説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】低分子量成分の生成割合が少ないポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程を逐次的に実施し、150〜400℃の温度で加熱、気体流通下での加熱、減圧下での加熱又は不活性有機溶媒との共沸脱水により製造される重合用触媒の存在下、オレフィンを重合し、重量平均分子量が5万〜200万であって、重量平均分子量の100分の1以下の低分子量成分の割合が2重量%以下とすることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。(1)スメクタイト族のイオン交換性層状珪酸塩を、水及び又は有機溶媒の存在下、クロム原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸及び有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる、水溶性又は酸性水溶液に可溶な塩である化合物Aで処理する工程(2)工程(1)で得られた生成物を、周期表第1族又は第2族金属原子からなる有機金属化合物Bで処理する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィン重合体の製造法に関する。特に、低分子量のエチレン重合体の生成割合が少ないポリエチレンが製造可能なオレフィン重合用触媒及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体は、各種の成形品の樹脂材料として、一般に広く用いられているが、その成形方法と用途によって要求される特性が異なっている。例えば、射出成形法によって成形される製品には分子量が比較的低く、狭い分子量分布を有する重合体が適しているが、ブロー成形やインフレーション成形などによって成形される製品には、分子量が比較的高く、分子量分布の広い重合体が適している。
【0003】
従来より、無機酸化物担体に担持され、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒成分(フィリップス触媒)を用いることにより、ブロー成形、特に大型ブロー成形に適した広い分子量分布のエチレン系重合体が得られることは公知である。
【0004】
このフィリップス触媒の改良技術として、例えば、「無機酸化物担体に担持され、非還元性雰囲気下で焼成し活性化された少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒成分に、不活性炭化水素溶媒中で有機マグネシウムを担持し、さらに溶媒を除去し乾燥して得られる有機マグネシウム担持クロム触媒を用いてエチレンを重合する」発明が開示されている(特許文献1参照)。しかしながらこの技術によって得られるポリエチレンは低分子量ポリマーも含んでおり、ポリマー成型時に発煙が生じたり、成型品の低温衝撃性が低下したりする等の問題があり、低分子量ポリマーのさらなる削減が求められていた。
【0005】
フィリップス触媒以外にも、エチレン重合用触媒として粘土鉱物を特定の方法で処理したものが利用できることが知られている(例えば、特許文献2〜3参照)。特許文献2では、「(a)クロム塩及び塩基を水に溶解することにより、加水分解した第一溶液を調製し、その第一溶液を約20℃〜約100℃の範囲の温度に、溶液が約1.5〜約2.5の範囲のpHに達するまで連続的に攪拌しながら加熱し、それによってマスターバッチを形成し、(b)前記マスターバッチを水で希釈して希釈第二溶液を生成させ、前記希釈第二溶液を加熱して加熱第二溶液を生成させ、(c)二八面体又は三八面体スメクタイトである固体フィロ珪酸塩粘土を前記加熱第二溶液に添加し、そして加熱を継続し、(d)支柱型フィロ珪酸塩粘土を回収し、そして(e)前記支柱型フィロ珪酸塩粘土を乾燥して第一生成物を形成する、ことからなる支柱型フィロ珪酸塩粘土の製造方法」が開示されている。
【0006】
あるいは特許文献3では、「(I)粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を、周期表第4〜6族遷移金属原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸および有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオン、とからなる水溶性又は酸性水溶液に可溶性の塩と接触させて固体生成物を得る工程、(II)該固体生成物を洗液のpHが3〜7となるまで水で洗浄する工程、(III)水洗した固体生成物を乾燥する工程、及び(IV)乾燥した固体生成物を有機アルミニウム化合物と接触させて触媒を得る工程を順次実施することにより製造されるオレフィン重合用触媒」が開示されている。
【0007】
しかしながらこれらの技術によっても、得られるポリエチレンは低分子量ポリマーも含んでおり、ポリマー成型時に発煙が生じたり、成形品の低温衝撃性が低下したりする等の問題があり、低分子量ポリマーのさらなる削減が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−80520号公報
【特許文献2】特開平5−238723号公報
