説明

エンボス加工可能で書き込み可能な多層裏地構造物

【課題】経皮薬剤送達システムのための新規の裏地構造物が開示される。
【解決手段】多層裏地構造物11の態様において、タイ層は第1層(EVA/LDPE)16の皮膚に近位の面上に配置された第2のPET層17に張り付け、さらに第3層(EVA/LDPE/ポリウレタン)18および薬剤を溶解もしくは懸濁されたゲル形態の二次薬剤を含むレザボア15を含む中央容積を有する基底層14に張り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2002年8月30日出願の米国仮出願第60/407,126号の権利を主張する。
【0002】
本発明は経皮薬剤送達システムのための多層裏地構造物に関する。本発明はとりわけ、そこで多層裏地構造物の外側層がエンボス加工可能で、書き込み可能な材料を含む、経皮薬剤送達システムを標識する(labeling)ためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な包装材料、容器、文房具、血液バッグ、記録紙、包帯等に対するラベル適用における、フィルムを含む微孔質材料の使用は詳細に記載されてきた。以下の特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11は、そこで無機粉末、印刷用インキ、膨潤剤、着色剤、充填剤等のような添加剤を含むシート材料、例えば多孔質材料がラベル上にマーキング、例えばエッチング、スコアリング、印刷および書き込みを形成するために使用される、包装材料、容器、文房具、血液バッグおよび記録紙を標識する様々な方法につき記載している(特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11参照)。これらの方法は概括的に、面上にマーキングを表示するために、高温の使用および/もしくは微孔質フィルム内の添加剤の存在を必要とする。
【0004】
経皮システム上への情報の標識付けもしくは印刷は難問であった。例えば、印刷に必要な印刷用インキ、着色剤、溶媒およびその他の添加剤の使用は経皮システム内の有効薬剤と不都合に相互反応する可能性がある。これらの心配に対処するために、経皮システムはインキの使用を必要としない方法を使用して標識されてきた。経皮システムの裏地層は熱エンボス加工法により標識される。裏材料のポリオレフィン面は加圧下で融解されて標識を現わす。
【0005】
数例の成功にもかかわらず、経皮システムを標識する既存の方法は完全に満足といえるものではなかった。裏地層および/もしくは隣接層中の添加剤は有効薬剤と不都合に相互反応する可能性がある。更に経皮システムを標識するための高温の使用は経皮システムの様々な成分を分解するもしくは裏地の周辺をはみ出して接着剤を流出させる可能性がある。これらの難問は順次、経皮システムの効力および安定性に影響を与えると考えられる。
【0006】
更に、前記の微孔質フィルムは良好な付着性をもつラベルを提供するために感圧性接着体に直接張り付けられる。しかし、感圧性接着体への直接の張り付け後に微孔質フィルムをエンボス加工することは問題を起こすと考えられる。このような微孔質フィルムをエンボス加工することは不透明なフィルム層中への接着体の緩徐な侵入により明確さの乏しい画像をもたらすと考えられる。エンボス加工による孔の粉砕を伴う孔中への緩徐な接着体の流入はフィルムを透明にさせると考えられる。更に、エンボス加工の画像が孔中への接着体流入により明確でなくなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,255,552号明細書
【特許文献2】米国特許第6,162,858号明細書
【特許文献3】米国特許第5,906,830号明細書
【特許文献4】米国特許第5,871,829号明細書
【特許文献5】米国特許第5,583,171号明細書
【特許文献6】米国特許第5,507,525号明細書
【特許文献7】米国特許第5,484,603号明細書
【特許文献8】米国特許第5,314,421号明細書
【特許文献9】米国特許第4,751,087号明細書
【特許文献10】米国特許第4,334,530号明細書
【特許文献11】米国特許第3,928,099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は当該技術分野における前記の需要に関し、多層裏地構造物を有する経皮システムを提供する。本発明はとりわけ、多層裏地層の外側層がエンボス加工可能で書き込み可能な材料を含む経皮薬剤送達システムを標識するシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1アスペクトにおいて、本発明は
(a)エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたタイ層および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層、
を含んで成る多層裏地構造物に関する。
【0010】
もう1つのアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物は
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層、
を含んで成る。
【0011】
もう1つのアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物は
(a)微孔質層もしくは微小繊維層であり、更に薬剤放出速度制御手段である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたアンタゴニスト含有レザボアを含んで成るタイ層および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層、
を含んで成る。
【0012】
もう1つのアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物は
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)有益な薬剤を含んで成り、外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層および
(c)薬剤放出速度制御手段である、タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層、
を含んで成る。
【0013】
もう1つのアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物は
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)二次薬剤含有レザボアを含んでもよい、外側層の皮膚に近位の面上に配置された多層タイ層および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層、
を含んで成る。
【0014】
更なるアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物は、水、アルコールおよび有機溶媒に不溶性の材料を含んで成る、薬剤レザボアもしくはタイ層内の薬剤不浸透性の基底層を含んで成る。基底層は場合により多層の層であってもよい。特定の態様において、基底層は薬剤放出速度制御手段、例えば薬剤放出速度制御膜であってもよい。基底層はポリオレフィンラミネート(Dow Chemical Midland,MI)、アクリルロニトリル・コポリマーフィルム(BAREX,BP Chemicals,Koln,Germany)、ポリエチルナフタレン(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリレートもしくはポリエステルのような接着性改善被膜で変性されたPET、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、金属化フィルムおよびガラスコートフィルム(ここでこれらのフィルムはエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)のようなエチレンコポリマーを含むことができる)およびそれらの組み合わせ物のようなポリマーを含んで成る。好ましい態様において、基底層はポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン・コポリマーのようなポリマーに張り付けられた、PETのようなポリエステルを含んで成る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい態様において、基底層はポリエステル−ポリオレフィン材料[例えばScotchpak 9735(PET−PEラミネート,3M)、Mediflex 1500(PET−顔料添加EVAラミネート,Mylan Technologies)、Mediflex 1200(PET−EVAラミネート,Mylan Technologies)、Mediflex 1000(半透明ポリオレフィンフィルム、Mylan Technologies)、Medifilm 500 series(EVA膜材料、Mylan Technologies)]、ポリエチレン[例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)]、Kaptonポリイミドフィルムおよびその他のエチレンコポリマーフィルム(例えばEMAもしくはEBAコポリマーフィルム)、から成る群から選択されポリマー材料から成る。
【0016】
更なるアスペクトにおいて、本発明の多層裏地構造物はエンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層を含んで成る。外側層はペンで書き込むことができ、感圧性接着体への多層裏地構造物の張り付けの前もしくは後にエンボス加工ローラーで圧力をかけることによりエンボス加工することができる。外側層は多孔質の、微孔質の、微小繊維の、スパンボンデッドの、スパンレースの、トラックエッチングしたレーヨン(微細スピナレットをとおしてセルロース溶液を押し出し、生成されるフィラメントを固化することにより製造される合成織物繊維)、木材パルプ、スパンレースのポリエステル、コート紙製品、等およびそれらの組み合わせ物を含んで成る呼吸可能な材料を含んで成る。好ましい態様において、外側層は低密度ポリエチレン(LDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料もしくは高密度ポリエチレン(HDPE)材料等を含んで成る。好ましい態様において、外側層は1枚のHDPE層である。更に好ましい態様において、外側層はSolupor微孔質UHDPE P01フィルム(DSM Desotech,the
Netherlandsにより製造されるSoluporTM)、微孔質ポリプロピレン、例えばCelgard微孔質PP 3401フィルム(CelgardTMフィルム、Celgard,Inc.,Charlotte,NC)、RoTrac Polyester Capillary Pore Membranes(OYPHEN GmbH,Germany)、スパンレースポリエステル、ポリプロピレンもしくはポリエチレンから成る群から選択される微孔質層を含んで成る。
【0017】
更なるアスペクトにおいて、本発明の多層裏地材構造物は、多層であってもよいタイ層を含んで成る。タイ層は外側層への張り付けを可能にするために高温で容易に流動する低い融点を有する材料から成る。タイ層は当該技術分野で周知の標準材料から形成することができる。タイ層は例えば疎水性、親油性そして/もしくは非極性ポリマー材料、例えばエチレンオクテン・コポリマー(例えばENGAGE 8407(Dupont−Dow
Elastomersからの)、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンブロック・コポリマー熱可塑性エラストマーの非感圧性調製物等から形成される。好ましい態様において、タイ層は下記に更に詳細に説明されるエチレンオクテン・コポリマーから形成される。
【0018】
更なるアスペクトにおいて、タイ層は二次薬剤含有レザボアを含んで成る。二次薬剤含有レザボアは有益な薬剤もしくは、基底層をとおって放出できない形態にある有益な薬剤のアンタゴニストを含んでもよい。薬剤レザボアの皮膚に遠位の面は外面上に配置される。二次薬剤含有レザボアは裏地構造物の他の層と同一サイズをもつかもしくは、二次薬剤含有レザボアをダイで切断された裏構造物の縁から挿入することができる。
【0019】
特定の態様において、二次薬剤含有レザボアは二次薬剤含有レザボアに実質的に不溶性の、ポリマー内に分散された薬剤を含んで成る。特定の態様において、薬剤は薬剤の放出を実質的に妨げる材料を含んで成るマトリックス中に分散されるかもしくは、薬剤がイオン性樹脂と複合される。更なる態様において、二次薬剤含有レザボアは、各粒子が個々に薬剤の放出を実質的に妨げる材料でコートされている、多粒子形態の薬剤を含んで成る。更なる態様において、二次薬剤含有レザボアは、そこでビーズがガラスまたは不活性もしくは不溶性ポリマーから形成されてもよく、更にコートされたビーズが場合により、薬剤の放出を実質的に妨げる材料でコートされるかもしくはその中に分散される、薬剤でコートされたビーズを含んで成る。好ましい態様において、薬剤はナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよび医薬として許容できるそれらの塩から成る群から選択されるオピオイドアンタゴニストである。好ましい態様において、アンタゴニストは塩として、好ましくはアンタゴニスト塩基の塩酸塩として存在する。
【0020】
本明細書を考察すると、本発明の様々な態様が当業者には容易に浮かぶであろう。
【0021】
概説:
本発明はその一番外側層がエンボス加工可能で、ペンもしくは鉛筆でその上に書き込むことができる多層裏地構造物を有する経皮システムに関する。本発明の多層裏地構造物の一番外側層はとりわけ、タイ層により基底層に張り合わせられた、微孔質もしくは微小繊維フィルムのようなエンボス加工可能で書き込み可能な材料を含む。
