説明

オレフィンコポリマー分散剤のVI(粘度指数)向上剤、潤滑剤組成物、およびそれらの使用法

【課題】 内燃エンジンの作動を改良する新規の潤滑油組成物の提供。
【解決手段】 多量の潤滑粘性のオイルと、遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ること、次いで当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーとを含んで成る潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃エンジン用の潤滑油組成物および添加剤、また当該組成物を用いてそのエンジンを作動させ、エンジンの性能を向上させる方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
分散剤の特性を有する市販のVI(粘度指数)向上剤は一般的に、すすを分散するために選択された特定のアミン、あるいはスラッジおよびワニスを分散するために選択された特定のアミンで作られる。しかし、エンジンオイル中のすべての有害物質が効果的に分散されない限り、オイルフィルターの閉塞が起こり得る。また二種類の異なったアミン分散剤を組み合わせたからといって必ずしもフィルターの閉塞の原因となるすべての有害物質の分散に効果があるとは限らない。
【0003】
また、分散剤の特性を備えたある種の市販のVI(粘度指数)向上剤には、グループIおよびグループIIの基油中で、今日のモデムエンジン(modem engine)内で生成されるレベルですすを分散する効果の高いものがある。しかしながら、高粘度指数のベースストック、即ち粘度指数が120以上であるベースストック中でのこのようなVI(粘度指数)向上剤の処理率は、効果的な分散剤性能および比較的高度なせん断安定性をもたらすためには低すぎる。
【0004】
従って、現代のエンジンに幅広い分散剤の特性をもたらし、また分散剤の特性を備えた市販のVI(粘度指数)向上剤に比べて比較的低い処理率で効果的な潤滑剤調合物および添加剤が、引き続き必要とされている。
【0005】
例示的な実施例によると、本開示はエンジンの作動性能を向上させる潤滑油組成物および内燃エンジンの作動方法を提供する。当該潤滑剤組成物には、多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上から約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%であるアシル化オレフィンコポリマーを得ることによって作られる、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが含まれる。このアシル化オレフィンコポリマーは次にアミンと反応して、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが得られる。
【0006】
別の例示的実施例では、本開示は内燃エンジンのオイル交換の間隔を延長させる方法を提示する。この方法には、多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ることによって作られる、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んだ潤滑剤組成物で、エンジンを潤滑することが含まれる。このアシル化オレフィンコポリマーは次にアミンと反応し、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが得られ、またエンジンは潤滑剤組成物を使用して作動される。
【0007】
また本開示のさらに別の例示的実施例は、内燃エンジンのオイルフィルターの閉塞を低減する方法を提示する。この方法には、多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレ
フィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ることによって作られる、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んだ潤滑剤組成物で、エンジンを潤滑することが含まれる。このアシル化オレフィンコポリマーは次にアミンと反応し、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーが得られ、またエンジンは潤滑剤組成物を使用して作動される。
【0008】
従って、この例示的実施例の主要な利点の一つは、潤滑油組成物を使用して作動するエンジン用の潤滑油中における粘度の増加が低いために、オイル交換の間隔が長くなることである。また別の利点として、エンジンの作動中に潤滑剤中に堆積する広範囲にわたる有害物質を処理するための相乗的な性能を、ある種のアミンの混合物で作られたコポリマー分散剤のVI(粘度指数)向上剤がもたらすことが挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【0009】
以下により詳しく説明するように、内燃エンジン用の潤滑油は、特定の、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを加えることによって、相乗的に向上された分散剤の特性を有する。より具体的にいうと、従来の分散剤/阻害剤(DI)パッケージを含有する潤滑油の内燃エンジンにおける用途が、下記の高度にグラフト化されたオレフィンコポリマーを、分散剤/粘度指数向上剤として組み込むことによって著しく向上される。本明細書でさらに詳しく説明されるように、このような潤滑油組成物は、内燃エンジン(例えば圧縮点火エンジンや火花点火エンジンなど)の潤滑に特に有用である。火花点火エンジンは、バイオ燃料、ガソリンの直噴、可変バルブタイミング、ターボチャージ、および後処理などで作動される。圧縮点火エンジンは、バイオ燃料、ターボチャージ、冷却排ガス再循環(EGR)、および後処理(触媒、ディーゼル微粒子除去装置、および選択接触還元を含む)などで作動される。高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含有する潤滑剤組成物は、粘度性能が向上され、その結果エンジンの磨耗保護が向上しているだけでなく、すすの分散(解凝集)、堆積コントロール、ワニスコントロール、および境界の成膜性能が向上されている。
【0010】
一つの実施例では、潤滑剤組成物のすす含有量の増加によって起こる潤滑油の濃化量を低減するために十分な量の、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成物が、潤滑剤組成物に添加される。別の実施例では、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成物は、グループIIIの基油、グループIVの基油、ガスツーリキッド基油、あるいはそれらの混合物を高濃度で含有するベースストックのような、粘度の高いベースストックに、向上されたすすの分散性と共に、高度のせん断安定性をもたらす。
【0011】
例えば2006年8月3日提出の米国特許公開番号2006/0173135に説明されているように、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンとのポリマーから得られた、あらかじめ脱水されたコポリマー基質の反応生成物として提供される。このコポリマーはアシル化剤に余ってアシル化されており、またさらにアミンと反応して多機能生成物が得られる。前述の多機能生成物は潤滑組成物中で使用され、粘度指数(VI)調整剤、分散剤、成膜向上剤、堆積コントロール剤、ワニスコントロール剤などを含む一つ以上の機能をもたらす。
【0012】
多機能オレフィンコポリマーのポリマー基質開始剤は、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンのコポリマーから得られる。当該コポリマーを作るために、エチレンとプロピレンのコポリマーが好適に使用される。本明細書における「コポリマー」には、エチレンと一つ以上のCからC23のアルファオレフィンの混和物または反応生成物、また追加的・任意的にその他のジエンまたはポリエンが、非限定的に含まれ得る。従って、本明細書における「コポリマー」にはまた、ターポリマーおよびその他のより高度な形態が含まれる。コポリマーを形成するためのプロピレンの代わりとして、あるいはターポリマーを形成するためにエチレンおよびプロピレンと組み合わせて使用するのに適した、他のアルファオレフィンには、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレン;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンのようなアルファ、ω−ジオレフィン;4−メチルブテン−1,5−メチルペンテン−1および6−メチルヘプテン−1のような分岐鎖アルファオレフィン;およびそれらの混合物が含まれる。
【0013】
上述のコポリマーを作る方法は、例えばその記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第4,863,623号、5,075,383号、および6,107,257号に記載されている。本明細書に示された特性を有するポリマー基質はまた、市販のものを入手することもできる。
