説明

オフセット印刷版およびそれを用いたオフセット印刷方法

【課題】 オフセット印刷に用いる印刷版であって、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に湿し水供給量の調整が可能なオフセット印刷版を提供する。
【解決手段】 オフセット印刷版1には、線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列する第1カラーパッチ3が形成されている。そして、第1カラーパッチ3は、レーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域31と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域32と、第2領域32の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域33とからなる少なくとも3つの領域を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷版およびそれを用いたオフセット印刷方法に関する。より詳しくは、版面にレーザー光線を直接照射して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が設けられるオフセット印刷版であって、オフセット印刷時の湿し水調整用に用いるカラーパッチが版面に形成されたオフセット印刷版に関し、該オフセット印刷版を用いて湿し水供給量を制御しながら印刷するオフセット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷とは、印刷版の画線部に付けられたインキを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷する方式である。このオフセット印刷方式で用いられる印刷版としては、PS(Pre-Sensitized)版などの平版印刷版が多用されている。
【0003】
また、近年、コンピュータを利用した製版技術の進歩に伴い、製版用フィルムを介さずに、コンピュータで作成した製版のデータに応じてレーザー光線を直接版面に照射して焼付け、現像することにより、版面に画線部および非画線部を形成するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)版も使用されるようになってきている。
【0004】
オフセット印刷方式で用いられるインキは粘性の油性インキであり、印刷版の版面上に対するインキの転移をコントロールするには、一般に湿し水と油性インキの反発を利用して行われる。印刷版の版面上においてインキが転移する画線部は、油分の受理性が高くて水分をはじく、親油性で撥水性の表面を有し、逆にインキが転移しない非画線部は、水分の受理性が高くて油分をはじく、親水性で撥油性の表面を有する。
【0005】
オフセット印刷の印刷工程において、印刷版の表面に湿し水が供給されると、撥水性の画線部は湿し水をはじき、一方、親水性の非画線部は親和力によって湿し水で覆われた状態となる。そして、印刷版の表面にインキがインキ着けロールから供給されると、画線部ではインキが付着し、一方、非画線部では水膜でインキがはじかれて付着しなくなる。
【0006】
ここで、印刷版の表面に対する湿し水の供給量が過少の場合には、非画線部が完全に湿し水で覆われなくなるため、露出した非画線部にもインキが転移して印刷物の汚損の原因となる。逆に、印刷版の表面に対する湿し水の供給量が過多の場合には、インキ中に湿し水が過剰に混入した過剰乳化状態となり、インキと湿し水との反発力が低下するため、やはり非画線部へのインキの転移や網点の太りが発生し、きれいな印刷物が得られなくなる。
【0007】
また、印刷版の表面に対する湿し水供給量が過少の状態で印刷を続けた場合、パイリング(ブランケット上にインキが堆積する現象)が発生するので、ブランケット洗浄が必要となり、印刷物を得る生産性が低下するという問題が生じる。
【0008】
したがって、平版印刷版を用いたオフセット印刷方式では、印刷版に対する湿し水の供給量が印刷物の品質および印刷物の生産性を決定するといっても過言ではないが、オフセット構成要件(印刷版表面の画線部の面積、インキの供給量、被印刷体の湿し水吸収性、印刷速度、印刷温度・湿度など)に応じて、湿し水の最適供給量が変化するため、湿し水の過不足の判断は印刷の最中に行なわなければならない。
【0009】
この印刷中の湿し水の供給量の過不足を調整するには、印刷版の版面の光沢の度合い、印刷物の紙面の汚れ、印刷物の濃度の出具合などの印刷物の仕上がり状態から総合的に判定するしかなく、その調整にはオペレータの熟練された技能と長い作業時間が必要とされてきた。
【0010】
そこで、最近では、湿し水の濃度により濃度が変化する検出パッチを印刷物の画像とともに印刷し、この検出パッチの濃度を計測しながら湿し水の供給量の制御を自動的に行う湿し水制御方法が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。このような湿し水供給量の自動制御によって、印刷中における湿し水の供給量の数値化管理が可能となる。
【0011】
【特許文献1】特開2002−355950号公報
【特許文献2】特開2006−205437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1,2に開示されるような、湿し水供給量の自動制御を実現する機構は、比較的新しいオフセット印刷機では装備されているものの、まだまだ装備されていない印刷機も数多く稼動しており、湿し水供給量の自動制御機構を装備していない印刷機においては、印刷中の湿し水供給量の調整は、オペレータの熟練された技能に頼らざるを得ない。
【0013】
したがって本発明の目的は、CTP版を用いたオフセット印刷において、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に湿し水供給量の調整が可能なオフセット印刷版、および該オフセット印刷版を用いて適正な湿し水の供給量で印刷するオフセット印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、版面にレーザー光線を直接照射して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が版面上に設けられるオフセット印刷版であって、
