説明

オフセット印刷又は凸版印刷用の滅菌インジケータインキ組成物

【課題】高圧蒸気滅菌又はエチレンオキサイドガス滅菌の完了を明瞭な変色により確認するための滅菌インジケータの変色層を、オフセット印刷や凸版印刷により、薄く形成するのに用いられるインキ組成物を提供する。
【解決手段】滅菌インジケータインキ組成物は、芳香族基含有カルボン酸の4〜40重量部と、高圧蒸気雰囲気下及び/又はエチレンオキサイドガス雰囲気下で該芳香族基含有カルボン酸の作用で変色するチアゾールアゾ色素の1〜10重量部と、バインダーの50〜95重量部とを含むことにより、オフセット印刷又は凸版印刷に用いられる50〜1000Pの粘度に調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧蒸気又はエチレンオキサイドガスによる滅菌の可否を確認する滅菌インジケータを作製するために用いられるもので、オフセット印刷や凸版印刷に適したインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や医療器具は、無菌状態で使用するために、予め滅菌しておく必要がある。このような医療器具等の被滅菌物は、コンテナ、バッグ、シーツに封入され、医薬品の場合、オートクレーブ中での高圧蒸気雰囲気下で、また、医療器具の場合、エチレンオキサイドガス雰囲気下で、夫々滅菌処理が施される。その際、滅菌処理条件下で化学反応を起こして変色するケミカルインジケータをこれら被滅菌物間に介在させ、そのインジケータの変色を目視することにより、滅菌が十分であるかを確認している。
【0003】
特許文献1に、硫黄や硫黄化合物及び遷移金属化合物と、有機酸やその金属塩及びモノアゾ染料を含む滅菌検知用インジケータ組成物が開示されている。この組成物で印刷した変色層を有するインジケータは、高圧蒸気雰囲気下で硫黄等と遷移金属化合物とが反応して金属硫化物を生成して変色し、一方、エチレンオキサイドガス雰囲気下でそれとモノアゾ染料とが反応して有機酸等によりその速度を促進されつつ変色するというものである。
【0004】
この組成物はエチレンオキサイドガス雰囲気下での変色程度が比較的低いものであるので、この組成物を基材に厚く印刷して変色層を形成させたインジケータにして、変色層の色調の変化を認識し易くする必要があった。この組成物は主として、10〜40μm程度に印刷するスクリーン印刷及びフレキソ印刷や、版深10〜40μmのグラビア版を用いたグラビア印刷でその厚さで厚く印刷するのに適しているが、オフセット印刷や凸版印刷のように0.5〜10μm程度に非常に薄く印刷するのに適さない。
【0005】
スクリーン印刷は、インク組成物で印刷した変色層を厚く調整できる印刷方式であるため、変色層をできるだけ厚くして色調の変化を明瞭にしたインジケータを作製することができる。その反面、印刷速度が遅いため、歩留まりが悪くコストが高くなり、インジケータの末端価格を高騰させてしまう。
【0006】
また、グラビア印刷やフレキソ印刷は、印刷速度が速いため、8000m以上の大規模な印刷による製品の製造に適し、コストが低い印刷方式である。その反面、製版や印刷機の立ち上げ・調整が煩雑で多くの時間を費やしてしまうため、8000m未満の小規模な印刷によるインジケータ等の製品の製造の際には、かえってコストを高くしてしまう。さらに多数の加工工程を経た基材に印刷しなければならないので、機動性・汎用性に欠ける。
【0007】
一方、オフセット印刷や凸版印刷は、スクリーン印刷やグラビア印刷やフレキソ印刷よりも、製版が簡易であり、印刷機の調整が簡便に短時間ででき、印刷した層の厚さを非常に薄くすることができる印刷方式である。また、印刷の際に、その層を紫外線照射して乾燥させたり、半カット又は全カットしたりする多種の加工工程を併せて行うことができるため、汎用性が高く、機動性に優れ、生産性や経済性が良い。
【0008】
オフセット印刷や凸版印刷で印刷してインジケータの変色層を作製でき、しかも薄く印刷しても、高圧蒸気とエチレンオキサイドガスとの両方の雰囲気下で一層認識し易い十分な変色をする滅菌インジケータインキ組成物が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開平04−364174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、高圧蒸気滅菌又はエチレンオキサイドガス滅菌の完了を明瞭な変色により確認するための滅菌インジケータの変色層を、オフセット印刷や凸版印刷により、薄く形成するのに用いられるインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された滅菌インジケータインキ組成物は、芳香族基含有カルボン酸の4〜40重量部と、高圧蒸気雰囲気下及び/又はエチレンオキサイドガス雰囲気下で該芳香族基含有カルボン酸の作用で変色するチアゾールアゾ色素の1〜10重量部と、バインダーの50〜95重量部とを含むことにより、オフセット印刷又は凸版印刷に用いられる50〜1000Pの粘度に調整されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された滅菌インジケータインキ組成物は、請求項1に記載されたもので、前記バインダーが、ビニル樹脂、シリコン樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、クマリン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ロジン変性フェノール樹脂、及びアルキド樹脂から選ばれる少なくとも1種類の酸化重合性樹脂成分と、モノマー及び光重合開始剤を溶解している紫外線硬化性樹脂成分とのいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された滅菌インジケータインキ組成物は、請求項1に記載されたもので、前記芳香族基含有カルボン酸が、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族基を含有するものであって、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、芳香族基置換飽和脂肪族カルボン酸及び芳香族基置換不飽和脂肪族カルボン酸から選ばれる少なくともいずれか一種類であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された滅菌インジケータインキ組成物は、請求項1に記載されたもので、前記チアゾールアゾ色素が、C.I.ディスチャージレッド43、C.I.ディスチャージレッド58、C.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージブルー102、C.I.ディスチャージレッド110、C.I.ディスチャージレッド111、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、及びC.I.ディスチャージレッド206から選ばれる少なくともいずれか1種類であることを特徴とする。C.I.はカラーインデックスを意味する。