【0014】
しばしばインターポリマーとして指定される、より複雑なポリマー基質はまた、三番目の成分を使用して調合されるオレフィンポリマー出発物質として使用されることもある。通常インターポリマー基質の調合に使用される、この三番目の成分は、非共役ジエンおよびトリエンのなかから選択されるポリエンモノマーである。非共役ジエン成分とは、鎖の炭素原子数が5から14のものである。例えば、ジエンモノマーは、その構造中にビニル基が存在することを特徴とし、また環状化合物およびビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンには、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ビニルノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボレン、1,5−ヘプタジエン、および1,6−オクタジエンが含まれる。インターポリマーの調合に、一つ以上のジエンの混合物が使用されることもある。ターポリマーまたはインターポリマー基質の調合に適した非共役ジエンは1,4−ヘキサジエンである。
【0015】
トリエン成分には少なくとも二つの非共役二重結合があり、また鎖中の炭素原子数は約30以下である。本開示のインターポリマーの調合に使用される典型的なトリエンには、1−イソプロピリデン−3α,4,7,7α−テトラヒドロイデン、1−イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ−イソジシクロペンタジエン、および2−(2−メチレン−4メチル−3−ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ−5−ヘプテンなどがある。
【0016】
エチレン−プロピレン、あるいはより高度のアルファオレフィンコポリマーは、約15から80モルパーセントのエチレンと約85から20モルパーセントのCからC23のアルファオレフィンから成り、一つの実施例におけるモル比は約35から75モルパーセントのエチレンと約65から25モルパーセントのCからC23のアルファオレフィン、別の実施例でのモル比は50から70モルパーセントのエチレンと50から30モルパーセントのCからC23のアルファオレフィン、また別の実施例では55から65モルパーセントのエチレンと45から35モルパーセントのCからC23のアルファオレフィンである。
【0017】
前述のポリマーのターポリマー変化形には、約0から10モルパーセントの非共役ジエンあるいはトリエンが含まれる。その他のターモノマーレベルとして1モルパーセント以下のレベルがある。
【0018】
アシル化された開始ポリマーは望ましくは油溶性であり、ゲル透過クロマトグラフィーおよびユニバーサル校正標準システムで測定された数平均分子量は約10,000から約50,000、例えば数平均分子量が12,000から40,000の直鎖または分岐ポリマーである。その他の有用な分子量は約15,000から約25,000、また約35,000から約45,000などである。
【0019】
「ポリマー」という用語は通常、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーを含む意味で使用される。このような物質は、ポリマーの基本的特性が物質的に変化しない限り、その他のオレフィン系モノマーを含むことがある。
【0020】
エチレンオレフィンコポリマーを作るのに使用される重合化反応は、従来のジーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)あるいはメタロセン触媒システムの存在下で行われる。重合化の媒体は特定されておらず、当技術分野に精通した技術者には周知の通り、溶液、スラリー、または気相などのプロセスが含まれる。溶液の重合化が行われる場合、アルファオレフィンの重合化の反応条件かで液体である、任意の好適な不活性炭化水素溶媒が使用される。好適な炭化水素溶媒の例としては、炭素原子数が5から8の直鎖パラフィンが挙げられ、ヘキサンが望ましい。芳香族炭化水素、例えばベンゼンやトルエンのような単一ベンゼン核の芳香族炭化水素、直鎖パラフィン系炭化水素と同様の範囲の沸点を有する飽和環状炭化水素、また上述の芳香族炭化水素などは特に好適である。選択される溶媒は、上述の一つ以上の炭化水素の混合物であってもかまわない。スラリー重合化が行われる場合は、重合化の液相は液体プロピレンであることが望ましい。重合化の媒体に、触媒成分を妨げるような物質が含まれていないことが望ましい。
【0021】
上述のポリマー、即ちオレフィンポリマー成分は、粉末またはペレット化されたポリマーの形状で容易に得られる。このオレフィンポリマーはまた、予混合ベールまたは予め混合された大き目の粉末凝集体のいずれかの形態で供給されることもある。
【0022】
一つの実施例で、例えば単一軸あるいは二軸の押出し機、またはバンベリーあるいは脱水の段階でポリマー基質に加熱および希望のレベルの機械的作用(かくはん)を生じさせることのできるその他のミキサーなどの押出し機に、粉末ポリマーベールあるいはその他の形態のオレフィンコポリマーが送り込まれる。また、空気の混入を最小に抑えるため、押出し機の供給部分に窒素ブランケットを維持することができる。
【0023】
当該のオレフィンコポリマーは、供給物質中の湿気を除去するため、押出し機あるいは通気孔を備えた他のミキサー内で、他の反応物質と混合される前に最初に加熱される。乾燥されたオレフィンコポリマーは、一つの実施例において、次にグラフと反応を行うため、押出し機の別の部分あるいは別の押出し機に順に送り込まれる。
【0024】
グラフトモノマーは次に、アシル化されたエチレン−アルファオレフィンポリマーを形成するため、ポリマーオレフィンコポリマーのポリマー骨格上にグラフトされる。
【0025】
好適なグラフトモノマーには、不飽和無水ジカルボン酸およびそれらに対応する酸のような、エチレン不飽和のカルボン酸物質が含まれる。これらのグラフトモノマーの例は、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第5,837,773号で説明されている。エチレン−アルファオレフィンインターポリマー上にグラフトするのに適したカルボン酸反応物には、少なくとも一つのエチレン結合、および少なくとも一つのカルボン酸あるいはその無水基、または酸化または加水分解により上記のカルボキシル基に変換することのできる極性基などが含有される。このカルボン酸反応物は、アクリル系、メタクリル系、桂皮系、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸反応物、またはこれらの二つ以上の混合物から成る群の中から選択される。不飽和エチレンコポリマーあるいはターポリマーの場合は、フリーラジカルのグラフト化のプロセス中に架橋構造を形成する傾向が低いことから、イタコン酸またはその無水物が有用である。
【0026】
エチレン不飽和のカルボン酸物質は通常、グラフト化されたポリマーに、反応物質1モ
ルにつき一つまたは二つのカルボキシル基をもたらす。つまり、メチルメタクリレートはグラフト化されたポリマーに1モルごとに一つのカルボキシル基をもたらし、また無水マレイン酸はグラフト化されたポリマーに1モルごとに二つのカルボキシル基をもたらす。
【0027】
アシル化オレフィンコポリマーを形成するためのグラフト化反応は通常、バルクあるいは溶液中のいずれかで、遊離基開始剤の助けを借りて行われる。グラフト化はオイル中に溶解した遊離基開始剤の存在下で行われることもある。オイル中に溶解した遊離基開始剤を使用することにより、アシル化基がオレフィンコポリマーの分子上により一様に分散される。
【0028】
エチレン不飽和のカルボン酸物質をポリマー骨格にグラフトするために使用される遊離基開始剤には、過酸化物、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、およびアゾ化合物、望ましくは沸点が100℃以上であり、グラフト化の温度範囲内で熱分解してフリーラジカルを生成するようなものが含まれる。これらの遊離基開始剤の代表的なものとしては、アゾブチロニトリル、過酸化ジクミル、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ビス過酸化−t−ブチル、および2,5−ジメチルヘキシ−3−イン−2,5−ビス過酸化−t−ブチルなどがある。開始剤は、反応混合物の重量を基にして、約0.005重量%から約1重量%の量で使用される。
【0029】
無溶媒あるいは実質的に無溶媒のバルクプロセスとしてのグラフト化反応を行うため、一つの実施例では、グラフトモノマーおよびオレフィンコポリマーが、押出し機、例えばワーナー・フレイダラー(Werner & Pfleiderer)社のZSKシリーズやバンベリー、またはその他のミキサーなどのような、加熱機能を備え、グラフト化ステップのために反応物質に希望のレベルの機械的作用(かくはん)を施すことのできる、単軸あるいは二軸の押出し機に送り込まれる。一つの実施例では、グラフト化は押出し機、特に二軸押出し機内で行われる。また、空気の混入を最小に抑えるため、押出し機の供給部分に窒素ブランケットが維持される。
