説明

オートクレーブ工法による材料の結合方法及び結合構造

【課題】異種材料であっても接着剤やビスや釘等の留具を使用せずとも二つの部材同士を良好な見栄えで結合して一体化でき、一定厚の製品を製作可能で、不良品率を効果的に低下させ得るオートクレーブ工法による材料の結合方法及び結合構造を提供する。
【解決手段】被結合部材6,7,8同士をバギングフィルム2で被覆して気密シールする工程と、被結合部材を封入したバギングフィルム2内を減圧脱気する工程と、脱気したバギングフィルム内に収容された被結合部材をオートクレーブの加工槽4内において加熱すると共に加圧して被結合部材の接合部同士を密接させて互い結合させる工程を経る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別部材同士や異種材料同士を結合する方法及びその方法によって構成された結合構造に係り、特に、接着剤や留具の類を用いずに別部材同士や異種材料同士を互いに組み付けて結合する方法及びその方法によって構成された結合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、真空成形によって異種の材料をインサートすることはできない。従って、異種材同士を組み付けようとする場合には、組み付ける二つの部材間に接着剤を介在させてそれらを結合させたり、組み付ける二つの部材同士を互いにビス止めしたりして結合する必要があった。
【0003】
例えば、板面の中央に表裏方向に向かって貫穿された長円形の穴509を有する樹脂Aから成る長方形の板状の基板部材において、この穴509に、前記長円と外形がほぼ同等の長円形に形成された金属製の長円環状の金属部材を固定し、更にこの金属部材の内側の長円形の空隙に樹脂Bから成る前記金属部材の内側の長円形とほぼ同等の形状の樹脂部材を固定して、被結合部材全体を一体化してなる構造物を形成する場合、それらの三つの部材を一体化する公知の方法としては、それらの部材間に接着剤を介在させて結合する接着結合法(図9参照)や、それらの部材同士を互いにビスによって止める止め結合法(図10参照)や、樹脂部材を基板領域までオーバーラップさせるように金属部材中に樹脂Bをインサートするインサート成形結合法(図11参照)が挙げられる。
【特許文献1】特開2001−62521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9(A)及び(B)に示す接着結合法では、基板部材506aの穴509aに金属部材507aを配設し、その内側の長円形の空隙に樹脂部材508aを配設して、基板部材506aの穴509aと金属部材507aの外周面522との間及び金属部材507aの内周面523と樹脂部材508aの外周面522との間に、それぞれ接着剤520を介在させることによって、それらの部材同士を接着して結合して被結合部材全体501aを一体化した構造物500aを得ている。しかしながら、この方法では、樹脂と金属の接着性の問題、接着剤520のはみ出しによる汚れの問題、接着剤520の充填若しくは塗布不良により隙間が生じたり、さらには接着不良の問題などが生じ得る。
【0005】
ビス止め結合法では、図10(A)に示すように、基板部材506bの穴509bに、基板部材506bの穴509bの深さΛよりもこの穴509b方向の長さλが短い金属部材507bを配設し、基板部材506bの穴509bの深さΛに対する金属部材507bの不足分の空隙及び金属部材507bの内側の長円形の空隙に樹脂部材508bを配設して、樹脂部材508bと金属部材507bとをビス又は釘521によって固定し、それらの部材同士を結合し、被結合部材全体501bを一体化した構造物500bを得ている。しかしながら、この方法では、図10(B)に示すように、ビス止め若しくは釘打ちの都合上、それらによる締結部の大型化、幅広化、厚みのアップが必要となるうえ、場合によっては厚さ方向に段差ができてしまうという問題があった。
【0006】
