説明

オイルポンプの駆動装置

【課題】オイルポンプの駆動装置の小型化を図ることである。
【解決手段】エンジン1および電動モータ2のそれぞれを駆動源とするオイルポンプ10を有し、エンジン1から出力される動力をオイルポンプ10に伝達する第1動力伝達経路3に第1ワンウェイクラッチCLを組込む。電動モータ2から出力される動力をオイルポンプ10に伝達する第2動力伝達経路4に第2ワンウェイクラッチCLを組込んで、単一のオイルポンプ10をエンジン1または電動モータ2で駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車に組込まれるオイルポンプの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車においては、エンジンによりオイルポンプを駆動し、そのオイルポンプから吐出される作動油で油圧式自動変速機等の油圧機器を制御するようにしている。
【0003】
ここで、自動車には、所定の停止条件下においてエンジンを停止し、アクセルペダルを踏み込む等の所定の始動条件下においてエンジンを始動させるようにしたエコラン制御と称される制御装置を搭載したものがある。
【0004】
上記のような自動車では、エンジンが停止すると、オイルポンプも停止状態となり、油圧式自動変速機等の油圧機器を制御することができなくなる。その問題を解決するため、特許文献1においては、エンジンで駆動されるオイルポンプの他に、電動モータで駆動されるオイルポンプを搭載し、エンジンの停止時、電動モータを駆動してオイルポンプを駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−226530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンを駆動源とするオイルポンプと電動モータを駆動源とするオイルポンプの2つのオイルポンプを備える自動車のオイルポンプ駆動装置においては、部品点数が多くなって装置が大型化するという不都合がある。
【0007】
この発明の課題は、オイルポンプの駆動装置の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、エンジンおよび電動モータのそれぞれを駆動源とする一台のオイルポンプを有し、前記エンジンから出力される動力をオイルポンプに伝達する第1動力伝達経路にエンジンからオイルポンプに向けての動力伝達のみを許容する第1ワンウェイクラッチを組込み、前記電動モータから出力される動力をオイルポンプに伝達する第2動力伝達経路に、電動モータからオイルポンプに向けての動力伝達のみを許容する第2ワンウェイクラッチを組込み、前記第1ワンウェイクラッチと第2ワンウェイクラッチを、一方のワンウェイクラッチのロック時、前記オイルポンプから出力される回転によって他方のワンウェイクラッチがロック解除するようロック方向を同一とする組込みとした構成を採用したのである。
【0009】
上記の構成からなるオイルポンプの駆動装置においては、エンジンの駆動、停止に拘わらず電動モータを駆動し、または、エンジンの停止時に電動モータを駆動する。
【0010】
電動モータを常に回転させるオイルポンプの駆動制御において、エンジンを駆動すると、オイルポンプにそのエンジンの動力と電動モータの動力の2つの動力が伝達されることになるが、第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチは、ロック方向を同一とする組み込みであるため、エンジンと電動モータのうち回転数の高い方によってオイルポンプが駆動されることになる。
【0011】
ここで、オイルポンプとして、内周に複数の歯が形成されたアウタロータと、そのアウタロータより歯数の少ない歯が外周に形成され、その歯の1つがアウタロータの歯と噛合うようアウタロータの偏心位置に組込まれたインナロータを有する内接歯車ポンプを採用することができる。
【0012】
内接歯車ポンプを採用する場合、第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチの出力軸のそれぞれをインナロータに連結する。その連結は、オルダムカップリングを用いる連結であってもよく、あるいは、スプライン嵌合による連結であってもよい。
【0013】
上記のような内接歯車ポンプを採用する場合において、インナロータのロータ軸を第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチの出力軸とすると、オイルポンプ駆動装置の軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
【0014】
第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチは、内部に異物の侵入を防止するため、第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチのそれぞれをケーシングで覆うのが好ましい。その場合、そのケーシングをオイルポンプのケーシングに共用すると、小型のオイルポンプ駆動装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、この発明においては、単一のオイルポンプをエンジンと電動モータとで駆動するようにしたので、オイルポンプ駆動装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るオイルポンプの駆動装置の実施の形態を示す概略図
【図2】図1のオイルポンプ部を拡大して示す断面図
【図3】(a)は、オイルポンプを示す断面図、(b)は、(a)のIII−III線に沿った断面図
【図4】ワンウェイクラッチの一部を示す断面図
【図5】ワンウェイクラッチの他の例を示す断面図
