説明

オピオイド鎮痛薬およびNMDAアンタゴニストを含む局所用組成物

【課題】N−メチル−D−アスパラギン酸レセプターアンタゴニストの局所薬学的組成物を単独でか、または末梢無痛(アナルゲジア:痛覚脱失)についてのオピエートレセプターを介して機能する鎮痛薬と併用して、およびこの鎮痛薬への耐性の発達を伴わないかまたはこの鎮痛薬への最小の耐性を伴う、疼痛の処置のための局所用薬学的組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト、およびオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬、ならびに薬学的に受容可能な局所賦形剤を含む、局所用薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1998年7月16日に出願された仮米国出願第60/092,982号に対する優先権を主張する。仮米国出願第60/092,982号は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
本発明は、The National Institute of Healthによる助成金番号DA07242、DA00220およびCA08748の下で政府に支持されて行われた。合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、N−メチル−D−アスパラギン酸レセプターアンタゴニストの局所薬学的組成物を単独でか、または末梢無痛(アナルゲジア:痛覚脱失)についてのオピエートレセプターを介して機能する鎮痛薬と併用して、およびこの鎮痛薬への耐性の発達を伴わないかまたはこの鎮痛薬への最小の耐性を伴う、疼痛の処置のための局所用薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
モルフィン(モルヒネ)は、重要な中心的作用部位を有する強力なミュー(μ)オピオイドレセプターアゴニストである(ReisineおよびPasternak、1996)。末梢の機構もまた報告されており、そしてそれらの重要性は、徐々に認識され始めている(Steinら、1995;BarberおよびGottschlich、1992;Jorisら、1987;JunienおよびWettstein、1992)。末梢鎮痛薬は、疼痛の臨床処置において多数の潜在的利点、特に、代表的には全身投与に伴って見られる副作用(例えば、便秘および鎮静)の制限を有する。尾において局所的に与えると、モルフィン(モルヒネ)および他のオピオイドは、有用な鎮痛薬であり、単独で末梢性または中心部位で相乗性のいずれかで作用する(Kolesnikovら、1996)。多くの点で、これらの研究は、臨床調査と類似する(Stein、1993;Dahlら、1990;Dalsgaardら、1994;Heardら、1992;Jorisら、1987;Khouryら、1992;Maysら、1987;Rajaら、1992)。末梢機構はまた、全身性モルフィン耐性に関連付けられている(Kolesnikovら、1996)。初期研究は、全身性モルフィン耐性が、脊髄または脊柱上のいずれかで与えられるモルフィンに対する感受性を変更しないことを報告した(Roerigら、1984)。本発明者らはまた、効力が、慢性モルフィン投薬後に脊髄または脊柱上でのモルフィンについて変化しないままであることを見出したが、末梢でのその効力における顕著な減少が観察された(Kolesnikovら、1996)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、局所投与されるN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストを提供し、オピエートレセプターを介して、そして耐性阻害および/または鎮痛薬に対する耐性反転のために機能する鎮痛薬を用いて、より効率的な末梢無痛(アナルゲジア)を得るための方法および組成物に関する。
【0006】
本発明は、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストを単独でか、またはオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬と併用して、および薬学的に受容可能な局所用賦形剤を含む、局所用薬学的組成物を提供する。
【0007】
本発明の別の局面は、哺乳動物に無痛(アナルゲジア)を提供する方法であり、この方法は、オピエートレセプターを通じて機能する鎮痛薬の鎮痛薬の全身投与または局所投与を含み、そしてこの鎮痛薬は、耐性を減弱または耐性を阻害する量の少なくとも1つのN−メチル−D−アスパラギン酸レセプターアンタゴニストのこの哺乳動物への局所投与の前、同時、または後に投与される。
【0008】
本発明の別の局面は、オピエートレセプターを通じて機能する鎮痛薬で処置された哺乳動物において耐性を逆転(リバース)させる方法であって、この方法は、有効な耐性を逆転(リバース)させる量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストを局所する工程を包含する。
【0009】
本発明はさらに、薬学的な耐性低減性または耐性阻害性の鎮痛キットを提供し、このキットは、以下:
(A)1つのオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬を含む局所用または全身用の薬学的組成物;および
(B)少なくとも1つの耐性低減性または耐性阻害性のN−メチル−D−アスパラギン酸レセプターアンタゴニストを含む局所用薬学的組成物を備える。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 少なくとも1つのN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト、およびオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬、ならびに薬学的に受容可能な局所賦形剤を含む、局所用薬学的組成物。
(項目2) 少なくとも1つの鎮痛薬を含み、該鎮痛薬は、オピエート、オピエート誘導体、オピオイド、エンケファリン、エンドルフィン、および合成オピオイドペプチドからなる群より選択される、項目1に記載の局所用薬学的組成物。