インサート成形結合法では、図11(A)及び(B)に示すように、基板部材506cの穴509cに金属部材507cを配設し、その内側の長円形の空隙に樹脂部材508cを配設し、この樹脂部材508cを前記穴509cの深さwに対応する厚さよりも板厚Wを厚くして基板部材506c領域までオーバーラップさせて樹脂Aと樹脂Bとの重なり合う部分aを形成して結合させることによって、それらの部材同士を結合して被結合部材全体501cを一体化した構造物500cを得ている。しかしながら、この方法では樹脂部材508cの板厚Wがアップしてしまうという問題があり、例えば樹脂部材508cを、光を透過させる目的で用いる場合には、板厚Wのアップによる透過光量の減少や配向性能の低下を来すという問題が生じる。また、樹脂の重なり部分aが不可欠であって厚さ方向に段差ができ、その部分の見栄えが悪くなってしまうという問題や金型費用が高額化してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作されたものであり、異種材料同士であっても簡便な方法によって接着剤やビスや釘等の留具を使用せずに良好な見栄えで結合して一体化することができ、一定厚の製品を製作可能で、不良品率を効果的に低下させることができるオートクレーブ工法による材料の結合方法及び結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のオートクレーブ工法による材料の結合方法は、被結合部材同士をバギングフィルムで被覆して気密シールする工程と、被結合部材を封入したバギングフィルム内を減圧脱気する工程と、脱気したバギングフィルム内に収容された被結合部材をオートクレーブの加工槽内において加熱すると共に加圧して上記被結合部材の接合部同士を密接させて互いに結合させる工程を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明のオートクレーブ工法による材料の結合方法において、一方の被結合部材が樹脂を主成分とする部材であり、他方の被結合部材が金属を主成分とする部材であり、好ましくは、一方の被結合部材が熱可塑性樹脂を主成分とする部材である。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のオートクレーブ工法による材料の結合方法によって形成された結合構造は、被結合部材同士の接合面が係合形状を形成して被結合部材同士が互いに密着して結合していることを特徴としている。
【0011】
本発明による材料の結合構造において、好ましくは、金属を主成分とする被結合部材は凹部を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が凹部に進入し凹部の表面に密着して、接合面の係合形状が形成されている。
【0012】
本発明による材料の結合構造において、好ましくは、金属を主成分とする被結合部材は一表面から反対側の表面まで貫通した貫通孔を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が貫通孔に進入し貫通孔の表面に密着して、接合面の係合形状が形成されている。
【0013】
本発明による材料の結合構造において、好ましくは、金属を主成分とする被結合部材は一表面から反対側の表面まで貫通した貫通孔を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が貫通孔に進入し貫通孔から抜け出て抜け止めを形成して、接合面の係合形状が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オートクレーブ工法を採用し、被結合部材を加熱・加圧することによって変形させ、被結合部材同士を密着させて一体化させるようにしたことによって、異種材料であっても簡便に、接着剤或いはビスや釘等の留具を使用せずとも2つの部材同士を良好な見栄えで結合して一体化することができる。また、本発明においては、接着剤や留具を使用していないため、それらを用いた場合に伴う各製品個体それぞれにおいて種々に発生する問題が生じることがないので、不良品率を大幅に低下させ、安定した高品質の製品を生産することができる。また、本発明によれば、接合部周辺に不要な凹凸や段差の無い、一定厚の製品を製作可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1〜4を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のオートクレーブ工法による被結合部材全体1の加工形態を模式的に示しており、図2は図1における被結合部材全体1の拡大図である。図3は図2のA部を拡大した断面図、図4は図2のA部の結合後における変形例を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施態様のオートクレーブ工法による材料の結合方法は下記の工程を経る。まず、それぞれ適宜の位置に配置した被結合部材全体1をバギングフィルム2で被覆し、これを袋状に気密シールして密閉袋3を構成し、密閉袋3内に被結合部材全体1を適宜位置に配置した状態でオートクレーブの加工槽4内に配置する。オートクレーブの加工槽4内に配置した密閉袋3は、該密閉袋3内の気体を脱気し得るように脱気装置(図示せず)に連結しており、この脱気装置によって被結合部材全体1を収容した密閉袋3内が減圧脱気される。その後、脱気した密閉袋3内に収容された被結合部材全体1をオートクレーブの加工槽4内において加熱すると共に、これを密閉袋3の外部から加圧して被結合部材全体1の接合部5同士を密接させ、被結合部材同士が互いに外れ難くなるように結合させる。