【0030】
別の実施例では、オレフィン系カルボン酸アシル化剤が重要な混合作用なしで、例えば輸送ゾーンなどの押出し機領域内の一つの注入ポイント、または二つの注入ポイントから注入される。このような注入により、グラフト化の効果が向上され、またグラフト化されたコポリマー内のゲル濃度が低下される。
【0031】
好適な押出し機は通常、グラフト化および事前の脱水処理を行える状態で知られている。ポリマー基質の脱水とそれに続くグラフト化は、直列に設置された別々の押出し機で行われることもあるし、また一つの装置内で別々の作業を連続して行うため、複数の処置ゾーンや反応ゾーンを備えた単一の押出し機が使用されることもある。好適な押出し機の実例は、例えばそれらの記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第3,862,265号および5,837,773号に説明されている。
【0032】
アシル化オレフィンコポリマーの形成では、通常オレフィンコポリマーが押出し機や強力なミキサーまたは粉砕機などのプラスチック製の処理装置に挿入されて、少なくとも60℃、例えば150℃から240℃まで加熱され、またエチレン不飽和のカルボン酸試薬および遊離基開始剤が別々に溶融コポリマーに送り込まれ、グラフト化が開始される。この反応は、任意的に混合状態で行われて、オレフィンコポリマーのグラフト化が開始される。分子量の低減とグラフト化が同時に行われた場合の例証的な混合状況については、その記述が参照することによって本明細書に組み込まれている、米国特許第5,075,383号に記載されている。このような処理装置は通常、コポリマーの酸化を防ぎ、グラフト化反応の未反応試薬や副産物の放出を助けるため、窒素パージされている。処理装置内での滞留時間は、アシル化の希望の度合いが得られ、また通気によってアシル化されたコポリマーの浄化が行われるようにコントロールされている。通気の後、アシル化されたコポリマーを溶解するために、鉱物性あるいは合成潤滑油が任意的に処理装置に添加されることもある。
【0033】
グラフト化反応はまた、無溶媒あるいは実質的に無溶媒の環境下で行われることもある。つまりグラフト化反応は、炭化水素溶媒の存在しない状態で行われることがある。グラフト化反応中にアルカン(例えばヘキサン)のような炭化水素溶媒を回避することにより、グラフト化反応の最中に、望ましくないグラフト化副産物や不純物を形成する可能性のある、溶媒による望ましくない副反応の危険性や問題が取り除かれる、あるいは著しく減少される。また、溶媒グラフト化反応におけるグラフト化の後、減少された量の、一時的に無機能化されたポリマー(グラフト化されていないポリマー)が存在し、それによってより活性のある生成物が得られることがある。
【0034】
本開示の特定の実施例に従って除去される炭化水素溶媒として、通常本明細書に記載のグラフト化反応の反応物質よりも揮発性の高い溶媒、例えば標準大気圧の条件(即ち約14.7 lb./in)下での沸点が約150℃以下である溶媒が含まれる。除去される溶媒には、例えばCまたはそれ以下のアルカン、アルケンおよびアルキン(例えばヘキサンなど、CからCのアルカン)のような開鎖脂肪族化合物;芳香族炭化水素(例えばベンゼンやトルエンなどのベンゼン核を有する化合物);飽和環状炭化水素(例えばシクロヘキサン)のような脂環式炭化水素;ケトン;あるいはそれらの任意の組み合わせが含まれる。一つの実施例では、標準大気圧条件下で、ノナンの沸点とほぼ同じあるいはそれ以下の沸点を有するすべての溶媒が除去されることが望ましい。従来のグラフト化反応の中には、ヘキサン含有量が約15%から60%というように、かなりの量の炭化水素溶媒の存在下で行われたものもある。それに比べて、本開示の一つの実施例では、グラフト化反応量中のこれらの種類のこのような溶媒の総合量は、内容量が0.5重量%を超過することはない。
【0035】
同一の押出し機の異なった部分、あるいはグラフト化が行われる押出し機と直列に設置された別の押出し機でグラフト化が行われた場合、グラフト化されたポリマー中間体が、グラフト化の直後あるいはせん断および真空剥離(以下に詳しく説明する)の後に押出し機のダイフェースから外に出る。
【0036】
結果として得られるコポリマー中間体は、その構造内にカルボン酸アシル化官能基を任意的に有することを特徴とする、アシル化オレフィンコポリマーを含んで成る。所定のコポリマー骨格(即ちコポリマー基質)上にグラフトされるカルボン酸アシル化剤(例えば無水マレイン酸)の量が大切である。このパラメータは本明細書ではグラフト率(DOG)と呼ばれており、アシル化されたコポリマー上のアシル化剤の質量パーセンテージとしてさらに説明される。本開示の目的のため、DOGはコポリマー骨格上にグラフトされたカルボン酸アシル化剤の約1.5重量%から3.0重量%、特に2.0重量%から2.5重量%の範囲内である。
【0037】
特定の添加剤反応生成物のDOGは、酸あるいはその無水部分対コポリマーアルキル官能基の赤外線ピーク率分析、または添加剤反応生成物の滴定(全酸価/無水酸数)(TAN)のいずれかによって決定される。TANは次に、グラフト率(DOG)を推定するために使用される。
【0038】
カルボン酸反応物は、所定のコポリマー骨格上にグラフトされ、コポリマー骨格の数平均分子量単位(Mn)1000につき0.3から0.65のカルボキシル基、望ましくは数平均分子量1000につき、0.4から0.55のカルボキシル基をもたらす。例えば、Mが10,000であるコポリマー基質が、コポリマー鎖につき3から6.5のカルボキシル基またはコポリマー1モルにつき1.5から3.8モルの無水マレイン酸でグラフトされる。Mが40,000のコポリマーは、コポリマー鎖一つにつき12から26のカルボキシル基、あるいはコポリマー鎖につき6から13モルの無水マレイン酸でグラフトされる。最低限の条件を満たす分散性能を達成するために要されるレベルが官能基の最低レベルとなる。
【0039】
アシル化オレフィンコポリマー、即ちコポリマー中間体の分子量は、機械的、熱的、あるいは化学的な方法、またはそれらの組み合わせによって低減される。このようなコポリマーの分子量を低下あるいは減少させる技術は、当技術分野で一般的に知られている。数平均分子量は、シングルグレードあるいはマルチグレードの潤滑油中での仕様に適したレベルまで低減される。
【0040】
一つの実施例では、グラフト化反応が完了した際の最初のコポリマー中間体の最初の数平均分子量は約1,000から約500,000である。一つの実施例では、中間体オイル中での使用を目的とした添加剤を生成するため、コポリマー中間体の数平均分子量が、約10,000から約50,000まで低減されている。
【0041】
一方、グラフト化および高分子量オレフィンコポリマーの低減を同時に行うこともできる。別の案では、高分子量オレフィンコポリマーは、グラフト化の前に所定の分子量までまず低減される。オレフィンコポリマーの平均分子量をグラフト化の前に低減した場合、その数平均分子量は、約50,000以下、例えば約10,000から45,000まで十分に低減される。
【0042】
グラフト化の最中またはそれ以前に、コポリマー中間体またはオレフィンコポリマー供給材料の分子量を、所定の低い分子量まで減少させる処理は、通常、溶媒が存在しない状態、あるいは基油の存在下で、機械的、熱的、または化学的な方法のいずれか、あるいはそれらの組み合わせを用いて行われる。通常コポリマー中間体あるいはオレフィンコポリマーが、溶融条件の温度約250℃から約350℃まで加熱され、次にコポリマー中間体(あるいはオレフィンコポリマー)が所定の分子量まで低減されるまで、機械的なせん断、熱的あるいは化学的に誘発したへき開、あるいはそれらの方法の組み合わせで処理される。せん断は、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第5,837,773号に記載されているように、押出し機のセクション内で行うことができる。一方、溶融コポリマー中間体(あるいはオレフィンコポリマー)を加圧あるいはその他の機械的な方法で微細オリフィスから押出すことによって機械的せん断を行うこともできる。
【0043】
グラフト化反応が完了すると、未反応のカルボン酸反応物および遊離基開始剤は通常、コポリマー中間体がそれ以上感応化される前にコポリマー中間体から除去され分離される。未反応成分は、真空剥離により、例えば反応部分を真空化しかくはんしながら、揮発性の未反応グラフトモノマーおよび遊離基開始剤成分の除去に十分な時間、温度約150℃から約450℃まで加熱することによって、反応部分から除去される。真空剥離は、通気手段を備えた押出し機部分で行うこともできる。
【0044】
このコポリマー中間体は、本明細書の開示の実施例に基づいてさらなる処理が行われる前にペレット化される。コポリマー中間体のペレット化は、希望のタイミングでそれらにさらなる処理が行われるまでの間、中間体生成物を分離し、その汚染を低減する助けをする。
【0045】
