説明

カウルトップカバー

【課題】カウルトップカバーとフロントガラスとの間の隙間の発生を抑制する。
【解決手段】エンジンルーム2とフロントガラス5との間のカウル部6を覆うカバー本体部24を備える。カバー本体部24の後側に、フロントガラス5と嵌着する嵌着部25を設ける。カバー本体部24の前側に、連結部32を連続して設ける。連結部32に、対向部28と車体部材取付部27とを連続して設ける。対向部28から力が加わると、フード3から対向部28に力が加わると、対向部28を支持する連結部32の第1の連結板部51が弾性的に変形するとともに、二股状に分岐した第2の連結板部52と第3の連結板部53とに力が分散して加わる。これら第2の連結板部52と第3の連結板部53とが弾性的に変形することにより、カバー本体部24の変形や移動を抑制できる。嵌着部25とフロントガラス5との間に隙間が発生することがなく、外観を良好に維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとボンネットフードとの間に配置されるカウルトップカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントガラスの前端部とボンネットフードの後側部との間のいわゆるカウル部に配置され、このカウル部を覆って外観を向上するカウルトップカバーが用いられている。そして、このようなカウルトップカバーは、カウル部を覆う板状のカバー本体部を備え、このカバー本体部の後端部がフロントガラスの前端部に嵌合などして連結されているとともに、カバー本体部の前側下部が車体パネルに固定して支持され、車体に取り付けられている。さらに、基板部の前側上部には、弾性的に変形可能なシール部材が取り付けられ、このシール部材が閉じた状態のボンネットフードの後端下面に密着し、エンジンルームからの熱気や臭気を遮断するようになっている。また、このようなカウルトップカバーについては、ボンネットフードに上方から歩行者が衝突した際などに、適度に変形して、衝撃を吸収する構成が知られている。
【0003】
このようなカウルトップカバーとして、1枚の板で構成した前壁の上端部にカバー本体部の前端部を連設し、この前壁の上端部にシール部材を配置し、この前壁の下端部を車体に支持するとともに、この前壁の中間部あるいは下端部を屈曲可能とした構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、この構成では、ボンネットフードから荷重が加わった際に、前壁が屈曲して、衝撃を吸収することを図っている。
【特許文献1】特開2008−155768号公報 (図4−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1枚の板で構成した前壁の上端部をカバー本体部に連続させた構成では、荷重が加わった際に剛性の小さい前壁が大きく変形するとともに、カバー本体部を大きく変形あるいは移動させることになり、カバー本体部の後端部のフロントガラスとの嵌合部分に隙間が発生し外観が悪化するおそれがある。また、1枚の板で構成した前壁を設けた構成では、成形時の変形や輸送途中の熱の影響による変形などが大きく発生し、外観が悪化するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、良好な衝撃吸収特性を確保しつつ、外観を良好にできるカウルトップカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のカウルトップカバーは、ウインドシールドの縁部と車体部材とに支持されて、これらウインドシールドと車体部材に対向する相手部材との間のカウル部を覆うカウルトップカバーであって、連結央部、この連結央部から第1の方向に延設された第1の連結板部、前記連結央部から第2の方向に延設された第2の連結板部、及び前記連結央部から第3の方向に延設された第3の連結板部を備えた連結部と、前記第1の連結板部に連続し、前記相手部材に対向する対向部と、前記第2の連結板部に連続し、前記車体部材に取り付けられる車体部材取付部と、前記第3の連結板部に連続し、前記カウル部を覆うカバー本体部と、このカバー本体部に連続し、前記ウインドシールドの縁部に取り付けられるウインドシールド取付部とを具備したものである。
【0007】
そして、この構成では、相手部材から対向部を介して第1の連結板部に力が加わった際に、この力を第2の連結板部と第3の連結板部とで分散して吸収する。そこで、衝撃吸収特性が容易に良好になるとともに、カバー本体部の変形や移動を抑制し、ウインドシールド取付部とウインドシールドとの間に隙間が生じて外観が悪化することが抑制される。
【0008】
請求項2記載のカウルトップカバーは、請求項1記載のカウルトップカバーにおいて、相手部材は、車体部材の上方に位置するフードを構成し、対向部には、前記フードに密着するシール部材が設けられたものである。
【0009】
そして、この構成では、車体のフードとウインドシールドとの間のカウル部を覆うカウルトップカバーとして好適な特性のカウルトップカバーが提供される。
