説明

オピオイドレセプターアゴニストおよびオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの交互の投与を含む、痛覚脱失を誘導するための方法、および移植可能な注入ポンプ

【課題】哺乳動物において痛覚脱失を生じる方法を提供すること。
【解決手段】哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、薬物耐性の発生を遅延させながらも疼痛緩和を達成するための髄腔内鎮痛剤の投与のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
哺乳動物においては、有害な刺激に選択的に応答するレセプターは、侵害受容器として公知である。2つの別個のセットの末梢感覚ニューロンは、疼痛の感覚を主に担う。第1のAδ−侵害受容ニューロンは有髄軸索を含み、そして有害な熱刺激および機械的刺激によって主に刺激される。第2のセットの侵害受容ニューロンは、無髄軸索を保有し、C線維として公知であり、高強度の機械的刺激、化学的刺激および熱刺激によって活性化される。これらのセットのニューロンの各々は、後根神経節中にその細胞体を有する。これらの突起は、偽単極であり、末梢で終結する1つの軸索、および脊髄の中の後部角中のニューロンで終結する1つの軸索を有する。
【0003】
痛覚脱失(analgesia)は、意識の喪失を伴わない、疼痛の感受性の喪失である。近年、種々の系統の研究は集合して、痛覚脱失が、外因性オピオイド(例えば、モルヒネ)または内因性オピオイドによって生じ得ることを実証する。この研究は、疼痛が阻害される機構を説明するモデルをもたらした。例えば、Kelly,D.,「Central Representations Of Pain and Analgesia」,Principals of Neural Science,KandelおよびSchwartz編(1985)を参照のこと。
【0004】
痛覚脱失を誘導することについてヒトに公知の第1の手段は、植物由来のオピオイド麻薬(例えば、モルヒネ)の使用を通してであった。シナプス後オピオイドレセプターが特徴付けられており、そして以下の3つの基本的サブタイプを包含する:ミュー(μ)、デルタ(δ)およびカッパ(κ)。これらのオピオイドレセプターに結合し、それによって痛覚脱失を生じる内因性オピオイドとしては、met−エンケファリンおよびleu−エンケファリン、ならびにβ−エンドルフィンが挙げられる。臨床的に使用されるアヘン誘導体(例えば、モルヒネ)の大部分は、μ−オピオイドレセプターサブタイプを活性化する。
【0005】
疼痛に関連したC線維の一次求心性ニューロンの刺激は、強力な神経ペプチドであるサブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)およびソマトスタチン、ならびに「速い」神経伝達物質グルタメートの放出をもたらす。活性化されたエンケファリン作用性阻害ニューロンは次いで、これらの神経伝達物質の放出に対してシナプス前阻害制御を発揮し、従って、疼痛の感覚をブロックする。
【0006】
オピオイド化合物(アヘン誘導体)(例えば、モルヒネ)は、多くの型の疼痛に対して痛覚脱失を生じるに有効であるが、常に有効なわけではない。なぜなら、耐性の発達が、多くの患者において生じるからである。オピオイドの効果に対する耐性の発達は、今日の慢性疼痛管理における主な問題の1つである。オピオイドの送達経路にかかわらず、患者は、時間が経つにつれて疼痛緩和の低下を訴える。近年の研究は、オピオイドの一定の送達(例えば、注入または経皮パッチ)が、間欠的投与よりも低い耐性を生じることを示唆する(例えば、短時間作用性のオピオイド(例えば、Vicodin)(Jhamandas,KHら,「Spinal amino acid release and precipitated withdrawal in rats chronically infused with spinal morphine」,J Neurosci 16:2758−2766(1996);Ibuki Tら,「Effect of transient naloxone antagonism on tolerance development in rats receiving continuous spinal morphine infusion」,Pain 70:125−132(1997))が、耐性は、依然として重大な問題である。慢性髄腔内オピオイドを受ける患者についての近年の研究は、何人かの患者において、適切な鎮痛レベルを維持するために、数ヶ月にわたって2〜3倍までの用量の増大が必要であることを実証する(Winkelmuller Mら,「Longterm effects of continuous intrathecal opioid treatment in chronic pain of nonmalignant etiology」,J Neurosurg 85:458−467(1996);Paice JAら,「Clinical realities and economic considerations:efficacy of intrathecal pain therapy」,J Pain Symp Manage 14:S14−26(1997);Sallerin−Caute Bら,「Does intrathecal morphine in the treatment of cancer pain induce the development of tolerance ?」,Neurosurgery 42:44−49(1998))。レミフェンタニル(remifentanil)の手術中使用の近年の研究は、このμ−オピオイドアゴニストに対する迅速な(数時間以内)耐性が生じ得ることを示す(Guignard B.ら,「Acute opioid tolerance:intraoperative remifentanil increases postoperative pain and morphine requirement」,Anesthesiology 93:409−417(2000))。ヒト細胞株についての基本的研究は、μ−オピオイドレセプター分子のシグナル伝達経路における30%低下が、μ−オピオイドアゴニストを用いた培養において24時間という早期に生じることを示す(Elliot J.ら,「Tolerance to μ−opioid agonists in human neuroblastoma SH−SY5Y cells as determined by changes in guanosine−5’−0−(3−[35S]−thio)triphosphate binding」,Br.J.Pharmacol.121:1422−1428(1997))。しかし、大部分の研究者は、耐性が、ヒトにおいてよりもラットにおいて、より迅速に発達することに同意する。例えば、多くの患者は、モルヒネの鎮痛効果に対して完全に耐性になることなく、6日間(これは、ラットにおけるモルヒネ耐性の発達についての時間経過である)よりも長く、安定な用量のモルヒネを用いて好首尾に処置された。