【特許文献3】特開平9−194517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、周期表第6族遷移金属触媒を用いて、低分子量ポリマーの含有量の少ないポリエチレンを製造することを課題として鋭意検討を重ねた結果、イオン交換性を有する粘土鉱物を特定の方法で処理したものが低分子量成分の削減に有効であることを見出し、本発明を完成した。具体的には、重量平均分子量の1/100以下の低分子量成分の含有量が生成重合体中、2%以下のポリエチレンの製造が可能となる新規なオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に係る発明は、下記工程を逐次的に実施し、150〜400℃の温度で加熱、気体流通下での加熱、減圧下での加熱又は不活性有機溶媒との共沸脱水により製造される重合用触媒の存在下、オレフィンを重合し、重量平均分子量が5万〜200万であって、重量平均分子量の100分の1以下の低分子量成分の割合が2重量%以下とすることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に存する。
(1)スメクタイト族のイオン交換性層状珪酸塩を、水及び又は有機溶媒の存在下、クロム原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸及び有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる、水溶性又は酸性水溶液に可溶な塩である化合物Aで処理する工程
(2)工程(1)で得られた生成物を、周期表第1族又は第2族金属原子からなる有機金属化合物Bで処理する工程
【0011】
本願請求項2に係る発明は、工程(1)と工程(2)の間に、工程(1)で得られた生成物を、化合物Aが可溶な溶媒で洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法に存する。
【0012】
本願請求項3に係る発明は、化合物Aが、少なくとも2価又は3価のクロムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合体の製造方法に存する。
【0013】
本願請求項4に係る発明は、化合物Bが、アルキルリチウム又はアルキルマグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法に存する。
【0014】
本願請求項5に係る発明は、オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の触媒を使用すれば、低分子量成分の生成割合が少ないポリオレフィンの製造が可能となる。ポリマーの成形時に発煙を生じたり、成形品の低温衝撃性が低下したりすることもなく、環境負担が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の工程(1)においては、イオン交換性層状化合物が使用される。イオン交換性層状化合物とは、例えば、粘土及び粘土鉱物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物が使用される。イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。
【0017】
イオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
【0018】
イオン交換性層状化合物としては各種公知のものが使用できる。天然物に限らず、工業的に合成された物であってもよい。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
【0019】
2:1型鉱物類としては、例えば、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族; バーミキュライトなどのバーミキュライト族; 雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族; パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族; Mg緑泥石などの緑泥石族が挙げられる。
【0020】
2:1リボン型鉱物類としては、例えば、セピオライト、パリゴルスカイトなどが挙げられる。
【0021】
また、人工の合成物として、例えば、合成ヘクトライト、合成雲母(マイカ)、合成サポナイト等が挙げられる。
【0022】
本発明で原料として使用する珪酸塩としては、上記の混合層を形成した層状珪酸塩を用いることができる。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
【0023】
本発明で使用する珪酸塩は、天然品または工業原料として入手したもの、或いは人工の合成物は、後述する工程(1)および(2)以外には他の処理を行うことなく、そのまま用いることができるが、工程(1)の前に、予め、酸処理を行っても良い。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造に含まれるAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部又は全部を溶出させる効果がある。
【0024】
