなく摩擦損失を低減できる。しかし、3ピース型オイルリング10でも、特にスペーサエキスパンダ12の耳部13より外周側の平坦部14と、サイドレール11との間の空間15に、オイルスラッジが付着及び堆積しやすい。特に、薄幅化した場合には、オイルスラッジが堆積して、サイドレール11がスペーサエキスパンダ12に固着することにより、サイドレール11のシリンダ内周面への追随性が低下して、オイル消費量が増大しやすい。
【0005】
上述したオイルリング等のエンジン部品へのオイルスラッジの付着及び堆積防止法として、従来、撥液処理が検討されてきた。エンジン部品の表面に撥油性被膜を形成することにより、潤滑油中のオイルスラッジの付着を防止しようとするものである。撥油処理に用いられる材料としては、フッ素系材料が多く、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アルキルシラン等が挙げられる。例えば、特許文献1では、金属アルコキシドと、アルコキシル基の一部がフルオロアルキル基により置換されたフルオロアルキル基置換金属アルコキシドからゾル−ゲル法により撥液膜を形成する方法が提案されている。フルオロアルキル基を含む物質は撥水撥油性を有することが知られており、このフルオロアルキル基を被覆膜の表面に存在させることによりエンジン部品に撥液性を付与し、オイルスラッジの付着及び堆積の防止を図っている。
しかしながら、特許文献2には、フルオロアルキル基置換金属アルコキシドを用いてゾルーゲル法で形成した特許文献1の被膜は非常に薄く、実用に適さないことが記載されている。このため、特許文献2及び3においては、コーティング溶液を基材に塗布する前にフルオロアルキル基置換アルコキシドの重合を促進させることにより、厚膜化する方法が提案されている。
【0006】
このように従来のオイルスラッジの付着及び堆積防止法としては、エンジン部品の表面を撥油処理する方法が検討されてきた。しかしながら、運転中のエンジン内では、潤滑油は高温に曝され、常温状態とは、その特性及び挙動が異なるため、従来の撥油性被膜では、高温状態の潤滑油に対して、充分な付着防止効果を発揮できないことがわかってきた。そのため、高温運転下で、エンジン部品に部分的に付着したオイルスラッジが、エンジンの高速運転下でさらに加熱されることにより、エンジン部品表面で固まり、部品の摩耗やピストンリングの固着等を引き起こすこととなる。このように、現状では、長期間に亘る運転においても、オイルスラッジの付着及び堆積を防止し得るエンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたエンジン部品は得られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平7-246365号公報
【特許文献2】特開平10-157013号公報
【特許文献3】特開2000-27995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、長期間のエンジン運転においても、エンジン部品へのオイルスラッジの付着及び堆積、特に、ピストンリングの固着を防止できるエンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたエンジン部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、エンジン部品の表面に親油基を含有する組成物を被覆して、潤滑油を付着しやすくし、常にエンジン部品の表面を潤滑油で濡れた状態とすることにより、オイルスラッジの付着及び堆積を防止できることを見出し、本発明に想到した。即ち、本発明の第1のエンジン部品用コーティング組成物は、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、及び親油基を含有することを特徴とする。また、本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物は、上記第1のエンジン部品用コーティング組成物に、さらに、撥油性のポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を含有させたことを特徴とする。本発明のエンジン部品は上記エンジン部品用コーティング組成物を表面に被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のエンジン部品用コーティング組成物は親油基を含有するため、これを被覆したエンジン部品表面には、潤滑油が付着しやすくなり、エンジン部品表面を、常に、潤滑油で濡れた状態に維持できる。このため、本発明のエンジン部品では、潤滑油中にオイルスラッジが混在しても、潤滑油と共に部品表面から流されやすくなるため、オイルスラッジの付着及び堆積を防止でき、長期間に亘り、所望の機能を維持できる。一方、本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物は、親油性基と撥油性基を含有する。このため、本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物を被覆したエンジン部品は、通常は、表面が潤滑油で濡れた状態に維持でき、オイルスラッジの付着及び堆積を防止できる。また、部分的にオイルスラッジが析出して、付着又は堆積した場合には、表面に撥油性基が存在するため、エンジンの振動等により、部品表面からオイルスラッジが剥離されやすくなる。このため、より長期間に亘り、オイルスラッジの堆積を防止でき、所望の機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明のエンジン部品用コーティング組成物及びそれを用いたエンジン部品について詳細に説明する。