【0015】
請求項5に記載された滅菌インジケータインキ組成物は、請求項1に記載されたもので、体質顔料、コンパウンド、顔料分散剤、及び/又は界面活性剤を最大で20重量部含むことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載されたインジケータは、請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物が、基材上にオフセット印刷又は凸版印刷で印刷されて、変色層を形成していることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載された滅菌インジケータは、請求項6に記載されたものであって、前記変色層の厚さが、0.5〜10μmであることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載された滅菌確認方法は、請求項6に記載の滅菌インジケータを被滅菌物と共に、高圧蒸気及びエチレンオキサイドガスの少なくとも何れかの雰囲気下に晒し、それによる該被滅菌物の滅菌の完了に応じて該滅菌インジケータが変色することを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載された滅菌確認方法は、請求項8に記載されたものであって、前記高圧蒸気の温度が100〜135℃であり、前記エチレンオキサイドガスの濃度が500〜650mg/Lであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の滅菌インジケータインキ組成物は、高圧蒸気及びエチレンオキサイドガスのいずれに晒されても、明瞭に変色する。また、変色前後の色差が大きい。しかもこの組成物は、粘度が高いから、オフセット印刷や凸版印刷に適している。
【0021】
この組成物をオフセット印刷や凸版印刷により基材上に印刷して変色層を形成したインジケータは、高圧蒸気やエチレンオキサイドガスの雰囲気下での滅菌の完了の確認に用いることができる。このインジケータは、変色層をオフセット印刷や凸版印刷により簡便に薄く印刷できるから、生産効率がよく、安価であって経済性に優れている。
【0022】
このインジケータを用いた滅菌確認方法によれば、その滅菌の際の変色が明瞭であるから、滅菌の完了を、目視で正確に確認することができる。しかも、高圧蒸気とエチレンオキサイドガスとの何れによる滅菌の際にも、用いることができるので、わざわざ別々なインジケータを用いなくてすみ、簡便である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
滅菌インジケータインキ組成物は、芳香族基含有カルボン酸の4〜40重量部と、チアゾールアゾ色素の1〜10重量部と、バインダーの50〜95重量部と、必要に応じて溶剤や添加剤とを、混練することにより、調製される。その粘度は、バインダーや溶剤や添加剤の量の増減により、50〜1000Pに調整されている。この組成物は、オフセット印刷又は凸版印刷により基材上に印刷して、変色層を形成させるのに用いられる。
【0025】
組成物中の芳香族基含有カルボン酸が4重量部未満であると、変色層の色調の変化が不明瞭となってしまい、一方40重量部より多いと、組成物の固着力が低下するので組成物をオフセット印刷や凸版印刷により基材上に印刷するのが困難となってしまう。芳香族基含有カルボン酸が10〜35重量部であると、より好ましい。
【0026】
芳香族基含有カルボン酸として、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族モノカルボン酸、例えばベンゼンカルボン酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,3,4−トリメチル安息香酸、2,3,5−トリメチル安息香酸、2,4,5−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、3,4,5−トリメチル安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、2,3−ジメトキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸、2,4,5−トリメトキシ安息香酸;
ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族ポリカルボン酸、例えばベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、5−メチルイソフタル酸、4,5−ジメトキシフタル酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸;
ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族基置換飽和脂肪族カルボン酸、例えば4−イソプロピル安息香酸、フェニル酢酸、2−フェニルプロパン酸、3−フェニルプロパン酸、ヒドロキシ(フェニル)酢酸、ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸、(4−メトキシフェニル)酢酸、(2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸、(3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸、(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸、(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸、(3,4−ジメトキシフェニル)酢酸、(2,3−ジメトキシフェニル)酢酸、ヒドロキシジフェニル酢酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸、3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸;
ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族基置換不飽和脂肪族カルボン酸、例えば2−フェニルアクリル酸、3−フェニルアクリル酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸、3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸、3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸が挙げられる。
【0027】
組成物中のチアゾールアゾ色素が1重量部未満であると、変色層の色調が薄くなってしまい、一方10重量部より多いと、変色前後の変色層の色調がいずれも濃すぎるため、僅かな色調の変化が目視し難くなってしまう。チアゾールアゾ色素が3〜8重量部であると、変色層の色調の変化が目視し易くなるので、より好ましい。
【0028】
チアゾールアゾ色素は、C.I.ディスチャージレッド43、C.I.ディスチャージレッド58、C.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージブルー102、C.I.ディスチャージレッド110、C.I.ディスチャージレッド111、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、C.I.ディスチャージレッド206が好ましいが、中でもC.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージレッド111、C.I.ディスチャージレッド137、C.I.ディスチャージレッド206であると、一層優れた変色性能を発現するので一層好ましい。これらを、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0029】
この芳香族基含有カルボン酸及びチアゾールアゾ色素の合計が5重量部未満であると、変色層の色調の変化が不明瞭となってしまい、一方、50重量部より多いと組成物の固着力が低下するので組成物をオフセット印刷や凸版印刷で基材に印刷できなくなってしまう。この合計が15〜45重量部であると、両者が組成物内で均質に分散する結果、高いオフセット印刷適性や凸版印刷適性と、色調のバラツキがない均一性と、明瞭な色調の変化をする優れた変色性とを有する組成物が得られるので、より好ましい。
【0030】
この滅菌インジケータインキ組成物を印刷した変色層が、高圧蒸気雰囲気下、又はエチレンオキサイドガス雰囲気下で、色調の変化を起こす反応機序の詳細は、明らかでないが、以下のように推察される。
【0031】
高圧蒸気雰囲気下で、チアゾールアゾ色素が芳香族基含有カルボン酸の作用により昇華し、退色変化を起こす結果、変色層が赤色から無色乃至は黄色に変色する。一方、エチレンオキサイドガス雰囲気下で、エチレンオキサイドが、芳香族基含有カルボン酸の作用により反応促進されつつ、チアゾールアゾ色素のチアゾール基へアルキル化反応して共鳴構造が変化する結果、変色層が赤色から青色へ変色する。
【0032】
この組成物は、高圧蒸気雰囲気又はエチレンオキサイドガス雰囲気での滅菌処理条件環境下で変色するが、それ以外の環境下で色調が全く変わらないというものである。
【0033】
組成物中のバインダーは、酸化重合性樹脂成分や紫外線硬化性樹脂成分が挙げられる。
【0034】
酸化重合性樹脂成分として、例えばビニル樹脂、シリコン樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、クマリン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ロジン変性フェノール樹脂、及びアルキド樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。その中でも、ロジン変性フェノール樹脂、アルキド樹脂であると、より好ましい。
【0035】
組成物の粘度を50〜1000Pに調整するために、組成物中、この酸化重合性樹脂成分と共に、溶剤例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、ブチルセロソルブ及び酢酸エチルのような有機溶媒;桐油、アマニ油、大豆油、ヒマシ油、乾性油、及びこれらの混合物のような乾性油を、含んでいてもよい。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0036】
一方、紫外線硬化性樹脂成分として、紫外線で硬化するモノマーを溶解した樹脂が挙げられる。
【0037】
そのモノマーとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエンのエポキシ樹脂、ロジン変性ウレタン(メタ)アクリレート、脂肪酸変性アルキッド樹脂の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
組成物の粘度を50〜1000Pに調整するために、このモノマーと共に、又はこのモノマーの代わりに、紫外線で硬化する希釈モノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、又はポリエチレングリコールジアクリレートを用いてもよい。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0039】
これらのモノマーを溶解させる樹脂として、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0040】
組成物中、紫外線硬化性樹脂成分と共に、光重合開始剤が含まれていてもよい。光重合開始剤として、チオキサントン、キサントン、及びそれらのハロゲン置換体のようなカルボニル基含有多環化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル及びアセトフェノンのようなアリールケトン類;4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、イソアミル−p−ジメチルアミノアセトフェノンのようなジアルキルアミノアリールケトン類;ベンゾインのようなアシロイン類;アルキルエーテル類が挙げられる。これらを、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0041】
バインダーは、市販のものであってもよい。例えば、F−Gloss メジウム、セプター メジウム(いずれも大日本インキ化学工業株式会社製;商品名);Hy Unity Soy メジウム、FD OニューメジウムKR2、FD S メジウム TK、FD フォーム TF メジウム(いずれも東洋インキ製造株式会社製;商品名);Nouvel Maxiメジウム、Nouvel Senior Soyメジウム(いずれも大日精化工業株式会社製;商品名);No.5 UV Lカートン メジウムGW、No.5 UV L カートン OP ニス、UV STPメジウムW、UV 161 メジウム、UV 161 OP ニス(いずれも株式会社T&K TOKA製;商品名);UV ACE エクセル メジウム(久保井インキ株式会社製;商品名);UV カルトンメジウム(合同インキ株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0042】
