説明

オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその用途

【課題】柔軟でゴム弾性に優れ、肌荒れがなく外観が良好な発泡シートが得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物および該組成物から得られる自動車内装表皮材等の発泡シートを提供すること。
【解決手段】オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)との混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(B’)1〜100質量部を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であって、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち、1〜40質量%がプロピレン90〜99モル%と他のα-オレフィン1〜10モル%とのランダム共重合体(b1)であり、99〜60質
量%が前記(b1)以外のプロピレン(共)重合体(b2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物および該組成物から得られる柔軟で成形外観に優れる発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隙間埋め材用発泡シート、プロテクトスポンジシート等のエラストマーの発泡シートを製造する方法として、天然ゴムあるいは合成ゴムに、補強剤、充填剤と軟化剤等を密閉式混練機で混練温度120〜180℃、混練時間3〜15分で混練後、この混練物を一旦室温付近まで冷却し、冷却した混練物に加硫剤、加硫促進剤と発泡剤を、練りロール機や密閉式混練機を使用し、早期加硫を起こさないように40〜100℃で混練し、発泡性混練物を得た後、シート状に成型して加熱することにより、加硫と発泡を同時に行ない発泡シートを得るという方法が知られている。
【0003】
しかしながら、上記のような方法では、発泡性混練物を得るのに手間が掛かること、加硫と発泡を行うのに、150〜300℃で、5〜30分の時間が必要になり、多量のエネルギを必要とすること、加硫中にSOxなどの有害なガスが発生すること等、工業的生産上不利であるばかりでなく、出来あがった製品は加硫ゴムであるため容易にリサイクルが出来ず、環境面でも多くの問題を有している。
【0004】
このような問題を解決する方法として、軟質ポリオレフィン系樹脂と加硫ゴムの中間の性能を示す材料として、オレフィン系共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂とからなる部分架橋された組成物が、熱可塑性エラストマーとして使用できることは、たとえば特許文献1(特開昭48-26838号公報)、特許文献2(特開昭54-112967号公報)により公知である。このような熱可塑性エラストマーは上述の混練工程や加硫工程を省略できる場合がある。
【0005】
しかしながら、これらの熱可塑性エラストマーにおいては、基本的に、加硫ゴムに比べてゴム弾性に劣る上、さらにポリオレフィン系樹脂成分が、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理した時に分解し、発泡時の張力が劣るため、脱泡しやすく、均一に発泡したシートを得ることが困難で、しかも脱泡による肌荒れが顕著であるという問題がある。
【0006】
また、特許文献3(特開平6-73222号公報)によれば、結晶性ポリオレフィンプ
ラスチックとゴムの混合物からなる熱可塑性エラストマー組成物を、水を使用して発泡させる方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、この方法では、特殊な発泡専用押出機を使用し、極狭い温度範囲内でのみ発泡が可能なこと、完全フェノール架橋された熱可塑性エラストマー組成物を使用した場合は、押出外観が極めて悪いこと、部分架橋または非架橋の熱可塑性エラストマー組成物を使用した場合は、圧縮永久歪と吸水率が大きく、加硫ゴムを代替できるほどの汎用性はないという問題がある。
【0008】
一方で、オレフィン系樹脂を用いた例としては、例えば特許文献4(特開2005−138508号公報)のようなポリプロピレン系樹脂による発泡シートが知られている。
【0009】
しかし、このようなポリオレフィン系樹脂の発泡シートは柔軟性や弾性に劣るため、例えば自動車内装材のようなソフト感や弾性を求められる用途では、特許文献5(特許1625668号公報)にあるように、ポリオレフィン系樹脂の発泡シートと熱可塑性エラス
トマーのシートを積層させることが行われてきた。
【0010】
そして、このような積層体を作製するには、ポリオレフィン系樹脂の発泡シートを作製する工程とは別に積層体を作製する工程が必要で手間がかかる等の問題があった。
【0011】
また一方、特許文献6(特開平09-143297号公報)によれば、オレフィン系熱
可塑性エラストマーに有機あるいは無機系の熱分解型発泡剤を混合し、発泡体を得る方法が開示されているが、微細な気泡が均一に得られずシートなどの広面積を必要とするものでは外観不良、肌荒れが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭48-26838号公報
【特許文献2】特開昭54-112967号公報
【特許文献3】特開平6-73222号公報
【特許文献4】特開2005−138508号公報
【特許文献5】特許1625668号公報
【特許文献6】特開平09-143297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、上記のような背景技術に伴う問題を解決しようとするものであって、柔軟でゴム弾性に優れ、肌荒れがなく外観が良好な発泡シートが得られるようなオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物および該組成物から得られる発泡シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上述の課題を解決すべく検討した結果、下記手段により目的を達成することを見出し、本発明を完成した。即ち本発明は、下記の熱可塑性エラストマー組成物、発泡シートおよび自動車内装表皮材を包含する。
(1)有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)との混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(B’)1〜100質量部を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であって、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち、1〜40質量%がプロピレン90〜99モル%と他のα-オレフィン1〜10モル%とのランダム共重