(項目3) 前記オピオイドが、エチルモルフィン、ヒドロモルフィン、モルフィン、オキシモルフィン、コデイン、レボルファノール、オキシコドン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、フェンタニール、スフェンタニル、ロフェンタニル、モルフィン−6−グルクロニドおよびブプレノルフィンからなる群より選択される、項目2に記載の局所用薬学的組成物。
(項目4) 前記エンケファリンが、[D−Ala2、MePhe4、Gly(ol)5]エンケファリン、およびエンドルフィンからなる群より選択される、項目2に記載の局所用薬学的組成物。
(項目5) 前記鎮痛薬がモルフィンである、項目1に記載の局所用薬学的組成物。
(項目6) 前記NMDAレセプターアンタゴニストが、デキストロメトルファン、デキストロルファン、ケタミン、ピロロキノリンキノン,シス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、MK801、メマンチン、およびそれらの混合物、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目1に記載の局所用薬学的組成物。
(項目7) さらに、局所麻酔薬を含む、項目1に記載の局所用薬学的組成物。
(項目8) 前記局所麻酔薬が、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、ロピバカイン、テトラカインおよびベンゾカインからなる群より選択される、項目7に記載の局所用薬学的組成物。
(項目9) 哺乳動物に局所無痛を提供する方法であって、該方法は、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬の局所投与の前、同時、または後に、耐性減弱用量または耐性予防用量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストを局所投与する工程を含む、方法。
(項目10) 前記NMDAレセプターアンタゴニストが、デキストロメトルファン、デキストロルファン、ケタミン、ピロロキノリンキノン,シス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、MK801、メマンチン、およびそれらの混合物、ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記鎮痛薬が、オピエート、オピエート誘導体、オピオイド、エンケファリンおよびエンドルフィンからなる群より選択される、項目9に記載の方法。
(項目12) 前記オピオイドが、エチルモルフィン、ヒドロモルフィン、モルフィン、オキシモルフィン、コデイン、レボルファノール、オキシコドン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、フェンタニール、スフェンタニル、ロフェンタニル、モルフィン−6−グルクロニドおよびブプレノルフィンからなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記エンケファリンが、[D−Ala2、MePhe4、Gly(ol)5]エンケファリン、およびエンドルフィンからなる群より選択される、項目9に記載の方法。
(項目14) 前記NMDAレセプターアンタゴニストが、約0.1%〜約5%の用量で投与される、項目9に記載の方法。
(項目15) 鎮痛薬に対する耐性が事前に生じている哺乳動物に無痛を提供する方法であって、該方法は、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬の局所的投与または全身的投与と同時またはその後に、有効な耐性逆転用量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストを局所投与する工程を含む、方法。
(項目16) 以下:
(a)1つのオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬を含む局所用または全身用の薬学的組成物;および
(b)少なくとも1つの耐性阻害NMDAレセプターアンタゴニストを含む局所用薬学的組成物、
を含む、薬学的耐性阻害鎮痛薬キット。
(項目17) 哺乳動物に無痛を提供する方法であって、該方法は、オピエートレセプターを通じて機能する第2の鎮痛薬の全身的投与または髄腔内投与の前、同時、または後に、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬を局所的投与する工程を包含する、方法。
(項目18) 耐性減弱用量または耐性予防用量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストの局所投与をさらに包含する、項目17に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも1つのN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストを単独でか、またはオピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬と併用して、および薬学的に受容可能な局所用賦形剤を含む、局所用薬学的組成物を提供する。
【0011】
本発明における使用のためのN−メチル−D−アルパラギン酸レセプターアンタゴニストとしては、以下のようなモルフィナン(morphinan)が挙げられるがこれらに限定されない:デキストロメトルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)およびデキストロルファン((+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナン)、MK−801((5R,10S)−(+)−5−メチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロハプテン−5,10−イミンハイドロゲンマレエート)、ケタミン(2−(2−クロロフェニル)−2−(メチルアミノ)シクロヘキサノン)、ピロロキノリンキノンおよびシス−4−(ホスホノメチル)−2−ピペリジンカルボン酸、メマンチン(3,5−ジメチル−9−アダマンタナミンヒドロクロリド)、それらの混合物および薬学的に受容可能なそれらの塩など。デキストロメトルファンを除いて、多くの近年のNMDAレセプターアンタゴニストは、絶大な精神模倣(psychomimetic)副作用に起因して全身的臨床的使用のために最適というわけではなかった。しかし、このようなNMDAレセプターアンタゴニストは、本発明において局所用処方物において用いられ得る。これらのNMDAレセプターアンタゴニストの局所的使用は、制限的副作用を生じることなく、鎮痛薬に対する耐性発達の干渉および減弱化を可能にする。局所用処方物において用いられ得るNMDAレセプターアンタゴニストとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:MK801、デキストロメトロファン、ケタミン、メマンチン、デキストロファン、それらの混合物および薬学的に受容可能なそれらの塩、ピロロキノリンキノン、シス−4−(ホスホノ−メチル)−2−ピペルジンカルボン酸、それらの混合物および薬学的に受容可能なそれらの塩など。