酸処理で用いられる酸は無機酸または有機酸が使用でき、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、酢酸あるいはシュウ酸である。これらは2種以上併用することも可能である。
【0025】
酸処理条件は、公知の方法が特に制限なく使用できる。例えば酸濃度は水溶液等の溶媒中の濃度で0.1〜30重量%が、処理温度は室温〜使用溶媒の沸点の間の温度が、処理時間は5分〜24時間の間の条件が、それぞれ使用できる。この酸処理は、イオン交換性層状化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。
【0026】
本発明において、酸処理以外の予備処理として、粉砕や造粒等でイオン交換性層状珪酸化合物の粒子形状の制御を行ってもよい。また、アルカリ処理や有機物処理、酸化剤処理、還元剤処理等の他の化学処理を併用してもよい。
【0027】
このようにして得られる予備処理したイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上、特には0.3〜5cc/gのものを使用することが好ましい。
【0028】
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
【0029】
次に、上記したイオン交換性層状化合物は、周期表第6族遷移金属元素からなる化合物で処理される。本発明において、該化合物を「化合物A」と指称する。なお、本発明において元素の周期表とは、1995年IUPACで定められた第1族から第18族にわたる長周期型周期表をいうものである。
【0030】
本発明の工程(1)で使用する化合物Aは、周期表第6族遷移金属元素を含有する化合物である。周期表第6族遷移金属元素としては、クロム、モリブデン、タングステンが挙げられる。化合物Aは、具体的には、周期表第6族遷移金属原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸および有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオン、とからなる塩である。好ましくは水溶性又は酸性水溶液に可溶性の化合物である。ここで、酸性水溶液とは、pH6以下、好ましくは、pH3以下の水溶液を意味する。周期表第6族遷移金属元素のうち好ましくはクロム原子である。
【0031】
陽イオンとしては、2、3、4、5又は6価のクロムイオン、モリブデンイオン、タングステンイオンが挙げられるが、特に2価又は3価のクロムイオンが好ましい。
【0032】
陰イオンの具体例としては、CH3COCHCOCH3-イオン、OOCCH3-イオン、(OOCH)2OH-イオン、NO3-イオン、ClO4-イオン、PO43-イオン、O2Cl23-イオン、F-イオン、Cl-イオン、Br-イオン、I-イオンが例示できる。これらのうち好ましいものはNO3-イオンである。
【0033】
化合物Aの具体例としては、Cr(CH3COCHCOCH33、Cr(OOCCH33、Cr(OOCH)2OH、Cr(NO33、Cr(ClO43、CrPO4、Cr2(SO43、CrO2Cl2、CrF3、CrCl3、CrBr3、CrI3等が挙げられる。また、クロム原子をモリブデン、タングステンに置き換えた化合物も同様に例示できる。また、これら塩は2種以上、使用してもよい。これらのうち好ましい化合物はCr(NO33である。
【0034】
次に、工程(2)として、前記工程(1)で得られた生成物を、周期表第1族又は第2族金属原子からなる有機金属化合物で処理する。本発明において、工程(2)で使用される該有機金属化合物を「化合物B」と指称する。
【0035】
化合物Bは、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られるポリオレフィンに含まれる低分子量ポリマーの生成を抑制させることを目的として使用される。具体的には、下記一般式(1)または(2)で表される有機金属化合物である。
【0036】
1−R1 ・・・・・・(1)
(M1は、周期表第1族元素を表し、R1は水素原子、炭化水素基または酸素含有炭化水素基を表す。以下、一般式(1)で表される有機金属化合物を「化合物B1」と称することがある。)
23−M2 ・・・・・(2)
(M2は、周期表第2族元素を表し、R2およびR3は水素原子、炭化水素基、酸素含有炭化水素基またはハロゲン含有炭化水素基を示し、これらは同一でも異なっていても良い。以下、一般式(2)で表される有機金属化合物を「化合物B2」と称することがある。)
化合物B1のM1は周期表第1族元素のリチウム、ナトリウム、カリウム等であるが、好ましくはリチウムである。R1としては、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のハロゲン含有炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基もしくはアリールオキシ基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基もしくはアリールオキシカルボニル基のような酸素含有炭化水素基が挙げられる。
【0037】