【0007】
オピオイドの使用を漸増することは、多くの医師にとって法医学的問題のみではないが、髄腔内オピオイドを漸増することは、ミオクローヌスのような副作用をもたらし得る(非特許文献1;非特許文献2)。この副作用は、通常、髄腔内オピオイドの用量が、60〜70mg/日のモルヒネ当量に制限される場合、生じない。大部分の患者は、5mg/日未満の髄腔内用量で開始するが、1年あたり2倍の増加でさえ、4年以内に毒性用量をもたらす。高用量では、これらの化合物は、副作用(例えば、呼吸低下)をさらに生じ、これは、生命を脅かし得る。オピオイド薬物はまた、頻繁に、患者における身体的依存性を生じる。依存性は、摂取されるオピオイドの用量および被験体がオピオイドを摂取する期間に関連するようである。この理由から、慢性疼痛の管理についての交互の治療が広範に求められている。さらに、必要とされる鎮痛化合物の投薬量を減少させるための、オピオイド処置の代替物または付加物のいずれかとして供される化合物は、疼痛(特に、慢性の難治型の疼痛)の処置において有用性を有する。
【0008】
非オピオイド薬物(例えば、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID))は、疼痛の処置についての代替治療を提供する。NSAIDの作用様式は、シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンの生合成を担う酵素)の阻害を通してであると考えられる。鎮痛剤として、NSAIDは、このオピオイドに関連するCNSに対する副作用の多くを欠き、そしてこれらは、依存性の発達をもたらさない。これらは、しかし、低い強度から中程度の強度の疼痛についてのみ有効であり、そして一般に、激しい疼痛には有用ではない。さらに、これらは、胃または腸での潰瘍形成を誘導する傾向、ならびに血小板機能の障害を含む、望ましくない副作用を有する。
【0009】
入手可能な広範な鎮痛物質にもかかわらず、耐性の発達に起因した用量の漸増を必要とすることなく、重篤な疼痛を低減する際に有効である、薬物および薬物投与レジメが依然として欠如している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Glavina MJら,「Myoclonic spasms following intrathecal morphine」,Anaesthesia(1988)43:389−390
【非特許文献2】De Conno Fら,「Hyperalgesia and myoclonus with intrathecal infusion of high−dose morphine」,Pain(1991)47:337−339
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
「交替痛覚脱失(rotational analgesia)」と呼ばれる新規な処置レジメンが、髄腔内オピオイドに対する耐性の発達の遅延を助けることが現在見出されている。本発明の1つの局面では、哺乳動物において痛覚脱失を生じる方法が提供され、この方法は、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストを哺乳動物に髄腔内投与し、次いで薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1(ORL−1)アゴニストをこの哺乳動物に髄腔内投与することを交互に行う工程を包含する。次いで、各薬剤を交互に投与する期間は、所望の回数または所望のサイクルで繰り返され得る。オピオイドレセプターアゴニストまたはORL−1アゴニストの各投与期間は、哺乳動物においていずれかの薬物に対する有意な耐性を誘導するには持続期間が不充分であって、それによって耐性の発達を遅延させるように設計される。本発明の1つの実施形態では、このオピオイドレセプターアゴニストは、μ−オピオイドレセプターアゴニスト、δ−オピオイドレセプターアゴニスト、κ−レセプターアゴニストおよびそれらの混合物から選択される。
【0012】
他の局面では、本発明のオピオイドレセプターアゴニスト薬物およびORL−1アゴニスト薬物の交替髄腔内送達のための、移植可能な非侵襲性の速度調節可能な二重レザーバポンプが提供される。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
(項目1)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目2)
前記第2の期間が、第1の期間に連続して続く、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1および第2の期間の投与は、複数の処置期間にわたって繰り返される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の期間が1〜30日間の期間である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第2の期間が1〜30日間の期間である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストが、μ−オピオイドレセプターアゴニストを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記μ−オピオイドレセプターアゴニストが、モルヒネ、フェンタニール、スフェンタニルおよびTry−D−Ala−Gly−[N−MePhe]−NH(CH)−OHからなる群より選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記μ−オピオイドレセプターアゴニストが、モルヒネである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記オピオイドレセプター様レセプター1アゴニストが、ノシセプチンである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記オピオイドレセプター様レセプター1アゴニストが、RO 64−6198である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記オピオイドレセプター様レセプター1アゴニストが、ノシセプチンである、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記オピオイドレセプター様レセプター1アゴニストが、RO 64−6198である、項目1に記載の方法。