合体(b1)であり、99〜60質量%が前記(b1)以外のプロピレン(共)重合体(b2)であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
(2)前記有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が、エチレンとα-
オレフィンに由来する構造単位のモル比が40/60〜85/15であるエチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体、またはエチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であり、前記有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物である(1)に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
(3)前記有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を40〜90質量部、前記有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)を10〜60質量部の割合で含有し、さらに前記(A)と(B)の合計100質量部に対し軟化剤(C)を1〜200質量部の割合で含有する(1)または(2)に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマ
ー組成物。
(4)前記プロピレン(共)重合体(b2)は、135℃デカリン中で測定した[η]が5dl/g以上の高分子量成分を5〜40質量%含有しているプロピレン単独重合体である(1)〜(3)のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡シート。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を、無機または有機系の熱分解型化学発泡剤、二酸化炭素、窒素、またはこれらの混合ガスを主成分とするガスから選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いて発泡させて得られる発泡シート。
(7)押出成形機によって押出発泡成形させて得られる(5)または(6)に記載の発泡シート。
(8)押出成形機に取り付けられたサーキュラーダイを用いて押出発泡成形させて得られる(7)に記載の発泡シート。
(9)(5)〜(8)のいずれかに記載の発泡シートからなる自動車内装表皮材。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、これまで発泡性が悪いか、発泡しても外観が不良であった熱可塑性エラストマーにおいて、柔軟でゴム弾性に優れ、肌荒れがなく外観が良好な発泡シートを得られ、意匠性の高い自動車部品等への適用が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物および該組成物からなる発泡体シートについて具体的に説明する。
【0017】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、
有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)との混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(B’)1〜100質量部を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であって、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち、1〜40質量%がプロピレン90〜99モル%と他のα-オレフィン1〜10モル%とのランダム共重合体
(b1)である。
【0018】
有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)に使用される有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)は、有機ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することによって、架橋して流動性が低下するか、あるいは流動しなくなるようなエチレンと炭素原子数が3〜20のα-オレフィンとからなる無定形ランダムな弾性共重合体、または
エチレンと炭素原子数が3〜20のα-オレフィンと非共役ポリエンとからなる無定形ラ
ンダムな弾性共重合体である。このオレフィン系共重合体ゴム(A)は、組成物から得られる発泡体へのゴム弾性付与と圧縮永久歪の低減に重要な役目を担う。
【0019】
このようなオレフィン系共重合体ゴム(A)として、具体的には、エチレン・α-オレ
フィン共重合体ゴム、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが挙げら
れ、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが好ましい。
【0020】
これらの共重合ゴムは、エチレンに由来する構造単位とα-オレフィンに由来する構造
単位とのモル比(エチレン/α-オレフィン)が40/60〜85/15、好ましくは5
5/45〜85/15、さらに好ましくは60/40〜80/20の範囲にあることが望
ましい。
【0021】
α-オレフィンとしては炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数3〜10のα−オ
レフィンが挙げられ、具体的なものとしてはプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテ
ン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。これらの中ではプロピレン、1-ブテン、1-オクテンが好ましい。
【0022】
非共役ポリエンとしては、環状または鎖状の非共役ポリエンが挙げられる。環状非共役ポリエンとしては、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビ
ニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどが挙げられ
る。また、鎖状の非共役ポリエンとしては、例えば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オ
クタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエ
ンなどが挙げられる。中でも5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-