【0017】
密閉袋3内に互いに適宜位置に配置した被結合部材全体1の状態を示したのが図2である。図2(A)は被結合部材全体1の断面図で、図2(B)は被結合部材全体1の平面図である。図2に示すように、被結合部材全体1は、樹脂Aから成る基板部材6と、その内部に配置される金属製の金属部材7と、この金属部材7の内部に配置される樹脂Bから成る樹脂部材8とから構成されている。
【0018】
基板部材6は、樹脂Aを主成分とする例えば長方形の板状の部材である。この樹脂Aは、好ましくは、熱可塑性樹脂を採用し、オートクレーブの加工槽4内において、被結合部材全体1を加熱した際に適宜温度で樹脂Aが軟化し、これを加圧した際に適宜形状に変形して良好な結合状態を得ることが容易にできる。基板部材6の板面のほぼ中央には、表裏方向に向かって長円形の穴9が貫穿されている。
【0019】
金属部材7は、常温で固体の所望の金属を主成分として構成される。金属部材7は、基板部材6の穴9の形状とその外形がほぼ同等の長円形に形成された長円環状に形成されている。ただし、図2(A)のA部に示す金属部材7の縦断面の形状は、金属部材7と結合する基板部材6及び樹脂部材8のそれぞれの境界面となる接合面10a,10bに形成される係合形状によって、該接合面10a,10bの最外端面よりも内側に窪んだ凹部11を有している。その凹部11の形態を例示したのが図3である。
【0020】
金属部材7の断面形状を図3(A),(B),(C)に示すように構成すれば、結合後において、加熱及び加圧によって凹部11に対して樹脂A及び樹脂Bがそれぞれ進入して該凹部11の表面に密着して結合することになる。
【0021】
図3(A)に示す金属部材7aにおいては、その外周面12及び内周面13における高さ方向の中央部がそれぞれ金属部材7aの内側に向かって湾曲して凹落している。加熱及び加圧前においては、樹脂A及び樹脂Bの端面はほぼ垂直であるが、加熱及び加圧後において金属部材7aの窪んだ凹部11に樹脂A及び樹脂Bがそれぞれ進入してその形状に馴染んで互いに密着する。
【0022】
図3(B)に示す金属部材7bにおいては、その高さ方向のほぼ中央に外周面14と内周面15に渡って貫通した貫通孔16が形成され、加熱及び加圧前においては、樹脂A及び樹脂Bの端面はほぼ垂直であるが、加熱及び加圧後において、金属部材7bの貫通孔16に樹脂A及び樹脂Bがそれぞれ進入してその形状に馴染んで互いに密着する。
【0023】
図3(C)に示す金属部材7cにおいては、樹脂A及び樹脂Bの高さHがほぼ同等であるのに対して、その高さHよりも金属部材7cの高さhが低く形成され、加熱及び加圧前においては、樹脂A及び樹脂Bの端面はほぼ垂直であるが、加熱及び加圧後において、金属部材7cの高さの不足部分に樹脂A及び樹脂Bがそれぞれ進入してその形状に馴染んで互いに密着しつつ均等な高さになる。
【0024】
ここで、凹部11は、図3に関する上記説明からも明らかなとおり、必ずしも窪んだものでなければならないというものではなく、貫通した孔であってもよく、或いは図3(C)の例のように高さ方向に段差をつけたようなものであってもよい。ただし、金属部材7の断面形状は、特に限定されるものではないが、結合後において、金属部材7が他の部材から抜脱しないように構成することが望ましい。
【0025】
金属部材7の断面形状は、図3(A)或いは(B)に示したものの他に、例えば、図4(A),(B),(C)に示すような形状であってもよい。具体的には、図4(A)に示す断面形状は金属部材7dの四つ角を湾曲させて切り欠いた形状であり、図4(B)に示す断面形状は金属部材7eの四つ角を内側に向かって段状に切り欠いた形状であり、図4(C)に示す断面形状は金属部材7fの高さ方向において幅の異なる二つの部分を形成し、その境界付近である高さ方向のほぼ中央に外周面17と内周面18に渡って貫通した貫通孔19を設けたような形状である。
【0026】
樹脂部材8は、樹脂Bを主成分とする長円形状の板状の部材である。この樹脂Bは、好ましくは、熱可塑性樹脂を採用し、オートクレーブの加工槽4内において、被結合部材全体1を加熱した際に適宜温度で樹脂Bが軟化し、これを加圧した際に適宜形状に変形して、良好な結合状態を得ることが容易にできる。樹脂部材8は、金属部材7の内側の長円形の空隙とほぼ同等の形状である。