【図6】オイルポンプのロータ軸とワンウェイクラッチの出力軸の連結の他の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図1に示すように、オイルポンプの駆動装置は、エンジン1および電動モータ2によって駆動される単一のオイルポンプ10を有している。
【0018】
図3(a)、(b)に示すように、オイルポンプ10は、ケーシング11の内部に組込まれたアウタロータ12の内周に複数の歯13を設け、上記アウタロータ12の内側に組込まれたインナロータ14の外周に、アウタロータ12より歯数の少ない歯15を設け、その歯15の一つがアウタロータ12の歯13と噛合するようインナロータ14をアウタロータ12に対して偏心配置し、上記インナロータ14の駆動により、そのインナロータ14とアウタロータ12を相対回転させ、アウタロータ12とインナロータ14の歯13、15間に形成されたチャンバ16が周方向に移動する際の容積変化により吸込みポート17から上記チャンバ16内に流入する作動油を圧縮させて吐出ポート18から吐出させる内接歯車ポンプからなっている。
【0019】
オイルポンプ10におけるインナロータ14は、図1に示すエンジン1および電動モータ2を駆動源として図3(b)の矢印で示す方向に回転駆動される。
【0020】
図1に示すように、エンジン1から出力される動力を図3(a)、(b)に示されるインナロータ14に伝達する第1動力伝達経路3には第1ワンウェイクラッチCLが組込まれ、また、電動モータ2から出力される動力をインナロータ14に伝達する第2動力伝達経路4には第2ワンウェイクラッチCLが組込まれている。
【0021】
第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLとして、ここでは、図2および図4に示すように、閉塞端にトルク伝達軸21を有する外輪20の内側に出力軸22を組込み、上記外輪20の内周には出力軸22の外周に形成された円筒面23との間で楔空間を形成する複数のカム面24を周方向に間隔をおいて形成し、そのカム面24と円筒面23との間にローラ25を組込み、そのローラ25を弾性部材26によってカム面24および円筒面23の双方に係合する方向に向けて付勢したローラタイプのものを用いるようにしている。
【0022】
なお、ローラタイプのワンウェイクラッチに代えて、図5に示すように、外輪20の内周および出力軸22の外周に円筒面28、29を形成し、その円筒面28、29間にスプラグ30を組込み、そのスプラグ30を保持器31に形成されたポケット32内に収容し、そのポケット32内に組込まれた弾性部材33によりスプラグ30を円筒面28、29に噛み込む方向に向けて付勢したスプラグタイプのワンウェイクラッチを用いるようにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLの出力軸22はインナロータ14のロータ軸14aに連結される。その連結に際し、同図ではオルダムカップリング40を用いるようにしているが、図6に示すように、出力軸22とインナロータ14のロータ軸14aをスプライン41の嵌合により連結してもよい。
【0024】
第1ワンウェイクラッチCLは、エンジン1の駆動時にロックしてエンジン1から出力される動力をインナロータ14に伝達し、一方、第2ワンウェイクラッチCLは電動モータ2の駆動時にロックして電動モータ2から出力される動力をインナロータ14に伝達するようになっており、その第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLは、一方のワンウェイクラッチのロック時、オイルポンプ10のインナロータ14のロータ軸14aから出力される回転によって他方のワンウェイクラッチがロック解除するようロック方向を同一とする組込みとされている。
【0025】
図2に示すように、第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLはケーシング50により覆われ、そのケーシング50の両端部内側にシール51と、そのシール51の軸方向内方にトルク伝達軸21を回転自在に支持する軸受52とが組込まれている。
【0026】
ここで、ケーシング50は、軸方向に2分割され、その分割面間にオイルポンプ10が組込まれ、上記ケーシング50によってオイルポンプ10も保護されている。
【0027】
実施の形態で示すオイルポンプの駆動装置は上記の構造からなる。いま、エンジン1を駆動すると、第1ワンウェイクラッチCLがロックし、エンジン1から出力される動力が第1ワンウェイクラッチCLを介してインナロータ14に伝達され、オイルポンプ10が駆動される。
【0028】
このとき、インナロータ14のロータ軸14aの回転は第2ワンウェイクラッチCLの出力軸22に出力されるが、第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLは、ロック方向を同一とする組み込みであるため、第2ワンウェイクラッチCLはロック解除となり、電動モータ2側に動力が伝達されるようなことはなく、損失トルクは少ないものとなる。
【0029】
一方、電動モータ2を駆動すると、第2ワンウェイクラッチCLがロックし、電動モータ2から出力される動力が第2ワンウェイクラッチCLを介してインナロータ14に伝達され、オイルポンプ10が駆動される。
【0030】
このとき、第1ワンウェイクラッチCLはロック解除状態となるため、電動モータ2によってオイルポンプ10は確実に駆動されることになる。
【0031】
ここで、電動モータ2は、エンジン1の駆動、停止に拘わらず常に駆動しておいてもよく、あるいは、エンジン1の停止時に駆動するようにしてもよい。
【0032】