(1)本発明の第1のエンジン部品用コーティング組成物
本発明の第1のコーティング用組成物は、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、及び親油基を含有することを特徴とする。ここで、親油基は、オルガノポリシロキサン基以外の親油基であり、例えば、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基又は環状の炭化水素基等が挙げられる。前記組成物は、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基及び親油基の全てを含有する化合物を有効成分として用いてもよく、前記基1種以上を含有する化合物を混合して有効成分として用いることもできる。有効成分は、非重合性の化合物でも、重合性化合物を共重合した重合体でもよく、両者を混合して用いることもできる。
重合体は、アルコキシシリル基を有する重合性化合物から導かれる重合単位と、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物から導かれる重合単位と、親油性基を有する重合性化合物から導かれる重合単位の少なくとも1種を含有するのが好ましい。このような重合体と非重合性の化合物とを混合して用いた例としては、アルコキシシリル基を有する非重合性の化合物と、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物と親油性基を有する重合性化合物とを共重合した重合体とを混合した組成物が挙げられる。但し、被膜の均一性及びコーティング処理の容易性という観点から、本発明のエンジン部品用コーティング組成物では、有効成分として、アルコキシシリル基を有する重合性化合物から導かれる重合単位、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物から導かれる重合単位、及び親油基を有する重合性化合物から導かれる重合単位を全て含有する重合体を用いるのが好ましい。
【0012】
アルコキシシリル基を有する重合性化合物としては、下記式(a)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R1)−C(O)O−Q−Si(R)(R)(R)・・・(a)
式中、
1:水素原子又はメチル基、
、R、R:アルコキシ基、
:単結合又は2価の連結基。
【0013】
式(a)において、R1は水素原子又はメチル基であるが、オイルスラッジの付着及び堆積防止性能に優れることから、メチル基とするのが好ましい。
また、R、R、及びRはアルコキシ基であり、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。なお、R、R、及びRは同一のアルコキシ基であっても、異なるアルコキシ基であってもよい。
式(a)において、Qは単結合又は2価の連結基であれば、適宜選択できるが、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、アミノ基、スルホニル基、又はこれらを組合せて得られる2価の連結基であることが好ましい。中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。
【0014】
式(a)で表される化合物のうちでも特に、下記式(a1)で表される化合物を用いるのが好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−(CH)n−Si(OR (a1)
式(a1)中、
:水素原子又はメチル基、
:炭素数1〜3のアルキル基、
n:1〜6の整数。
【0015】
オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物としては、下記式(b)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−Q−Y ・・・(b)
式中、
:水素原子又はメチル基、
:単結合又は2価の連結基、
Y:数平均分子量(Mn)が1000から15000のオルガノポリシロキサン基。
式(b)においても、式(a)と同様のR及びQが用いられる。
式(b)において、Yは数平均分子量(Mn)が1000〜15000のオルガノポリシロキサン基である。オルガノポリシロキサン基としては、−(SiO)x−で表される繰り返し単位のケイ素原子に、水素原子、アルキル基、又はフェニル基等が置換した基が挙げられる。中でも、−(Si(CHO)−で表される、ポリジメチルシロキサン基が好ましい。
また、オルガノポリシロキサン基の末端は、重合性基を有しないのが好ましい。特に、アルキル基、アルコキシ基、ポリエーテル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。なお、アルキル基、アルコキシ基、ポリエーテル基は、置換基を有していてもよい。
【0016】
式(b)で表される化合物のうちでも特に、下記式(b1)で表される化合物を用いるのが好ましい。中でも、ポリジメチルシロキサン基の数平均分子量が5000〜15000である構造の化合物が特に好適である。
CH=C(R)−C(O)O−(CH)n−(Si(CHO)m-Si(CH-R (b1)
式(b1)中、
:水素原子又はメチル基、
:アルキル基、
m:10〜400、
n:1〜6の整数。
【0017】
式(b1)において、Rはアルキル基である。該基は置換基を有していてもよいが、基中に重合性官能基は含まない。