【0027】
以上のように構成されたオートクレーブ工法による材料の結合構造は、被結合部材である樹脂A製の基板部材6と金属製の金属部材7と樹脂B製の樹脂部材8とが、基板部材6と金属部材7の接合面10a及び金属部材7と樹脂部材8の接合面10bにおいて互いに密着して結合して、容易に抜脱しない形状に形成されている。そして、この結合構造は、簡便な方法により、一定厚で美麗な見栄えに仕上げることができる。
【実施例1】
【0028】
以下に、本発明の実施例1を図5に基づいて詳細に説明する。
図5(A)は本実施例の平面図、図5(B)は図5(A)の断面図である。図5に示すように、本実施例のオートクレーブ工法による材料の結合構造100は、熱可塑性の樹脂Aから成る平面長方形の基板部材106に、それぞれ表裏に貫通した円形、ハート形、十字形の穴109a,109b,109cを横一列に適当な間隔を存して併設してなる。それぞれの穴109a,109b,109cには、穴109a,109b,109cの形状に合わせた円形、ハート形、十字形の枠状の金属部材107a,107b,107cが嵌められている。それら金属部材107a,107b,107cの内側には、それぞれ円形、ハート形、十字形の互いに色違いの光透過性の熱可塑性樹脂B,C,Dから成る樹脂部材108a,108b,108cが嵌められている。これら基板部材106と金属部材107a,107b,107cと樹脂部材108a,108b,108cとから成る被結合部材全体101を、真空バギングして、オートクレーブ工法によって適宜温度に加熱しつつ適宜圧力に加圧して互いに馴染ませて結合する。
【0029】
以上のように構成される実施例1のオートクレーブ工法による材料の結合構造100は、例えば一方の面側から同一光源で光(図5(B)において矢印で図示)を照射した場合であっても、光透過性を有する各樹脂部材108a,108b,108cを透過した光は互いに異なるものとなるため、色調や光量が異なり、多彩な色合いを発現することが可能である。このように、同一光源にして多彩な色合いの照明を、オートクレーブ工法を用いた一回の真空成形によって簡便に得ることができる。勿論、基板部材106をなす樹脂Aは光透過性の有無はどちらでもよく、樹脂Aとして光透過性の樹脂を選択する場合には、樹脂部材108a,108b,108cそれぞれの樹脂B,C,Dと異なるものを選択すれば、それらの樹脂部材108a,108b,108cと異なる色調が得られ、全体として多彩な色合いを醸し出すことができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の実施例2を図6に基づいて詳細に説明する。
図6(A)は本実施例の平面図であり、図6(B)は図6(A)の断面図である。図6に示すように、本実施例のオートクレーブ工法による材料の結合構造200は、熱可塑性の樹脂Aから成る平面長方形の基板部材206に、それぞれ表裏に貫通した楕円形、ハート形の穴209a,209bを横一列に適当な間隔を存して併設してなる。それぞれの穴209a,209bには、穴209a,209bの形状に合わせた楕円形、ハート形の枠状の金属部材207a,207bが嵌められている。
【0031】
この金属部材207a,207bは、基板部材206の厚さdよりも約2倍の厚さD(高さ)を有し、基板部材206の裏面から約半分が突出している。それぞれの金属部材207a,207bの内側には、楕円形、ハート形の互いに色違いの光透過性の熱可塑性樹脂B,Cから成る樹脂部材208a,208bが嵌められレンズの役割を果たすように構成されている。
【0032】
これらの基板部材206と金属部材207a,207bと樹脂部材208a,208bとから成る被結合部材全体201を、真空バギングして、オートクレーブ工法によって適宜温度に加熱しつつ適宜圧力に加圧して互いに馴染ませて結合する。また、基板部材206の裏面から突出した部分の金属部材207a,207bには、カップ状のカバー部材223a,223bがそれぞれ着脱自在に取り付けられている。
【0033】
カバー部材223a,223bは、底部220の開口部221をそれぞれ楕円形、ハート形に形成されており、基板部材206の面と平行な裾状の取付部222を有する。各カバー部材223a,223bは、底部220から天頂部224に向かって凸状に膨出し、内部を中空に形成されている。各カバー部材223a,223bの天頂部224の内側には光源225が配設されている。また、カバー部材223a,223bの内側表面には、光反射性を付与する処理がなされ、光源225から発せられた光(図6中において矢印で図示)が効率よくレンズに照射されるように工夫されている。