版面上の前記画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列するカラーパッチが形成され、
前記カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を有することを特徴とするオフセット印刷版である。
【0015】
また本発明は、版面にレーザー光線を直接照射して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が版面上に設けられるオフセット印刷版であって、
版面上の前記画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、
線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列する第1カラーパッチと、
線幅が40〜60μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、40〜60μmの間隔をあけて印刷方向に配列する第2カラーパッチとが形成され、
前記第1カラーパッチおよび第2カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を、それぞれ有することを特徴とするオフセット印刷版である。
【0016】
また本発明は、前記オフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、前記カラーパッチに対応したカラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法であって、
印刷物のカラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生するように、印刷時の湿し水供給量を決定し、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法である。
【0017】
また本発明は、前記オフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、前記第1カラーパッチおよび第2カラーパッチに対応した第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物の第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法であって、
印刷物の第1カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記第1カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応する第1カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生し、
さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記第2カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生する、または汚れが発生しないように、印刷時の湿し水供給量を決定し、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明者らは、検討を重ねた結果、印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が版面上に設けられるオフセット印刷版であって、版面上の画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、特定の線幅からなる画線によって構成され、所定の光量で焼付けられた複数の領域からなるカラーパッチが形成されたオフセット印刷版を開発した。そして、オフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、前記カラーパッチに対応したカラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて、印刷時の湿し水供給量を制御することによって、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整が可能なオフセット印刷方法を開発した。
【0019】
すなわち、本発明によれば、オフセット印刷版は、版面上の画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列するカラーパッチが形成されている。そして、カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を有する。
【0020】
このようなオフセット印刷版は、版面上のカラーパッチに対応した印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の適正な湿し水供給量を制御することが可能な印刷版であり、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整が可能なオフセット印刷版となる。このようなオフセット印刷版を用いて印刷することによって、画像に汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有する印刷物を、優れた印刷生産性で、簡単に得ることができる。
【0021】
また本発明によれば、オフセット印刷版は、版面上の画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、第1カラーパッチおよび第2カラーパッチが形成されている。第1カラーパッチは、線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列するものである。そして、第2カラーパッチは、線幅が40〜60μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、40〜60μmの間隔をあけて印刷方向に配列するものである。そして、第1カラーパッチおよび第2カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を、それぞれ有する。