ビニル-2-ノルボルネンが好ましく使用できる。これらの非共役ポリエンは、単独あるい
は2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で3〜50、好ましくは5〜45、より好ましくは8〜40であることが望ましい。圧縮永久歪を改善するためには、ヨウ素価10よりも高い値であることが望ましい。
【0023】
エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、ないしエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度[η]は、0.8〜6.0dl/g、好ましくは1.0〜5.0dl/g、より好ましくは1.1〜4.0dl/gの範囲にあることが望ましい。
【0024】
上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、ないしエチレン・
α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムは、「ポリマー製造プロセス((株)工業
調査会発行)」、309〜330頁などに記載されている従来公知の方法により調製することができる。
【0025】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)以外のゴムを用いることもできる。このようなペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)以外のゴムとしては、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0026】
有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)に使用される有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)は、有機ペルオキシドと混合し加熱下で混練しても架橋は行なわれず、分解して流動性が上昇するようなポリオレフィン系樹脂である。
【0027】
このようなポリプロピレン系プラスチックとしては、プロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99質量%含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99質量%含有するプロピレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。共重合体はランダム、ブロックタイプのいずれでもよく、本発明の目的を損なわない範囲で任意のメルトフローレートのものが使用できる。
【0028】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂以外の有機ペルオキシド非架橋型ゴム状物質を含んでいてもよい。
【0029】
この有機ペルオキシド非架橋型ゴム状物質は、有機ペルオキシドと混合し、加熱下で混
練しても架橋せず、流動性が低下しない炭化水素系のゴム状物質であり、具体的には、ポリイソブチレン、ブチルゴム、プロピレン含量が70モル%以上のプロピレン・エチレン共重合体ゴム、プロピレン・1-ブテン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらの内では、プロピレン・エチレン共重合体ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴムが性能および取扱い上好ましい。特にこれらはムーニー粘度[ML(1+4)100℃]が60以下であること
が、組成物の流動性を改善する点で好ましい。
【0030】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(D)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)は、オレフィン系共重合体ゴム(A)40〜90質量部、好ましくは50〜85質量部、ポリオレフィン系樹脂(B)10〜60質量部、好ましくは15〜50質量部((A)と(B)の合計は100質量部)とからなることが望ましい。
【0031】
また、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)は、オレフィン系共重合体ゴム(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との合計100質量部に対し1〜200質量部、好ましくは20〜180質量部の軟化剤(C)を含有することが、良好な成形性と、得られた発泡体の柔軟性付与の点で望ましい。
【0032】
軟化剤(C)
軟化剤(C)としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、密ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩、ナフテン酸またはその金属石鹸、パイン油、ロジンまたはその誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤、ジイソドデシルカーボネート等の炭酸エステル系可塑剤、その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも石油系軟化剤と炭化水素系合成潤滑油が好ましい。
【0033】
架橋剤
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)は、オレフィン系共重合体ゴム(A)が架橋されていることが好ましく、有機ペルオキシドで架橋されていることが成形性、発泡性と実用的物性上より好ましい。
【0034】
有機ペルオキシドとして具体的には、ジクミル有機ペルオキシド、ジ-tert-ブチル有機ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチ
ル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイル有機ペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイル有機ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペ
ルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチル有機ペルオキシド、ラウロイル有機ペルオキシド、tert-ブチルクミル有機ペルオキシドなどが挙げられる。
【0035】
これらの中では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチ
ルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3