【0022】
定義:
本発明を説明し、請求する際に、以下の用語を以下の定義に従って使用するであろう。
【0023】
単数形態の「a」、「an」および「the」は文脈が明白に別記しない限り複数の指示物を含む。従って、例えば「a polymer」に対する言及は単数のポリマー並びに2種以上の異なるポリマーの混合物を含み、「a permeation enhancer」に対する言及は1種の浸透促進剤並びに2種以上の異なる浸透促進剤組み合わせ物等を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語「薬剤放出制御手段」は二次薬剤含有レザボアからの薬剤の
放出を制御/調節するための手段を意味する。
【0025】
本明細書で使用される用語「薬剤」および「有効薬剤」は互換性に使用され、それが適用される生物体に対する何か生物学的な、有益な、治療的なもしくは、浸透促進、アンタゴニストのようなその他の意図された効果をもたらすことが意図されるあらゆる材料を意味するものともっとも広範な意味で解釈することができる。例えば、薬剤は有益な薬剤もしくは有益な薬剤のアンタゴニストであることができる。
【0026】
本発明を実施する方法
本発明は、その一番外側層がエンボス加工可能な、書き込み可能な材料を有する、経皮薬剤送達システムのための多層裏地構造物を提供する。
【0027】
今度は図1において、本発明に従う多層裏地構造物1の好ましい態様は、外側層2、皮膚に遠位のその面が外側層2上に配置されたタイ層3および、タイ層3が皮膚に遠位のその面上に配置される基底層4を含んで成る。本発明の裏地構造物1の特定の態様において、タイ層3は外側層2の皮膚に近位の面上に配置された二次薬剤含有レザボアであり、基底層4は二次薬剤含有レザボアの皮膚に近位の面上に配置される。二次薬剤含有レザボアは有益な薬剤もしくは有益な薬剤のアンタゴニストを含むことができる。二次薬剤含有レザボアが有益な薬剤を含む本発明の裏地構造物1の特定の態様において、基底層4は二次薬剤含有レザボアの皮膚に近位の面上に配置された薬剤速度制御手段である。本発明の裏地構造物1のそれに代わる態様において、二次薬剤含有レザボアは有益な薬剤のアンタゴニストを含み、好ましくは外側層がまたアンタゴニスト放出速度制御手段として働く。
【0028】
今度は図2において、本発明に従う多層裏地構造物11の好ましい態様は外側層12、多層のタイ層13および基底層14を含んで成る。タイ層は外側層12の皮膚に近位の面上に配置された第1層16、第1層16の皮膚に近位の面上に配置された第2層17、第2層17の皮膚に近位の面上に配置された第3層18および、二次薬剤含有レザボア15を含んで成る。基底層14はその中に薬剤を溶解もしくは懸濁されたゲルの形態の二次薬剤含有レザボア15を含む中心の容積(central volume)を提供するようになっている。好ましい態様において、第1層16はEVAもしくはLDPE層であり、第2層17はPET層であり、第3層18はEVA、LDPEもしくはポリウレタン層であり、基底層14は薬剤放出速度制御手段である。
【0029】
本発明の多層裏地構造物の外側層2、12はエンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る。外側層はペンで書き込むことができ、感圧性接着体への多層裏地構造物の張り付け前もしくは後にエンボス加工ローラーで圧力をかけることによりエンボス加工することができる。外側層は多孔質の、微孔質の、微小繊維の、スパンボンデッドの、スパンレースの、トラックエッチングした、レーヨン(微細スピナレットをとおしてセルロース溶液を押し出し、生成されるフィラメントを固化することにより製造される合成織物繊維)、木材パルプ、スパンレースのポリエステル、コート紙製品、等およびそれらの組み合わせ物を含んで成る呼吸可能な材料を含んで成る。好ましい態様において、外側層は低密度ポリエチレン(LDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料もしくは高密度ポリエチレン(HDPE)材料等を含んで成る。好ましい態様において、放出制御手段は1枚のLDPE層である。更なる好ましい態様において、外側層はSolupor微孔質UHDPE P01フィルム(DSM Desotech,the Netherlandsにより製造されるSoluporTM)、微孔質ポリプロピレン、例えばCelgard微孔質PP 3401フィルム(CelgardTMフィルム、Celgard,Inc.,Charlotte,NCにより製造)、RoTrac Polyester Capillary Pore Membranes(RonTracポリエステル毛管孔膜)(OYPHEN GmbH,Swetzerland)、スパンレースポリエステ
ル、ポリプロピレンもしくはポリエチレンから成る群から選択される微孔質層を含んで成る。外側層はどんな接着体をも含まず、感圧性接着体に直接張り合わせられない。あるいはまた、外側層は低レベルの界面活性剤、例えばプルロニックのポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマー等でコートして、下層のタイ層からの薬剤放出速度に対して更に制御をもたらすことができる。
【0030】
外側層2、12は約0.012mm(0.5mil)〜約0.125mm(5mil)、好ましくは0.025mm(1mil))〜約0.1mm(4mil)、より好ましくは0.0375mm(1.5mil))〜約0.0875mm(3.5mil)、そして更により好ましくは0.05mm(2mil)〜約0.0625mm(2.5mil)の厚さを有する。
【0031】
本発明に従う多層裏地構造物は多層であってもよいタイ層3、13を含んで成る。タイ層は感圧性接着体およびHDPEを除く、外側層2、12への張り付けを許す、高温で容易に流動する低い融点を有する材料から成る。HDPEは非常に高い融点を有し、外側層へのその使用は、高い張り付け温度と外側層の偶然に一致した融解のためにエンボス加工可能なフィルムを早期に透明にさせると考えられる。外側層への感圧性材料の取り込みは、エンボス加工可能なフィルムを早期に透明に変化させると考えられる孔中への接着体の流入をもたらすと考えられる。特定の態様において、タイ層は二次薬剤含有レザボアを含んで成る。二次薬剤含有レザボアは有益な薬剤もしくは有益な薬剤のアンタゴニストを含むことができる。二次薬剤含有レザボアがアンタゴニストを含む特定の態様において、外側層はまた、薬剤放出速度制御手段として働く。二次薬剤含有レザボアが有益な薬剤を含有する特定の態様において、基底層4は二次薬剤含有レザボアの皮膚に近位の面に配置された薬剤放出速度制御手段である。二次薬剤含有レザボアは裏地構造物の他の層と同一サイズのTHEであるかもしくは二次薬剤含有レザボアをダイで切断された裏地構造物の縁から挿入することができる。タイ層は当該技術分野で周知の標準材料から形成することができる。タイ層3、13はとりわけ、高温で容易に流動し、感圧性接着体およびHDPEを除外する低融点材料から形成される。例えば、タイ層は疎水性、親油性そして/もしくは非極性ポリマー材料、例えばエチレンオクテン・コポリマー[例えばENGAGE 8407(Dupont−Dow Elastomersからの)]、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンブロック・コポリマー熱可塑性エラストマー、PET、ポリウレタン、等から形成される。好ましい態様において、タイ層は下記に更に詳細に説明されるエチレンオクテン・コポリマーから形成される。