【0022】
このようなオフセット印刷版は、版面上の第1および第2カラーパッチに対応した印刷物の第1および第2カラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の適正な湿し水供給量を制御することが可能な印刷版であり、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整が可能なオフセット印刷版となる。
【0023】
また本発明によれば、前記本発明のオフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、カラーパッチに対応したカラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法である。そして、印刷物のカラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成されるカラーパッチの第1領域および第2領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生するように、印刷時の湿し水供給量を決定する。そして、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことによって、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整を行うことができる。したがって、画像に汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有する印刷物を、優れた印刷生産性で、簡単に得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、前記本発明のオフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、第1カラーパッチおよび第2カラーパッチに対応した第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物の第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法である。そして、印刷物の第1カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される第1カラーパッチの第1領域および第2領域に対応する第1カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生し、さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される第2カラーパッチの第1領域および第2領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第3領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生する、または汚れが発生しないように、印刷時の湿し水供給量を決定する。そして、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことによって、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明のオフセット印刷版について説明する。図1は、本発明の第1実施形態であるオフセット印刷版1の構成を示す図である。オフセット印刷版1は、製版用フィルムを介さずに、コンピュータからの画像信号に応じてレーザー光線を直接版面に照射(露光)して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部21および非画線部22からなる画像部2が版面上に設けられる、いわゆるコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)版である。
【0026】
ここで、オフセット印刷版1においては、画線部21と非画線部22とが同一平面(版面)上に形成される。そして、画線部21は親油性(疎水性)であり、油性である印刷用インキに対して受理性が高く、水に対して受容性がないように処理されている。一方、非画線部22は親水性(疎油性)であり、水に対して受理性が高く、印刷用インキに対して受容性がないように処理されている。このような処理が施されたオフセット印刷版1を用いたオフセット印刷においては、まずオフセット印刷版1の版面上に湿し水を供給し、親水性の非画線部22に均一で薄い水の膜を形成させることが必要である。この水膜で覆われている部分は、印刷用インキの転移を阻害するため、結果として印刷用インキを親油性の画線部21のみに転移させ、このオフセット印刷版1の版面上に形成されたインキ画像は、ブランケット、次いで被印刷体に転移して印刷物が得られる。
【0027】
また、オフセット印刷版1の版面にレーザー光線を照射する露光装置としては、コンピュータからの画像信号に応じてレーザー光線を照射して、オフセット印刷版1の版面に画像を形成可能な装置であれば特に限定されない。露光装置としては、たとえば、赤外領域と近赤外領域との少なくともいずれか一方の領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査型露光装置が利用できる。レーザーとしては、ガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを用いるのが好ましい。
【0028】