、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペ
ルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオ
キシ)バレレートが好ましく、中でも、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル
)ベンゼンが最も好ましい。
【0036】
本発明においては、上記有機ペルオキシドによる架橋処理に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0037】
上記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分である有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)、有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)との相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた部分架橋熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0038】
本発明においては、上記のような架橋剤は上記の被架橋処理物100質量部に対し、0.01〜2質量部、好ましくは0.03〜1.0質量部、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部の割合で用いることが好ましい。また、上記のような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーは、上記の被架橋処理物全体に対して、0.5〜5質量%、好ましくは0.6〜4質量%、より好ましくは0.7〜3質量%の割合で用いるのが好ましく、従来技術より多量配合することが望ましい。架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーの配合割合が上記範囲にあると、圧縮永久歪が小さく、成形性の良好な発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0039】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物
本発明の発泡シートに係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、
有機ペルオキシド架橋型オレフィン系ゴム(A)と有機ペルオキシド非架橋型のポリオレフィン系樹脂(B)との混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(B’)1〜100質量部を溶融混練して得られる。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂(B’)が上記範囲内にあると、オレフィン系熱可塑性エラストマー(D)の柔軟性を損なうことなく、かつ発泡時の張力を増すことができるため、柔軟で発泡性良好なシートを得ることができる。
【0041】
また、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち、1〜40質量%、好ましくは5〜35質量%が、プロピレン90〜99モル%と他のα−オレフィン1〜10モル%とのランダム共重合体(b1)である。ランダム共重合体(b1)は、ASTM−D−1238−65Tの方法で、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1〜15g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0042】
他のα−オレフィンとしてはエチレンおよび炭素原子数4〜20、好ましくは炭素原子数4〜10のα−オレフィンが挙げられ、具体的なものとしては1-ブテン、4-メチル-1-
ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。これらの中ではエチレン、1-ブテン、1-オクテンが好ましい。
【0043】
ランダム共重合体(b1)が上記範囲にあるとオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)とポリオレフィン系樹脂(B’)の溶融状態での相溶性が増し、発泡シートの成形外観に優れる。
【0044】
さらに、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち60〜99質量%、好ましくは65〜95が、プロピレン単独重合体、プロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物から選ばれるプロピレン(共)重合体であることが好ましく、135℃デカリン中で測定した[η]が5dl/g以上の高分子量成分を5〜40質量%含有しているプロピレン単独重合体であることが特に好ましい。前記プロピレン(共)重合体(b2)は、ASTM−D−1238−65Tの方法で、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1〜20g/10分、好ましくは0.1〜15g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0045】
前記オレフィンとしてはエチレンおよび炭素原子数4〜20、好ましくは炭素原子数4〜10のオレフィンが挙げられ、具体的なものとしては1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン
、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。これらの中ではエチレン、1-ブテン、1-オクテンが好ましい。
【0046】
プロピレン(共)重合体(b2)が上記範囲内にあると、発泡時の張力をさらに増すことができるため、柔軟で発泡性良好なシートを得ることができる。
【0047】
本発明においては、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物中に、必要に応じて、公知の充填剤、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、金属セッケン、ワックス等の滑剤、顔料、染料、結晶核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0048】
上記充填剤としては、通常ゴムに使用される充填剤が適当であり、具体的には、カーボンブラック、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、けいそう土、雲母粉、アスベスト、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、グラファイト、アルミナなどが挙げられる。