(項目13)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の第1の痛覚脱失性薬物の、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の第2の痛覚脱失性薬物の、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1の痛覚脱失性薬物および第2の痛覚脱失性薬物は最小程度の交叉耐性を示し、該哺乳動物の脊髄における疼痛経路に対する該第1および第2の痛覚脱失性薬物の効果は充分に類似した効果であり、その結果、該哺乳動物は、一方の該痛覚脱失性薬物の投与の間、他方の該痛覚脱失性薬物からの退薬症状(withdrawal)を経験せず、そして該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該第1および第2の痛覚脱失性薬物に対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目14)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、該哺乳動物において、少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストに対する耐性を得るには不十分な第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、該哺乳動物において、少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性を得るには不十分な第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含する、方法。
(項目15)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、該哺乳動物において、第1の痛覚脱失性薬物に対する耐性を得るには不十分な第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つの痛覚脱失性薬物の、該哺乳動物への髄腔内投与と、該哺乳動物において、第2の痛覚脱失性薬物に対する耐性を得るには不十分な第2の期間にわたって、薬学的有効用量の第2の痛覚脱失性薬物の、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1の痛覚脱失性薬物および第2の痛覚脱失性薬物は最小程度の交叉耐性を示し、そして該哺乳動物の脊髄における疼痛経路に対する該第1および第2の痛覚脱失性薬物の効果は充分に類似した効果であり、その結果、該哺乳動物が一方の該痛覚脱失性薬物の投与の間、他方の該痛覚脱失性薬物からの退薬症状(withdrawal)を経験しない、方法。
(項目16)
移植可能な注入ポンプであって、該ポンプは、以下:
(a)オピオイドレセプターアゴニストを含むための第1流体レザバ;
第1流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、第1調整器アセンブリ;
(b)オピオイドレセプター様レセプター1アゴニストを含むための第2流体レザバ;
(c)第2流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、第2調整器アセンブリ;および
(d)制御信号に応答して、該第1および第2の調整器アセンブリを第1流速設定から第2流速設定へと変更するための電気機械制御手段であって、ここで、該第1流体レザバからの流れを調節する流速設定は、該第2流体レザバからの正の流れが存在する場合、0に設定され、そして該第2流体レザバからの流れを調節する流速設定は、該第1流体レザバからの正の流れが存在する場合、0に設定され、そしてここで、該電気機械制御手段は、該第1および第2流体レザバからの流速設定を、交互の様式で0に変更する、電気機械制御手段
を備える、ポンプ。
(項目17)
移植可能な注入ポンプであって、該ポンプは、以下:
(a)第1の痛覚脱失性薬物を含むための第1流体レザバ;
(b)第1流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、第1調整器アセンブリ;
(c)第2の痛覚脱失性薬物を含むための第2流体レザバ;
(d)第2流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、第2調整器アセンブリ;および
(e)制御信号に応答して、該第1および第2の調整器アセンブリを第1流速設定から第2流速設定へと変更するための電気機械制御手段であって、ここで、該第1流体レザバからの流れを調節する流速設定は、該第2流体レザバからの正の流れが存在する場合、0に設定され、そして該第2流体レザバからの流れを調節する流速設定は、該第1流体レザバからの正の流れが存在する場合、0に設定され、そしてここで、該電気機械制御手段は、第1流体レザバおよび第2流体レザバからの流速設定を、交互の様式で0に変更する、電気機械制御手段
を備える、ポンプ。
(項目18)
移植可能な注入ポンプであって、該ポンプは、以下:
(a)第1の痛覚脱失性薬物を含むための第1流体レザバ;
(b)第2の痛覚脱失性薬物を含むための第2流体レザバ;
(c)少なくとも1つの流体排出口;
(d)少なくとも1つの調整器アセンブリであって、該アセンブリは、該第1および第2の流体レザバと該少なくとも1つの流体排出口とを流体接続し、そして該第2流体レザバから該排出口への第2の痛覚脱失性薬物の流れをブロックしながら、該第1の流体レザバから該排出口への該第1の痛覚脱失性薬物の流れを可能にする第1の配置と、該第1流体レザバから該排出口への該第1の痛覚脱失性薬物の流れをブロックしながら、該第2の流体レザバから該排出口への該第2の痛覚脱失性薬物の流れを可能にする第2の配置との間が調節可能である、調整器アセンブリ;ならびに
(e)該第1および第2の配置の間の該調節器アセンブリの選択的調節のために、少なくとも1つの調節器アセンブリを制御するように作動可能な制御器
を備える、ポンプ。
(項目19)
前記少なくとも1つの調節器アセンブリが、第1および第2の調節器を備える、項目18に記載のポンプ。
(項目20)
前記調節器が、第1の期間にわたって第1の配置、および第2の期間にわたって第2の配置を交互に維持するために、少なくとも1つの調節器アセンブリを配置するように作動可能である、項目18に記載のポンプ。
(項目21)
前記制御器が、前記ポンプが第1および第2の痛覚脱失性薬物の髄腔内投与のために該ポンプを必要する患者に移植される場合、第1および第2の期間が、第1および第2の痛覚脱失性薬物に対する耐性の発生を遅延することを決定できるように作動可能である、項目18に記載のポンプ。
(項目22)
前記制御器が、前記第1および第2の配置の間の、前記少なくとも1つ調節器アセンブリを自動的に調節するように作動可能である、項目18に記載のポンプ。
(項目23)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目24)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニール、スフェンタニル、メタドン、メペリジンおよびDAMGOからなる群より選択される、少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目25)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニール、スフェンタニル、メタ