式(b1)において、Rの置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリ−ロキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、スルホニル基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、ホスホニル基、アミノ基、アミド基、アルキル基、アリ−ル基、複素環基、アルコキシアシルオキシ基等が挙げられる。また、式(b1)において、Rの置換基から除外される重合性官能基としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。Rは炭素数が1〜5のアルキル基であるのが好ましい。
【0018】
親油基を有する重合性化合物としては、下記式(c)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−R ・・・(c)
式中、
:水素原子又はメチル基、
:炭素数1〜30のアルキル基。
式(c)においても、式(a)と同様のRが用いられる。
式(c)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基である。該基は置換基を有していてもよいが、基中に重合性官能基は含まない。置換基としては、Rの親油性を損なわない範囲内で、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アリ−ロキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、スルホニル基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、ホスホニル基、アミノ基、アミド基、アルキル基、アリ−ル基、複素環基、アルコキシアシルオキシ基等が用いられる。アルキル基は直鎖構造及び分岐構造のいずれであってもよいが、直鎖構造が好ましい。アルキル基の炭素数は10〜30が好ましい。また、アルキル基の置換基中には、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基等の重合性官能基は含まない。
【0019】
式(c)で表される化合物のうちでも特に、下記式(c1)で表される化合物を用いるのが好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−(CH)n−H (c1)
式(c1)中、
:水素原子又はメチル基、
n:10〜30の整数。
【0020】
前述の通り、本発明の第1のエンジン部品用コーティング組成物の有効成分としては、アルコキシシリル基を有する化合物、オルガノポリシロキサン基を有する化合物、及び親油基を有する化合物を混合した混合物を用いることもできるし、アルコキシシリル基を有する重合性化合物、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物、及び親油基を有する重合性化合物を共重合した重合体を用いることもできる。
ここで、被覆(有効)成分、即ち、前記化合物の仕込量の合計を100とした場合、アルコキシシリル基を有する化合物は、20質量%以下であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、エンジン部品用コーティング組成物の安定性が優れ、得られる被膜の基材への密着性が向上する。
また、オルガノポリシロキサン基を有する化合物は5質量%以上であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、得られる被膜の撥油性と親油性のバランスが良好となり、優れたオイルスラッジの付着及び堆積防止効果を発揮できる。
親油基を有する化合物は50質量%以上であるのが好ましく、60〜90質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、優れたオイルスラッジの付着及び堆積防止効果を発揮できる。
なお、いずれの化合物とも複数の化合物(重合単位)を用いることもでき、その場合には、それらの総量が前記範囲となるように調整すればよい。
【0021】
本発明の第1のエンジン部品用コーティング組成物は、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、及び親油基を必須成分とするが、その他の化合物(重合単位)を含んでいてもよい。その他の化合物としては、上記必須成分とブレンドできる化合物又は上記必須成分の重合単位を形成する化合物と共重合しうる化合物から導かれる重合単位(E)であれば特に限定されず、スチレン系化合物、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのエステル化合物、エポキシ系化合物等から導かれる構造が挙げられる。
また、重合単位(E)の一例として、重合性の色素等から導かれる重合単位が挙げられ、これらの添加により被膜の視認性が向上する。重合性の色素としては、特に限定されないが、クマリン骨格、カルバゾール骨格、フルオロセン骨格、スチルベン骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格等を持つ重合性の化合物が挙げられる。
重合単位(E)は、1種又は2種以上の化合物から導かれる重合単位であって構わない。重合単位(E)の含有量は、その種類によっても異なるが、被覆成分の仕込量の合計を100とした場合、重合単位(E)総量を、50質量%以下とするのが好ましく、20質量%以下とするのがより好ましい。
【0022】