【0012】
本発明において用いられ得る鎮痛薬は、少なくとも1つの型のオピエートレセプターの活性化を通じて無痛(アナルゲジア)を提供する鎮痛薬である。本発明の鎮痛性成分によって活性化され得るオピエートレセプターとしては、以下のいずれか1つまたは組合せが挙げられるがこれらに限定されない:δオピエートレセプター、κオピエートレセプターおよびミュー(μ)オピエートレセプター。これらの鎮痛薬としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:オピエート、オピエート誘導体、および合成オピオイド、内因性もしくは合成のオピオイドペプチド(例えば、エンケファリン、エンドルフィン)ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩。具体的な例としては、以下が挙げられる:エチルモルフィン、ヒドロモルフィン、モルフィン、コデイン、オキシモルホン、[D−Ala2,MePhe4,Glycol)5]エンケファリン(DAMGO)、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ヒドロモルフィン、フェンタニール、スフェンタニル、ペンタゾシン、ナルブフィン、ナロルフィン、ヘロイン、レボルファノール、レバロルファン、メタドン、メペリジン、コカイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブトルファノール、およびそれらの薬学的に受容可能な塩など。
【0013】
必要に応じて、本発明の局所用薬学的組成物は、リドカイン、ブピバカイン、メプリバカイン(meprovacaine)、ロピバカイン、テトラカイン、ベンゾカインなどを含むがこれらに限定されない局所麻酔薬をさらに含み得る。
【0014】
本明細書中で用いられる場合、本発明の処置方法によって利益を受け得る哺乳動物は、疼痛についての処置の必要がある任意の温血動物である。哺乳動物としては、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウマ、ウシ、ヒツジなどが挙げられるがこれらに限定されない。鎮痛薬は、疼痛の軽減を必要とする哺乳動物に提供される。この疼痛は、急性の疼痛または慢性の疼痛であり得る。鎮痛薬を必要とし得る疾患または状態としては、外傷に関連した疼痛、切断、ニューロパシー、線維筋肉痛(fibromyalgia)、熱傷(burn)、擦過傷、感染、裂傷、切開などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0015】
本発明は、麻酔性鎮痛薬の投与に関連した耐性の発生を減弱または予防するために提供される。従って、NMDAレセプターアンタゴニストは、耐性の発生を減弱するかまたは予防するかのいずれかに有効である量で投与され得る。本明細書中で用いられる場合、用語、耐性予防用量、耐性阻害量または耐性逆転用量は、麻酔性鎮痛薬の鎮痛効果を維持するおよび/または回復、もしくは少なくとも部分的に回復させるために有用なNMDAレセプターアンタゴニストの量である。
【0016】
哺乳動物に対して末梢無痛(アナルゲジア)を予防する方法では、耐性減弱用量または耐性予防用量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストが、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬の局所投与の前、この局所投与と同時またはこの局所投与後に局所的に投与される。
【0017】
哺乳動物に鎮痛薬を提供する方法の1つの実施態様では、耐性減弱用量または耐性阻害用量のNMDAレセプターアンタゴニストであるケタミンが、オピエート鎮痛薬であるモルフィンの局所投与の前に、この局所投与と同時にまたはこの局所投与後に局所的に投与される。
【0018】
哺乳動物に鎮痛薬を提供する方法の別の実施態様では、耐性阻害用量または耐性逆転用量のNMDAレセプターアンタゴニストであるデキストロメトロファンが、オピエート鎮痛薬であるモルフィンの局所投与の前に、この局所投与と同時にまたはこの局所投与後に局所的に投与される。
【0019】
本発明の局所用薬学的組成物の投与は、NMDAレセプターアンタゴニストを単独でか、または有効量で局所用処方物の鎮静薬との併用で含む単一投薬単位の形態においてであり得る。
【0020】
薬学的組成物中の局所用NMDAレセプターアンタゴニストの濃度は、混合物中で約0.1重量%〜約5重量%の範囲であるが、量は、用いられる特定のアンタゴニストおよび哺乳動物に投与される特定の鎮痛薬に依存して変動し得る。局所用NMDAレセプターアンタゴニストの濃度は、有効な無痛(アナルゲジア)を提供するために必要とされる鎮痛剤の濃度に対して用量を低下させる効果を提供する。例えば、鎮痛剤の濃度は、局所用NMDAレセプターアンタゴニストとの併用で用いられる場合、この鎮痛薬の局所用投与のためには約1.0重量%〜約10重量%の範囲で、この鎮痛薬の全身投与のためには約0.1mg/kg体重〜約0.2mg/kg体重の範囲で、そしてこの鎮痛剤の髄腔内投与のためには約1〜5mgの範囲で提供され得る。
【0021】
局所用組成物の特定の用量は、例えば、1日あたり2〜3回、またはオピエートレセプターを通じて機能する鎮痛薬を与えられる哺乳動物において耐性を予防、阻害もしくは逆転させるために充分な任意の期間提供され得る。
【0022】