ドン、メペリジンおよびDAMGOからなる群より選択される、少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の、ノシセプチン、Phepsi;RO 64−6198、および1−フェニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンからなる群より選択される、少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストならびに該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目26)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニスト、δ−オピオイドレセプターアゴニストまたはκ−オピオイドレセプターアゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目27)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニール、スフェンタニル、メタドン、メペリジンおよびDAMGOからなる群より選択されるμ−ピオイドレセプターアゴニスト、デルトルフィンおよびDPDPEからなる群より選択される少なくとも1つのδ−オピオイドレセプターアゴニスト、またはκ−オピオイドレセプターアゴニストU−50,488Hの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの、該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
(項目28)
哺乳動物における痛覚脱失を生成する方法であって、該方法は、第1の期間にわたって、薬学的有効用量の、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニール、スフェンタニル、メタドン、メペリジンおよびDAMGOからなる群より選択される少なくとも1つのμ−ピオイドレセプターアゴニスト、デルトルフィンおよびDPDPEからなる群より選択されるδ−オピオイドレセプターアゴニスト、またはκ−オピオイドレセプターアゴニストU−50,488Hの、該哺乳動物への髄腔内投与と、第2の期間にわたって、薬学的有効用量の、ノシセプチン、Phepsi;RO 64−6198、および1−フェニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オンからなる群より選択される、少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストの該哺乳動物への髄腔内投与とを交替で行う工程を包含し、ここで、該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストならびに該第1および第2の期間は、該哺乳動物において、該少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストおよび該少なくとも1つのオピオイドレセプター様レセプター1アゴニストに対する耐性の発生を遅延させるように選択される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明による移植可能な速度調節可能な二重レザーバポンプシステムの、ブロック図形態の模式図である。
【図2】図2は、髄腔内モルヒネ(8μg)を単独で用いるか(図2A〜2Dにおいて黒丸として示す)、髄腔内ノシセプチン(10nmol)を単独で用いるか(図2A〜2Dにおいて黒四角として示す)、またはモルヒネを2日間にわたって用い、交替してノシセプチンを2日間にわたって用い、次いでこのサイクルを実施例1に記載の通り繰り返すことを用いた(図2A〜図2Dにおいて白丸として示す)、熱刺激(図2Aおよび図2B)および機械的刺激(図2Cおよび図2D)に対するラットの後蹠引込め潜時(HWL)のグラフ図である。
【図3】図3は、実施例2に記載の通りの半分の用量のモルヒネ(4μg)とノシセプチン(5nmol)とを組合せて1日に2回の投与した後の、熱刺激(図3Aおよび図3B)および機械的刺激(図3Cおよび図3D)に対するラットのHWLのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
交替痛覚脱失(analgesia)の実施において、髄腔内オピオイド薬物の投与は、強力な鎮痛効果を有するが、このオピオイド薬物との最小の交叉耐性を示す、別の薬物の投与と交替される。最小交叉耐性を示すために、例えば、このオピオイド薬物は、この交替薬物のレセプターに有意に結合してはならない。同様に、この交替薬物は、オピオイド薬物のレセプターに有意に結合してはならない。また、重要なことは、脊髄における疼痛経路に対する全体的な効果が、交互の薬物への交替の間、患者がオピオイドの離脱症状(withdrawal)を経験しないのに充分に類似することである。これらの2つの重要な要因は、本発明の実施においてオピオイドを用いて好首尾に交替され得る型の薬物を制限する。レセプター活性化およびセカンドメッセンジャー系の開始を、初期段階の薬物効果およびニューロン阻害とみなし、そして減少したサイクリックAMPレベルを、この薬物の効果の後期段階とみなす。任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、交替した薬物が、交叉耐性を回避し、なおまた、薬物の離脱症状(withdrawal)を回避するために、異なる初期段階を有し、そして非常に類似した後期段階を有することが重要であると現在考えられる。本発明の実施において、オピオイド薬物を用いて好首尾に交替され得る薬物の現在好ましい例は、ORL−1アゴニストである。
【0015】
1つの局面では、本発明は、少なくとも1つの少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニスト(例えば、μ−オピオイドレセプターアゴニスト、δ−オピオイドレセプターアゴニスト、κ−オピオイドレセプターアゴニストまたはそれらの混合物)の投与と、少なくとも1つのORL−1アゴニストの投与とを交替させることによって、オピオイド薬物およびオピオイド様レセプター−1(ORL−1)アゴニスト薬物の投与における耐性の発生を遅延させるための方法および装置に関する。少なくとも1つのORL−1アゴニストと交替した投与のための適切なオピオイドレセプターアゴニストとしては、投与されるORL−1アゴニストとの最小程度の交叉耐性を示しかつ投与されたORL−1アゴニストによって示される効果と充分に類似した全体的効果を脊髄における疼痛経路に対して示して、その結果、患者がORL−1アゴニストへの交替の間にオピオイドアゴニストの離脱症状(withdrawal)を経験しない、オピオイドアゴニストが挙げられる。本明細書中以下に示す実施例によってさらに記載および例示されるように、μ−オピオイドレセプターアゴニストおよびORL−1アゴニストは、耐性への持続時間を延長するために、本発明に従って交替して有利に投与され得る。δ−オピオイドレセプターアゴニストおよび/またはκ−オピオイドレセプターアゴニストもまた、本発明に従ってORL−1アゴニストと適切に交替され得る(ただし、これらのオピオイドアゴニストは、ORL−1アゴニストとの最小の交叉耐性および疼痛経路に対する類似の効果を示すことが実証される)こともまた理論付けされる。
