説明

エンボス化粧シートおよびその製造方法

【課題】 立体感があって装飾的に優れたエンボス化粧シート、およびこのようなエンボス化粧シートを簡単に、かつ、安価に製造することができるエンボス化粧シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 一面にエンボス模様が形成され、他面が平滑面とされた透明樹脂板2と、透明樹脂板2の平滑面20に一面側が一体に積層されるとともに、他面側にエンボス模様が形成され、透明樹脂板2の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂層3と、からなる基材シート4のいずれか一方のエンボス模様を加飾して隠蔽層5が設けられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス模様が設けられた化粧シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系ボード類、無機系ボード類等と化粧シートとを接着剤等を介して貼り合わされる化粧板は、部屋の間仕切り等に使用されている。
【0003】
この化粧板の化粧シートとしては、透明樹脂板の片面に模様印刷を施したものや、透明樹脂板の一面に模様印刷を施し、他面にエンボス模様を設けたもの(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【特許文献1】特開平9−24585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の化粧シートにあっては、化粧シートに施された模様が平面的で立体感に乏しく、装飾的に劣るという欠点がある。
【0005】
そこで、上記した従来の化粧シートに装飾用樹脂板を部分的に貼着して立体感を付与したものが提案されているが、化粧シートを生産するのに要する費用が高価になるといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、立体感があって装飾的に優れたエンボス化粧シートを提供するとともに、このエンボス化粧シートを簡単かつ安価に製造することのできるエンボス化粧シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係るエンボス化粧シートは、一面にエンボス模様が形成され、他面が平滑面とされた透明樹脂板と、該透明樹脂板の平滑面に一面側が一体に積層されるとともに、他面側にエンボス模様が形成され、透明樹脂板の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂層と、からなる基材シートのいずれか一方のエンボス模様を加飾して隠蔽層が設けられたことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、基材シートの表面と裏面の両面にエンボス模様が形成され、いずれか一方の面に隠蔽層が設けられているので、化粧シートに対する照明光の入射角度によってエンボス模様の陰影が異なることから、照明位置を変化させることにより、表面側エンボス模様が強調されて見えたり、裏面側エンボス模様が強調されて見える。このため、エンボス化粧シートは、立体感がある、装飾的に優れたものとなる。
【0009】
また、透明樹脂板の屈折率と熱硬化性樹脂の屈折率とが近似しているので、透明樹脂板と熱硬化性樹脂層との密着面に境界が発生せず、基材シートが均質な透明板と見えるようになるので、基材シートの裏面のエンボス模様による陰影が見え易くなるため好適である。
【0010】
本発明において、前記透明樹脂板を、ポリスチレンまたはメタクリル酸メチル重合物を主成分とし、また、前記熱硬化性樹脂を、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一つ、または、二つ以上の混合物とするとすると、基材シートの透明性を高めることができるので、裏面側エンボス模様による陰影を明瞭に視認することができ、好ましい。
【0011】
本発明のエンボス化粧シートの製造方法は、一面にエンボス模様が形成され、他面が平滑面とされた透明樹脂板を、エンボス模様に対応する模様が形成された型面を有する成形型に、透明樹脂板の平滑面を型面に対向させて配置するとともに、成形型と透明樹脂板の平滑面との間に、透明樹脂板の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂を流し込んで硬化させた後、透明樹脂板と熱硬化性樹脂層が一体化された基材シートを脱型し、基材シートのいずれか一方のエンボス模様を加飾して隠蔽層を設けることを特徴とするものである。
【0012】
この結果、立体感のある、装飾的に優れたエンボス化粧シートを簡単に、かつ、安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、立体感があって装飾的に優れたエンボス化粧シートを得ることができる。
【0014】
また、本発明によれば、立体感があって装飾的に優れたエンボス化粧シートを簡単に、かつ、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0016】
図1には、本実施形態のエンボス化粧シート1が示されている。
【0017】
このエンボス化粧シート1は、一面にエンボス模様Yが形成され、他面が平滑面20とされた透明樹脂板2と、該透明樹脂板2の平滑面20に一面側が一体に積層されるとともに、他面側にエンボス模様Xが形成され、透明樹脂板2の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂層3と、からなる基材シート4のエンボス模様Yを加飾して隠蔽層5が設けられて形成されている。
【0018】
このようなエンボス化粧シート1によれば、照明位置によって看者にはエンボス模様X,Yのいずれか一方が強調されて視認される。すなわち、図3に示すように、照明位置Aから照明して正面より観察すると、エンボス化粧シート1における基材シート4の表面側のエンボス模様Xの陰影が際立ち、裏面側のエンボス模様Yが見え難くなる。したがって、看者には、図2(a)に示すようなエンボス化粧シート1の表面側のエンボス模様Xが強調されて視認される。一方、照明位置Bから照明して正面より観察すると、エンボス化粧シート1における基材シート4の裏面側のエンボス模様Yの陰影が際立ち、表面側のエンボス模様Xが見え難くなる。したがって、看者には、図2(b)に示すようなエンボス化粧シート1の裏面側のエンボス模様Yが強調されて視認される。