本発明において、アルコキシシリル基を有する重合性化合物、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物、及び親油基を有する重合性化合物を共重合した重合体を用いる場合には、重合体の数平均分子量が、2000〜20万であるのが好ましく、1万〜20万であるのがより好ましく、2万〜10万であるのがさらに好ましい。
重合体の重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれでもよいが、ランダム共重合が好ましい。
また、製造方法についても特に限定されないが、一般には、各化合物中の不飽和基に基づいて付加重合させる方法が用いられる。重合は、公知の不飽和化合物の付加重合条件を適宜採択して行うことができる。重合開始剤は、特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等通常の重合開始剤が利用できる。
【0023】
重合時には、上記重合性化合物及び重合開始剤以外に、本発明の効果を損ねない範囲で、重合調整剤、重合触媒、反応性の染料や帯電防止剤等その他の成分を添加してもよい。これらの成分は、被覆成分の仕込量の合計を100とした場合、その総量が10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0024】
本発明のエンジン部品用コーティング組成物は、前記重合性化合物を後述する溶媒中で、共重合させることにより、液状組成物として直接調製するのが好ましい。重合性化合物が、塩化ビニル等のガス原料である場合には、圧力容器を用いて、加圧下で連続供給してもよい。
本発明のエンジン部品用コーティング組成物を調整する溶媒は、重合体を溶解又は分散できるものであれば特に限定されず、各種有機溶媒、水、又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0025】
(2)本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物
本発明の第2のコーティング用組成物は、上記第1のエンジン部品用コーティング組成物に、さらに、撥油性のポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を含有させたことを特徴とする。アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、及び親油基を含有する化合物は前述の本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物と同様のものが用いられる。
【0026】
撥油性のポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を有する重合性化合物としては、下記式(d)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−Q−R(d)
式中、
:水素原子又はメチル基、
:ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロポリエーテル基、
:単結合又は2価の連結基。
式(d)においても、式(a)と同様のR及びQが用いられる。
式(d)において、ポリフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個ないし全部がフッ素原子に置換された部分フルオロ置換、又はパーフルオロ置換アルキル基を意味する。上記Rf基で示されるポリフルオロアルキル基は、直鎖構造、又は分岐構造のいずれであってもよい。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等の直鎖構造、又は分岐構造のアルキル基に対応する部分フルオロ置換、又はパ−フルオロ置換アルキル基等が挙げられる。分岐構造のポリフルオロアルキル基としては、イソプロピル基、3−メチルブチル基のパ−フルオロ置換アルキル基等が挙げられる。
また、ポリフルオロポリエーテル基とは、上記ポリフルオロアルキル基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。
【0027】
基は、炭素数が8以上であっても性能的には問題ないが、生体及び環境への影響を考慮して、炭素数6以下であることがより好ましい。また、R基は直鎖構造、又は分岐構造のいずれであってもよいが、R基の配向性を上げる観点から直鎖構造が好ましい。同様の理由から、分岐構造である場合には、分岐部分がR基の末端部分に存在する構造であるのが好ましい。また、R基としては、ポリフルオロアルキル基が好ましい。さらに、R基は、実質的に全てフッ素置換されたパ−フルオロアルキル基(R基)が好ましく、直鎖のR基であることがより好ましい。
【0028】
式(d)で表される化合物のうちでも特に、下記式(d1)で表される化合物を用いるのが好ましい。
CH=C(R)−C(O)O−(CH)n−R (d1)
式(d1)中、
:水素原子又はメチル基、
:ポリフルオロアルキル基、
n:1〜6の整数。
【0029】
本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物では、被覆成分、即ち、前記化合物の仕込量の合計を100とした場合、アルコキシシリル基を有する化合物は、20質量%以下であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、エンジン部品用コーティング組成物の安定性が優れ、得られる被膜の基材への密着性が向上する。
また、オルガノポリシロキサン基を有する化合物は5質量%以上であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、得られる被膜の撥油性と親油性のバランスが良好で、優れたオイルスラッジの付着及び堆積防止効果を発揮できる。