【0016】
本発明の第1の好ましい実施形態では、少なくとも1つのμ−オピオイドレセプターアゴニストは、少なくとも1つのORL−1レセプターアゴニストと交替して投与される。μ−オピオイドアゴニスト(例えば、モルヒネ)は、ORL−1レセプターアゴニスト(例えば、ノシセプチン(nociceptin))と交替される。なぜならば、μ−オピオイドレセプターアゴニストは、ORL−1レセプターに結合せず、そしてノシセプチンは、μ−オピオイドレセプターに結合せず、それゆえ、交叉耐性は、ないようであるからである(Hao JXら,「Lack of cross−tolerance between the antinociceptive effect of intrathecal orphanin FQ and morphine in the rat」,Neurosci Lett 223:49−52(1997))。両方の薬物は、サイクリックAMPのレベルを低下させ、そして両方とも、髄腔内に適用した場合、強力な鎮痛剤である。それゆえ、これらの2つの薬物のクラスは、本発明の交替髄腔内送達レジメに従って髄腔内に投与した場合、耐性の発生を遅延させることによって、いずれかの薬物を単独で用いた場合よりも長い疼痛緩和を提供する。
【0017】
本発明の他の実施形態では、少なくとも1つのδ−オピオイドレセプターアゴニストは、少なくとも1つのORL−1レセプターアゴニストと交替で投与される。オルファニン(orphanin)FQ(ノシセプチン)の髄腔内投与は、δ−オピオイドレセプターアゴニストであるデルトルフィン(deltorphin)の髄腔内投与によって惹起される抗侵害受容応答の持続時間を増大させることが観察されている(Jhamandas,KHら,「Antinociceptive and morphine modulatory actions of spinal orphanin FQ」,Can
.J Physiol.Pharmacol.76:314−324(1998))。最小の交叉耐性および疼痛経路に対する類似の効果を示す可能性は、本発明に従って決定される必要があるが、δ−オピオイドレセプターアゴニストが、ORL−1アゴニストとの交替に有用であり得ることが理論付けされる。
【0018】
本発明のなお他の実施形態では、少なくとも1つのκ−オピオイドレセプターアゴニストが、少なくとも1つのORL−1レセプターアゴニストと交替で投与される。さらに、最小の交叉耐性および疼痛経路に対する類似の効果についての可能性は、本発明の方法に従ったORL−1アゴニストとのκ−オピオイドレセプターアゴニストの交替の妥当さを決定する際に評価される必要がある。
【0019】
従って、1つの局面によれば、本発明は、痛覚脱失を必要とする哺乳動物を処置する方法を提供し、この方法は、薬学的有効用量の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストまたは少なくとも1つのORL−1アゴニストのいずれかを第1の期間にわたってこの哺乳動物に髄腔内投与する工程、および薬学的有効用量の他方の少なくとも1つのオピオイドレセプターアゴニストまたは少なくとも1つのORL−1アゴニスト(すなわち、第1の期間の間に投与されなかった鎮痛剤)を第2の期間にわたってこの哺乳動物に髄腔内投与する工程を包含する。1つの実施形態では、第2の期間は、第1の期間に連続して追従する。他の実施形態では、第1の期間の終わりは、第2の期間の始まりと重複し得、そしてその逆もまた同様である。交互の髄腔内投与のサイクルは、好ましくは、特定の適用において所望される限り、複数の処置期間にわたって繰り返される。所望の場合、投与される薬物の投薬レベルは、その投与期間の終わりに先細りし得、一方で、このサイクルにおいて交替される薬物の投薬レベルは同時に先太りし得、それによって、オピオイドレセプターアゴニストおよびORL−1アゴニストの両方がこの哺乳動物に投与される交叉期間を提供し得る。
【0020】
本発明のオピオイドレセプターアゴニストおよびORL−1アゴニストの適切な投薬レベルは、当業者に周知のように、医師が患者の必要性に依存して処方することによって決定され、そしてこれらの鎮痛剤について従来用いられる投薬レベルを包含する。例えば、μ−オピオイドレセプターアゴニストは、約0.5mg/日〜約25mg/日の毎日の投薬レベルで、そしてより好ましくは約3mg/日〜約20mg/日の投薬レベルで投与され得る。ORL−1アゴニストは、約1μg/日〜約1,000μg/日、より好ましくは約5μg/日〜約500μg/日、そして最も好ましくは約20μg/日〜約100μg/日の毎日の投薬レベルで投与され得る。オピオイドレセプターアゴニストまたはORL−1アゴニストの毎日の投薬量は、実質的に連続して、または間欠的に投与され得る。
【0021】
好ましくは、オピオイドレセプターアゴニストおよびORL−1アゴニストについての第1の投与期間および第2の投与期間は、投与された薬物の鎮痛効果に対して、患者において有意な耐性を達成するには持続時間が不充分である。本明細書中で用いられる場合、用語「耐性」は、本発明のオピオイドレセプターアゴニストまたはORL−1アゴニストに応答性がより低くなる、患者における顕著な効果または測定可能な効果を意味する。従って、耐性条件は、理想的鎮痛効果を生じるために、連続した薬物用量を増大させる必要性によって、そして連続投与の経過の間に観察されるこの薬物の明らかな効力喪失によって、特徴付けられる。
【0022】
例えば、μ−オピオイドレセプターアゴニストは、好ましくは、μ−オピオイドレセプターアゴニストに対する耐性を発達させるに不充分な期間(例えば、1〜30日間、より好ましくは1〜20日間、そして最も好ましくは1〜10日間の期間)にわたって投与され、続いて、ORL−1アゴニストが、ORL−1アゴニストに対する耐性を発達させるに不充分な期間(例えば、1〜30日間、より好ましくは1〜20日間、そして最も好ま
しくは1〜10日間の期間)にわたって投与される。次いで、μ−オピオイドレセプターアゴニストの交替髄腔内送達、続いてORL−1アゴニストの送達のサイクルは、所望の回数のサイクルについて、同様の期間にわたって繰り返され得、そして好ましくは少なくとも複数のサイクルにわたって繰り返される。これらの同じサイクルが、δ−オピオイドレセプターアゴニストまたはκ−オピオイドレセプターアゴニストとORL−1アゴニストとの交替に適切であり得ることが理論付けされる。
【0023】