走査型露光装置の走査露光方式としては、たとえば、(a)平板状保持機構に保持された印刷版に1本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版の版面全面を露光する方式、(b)固定された円筒状の保持機構の内側に円筒面に沿って保持された印刷版に、円筒内部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版の版面全面を露光する方式、(c)軸線まわり回転可能な円筒状ドラム表面に保持された印刷版に、円筒状ドラム外部から1本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版の版面全面を露光する方式、などが挙げられる。
【0029】
また、露光装置を用いて露光した後、現像処理する現像液としては、アルカリ水溶液、有機溶剤含有溶液などを用いることができる。
【0030】
アルカリ水溶液のアルカリ剤としては、たとえば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム、第二燐酸ナトリウム、第二燐酸カリウム、第二燐酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウムなどの無機アルカリ剤、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ−i−プロパノールアミン、ジ−i−プロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤などを使用できる。
【0031】
有機溶剤含有溶液の有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のもの、好ましくは5質量%以下のものが好ましく、たとえば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを使用できる。
【0032】
上記アルカリ水溶液、上記有機溶剤含有溶液などの現像液中には、必要に応じアニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性などの界面活性剤、pH緩衝剤、還元剤、有機カルボン酸、現像安定剤を含有することもできる。また、露光後のオフセット印刷版1を現像する現像処理は、この分野で常用される自動現像機を用いて行うことができる。
【0033】
本発明のオフセット印刷版1の版面上には、印刷物の画像に対応した画像部2とは異なる箇所であり、印刷方向Aと直交する方向の両端部の一方または両方に、第1カラーパッチ3が形成されている。本実施の形態では、第1カラーパッチ3は、版面上における印刷方向Aと直交する方向の両端部の両方であり、版面上における印刷方向Aの中央部に形成されている。
【0034】
第1カラーパッチ3は、線幅が15〜25μmであり、印刷方向Aと直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向Aに配列するものである。この第1カラーパッチ3は、各画線に対応した画像信号に応じてレーザー光線を照射して版面に焼付け、現像することにより形成することができる。そして、第1カラーパッチ3は、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第1領域31と、55〜75%の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第2領域32と、第1カラーパッチ第2領域32の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第3領域33とからなる3つの領域を有し、これら3つの領域が印刷方向Aと直交する方向に並んで配置されている。ここで、第1カラーパッチ第3領域33の焼付け光量は、具体的には、最低焼付け光量の10〜20%分だけ、第1カラーパッチ第2領域32の焼付け光量よりも低い光量である。本実施の形態では、第1カラーパッチ第1領域31の焼付け光量は100%であり、第1カラーパッチ第2領域32の焼付け光量は65%であり、第1カラーパッチ第3領域33の焼付け光量は50%である。
【0035】
このとき、第1カラーパッチ3における3つの領域の配置順序は特に限定されるものではない。本実施の形態では、オフセット印刷版1の版面において、印刷方向Aの下流側から見て右側端部に形成される第1カラーパッチ3が有する3つの領域は、版面の端部から中央部に向かって、第1カラーパッチ第1領域31、第1カラーパッチ第2領域32、第1カラーパッチ第3領域33の順に並んでいる。また、オフセット印刷版1の版面において、印刷方向Aの下流側から見て左側端部に形成される第1カラーパッチ3が有する3つの領域は、版面の中央部から端部に向かって、第1カラーパッチ第1領域31、第1カラーパッチ第2領域32、第1カラーパッチ第3領域33の順に並んでいる。
【0036】
また、第1カラーパッチ3が有する3つの領域のそれぞれの寸法は、版面上の第1カラーパッチ3に対応した印刷物のカラーパッチ画像における印刷汚れ具合が観察できる程度に設定されていればよい。本実施の形態では、第1カラーパッチ第1領域31、第1カラーパッチ第2領域32および第1カラーパッチ第3領域33のそれぞれにおける、印刷方向Aと直交する方向の寸法Bは20mm、印刷方向Aの寸法Cは10mmに設定されている。なお、本実施の形態では、オフセット印刷版1の寸法は、印刷方向Aと直交する方向の寸法Dが730mm、印刷方向Aの寸法Eが600mmであり、印刷物の画像に対応した画像部2の寸法は、印刷方向Aと直交する方向の寸法Fが636mm、印刷方向Aの寸法Gが469mmである。また、オフセット印刷版1を印刷機の胴部に保持させる部分の端部であるくわえ端から、オフセット印刷版1の表面における印刷用紙に対応する部分の端部である用紙端までの寸法は、35mmである。
【0037】
以上のようなオフセット印刷版1は、版面上の第1カラーパッチ3に対応した印刷物のカラーパッチ画像における印刷汚れ具合に基づいて、印刷時の適正な湿し水供給量を制御することが可能な印刷版であり、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整が可能な印刷版となる。このようなオフセット印刷版1を用いて印刷することによって、画像に汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有する印刷物を、優れた印刷生産性で、簡単に得ることができる。