化合物B1の具体例を周期表第1族元素がリチウムの場合で例示すると、R1が水素である水素化リチウム;R1が炭化水素基であるメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ナフタレンリチウム; R1が酸素含有炭化水素基であるリチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムブトキシド、リチウムフェノキシドを挙げることができる。これらのR1のうち好ましくは水素原子又は炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。M1がリチウム以外の元素についても同様のR1との組み合わせが例示できる。
【0038】
化合物B2のM2は周期表第2族元素のベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等であるが、好ましくはマグネシウム、あるいはカルシウムであり、さらに好ましくはマグネシウムである。また、化合物B2のR2およびR3は水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基あるいはハロゲン含有炭化水素基を示す。炭化水素基の具体例としはメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル等の脂肪族炭化水素基;フェニル、トリル、ナフチル等の芳香族炭化水素基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基である。アルコキシ基の具体例としてはメトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭化水素基部分が脂肪族炭化水素基であるものである。
【0039】
ハロゲン含有炭化水素基は、前述した炭化水素基中の水素原子がハロゲン原子で置換された化合物であり、好ましいハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素であり、さらに好ましくはフッ素である。これらの基は任意の組み合わせで使用することが出来るが、好ましくは、水素と炭化水素基から選ばれる組み合わせであり、さらに好ましくは炭化水素基同士の組み合わせである。
【0040】
以上、本発明の工程(1)及び工程(2)で使用される物質について説明したが、次に各工程で実施される各操作について説明する。
【0041】
工程(1)は、イオン交換性層状化合物を、前述の化合物Aで処理する操作である。 ここで「処理」とは、イオン交換性層状化合物と化合物Aを以下に記載する所定の条件下で接触させることを意味する。
【0042】
具体的な態様としては、イオン交換性層状化合物と化合物Aを接触するに際し、
(a1)溶媒を使用することなく、両方を固体同士として接触させる方法、
(b1)一方を固体の状態にしておき、そこに、溶媒により懸濁させた他方の懸濁液を接触させる方法
(c1)両方を溶媒により懸濁させた状態にしておき、両者を接触させる方法、
(d1)イオン交換性層状化合物は固体の状態にしておき、そこに、化合物Aを溶媒に溶解させた溶液を接触させる方法、
(e1)イオン交換性層状化合物を溶媒に懸濁させた状態にしておき、そこに、化合物Aを溶媒に溶解させた溶液を接触させる方法、などが挙げられる。
【0043】
ここで用いる溶媒は特に制限されないが、好ましくは、水、アルコール、エーテル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等であり、特に好ましくは水である。
【0044】
接触させる条件は任意の条件が使用できるが、通常、接触時間は5分〜24時間、接触温度は室温〜溶媒の沸点の間、溶媒が無い場合は室温〜200℃の間、用いる溶媒に対する各成分の濃度は0.1〜30重量%で行われる。また、これらの条件での接触は、撹拌して行うことが好ましい。接触の後は、該接触混合物をそのまま、次の工程(2)で使用することができるが、移送・保管などの要請に応じて、一部又は全部の溶媒を除去、乾燥してもよい。なお、溶媒を使用することなく、両方を固体同士として接触させる方法においては、ボールミルや振動ミルなどの混合機を用いて両者を混合し、更に要すれば粉砕、分級してもよい。移送・保管などの要請に応じて、得られた固体混合物に適宜の溶媒を混合してもよい。なお、工程(1)において、水、アルコールなど有機金属化合物に対して反応性を有する溶媒が使用された場合には、該溶媒は、工程(2)において不都合であるから、大部分除去することが必要である。
【0045】
次に、工程(2)の操作について説明する。工程(2)では、上述した工程(1)で得られた生成物を、前述の化合物Bで処理する操作である。ここで「処理」とは、工程(1)で得られた生成物に対して、化合物B1またはB2を以下に記載する所定の条件下で接触させることを意味する。
【0046】
具体的な態様としては、工程(1)で得られた生成物と化合物Bを接触するに際し、
(a2)工程(1)で得られた固体状態の生成物に、化合物Bの懸濁液を接触する方法、
(b2)工程(1)で得られた固体状態の生成物に、化合物Bの溶液を接触する方法、
(c2)工程(1)で得られた懸濁状態の生成物に、化合物Bの懸濁液を接触する方法、
(d2)工程(1)で得られた懸濁状態の生成物に、化合物Bの溶液を接触する方法、
(e2) 工程(1)で得られた固体状態の生成物に、固体状態の化合物Bを接触する方法、などが挙げられる。