親油基を有する化合物は0.1質量%〜50質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、優れたオイルスラッジの付着及び堆積防止効果を発揮できる。
撥油性のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロポリエーテル基を有する化合物は、20質量%〜95質量%であるのが好ましく、50〜80質量%であるのがより好ましい。この範囲に調整することにより、より優れたオイルスラッジ剥離効果が得られる。なお、いずれの化合物とも複数の化合物(重合単位)を用いることもでき、その場合には、それらの総量が前記範囲となるように調整すればよい。
【0030】
本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物は、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、親油基、並びに撥油性のポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を有する化合物を必須成分とするが、第1のエンジン部品用コーティング組成物と同様、その他の化合物(重合単位)を含んでいてもよい。その他の化合物としては、第1のエンジン部品用組成物と同様のものが用いられる。
また、アルコキシシリル基を有する重合性化合物、オルガノポリシロキサン基を有する重合性化合物、親油基を有する重合性化合物、並びにポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を有する化合物を共重合した重合体を用いる場合には、重合体の数平均分子量が、2000〜20万であるのが好ましく、1万〜20万であるのがより好ましく、2万〜10万であるのがさらに好ましい。
重合体の重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれでもよいが、ランダム共重合が好ましい。
また、製造方法についても特に限定されないが、一般には、各化合物中の不飽和基に基づいて付加重合させる方法が用いられる。重合は、公知の不飽和化合物の付加重合条件を適宜採択して行うことができる。重合開始剤は、特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等通常の重合開始剤が利用できる。
【0031】
本発明のエンジン部品用コーティング組成物は、前記重合性化合物を後述する溶媒中で、共重合させることにより、液状組成物として直接調製するのが好ましい。重合性化合物が、塩化ビニル等のガス原料である場合には、圧力容器を用いて、加圧下で連続供給してもよい。
本発明の第2のエンジン部品用コーティング組成物を調整する溶媒も、第1のエンジン部品用コーティング組成物と同様のものが用いられる。但し、第2のエンジン部品用コーティング組成物には、撥油性基が含まれることから、フッ素系溶媒が好ましく、ハイドロクロロフルオロカ−ボン(HCFC)及びパ−フルオロカ−ボン(PFC)が好適に用いられる。
【0032】
(3)本発明のエンジン部品
本発明のエンジン部品用コーティング組成物を被覆するエンジン部品としては、シリンダ、ピストン及びピストンリング等が挙げられる。例えば、シリンダヘッドの内壁面やピストンヘッドの壁面に本発明のコーティング組成物を被覆することにより、これらの部品へのオイルスラッジ等の付着を防止できる。また、2ピース型オイルリング又は3ピース型オイルリング等のオイルコントロールリングに本発明のエンジン部品用コーティング組成物を被覆することにより、オイルスラッジの付着及び堆積が防止でき、オイルコントロールリングの固着防止に有効である。
本発明のエンジン部品用コーティング組成物をエンジン部品に被覆する方法は、特に限定されないが、簡便で、低コストであるディップコーティングやスプレイコーティング等の液相法が好ましい。塗布方法に応じて、適切な溶液粘度が得られるように溶液中の有効成分濃度を調整する。例えば、ディップコーティングを行う場合には、有効成分の総量が、溶液全体の0.1〜10質量%であるのが、好ましく、1〜5質量%であるのが、より好ましい。
【0033】
本発明のエンジン部品は、表面に本発明の第1又は第2のエンジン部品用コーティング組成物が被覆されており、以下の方法による200℃におけるパラフィン系潤滑油の接触角が40度以上60度以下であることが好ましい。本発明のエンジン部品用コーティング組成物が被覆され、200℃における接触角が前記範囲のエンジン部品は、部品表面を潤滑油で濡らし、オイルスラッジの付着を防止する効果がさらに優れる。また、本発明のエンジン部品用コーティング組成物が被覆され、200℃における転落角が3度以上12度以下であること好ましい。
本発明のエンジン部品用コーティング組成物が被覆され、200℃における転落角が前記範囲のエンジン部品は、部分的にオイルスラッジが部品表面に付着した場合の剥離効果がさらに向上する。
【0034】
(接触角の測定方法)
ヒーターが設置されたアルミニウム製のホットステージに測定試料を固定し、熱電対により、測定試料表面の温度を測定し、200±2℃になるように調整した。マイクロピペットにより、測定試料上に、10μLのパラフィン系潤滑油(新日本石油(株)製パラフィン系原料用潤滑油「スーパーオイルN100」)を滴下した。この時の測定試料と液滴と空気の3相の接触点で液滴に引いた切線と、測定試料表面とのなす角度のうち液滴を含む方の角度を接触角とした。それぞれの測定試料につき、10箇所で測定を行い、平均値をその試料の接触角とした。
【0035】
(転落角の測定方法)