【0038】
また、オフセット印刷版1の版面上の第1カラーパッチ3において、第1カラーパッチ第1領域31と第1カラーパッチ第2領域32との間にベタ部34、第1カラーパッチ第2領域32と第1カラーパッチ第3領域33との間にベタ部35を設けるのが好ましい。ベタ部34,35は、ベタ画像を焼付けて形成する。これによって、第1カラーパッチ3に対応した印刷物のカラーパッチ画像における印刷汚れ具合が判別しやすくなる。
【0039】
次に、オフセット印刷版1を用いて適正な湿し水供給量で印刷する、本発明のオフセット印刷方法について説明する。本発明のオフセット印刷方法は、本発明のオフセット印刷版1の版面に対して湿し水および印刷用インキを供給して、版面上に設けられた画像部2の画線部21に対応した画像とともに、第1カラーパッチ3の画線に対応したカラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて、印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法である。
【0040】
オフセット印刷版1を用いたオフセット印刷においては、前述したように、まずオフセット印刷版1の版面上に湿し水を供給し、版面上の親水性の非画線部22に均一で薄い水の膜を形成させることが必要である。この水膜で覆われている部分は、油性である印刷用インキの転移を阻害する。そのため、結果として印刷用インキが、版面上の親油性部分である、画線部21よび第1カラーパッチ3の画線に転移されて、インキ画像が形成される。このオフセット印刷版1の版面上に形成されたインキ画像は、ブランケット、次いで被印刷体に転移して印刷物が得られる。ここで、オフセット印刷時に使用される湿し水および印刷用インキは、特に制限されず、この分野で常用される湿し水および印刷用インキを使用できる。
【0041】
本発明のオフセット印刷方法における湿し水供給量の制御は、次のようにして行う。湿し水供給量と、第1カラーパッチ3の3つの領域の汚れには相関があり、3つの領域に対応したカラーパッチ画像の汚れを見るだけで、湿し水の供給量が適量であるかどうか判断できる。
【0042】
具体的には、湿し水の供給量が適量の場合には、印刷物のカラーパッチ画像において、オフセット印刷版1の版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域31および第1カラーパッチ第2領域32に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第1カラーパッチ第3領域33に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生する。
【0043】
湿し水の供給量が不足している場合には、第1カラーパッチ第1領域31または第1カラーパッチ第2領域32に対応するカラーパッチ画像部分にも汚れが発生する。
【0044】
湿し水の供給量が過剰の場合には、第1カラーパッチ第1領域31、第1カラーパッチ第2領域32および第1カラーパッチ第3領域33の全ての領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生しない。
【0045】
したがって、本発明のオフセット印刷方法では、印刷物のカラーパッチ画像において、オフセット印刷版1の版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域31および第1カラーパッチ第2領域32に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第1カラーパッチ第3領域33に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生するように、印刷時の湿し水供給量を決定する。
【0046】
そして、本発明のオフセット印刷方法では、前述のようにして決定した供給量で湿し水を供給して、印刷を行う。
【0047】
以上のようにして、印刷時の湿し水供給量を決定するので、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整を行うことができる。したがって、画像に汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有する印刷物を、優れた印刷生産性で、簡単に得ることができる。
【0048】
図2は、本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100の構成を示す図である。オフセット印刷版100は、前述したオフセット印刷版1と類似しており、第1カラーパッチ3の代わりに第1カラーパッチ300および第2カラーパッチ310が版面に形成されていること以外は、オフセット印刷版1と同様に構成されている。
【0049】
オフセット印刷版100の版面に形成される第1カラーパッチ300は、オフセット印刷版1の版面に形成される第1カラーパッチ3と同様に構成されており、具体的には、線幅が15〜25μmであり、印刷方向Aと直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向Aに配列するものである。そして、第1カラーパッチ300は、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第1領域301と、55〜75%の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第2領域302と、第1カラーパッチ第2領域302の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第1カラーパッチ第3領域303とからなる3つの領域を有し、これら3つの領域が印刷方向Aと直交する方向に並んで配置されている。ここで、第1カラーパッチ第3領域303の焼付け光量は、具体的には、最低焼付け光量の10〜20%分だけ、第1カラーパッチ第2領域302の焼付け光量よりも低い光量である。本実施の形態では、第1カラーパッチ第1領域301の焼付け光量は100%であり、第1カラーパッチ第2領域302の焼付け光量は65%であり、第1カラーパッチ第3領域303の焼付け光量は50%である。また、オフセット印刷版100の版面上の第1カラーパッチ300において、第1カラーパッチ第1領域301と第1カラーパッチ第2領域302との間にベタ部304、第1カラーパッチ第2領域302と第1カラーパッチ第3領域303との間にベタ部305が設けられている。