【0032】
タイ層が二次薬剤含有レザボア、特にアンタゴニスト含有レザボアを含む特定の態様において、アンタゴニストは、アンタゴニスト、好ましくは熱成形可能な材料の放出を実質的に妨げるポリマー材料を含んで成るマトリックス中に分散されるかもしくは、アンタゴニストがイオン性樹脂と複合される。更なる態様において、アンタゴニスト含有レザボアは多粒子形態のアンタゴニストを含んで成り、そこで各粒子がアンタゴニストの放出を実質的に妨げ、好ましくは熱成形可能な材料であるポリマー材料で個々にコートされる。更なる態様において、アンタゴニスト含有レザボアはアンタゴニストでコートされたビーズを含んで成り、そこでビーズがガラスまたは不活性もしくは不溶性ポリマーから形成されることができ、更にコートされたビーズが場合により、アンタゴニストの放出を実質的に妨げ、好ましくは熱成形可能な材料であるポリマー材料でコートされるかもしくはその中に分散される。アンタゴニストの例にはそれらに限定はされないが、ナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシン等およびそれらの医薬として許容できる塩が含まれる。好ましくは、アンタゴニストは塩として存在する。
【0033】
前記に考察されたように、アンタゴニスト含有レザボアはポリマー内に分散されたアンタゴニストを含んで成る。アンタゴニストは好ましくはアンタゴニストの放出を実質的に妨げる熱成形可能な材料を含んで成るマトリックス中に分散される。あるいはまた、アンタゴニストはそこで各粒子がアンタゴニストの放出を実質的に妨げるポリマー材料でコートされた多粒子形態で存在する。アンタゴニストの放出を実質的に妨げるポリマー材料は好ましくは疎水性である、−すなわち通常の使用中アンタゴニストの放出を実質的に妨げ、溶媒(湿気、例えば汗、シャワー中)に対する偶発的な/不用意な露出時のアンタゴニストの量を最少にし、そして摂取もしくは溶媒中への浸漬時に乱用制限量のアンタゴニストを放出する。ポリマー材料は好ましくは固相のアンタゴニストの処理を可能にし、アンタゴニストの分解を妨げるような低融点を有する。アンタゴニストの放出を実質的に妨げるポリマー材料の例には、それらに限定はされないが、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリビニルアセテート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリスチレンポリマーおよびコポリマーおよびそれらの混合物、スチレンブロック・コポリマー(SIS、SBS、SEBS)のようなポリスチレン・コポリマー、ポリエチレンオクテン・コポリマー、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、エチレンメチルアクリレート・コポリマー(EMA)、エチレン−アクリル酸・コポリマー、エチレン−エチルアクリレート・コポリマーのようなエチレン・コポリマー、等およびそれらの組み合わせ物が含まれる。
【0034】
更なる態様において、アンタゴニストはイオン性樹脂と複合される。イオン性樹脂の例にはそれらに限定はされないが、スルホン化ポリスチレン樹脂等が含まれる。樹脂は好ましくはアンタゴニストの塩基で中和されるとアンタゴニストのスルホネート塩を形成するスルホン酸官能基を含む。
【0035】
更なる態様において、アンタゴニスト含有レザボアはアンタゴニストでコートされたビーズを含んで成り、そこで球もしくはビーズはガラス、金属または不活性もしくは不溶性ポリマーから形成されることができ、更にコートされたビーズは場合により前記のようにアンタゴニストの放出を実質的に妨げるポリマー材料でコートされるかもしくはその中に分散される。ビーズはどんな形状、サイズもしくは形態にあってもよいが、好ましくは小さいサイズ、好ましくは10ミクロン未満である。不活性もしくは不溶性ポリマーの例には、それらに限定はされないが、ポリメチルメタクリレート、ポリカルボネートおよびポリスチレンが含まれる。
【0036】
タイ層が二次薬剤含有レザボアを含む特定の態様において、二次薬剤含有レザボアは外側層2の皮膚に近位の面上、そして基底層4の皮膚に遠位の面上に配置される。二次薬剤含有レザボアは当該技術分野で周知の標準材料から形成することができる。二次薬剤含有レザボアは例えば疎水性そして/もしくは親油性ポリマー材料(例えば疎水性ポリウレタン、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)等)から形成される。
【0037】
薬剤が有益な物質である時の好ましい態様において、二次薬剤含有レザボアは約5〜約35重量%の薬剤、より好ましくは約10〜約35重量%の薬剤、そして更により好ましくは約15〜約30重量%の薬剤を含んで成る。有益な薬剤の例にはそれらに限定はされないが、フェンタニル、スフェンタニル、リスペリドン、ガランタミン、ノルエルゲストロミン、テストステロン、エストラジオール、ニコチン、メチルフェニデート、フェノルドパム等が含まれる。二次薬剤含有レザボアを形成する材料は好ましくは総ポリマー組成物の約5重量%〜約40重量%の、より好ましくは約10重量%〜約35重量%の、そして更により好ましくは約15重量%〜約30重量%の薬剤の溶解度を有する。
【0038】
更に好ましい態様において、薬剤はアンタゴニストであり、好ましくはアンタゴニストは塩形態にあり、そして好ましいアンタゴニストはナルトレキソン、メチルナルトレキソ
ン、ナロキソン、ナルブフィン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファンおよびシクロゾシンである。薬剤が有益な薬剤のアンタゴニストである時は、二次薬剤含有レザボアは約20〜約70重量%の薬剤、より好ましくは約40〜約65重量%の薬剤、そして更により好ましくは約50〜約60重量%の薬剤を含んで成る。二次薬剤含有レザボア5を形成する材料は総ポリマー組成物の約0重量%〜約1重量%の薬剤溶解度、より好ましくは約0重量%〜約0.8重量%、そして更により好ましくは総ポリマー組成物の約0重量%〜約〜0.5重量%の薬剤溶解度を有する。
【0039】
二次薬剤含有レザボアを含むタイ層3、13は約0.0125mm(0.5mil)〜約0.1mm(4mil)、好ましくは0.015mm(0.6mil)〜約0.0875mm(3.5mil)、より好ましくは0.025mm(1mil)〜約0.08mm(3.3mil)、そして更により好ましくは0.02mm(1.6mil)〜約0.075mm(3mil)の厚さを有する。
【0040】