本発明の実施において使用するための1つの共通のμ−オピオイドレセプターアゴニストはモルヒネであるが、他のμ−オピオイドレセプターアゴニストもまた、本発明の実施において用いられ得る。本発明の実施において使用するために適切なμ−オピオイドレセプターアゴニストとしては、例えば、ヒドロモルホン、フェンタニール、スフェンタニル、メタドン、メペリジンおよびTry−D−Ala−Gly−[N−MePhe]−NH(CH)−OH(「DAMGO」)が挙げられる。
【0024】
潜在的に適切なδ−オピオイドレセプターアゴニストとしては、例えば、デルトルフィン(deltorphin)および[D−Pen,D−Pen]エンケファリン(「DPDPE」)が挙げられ得る。本発明における使用に適切であり得る1つの例示的なκ−オピオイドレセプターアゴニストは、(トランス)−3,4ジクロロ−N−メチル−N[2−(1−ピロリジニル)シクロヘキシル]−ベンゼンアセトアミド(「U−50,488H」)である。
【0025】
本発明の実施における使用のために適切なORL−1アゴニストとしては、例えば、ノシセプチン(オーファニン(orphanin)FQ)、およびORL−1レセプターに高親和性で結合するが、交叉耐性をもたらすに充分な親和性でμ−オピオイドレセプターに結合しない他の薬剤が挙げられる。それらの結合特性に依存して、以下の試薬は、必要とされる特性を潜在的に保有し得る:Phepsi([Phepsi(CH−NH)Gly]ノシセプチン−(1−13)−NH(Chioce,J.Biomed.Sci.7(3):232−240(2000)));(1S,3aS)8−(2,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロ−1H−フェナレン−1−イル)−1−フェニル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−4−オン(「RO 64−6198」)(Jenck F.ら,PNAS 97(9):4938−4943(2000);および1−フェニル−1,3,8−トリアザ−スピロ[4.5]デカン−4−オン(Rover S.,J:Med.Chem.43(7):1329−1338(2000))。適切なORL−1アゴニストは、ペプチド作用性(例えば、ノシセプチン)または非ペプチド作用性(例えば、RO 64−6198)のいずれかであり得る。
【0026】
髄腔内注射に適切な薬学的組成物は、生理学的に受容可能な等張生理食塩水溶液(例えば、約0.9重量%の塩化ナトリウムを含有する)に溶解した、本発明に従って用いられる有効量の化合物を含む滅菌溶液であり得る。通常、これらの溶液は、投与部位の生理学的特徴に対して既知の様式で採用される。
【0027】
本発明の鎮痛薬剤は、当該分野で公知の任意の手段によって髄腔内投与され得る。例えば、本発明の中枢作用性鎮痛薬剤の髄腔内投与は、外面化された脊髄カテーテル、外部注入ポンプに接続された脊髄カテーテル、完全に移植された注入ポンプに接続された脊髄カテーテル、および慢性疼痛の処置に治療的に有効な、当該分野で公知の他の関連のシステムを介して達成され得る。鎮痛薬剤の直接的髄腔内送達は、比較的高い投薬量の全身送達によって引き起こされる全身的副作用を低減するために好ましい。このようにして、この活性薬物は、濃縮された様式で、そして低い用量で、脳脊髄幹中のレセプターに対するそれらの特定の作用部位に送達され、上記で概説した通りの全身的副作用を最小にする。
【0028】
移植可能な薬物注入デバイスを用いて、患者に、本発明の鎮痛薬剤の一定またはプログラム可能な長期投薬または注入を提供し得る。このようなデバイスは、能動的または受動的のいずれかとして分類され得る。
【0029】
能動的な薬物注入デバイスまたはプログラム可能な注入デバイスは代表的に、薬物を患者の系に送達するための、ポンプまたは計量供給システムを特徴とする。現在利用可能なこのような能動的薬物注入デバイスの例は、SynchroMedTMプログラム可能ポンプ(Medtronic Incorporated,Minneapolis,Minnesota)である。このようなポンプは代表的に、薬物レザバ、薬物をレザバから汲み出すための蠕動ポンプ、およびレザバから汲み出された薬物をポンプを介して患者の解剖学的構造に輸送するためのカテーテルポートを備える。このようなデバイスはまた、代表的に、ポンプに動力を供給するための電池、ならびにポンプの流速を制御するための電子モジュールを備える。SynchroMedTMポンプはさらに、ポンプの遠隔プログラミングを可能にするアンテナを備える。
【0030】
対照的に、受動的薬物注入デバイスは、薬物を送達するためにポンプを特徴とせず、むしろ、加圧薬物レザバに依存する。従って、このようなデバイスは、能動的デバイスと比較して、より小さくかつより安価な傾向がある。このようなデバイスの例としては、Medtronic IsoMedTMデバイス(Medtronic Incorporated,Minneapolis,Minnesota)が挙げられる。このデバイスは、加圧レザバによって与えられる力によって薬物を患者へと送達する。特に、このレザバは、20psi〜40psi(1.3バール〜2.5バール)の間へと、薬物とともに加圧され、そして薬物を患者の系に送達するために用いられる。代表的には、レザバから患者への薬物流動経路は、一定の流速を可能にする、流動制限器を含む。しかし、流速は、レザバと患者との間の圧力差が変化しない場合にのみ一定である。この圧力差に影響を与え得る要因としては、とりわけ、温度、レザバの圧力−容積依存性、および高度が挙げられる。従って、このレザバについて選択される圧力は、代表的に、極めて高く、その結果、絶対的圧力変化は、小さくかつ受容可能な流速の誤りしか生じない。本発明の実施において使用するための適切な注入ポンプとしては、Medtronic,Inc.の米国特許第5,820,589号に開示される注入ポンプが挙げられ、これは、無線周波数遠隔測定または非侵襲的遠隔測定の他の手段によって、移植可能でかつ非侵襲的にプログラム可能である。この特許の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0031】
現在特に好ましい実施形態では、本発明の鎮痛薬剤は、本発明の交替投与レジメに従って交互の様式でそれらのそれぞれのレザバからアゴニストを放出するための手段とともに、一方が、本発明のμ−、δ−またはκ−オピオイドレセプターアゴニストについてであり、そして他方が、本発明のORL−1アゴニストについてである、少なくとも2つの流体レザバを有する移植可能な医療用ポンプによって投与され得る。本発明のこの局面によれば、このポンプは、例えば、以下を備え得る:
(a)交替して投与されるべき第1薬物(例えば、本発明のμ−、δ−またはκ−オピオイドレセプターアゴニスト)を含むための第1流体レザバ;
(b)第1流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、調整器アセンブリ;
(c)交替して投与されるべき第2薬物(例えば、本発明のORL−1アゴニスト)を含むための第2流体レザバ;
(d)第2流体レザバからの流体の流れを調節するための複数の流速設定に調整可能な、調整器アセンブリ;および