【0047】
上記の中では、接触操作中、溶媒が介在する(a2)〜(d2)の方法は好ましい方法である。溶媒としては工程(1)の場合と異なり、水は使用できないが、アルコール、エーテル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が使用できる。中でもヘキサン、ヘプタン、トルエン等の不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。また、接触操作を窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うのは好ましい。
【0048】
接触温度は−20℃〜溶媒の沸点の間、特に室温〜溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。接触時間は5分〜24時間が好ましく、これらの接触は撹拌して行うことが好ましい。化合物B1またはB2の使用量は、前記工程(1)で得られた生成物1gあたり0.01〜10,000mmol、好ましくは0.1〜100mmolである。接触操作後、必要に応じて溶媒を除去することにより固体生成物が得られる。得られた固体生成物はそのままオレフィン重合用触媒として使用可能であるが、好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の不活性炭化水素溶媒で洗浄した後に用いられる。
【0049】
本発明は、上記の工程(1)及び工程(2)を逐次的に実施することを必須の要件とするものであるが、ポリオレフィン製造時、低分子量成分を抑制させる効果を更に向上させるために、工程(1)と工程(2)の間で、工程(1)で得られた生成物を化合物Aが可溶な溶媒を用いて洗浄することが好ましい。洗浄することにより、イオン交換性層状化合物から遊離した化合物Aを除去することが出来、重合活性点を均質化する効果が期待できるからである。
【0050】
洗浄操作としては、遊離した化合物Aを除去可能であれば任意の方法が可能であるが、好ましくは、化合物Aが可溶であり且つ化合物Bが不要な溶媒により、一旦、化合物Aを溶解させた後、ろ過または上澄み除去により遊離した化合物Aを除去する方法が用いられる。1回の操作で用いる溶媒の量は、遊離した化合物Aが全量溶解可能な量、すなわち化合物Aの溶媒に対する濃度が飽和溶解度以下となる量、を用いることが好ましい。このような溶媒としては、水、アルコール、エーテル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素が用いられ、特に水が好ましい。
【0051】
化合物Aを溶解させる際の温度は、室温〜使用溶媒の沸点の間から選択される。溶媒を添加し溶解させるまでの時間は1分〜24時間であり、化合物Aを溶解させている間は、撹拌やスラリーの循環を実施して濃度分布が出来ることを抑制することが好ましい。溶媒に溶解した、すなわち遊離した化合物Aを除去する方法としては、ろ過による除去や静置後に上澄みを除去する方法が一般的に用いられるが、用いる溶媒が水である場合にはろ過することが好ましい。洗浄操作は通常、1〜10回、好ましくは、2〜5回繰り返される。
【0052】
工程(1)の操作を、前述の(b1)〜(e1)に示した溶媒の存在下に実施する場合に、溶媒と共に更に酸を共存させて行うことができる。この場合も洗浄は上述の手法により実施することが可能である。洗浄の程度としては、洗液のpHが3〜7になるまで中性の溶媒で洗浄することが好ましい。洗浄が不足すると重合活性の低下を起こすことがある。
【0053】
工程(1)で水やアルコールなど、有機金属化合物に対して反応性を示す溶媒を使用した場合は、溶媒を加熱除去して使用することが好ましい。溶媒を加熱除去する方法は特に制限されないが、加熱脱水、気体流通下の加熱脱水、減圧下の加熱脱水および不活性有機溶媒との共沸脱水等の方法が用いられる。加熱の際の温度は、溶媒の沸点以上、好ましくは150℃以上であるが、800℃を越えるような高温条件は構造破壊が生じるため好ましくない。クロム触媒に関する公知技術の一つとして、クロムの価数を6価に変換するために、600℃を超える高温・酸素存在下での焼成を行う技術があるが、本発明では、このようなクロムの価数の変換は不要であるため、加熱温度は200〜400℃で十分である。
【0054】
加熱時間は、0.5時間以上好ましくは1時間以上、上限は3〜12時間程度である。その際、乾燥した後の工程(1)により得られる固体生成物の溶媒含有量が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間減圧乾燥した場合の溶媒含量を0%としたとき、3重量%以下、好ましくは1重量%以下とする。
【0055】
次に、上記の操作で得られた重合触媒によるオレフィン重合体の製造法につき説明する。本発明に用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。また、上記オレフィンの単独重合のほか上記オレフィンの2種以上の混合物を用いるランダム共重合や2種以上のオレフィンを用いるブロック共重合にも好適に適用できる。重合反応は、チーグラー触媒を使用する公知の重合方法が採用でき、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に1段又は多段で行われる。重合温度は−50〜250℃、重合圧力は特に制限されないが、好ましくは常圧〜約2000kg・f/cm2の範囲が例示できる。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