組成物の粘度を50〜1000Pに調整するために、前記溶剤と共に、体質顔料、コンパウンド、顔料分散剤、乳化を促進させる界面活性剤のような添加剤が、組成物に含まれていてもよい。
【0043】
顔料分散剤として、例えばタルク、炭酸マグネシウム、カープレックス(塩野義製薬株式会社製)及びアエロジル(日本アエロジル株式会社製;登録商標)が挙げられる。
【0044】
界面活性剤として、例えば、脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸塩のような陰イオン界面活性剤;アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドのような非イオン界面活性剤;アミノ酸のような両性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
この組成物は、粘度が50〜1000Pに調整されている。粘度が高々50Pであるスクリーン印刷用インキ組成物よりも、オフセット印刷や凸版印刷に適している。
【0046】
例えば、この組成物を印刷版に塗布し、それを印刷物に転写して変色層をオフセット印刷で形成させる際、組成物の粘度が50P未満であると、粘度が低過ぎて、組成物が印刷版に均質に塗布されず、変色層が滲んで印刷されたり、変色層が不均一に印刷されたりする結果、変色層の色調が斑になったり、色調の変化が不明瞭となったりしてしまう。一方、組成物の粘度が1000Pを超えると、組成物中の芳香族基含有カルボン酸やチアゾールアゾ色素の分散性が悪くなる結果、組成物が不均質化し、変色層の色調が斑になったり、色調の変化が不明瞭となったり、また、芳香族基含有カルボン酸及びチアゾールアゾ色素とバインダーとが分離する結果、変色層が擦られて剥離し易くなってしまったりする。凸版印刷の場合も同様である。
【0047】
本発明の滅菌インジケータは、このインキ組成物を、基材の表面上にオフセット印刷して、変色層を形成させることにより、作製される。
【0048】
基材として、白色ポリエチレンテレフタレート(PET)タック紙、ポリプロピレン合成紙、上質紙のようなシート材が挙げられる。また、基材の裏面上に、粘着層とそれを覆う剥離紙とが付設されていてもよい。
【0049】
本発明の滅菌確認方法は、滅菌インジケータを、被滅菌物の間に介在させつつ、例えば100℃〜135℃の高圧蒸気に10分間〜60分間晒し、または濃度500〜600mg/Lのエチレンオキサイドガスに、湿度60%±20%RH、温度30〜55℃で2時間以上晒したときに、滅菌インジケータの変色層の変色により、滅菌の完了を確認する方法である。
【0050】
以下に、本発明を適用する滅菌インジケータインキ組成物及びそれを用いた滅菌インジケータの試作の例を実施例1〜6に、本発明を適用外のインキ組成物及びそれを用いたインジケータの試作の例を比較例1〜4に示す。
【0051】
(実施例1)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の24重量部、タルクの7.2重量部、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー株式会社製)の80重量部、溶剤として酢酸エチルの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を100Pに調整して、酸化重合型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0052】
なお、粘度は、JIS Z88209−1992に準拠し、JS200粘度校正用標準液によって校正されたSV型粘度計(株式会社エー・アンド・デイ製)で測定したものである。
【0053】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0054】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0055】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0056】
(実施例2)
Miketon Polyester Red BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド111)の3重量部、2−ヒドロキシ安息香酸の28重量部、タルクの7.2重量部、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー株式会社製)の80重量部、溶剤として酢酸エチルの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を500Pに調整して、酸化重合型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0057】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0058】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0059】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0060】
(実施例3)
Miketon Polyester Red 3BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド206)の4重量部、3,5−ジヒドロキシ安息香酸の26重量部、タルクの7.2重量部、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成ポリマー株式会社製)の80重量部、溶剤として酢酸エチルの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を800Pに調整して、酸化重合型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0061】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0062】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度121℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0063】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0064】