【0010】
請求項3記載のカウルトップカバーは、請求項1または2記載のカウルトップカバーにおいて、連結部は、車幅方向の両外側部に設けられ、車幅方向の中央部分には、対向部を車体部材取付部及びカバー本体部の少なくとも一方に連結する板状の第4の連結板部が設けられたものである。
【0011】
そして、この構成では、フードの車幅方向の両外側部については、車体の清掃作業の際に手を置くなどして外部から力が加わりやすい部分であるが、請求項1または2記載のカウルトップカバーを用いることにより、カバー本体部の変形や移動を抑制し、ウインドシールド取付部とウインドシールドとの間に隙間が生じて外観が悪化することが抑制される。さらに、車幅方向の中央部分は、板状の第4の連結板部を設けることにより、構造が簡略化され、製造コストが低減される。
【0012】
請求項4記載のカウルトップカバーは、請求項3記載のカウルトップカバーにおいて、連結部と第4の連結板部との境界部に、隣接する部分より容易に変形する変形容易部が設けられたものである。
【0013】
そして、この構成では、板状の第4の連結板部よりも反力が大きくなりやすい連結部の反力を小さくして、カウルトップカバーの長手方向に沿って反力を均一にすることが容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカウルトップカバーによれば、相手部材から対向部を介して第1の連結板部に力が加わった際に、この力を第2の連結板部と第3の連結板部とで分散して吸収できる。そこで、衝撃吸収特性を容易に良好にできるとともに、カバー本体部の変形や移動を抑制し、ウインドシールド取付部とウインドシールドとの間に隙間が生じて外観が悪化することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のカウルトップカバーの一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2において、1は車両である自動車の車体で、この車体1には、エンジンルーム2を覆う相手部材としてのフード3と、車室4の前側に位置するウインドシールドとしてのフロントガラス5との間のカウル部6を覆い、カウルトップカバー11が車体1に取り付けられている。なお、以下、前後、上下、及び両側などの方向に付いては、車体1の直進方向を基準として説明し、矢印F方向が前方、矢印U方向が上方、矢印W方向が両側方向である車幅方向である。
【0017】
そして、このカウル部6は、エアボックスなどとも呼ばれるもので、例えば鉄板にて形成されたカウルトップパネル12と、例えば鉄板にて形成され車体を構成する車体部材としての車体パネル14とにより、上側を開口した樋状に形成されている。そして、カウルトップパネル12の上側部には、フロントガラス受部15が設けられ、ホットメルトなどの液密に密着するゴム質の接着剤などのシール材16により、フロントガラス5がカウルトップパネル12に固定されている。また、車体パネル14は、エクステンションパネルなどとも呼ばれるもので、後側部がカウルトップパネル12に固着された図示しない底板部となり、この底板部の前側部が前側上方に立ち上げられた前板部19と、この前板部19の上端部が前側に略水平に延設された支持板部20とが設けられている。そして、このカウル部6には、車室4内に外気を導入する図示しない空調装置の空気取入部が接続されているとともに、このカウル部6の一側である右側には、ワイパー21のワイパーアームを駆動するモータなどが配置されている。
【0018】
また、フード3は、車体1の前部に位置してエンジンルーム2を開閉可能に覆うボンネットフードであり、外側すなわち閉じた状態で上側に位置するフードアウタ部26aと、このフードアウタ部26aの内側すなわち閉じた状態で下側に若干の間隔を介して位置するフードインナ部26bとが、一体あるいは別体に形成されている。
【0019】
そして、カウルトップカバー11は、図1ないし図5に示すように、フロントガラス5の前側下端の縁部5aとこのフロントガラス5の前方に位置するエンジンルーム2の後端との間のカウル部6を覆うもので、カウルカバーなどとも呼ばれ、カウル部6すなわちカウルトップパネル12及び車体パネル14の上側を覆って外観を向上するように、カウル部6に沿って車体1の両側方向Wすなわち車幅方向を長手方向とする長尺な略板状に形成されている。また、このカウルトップカバー11は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド系合成樹脂などの熱可塑性樹脂を金型を用いて射出成形し、弾性的に変形可能な一体形成の長尺な樹脂成型品として形成されている。また、このカウルトップカバー11の平面形状は、中央部分が前側に突出するように緩やかに湾曲している。
【0020】