更なる態様において、二次薬剤含有レザボアは場合により、浸透促進剤、安定剤、希釈剤、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮剤および、経皮技術分野で公知のその他の物質のような、更なる成分を含むことができる。
【0041】
浸透促進剤の例には、それらに限定はされないが、カプリン酸、カプリル酸、ドデシル、オレイン酸のようなグリセリンの脂肪酸エステル、イソソルバイド、蔗糖、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、カプロイルラクチル酸、ラウレス−2、ラウレス−2アセテート、ラウレス−2ベンゾエート、ラウレス−3カルボン酸、ラウレス−4、ラウレス−5カルボン酸、オレス−2、グリセリルピログルタメートオレエート、グリセリルオレエート、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−オクチル−2−ピロリドン、ラウルアミノプロピオン酸、ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−2、ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−5−ジメチルラウルアミド、ラウルアミドジエタノールアミン(DEA)が含まれる。好ましい促進剤にはそれらに限定はされないが、ラウリルピログルタメート(LP)、グリセリルモノラウレート(GML)、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノカプレート、グリセリルモノオレエート(GMO)およびソルビタンモノラウレートが含まれる。適当な浸透促進剤の更なる例は例えば米国特許第5,785,991号、第5,843,468号、第5,882,676号および第6,004,578号明細書に記載されている。
【0042】
本発明に従う多層裏地構造物は、タイ層3、13がその皮膚に遠位の面上に配置されている基底層4、14を含んで成る。基底層4、14は多層であってもよい。基底層4はポリオレフィンラミネート(Dow Chemical Midland,MI)、アクリルロニトリル・コポリマーフィルム(BAREX,BP Chemicals,Koln,Germany)、ポリエチルナフタレン(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、金属化フィルムおよびガラスコートフィルム(ここでこれらのフィルムはエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)のようなエチレンコポリマーを含むことができる)およびそれらの組み合わせ物のようなポリマーを含んで成る。好ましい態様において、基底層は、ポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン・コポリマーのようなポリマーに張り付けた、PETのようなポリエステルを含んで成る。特定の態様において、基底層は以下により詳細に説明される薬剤速度制御手段であってもよい。二次薬剤含有レザボアがアンタゴニストを含む特定の態様において、基底層4は二次薬剤含有レザボア内のアンタゴニストに非浸透性であり、ここで基底層は水、アルコールおよび有機溶媒に不溶性の材料を含んで成る。
【0043】
好ましい態様において、基底層はポリエステル−ポリオレフィン材料[例えばScot
chpak 9735(PET−PEラミネート,3M)、Mediflex 1500(PET−顔料添加EVAラミネート,Mylan Technologies,Saint Albans,VT)、Mediflex 1200(PET−EVAラミネート,Mylan Technologies,Saint Albans,VT)];Mediflex 1000(半透明ポリオレフィンフィルム、Mylan Technologies,Saint Albans,VT)、Medifilm 500シリーズ(EVA膜材料、Mylan Technologies,Saint Albans,VT)];ポリエチレン[例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)]、エチレンメチルアクリレート・コポリマー(EMA)、エチレンエチルアクリレート・コポリマー(EEA)またはエチレンブチルアクリレート・コポリマー(EBA)のコポリマー類、から成る群から選択されるポリマー材料から成る。基底層は約0.01mm(0.4mil)〜約0.125mm(5mil)、好ましくは0.025mm(1mil)〜約0.1mm(4mil)、より好ましくは0.0625mm(1.5mil)〜約0.0875mm(3.5mil)、そして更により好ましくは0.025mm(1mil)〜約0.05mm(2mil)の厚さを有する。
【0044】
多層裏地構造物は、好ましくは外側層内もしくは基底層内に薬剤放出速度制御手段を含んで成る。二次薬剤含有レザボアがアンタゴニスト含有レザボアである時の特定の態様において、外側層2、12はまた、二次薬剤含有レザボアの皮膚に遠位の面上に配置された薬剤放出速度制御手段として働く。二次薬剤含有レザボアが有益な薬剤を含むそれに代わる態様において、基底層4、14は二次薬剤含有レザボアの皮膚に近位の面上に配置された薬剤放出速度制御手段である。好ましい態様において、タイ層はアンタゴニスト含有レザボアを含んで成り、外側層は薬剤放出制御手段である。
【0045】
速度制御手段はエチレン−ビニルアセテート(EVA)、ポリビニルクロリド(PVC)、エチレン−エチルアクリレート・コポリマー、エチレンブチルアクリレート・コポリマー、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエチレン(PE)[例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)]、等およびそれらの組み合わせ物のようなポリマー物質から製造され、それらのポリマー材料は可塑化させることができる。好ましい態様において、基底層は薬剤放出速度制御手段であり、アクリル、シリコーン、ポリイソブチレン(PIB)もしくはその他の感圧性接着性物質で皮膚に接着される。速度制御手段は約0.012mm(0.5mil)〜約0.125mm(5mil)、好ましくは0.025mm(0.6mil)〜約0.1mm(4mil)、より好ましくは0.0625mm(0.8mil)〜約0.0875mm(3.5mil)の厚さを有する。
【0046】
多層裏地構造物はより伸長性の少ない外側層、好ましくはこれもエンボス加工および書き込みのための表面を提供するSolupor層のために、ウェブ張力下で少ない伸長を伴って加工することができる。
【0047】