コポリマー中間体は、プラスチックの加工技術で一般的に行われている様々な方法によってペレット上に形成される。このような技術には、水中でのペレット化、リボンまたはストランドによるペレット化、またはコンベヤーベルト冷却などが含まれる。コポリマーの強度がストランド形成をするために十分でない場合は、水中でのペレット化が望ましい。ペレット化の際の温度は30℃を越えてはいけない。ペレットの凝集を防ぐため、ペレット化の際に冷却水に任意的に界面活性剤が添加されることもある。
【0046】
水と急冷コポリマーペレットの混合物は、水分を除去するために、遠心ドライヤーなどのドライヤーに運ばれる。ペレットは、保存および出荷用に、任意の量で箱あるいはプラスチックの袋に収集される。周囲条件での保存および/または出荷条件によっては、ペレットが互いにくっついて凝集しがちになる場合もある。オイル中に容易で迅速に溶解する、表面積の大きな固体片を得るために、機械的な方法でペレットを粉末に砕くこともある。
【0047】
ペレット化されたコポリマー中間体は、粒のままあるいは粉末状のペレットとして供給される。ペレット化されアシル化されたコポリマー中間体は、中性溶媒オイルに溶解される。このペレットは通常、結果として得られる溶液(溶質および溶媒)の粘度に基づいて、約5重量%から約25重量%、特に約10重量%から約15重量%、より具体的には約12重量%から約13重量%の導入レベルで溶媒に溶解される。
【0048】
ペレット化されたコポリマー中間体は、窒素ブランケット下で機械的にかくはんしながら、例えば約135℃から約165℃の温度で中性である溶媒中に溶解される。この溶解された混合物は、溶解中に約4時間から16時間、不活性ガスにより噴霧される。このような処理は、適切な用量の連続かくはん容器内で行われる。
【0049】
不活性の噴霧ガスは窒素でよい。溶解および噴霧が行われる場合、これらは次に続くアミノ化の前に行われる。一つ以上の噴霧器が容器中の溶液の表面下に浸っている部分、望ましくは溶液の底の近くに位置しており、不活性ガスが溶液中で気泡化している。窒素噴霧は溶解したコポリマー中間体および溶媒オイルから水分を取り除く。重要なことに、コポリマー中間体からの水分の除去は、存在する任意のポリマー性ジカルボキシル二酸を、希望のコポリマー性のジカルボキシル無水酸の形態に戻す働きをする。
【0050】
例えば、無水マレイン酸がグラフト化モノマーとして使用される場合、ペレット化されたコポリマー中間体のある部分が、誤ってコポリマー性のコハク二酸に変形することがある。通常この変化は、より長い保存寿命の機能として起こる傾向がある。コポリマー中間体の溶解中およびアミノ化に先立つ窒素噴霧には、コポリマー性のコハク二酸を、コポリマー中間体がさらに反応して官能化(例えばアミノ化)される前に、希望の活性ポリマー性無水コハク酸の形状に変換して戻すという長所がある。結果として、後に続く処理で、より高度に官能化された活性アミノ化生成物が得られる。存在しているポリマー性コハク二酸の、活性ポリマー性無水コハク酸への変換は、溶液の粘度を測定することによって監視される。溶液の粘度は、すべて、あるいは実質的にすべてのポリマー性コハク二酸が希望のポリマー性無水コハク酸の形状に変換された後、最初の高い値から安定値にまで著しく減少する。
【0051】
中性オイルは、グループIのベースストック、グループIIのベースストック、グループIIIのベースストック、グループIV、ポリアルファオレフィン(PAO)、あるいはそれらの基油混和物の中から選択される。
【0052】
カルボン酸アシル化官能基を有する、溶解されたペレット化されたコポリマー中間体は、アミン化合物と反応させられる。当該のアミンは、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている、米国特許第4,863,623号、5,075,383号、および6,107,257号に記載されているような化合物の中から選択される。
【0053】
一つの実施例では、当該アミン化合物は、次の(a)から(e)から成る群の中から選択された芳香族アミンである。
(a)次の化学式で表されるN−アリルフェニレンジアミン:
【0054】
【化1】

【0055】
式中、Arは芳香族、Rは−−H;−−NH;−−(−−NH−アリル)−−H;−−(−−NH−アルキル)−−H;−−NH−アリルアルキル;アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリル、ヒドロアルキル、あるいはアミノアルキルなどの、炭素原子数が4から24の分岐鎖あるいは直鎖ラジカル、Rは(−−NH,−−(NH(CH−−)−−NH,−−(CH−−NH,−アリル−NHであり、式中nおよびmはそれぞれに1から10の数値、またRは水素、炭素原子数が4から24のアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリルである;
(b)次の化学式で表されるアミノカルバゾール:
【0056】
【化2】

【0057】
式中RおよびRは水素あるいは炭素原子数が1から14のアルキル、アルケニル、またはアルコキシルラジカルを表す;
(c)次の化学式で表されるアミノインドール:
【0058】
【化3】

【0059】
式中Rは水素あるいは炭素原子数が1から14のアルキルラジカルを表す;
(d)次の化学式で表されるアミノインダゾリノン:
【0060】
【化4】

【0061】
式中Rは水素あるいは炭素原子数が1から14のアルキルラジカルである;また
(e)次の化学式で表されるアミノピリミジン:
【0062】
【化5】

【0063】
式中Rは水素あるいは炭素原子数が1から14のアルキルまたはアルコキシルラジカルを表す。
【0064】
一つの実施例では、アミン化合物は、例えば以下の一般式で表されるN−アリルフェニレンジアミンであり:
【0065】
【化6】

【0066】
式中Rは水素;−−NH−アリル;−−NH−アリルアルキル;−−NH−アルキル;またはアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリル、ヒドロキシアルキル、またはアミノアルキルなどの、炭素原子数が4から24の分岐鎖あるいは直鎖ラジカル;Rは−−NH、CH−−(CH−−NH、CH−アリル−NHであり、式中nは1から10の数値、そしてRは水素、炭素原子数が4から24のアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリルである。
【0067】
本開示において特に有用な芳香族アミンは、N−アリルフェニレンジアミン、より具体的にはN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、およびN−フェニル−1,2−フェニレンジアミンである。
【0068】
オレフィンコポリマーの結合および/またはゲル化を回避するため、アミンが第1級アミン基を一つだけ含有することが望ましい。脂肪族アミンを欠いた芳香族アミンと反応し
たコポリマーは、上述のように、通常数平均分子量が約15,000から約25,0000であるコポリマーである。
【0069】
別の実施例では、当該のアミンは、上述のような芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物である。好適な脂肪族アミンは次の化学式で表される:
【0070】
【化7】

【0071】
式中、RおよびRは炭素原子数が7以下のアルキレンあるいはアルキル置換のアルキレン基;RおよびRは水素、炭素原子数が7以下のアルキル基、あるいはアミノ置換のアルキル基、さらにアルキレン基の炭素原子数が7以下であり、またnが0または1から5であるような、アルキレンジアミンまたはポリアルキレンポリアミン基を含むアミノ置換基である。当該ポリアミン反応物質は、望ましくは第1級、第2級、および第3級の塩基性窒素原子を有する。脂肪族アミン反応物質の例に、アルキレン−ポリアミン(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミンまたはペンチレンジアミン);ポリアルキレンポリアミン(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ジ(メチルエチレン)−トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラアミンジプロピレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、あるいはジペンチレンヘキサアミン);ジアルキルアミノアルキルアミン(例えばジメチルアミノメチルアミン,ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン,1,3,6−トリスアミノメチルシクロヘキサン、ジエチルアミノプロピルアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、あるいはジメチルアミノブチルアミン);第1級および第3級アミン(例えばトリス(2−アミノエチル)アミン));および第1級、第2級、および第3級のアミン(例えばトリス(2−アミノ−4−アミノブチル)アミン)などがある。使用しやすい脂肪族アミン反応物質には、ポリエチレンポリアミン、特にテトラエチレンペンタアミンを含有したポリエチレンポリアミンの混合物がある。
【0072】