局所用薬学的組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、アロエベラ、プロピレングリコール、DMSO、レシチン(lecithine)基剤などを用いて、水溶液、ローション、ゲル、クリーム軟膏、接着性フィルムなどとして処方され得る。本発明において用いる場合、DMSOは、治療剤の全身性吸着を提供しない。ゲル賦形剤は、1以上の以下の賦形剤を含み得る:ワセリン、ラノリン(lanoline)、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤(例えば、水およびアルコール)、ならびに乳化剤および安定剤。
【0023】
水性懸濁物は、薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴム);分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン))またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸に由来する部分的エステルおよびヘキシトールとの縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート(polyoxyethylene sorbitol))またはエチレンオキシドと脂肪酸に由来する部分的エステルおよびヘキトール無水物との縮合産物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート))と混合されて、組成物を含み得る。このような水性懸濁物はまた、1以上の保存剤(例えば、エチルまたはn−プロピル−p−ヒドロキシベンゾエート)を含み得る。
【0024】
水の添加による水性懸濁物の調製に適切な分散可能な粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1以上の保存剤と混合された組成物を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、既に上記のものによって例示される。
【0025】
本発明の組成物またはそのいずれかの主要な活性成分は、当該分野で公知のように、徐放投薬処方物中に提供され得る。
【0026】
本発明の局所用処方物は、末梢オピエートレセプターに対して治療効果を送達し、そして局所用処方物を中枢(脳および脊髄)オピエートレセプターに活性成分を送達する必要はない。本発明の局所用処方物は、活性成分の局所送達を提供し、そして処置された哺乳動物における処方物中の活性成分の全身送達を提供する必要はない。
【0027】
薬学的組成物の局所投与は、治療剤を局所部位に送達するために局所用に用いられる溶液、ゲル、ローション、軟膏、クリームまたは他のビヒクルの適用によって達成され得る。1つの適用手段は、処置されるべき領域に組成物をスプレーすることによる。別の実施態様では、徐放性局所用処方物を提供するパッチはまた、局所治療を投与するために用いられ得る。このパッチは、当該分野で公知のような、リザーバおよび多孔性メンブレン型または固形のマトリックスであり得る。この活性薬剤は、透過性接着層全体に分散される複数のマイクロカプセル中に存在し得る。
【0028】
鎮痛薬に対する耐性が予め存在する哺乳動物に鎮痛薬を方法の本発明の別の実施態様では、耐性逆転用量の少なくとも1つのNMDAレセプターアンタゴニストは、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬の局所投与もしくは全身投与と同時にまたはこの局所投与もしくは全身投与後に局所的に投与される。
【0029】
局所用投与のためのNMDAレセプターアンタゴニストの薬学的組成物はまた、オピエートレセプターを通じて機能する鎮痛薬を含む少なくとも1つの局所用または全身用薬学的組成物とともに、キットの形態で提供され得る。
【0030】
本発明はまた、無痛(アナルゲジア)を哺乳動物に提供する方法を包含し、この方法は、少なくとも1つの鎮痛薬の全身投与もしくは髄腔内投与の前、この全身投与もしくは髄腔内投与と同時、または全身投与もしくは髄腔内投与の後に、オピエートレセプターを通じて機能する少なくとも1つの鎮痛薬の局所投与を包含する。局所投与と鎮痛薬の全身投与または髄腔内投与との併用は、鎮痛薬の有害な副作用の付随した低下とともに、低用量の局所的鎮痛薬および低用量の全身用または髄腔内用鎮痛薬での有効かつ治療的な無痛(アナルゲジア)を提供する。併用療法において用いられる用量は、いずれかの鎮痛薬を単独で用いた場合に治療レベルの痛活脱失を達成するために必要とされる用量よりも少ない用量である。併用鎮痛薬治療において用いられる薬学的組成物における局所鎮痛薬の濃度は、約1重量%〜約10重量%の範囲である。併用鎮痛薬治療における使用のための薬学的組成物における全身用鎮痛薬の濃度は、約0.1mg/kg体重〜約0.2mg/kg体重を提供するような範囲である。局所用鎮痛薬と併用した鎮痛薬の髄腔内投与の場合、髄腔内鎮痛薬の濃度は、約1mg〜約5mgの範囲である。この治療は、耐性減弱用量または耐性予防用量の少なくとも1つの局所用NMDAレセプターアンタゴニストの投与によって補充され得る。局所用NMDAレセプターアンタゴニストは、処方物の、約0.1重量%〜約5重量%の濃度範囲で提供され得る。
【0031】
哺乳動物に無痛(アナルゲジア)を提供する方法の1つの実施態様では、局所用モルフィンが、モルフィンの全身投与もしくは髄腔内投与の前に、この全身投与もしくは髄腔内投与と同時に、またはこの全身投与もしくは髄腔内投与の後に投与される。
【0032】
特定の実施態様の上記の記載は、他者が現在の知識を適用することによって、このような特定の実施態様を、包括的着想から逸脱することなく、種々の適用のために容易に改変および/または適用し得るように、本発明の一般的性質を充分に示す。それゆえこのような適用および改変が、開示された実施態様の等価物の意味および範囲の中に含まれることが意図される。
【0033】
言及された全ての参考文献および特許は、本明細書中に参考として援用される。
【0034】
(実施例1)
(材料および方法)
雄性Crl:CD−1(ICR)BRマウス(25〜30g;Charles