【0049】
これらの充填剤は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、0〜120質量部、好ましくは2〜100質量部の割合で用いられる。
【0050】
また、本発明において必要に応じて用いられる公知の耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系安定剤などが挙げられる。
【0051】
また、本発明において必要に応じて用いられる公知の結晶核剤としては、ポリオレフィン樹脂に一般的に使用されているタルク、マイカ、シリカ、アルミナム、ブロム化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジp-tert-ブチルベンゾエート(TBBA)、ジ
ベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、有機リン酸塩、置換トリエチレングリコールテレフタレート、Terylene&Nylon繊維などが挙げられ、特に2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル
)リン酸ナトリウム、PDTSが望ましい。
【0052】
結晶核剤は、熱可塑性エラストマー組成物中のポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部の割合で用いられる。
【0053】
〔オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の調整〕
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系共重合体ゴム(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、必要に応じて軟化剤(C)等を、有機ペルオキシドの存在下、動的に熱処理することでオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)を調製し、さらにオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)とポリオレフィン系樹脂(B’)を動的に熱処理して得られる。動的に熱処理するとは、上記のような各成分を融解状態で混練することをいう。動的な熱処理は、解放型のミキシングロール、非解放型のバンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機、連続ミキサーなどの混練装置を用いて行われるが、非開放型の混練装置中で行うことが好ましく、特に2軸押出機を用いて行うことが好ましい。また、動的な熱処理は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
【0054】
通常は、樹脂温度170℃〜270℃、混練時間1〜10分、せん断速度2000〜7000sec-1で、2軸押出機を用いて行うことが好ましい。
【0055】
上記各成分を押出機などの混練装置で混練することにより混練物として得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、通常、ペレット状に成形されて使用される。
【0056】
オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなる本発明の発泡体の密度は700kg/m3未満、好ましくは650kg/m3未満、特に好ましくは600kg/m3未満の範
囲にあることが望ましい。この範囲の密度の発泡体は、柔軟性、クッション性、軽量性、断熱性等を十分に発揮でき、実用性が高い。発泡体の密度の下限はその目的に応じて決定され、特に限定するものではないが、例えば100kg/m3以上であると発泡体の製造
が容易である。
【0057】
また、発泡体の気泡径は、好ましくは300μm未満、より好ましくは200μm未満であることが、折り皺を少なくする観点から望ましい。気泡径の下限はその目的に応じて決定され、特に限定するものではないが、例えば50μm以上であると発泡体の製造が容易である。
【0058】
〔オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡シートの調製〕
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、発泡剤を用いて発泡させることにより、発泡体となる。発泡剤としては、無機系あるいは有機系の熱分解型発泡剤(化学発泡剤)、二酸化炭素、窒素、二酸化炭素と窒素の混合物を主成分とする不活性ガスを挙げることができる。
【0059】
無機系の熱分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩を挙げることができる。
【0060】
有機系の熱分解型発泡剤としては、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド
、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;
アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ-ト等のアゾ化合物;
ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(
ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;
カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジ
ド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0061】
二酸化炭素や窒素を使用する場合は、超臨界状態でオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物中に混合することが、相溶性と発泡体のセルの均一化あるいは微細化の点から好ましい。
【0062】
発泡剤は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部の割合で用いられる。
【0063】
また、均一微細な気泡構造を有する発泡体を得るには、発泡形成核剤の使用が望ましい。その添加量は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.02〜5質量部であることがより好ましい。
【0064】