脂肪族アミンと芳香族アミンの混合物がアミン反応物質として使用される場合、このアミン混合物は約40重量パーセントから約75重量パーセントの芳香族アミンと約25重量パーセントから約60重量パーセントの脂肪族アミンを含む。混合物中の脂肪族アミンが約15重量パーセント以下の場合は、芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物をアミン反応物質として使用する利点はほとんどない。芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物は、数平均分子量が約20,000以上、一般的に約35,000から約45,000であるグラフト化されたポリマーに、特に有用である。特定の実施例では、アミンの量は、ポリマー上の使用可能なカルボン酸官能基と反応するような化学量論量である。このような反応生成物は、スラッジおよびワニスの分散と相乗的にすすの分散を行う際に特に有用である。
【0073】
カルボン酸アシル化機能がグラフトされたコポリマーと、所定のアミン化合物の間の反応は、コポリマー基質の溶液を不活性条件下で加熱し、次に加熱された溶液に通常反応を起こすために混合しながらアミン化合物を加えることによって行われる。120℃から175℃に加熱されたコポリマー基質の油剤を、窒素ブランケット下で維持しながら使用するのが便利である。アミン化合物がこの溶液に加えられ、上記の条件下で反応が開始される。
【0074】
当該アミン化合物は界面活性剤で溶解され、鉱物性潤滑油あるいは合成潤滑油、またはアシル化オレフィンコポリマーを含有している溶媒溶液に添加される。アミンおよびオレフィンコポリマーの溶液は、その記述が参照することにより本明細書に組み込まれている米国特許第5,384,371号に記載されているように、不活性ガスパージ下でかくはんしながら温度120℃から200℃で加熱される。この反応は、窒素パージ下、混合反応器内で容易に行うことができる。
【0075】
アシル化オレフィンコポリマーとポリアミンとの反応に使用される界面活性剤には、(a)鉱物性潤滑油あるいは合成潤滑油と同様の溶解特性、(b)オイルの引火点を変化させないような沸点および蒸気圧特性、また(c)ポリアミンの可溶化に適した極性、を有することを特徴とした界面活性剤が含まれるが、これらに限定はされない。
【0076】
このような界面活性剤の好適な種類としては、脂肪族および芳香族ヒドロキシ化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドあるいはそれらの混合物との反応生成物が含まれる。このような界面活性剤は、通常脂肪族またはフェノール系アルコキシレートとして知られている。有用な界面活性剤には官能基、例えばアシル化オレフィンコポリマーと反応することが可能な−−OHを含有する界面活性剤が含まれる。エトキシル化ラウリルアルコール(C1225(OCHCHOH)もまた本明細書において有用である。エトキシル化ラウリルアルコールは、第9002−92−0号下に識別されている。このエトキシル化ラウリルアルコールは、最終的な多機能粘度調整剤生成物の加工助剤および粘度安定剤である。エトキシル化ラウリルアルコールは、反応混合物へのアミンの添加を促進する。これはすべてのアシル化官能基が未反応で残らないようにする反応剤である。未反応のアシル化官能基はいずれも、完成した潤滑組成物中の望ましくない粘度のドリフトの原因となる。界面活性剤はまた、多機能粘度調整剤生成物中で粘弾性反応を調整し、低温(70℃から90℃)での処理の向上を可能にする。
【0077】
使用される界面活性剤の量は、ある程度アミンを安定化する能力によって変わる。一般に、5重量%から40重量%の濃度のアミンが使用される。界面活性剤もまた、上述の濃縮物の代わりあるいはそれに加えて、完成した添加剤中の界面活性剤の濃度が10重量%またはそれ以下になるように、別に添加される。
【0078】
本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、任意の便利な方法で潤滑油中に組み込まれる。従ってこの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、希望の濃度の潤滑油内で同オレフィンコポリマーを分散または溶解させることによって、潤滑油に直接添加される。このような潤滑油中への混和は室温あるいは高温で行われる。一方、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、好適な油溶性溶媒/希釈剤(ベンゼン、キシレン、トルエン、潤滑基油および石油蒸留物など)と混和されて濃縮物を形成し、次にその濃縮物と潤滑油を混和して、最終的な組成物が得られる。このような添加剤濃縮物には一般に(活性成分(A.I.)を基に)約3重量%から約45重量%、また望ましくは約10重量%から約35重量%の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー添加剤が含まれ、また濃縮物の重量を基にして一般的に約20重量%から90重量%、望ましくは約40重量%から60重量%の基油が含まれる。
【0079】
いくつかのアミン反応物質には、染色性の種類のアミン抗酸化剤を含んでなる、高度に着色された酸化生成物を形成する傾向がある。アミノ化反応の後に油剤中に残る未反応アミンは、油剤に望ましくない、および/または安定性のない色を生じさせる。アシル化オレフィンコポリマーの色はまた、アミノ化反応の後、アシル化オレフィンコポリマーとCからC12のアルキルアルデヒド(例えばノニルアルデヒド)を反応させることにより
安定化される。例えば、アミノ化反応で使用されたのと同様の温度および圧力条件下で約2時間から約6時間、約0.2重量%から約0.6重量%の量でアルキルアルデヒド試薬が添加されたときにこの反応は進む。
【0080】
アミノ化され、色安定されたアシル化オレフィンコポリマー生成物は、その純度を増すため、バッグ式あるいはカートリッジ式のろ過作用、またはそれら両方を順番に行うことによってろ過される。
【0081】
上述のように、コポリマー中間体は溶媒がない状態で調整されることもある。また、コポリマー中間体は、グラフト化されたポリマー中間体に追加的な官能化、すなわちアミノ化や色安定化などを行うための出発物質として、ペレット化されたあるいはベールの形状で得られる。当該コポリマー中間体は、押出し機のダイフェース、あるいは同様のグラフト化反応容器から直接得られなくてもかまわない。その代わり、コポリマー中間体は、これらのさらなる官能化が行われる前に、未反応の反応物質を真空剥離し、ペレット化したものである。従って、ペレット化されたコポリマー中間体は、溶媒の存在下でグラフト化された生成物よりも(副反応生成物の原因となる)汚染物質の含有量が少ない、および/または連続した一連の工程の一部としてグラフト化反応の直後にアミノ化される(未反応成分は反応部分中に不純物として残る)。
【0082】
加えて、アミノ化に先立つ、中性オイル中に溶解したコポリマー中間体上への不活性ガスの散布には、コポリマー中間体がさらに反応させられ、官能化(例えばアミノ化)される前に、存在するポリマー性コハク二酸をもとの望ましい形態の活性ポリマー性無水コハク酸に変換して戻すという利点がある。
【0083】
また、未反応のグラフトモノマー、例えば無水マレイン酸が、グラフト化のステップの後、ペレット化や溶解に先立つ真空剥離の最中に効果的に除去されるため、アミノ化がより効果的に進む。即ち、アミンとの反応においてグラフト化されたポリマー(ポリマー中間体)と競ってしまい、官能化のレベルを下げてしまうため、未反応のグラフトモノマーの存在は、アミノ化のステップにおいては望ましくない。
【0084】
従って、本開示の実施例の多機能最終反応生産物には、不純物(即ち未反応反応物質、副反応生成物および副産物)の含有量が少なく、所定の量でより活性である。一つの実施例では、当該添加剤反応生成物には、合計で0.1重量%以下の、未反応の反応物質、副反応生成物、および反応副産物を含んでなる不純物が含まれる。残りは完全に活発なグラフト化、多機能化されたオレフィンコポリマーから成っているか、あるいは生成された化合物の活性を著しく低下させる、あるいは害することのない抗酸化剤あるいは着色剤のような、処理中に得られる少量の有益あるいは不活性の添加剤との実質的な組み合わせから成る。
【0085】
本開示の、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成化合物は、潤滑剤の特定の用法に必要とされるあるいは望まれる追加的な特性をもたらすために、任意的に後処理されることがある。後処理の技術は当技術分野では周知のものであり、ホウ素化、リン酸化、グリコール化、エチレン炭酸化、およびマレイン酸化などが含まれる。
【0086】
本明細書に記載の内燃エンジン用の潤滑油組成物には従来、組成物に必要とされる特性をもたらす、追加的な添加剤が含まれる。これらの種類の添加剤には、追加的な粘度指数向上剤、抗酸化剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、流動点降下剤、耐磨耗剤、消泡剤、乳化破壊剤、および摩擦調整剤などが含まれる。これらの添加剤は通常分散剤/阻害剤(DI)パッケージと呼ばれる状態で提供される。
【0087】