River Breeding Laboratories,Bloomington,MA)を食物および水が自由に利用できる、12時間の明/暗サイクルで飼育した。試験までマウスを5つの群に入れた。[125I]NaI(1680Ci/mmol)をNew England Nuclear(Boston,MA)から購入した。モルフィン、モルフィン−6β−グルクロニド(M6G)および[D−Ala2、MePhe4、Gly(ol)5]エンケファリン(DAMGO)は、Research Technologies Branch of National Institute on Drug Abuse(Rockville,MD)からの好意により提供された。MK801をResearch Biochemicals,Inc.(Natick,MA)から購入した。
【0035】
全身性の薬物を背部の肩甲骨中央領域に皮下(s.c.)投与した。脳室内(i.c.v.)および髄腔内注射を、以前に報告されたように(Kolesnikovら、1996)、試験のそれぞれ、30分前および15分前、軽度のハロタン麻酔下で実行した。このi.c.v.注射は、3mmの深さで十字縫合の尾側2mmおよび外側2mmに投与した。一方、髄腔内注射は、腰椎穿刺により実行した。薬物を指示された薬物を含有するジメチルスルホキシド(DMSO)溶液への尾の浸漬により、尾に局所的に投与した。尾の遠位部分(3cm)を1分間、DNSO溶液に浸漬した。次いで、テールフリック(tail flick)潜時を、他に記載しない限り、薬物に浸漬された尾の領域で測定した。局所効果を確実にするために、試験をまた、薬物溶液に曝露されない尾の、より近位のセグメントでも実行した。
【0036】
無痛(アナルゲジア)を、以前に報告されたように(Kolesnikovら、1996)テールフリックアッセイで評価した。この尾を焦束光のビームに曝露し、そして曝露の潜時を測定した。ベースラインの潜時は、2.5〜3.5秒の範囲であった。最大カットオフ潜時は10秒を用い、鎮痛状態の動物での組織損傷を最小限にした。試験は、全身投与の30分後、i.c.v.もしくはi.t.注射のいずれかの15分後、または尾への局所投与の終了直後、実施した。抗侵害受容(antinociception)すなわち無痛(アナルゲジア)を、個々のマウスについてのテールフリック潜時(少なくともそのベースラインの潜時の2倍であった)で量的に規定した。群間比較をフィッシャー(Fisher)の完全検定を用いて行った。ED50値を、以前に報告されたように(Pickら、1993)Blissプログラムを用いて決定した。局所作用を確認するため、全ての試験において、本発明者らは、DMSOに浸漬された尾の領域、および曝露されていないより近位のセグメントを試験した。尾の非曝露部分からのテールフリック潜時は、ベースラインの潜時と類似していた。DMSO自体は、このモデルにおいて活性を有さなかった。DMSOに曝露された尾および曝露されていない尾の試験領域は、いずれの位置でも、有意な抗侵害受容効果を表さなかった。
【0037】
125I]モルフィンおよび[125I]DAMGOを、等モル量の[125I]NaIおよびモルフィンまたはDAMGOのいずれかを用いるクロラミンT法を用いて室温で合成した。反応を、1分後にメタ重亜硫酸ナトリウムを用いて終了させ、C18逆相SepPak(Chienら、1997)により、放射性標識したオピオイドを未反応のN125Iから分離した。放射性標識した化合物を、ヨウ素化されていない前駆体からさらに分離はしなかった。
【0038】
(実施例2)
(局所用モルフィンおよびDAMGO無痛(アナルゲジア))
本発明者らのグループによる先行研究は、尾に皮下投与されたモルフィンの強力な局所鎮痛活性を示した(Kolesnikovら、1996)。モルフィンはまた、局所的に投与された場合、強力な鎮痛薬であった。モルフィン溶液(7.5mM)に対する鎮痛応答は、経時的に漸増し、30秒後のわずか25%から、1分で50%に、そして2分後には80%に達した(データ示さず)。応答の発現は、かなり迅速であった。無痛は、オピオイド溶液から尾を取り出して1分以内に検出可能とであった(試験された最短時間)(図1a)。しかし、モルフィン応答の持続時間は、比較的短く、代表的には、30分未満しか持続しなかった。一定の曝露時間を用いて、モルフィンは用量依存性の効果を生じた(図1b;表1)。類似の結果がμ(ミュー)オピオイドペプチドDAMGOのDMSO溶液で観察された。これは、5倍を超えて強力であった(図1b;表1)。
【0039】
【表1】


そのより大きい力価に加えて、DAMGOはまた、ほぼ1時間持続する、より長い作用持続時間を有していた(図1a)。モルフィンと同様、ピークのDAMGO作用は、DMSO溶液から取りだした直後にみられた。これらの鎮痛応答は、全身性のナロキソン(1mg/kg s.c.)により容易に逆転された。このことは、この応答のオピオイド選択性を確認した(図2a)。さらに、これらの薬剤での鎮痛性応答は、オピオイド溶液に曝露されてない尾の近位部分にはみられなかった。
【0040】
この方法の選択性をさらに確認するため、本発明者らは、[125I]モルフィンまたは[125I]DAMGOのいずれかを含有する溶液への浸漬後、放射能の分布をみた(表2)。この溶液に曝露された尾の領域は、高レベルの放射能を有した。溶液に直接曝露されていない尾の、より近位部分は、この溶液に浸漬された尾の遠位部分における放射能の1%未満のレベルの放射能を有した。さらに、検出可能なレベルの放射能は、血液にも、脳にも、脊髄にも見られなかった。
【0041】
【表2】


(実施例3)
(局所モルフィン−6β−グルクロニド無痛(アナルゲジア))
尾において皮下注射により局所的に投与されたモルフィン−6β−グルクロニド(M6G)は鎮痛的であったが、それは10または30μgの用量で30%のシーリング効果(天井効果)を有した(データ示さず)。局所のパラダイムでは、M6Gは、溶液から取り出した直後にピークの効果を有する完全な鎮痛応答(図1a)およびモルフィンの力価と類似の力価(図1b;表1)を生じた。モルフィンを用いる場合、近位の尾セグメントは、無痛を示さず、そしてM6G応答は、全身的なナロキソンにより容易に逆転された(図2a)。局所投与後のM6G作用の持続時間は、DAMGOの持続時間と類似であり、そしてモルフィンの持続時間より長かった(図1a)。M6G選択性アンタゴニスト3−メトキシナルトレキソン(3MeONtx)(Brownら、1997)はまた、M6G応答を有意に低下した(図2b)。対照的に、同じ3MeONtxの用量は、モルフィンまたはDAMGOの鎮痛作用に対して不活性であった(図2b)。M6Gレセプターについて3MeONtxの選択性を支持することに加えて、これらの観察は、機能的な末梢M6Gレセプターの存在を強力に支持した。