経皮装置は周知の方法に従って製造される。本発明に従う経皮装置は概括的に裏地構造物1,11、裏地構造物上に配置された一次薬剤含有レザボアを含んで成り、ここで一次薬剤含有レザボアの少なくとも皮膚に接触表面は接着性で、剥離可能な保護層である。多層裏地構造物は一次薬剤含有レザボアに感圧性接着体により張り付けられる。一次薬剤含有レザボアは具体的には医薬として許容できる感圧性接着体から形成されるが、場合により、非接着性材料から形成することができる。一次薬剤含有レザボアが適当な接着性をもたない材料から形成される時は、一次薬剤含有レザボアは薄い接着性被膜を伴って調製することができる。一次薬剤含有レザボアの中間体が場合により一次薬剤含有薬剤レザボアと剥離可能な保護層間に配置された薬剤放出−速度制御膜に張り付けられる。その後の操
作において個々の経皮装置をダイで切断し、分離し、適当なパウチストックを使用して単位包装される。経皮装置は通常の装置を使用してカートンに包装される。生成された経皮送達システムはエンボス加工および書き込み能力を有する速度制御された薬剤送達装置を提供する。
【0048】
タイ層内にアンタゴニスト含有レザボアを含む多層裏地構造物を有する経皮薬剤送達システムはオピオイド送達経皮調製物と組み合わせて使用する時、同時に、エンボス加工標識もしくはペンによる書き込みを可能にしながら、システムを誤って使用することを試みる薬剤乱用者に抑制をもたらす。
【0049】
多層裏地構造物は高温を適用せずに、外側層を融解せずに圧力の適用によりエンボス加工される。温度を上昇させずに単に圧力をかけることが非常に著明な目に見える図形を提供するのに十分である。本発明の多層裏地構造物を使用する経皮システムを標識する方法は熱を伴わないエンボス加工法による経皮システムを印刷する時の溶媒基剤インキの必要を排除する。更に、本発明の方法は不都合な薬剤−添加剤相互作用を排除し、安定性、感熱性、治療効果、保存寿命および経皮薬剤送達システムの製造の容易性を改善する。
【0050】
更に、本発明の多層裏地構造物は書き込み可能なので、医師、看護師もしくは使用者にインキの汚れなしにペンで裏地上に直接書き込みを可能にする。この特徴は、医師および看護師は、交換が必要な時に複数日数の経皮システム上に書き込む必要があるために、多数のクリニックの環境に重要である。適当な時間に交換されない場合、システムの薬剤含量が枯渇する時は準治療量の薬剤を送達することができる。
【0051】
更に、多層裏地構造物が一次薬剤含有接着性マトリックスに張り付けられると、薬剤は外側層の微孔質/微小繊維性のために多層裏構造物をとおってパウチ材料の熱シール層中に浸透することができない。
【0052】
更なる態様において、多層裏地構造物は感圧性接着体に張り付けられて、血液バッグ、IVバッグもしくは形態充填シール(form−fill−seal)経皮パッチ、例えばDuragesic(R)経皮フェンタニル送達システムのようなあらゆる医学的装置への結合を可能にする。
【0053】
本発明に従う多層裏地構造物の様々な層を製造するために使用することができる広範な材料が前記に説明された。従って、本発明は必要な機能を実施することができることが今後当該技術分野に知られるようになるかも知れないものを含む、本明細書に具体的に開示されたもの以外の材料の使用を想定する。
【0054】
製法
本発明の多層裏地構造物は以下のように製造される。薬剤含有レザボアは以下により詳細に説明される周知の方法に従って製造される。
【0055】
薬剤含有レザボア
二次薬剤含有レザボアは薬剤をポリマー材料、好ましくは熱成形可能な材料と、高い応力および高温下で、シグマブレード混合装置もしくは押し出し装置のような装置を使用してバッチ状でもしくは連続的のいずれかで乾燥混合することにより形成することができる。押し出し物を放出ライナー(release liners)間で所望の厚さにカレンダーにかけ、次にバリヤーフィルムおよび/もしくは鎮痛速度制御手段に高温で張り付ける。下記の実施例に示すように、薬剤負荷量、薬剤含有レザボアの厚さ、速度制御手段のための膜の選択および速度制御手段の界面活性剤修飾のようなパラメーターを変更して、薬剤の目標の放出速度を達成することができる。好ましい態様において、界面活性剤を膜
材料上にコートして、浸漬被覆、グラヴィア被覆等のような方法を使用して速度制御手段を形成する。
【0056】
それに代わる態様において、二次薬剤含有レザボアは以下のような既知の方法に従って製造される。前記のようにポリマーのレザボア材料の溶液を二重軌道混合装置に添加し、次に所望の薬剤量および場合により浸透促進剤を添加する。ポリマーの二次薬剤含有レザボア材料を好ましくは有機溶媒、例えばエタノール、エチルアセテート、ヘキサン等の中に溶解する。次に混合装置を閉鎖し、一定期間活性化して、成分の許容できる均一性を達成する。混合装置を注形/フィルム乾燥ラインの一方の端に配置された適当な注形ダイにコネクターにより取り付ける。混合装置を窒素を使用して加圧して、溶液を注形ダイに供給する。溶液を移動しているシリコーン化ポリエステルウェブ上の湿ったフィルムとして成形する。ウェブを、ラインをとおして引き、一連のオーブンを使用して、許容できる残留限度まで成形溶媒を蒸発させる。次に乾燥した二次薬剤含有レザボアフィルムを選択された基底層に張り付け、張り付け物を取り上げローラー上に巻き取る。もう1つの方法において、二次薬剤含有レザボアを乾燥混合および、当該技術分野で周知の装置を使用する熱フィルム形成を使用して形成することができる。材料を好ましくは乾燥混合し、スロットダイを使用して押し出し、次に適当な厚さにカレンダー処理される。下記の実施例に具体的に示すように、薬剤負荷量、二次薬剤含有レザボアの厚さ、薬剤の選択、材料の選択および製造法のようなパラメーターを本発明の薬剤含有レザボアを調製するために変更することができる。
【0057】
一次薬剤含有レザボアを既知の材料を使用して、既知の方法に従って前記のように製造する。
【0058】
多層裏地構造物
多層裏地構造物は概括的に以下のように製造される。例えば、図1に具体的に示されるように、タイ層を基底層に張り付け、次に外側層を高温および高圧下で基底層に遠位のタイ層の面上に張り付ける。あるいはまた、双方の張り付けを、張り付けの前に外側層と基底層間に直接、必要な幅および厚さでタイ層を押し出すことにより単一操作で実施することができると考えられる。張り付けを概括的に約70℃から約120℃の範囲の温度で、50psiから約120psiの範囲の圧力で、約2fpmから約20fpmの範囲の速度で実施する。
【0059】
タイ層が二次薬剤含有レザボアを含んで成る、代わりの態様において、多層裏地構造物は前記の張り付け条件下で基底層と外側層に二次薬剤含有レザボア層を連続的もしくは同時に張り付けることにより製造される。二次薬剤含有レザボアは以前に説明されたように製造される。
【0060】
図2に具体的に示すように多層裏地構造物のもう1つの態様において、タイ層は第1層16の皮膚に近位の面上に配置された第2層17(PET層)に張り付けた、外側層の皮膚に近位の面上の一番外側の第1層16(EVA/LDPE層)を含む多層の層であり、これら2層は更に第2層17の皮膚に近位の面上に配置された第3層18(EVA/LDPE/ポリウレタン層)および形態充填タイプの二次薬剤含有レザボア15に張り付けられる。基底層14、例えば薬剤放出速度制御手段はその中に薬剤を溶解もしくは懸濁されたゲルの形態の二次薬剤含有レザボア15を含む中央の容積を提供するようになっている。
【実施例】
【0061】