DIパッケージの一つの成分に、堆積物を除去あるいは減少させる洗浄剤と、酸中和剤あるいは防錆剤との両方として作用し、それによって磨耗や腐食を減少させエンジンライフを延長させる、金属含有あるいは灰形成洗浄剤がある。使用される洗浄剤には、油溶性、中性、および過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、およびナフテン酸塩、または金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばバリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなどの金属の、その他の油溶性カルボン酸塩が含まれる。最も一般的に使用される金属は、両方とも潤滑剤中で使用される洗浄剤に存在するカルシウムとマグネシウムであり、またカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物である。特に便利な金属洗浄剤は、TBNが20から450である中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、中性および過塩基性のカルシウムフェネート、TBNが50から450である硫化フェネート、また、中性および過塩基性のマグネシウムあるいはTBNが20から450のサリチル酸カルシウムなどである。一つの好適な潤滑油組成物中では、過塩基性であれ中性であれ、あるいはその両方であれ、洗浄剤の組み合わせを使用することができる。
【0088】
潤滑油組成物の組成中で通常有用な洗浄剤には、米国特許第6,153,565号、6,281,179号、6,429,178号、および6,429,179号に記載されているように、例えばフェネート/サリチル酸塩、スルホン酸塩/フェネート、スルホン酸塩/サリチル酸塩、スルホン酸塩/フェネート/サリチル酸塩などの混合界面活性剤システムで形成された、「ハイブリッド」洗浄剤もまた含まれる。
【0089】
分散剤は使用中に起こる酸化によってできるオイルに不溶性の懸濁物質中にとどまり、それによってスラッジの凝集や沈殿、または金属部分への堆積などが防がれる。本開示の状況において有用な分散剤には、潤滑油に添加され、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン内で使用された場合に、堆積物の形成を減少させる効果が知られている、一連の窒素含有・無灰(金属を含有しない)分散剤が含まれる。
【0090】
ポリマー性炭化水素と、不飽和カルボン酸、無水酸あるいはエステルとを反応させるプロセス、およびそのような化合物の誘導体の生成については、米国特許第3,087,936号、3,172,892号、3,215,707号、3,231,587号、3,272,746号、3,275,554号、3,381,022号、3,442,808号、3,565,804号、3,912,764号、4,110,349号、4,234,435号、5,777,025号、5,891,953号、またEP 0 382 450 B1、およびCA−1,335,895に開示されている。
【0091】
好適な分散剤組成物は、ポリアルケニル置換の無水コハク酸(例えばPIBSA)と連結比が約0.65から約1.25、望ましくは約0.8から約1.1、さらに望ましくは約0.9から約1のポリアミン(PAM)の反応性生物である、少なくとも一つのポリアルケニルスクシンイミドを含んで成るものである。本開示の状況において、「連結比」とは、PIBSA中のスクシニル基数とポリアミン反応物質中の第1級アミン基数の比率であると定義される。
【0092】
別の種類の高分子量無灰分散剤は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含んで成る。一般にこれらの生成物は、約1モルの長鎖アルキル置換モノヒドロキシベンゼンあるいはポリヒドロキシベンゼンと、約1モルから2.5モルのカルボニル化合物(例えばホルムアルデヒドとパラホルムアルデヒド)、および約0.5モルから2モルのポリアルキレンポリアミンを、例えば米国特許3,442,808号に開示されたように縮合することによって生成される。このようなマンニッヒ塩基の縮合生成物は、メタロセン触媒の重合化のポリマー生成物をベンゼン基上の置換基として含んでいることもあるし、あるいは米国特許第3,442,808号に記載された方法と同様に無水コハク酸上に置換されたこのようなポリマーを含有する化合物と反応することもある。その他の好適な分散剤は、米国特許第4,839,071号、4,839,072号、4,579,675号、3,185,704号、3,373,111号、3,366,569号、4,636,322号、4,663,064号、4,612,132号、5,334,321号、5,356,552号、5,716,912号、5,849,676号、5,861,363号、4,686,054号、3,254,025号、3,087,936号に記載されている。上述のリストは完全なものではなく窒素含有分散剤をキャッピングする他の方法が当技術分野に精通した技術者に知られている。
【0093】
追加的な添加剤が本開示の組成物中に組み込まれ、特定の性能の必要性が満たされている。本開示の潤滑油組成物中に含まれている添加剤の例に、金属防錆剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、耐磨耗剤、および流動点降下剤などがある。これらのうちいくつかについて以下で詳しく説明する。
【0094】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、しばしば耐磨耗剤および抗酸化剤として使用される。当該の金属は、アルカリまたはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅などである。亜鉛塩は、潤滑油組成物の総重量を基にして0.1重量%から10重量%、望ましくは0.2重量%から2重量%の量で、潤滑油中で最も一般的に使用されている。
【0095】
特に好適な亜鉛塩には、以下の化学式で表されるジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートが含まれる:
【0096】
【化8】

【0097】
式中RおよびR’は、アルキル、アルケニル、アリル、アリルアルキル、アルカリル、および環状脂肪族ラジカルなどのようなラジカルを含む、炭素原子数が1から18、望ましくは2から12の、同一あるいは異なったヒドロカルビルラジカルである。
【0098】
酸化防止剤あるいは抗酸化剤は、サービス中に鉱油が劣化する傾向を低減する。酸化変質は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス様の堆積物、および粘度の増加などから証明される。これらの酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、望ましくはCからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化または硫化炭化水素あるいはエステルまたはリンエステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物、およびモリブデン含有化合物などが含まれる。
【0099】
少なくとも二つの芳香族基が窒素に直接結合している芳香族アミンは、しばしば酸化防止用に使用される別の種類の化合物を形成する。これらの物質が少量使用されることもあるが、本開示の好適な実施例ではこれらの化合物は含まれていない。使用される場合の芳香族アミンの量は、潤滑油組成物の総重量を基にして、約0.1重量パーセントから約1.5重量パーセントである。当該芳香族アミンの特に有用な量は、潤滑油組成物の総重量を基にして、約0.4重量%以下である。
【0100】
好適な粘度調整剤の代表例に、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル系エステルのインターポリマー、およびスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、そしてブタジエンとイソプレンの部分的に水素化されたホモポリマーなどがある。
【0101】
また、最終的なオイル中の他の成分と互換性のある、摩擦調整剤や燃費向上剤が含まれることもある。このような物質の例には、例えばグリセリルモノオレエートなどの高級脂肪酸のグリセリルモノエステル;例えば二量化された不飽和脂肪酸のブタンジオールエステルなどの、長鎖ポリカルボン酸とジオールのエステル;オキサゾリン化合物;またアルコキシル化されたアルキル置換のモノアミン、ジアミン、およびアルキルエーテルアミン、例えばエトキシル化された獣脂アミンおよびエトキシル化された獣脂エーテルアミンなどが含まれる。
【0102】
その他の既知の摩擦調整剤は、有機モリブデン化合物、有機チタニウム化合物、および有機タングステン化合物のような、油溶性金属化合物を含んで成る。このような有機金属摩擦調整剤はまた、潤滑油組成物に抗酸化剤および耐磨耗剤の効果をもたらす。油溶性有機金属化合物の例として、カルボン酸塩、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩、硫化物、その他、およびそれらの混合物が挙げられている。特に有用な有機金属化合物には、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、キサントゲン酸アルキル、およびチオキサントゲン酸アルキルなどが含まれる。その他の有機金属化合物には、油溶性チタニウムおよびタングステンカルボキシレートが含まれる。