電動モータ2を常に回転させるオイルポンプ10の駆動制御において、エンジン1を駆動すると、オイルポンプ10のインナロータ14にそのエンジン1の動力と電動モータ2の動力の2つの動力が伝達されることになるが、第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLは、ロック方向を同一とする組み込みであるため、エンジン1とモータ電動モータ2のうち回転数の高い方によってオイルポンプ10が駆動されることになる。
【0033】
上記のように、単一のオイルポンプ10をエンジン1と電動モータ2とで駆動する構成であるため、オイルポンプ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0034】
実施の形態においては、オイルポンプ10のロータ軸14aと第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLの出力軸22をオルダムカップリング40で連結し、あるいは、スプライン41の嵌合により連結したが、オイルポンプ10のロータ軸14aを第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLの出力軸としてもよい。
【0035】
上記のように、オイルポンプ10のロータ軸14aを第1ワンウェイクラッチCLおよび第2ワンウェイクラッチCLの出力軸とすると、オイルポンプ駆動装置の軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
【0036】
また、実施の形態においては、ケーシング50内にオイルポンプ10を組込むようにしたが、上記ケーシング50をオイルポンプ10のケーシングに共用してもよい。ケーシング50をオイルポンプ10のケーシングに共用すると、小型のオイルポンプ駆動装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2 電動モータ
3 第1動力伝達経路
4 第2動力伝達経路
10 オイルポンプ
12 アウタロータ
13 歯
14 インナロータ
15 歯
CL 第1ワンウェイクラッチ
CL 第2ワンウェイクラッチ
25 ローラ
30 スプラグ
40 オルダムカップリング
41 スプライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよび電動モータのそれぞれを駆動源とする一台のオイルポンプを有し、前記エンジンから出力される動力をオイルポンプに伝達する第1動力伝達経路にエンジンからオイルポンプに向けての動力伝達のみを許容する第1ワンウェイクラッチを組込み、前記電動モータから出力される動力をオイルポンプに伝達する第2動力伝達経路に、電動モータからオイルポンプに向けての動力伝達のみを許容する第2ワンウェイクラッチを組込んで、前記第1ワンウェイクラッチと第2ワンウェイクラッチを、一方のワンウェイクラッチのロック時、前記オイルポンプから出力される回転によって他方のワンウェイクラッチがロック解除するようロック方向を同一とする組込みとしたオイルポンプの駆動装置。
【請求項2】
前記オイルポンプが、内周に複数の歯が形成されたアウタロータと、そのアウタロータより歯数の少ない歯が外周に形成され、その歯の1つがアウタロータの歯と噛合うようアウタロータの偏心位置に組込まれたインナロータを有する内接歯車ポンプからなり、前記第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチの出力軸のそれぞれを前記インナロータに連結した請求項1に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項3】
前記インナロータのロータ軸と第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチのそれぞれの出力軸をオルダムカップリングで連結した請求項2に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項4】
前記インナロータのロータ軸と第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチのそれぞれの出力軸をスプラインの嵌合により連結した請求項2に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項5】
前記インナロータのロータ軸を第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチの出力軸とした請求項2に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項6】
前記第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチが、ローラを係合子とするローラタイプのものからなる請求項1乃至5のいずれかの項に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項7】
前記第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチが、スプラグを係合子とするスプラグタイプのものからなる請求項1乃至5のいずれかの項に記載のオイルポンプの駆動装置。
【請求項8】
前記第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチのそれぞれをケーシングで覆い、そのケーシングをオイルポンプのケーシングに共用した請求項1乃至7のいずれかの項に記載のオイルポンプの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106543(P2011−106543A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260855(P2009−260855)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】