ヒーターが設置されたアルミニウム製のホットステージに測定試料を固定し、熱電対により、測定試料表面の温度を測定し、200±2℃になるように調整した。測定試料を水平に保持した状態で、マイクロピペットにより、30μLのパラフィン系潤滑油(新日本石油(株)製パラフィン系原料用潤滑油「スーパーオイルN100」)を試料の表面に滴下した。その後、測定試料を1°ずつ傾斜させ、油滴の後退側が動き始めた時の傾斜角度を転落角とした。なお、1°傾斜毎に1分間静止させ、油滴の後退側が移動しないことを確認してから、さらに試料を傾けた。それぞれの測定試料につき、5箇所で測定を行い、平均値をその試料の転落角とした。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載における「%」は、特に断わりのない限り、「質量%」を表すものとする。また、以下の実施例では、アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基、親油基、及び撥油基を含有する重合性化合物((a)、(b)、(c)、及び(d))として、表1に示す構造の市販の試薬を用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
[実施例の組成物(組成物1〜7)の調整]
密閉容器に、表2に記載の配合比で、各モノマー、重合溶剤、及び重合開始剤を、それぞれ仕込み、70℃で26時間反応を進行させ、重合組成物1〜7を得た。得られた重合組成物を、重合体の含有量が1質量%になるように、重合溶剤と同じ溶剤で希釈し、組成物1〜7とした。なお、重合開始剤としては、和光純薬工業(株)製の開始剤V−601を用い、溶剤としては、トルエン又はメタキシレンヘキサフロライド(m−XHF)を用いた。
重合組成物7について、1H,13C及び19FのNMRスペクトルを測定した。測定試料は、前記反応後の試料に含まれる重合溶剤を減圧濃縮機により蒸発させた後、重ベンゼンに溶解して調整した。1H NMRスペクトルでは、0.24ppm付近に(b)のSi-CH3、1.35ppm付近に(c)の-(CH2)16- 、3.50ppm付近に(a)のSi-OCH3のプロトンに起因するピークが認められた。また、(a),(b),(c)及び(d)に共通する-COO-CH2-のプロトンに起因するピークが4.1ppm付近に確認された。13C NMRスペクトルでは、1.3ppm付近に(b)のSi-CH3、30ppm付近に(c)の-(CH2)16-, -CH2-、50ppm付近に(a)のSi-OCH3、107〜129ppm付近に(d)の-CF3, -CF2-のカーボンに起因するピークが認められた。また、(a),(b),(c)及び(d)に共通する-C(O)-のカーボンに起因するピークが176〜177ppm付近に確認された。さらに、19F NMRスペクトルでは、(d)の-CF3及び-CF2-のFに起因するピークがそれぞれ−82ppm及び−114〜−127ppmに認められた。
[比較例の組成物(比較組成物1〜4)の調整]
実施例の組成物の調整と同様に、密閉容器に、表2に記載の配合比で、各モノマー、重合溶剤、及び重合開始剤を、それぞれ仕込み、70℃で26時間反応を進行させ、比較重合組成物1〜4を得た。得られた重合組成物を、重合体の含有量が1質量%になるように、重合溶剤と同じ溶剤で希釈し、比較組成物1〜4とした。なお、重合開始剤としては、和光純薬工業(株)製の開始剤V−601を用い、溶剤としては、トルエン又はメタキシレンヘキサフロライド(m−XHF)を用いた。
【0039】
【表2】

【0040】
大気中にて、500℃で熱処理して表面に酸化被膜を形成したステンレス(SUS304)製平板(Ra10nm以下)を被覆用基材とした。前記組成物1〜7及び比較組成物1〜4のそれぞれの組成物中に各基材を30秒間浸漬後、電気炉に入れて大気中にて、120℃で1時間熱処理して、基材表面に被膜を形成し、測定試料とした(実施例1〜7及び比較例1〜4)。
また、大気中にて500℃で熱処理したのみで、表面にコーティング用組成物による被膜を形成していないステンレス(SUS304)製平板を比較例5とした。
【0041】
それぞれの測定試料について前述の方法で、200℃における接触角と転落角を測定した結果を表3に示す。なお、接触角及び転落角の測定には、協和界面科学(株)製自動接触角計DM500を用いた。
比較例5は、基板上にパラフィン系潤滑油を滴下したが、液が基板上に広がり、液滴が形成されなかったため、接触角及び転落角とも測定できなかった。
【0042】
(オイルスラッジ付着試験)
予め、エンジンの運転に使用して、オイルスラッジが混在した劣化潤滑油を加熱して、油温80℃となるように調整した。測定試料を前記劣化潤滑油中に1分間浸漬して取り出した後、炉内温度200℃に設定した電気炉中に入れ、4分間熱処理した。劣化潤滑油中への浸漬と200℃での熱処理を所定時間繰り返した後、測定試料の表面観察を行い、オイルスラッジの付着状態を評価した。また、炭化水素系洗浄剤((株)ジャパンエナジー製NSクリーン)中に浸漬し、5分間超音波を照射した後の表面の状態を観察し、オイルスラッジの剥離状態を評価した。それぞれの試料のオイルスラッジ付着状態及び剥離状態を評価した結果を表3に示す。ここで、オイルスラッジ付着状態は、測定試料全体の面積を100として、オイルスラッジが付着している部分の面積率を画像処理により求め、以下の判断基準で表した。また、オイルスラッジ剥離状態は、超音波照射前のオイルスラッジ付着部分の面積を100として、超音波照射後のオイルスラッジ付着部分の面積率を求め、以下の判断基準で表した。
付着状態
付着殆どなし:◎、 0%超え、20%未満:○、 20%以上90%以下:△、 90%超える(ほぼ全面に付着):×
剥離状態