以下は本発明を実施するための具体的な態様の例である。実施例は具体的な目的のみのために提供され、どんな方法でも本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0062】
使用された数値(例えば量、温度、等)については正確を確保する努力をされたが、ある程度の実験誤差および偏差はもちろん許容されなければならない。
【0063】
本発明の様々な多層裏地構造物の具体的な例を以下に示す実施例に説明される。以下の実施例において、すべての百分率は別記されない限り重量に基づく。
【実施例1】
【0064】
Scotchpak 9735(PET−PEラミネート、3M、Cottage Grove,MN)、Mediflex 1500(PET−顔料添加EVAラミネート、Mylan Technologies,Saint Albans,VT)もしくはMediflex 1200(PET−EVAラミネート、Mylan Technologies)のようなポリエステル−ポリオレフィン経皮裏地材料を高温、高圧でSolupor微小繊維UHMW−HDPE P01フィルム(DSM Solutech,Heerlen,the Netherlands)に張り付ける。張り付けに要する温度は裏地のポリオレフィン層の融点より上、通常100℃より上である。生成される多層を経皮裏地として使用し、そのSoluporの表面にはペンで書き込むことができ、感圧性接着体への張り付け前もしくは後にエンボス加工ローラーで圧力をかけることによりエンボス加工することができる。
【実施例2】
【0065】
Mediflex 1200、ポリエステル−EVAラミネートをタイ層によりSolupor微小繊維のUHMW−HDPEフィルムに接着させる。タイ層はナルトレキソン塩酸分散物を含むENGAGE 8407エチレン−オクテン・コポリマー(Dupont−Dow Elastomers,DSM Solutechの)を含む。適当な接着は90psi、5fpmでそして100℃の高温張り付け段階を実施することにより達成される。生成される多層構造物をフェンタニル含有接着体レザボアに張り付ける。生成される構造物を識別のためのエンボス加工し、ボールペンで書き込みすることができ、そしてフェンタニル乱用を防止するためのアンタゴニスト、ナルトレキソン塩酸を含む。
【実施例3】
【0066】
Celgard微孔質PP 3401フィルム(Celgard微孔質膜)を使用して多層裏地構造物を実施例1に前記のように調製する。
【実施例4】
【0067】
Rotrac Capillary Pore Membrane(毛管孔膜)(Oxyphen,Zug,Switzerland)を使用して、多層裏地構造物を実施例1に前記のように調製する。
【実施例5】
【0068】
Celgard微孔質PP 3401フィルムを使用して多層裏地構造物を実施例2に前記のように調製する。
【実施例6】
【0069】
Rotrac毛管孔膜(Oxyphen,Zug,Switzerland)の微孔質ポリエステルを使用して、多層裏地構造物を実施例2に前記のように調製する。
【実施例7】
【0070】
半透明のポリオレフィンフィルム、Mediflex 1000(Mylan Technologies,Saint Albans,VT)を低融点のEngage 84
07エチレン−オクテン・コポリマーによりSolupor微小繊維フィルムP01に張り付ける。張り付けに要した条件は80℃、90psiおよび3fpmである。生成される経皮裏地材料を、それもまたエンボス加工および書き込みのための表面を提供する少ない伸長性のSolupor層のためにウェブ張力下で少ない伸長を伴って加工することができる。更にこの裏地材料を一次薬剤含有接着性マトリックスに張り付ける時、薬剤はSolupor層の微小繊維性のために、多層裏地をとおしてパウチ材料の熱シール層中に浸透することができない。
【実施例8】
【0071】
EVAフィルムをLDPEフィルムと置き換えることを除いて実施例7で概説された方法に従う。生成される構造物はEVA裏地層中に更なる薬剤レザボアを提供する追加の利点を伴って実施例7に概説された利点を提供する。EVAフィルム中への薬剤の取り込みはその押し出しもしくは、有効薬剤感圧性接着体レザボアへの張り付け後にEVA中への薬剤の緩徐な拡散により達成される。
【実施例9】
【0072】
Mylan TechnologiesからのMedifilm 500シリーズのようなLDPEもしくはEVA膜材料をEVA−40薬剤分散物から成るポリオレフィン薬剤レザボアに張り付け、順次それをSolupor P01フィルムに70℃で、50psiで、そして3fpmで高温張り付け装置上で張り付ける。生成される多層構造物は感圧性接着体に張り付け後に、速度制御薬剤送達、エンボス加工および書き込み能を提供する。
【実施例10】
【0073】
実施例1〜9に記載のいずれの多層構造物も感圧性接着体に張り付けると、血液バッグ、IVバッグもしくは、Duragesic経皮フェンタニル送達システムのような形態充填シール経皮パッチのようなあらゆる医学的装置に接着することができる。
【0074】
前記の代表的態様は本発明を限定的ではなく、すべての点で具体的に示すことが意図される。従って、本発明は当業者により、本明細書に含まれる説明から誘導することができる詳細な含蓄に多数の変更を実施されることができる。これらすべての変更および修飾が本発明の範囲および精神内にあると考えられる。
【0075】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0076】
1. (a)エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【0077】
2. 外側層が呼吸可能な材料を含んで成る1.の多層裏地構造物。
【0078】
3. 外側層が多孔質の、微孔質の、微小繊維の、スパンボンデッドの、スパンレースの、トラックエッチングされた、レーヨン、木材パルプ、スパンレースポリエステルもしくはコート紙製品およびそれらの組み合わせ物を含んで成る呼吸可能な材料を含んで成る2.の多層裏地構造物。
【0079】
4. 外側層が低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、ポリプロピレン、ポリエステルおよびポリエチレンから成る群から選択される材料を含んで成る3.の多
層裏地構造物。
【0080】
5. タイ層が疎水性、親油性もしくは非極性のポリマー材料およびそれらの組み合わせ物を含んで成る1.の多層裏地構造物。
【0081】
6. タイ層がエチレンオクテン・コポリマー、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンブロック・コポリマーもしくは熱可塑性エラストマーの非感圧性調製物およびそれらの組み合わせ物を含んで成る5.の多層裏地構造物。
【0082】
7. (a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【0083】