【0103】
本明細書で使用されている「油溶性」あるいは「分散性」という用語は、化合物あるいは添加剤がオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるという意味を表すものではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分なだけオイル中で可溶性であるまたは安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0104】
潤滑油流動向上剤(LOFI)としても知られる流動点降下剤は、流体が流れるあるいは注ぐことができるようになる最低温度を下げる。このような添加剤は周知のものである。流体の低温流動性を向上させるこれらの一般的な添加剤に、CからC18のフマル酸ジアルキル/酢酸ビニルコポリマー、およびポリメタクリレートなどがある。発泡は、ポリシロキサン系、例えばシリコンオイルやポリメチルシロキサンなどの消泡剤によってコントロールされる。
【0105】
上述の添加剤の中には、複数の効果をもたらすものもある。従って、例えば一つの添加剤が分散剤および酸化防止剤として作用することがある。これは周知の事実であり、本明細書でこれ以上説明する必要はないものとする。
【0106】
潤滑剤組成物に、DIパッケージを含んで成る上述の一つ以上の添加剤が含まれている場合、各添加剤は一般的に、目的とする作用をもたらすことが可能な量で基油中に混和されている。クランクケース潤滑剤中で使用された場合の、このような添加剤の代表的な効果量を以下に表す。リストのすべての数値は活性成分の質量パーセントで表されている。
【0107】
【表1】

【0108】
潤滑油組成物の生成において、添加剤は、炭化水素オイル、例えば鉱物性潤滑油またはその他の好適な溶媒中の10重量%から80重量%の活性成分濃縮物の形態で一般的に添加される。
【0109】
完成された潤滑剤、例えばクランクケースモーターオイルなどの形成において、通常これらの濃縮物は、添加剤パッケージの各重量パーツにつき3から100重量パーツ、例えば5から40重量パーツの潤滑油で希釈される。濃縮物の目的は、もちろん様々な材料の取り扱いをより簡単によりスムーズにすること、また最終的な混和物中での溶解または分散を助けることにある。従って、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは通常、例えば潤滑油との比例として10重量%から50重量%の濃縮物の形態で使用される。一つの実施例では、完成した潤滑油中での濃縮物の量は、潤滑油全体の約0.05重量パーセントから約8重量パーセントである。
【0110】
本開示に記載の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーは、天然潤滑油、合成潤滑油、およびそれらの混合物を含む潤滑粘性のオイルを含んで成る潤滑油ベースストックとの混合剤中で一般的に使用される。
【0111】
天然油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラードなど)、液体石油や、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン−ナフテン混合タイプの、水素化精製され、溶媒や酸で処理されたミネラル潤滑油が含まれる。石炭や頁岩から得られた潤滑粘性のオイルもまた有用な基油である。本開示で使用される合成潤滑油には、ポリアルファオレフィン、アルキル化芳香族化合物、アルキレンオキシドポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマー、およびそれらの誘導体を含み、それらに限定されることのない、一般的に使用されている合成炭化水素油の一つが含まれるが、このとき末端ヒドロキシル基は、エステル化、エーテル化、ジカルボン酸のエステル、およびシリコンベースのオイルなどで修正されている。
【0112】
脂肪族アミンを含んでいない芳香族アミンでできている、本開示の高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマー生成物は、粘度指数が約120以上約200以下であり、目的とする効果を十分にもたらすことのできる量で添加剤がその中に溶解あるいは分散されている基油を使用した潤滑油組成物中で主に使用される。このような基油は、天然、合成、あるいはそれらの混合であり得る。従って、本明細書に記載の潤滑油組成物の生成に使用されるこのような基油には、グループIIIの基油、グループIVの基油、ガスツーリキッド基油,およびそれらの混合物中から選択された多量の基油が含まれ、このとき当該基油の50重量%以上が、粘度指数が約125以上約200以下で、自動車やトラックのエンジン、船舶や鉄道用のディーゼルエンジンのような、火花点火および圧縮点火内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として使用される基油を含んでなる。
【0113】
その他の利点の中でも、脂肪族アミンを欠いた芳香族アミンと反応した高度にグラフト化されたオレフィンコポリマーは、高粘度指数基油中でのすすの分散性および/または粘度の安定性が向上されていることが、性能テストで観察されている。また、上述のような芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物と反応した高度にグラフト化されたオレフィンコポリマーは、芳香族および脂肪族分散剤VI(粘度指数)向上剤の単純な混合物よりも、オイルフィルターの閉塞の原因となる、エンジンオイル中の多種多様な物質に対し、より高度な分散性をもたらすことが観察されている。
【0114】
本開示はさらに、車の潤滑剤の交換の間隔を延長する方法を検討することを目的としている。当該の方法には、上述の潤滑油組成物を自動車のクランクケースに加えて作動させることが含まれている。
【0115】
本明細書に記載されたすべての特許、文献、およびその他の資料の開示は、参照することにより完全なものとして本明細書に組み込まれている。複数の定義された成分を「含んで成る」と表現された組成物は、当該の複数の定義された成分を混合して形成された組成物を含むことを意味している。本開示の原理、好適な実施例および実施形態を前述の明細書で説明してきた。しかしながら開示された実施例は限定ではなく例証を意図したものとみなされ、開示された特定の実施例に限定することを意図したものではない。当技術分野に精通した技術者により、本開示の実施例の精神を逸脱することなく変更を加えることが可能である。
【0116】
本発明の主な特徴及び態様を挙げれば以下のとおりである。
1.潤滑油組成物であり、
‐多量の潤滑粘性のオイルと、
‐遊離基開始剤の存在下でアシル化剤を数平均分子量が約10,000以上から約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%であるアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーと、
を含んで成る潤滑油組成物。
2.当該潤滑粘性のオイルの飽和物の含有量が少なくとも75重量%であり、また当該オレフィンコポリマーが、エチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンのコポリマーから成る、上記1に記載の潤滑油組成物。
3.当該潤滑粘性のオイルが、粘度指数約120以上の高粘度指数ベースストックを含んで成り、当該コポリマーの数平均分子量が約15,000から約25,000であり、また当該アミンが脂肪族アミンを含んでいない芳香族アミンである、上記1に記載の潤滑油組成物。
4.分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦調整剤を含んだ分散剤/阻害剤パッケージをさらに含んで成る、上記1に記載の潤滑油組成物。
5.当該洗浄剤が、中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、中性および過塩基性のスルホン酸マグネシウム、中性および過塩基性のカルシウムフェネート、サリチル酸カルシウム、サリチル酸マグネシウム、およびそれらの混合物から成る群の中から選択された洗浄剤である、上記4に記載の潤滑油組成物。
6.当該分散剤が、一つ以上のポリアルケニルスクシンイミド分散剤を含んで成る、上記4に記載の潤滑油組成物。
7.当該摩擦調整剤が、金属を含有しない有機摩擦調整剤、有機金属摩擦調整剤、およびそれらの混合物から成る群の中から選択された摩擦調整剤である、上記4に記載の潤滑油組成物。
8.当該有機金属摩擦調整剤が、油溶性有機チタニウム、油溶性有機モリブデン化合物、および油溶性有機タングステン化合物から成る群の中から選択された有機金属摩擦調整剤である、上記7に記載の潤滑油組成物。