発泡形成核剤としては、亜鉛、カルシウム、鉛、鉄、バリウム等の金属化合物、ステアリン酸等の高級脂肪酸、及びその金属塩、タルク、硫酸バリウム、シリカ、ゼオライト、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の微粒無機粒子、四フッ化エチレン系樹脂微粉末、シリコンゴム粉末、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シクロヘキサン1、2ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ酸等の多価カルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩の混合物や、これらの反応により生じる中間体、例えばクエン酸二水素ナトリウム、シュウ酸カリウム等のポリカルボン酸の塩が挙げられ、
N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;
アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ-ト等のアゾ化合物;
ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(
ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;
カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホニルアジ
ド等のアジド化合物などの熱分解型発泡剤として例示した化合物を発泡形成核剤として使用することもできる。
【0065】
これらの中では、四フッ化エチレン系樹脂微粉末が特に好ましい。
【0066】
多価カルボン酸と炭酸水素塩の混合物(好ましくはクエン酸と炭酸水素ナトリウムの混合物、またはその反応中間体であるクエン酸二ナトリウム)、アゾジカルボンアミドを用いて、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを発泡させると、低密度、低圧縮歪みで、かつ、微細気泡構造を有する発泡体が得られるので特に好ましい。
【0067】
これらの熱分解型発泡剤は、発泡押出時に分解する場合の他、予め、ペレット化等の工程で一部または全部が分解したものでも使用できる。発泡形成核剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、発泡核の形成、気泡の均一化などの働きをし、一般に使用することが望ましい。特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の押出温度付近で分解しガス化する化合物は、発泡セル径を細かく、且つ、均一に生成させる効果がある。
【0068】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体を調製するに際しては、上記のようにして得られたペレット状のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に、熱分解型発泡剤を使用する場合は、粉末または樹脂をバインダーとしペレット状にした発泡剤と、必要に応じ発泡形成核剤や湿潤剤を一旦タンブラー型ブラベンダー、V型ブラベンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合するか、必要であれば開放型のミキシングロールや非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサー等で、発泡剤の分解温度以下で混練し、発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とする。
【0069】
発泡剤として二酸化炭素や窒素を使用する場合は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に発泡形成核剤と湿潤剤を一旦タンブラー型ブラベンダー、V型ブラベンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混練した後、樹脂可塑化シリンダー内で、130〜300℃で溶融し、オレフィン系熱可塑性エラストマーと二酸化炭素や窒素が、相溶状態にある溶融オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を形成する。なお、樹脂可塑化シリンダー内でオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に、二酸化炭素や窒素を溶解する際は、二酸化炭素や窒素は超臨界状態にあることが、相容性と発泡体のセルの均一性の点から好ましい。
【0070】
次に、上記のようにして得られた発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物から発泡体を調製する方法としては、押出成形、インフレーション成形、スタンピングモールド成形、圧縮成形等、公知の樹脂加工方法を適用することができる。特に押出成形機によって押出発泡成形を行うことが好ましい。
【0071】
例えば、熱分解型発泡剤を用いて押出成形方法により発泡体を調製する方法としては、上述した発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を押出機に供給し、バレル内で組成物の融点と発泡剤の分解温度以上に加熱し、加圧しながら組成物中に発泡剤分解生成ガスを均一に分散させる。
【0072】
次いで、発泡剤分解生成ガスが均一に分散された溶融発泡性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を、最適発泡温度に設定した押出機先端部に取り付けられたダイへと移送し、ダイから大気中または水中に押出し急激に圧力を低下させて発泡させ、後続の冷却装置で冷却固化し、目的の発泡体を製造する。なお、押出時の熱可塑性エラストマー組成物の温度は140〜250℃の範囲が好ましい。
【0073】
例えば、超臨界状態の二酸化炭素を発泡剤とし、押出成形方法により発泡体を調製する方法としては、上述した発泡形成核剤を含有したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を押出機で溶融し、二酸化炭素を臨界圧力(7.4MPa〜40MPa)の範囲内で、臨界温度(31℃)以上に昇温して、超臨界二酸化炭素としてから、押出機中の溶融したオレフィン系熱可塑性エラストマーに混合する。
【0074】
次いで、超臨界二酸化炭素が混合された溶融オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を、最適発泡温度に設定した押出機先端部に取り付けられたダイへと移送し、ダイから大気中に押出し急激に圧力を低下させて、二酸化炭素をガス化し発泡させ、後続の冷却装置で冷却固化し、目的の発泡体を得る。なお、押出時の熱可塑性エラストマー組成物の温度は130〜250℃の範囲が好ましい。
【0075】
さらに押出機先端部に取り付けられたダイがサーキュラーダイであり、サーキュラーダイで押し広げながら円周の1箇所を切り開き、シート状成形品を得ることが最も好ましい。
【0076】
上記のような製造方法により得られた発泡体は、有機ペルオキシド架橋型オレフィン系