(実施例4)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の24重量部、タルクの7.2重量部、F−Gloss メジウム(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名)の80重量部、溶剤として酢酸エチルの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を800Pに調整して、酸化重合型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0065】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0066】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0067】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0068】
(実施例5)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の24重量部、タルクの7.2重量部、エポキシアクリレート樹脂の40重量部、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート樹脂の20重量部、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンの8重量部、メチルハイドロキノンの0.1重量部、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの5重量部を混練した。この混練物に、N,N−ジメチルアクリルアミドをさらに添加して混練することにより、粘度を200Pに調整して、紫外線硬化型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0069】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷した後、紫外線にて硬化させ変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0070】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0071】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0072】
(実施例6)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の24重量部、タルクの7.2重量部、UV 161 メジウム(T&K TOKA株式会社製;商品名)の80重量部、酢酸エチルの40重量部を混練した。この混練物に、N,N−ジメチルアクリルアミドをさらに添加して混練することにより、粘度を300Pに調整して、紫外線硬化型である赤色の滅菌インジケータインキ組成物を調製した。
【0073】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷した後、紫外線にて硬化させ変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0074】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0075】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に青色へ変色した。
【0076】
(比較例1)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の24重量部、タルクの7.2重量部、メジウム(Nouvel Senior Soy メジウム、大日精化工業株式会社製)の100重量部、溶剤として酢酸エチルの50重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を20Pに調整して、酸化重合型である赤色のインキ組成物を調製した。
【0077】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0078】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に薄赤色であったインジケータの変色層が、処理後に不明瞭な薄褐色へ変色した。
【0079】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に薄赤色であったインジケータの変色層が、処理後に変色せず不明瞭な薄赤色のままであった。
【0080】
(比較例2)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の4重量部、タルクの7.2重量部、メジウム(Nouvel Senior Soy メジウム、大日精化工業株式会社製)の80重量部、溶剤としてミネラルスピリットの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を200Pに調整して、酸化重合型である赤色のインキ組成物を調製した。
【0081】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0082】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に変色せず赤色のままであった。
【0083】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に変色せず赤色のままであった。
【0084】
(比較例3)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の0.4重量部、2,3,4−トリメチル安息香酸の2.4重量部、タルクの0.7重量部、メジウム(株式会社T&K TOKA製;商品名)の100重量部、ミネラルスピリットの50重量部を混練した。この混練物に、N,N−ジメチルアクリルアミドをさらに添加して混練することにより、粘度を300Pに調整して、紫外線硬化型である薄赤色のインキ組成物を調製した。
【0085】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷した後、紫外線にて硬化させ変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0086】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に薄赤色であったインジケータの変色層が、処理後に不明瞭な薄褐色へ変色した。