【0056】
重合に際しては、重合活性の維持向上のため、スカベンジャーとして有機アルミニウム化合物を使用することが好ましい。使用される有機アルミニウムには特に制限がないが、好ましくは下記一般式(3)で表されるものである。
【0057】
AlRa3-a ・・・・・(3)
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、aは0<a≦3の数を示す。)
【0058】
上記の有機アルミニウム化合物としては、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類等も使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0059】
これらの有機アルミニウム化合物を使用する場合には、工程(2)で得られた固体触媒1gあたり0.001〜100mmol、好ましくは0.01〜10mmolの比率とする。
【0060】
本発明においては、本重合の前にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等のオレフィンと予備的に接触させて重合し、必要に応じて前記の不活性炭化水素溶媒で洗浄したものを触媒として用いることもできる。この予備的な重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒1gあたり、0.01〜1000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
【0061】
次に、本発明触媒の具体的な応用例及び効果を示す。本発明によれば低分子量成分の生成量を低減することができるので、例えば、重量平均分子量(Mw)の1/100以下の低分子量成分の含有量を生成重合体に対して2%以下、好ましくは1.5%以下とすることができる。更に具体的にいえば、重量平均分子量が30万未満、特に5万〜30万のポリマーを製造する方法において、分子量1000以下の成分の含有量を1%以下、好ましくは0.6%以下とすることができる。このようなポリマーは小型容器等のブロー成形用に好適であり、成形時の発煙発生を抑制するうえに特に効果が大きい。
【0062】
また、重量平均分子量が30万以上、好ましくは30万〜200万、より好ましくは40万〜150万のポリマーを製造する方法において、分子量1万以下の成分の含有量を3%以下、好ましくは2%以下とすることができる。このようなポリマーは、中型ないし大型容器等のブロー成形やパイプ成型用などに用いられ、成形品の低温衝撃性の低下を抑制するうえに特に効果が大きい。
【0063】
上記の通り、生成するポリマーの重量平均分子量はポリマーの使用目的、用途によって適宜に選択すればよく、いずれの用途においても、本発明の触媒は不都合な低分子量成分の含有量を低減する効果を発揮する。重量平均分子量の制御は重合温度、触媒量、分子量調節剤などによって行われるが、分子量調節剤としての水素の使用量を調節するのが簡便である。
【実施例】
【0064】
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これら実施例によって制約を受けるものではない。なお、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行った。また溶媒は、モレキュラーシーブMS−4Aで脱水した後、精製窒素でバブリングして脱気したものを用いた。
【0065】
実施例中、GPCにより重量平均分子量(Mw;ポリスチレン換算値)を測定した。このGPCの測定は、Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)を使用し、溶媒にオルトジクロルベンゼンを用い、測定温度140℃で行った。分子量分布の広狭の程度を表す指標としてQ値(数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比)はGPCの結果から算出した。特定の重量平均分子量(Mw)を有する重合体中の低分子量成分の割合はGPCの微分曲線から求めた。
【0066】
[実施例1]
(1)工程(1)の処理操作
純水490mlにCr(NO33・9H2O(和光純薬社製;試薬)を48g溶解させた。オイルバスにより90℃に昇温し、モンモリロナイト(水澤化学社製;ベンクレイSL)を100g添加した。そのまま90℃を保ち、5時間撹拌した。加熱終了後、吸引ろ過により、モンモリロナイトと水溶液を分離した。
【0067】
回収したモンモリロナイトに純水1000mlを加えて3分撹拌し、再び吸引ろ過を実施した。この操作を4回繰り返した。得られたCr塩処理モンモリロナイトを110℃の乾燥機にて一晩乾燥した。さらに減圧下、200℃で2時間乾燥を行い、窒素雰囲気下で保存した。
【0068】
(2)工程(2)の処理操作