【0034】
以上のように構成される実施例2のオートクレーブ工法による材料の結合構造200は、各カバー部材223a,223bの内部に配設した光源225を発光させた場合において、基板部材206と金属部材207a,207bと樹脂部材208a,208bとが密着して結合していることから、それぞれの光源225からの光がレンズ内で漏光することがない。このため、このような構成の結合構造200によれば、個々の光源225からの光を互いに遮蔽する光遮蔽構造が容易に得られる。
【実施例3】
【0035】
次に、本発明の実施例3を図7に基づいて詳細に説明する。
図7は本実施例の主要部の断面図である。図7に示すように、本実施例のオートクレーブ工法による材料の結合構造300は、熱可塑性の樹脂から成る板状の基板部材306と、この基板部材306の端部に結合される金属製のブラケット307とから構成される。このブラケット307は、断面形状がZ字の斜線部をその水平部に対して垂直にしたような形状に形成され、その垂直部320の高さY1が基板部材306の板厚Y2とほぼ同等になるように構成されている。垂直部320には、図7において左右の表面に渡って貫穿した貫通孔311が設けられている。ブラケット307の垂直部320には、基板部材306の末端が当接して配置される。
【0036】
これら基板部材306とブラケット307とから成る被結合部材全体301を、真空バギングして、オートクレーブ工法によって適宜温度に加熱しつつ適宜圧力に加圧して、ブラケット307の垂直部320に当接していた基板部材306の端部の一部が、貫通孔311に進入し、反対側から若干広がり出て抜け止め321の役割を果たすようにして結合している。
【0037】
以上のように構成される実施例3のオートクレーブ工法による材料の結合構造300は、真空成型ではできなかった樹脂と金属ブラケットとの同時一体化成形が可能となる。また、本実施例の結合構造300は、樹脂製の基板部材306の面に、ブラケット307の一面を揃え、同一平面を形成するように基板部材306にブラケット307を固定することができる。
【実施例4】
【0038】
次に、本発明の実施例4を図8に基づいて詳細に説明する。
図8(A)は本実施例の断面図であり、図8(B)は図8(A)のブラケット407の斜視図である。図8に示すように、本実施例のオートクレーブ工法による材料の結合構造400は、熱可塑性の樹脂から成る平面長方形の基板部材406と、この基板部材406の表面に結合される金属製のブラケット407とから構成される。
【0039】
このブラケット407は、断面形状が上方に向かって窄まった左右対称の台形型の凸部430とそれら左右の下端部431がそれぞれ外方に向かって水平に延びた裾部432を有する形状に形成されている。その平らな天頂部433には、表裏に貫通した楕円形の貫通穴434が形成されている。左右それぞれの裾部432には、表裏に貫通した円形の貫通孔419が適宜位置に複数、図示例では5つずつ貫穿されている。
【0040】
これら基板部材406とブラケット407とから成る被結合部材全体401を、真空バギングして、オートクレーブ工法によって適宜温度に加熱しつつ適宜圧力に加圧して、ブラケット407の裾部432が基板部材406にめり込みつつ、裾部432の貫通孔419から基板部材406の樹脂が裾部432の表面に若干広がり出て抜け止め421の役割を果たすようにして結合している。
【0041】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、金属部材7の断面形状は、記説明の図示例に限定されるものではない。また、基板部材6も長方形状に限られるものではない。基板部材6の穴の形状や、金属部材7の輪郭、樹脂部材8の輪郭も、長円形状に限定されるものではないことは勿論である。また、オートクレーブ工法によって加熱および加圧する場合、被結合部材の材料の種類、例えば樹脂材料の種類に応じてその軟化温度や加圧力を適宜に調整して選定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のオートクレーブ工法による被結合部材全体の加工形態を模式的に示す模式図である。
【図2】(A)は図1における被結合部材を拡大した被結合部材全体の断面図であり、(B)は(A)の被結合部材全体の平面図である。
【図3】(A)〜(C)は図2(A)のA部を拡大した結合前の状態と結合後の状態との断面形状の一例を示す断面図である。
【図4】(A)〜(C)は図2(A)のA部を拡大した結合後の状態の断面形状の一変形例を示す断面図である。
【図5】(A)は実施例1のオートクレーブ工法による材料の結合構造の平面図、(B)は(A)の断面図である。