0%(100%剥離):◎、 0%超え、5%未満:○、 5%以上90%以下:△、 90%超える(殆ど剥離しない):×
【0043】
【表3】

【0044】
コーティング処理を行っていない比較例5、アルコキシシリル基とポリオルガノシロキサン基を含有する組成物を被覆した比較例1、アルコキシシリル基と親油基を含有する組成物を被覆した比較例2、アルコキシシリル基とパーフルオロアルキル基を含有する組成物を被覆した比較例3では、測定試料のほぼ全面にオイルスラッジが付着した。これらの試料を、炭化水素系洗浄剤中で超音波照射した後もオイルスラッジは殆ど剥離しなかった。但し、比較例3では若干の剥離が認められた。また、アルコキシシリル基、ポリオルガノシロキサン基、及びパーフルオロアルキル基を含有する組成物を被覆した比較例4では、オイルスラッジの付着量は軽減されるものの、付着防止効果は充分とはいえなかった。
一方、実施例1〜7では、オイルスラッジの付着は非常に少なく、特に、親油基を含有する重合単位を1質量%以上配合した実施例1及び3〜7では、オイルスラッジの付着は殆ど認められなかった。優れたオイルスラッジ付着防止効果を発揮した実施例(1及び3〜7)の200℃におけるパラフィン系潤滑油の接触角は、40度以上60度以下の範囲であった。
【0045】
実施例1と実施例3〜7について、劣化潤滑油中への浸漬と200℃での熱処理をさらに繰り返し、測定試料全体の面積に対してオイルスラッジ付着面積が20%程度の試料を作製した。これらの試料を、前述の通り、炭化水素系洗浄剤中に浸漬し、超音波を照射した後、表面のオイルスラッジ剥離状態を観察した。この結果、いずれの測定試料においても良好なオイルスラッジ剥離効果が認められた。特に、200℃におけるパラフィン系潤滑油の転落角が11度以下である実施例1、5、6、及び7では、付着したオイルスラッジがほぼ100%剥離しており、より優れたオイルスラッジ剥離効果を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】コイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングの一例を示す断面図である。
【図2】スチール組合せオイルコントロールリングの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・コイルエキスパンダ付きオイルコントロールリング
10・・・スチール製組合せオイルコントロールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシリル基、オルガノポリシロキサン基及び、親油基を含有することを特徴とするエンジン部品用コーティング組成物。
【請求項2】
ポリフルオロアルキル基及びポリフルオロポリエーテル基の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1に記載のエンジン部品用コーティング組成物。
【請求項3】
下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位、下記式(b)で表される化合物から導かれる重合単位、及び下記式(c)で表される化合物から導かれる重合単位の少なくとも1種を含有する重合体(1)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン部品用コーティング組成物。
CH=C(R1)−C(O)O−Q−Si(R)(R)(R)・・・(a)
式中、
1:水素原子又はメチル基、
、R、R:アルコキシ基、
:単結合又は2価の連結基。
CH=C(R1)−C(O)O−Q−Y ・・・(b)
式中、
1:水素原子又はメチル基、
:単結合又は2価の連結基、
Y:数平均分子量(Mn)が1000から15000のオルガノポリシロキサン基。
CH=C(R1)−C(O)O−R ・・・(c)
式中、
1:水素原子又はメチル基、
:炭素数1〜30のアルキル基。
【請求項4】
前記重合体(1)が、さらに下記式(d)で表される化合物から導かれる重合単位を含むことを特徴とする請求項3に記載のエンジン部品用コーティング組成物。
CH=C(R1)−C(O)O−Q1−R(d)
式中、
1:水素原子又はメチル基、
:ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロポリエーテル基、
1:単結合又は2価の連結基。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン部品用コーティング組成物が被覆されたことを特徴とするエンジン部品。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジン部品であって、200℃におけるパラフィン系潤滑油の接触角が40度以上60度以下であることを特徴とするエンジン部品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のエンジン部品であって、200℃におけるパラフィン系潤滑油の転落角が3度以上12度以下であることを特徴とするエンジン部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−18779(P2010−18779A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93506(P2009−93506)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000139023)株式会社リケン (101)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】