【0087】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に薄赤色であったインジケータの変色層が、処理後に変色せず不明瞭な薄赤色のままであった。
【0088】
(比較例4)
Miketon Polyester Red 2BSF(株式会社ダイスタージャパン製:C.I.ディスチャージレッド88)の1.2重量部、マロン酸の20.8重量部、タルクの7.2重量部、メジウム(Nouvel Senior Soy メジウム、大日精化工業株式会社製)の60重量部、ミネラルスピリットの40重量部を混練した。この混練物から、溶剤分を揮発させることにより、粘度を200Pに調整して、酸化重合型である赤色のインキ組成物を調製した。
【0089】
オフセット実機印刷機によりインキ組成物をロール状の上質タック紙に印刷して、変色層を形成した。それをラベル状に切断し、滅菌インジケータを作製した。
【0090】
オートクレーブにインジケータを入れ、実際の高圧蒸気滅菌条件と同じく、温度134℃の高圧蒸気雰囲気下で20分間、処理した。処理前に赤色であったインジケータの変色層が、処理後に黄色へ変色した。
【0091】
エチレンオキサイドガス滅菌器に別なインジケータを入れ、実際のエチレンオキサイドガス滅菌条件と同じく、その濃度530mg/Lのエチレンオキサイドガス雰囲気下、湿度70%RH、温度50℃で、2時間、処理した。処理前に薄赤色であったインジケータの変色層が、処理後に色調の変化を目視で確認し難い不明瞭な赤紫色へ変色した。
【0092】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から明らかな通り、実施例1〜6のインジケータは、高圧蒸気又はエチレンオキサイドガス滅菌条件での処理を経たことが、目視により簡便かつ正確に確認できた。一方、比較例1〜4のインジケータは、高圧蒸気及びエチレンオキサイドガス滅菌条件での処理後を経たことが、目視では確認し難かった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の滅菌インジケータインキ組成物は、医療器具や医薬品、レトルト食品のような加工食品等の滅菌の完了を確認するインジケータを作製するのに有用である。
【0096】
この組成物でオフセット印刷や凸版印刷により印刷して変色層を形成した滅菌インジケータは、変色層として数字や文字や図柄を印刷したカード、シール又はラベルの形状にして、滅菌の完了を確認したり、その証拠として保存したりするのに、用いられる。このインジケータは、ハンドラベラーに対応したシールの形状にして貼付すると便利である。
【0097】
この滅菌インジケータを用いた滅菌確認方法は、高圧蒸気滅菌及びエチレンオキサイドガス滅菌のいずれの滅菌を確認するのにも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族基含有カルボン酸の4〜40重量部と、高圧蒸気雰囲気下及び/又はエチレンオキサイドガス雰囲気下で該芳香族基含有カルボン酸の作用で変色するチアゾールアゾ色素の1〜10重量部と、バインダーの50〜95重量部とを含むことにより、オフセット印刷又は凸版印刷に用いられる50〜1000Pの粘度に調整されていることを特徴とする滅菌インジケータインキ組成物。
【請求項2】
前記バインダーが、ビニル樹脂、シリコン樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、クマリン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ロジン変性フェノール樹脂、及びアルキド樹脂から選ばれる少なくとも1種類の酸化重合性樹脂成分と、モノマー及び光重合開始剤を溶解している紫外線硬化性樹脂成分とのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物。
【請求項3】
前記芳香族基含有カルボン酸が、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はオキソ基を有していてもよい芳香族基を含有するものであって、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、芳香族基置換飽和脂肪族カルボン酸及び芳香族基置換不飽和脂肪族カルボン酸から選ばれる少なくともいずれか一種類であることを特徴とする請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物。
【請求項4】
前記チアゾールアゾ色素が、C.I.ディスチャージレッド43、C.I.ディスチャージレッド58、C.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージブルー102、C.I.ディスチャージレッド110、C.I.ディスチャージレッド111、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、及びC.I.ディスチャージレッド206から選ばれる少なくともいずれか1種類であることを特徴とする請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物。
【請求項5】
体質顔料、コンパウンド、顔料分散剤、及び/又は界面活性剤を最大で20重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の滅菌インジケータインキ組成物が、基材上にオフセット印刷又は凸版印刷で印刷されて、変色層を形成していることを特徴とする滅菌インジケータ。
【請求項7】
前記変色層の厚さが、0.5〜10μmであることを特徴とする請求項6に記載の滅菌インジケータ。
【請求項8】
請求項6に記載の滅菌インジケータを被滅菌物と共に、高圧蒸気及びエチレンオキサイドガスの少なくとも何れかの雰囲気下に晒し、それによる該被滅菌物の滅菌の完了に応じて該滅菌インジケータが変色することを特徴とする滅菌確認方法。
【請求項9】
前記高圧蒸気の温度が100〜135℃であり、前記エチレンオキサイドガスの濃度が500〜650mg/Lであることを特徴とする請求項8に記載の滅菌確認方法。

【公開番号】特開2007−302816(P2007−302816A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133965(P2006−133965)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】