【0019】
このように、エンボス化粧シート1は、基材シート4の表面および裏面にそれぞれエンボス模様X,Yを形成しているため、照明位置によって看者には表面側のエンボス模様Xが強調されて視認されたり、裏面側のエンボス模様Yが強調されて視認されるので、風情のある装飾効果を発揮することができ、立体感があって、装飾的に優れたものとなる。
【0020】
なお、このエンボス化粧シート1は、その裏面の隠蔽層5側を木質系ボード類、無機系ボード類に接着剤等を介して貼り合わせ,適宜の大きさに切断して部屋の間仕切りなどに使用される。
【0021】
次に、このようなエンボス化粧シート1の製造方法について説明する。
【0022】
本実施形態では、図4に示すように、押し出し金型6aから搬送されるポリスチレン樹脂押し出し板2aを転写ロール6bによりエンボス模様Yを転写することにより透明樹脂板2を製造する。
【0023】
なお、透明樹脂板2の製造方法は上記したものに限られるものではなく、例えば図5に示すように、エンボス模様Yに対応する模様を形成した型6cにポリスチレン樹脂押し出し板2aを載置し、加熱した後、押圧板6dでポリスチレン樹脂押し出し板2aを加圧することによりエンボス模様Yを転写してもよい。
【0024】
次に、図6に示すように、エンボス模様Xに対応する模様X1が形成された型面を有する成形型7に透明樹脂板2の平滑面20を対向させて配置する。
【0025】
次いで、成形型7を傾けて、成形型7の下方からエポキシ樹脂を流し入れ、80℃に加温してエポキシ樹脂を硬化させる、エポキシ樹脂が硬化した後、脱型すると、外表面30にエンボス模様Xが形成された熱硬化性樹脂層3と透明樹脂板2とが一体化された基材シート4が得られる。
【0026】
なお、基材シート4の表面と裏面に施すエンボス模様は、異なるものであっても、同じものであってもよい。
【0027】
また、透明樹脂板2の平滑面20に、熱硬化性樹脂との密着力を向上させるために、サンディング処理や梨地処理を施してもよい。
【0028】
続いて、この基材シート4の裏面に、不飽和ポリエステル樹脂をベースとする塗料をスプレーガンを用いて塗装し、加熱炉に入れて硬化させて隠蔽層5を設ける。
【0029】
なお、隠蔽層5を設けるのは、上記したスプレーガンを用いて塗料を吹き付ける方法に限られるものではなく、例えば、スクリーン印刷により印刷しても良い。また、隠蔽層5は、模様を施していてもよく、あるいは模様を施していない単色であってもよい。
【0030】
また、透明樹脂板2として、アクリル樹脂押し出し板を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用い、60℃に加温し、その後は上記と同様の工程によりエンボス化粧シート1を製造してもよい。その他、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂とジアリルフタレート樹脂の混合物を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、立体感があって装飾的に優れたエンボス化粧シート、およびこのようなエンボス化粧シートを簡単に、かつ、安価に製造することができるエンボス化粧シートの製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るエンボス化粧シートの断面図である。
【図2】図1のエンボス化粧シートのエンボス模様を示す平面図である。
【図3】本発明に係るエンボス化粧シートの使用状態を説明する図である。
【図4】本発明に係るエンボス化粧シートの透明樹脂板の製造工程を示す概略図である。
【図5】本発明に係るエンボス化粧シートの透明樹脂板の製造工程の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るエンボス化粧シートの基材シートの製造工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 エンボス化粧シート
2 透明樹脂板
3 熱硬化性樹脂層
4 基材シート
5 隠蔽層
X,Y エンボス模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面にエンボス模様が形成され、他面が平滑面とされた透明樹脂板と、該透明樹脂板の平滑面に一面側が一体に積層されるとともに、他面側にエンボス模様が形成され、透明樹脂板の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂層と、からなる基材シートのいずれか一方のエンボス模様を加飾して隠蔽層が設けられたことを特徴とするエンボス化粧シート。
【請求項2】
前記透明樹脂板が、ポリスチレンまたはメタクリル酸メチル重合物を主成分とし、また、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれか一つ、または、二つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載のエンボス化粧シート。
【請求項3】
一面にエンボス模様が形成され、他面が平滑面とされた透明樹脂板を、エンボス模様に対応する模様が形成された型面を有する成形型に、透明樹脂板の平滑面を型面に対向させて配置するとともに、成形型と透明樹脂板の平滑面との間に、透明樹脂板の屈折率と近似した屈折率の熱硬化性樹脂を流し込んで硬化させた後、透明樹脂板と熱硬化性樹脂層が一体化された基材シートを脱型し、基材シートのいずれか一方のエンボス模様を加飾して隠蔽層を設けることを特徴とするエンボス化粧シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305810(P2006−305810A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129428(P2005−129428)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(501362906)積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Fターム(参考)】