【0042】
(実施例4)
(末梢の相乗作用/中枢の相乗作用)
本発明者らの研究室での以前の研究は、末梢のモルフィン系と中枢のモルフィン系との間の強力な相乗作用を示唆した。本発明者らはまた、局所投与後のこれらの相互作用を試験した。局所的に、モルフィンの作用は、迅速に消散し、1分での80%から、10分でわずか30%に低下した。30分では無痛は見られなかった。髄腔内または皮下のモルフィンは最小の活性な用量で、局所モルフィンの応答を顕著に増強した(図3)。これは30分を超えた時点でもっとも劇的であった。この時点で局所応答のみは完全に消失していた。これらのより長い時点では、併用での鎮痛応答は、その相加効果よりも有意に大きかった(図3b)。
【0043】
次いで、本発明者らは、脊髄モルフィンおよび全身モルフィンのED50値に対する固定用量の局所モルフィンの効果をみた(表3)。
【0044】
【表3】


局所モルフィンは、それが試験された時点(30分)で、単独では活性を有さなくとも、全身的モルフィンの鎮痛力価をほぼ7倍に増強した。局所モルフィンはまた、髄腔内モルフィンの力価をほぼ12倍に増強した。従って、これらの結果は、末梢モルフィン鎮痛系と中枢のモルフィン鎮痛系との間の増強のより早い示唆を支持する。
【0045】
(実施例5)
(末梢モルフィン耐性)
末梢系は、モルフィンの全身的投与後の耐性の生成に重要である(Kolesnikovら、1996)。尾の浸漬アプローチは、組織損傷のない、薬物の反復局所投与を可能にし、末梢モルフィン耐性の研究を容易にする。毎日の局所モルフィン(15mM)は、3日までに著しい耐性を生じ(図4)、モルフィンのED50値を9倍を超えてシフトさせた(表4)。局所耐性は、毎日の全身的薬物で見られるよりも迅速にかつ大きい程度で生じた。ここで、5日の処置は、モルフィンの用量応答を約2倍にシフトさせたのみであった。
【0046】
【表4】


全身的にモルフィンを投与されたマウスは、局所的モルフィンに対して、およびミューペプチドDAMGOに対して有意な耐性を示した(図5)。しかし、これらのマウスにおいて局所的なM6Gの鎮痛活性は変化せず残り、このことは、以前に報告された(Rossiら、1996)交差耐性の欠如を確認した。
【0047】
(実施例6)
(NMDAアンタゴニストであるMK801による末梢モルフィン耐性のブロック)
NMDA/一酸化窒素カスケードは、モルフィン耐性の生成において重要な役割を果たす(Kolesnikovら、1993)。この系のブロックは、無痛を妨害することなく、モルフィン耐性の発生を妨げる。全身的に投与されたNMDAアンタゴニストMK801はまた、局所モルフィンに対する耐性の発生を妨げた(図6a)。局所MK801はまた、全身性薬物と同様に効果的にモルフィン耐性をブロックした(図6a)、が髄腔内MK801は効果的でなかった。局所MK801作用は、用量依存性であり、0.3mMで効果的に耐性をブロックした(図6b)。
【0048】
さらに、局所的MK801は、事前に樹立された耐性を逆転させ得る(図6c)。3日間の局所モルフィン単独でのマウスの処置後、鎮痛応答は排除された。処置レジメンへのMK801の添加は、モルフィンの連続投与にもかかわらず、次の2日間にわたって鎮痛薬感受性を回復させた。より高用量のMK801は、より低用量のMK801よりもわずかに効果的であった。最初の用量後に何の効果もない、低速度の逆転は、モルフィン力価の単なる増強に対して強力に対抗した。
【0049】
(実施例7)
(NMDAアンタゴニストであるケタミンによる末梢モルフィン耐性のブロック)
毎日の局所モルフィン(15mM)は、3日目までに、完全な無痛の欠失を伴う耐性を導いた(図7Aおよび8)。全身的に投与されたNMDAレセプターアンタゴニストであるケタミンは、局所的モルフィンに対する耐性の発生を妨げたが、髄腔内ケタミンは効果がなかった(データ示さず)。モルフィンと同時投与した局所ケタミンは、用量依存性様式で全身的薬物と同様に効果的に耐性をブロックした(図7A)。低い方の用量(3.6mM)は、耐性の発現を遅延したが、高い方の用量(36mM)は効果的に耐性をブロックした。ケタミン単独は、このアッセイにおいて、認識されるほどの効果を有さなかった。
【0050】
局所的ケタミンはまた、事前に樹立された耐性を逆転した(図7B)。固定濃度での局所モルフィン単独のマウスの3日間の処置後、マウスは無痛を示さなかった。処置レジメンに対して添加されたケタミンは、モルフィンの連続投与にかかわらず、次の3日間にわたって鎮痛感受性を回復させた。
【0051】
モルフィン耐性を予防および/または逆転する局所ケタミンの能力は、作用の末梢機構を意味し、そして、ジゾシルピン(MK−801)を用いる上記の実験と類似している。機構的に、これらの観察は、末梢耐性が、末梢NMDAレセプター(おそらく、オピオイドレセプターを含有する同じ後根神経節ニューロンにある)を通じて媒介される可能性と一致する。
【0052】
(考察)
末梢オピオイド作用は、全身性モルフィンの作用における末梢性相乗作用および中枢性相乗作用の役割により示されるように、オピオイド作用の本発明者らの理解において重要性を増加し始めている(Kolesnikovら、1996)。さらに、末梢の作用部位は、全身性薬物に対する耐性の発生において主な役割を果たす。末梢機構を探求することは簡単ではない。より初期の研究は、末梢機構を試験するため、尾への局所注射を利用した。有用であったが、このアプローチは、特に反復用量を見る場合、多数の不利な点を有する。この問題を回避するための努力において、本発明者らは、アルカロイドおよびペプチドの両方に対して一般的に適用され得る局所アプローチを開発した。尾浸漬技術(tail immersion technique)は、多数の利点を有する。まず最初は、注射に対する二次的な組織損傷を伴わずに、マウスを反復して処置する能力である。このパラダイムは、局所機構について選択的であった。尾の近位領域を試験することは、どんな鎮痛応答も示さなかった。このことは、125Iオピオイドを用いる分布研究を確実にする。この研究は、薬物溶液に浸漬した領域のみに対する放射標識の局在化および血液または中枢神経系への検出可能な取り込みの非存在を記録した。同等に重要な利点は、DMSO単独がテールフリックアッセイにおいて効果を有さないことである。おそらく、このアプローチの活性は、DMSOに限定されず、そして、他の溶媒または局所クリームが用いられ得る。本発明者らは、ペプチドの局所溶液が活性であることを予期しなかったが、多数の異なるμペプチドおよびδペプチドがこのパラダイムにおいて効果的である。あきらかに、局所アプローチは、全身的にそれほど有効ではないこれらのペプチドについて臨床的な新しい可能性を開く。従って、この局所的アプローチは、末梢のオピオイド機構の試験についておよび疼痛管理における治療剤として有用なアプローチを提供する。