窒素雰囲気下、工程(1)の処理操作により得られた固体1gをスターラーチップ入りの100mlの丸底フラスコに分取した。そこに、ブチルマグネシウム(Bu2Mg)のヘプタン溶液(0.5mol/L;アルドリッチ社製1.0mol/Lをさらにヘプタンで希釈)を6ml添加した。室温で1時間撹拌した後、静置して上澄みを抜き出し、さらにヘプタン30mlの添加と上澄みの抜き出し操作を2回繰り返し、遊離したBu2Mgを除去した。最終的に20mgモンモリロナイト/mlヘプタンのスラリーとして、重合に用いた。
【0069】
(3)エチレンの重合
精製窒素で充分置換された内容積1.5Lのオートクレーブに、ノルマルヘキサン800mlを入れた。90℃に昇温後、全圧をエチレンガスにより1.4MPaとした。次いで水素0.15MPaに相当する量を導入した。オートクレーブの外側に触媒導入用の容器をあらかじめ設置しておき、その中に、窒素シールをしながら実施例1(2)で得られた触媒スラリーを15ml添加した。触媒導入用容器の内圧を0.0MPaとしたあと、改めてエチレンガスにて加圧しオートクレーブへ全量圧送した。オートクレーブの内圧をエチレンガスにて1.6MPaとして、90℃、2時間、重合反応を実施した。2時間後、エタノール10mlをフィードし反応を停止した。その結果、ポリマー15gを回収した。GPCを測定した結果、Mw=210,000、Q値=8.0,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は0.3%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は0.8%であった。
【0070】
[実施例2]
(1)工程(1)の処理操作
実施例1(1)と同様に行った。
(2)工程(2)の処理操作
実施例1(2)と同様に行った。
(3)エチレンの重合
精製窒素で充分置換された内容積1.5Lのオートクレーブに、ノルマルヘキサン800mlを入れた。次いで、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.5mol/L)を2.0ml添加した。90℃に昇温後、全圧をエチレンガスにより1.4MPaとした。次いで水素0.15MPaに相当する量を導入した。オートクレーブの外側に触媒導入用の容器をあらかじめ設置しておき、その中に、窒素シールをしながら実施例1(2)で得られた触媒スラリーを5ml添加した。触媒導入用容器の内圧を0.0MPaとしたあと、改めてエチレンガスにて加圧しオートクレーブへ全量圧送した。オートクレーブの内圧をエチレンガスにて1.6MPaとして、90℃、2時間、重合反応を実施した。2時間後、エタノール10mlをフィードし反応を停止した。その結果、ポリマー65gを回収した。GPCを測定した結果、Mw=193,000、Q値=10.7,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は0.5%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は1.2%であった。
【0071】
[実施例3]
(1)工程(1)の処理操作
実施例1(1)と同様に行った。
(2)工程(2)の処理操作
窒素雰囲気下、実施例1(1)により得られた固体1gをスターラーチップ入りの100mlの丸底フラスコに分取した。そこに、n−BuLiのヘプタン溶液(0.5mol/L;アルドリッチ社製1.0mol/Lをさらにヘプタンで希釈)を6ml添加した。室温で1時間撹拌した後、静置して上澄みを抜き出し、さらにヘプタン30mlの添加と上澄みの抜き出し操作を2回繰り返し、遊離したn−BuLiを除去した。最終的に20mgモンモリロナイト/mlヘプタンのスラリーとして重合に用いた。
(3)エチレンの重合
実施例2(3)のエチレンの重合において、実施例2(2)で得られた触媒スラリーを用いる代わりに、実施例3(2)で得られた触媒スラリーを用いる以外は同様に行った。その結果、22gのポリマーを回収した。GPCを測定した結果、Mw=207,000,Q値=7.1,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は0.3%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は0.9%であった。
【0072】
[比較例1]
(1)工程(1)の処理操作
実施例1(1)と同様に行った。
(2)工程(2)の処理操作
窒素雰囲気下、実施例1(1)により得られた固体1gをスターラーチップ入りの100mlの丸底フラスコに分取した。そこに、トリエチルアルミニウム(Al(Et)3)のヘプタン溶液(0.5mol/L;アルドリッチ社製1.0mol/Lをさらにヘプタンで希釈)を6ml添加した。室温で1時間撹拌した後、静置して上澄みを抜き出し、さらにヘプタン30mlの添加と上澄みの抜き出し操作を2回繰り返し、遊離したトリエチルアルミニウムを除去した。最終的に20mgモンモリロナイト/mlヘプタンのスラリーとして重合に用いた。
(3)エチレンの重合
実施例2(3)のエチレンの重合において、実施例2(2)で得られた触媒スラリーを用いる代わりに、比較例1(2)で得られた触媒スラリーを用いる以外は同様に行った。その結果、61gのポリマーを回収した。GPCを測定した結果、Mw=227,000,Q値=14.2,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は1.2%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は2.4%であった。