【0050】
そして、オフセット印刷版100の版面において、第1カラーパッチ300に隣接して印刷方向Aの下流側に、第2カラーパッチ310が設けられている。第2カラーパッチ310は、第1カラーパッチ300と類似しているが、画線の線幅が異なる。具体的には、第2カラーパッチ310は、線幅が40〜60μmであり、印刷方向Aと直交する方向に延びる複数の画線が、40〜60μmの間隔をあけて印刷方向Aに配列するものである。そして、第2カラーパッチ310は、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第2カラーパッチ第1領域311と、55〜75%の光量で焼付けられた第2カラーパッチ第2領域312と、第2カラーパッチ第2領域312の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第2カラーパッチ第3領域313とからなる3つの領域を有し、これら3つの領域が印刷方向Aと直交する方向に並んで配置されている。ここで、第2カラーパッチ第3領域313の焼付け光量は、具体的には、最低焼付け光量の10〜20%分だけ、第2カラーパッチ第2領域312の焼付け光量よりも低い光量である。本実施の形態では、第2カラーパッチ第1領域311の焼付け光量は100%であり、第2カラーパッチ第2領域312の焼付け光量は65%であり、第2カラーパッチ第3領域313の焼付け光量は50%である。また、オフセット印刷版100の版面上の第2カラーパッチ310において、第2カラーパッチ第1領域311と第2カラーパッチ第2領域312との間にベタ部314、第2カラーパッチ第2領域312と第2カラーパッチ第3領域313との間にベタ部315が設けられている。
【0051】
次に、オフセット印刷版100を用いて適正な湿し水供給量で印刷する、本発明のオフセット印刷方法について、図3A〜3Cを参照しながら説明する。図3A〜3Cは、本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100を用いて、適正な湿し水供給量で印刷するオフセット印刷方法について説明する図である。
【0052】
オフセット印刷版100を用いたオフセット印刷方法は、オフセット印刷版100の版面に対して湿し水および印刷用インキを供給して、版面上に設けられた画像部200の画線部210に対応した画像とともに、第1カラーパッチ300の画線に対応した第1カラーパッチ画像300a、第2カラーパッチ310の画線に対応した第2カラーパッチ画像310aを被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物の第1カラーパッチ画像300aおよび第2カラーパッチ画像310aにおける汚れ具合に基づいて、印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法である。
【0053】
オフセット印刷版100を用いたオフセット印刷方法における湿し水供給量の制御は、次のようにして行う。湿し水供給量と、カラーパッチ画像の汚れとは相関があり、カラーパッチ画像の汚れを見るだけで、湿し水の供給量が適量であるかどうか判断できる。
【0054】
具体的には、湿し水の供給量が適量の場合には、図3A−(a)に示すように、印刷物の第1カラーパッチ画像300aにおいて、オフセット印刷版100の版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301に対応する第1カラーパッチ第1領域画像301a、および版面上に形成される第1カラーパッチ第2領域302に対応する第1カラーパッチ第2領域画像302aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第1カラーパッチ第3領域303に対応する第1カラーパッチ第3領域画像303aに汚れが発生し、さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像310aにおいて、版面上に形成される第2カラーパッチ第1領域311に対応する第2カラーパッチ第1領域画像311a、版面上に形成される第2カラーパッチ第2領域312に対応する第2カラーパッチ第2領域画像312a、および版面上に形成される第2カラーパッチ第3領域313に対応する第2カラーパッチ第3領域画像313aに汚れが発生しない。
【0055】
また、図3A−(b)に示すように、印刷物の第1カラーパッチ画像300aにおいて、版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301に対応する第1カラーパッチ第1領域画像301a、および版面上に形成される第1カラーパッチ第2領域302に対応する第1カラーパッチ第2領域画像302aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第1カラーパッチ第3領域303に対応する第1カラーパッチ第3領域画像303aに汚れが発生し、さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像310aにおいて、版面上に形成される第2カラーパッチ第1領域311に対応する第2カラーパッチ第1領域画像311a、および版面上に形成される第2カラーパッチ第2領域312に対応する第2カラーパッチ第2領域画像312aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第2カラーパッチ第3領域313に対応する第2カラーパッチ第3領域画像313aに汚れが発生するような場合でも、印刷時の湿し水供給量は適量である。
【0056】