(e)電気機械制御手段が、制御信号に応答して誘導電圧を受けた場合、受動的調整器アセンブリを第1流速設定から第2流速設定へと変更するための電気機械制御手段であって、ここで、第1流体レザバからの流れを調節する流速設定は、第2流体レザバからの正
の流れが存在する場合、0に設定され、そして第2流体レザバからの流れを調節する流速設定は、第1流体レザバからの正の流れが存在する場合、0に設定され、そしてここで、この電気機械制御手段は、第1流体レザバおよび第2流体レザバからの流速設定を、交互の様式で0に変更する。
【0032】
本発明のこの局面に従って、本発明に関連した使用のための適切な薬物注入ポンプは、第1流体レザバ、第2流体レザバ、ならびに例えば、患者の身体内の特定の所望の位置に送達されるべきそれぞれの本発明の第1薬物(例えば、μ−、δ−、またはκ−オピオイドレセプターアゴニスト)および第2薬物(例えば、ORL−1アゴニスト)のレザバへの充填の間のレザバに対するアクセスポートとして作用する隔壁を備え得る。所望の場合、このポンプは、好ましくは、受信機が伝送信号の存在下にある場合に電圧が誘導され得るワイヤのコイルを備える、遠隔測定アンテナまたは受信機をさらに備え得る。このような信号は、例えば、患者の身体内の皮膚付近に移植されたポンプの近位に配置された無線周波数ヘッドに作動可能に連結されたプログラマーを備えるアセンブリによって作製される。
【0033】
ポンプは、第1レザバおよび第2レザバからの流体の流れを調節するシステムをさらに備え得る。好ましくは、流れを調節するシステムは、複数の流速設定に調整可能なバルブネットワークアセンブリを備え、そして複数の流動制限器への流体の流れを制御する複数の双安定バルブを備える。これらのバルブは、Wagner,らによって記載されるバルブに類似していてもよいが、それらに制限されない。Wagner,B.ら,「Bistable Microvalve with Pneumatically Coupled Membranes」,IEEE 0−7803−2985−6/96,pp.384−88(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。これらの制限器は、市販のInfusaidおよびAnschutzの固定速度ポンプにおいて用いられる毛細管技術に類似していてもよいが、それらに限定されない。あるいは、微細加工エッチング技術もまた、制限器を製造するために用いられ得る。
【0034】
さらに、このポンプは、受け取った遠隔測定信号に応答して、このシステムのバルブのうちの1以上の状態を変更するための制御回路を好ましくは備える。この制御回路は、送信機と連絡するために必要な要素、送信機を介して受け取った遠隔測定に従って送信機からのシグナルをバルブ状態を変更するために必要なエネルギーに変換するために必要な要素、ならびにバルブ状態および全体的ポンプ性能を確認するために必要な要素を好ましくは備える。
【0035】
図1は、本発明に従った、移植可能な速度調節可能なポンプシステムの模式図を示す。この中で示されるように、ポンプ10は、本発明の鎮痛薬剤のうちの一方の溶液(例えば、μ−オピオイドレセプターアゴニストの溶液)を含むための第1流体レザバ12、および本発明の交替した鎮痛薬剤の溶液(例えば、ORL−1アゴニストの溶液)を含むための第2流体レザバ14を好ましくは備える。センサ16、18は、それぞれ、レザバ12、14中の流体レベルを感知し、そして経路20、22に沿って流体レベル情報を集積回路制御器24へと提供するために提供される。流体の流動制限器26、28は、制御器24およびセンサ27、29によって決定された流速で、第1流体レザバ12および第2流体レザバ14から患者への鎮痛薬剤の流れを調節するために提供される。所望の場合、このポンプシステムには、プログラマー34によって設定された外部のRF送信機32からの信号を受け取って、本発明の交替髄腔内鎮痛投与方法に従って交互の様式でのレザバ12、14からの鎮痛薬剤の流動パターンを調節するのに適合した移植可能なRF受信機30が提供され得る。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
(インビボでのラットの後足引込み反応時間(in vivo rat hindpaw withdrawal latency)(HWL)の研究)
実験を、雄性Sprague−Dawleyラット(体重200〜250g)で実施した。これらのラットは、餌および水を自由に得られるようにしてケイジで飼育した。室温を24±2℃に維持し、そして12時間の明/暗サイクルを維持した。全ての実験を、San FranciscoのUniversity of CaliforniaにおけるCommittee on Animal Researchのガイドラインに従って実施した。動物への苦痛を最小にする全ての努力がなされた。
【0037】
(髄腔内注射)
ポリエチレンカテーテル(Intramedic PE10)を、各動物においてL3〜L5に、内部チップ(inner tip)を用いて髄腔内に持続的に移植した。カテーテルの配置後に行動障害を示したラットは、この研究に使用しなかった。注射容積は、10μLの薬物溶液、続いてカテーテルを洗い流すための10μLの0.9%生理食塩水であった。髄腔内注射は、12時間ごとに(朝および夜)に実施した。
【0038】
モルヒネ単独の群では、完全な耐性が生じるまで、8μgのモルヒネHClを12時間ごとに注射し、そしてノシセプチン単独の群では、完全な耐性が生じるまで10nmolのノシセプチンを12時間ごとに注射した。これらの用量は、これら2つの薬物についての等鎮痛薬用量を決定した以前の研究から選択した。交替痛覚脱失群(ratational analgesia group)(以下の表1および2におけるモルヒネ+ノシセプチンとして示される)において、8μgのモルヒネを、最初の2日間にわたって12時間ごとに注射し、続いて、次の2日間にわたって12時間ごとに10nmolのノシセプチンを注射した。同じパターンを、耐性の発生が完全になるまで繰り返した。
【0039】
髄腔内注射のための溶液を、滅菌した生理食塩水(0.9%)を用いて調製した。ノシセプチンをTocris、Balwin、MOから入手し、モルヒネHClを、Shenyang First Pharmaceutical Factory、Shenyang、Chinaから入手した。
【0040】
(ノシセプチンの試験)
ラットを、手でつかむことおよび測定によって生じるストレス応答を軽減するために、実験の5日前から試験状態で訓練し、そしてベースラインの応答を得た。後足引込み反応時間(HWL)を、熱刺激および機器刺激の両方について測定した。熱刺激を、ホットプレート試験を用いて達成した。ラットの左後足または右後足の全体の腹側表面を、ホットプレート(52℃(51.8〜52.2℃)の温度に維持した)の上に置いた。Randall Selitto Test(UGO Basile、7200型、Italay)を、機器刺激についてHWLを評価するために使用した。30g/秒のローディング速度を有するV字型プローブを、手で処理した後足の背側表面に適用し、そして奮闘(struggle)応答を開始するのに必要とされる機器刺激を評価した。HWL(すなわち、刺激の開始から引込むまでの反応時間)は、秒で示される。HLWを、毎日、第二の髄腔内注射の15分後に測定した。