【0073】
[比較例2]
(1)工程(1)の処理操作
実施例1(1)と同様に行った。
(2)工程(2)の処理操作
窒素雰囲気下、実施例1(1)により得られた固体1gをスターラーチップ入りの100mlの丸底フラスコに分取した。そこに、ジエチル亜鉛(Et2Zn)のヘプタン溶液(0.5mol/L;アルドリッチ社製1.0mol/Lをさらにヘプタンで希釈)を6ml添加した。室温で1時間撹拌した後、静置して上澄みを抜き出し、さらにヘプタン30mlの添加と上澄みの抜き出し操作を2回繰り返し、遊離したジエチル亜鉛を除去した。最終的に20mgモンモリロナイト/mlヘプタンのスラリーとして重合に用いた。
(3)エチレンの重合
実施例2(3)のエチレンの重合において、実施例2(2)で得られた触媒スラリーを用いる代わりに、比較例2(2)で得られた触媒スラリーを用いる以外は同様に行った。その結果、52gのポリマーを回収した。GPCを測定した結果、Mw=186,000,Q値=12.4,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は1.4%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は2.6%であった。
【0074】
[比較例3]
(1)工程(1)の処理操作
実施例1(1)と同様に行った。
(2)工程(2)の処理操作
窒素雰囲気下、実施例1(1)により得られた固体1gをスターラーチップ入りの100mlの丸底フラスコに分取した。そこにヘプタンを添加し、20mgモンモリロナイト/mlヘプタンのスラリーとして重合に用いた。
(3)エチレンの重合
実施例2(3)のエチレンの重合において、実施例2(2)で得られた触媒スラリーを用いる代わりに、比較例3(2)で得られた触媒スラリーを用いる以外は同様に行った。その結果、1gのポリマーを回収した。GPCを測定した結果、Mw=195,000,Q値=13.9,Mw≦1,000の低分子量成分の全体に対する割合は1.3%、全体ポリマーの重量平均分子量Mwの1/100以下の低分子量成分の全体に占める割合は1.2%分子量1,000以下の低分子量成分の全体に対する割合は2.8%であった。
【0075】
以上、実施例1〜3、及び比較例1〜3の結果を表1に示した。
【0076】
[実施例4〜6、比較例4〜6]
実施例1〜3、及び比較例1〜3において、重合反応時に水素を導入することなく、その他は同様にして実施した。これらの例は分子量調節剤としての水素が使用されないので、重量平均分子量が大きく70万〜100万程度のポリマーが得られた。詳細な結果を表2に示した。
【0077】
[実施例7〜8、比較例7]
実施例2、3、及び比較例1において、重合反応時の水素導入量を0.07MPaに減少し、その他は同様にして実施した。これらの例においては、分子量調節剤としての水素が少量使用され、重量平均分子量が29〜33万程度であるポリマーが得られた。詳細な結果を表3に示した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0081】
低分子量成分の生成割合が少ないポリオレフィンの製造が可能であり、特に射出成形品の製造原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を逐次的に実施し、150〜400℃の温度で加熱、気体流通下での加熱、減圧下での加熱又は不活性有機溶媒との共沸脱水により製造される重合用触媒の存在下、オレフィンを重合し、重量平均分子量が5万〜200万であって、重量平均分子量の100分の1以下の低分子量成分の割合が2重量%以下とすることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
(1)スメクタイト族のイオン交換性層状珪酸塩を、水及び又は有機溶媒の存在下、クロム原子を含む陽イオンと、ハロゲンイオン、無機酸及び有機酸の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる、水溶性又は酸性水溶液に可溶な塩である化合物Aで処理する工程
(2)工程(1)で得られた生成物を、周期表第1族又は第2族金属原子からなる有機金属化合物Bで処理する工程
【請求項2】
工程(1)と工程(2)の間に、工程(1)で得られた生成物を、化合物Aが可溶な溶媒で洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
化合物Aが、少なくとも2価又は3価のクロムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
化合物Bが、アルキルリチウム又はアルキルマグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−77430(P2010−77430A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213649(P2009−213649)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【分割の表示】特願2004−102185(P2004−102185)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】