湿し水の供給量が過剰である場合には、図3B−(c)に示すように、版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301、第1カラーパッチ第2領域302、第1カラーパッチ第3領域303、第2カラーパッチ第1領域311、第2カラーパッチ第2領域312および第2カラーパッチ第3領域313の全ての領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生しない。
【0057】
湿し水の供給量が不足している場合には、図3C−(d)または図3C−(e)に示すように、版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301に対応する第1カラーパッチ第1領域画像301a、第1カラーパッチ第2領域302に対応する第1カラーパッチ第2領域画像302a、第2カラーパッチ第1領域311に対応する第2カラーパッチ第1領域画像311a、第2カラーパッチ第2領域312に対応する第2カラーパッチ第2領域画像312aの少なくともいずれか1つの領域画像部分に汚れが発生する。
【0058】
したがって、本発明のオフセット印刷方法では、印刷物の第1カラーパッチ画像300aにおいて、オフセット印刷版100の版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301に対応する第1カラーパッチ第1領域画像301a、および版面上に形成される第1カラーパッチ第2領域302に対応する第1カラーパッチ第2領域画像302aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第1カラーパッチ第3領域303に対応する第1カラーパッチ第3領域画像303aに汚れが発生し、さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像310aにおいて、版面上に形成される第2カラーパッチ第1領域311に対応する第2カラーパッチ第1領域画像311a、版面上に形成される第2カラーパッチ第2領域312に対応する第2カラーパッチ第2領域画像312a、および版面上に形成される第2カラーパッチ第3領域313に対応する第2カラーパッチ第3領域画像313aに汚れが発生しないように、印刷時の湿し水供給量を決定する。
【0059】
また、印刷物の第1カラーパッチ画像300aにおいて、版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301に対応する第1カラーパッチ第1領域画像301a、および版面上に形成される第1カラーパッチ第2領域302に対応する第1カラーパッチ第2領域画像302aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第1カラーパッチ第3領域303に対応する第1カラーパッチ第3領域画像303aに汚れが発生し、さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像310aにおいて、版面上に形成される第2カラーパッチ第1領域311に対応する第2カラーパッチ第1領域画像311a、および版面上に形成される第2カラーパッチ第2領域312に対応する第2カラーパッチ第2領域画像312aに汚れが発生せず、かつ版面上に形成される第2カラーパッチ第3領域313に対応する第2カラーパッチ第3領域画像313aに汚れが発生するように、印刷時の湿し水供給量を決定してもよい。
【0060】
そして、本発明のオフセット印刷方法では、前述のようにして決定した供給量で湿し水を供給して、印刷を行う。
【0061】
以上のようにして、印刷時の湿し水供給量を決定するので、オペレータの熟練された技能を必要とせず、誰にでも簡単に適正な湿し水供給量の調整を行うことができる。したがって、画像に汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有する印刷物を、優れた印刷生産性で、簡単に得ることができる。
【0062】
(実施例)
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
<オフセット印刷版100の作製>
印刷CTP原版(商品名:HP−F、富士フィルム株式会社製)を用いて、版面上に、メイン図柄(画線部210)として印刷品質管理パターン(サカタインクス株式会社製)、第1カラーパッチ300および第2カラーパッチ310が形成されるように、近赤外線半導体レーザーを搭載した露光機(商品名:PlateRite 8800S、大日本スクリーン株式会社製)によって、画像の露光を行った。
【0064】
次いで、現像液(商品名:DT−2、富士フィルム株式会社製)の1:99の希釈溶液を用いて自動現像機(商品名:LP−1310H−II、富士フィルム株式会社製)で現像、水洗いした後、乾燥させ、本発明のオフセット印刷版100を得た。
【0065】
<印刷条件>
印刷機:平版印刷機 三菱ダイヤ 1E−4(湿し水供給機構;ダイヤマチック、三菱重工業株式会社製)
印刷用インキ:ダイヤトーン エコピュアSOY HP J(サカタインクス株式会社製)
湿し水:サイファ AS3(サカタインクス株式会社製)
印刷用紙:オーロラL(日本製紙株式会社製)
印刷スピード: 8000枚/時
温度/湿度: 25℃/40%
【0066】
<印刷時の湿し水供給量の調整>
オフセット印刷版100の版面上に形成される第1カラーパッチ第1領域301および第1カラーパッチ第2領域302に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第1カラーパッチ第3領域303に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生し、さらに、第2カラーパッチ第1領域311および第2カラーパッチ第2領域312に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ第2カラーパッチ第3領域313に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生する、または汚れが発生しないように、印刷時の湿し水供給量を調整した。