【0053】
末梢的には、試験されるすべてのオピオイドは有効な鎮痛薬であった。3つの、うちDAMGOが最も活性であった。モルフィンおよびM6Gの類似の力価は、末梢的にはその中枢作用と対照的である。中枢作用では、M6Gは、モルフィンよりも約100倍、活性が高い。全ての場合、オピオイド溶液に暴露されていない尾の近位セグメントは、無痛になっていなかった。このことは、オピオイド溶液に浸漬された部位についての末梢の作用部位を確認する。この応答は、ナロキソンにより容易に拮抗された。中枢的には、3−MeONtxは、モルフィン無痛への妨害なく選択的にM6G無痛を逆転させ、これはレセプター作用機構が異なることに一致する(Brownら、1997)。3−MeONtxはまた、DAMGO作用またはモルフィン作用のいずれにも影響することなく、末梢M6G鎮痛を逆転させた。従って、末梢M6G無痛は、中枢的にみられるのと同じアンタゴニスト選択性を示した。
【0054】
以前の研究は、末梢モルフィン作用と中枢モルフィン作用との間の相乗作用を示した。現在の研究は、これらのより早期の観察を確認した。全身的にかまたは脊髄にかのいずれかで投与されたモルフィンと局所モルフィンの併用は、単純な相加的相互作用で期待されるものを超える応答の顕著な増強を示した。従って、局所オピオイドが臨床的に用いられる場合、これらの結果は、局所オピオイドが全身的投与との組合せで最も効果的であることを示唆する。全身的薬物の必要用量を低下させることにより、局所的オピオイドは、オピオイド鎮痛薬と現在関連する副作用を大きく減少させ得る。
【0055】
全身的モルフィン処置での慢性用量は、耐性を導く。モルフィン耐性の部位を局在化することは困難であった。全身的モルフィンに対して耐性のマウスは、脊髄または脊柱上のいずれかに投与されたモルフィンに対して正常な感受性を示す(Roerigら、1984)が、末梢に投与されたモルフィンに対しては示さない(Kolesnikovら、1996)。実際、局所モルフィンの用量反応曲線における19倍シフトは、全身的投与後のシフトをかなり超えた。本発明者らの現在の研究は、モルフィン耐性における末梢部位の役割を支持する。慢性の局所モルフィンは非常に迅速に耐性を生じ、このことは、3日で応答を、用量反応曲線における9倍を超えるシフトに対応する検出不能レベルへ低下させる。DMSO単独を用いる慢性投与は、効果を有さなかった。全身的薬物の鎮痛等価用量に対する耐性の発現の速度は、より遅くそしてより少ない程度であった。これは、5日後用量反応曲線をわずか2倍シフトさせた。末梢モルフィンに対して耐性のマウスは、DAMGOに対して交差反応性であるが、M6Gに対しては交差反応性ではなかった。この交差耐性の欠失は、3−MeONtxによるM6G鎮痛の選択的逆転に一致し、そしてM6G作用の特有のレセプター機構に一致する。
【0056】
N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストまたは一酸化窒素シンターゼ(NOS)インヒビターは、モルフィン耐性の生成を防ぐ(TrujilloおよびAkil、1994;GutsteinおよびTrujillo,1993;Ben−Eliyahuら,1992;Kolesnikovら,1993)。これらのパラダイムにおける耐性における末梢オピオイド機構の重要性の見地から、本発明者らは、末梢NMDAアンタゴニストの役割をみた。局所的モルフィン耐性は、全身的にかまたは局所的に投与されたMK801によって効果的にブロックされたが、脊髄に投与されたMK801ではブロックされなかった。全身的MK801は、動物の至るところ(末梢部位を含む)での接近を有するが、髄腔内薬物は、中枢部位に限定されることが予期される。同様に、局所的ケタミンは、モルフィン耐性を予防および/または逆転させた。従って、末梢部位への接近を用いる処置のみが、このモデルにおいて活性であった。このことは、末梢NMDAレセプターが局所モルフィン耐性を媒介することの原因であることを意味する。近年の証拠は、末梢皮膚軸索上の興奮性アミノ酸(EAA)レセプターの存在を支持する(Carltonら、1995;Davidsonら、1997;Zhouら、1996)。さらなる研究が作用の部位を確認するために必要である。しかし、局所NMDAアンタゴニストの活性は、疼痛管理における多数の臨床的可能性を開く。多くの現在のNMDAレセプターアンタゴニストは、高度な精神模倣的(psychomimetic)副作用に起因して臨床使用に適切でない。それらの使用を局所的処方物に限定することは、限定する副作用を生じることなく耐性発現を妨害する能力を利用する手段を提供し得る。
【0057】
末梢オピオイドは明白に、無痛および耐性に重要な役割を有する。局所オピオイドが無痛のみを生じる能力および全身性薬物を強力にする能力は、臨床的に有用であると判明し得る新しいアプローチを提供する。局所ペプチドの活性はさらにこのアプローチを強化する。なぜなら、それは非μオピオイドレセプター機構を通じて作用する多数の高度に選択的な薬剤についての手段を開くからである。最終的に、末梢的に作用するNMDAアンタゴニストを用いて局所耐性をブロックする能力は、疼痛の臨床的処置における別の刺激的な進歩である。
【0058】
【表5】



【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1aおよび図1b。マウスにおける局所的オピオイド無痛。 1a):マウスの群に、2分間、モルフィン(15mM;n=20)、DAMGO(2mM;n=10)またはM6G(20mM;n=10)に対する局所曝露を与え、そしてテイルフリック(tailflick)アッセイにおいて試験した。 1b):用量応答曲線を、「方法」において記載された通りに局所的に1分間適用された、指定された化合物の各々について作成した。薬物の各用量は、少なくとも10匹のマウス/群を有していた。