【図6】(A)は実施例2のオートクレーブ工法による材料の結合構造の平面図、(B)は(A)の断面図である。
【図7】実施例3のオートクレーブ工法による材料の結合構造の主要部の断面図である。
【図8】(A)は実施例4のオートクレーブ工法による材料の結合構造の断面図、(B)は(A)のブラケットの斜視図である。
【図9】(A)は従来の接着結合法を示す結合構造の断面図、(B)は(A)の平面図である。
【図10】(A)は従来のビス止め結合法を示す結合構造の断面図、(B)は(A)の平面図である。
【図11】(A)は従来のインサート結合法を示す結合構造の断面図、(B)は(A)の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,101,201,301,401 被結合部材全体
2 バギングフィルム
3 密閉袋
4 オートクレーブの加工槽
5 接合部
6,106,206,306,406 基板部材
7a〜7f,107a〜107c,207a〜207b 金属部材
8,108a〜108c,208a〜208b 樹脂部材
9,109a〜109c,209a〜209b 穴
10(a〜b) 接合面
11 凹部
12,14,17 外周面
13,15,18 内周面
16,19,311,419,434 貫通孔
100,200,300,400 結合構造
220 底部
221 開口部
222 取付部
223a〜223b カバー部材
224,433 天頂部
225 光源
307,407 ブラケット
320 垂直部
321,421 抜け止め
430 凸部
431 下端部
432 裾部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被結合部材同士をバギングフィルムで被覆して気密シールする工程と、上記被結合部材を封入したバギングフィルム内を減圧脱気する工程と、脱気したバギングフィルム内に収容された上記被結合部材をオートクレーブの加工槽内において加熱すると共に加圧して上記被結合部材の接合部同士を密接させて互いに結合させる工程を含むことを特徴とする、オートクレーブ工法による材料の結合方法。
【請求項2】
一方の被結合部材が樹脂を主成分とする部材であり、他方の被結合部材が金属を主成分とする部材であることを特徴とする、請求項1に記載のオートクレーブ工法による材料の結合方法。
【請求項3】
前記一方の被結合部材が熱可塑性樹脂を主成分とする部材であることを特徴とする、請求項2に記載のオートクレーブ工法による材料の結合方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のオートクレーブ工法による材料の結合方法によって形成された結合構造であって、被結合部材同士の接合面が係合形状を形成して上記被結合部材同士が互いに密着して結合していることを特徴とするオートクレーブ工法による材料の結合構造。
【請求項5】
金属を主成分とする被結合部材が凹部を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が上記凹部に進入し該凹部の表面に密着して、前記接合面の係合形状が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のオートクレーブ工法による材料の結合構造。
【請求項6】
金属を主成分とする被結合部材が一表面から反対側の表面まで貫通した貫通孔を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が前記貫通孔に進入し該貫通孔の表面に密着して、前記接合面の係合形状が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のオートクレーブ工法による材料の結合構造。
【請求項7】
金属を主成分とする被結合部材が一表面から反対側の表面まで貫通した貫通孔を有し、樹脂を主成分とする被結合部材が前記貫通孔に進入し該貫通孔から抜け出て抜け止めを形成して、前記接合面の係合形状が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のオートクレーブ工法による材料の結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−6730(P2008−6730A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180469(P2006−180469)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】