8. (a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたアンタゴニスト含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【0084】
9. アンタゴニストが基底層をとおって放出可能でない形態にあり、外側層がアンタゴニスト放出速度制御手段である8.の多層裏地構造物。
【0085】
10. 外側層が界面活性剤でコートされている9.の多層裏地構造物。
【0086】
11. 基底層がアンタゴニスト含有レザボア内のアンタゴニストに不浸透性である8.の多層裏地構造物。
【0087】
12. (a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)有益な薬剤を含んで成り、外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)薬剤放出速度制御手段である、タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【0088】
13. (a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置された多層のタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【0089】
14. タイ層が二次薬剤含有レザボアを含んで成る13.の多層裏地構造物。
【0090】
15. 多層タイ層が
(i)外側層の皮膚に近位の面上に配置された第1層、
(ii)第1層の皮膚に近位の面上に配置された第2層、
(iii)第2層の皮膚に近位の面上に配置された第3層、および
(iv)二次薬剤含有レザボア:
を含んで成る13.の多層裏地構造物。
【0091】
16. 第1層がエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)層であり、第2層がポリエチレンテレフタレート(PET)層であり、第3層がエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)層もしくはポリウレタン層である、15.の多層裏地構造物。
【0092】
17. 二次薬剤含有レザボアが有益な薬剤を含んで成り、基底層が薬剤放出速度制御手段である14.もしくは15.の多層裏地構造物。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に従う多層裏地構造物の1態様のスキームによる遠近図による断面図を表わす。
【図2】本発明に従う多層裏材構造物のもう1つの態様のスキームによる遠近図による断面図を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【請求項2】
外側層が呼吸可能な材料を含んで成る請求項1の多層裏地構造物。
【請求項3】
外側層が多孔質の、微孔質の、微小繊維の、スパンボンデッドの、スパンレースの、トラックエッチングされた、レーヨン、木材パルプ、スパンレースポリエステルもしくはコート紙製品およびそれらの組み合わせ物を含んで成る呼吸可能な材料を含んで成る請求項2の多層裏地構造物。
【請求項4】
外側層が低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、ポリプロピレン、ポリエステルおよびポリエチレンから成る群から選択される材料を含んで成る請求項3の多層裏地構造物。
【請求項5】
タイ層が疎水性、親油性もしくは非極性のポリマー材料およびそれらの組み合わせ物を含んで成る請求項1の多層裏地構造物。
【請求項6】
タイ層がエチレンオクテン・コポリマー、エチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンブロック・コポリマーもしくは熱可塑性エラストマーの非感圧性調製物およびそれらの組み合わせ物を含んで成る請求項5の多層裏地構造物。
【請求項7】
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【請求項8】
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置されたアンタゴニスト含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【請求項9】
アンタゴニストが基底層をとおって放出可能でない形態にあり、外側層がアンタゴニスト放出速度制御手段である請求項8の多層裏地構造物。
【請求項10】
外側層が界面活性剤でコートされている請求項9の多層裏地構造物。
【請求項11】
基底層がアンタゴニスト含有レザボア内のアンタゴニストに不浸透性である請求項8の多層裏地構造物。
【請求項12】
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を
含んで成る外側層、
(b)有益な薬剤を含んで成り、外側層の皮膚に近位の面上に配置された、二次薬剤含有レザボアを含んで成るタイ層、および
(c)薬剤放出速度制御手段である、タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【請求項13】
(a)微孔質層もしくは微小繊維層である、エンボス加工可能で書き込み可能な材料を含んで成る外側層、
(b)外側層の皮膚に近位の面上に配置された多層のタイ層、および
(c)タイ層の皮膚に近位の面上に配置された基底層:
を含んで成る多層裏地構造物。
【請求項14】
タイ層が二次薬剤含有レザボアを含んで成る請求項13の多層裏地構造物。
【請求項15】
多層タイ層が
(i)外側層の皮膚に近位の面上に配置された第1層、
(ii)第1層の皮膚に近位の面上に配置された第2層、
(iii)第2層の皮膚に近位の面上に配置された第3層、および
(iv)二次薬剤含有レザボア:
を含んで成る請求項13の多層裏地構造物。
【請求項16】
第1層がエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)層であり、第2層がポリエチレンテレフタレート(PET)層であり、第3層がエチレン−ビニルアセテート・コポリマー(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)層もしくはポリウレタン層である、請求項15の多層裏地構造物。
【請求項17】
二次薬剤含有レザボアが有益な薬剤を含んで成り、基底層が薬剤放出速度制御手段である請求項14もしくは請求項15の多層裏地構造物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254631(P2012−254631A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153859(P2012−153859)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2004−532976(P2004−532976)の分割
【原出願日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】