【図2】図2aおよび2b。局所的ミュー(μ)無痛に対するオピオイドアンタゴニストの効果。 2a)マウスの群(n≧10)に、モルフィン(15mM)、DAMGO(2mM)またはM6G(20mM)のいずれかを局所的に1分間単独で、または鎮痛性アゴニストの20分前に背面に同時に皮下注射したナロキソン(1mg/kg、s.c.)とともに与えた。ミュー(μ)レセプターアンタゴニストであるナロキソンは、全てのアゴニストについての応答を有意に低減させた。 2b)マウスの群(n≧10)に、モルフィン(15mM)、DAMGO(2mM)またはM6G(20mM)のいずれかを局所的に1分間単独で、またはアゴニストの20分前に背面に同時に皮下注射した3−メトキシナルトレキソン(3−MeONtx;0.25mg/kg、s.c.)とともに与えた。3−MeONtxは、M6Gについての応答のみを有意に低下させた。
【図3】図3aおよび3b。局所的モルフィンと、全身用または脊髄用モルフィンとの間の相互作用。 3a)マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM;2分間)を単独で、または脊髄用(100ng、i.t.)または全身用(1mg/kg、s.c.)のいずれかのモルフィンを与えた。脊髄用モルフィン用量単独は、観察可能な作用を有さず、そして全身用用量は、10%の応答のみを生じた。30分では、局所的薬物単独に対する応答が失われた場合、併用の応答は有意に大きかった。 3b)左:マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM;2分間)を単独で、脊髄用モルフィン(100ng、i.t.)を単独で、または両方を一緒に与えた。試験を、薬物投与の10分後に行った。この時点で、局所的モルフィン単独は、30%応答を有していた。併用された投薬は、2つの個々の経路単独の合計よりも有意に活性が高かった。右:マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM)を単独で、全身用モルフィン(1mg/kg、s.c.)を単独で、または両方を一緒に与えた。試験を、薬物投与の30分後に行った。この時点で、局所的モルフィン単独は、観察可能な応答を有さなかった。併用された投薬は、2つの投薬単独の合計よりも有意に大きかった。
【図4】全身用モルフィンおよび局所的モルフィンに対する耐性。 マウスの群(n≧10)に、モルフィンを全身的に(5mg/kg、s.c.)または局所的に(15mM;1分間)のいずれかで与えた。DMSO単独は、1日目、2日目または3日目に観察可能な効果を有さなかった。3日目に、全身の群における応答は、局所の群よりも有意に大きかった。
【図5】モルフィンとDAMGOおよびM6Gとの間の交差耐性。 マウスの群(n≧10)に、モルフィン(5mg/kg、s.c.)または生理食塩水を5日間毎日与えた。6日目に、これらのマウスを、モルフィン(15mM)、M6G(20mM)またはDAMGO(2mM)に対する局所曝露(1分間)の後に試験した。慢性的モルフィン処置後のモルフィンおよびDAMGOに対する応答は、有意に減少した(p<0.01)。M6Gに対する応答の変化は存在しなかった。
【図6】図6a、6bおよび6c。局所的モルフィン耐性に対するMK801の効果。 6a)マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM;1分間)を単独で、または局所的(3mM)、全身的(0.1mg/kg、s.c.)もしくは髄腔内(1μg/i.t.)のいずれかに与えたMK801とともに与えた。3日後に、髄腔内MK801を用いてのモルフィンに対する応答が失われた(p<0.01)のと同様に、モルフィン単独に対する応答は失われた(p<0.01)。モルフィンと、全身的または局所的のいずれかのMK801との併用は、5日間、本質的に変化しないままであった。 6b)マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM;1分間)を単独で、局所的MK801を単独で(3mM)、または局所的モルフィン(15mM)を指示された濃度(0.15mM、0.3mMまたは3mM)の局所的MK801とともに与えた。3日後に、モルフィン単独に対する応答は失われた(p<0.01)。2つのより高いMK801用量は、応答性の喪失を予防した(p<0.01)が、最低用量は中間の応答を与えた。 6c)マウスの群(n≧10)に、局所的モルフィン(15mM;1分間)を単独で3日間与えた。4日目に開始して、これらのマウスに、0.3mMまたは3mMのいずれかの局所的MK801とともに局所的モルフィンを与えた。局所的MK801と局所的モルフィンとの同時投与は、以前に確立された耐性を逆転させた(p<0.01)。
【図7】図7aおよび7b。局所的モルフィン耐性に対するケタミンの効果。 7a。マウスの群(n≧20)を、1日1回、3日間にわたって、モルフィン(15mM)単独(黒丸)で、または3.6mM(三角)もしくは36mM(白丸)のいずれかのケタミンとモルフィンとの両方で局所的に処置した。ケタミン単独(36mM)は、このモデルにおいて有意な無痛を生じなかった。3日後、モルフィン単独に対する応答は失われた(p<0.001)。より低いケタミン用量(3.6mM)は、3日後のモルフィン鎮痛応答の損失を有意に低下させた(p<0.05)。より高いケタミン用量(36mM)は、6日目まで耐性を防止した(p<0.0001)。 7b。マウスの群(n≧20)に、局所的モルフィン(15mM)を単独で(黒丸)2日間与えた。3日目に開始して、2つの群のマウスに、3.6(三角)または36mM(四角)のいずれかのケタミンとともに一日用量のモルフィンを6日目まで与えた。より高いケタミン用量(36mM)は、モルフィン無痛を完全に回復させた。(p<0.0001)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される、哺乳動物に局所無痛を提供する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−246546(P2007−246546A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174667(P2007−174667)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【分割の表示】特願2000−559851(P2000−559851)の分割
【原出願日】平成11年7月15日(1999.7.15)
【出願人】(500213834)
【Fターム(参考)】