共重合体ゴム部が架橋されているため、耐熱性、引張特性、柔軟性、耐候性、反発弾性等のゴム的性質が優れており、また加硫ゴムに較べ、リサイクルにも適している。
【0077】
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー発泡体の用途としては、自動車内装表皮材、ボディパネル等の自動車部品;
靴底、サンダル等の履物;
地盤改良用シート、騒音防止壁等の土木資材;
防水布、水切りシート、化粧用パフ等の雑品が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
なお、実施例における発泡体の成形および基礎物性の評価は、以下の方法により行った。
(試験方法)
(1)押出発泡成形装置
押出機:50mmφ単軸押出機[日本製鋼所(株)P50-32ABV]
シリンダー最高温度:220℃
ダイ温度:170℃
ダイ:サーキュラーダイ
二酸化炭素・窒素供給装置:AKICO社製
引き取り速度:15m/分
(2)基本物性
〔発泡体密度の測定〕
発泡体密度はJIS K6268 A法、または種々のメーカーから発売されている自動比重計、例えばミラージュ貿易社製電子比重計MS-200Sで求めることが出来る。当
実施例ではミラージュ貿易社製電子比重計MS-200Sを使用し求める。
【0080】
〔表面粗さの測定〕
触針式表面粗さ計サーフコム200B型(東京精密社製)を使用し、長さ50mmの発泡体表面の凹凸を数値化し、最高から10番目までの凸部分の総和(h1)から、最低から1
0番目までの凹部分の総和(h2)を差し引いた値(h1−h2)を10で除して求める。
【0081】
〔100%引張応力の測定〕
100%引張応力の測定は、押出成形したシート状発泡体の長手方向に沿って、JIS
K6251に記載のダンベル状3号形試験片(平行部分が規定寸法に達すれば可とする
)を4個打ち抜き、JIS K6251に記載の方法によって測定する。
【0082】
〔極限粘度の測定〕
135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した。
【0083】
〔メルトフローレートMFRの測定〕
ASTM−D−1238−65Tの方法で、230℃、2.16kg荷重で測定する。
【0084】
[実施例1]
エチレン含量が68モル%、ヨウ素価22、極限粘度[η]が3.9dl/gであるエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPT-1とする)100質量部に、鉱物油系軟化剤(出光興産製ダイナプロセスオイルPW-380)75質
量部をブレンドした油展EPT175質量部と、メルトフローレート(ASTM-D-1238-65T
,230℃、2.16kg荷重)が2.0g/10分であるホモタイプのポリプロピレン(PP-1とする)40質量部を、予め密閉式混合機[神戸製鋼(株)ミクストロンBB16]で混合し、シーティングロールに通しシート状にした後、朋来鉄工社製ペレタイザーにより角ペレットを製造した。
【0085】
次いで、得られたペレット 215質量部、架橋剤1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン 1.75質量部と架橋助剤ジビニルベンゼン1.75質量部の混
合溶液3.5質量部、酸化防止剤テトラキス[メチレン-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-
ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.2質量部をタンブラーブレンダーにより混合し、ペレット表面に均一に付着させた。
【0086】
次いで、この架橋剤、架橋助剤と酸化防止剤が表面に付着したペレット 218.7質
量部と前述の鉱物油系軟化剤50質量部とを、2軸混合押出機(東芝機械(株)製TEM-50)を用いて、220℃で1時間当たり40kgの処理速度で混練・押出して動的な
熱処理を行い、PP中に架橋EPTの分散粒子が均一に分散している部分的に架橋された熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0087】
次いで、得られた部分的に架橋された熱可塑性エラストマー組成物268.7質量部に、コモノマーとしてエチレンを4.5質量%共重合し、メルトフローレートが0.5g/10分の、ランダムタイプのポリプロピレン(PP-4とする)0.4質量部と、極限粘度
[η]が8.5dl/gの高分子量成分を12質量%含有し、メルトフローレートが3.0g/10分のホモタイプのポリプロピレン(PP-2とする)39.6質量部と、前述
の鉱物油系軟化剤35質量部とを、前述の2軸押出機を使用して、200℃で1時間当たり40kgの押出速度で混練・押出して、目的のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0088】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100質量部当たり、発泡核剤としてハイドロセルロールCF(ベーリンガーインゲルハイムケミカル社製)0.1質量部をドライブレンドし、押出発泡成形装置を使用し、押出樹脂温度170℃、押出速度20kg/時間、二酸化炭素供給圧力15MPa、二酸化炭素供給量をオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物100質量部当たり0.5質量部の条件で成形し、サーキュラーダイ先端に取り付けられたカッターで切り開くことにより、オレフィン系熱可塑性エラストマー発泡シートを得た。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例1のPP-2を8質量部、PP-4を32質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
実施例1のPP-2を14質量部、PP-4を26質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例2において、二酸化炭素供給ラインを閉止し、二酸化炭素の代わり重曹系化学発泡剤(ポリスレンEE405D:永和化成工業社製)2.0質量部を、熱可塑性エラストマー組成物ペレットに付着させ、ホッパーから供給して用いた以外は、実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
実施例4のPP-2を16質量部、PP-4を64質量部とした以外は、実施例4と同様
に行った。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例6]
実施例4のPP-2を24質量部、PP-4を96質量部とした以外は、実施例4と同様に行った。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例7]
実施例2において、PP-1の代わりにエチレン9質量%、メルトフローレートが0.