9.当該の金属を含有しない摩擦調整剤が、グリセロールモノオレエート、および窒素含有摩擦調整剤から成る群の中から選択された摩擦調整剤である、上記7に記載の潤滑油組成物。
10.当該アシル化オレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約2.0重量%から約2.5重量%である、上記1に記載の潤滑油組成物。
11.当該オレフィンコポリマーの数平均分子量が約20,000から約40,000であり、当該アミンが芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物である、上記1に記載の潤滑油組成物。
12.当該アミンが脂肪族アミンと芳香族アミンの混合物を含んで成り、アミン混合物中の芳香族アミンが当該混合物の総重量の約40から約75重量パーセント、また当該混合物中の脂肪族アミンが当該混合物の総重量の約25から約60重量パーセントから成る、上記1に記載の潤滑油組成物。
13.内燃エンジンのオイル交換の間隔を延長させる方法であり、
‐多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んで成る潤滑剤組成物でエンジンを潤滑させること、そして
‐そのエンジンを作動させること
から成る、内燃エンジンのオイル交換の間隔を延長させる方法。
14.当該内燃エンジンが、火花点火エンジンおよび圧縮点火エンジンから成る群の中から選択されたエンジンを含んで成る、上記13に記載の方法。
15.当該オレフィンコポリマーが、エチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンのコポリマーを含んで成る、上記13に記載の方法。
16.当該潤滑剤組成物が、さらに分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦調整剤を含む分散剤/阻害剤パッケージを含んで成る、上記13に記載の方法。
17.当該アシル化オレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約2.0重量%から約2.5重量%である、上記13に記載の方法。
18.当該潤滑粘性のオイルが、グループIIIの基油、グループIVの基油、ガスツーリキッド基油、およびそれらの混合物から成る群の中から選択されたベースストックを含んで成る、上記13に記載の方法。
19.当該コポリマーの数平均分子量が約15,000から約25,000であり、当該アミンが脂肪族アミンを含んでいない芳香族アミンである、上記18に記載の方法。
20.当該オレフィンコポリマーの数平均分子量が約20,000から約40,000であり、当該アミンが芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物を含んで成る、上記13に記載の方法。
21.当該アミン混合物中の芳香族アミンが当該混合物の総重量の約40から約75重量パーセント、当該混合物中の脂肪族アミンが当該混合物の総重量の約25から約60重量パーセントから成る、上記20に記載の方法。
22.内燃エンジンのオイルフィルターの閉塞を低減する方法であり、
‐多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレ
フィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んで成る潤滑剤組成物でエンジンを潤滑させること、そして
‐そのエンジンを作動させること
から成る方法。
23.当該オレフィンコポリマーが、エチレンおよび一つ以上のC−C23のアルファオレフィンのコポリマーを含んで成る、上記22に記載の方法。
24.当該潤滑剤組成物が、分散剤、金属含有洗浄剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および摩擦調整剤を含んだ分散剤/阻害剤パッケージをさらに含んで成る、上記22に記載の方法。25.当該アシル化オレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約2.0重量%から約2.5重量%である、上記22に記載の方法。
26.当該コポリマーの数平均分子量が約15,000から約25,000であり、当該アミンが脂肪族アミンを含んでいない芳香族アミンである、上記22に記載の方法。
27.当該オレフィンコポリマーの数平均分子量が約20,000から約40,000であり、当該アミンが芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物を含んで成る、上記22に記載の方法。
28.当該アミン混合物中の芳香族アミンが当該混合物の総重量の約40から約75重量パーセント、当該混合物中の脂肪族アミンが当該混合物の総重量の約25から約60重量パーセントから成る、上記27に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物であり、
‐多量の潤滑粘性のオイルと、
‐遊離基開始剤の存在下でアシル化剤を数平均分子量が約10,000以上から約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%であるアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて、高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーと、
を含んで成る潤滑油組成物。
【請求項2】
当該潤滑粘性のオイルの飽和物の含有量が少なくとも75重量%であり、また当該オレフィンコポリマーが、エチレンと一つ以上のC−C23のアルファオレフィンのコポリマーから成る、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
当該潤滑粘性のオイルが、粘度指数約120以上の高粘度指数ベースストックを含んで成り、当該コポリマーの数平均分子量が約15,000から約25,000であり、また当該アミンが脂肪族アミンを含んでいない芳香族アミンである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
油溶性有機チタニウム、油溶性有機モリブデン化合物、および油溶性有機タングステン化合物から成る群の中から選択された有機金属摩擦調整剤をさらに含んでいる、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
当該アシル化オレフィンコポリマーのグラフト率(DOG)が約2.0重量%から約2.5重量%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
当該アミンが脂肪族アミンと芳香族アミンの混合物を含んで成り、アミン混合物中の芳香族アミンが当該混合物の総重量の約40から約75重量パーセント、また当該混合物中の脂肪族アミンが当該混合物の総重量の約25から約60重量パーセントから成る、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
内燃エンジンのオイル交換の間隔を延長させる方法であり、
‐多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んで成る潤滑剤組成物でエンジンを潤滑させること、そして
‐そのエンジンを作動させること
から成る、内燃エンジンのオイル交換の間隔を延長させる方法。
【請求項8】
内燃エンジンのオイルフィルターの閉塞を低減する方法であり、
‐多量の潤滑粘性のオイル、および遊離基開始剤の存在下で、アシル化剤を数平均分子量が約10,000以上、約50,000以下のオレフィンコポリマーと反応させて、オレフィンコポリマー上のアシル化剤のグラフト率(DOG)が約1.5重量%から約3.0重量%のアシル化オレフィンコポリマーを得ること、そして当該アシル化オレフィンコポリマーをアミンと反応させて高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを得ることによって作られた、少量の、少なくとも一つの高度にグラフト化された多機能オレフィンコポリマーを含んで成る潤滑剤組成物でエンジンを潤滑させること、そして
‐そのエンジンを作動させること
から成る方法。
【請求項9】
当該オレフィンコポリマーの数平均分子量が約20,000から約40,000であり、当該アミンが芳香族アミンと脂肪族アミンの混合物を含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
当該アミン混合物中の芳香族アミンが当該混合物の総重量の約40から約75重量パーセント、当該混合物中の脂肪族アミンが当該混合物の総重量の約25から約60重量パーセントから成る、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2009−173868(P2009−173868A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267518(P2008−267518)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】