そして、このカウルトップカバー11の断面形状は、基本的には、カウル部6を覆うカバー本体部24と、このカバー本体部24の後端部に設けられたウインドシールド取付部としてのクリップ状の嵌着部25と、このカバー本体部24の前側に位置し、支持板部20に支持される車体部材取付部27と、カバー本体部24の前側に位置し、フード3の後部下面に対向する対向部28とを備えている。そして、車幅方向の中央部分の一般部では、図5に示すように、カバー本体部24の前端部は車体部材取付部27の後端部に連続し、この車体部材取付部27の前端部から前側上方に第4の連結板部としての前壁部30が立ち上げられ、さらに、この前壁部30の上端部すなわち前端部から前側に向かって対向部28が延設されている。一方、車幅方向の両外側部では、図1に示すように、それぞれ連結部32が設けられ、この連結部32により、カバー本体部24、車体部材取付部27、及び対向部28が互いに連結されている。
【0021】
そして、カバー本体部24は、エンジンルーム2やフード3の形状及びワイパー21の配置などに応じて適宜の形状を採るものであるが、本実施の形態では、車幅方向を長手方向とする板状の部材の前後方向の中央部が上方に湾曲して湾曲部34が形成されている。そして、この湾曲部34に、カウル部6に外気を導入可能な格子状などの空気取入口35が形成されているとともに、裏面側には、補強用のリブ部36が形成されている。さらに、このカバー本体部24には、ワイパー21の軸が貫通する孔部37が形成されている。
【0022】
また、嵌着部25は、ガラス接合部とも呼び得るもので、カバー本体部24の後端部が面一に延設された平板状の上部嵌着片40と、この上部嵌着片40の裏面側すなわち下側に沿って配置される下部嵌着片41とを備えている。そして、下部嵌着片41は、爪部とも呼び得るもので、上部嵌着片40と略平行な平板状の嵌着片本体部41aと、この嵌着片本体部41aの前端部を上部嵌着片40と一体に連結する連結片41bと、嵌着片本体部41aの後端部から下側に延設された案内片41cとを備えている。また、連結片41bは、一部の厚さ寸法が小さく形成され、弾性的に変形可能になっている。そこで、この嵌着部25は、上部嵌着片40と下部嵌着片41との隙間をフロントガラス5の縁部5aにあてがって、カウルトップカバー11を所定方向である後方に押し込むことにより、上下の嵌着片40,41がフロントガラス5を弾性的に挟持し、フロントガラス5の縁部5aに嵌着して取り付けられるようになっている。
【0023】
さらに、車体部材取付部27は、車体取付部あるいは車体固定部とも呼び得るもので、支持板部20上に載置される略水平な板状をなす車体取付板部43を備え、この車体取付板部43の所定の位置に形成された複数の取付孔43aなどの取付部が、図示しない樹脂製のクリップやボルトなどの取付具を用いて、あるいは取付部に一体成形したフック形状により、車体パネル14の支持板部20に着脱可能に固定されている。さらに、この車体取付板部43の下面には、エプトシールと呼ばれるシール材44が接着などして取り付けられ、支持板部20に密着して、エンジンルーム2からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。なお、車幅方向の両端部すなわち連結部32を設けた部分では、自由端となる前端部から下方に向かうフランジ部45が設けられている。また、車体取付板部43は、カバー本体部24の前端部とほぼ同一平面上に位置している。
【0024】
また、対向部28は、シール取付部あるいはフードシール取付部などとも呼び得るもので、この対向部28の上部には、上側から接着あるいは嵌合などして、弾性変形可能なシール部材としてのフードシール47が配置されている。そして、このフードシール47は、例えばゴム製あるいは熱可塑性エラストマー製の筒状をなし、閉じた状態のフード3に液密に密着し、エンジンルーム2からの熱気や臭気を遮蔽するようになっている。
【0025】
そして、図5に示すように、車幅方向の中央部分の一般部では、カバー本体部24の前端部となる湾曲部34の下端部は、車体部材取付部27の後端部に一体に連続し、この車体部材取付部27の前端部から前側上方に傾斜して、1枚の板状の前壁部30が立ち上げられ、さらに、この前壁部30の上端部すなわち前端部から前側に向かって対向部28が延設され、いわば、対向部28が前壁部30に片持ちで支持されている。
【0026】
また、図1に示すように、車幅方向の両外側部に設けられた連結部32は、連結央部50を中心として、第1の方向としての前側上方に延びる平板状の第1の連結板部51と、第2の方向としての前側下方に延びる平板状の第2の連結板部52と、第3の方向としての後側下方に延びる平板状の第3の連結板部53とを備えている。そして、第1の連結板部51は、対向部28の後端部に連続し、第2の連結板部52は、車体部材取付部27の車体取付板部43の後端部に連続し、第3の連結板部53は、カバー本体部24の前端部に一体に連続している。すなわち、この連結部32は、対向部28を片持ちで支持する第1の連結板部51の下部が、前後に二股状に分岐して車体部材取付部27とカバー本体部24とに接続されている。また、この実施の形態では、第1の連結板部51と第3の連結板部53とは同一平面上に配置され、第1の方向と第2の方向すなわち第1の連結板部51と第2の連結板部52との間の角度は90度より大きく180度より小さく設定され、第2の方向と第3の方向すなわち第2の連結板部52と第3の連結板部53との間の角度は0度より大きく90度より小さく形成されている。