5g/10分のブロックタイプのポリプロピレン(PP-3とする)を用いた以外は、実
施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例8]
実施例2において、EPT-1の替わりにエチレン含量が63モル%、ヨウ素価22、
極限粘度[η]が3.5dl/gであるエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボ
ルネン共重合体ゴム(EPT-2とする)100質量部に、鉱物油系軟化剤(出光興産製
ダイナプロセスオイルPW-380)75質量部をブレンドした油展EPTを用いた以外
は、実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例9]
実施例2において、発泡核剤として四フッ化エチレン系樹脂微粉末(三井・デュポンフロロケミカル(株)社製 テフロン(登録商標)PTFE 6−J)1質量部、ハイドロセルロールCF(ベーリンガーインゲルハイムケミカル社製)0.1質量部を用いた以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例10]
実施例2のPP-1を100質量部とした以外は、実施例2と同様に行った。結果を表
1に示す。
【0098】
[実施例11]
実施例2のPP-1を12質量部とした以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2
に示す。
【0099】
[実施例12]
実施例2において、PP-2の替わりに実施例7のPP-3を用いた以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。
【0100】
[実施例13]
実施例2において、PP-2の替わりにメルトフローレートが0.4g/10分のホモ
タイプのポリプロピレン(PP-5とする)を用いた以外は、実施例2と同様に行った。
結果を表2に示す。
〔比較例1〕
実施例1のPP-4を用いずに、PP-2を40質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
実施例1のPP-2を20質量部、PP-4を20質量部とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
実施例4のPP-2を20質量部、PP-4を20質量部とした以外は、実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)との混合物を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー(D)100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(B’)1〜100質量部を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物であって、該ポリオレフィン系樹脂(B’)100質量%のうち、1〜40質量%がプロピレン90〜99モル%と他のα-オレフィン1〜10モル%とのランダム共重合体
(b1)であり、99〜60質量%が前記(b1)以外のプロピレン(共)重合体(b2)であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が、エチレンとα-オレ
フィンに由来する構造単位のモル比が40/60〜85/15であるエチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体、またはエチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンと非共役ポリエンとの共重合体であり、前記有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合体、またはプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン重合単位を40〜99モル%含有するプロピレン・オレフィン共重合体との混合物である請求項1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記有機ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を40〜90質量部、前記有機ペルオキシド非架橋型ポリオレフィン系樹脂(B)を10〜60質量部の割合で含有し、さらに前記(A)と(B)の合計100質量部に対し軟化剤(C)を1〜200質量部の割合で含有する請求項1または2に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記プロピレン(共)重合体(b2)は、135℃デカリン中で測定した[η]が5dl/g以上の高分子量成分を5〜40質量%含有しているプロピレン単独重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡シート。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を、無機または有機系の熱分解型化学発泡剤、二酸化炭素、窒素、またはこれらの混合ガスを主成分とするガスから選ばれる少なくとも1種の発泡剤を用いて発泡させて得られる発泡シート。
【請求項7】
押出成形機によって押出発泡成形させて得られる請求項5または6に記載の発泡シート。
【請求項8】
押出成形機に取り付けられたサーキュラーダイを用いて押出発泡成形させる請求項7に記載の発泡シート。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の発泡シートからなる自動車内装表皮材。

【公開番号】特開2011−168739(P2011−168739A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35891(P2010−35891)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】