【0067】
<印刷テスト結果>
得られた印刷物は、メイン図柄である印刷品質管理パターン画像に、汚れが発生するのが抑制されて良好な品質の画像を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態であるオフセット印刷版1の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100の構成を示す図である。
【図3A】本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100を用いて、適正な湿し水供給量で印刷するオフセット印刷方法について説明する図である。
【図3B】本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100を用いて、適正な湿し水供給量で印刷するオフセット印刷方法について説明する図である。
【図3C】本発明の第2実施形態であるオフセット印刷版100を用いて、適正な湿し水供給量で印刷するオフセット印刷方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0069】
1,100 オフセット印刷版
2,200 画像部
3,300 第1カラーパッチ
21,210 画線部
22,220 非画線部
31,301 第1カラーパッチ第1領域
32,302 第1カラーパッチ第2領域
33,303 第1カラーパッチ第3領域
310 第2カラーパッチ
311 第2カラーパッチ第1領域
312 第2カラーパッチ第2領域
313 第2カラーパッチ第3領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版面にレーザー光線を直接照射して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が版面上に設けられるオフセット印刷版であって、
版面上の前記画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列するカラーパッチが形成され、
前記カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を有することを特徴とするオフセット印刷版。
【請求項2】
版面にレーザー光線を直接照射して焼付け、現像することにより印刷物の画像に対応した画線部および非画線部が版面上に設けられるオフセット印刷版であって、
版面上の前記画線部および非画線部とは異なる所定の箇所に、
線幅が15〜25μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、15〜25μmの間隔をあけて印刷方向に配列する第1カラーパッチと、
線幅が40〜60μmであり、印刷方向と直交する方向に延びる複数の画線が、40〜60μmの間隔をあけて印刷方向に配列する第2カラーパッチとが形成され、
前記第1カラーパッチおよび第2カラーパッチは、現像後の版面に現像不良による残渣が発生しなくなるのに必要なレーザー光線の最低焼付け光量を100%としたとき、80%以上の光量で焼付けられた第1領域と、55〜75%の光量で焼付けられた第2領域と、第2領域の焼付け光量よりも低い光量であり40〜60%の光量で焼付けられた第3領域とからなる少なくとも3つの領域を、それぞれ有することを特徴とするオフセット印刷版。
【請求項3】
請求項1記載のオフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、前記カラーパッチに対応したカラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物のカラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法であって、
印刷物のカラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生するように、印刷時の湿し水供給量を決定し、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法。
【請求項4】
請求項2記載のオフセット印刷版の版面に対してインキおよび湿し水を供給して、版面上に設けられた画線部に対応した画像とともに、前記第1カラーパッチおよび第2カラーパッチに対応した第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像を被印刷体に印刷して印刷物を得て、印刷物の第1カラーパッチ画像および第2カラーパッチ画像における汚れ具合に基づいて印刷時の湿し水供給量を制御するオフセット印刷方法であって、
印刷物の第1カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記第1カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応する第1カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応するカラーパッチ画像部分に汚れが発生し、
さらに、印刷物の第2カラーパッチ画像において、オフセット印刷版の版面上に形成される前記第2カラーパッチの前記第1領域および前記第2領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生せず、かつ前記第3領域に対応する第2カラーパッチ画像部分に汚れが発生する、または汚れが発生しないように、印刷時の湿し水供給量を決定し、決定した供給量で湿し水を供給して印刷を行うことを特徴とするオフセット印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2010−69804(P2010−69804A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241712(P2008−241712)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】