【0041】
後足引込み反応時間試験からのデータを、以下の表1および2に、平均±標準偏差(SEM)として表す。熱刺激に対するHWL(図2Aおよび2B)ならびに機器刺激に対するHWL(図2Cおよび2D)を、各ラットについての基礎レベルの割合として示す。各ラットを、両方の型の刺激を用いて試験した。
【0042】
(表1 髄腔内注射10分後の機器刺激に対するHWLの変化%)
【0043】
【表1】

(表2 髄腔内注射10分後の熱刺激に対するHWLの変化%)
【0044】
【表2】

(結果)
モルヒネ単独1日目は、熱刺激を用いて約67%のHWL増加(図2Aおよび2B)、ならびに機器刺激を用いて約55%のHWL増加(図2Cおよび2D)を生じる。右後足および左後足の両方は類似のHWLを有した。機器および熱のHWLの両方は、各々、経時的に次第に減少し、その結果、6日目までには、髄腔内モルヒネに対する全ての耐性が存在する。ノシセプチン単独1日目は、熱刺激を用いて約90%のHWL増加(図2Aおよび2B)、ならびに機器刺激を用いて約60〜70%のHWL増加(図2Cおよび2D)を生じる。機器および熱のHWLの両方は、経時的に迅速に減少し、その結果、4日目までには、髄腔内ノシセプチンに対する完全な耐性が存在する。
【0045】
図2A〜2Dにおいて示されるように、ノシセプチンとモルヒネとの交替は、劇的に異なる結果を生じる。モルヒネ単独群と比較して、モルヒネのかわりにノシセプチンを用いた1日目と2日目のHWLの間には類似の減少が測定されているが、3日目には、HWLは1日目のレベルにもどる。耐性は、経時的に両方の医薬品について実際に観察されるが、完全な耐性のための時間は13日目まで延長される。類似の時間経過が両方の後足および両方の型の刺激について観察される。
【0046】
この実施例および文献において報告された他の研究は、ラットが6日目までに髄腔内モルヒネに対する完全な耐性をもつことを実証する。2日ごとに、等効力の用量のモルヒネをノシセプチンに交替することによって(すなわち、鞘内の、1日目および2日目にモルヒネ、3日目および4日目にノシセプチン、5日目および6日目にモルヒネなど)、この実施例は、13日目に完全な耐性を生じ、これはモルヒネ単独と比較して完全な耐性までの時間を100%より長く増大させ、そしてノシセプチン単独と比較して200%よりも長く増大させることを実証する。興味深いことに、ノシセプチン耐性は、非常に迅速である。ノシセプチン単独群において、2日目までに、50%の耐性がすでに生じている。HWLのこの劇的な減少は、交替痛覚脱失群におけるノシセプチン投薬(例えば、3〜4日目)の2日目には観察されない。いかなる特定の理論によっても束縛されることを意図しないが、モルヒネ処置後のノシセプチン耐性におけるこの減少は、髄腔内モルヒネ処置後の脊髄の後角におけるノシセプチンレセプター(ORL−1レセプター)のアップレギュレーションに起因し得る(Gouarderes Cら、「Nociceptin receptors in the rat spinal cord durig morphine tolerance,「Brain Res 838:85−94(1999))。耐性の迅速な発症に起因して、ORL−1アゴニストは、単一の髄腔内薬剤として臨床的に有用ではないかもしれない;しかし、本発明に従うμ−オピオイドレセプターアゴニストを交替することによって、ORL−1アゴニスト耐性の発生が有意に延長され得る。μ−オピオイドレセプターアゴニスト(例えば、モルヒネ)は現在、単一の髄腔内薬剤として使用されているが、耐性および用量増加の問題は、先に言及されるような臨床的問題である。
【0047】
(実施例2)
(併用療法)
熱刺激および機器刺激の両方について実施例1の材料および方法を使用する、後足引込み反応時間(HWL)試験を、12時間ごとに半分用量のモルヒネ(4μg)およびノシセプチン(5nmol)の髄腔内注射によって処置した8匹のラット群で実施した。これらの結果を、以下の表3および図3A〜3Dに示す。
【0048】
(表3 HWLの変化%)
【0049】
【表3】

興味深いことに、半分の用量の、髄腔内(IT)モルヒネおよびITノシセプチンの併用によって、個々に、全用量の各薬物を投与するよりもより少ない全痛覚脱失を得る。40%の平均HWL増加は、熱刺激を用いて観察され、そして40%の平均HWL増加はIT薬物の併用を用いた機器刺激でもまた観察される。2つの薬物の併用は、延長した耐性の発生を示さない。従って、交替投与は、併用投与と比較した場合、有益である。
【0050】
(実施例3 ヒトの研究)
高レベルの慢性疼痛を患う5人の成人男性の試験パネルを、7日間の期間にわたって3mg/日のモルヒネを髄腔内投与することによって処置する。8日目〜14日目に、モルヒネ投与を停止し、その代わりに、このパネルを30μg/日のノシセプチンの髄腔内投与によって処置する。15日目〜196日目に、1日目〜14日目の処置レジメンを繰り返し、モルヒネとノシセプチンとの間で髄腔内投与を交替する。196日の処置レジメンを通して、モルヒネおよびノシセプチン薬物のいずれに対する有意な耐性の発生を伴わず、経験的な疼痛のレベルにおける実質的な低下が生じる。
【0051】
まとめると、迅速な耐性は髄腔内モルヒネに対して生じ、そして非常に迅速な耐性は髄腔内ノシセプチンに対して生じる。本発明に従う、これらの薬剤の髄腔内投薬の交替によって、耐性の発生までの時間は、各薬物単独と比較して劇的に増大する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態が図解および記載されているが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0053】
排他的な所有権または特権が請求される本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲に規定される。
【0054】
本発明の上記の局面およびに付随する多くの利点は、添付の図面とともに考慮した場合、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−102396(P2009−102396A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13704(P2009−13704)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願2003−510045(P2003−510045)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(502022025)オメロス コーポレイション (10)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】