【0027】
さらに、第2の方向と水平方向すなわち第2の連結板部52の面に沿った方向と、車体部材取付部27の車体取付板部43の面に沿った方向とのなす角度θは90度より大きく180度より小さく設定されている。
【0028】
また、連結央部50と対向部28との間の寸法、すなわち、第1の連結板部51の高さ方向の寸法は、カウルトップカバー11の長手方向に沿って、各位置でほぼ等しくなるように設定されている。
【0029】
そして、このように形成されたカウルトップカバー11は、後端部の嵌着部25をフロントガラス5の縁部5aに挿入して嵌着し、前端部の車体部材取付部27を支持板部20上に載置し取付具を用いて固定することにより、車体1に取り付けられる。また、フード3を閉じた状態で、対向部28に支持されたフードシール47がフード3に密着し、エンジンルーム2からの熱気や臭気を遮蔽する。また、カバー本体部24の湾曲部34の前後の部分が、樋として機能し、雨水などを両側方に排水する。
【0030】
次に、外部から力が加わった際の動作を説明する。
【0031】
まず、通常の使用状態において、例えば、車体1の清掃時などに作業者がフード3に手をついて体重をかけた場合などには、フード3が下方に移動し、まず、フードシール47が変形し、さらに、対向部28に上方から力が加わる。すると、対向部28を支持する連結部32の第1の連結板部51が弾性的に変形するとともに、二股状に分岐した第2の連結板部52と第3の連結板部53とに力が分散して加わり、これら第2の連結板部52と第3の連結板部53とが弾性的に変形することにより、適度な反力を有するばねとして作用し、主として連結部32の部分のみの変形で力を受け止める。そこで、カバー本体部24の変形や移動が抑制され、カバー本体部24の後端部に影響が波及して嵌着部25とフロントガラス5との間に隙間が発生することなく、外観が良好に維持される。
【0032】
図6に、本実施の形態のカウルトップカバー11と、比較例とについて、対向部28に力を加えた場合の嵌着部25の移動量(変位量)を解析したシミュレーション結果を示す。それぞれ、幅100ミリの簡易モデルで、対向部28に矢印A方向に98N(10kgf)の荷重を加えた場合に、カバー本体部24の端末部である嵌着部25の後端部25aが矢印B方向に移動した量、すなわちフロントガラス5とカバー本体部24との隙間の量を解析したもので、図6において、(a)は本実施の形態、(b)は平面状に連結するカバー本体部24と車体部材取付部27との接続部分から壁部55を立ち上げて対向部28を支持した比較例1、(c)は比較例1において、壁部55の下端の接続部分にリブ56を設けた比較例2である。
【0033】
この結果、リブのない比較例1では、後端部25aは矢印B方向に0.6ミリ移動し、比較例2では、後端部25aは矢印B方向に0.2ミリ移動したのに対し、本実施の形態では、矢印B方向に0.1ミリ移動したのみであり、カバー本体部24の変形や移動を抑制して外観を良好にする効果があることがわかった。
【0034】
また、歩行者がフード3に上方から衝突した際など強い力を受けた際には、連結部32の第1の連結板部51が大きく変形するとともに、第2の連結板部52と第3の連結板部53が引き続き大きく変形し、さらに、カバー本体部24の変形及び移動により、適切な反力で衝撃を吸収する。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、カウルトップカバー11の少なくとも一部に連結部32を設けて対向部28を支持したため、フード3から対向部28を介して連結部32の第1の連結板部51に荷重や衝撃が加わった際に、これら力を第1の連結板部51から二股状に設けた第2の連結板部52と第3の連結板部53とがばね状に作用し、分散して吸収できる。
【0036】
そこで、上方からの清掃作業の際に手を置き体重をかけるなどの通常の荷重に対しては、連結部32が力すなわち変形を吸収し、カバー本体部24の変形や移動を抑制し、フロントガラス5と嵌着部25との間に隙間が生じて外観が悪化することを抑制できる。さらに、カバー本体部24の後端部は、造形及びレイアウト要件より、長手方向の全長に沿って下部嵌着片41を形成することが困難であるが、本実施の形態により、カウルトップカバー11の浮きを抑制し、隙間が生じて外観が悪化することを抑制できる。
【0037】
また、歩行者が衝突するなどの大きな衝撃に対しては、連結部32は全体が一気に変形して挫屈してしまうことがなく、第1の連結板部51の変形と第2の連結板部52と第3の連結板部53との変形が順次発生し、適切な反力を発生させ、衝撃吸収特性を容易に良好にできる。
【0038】
特に、連結部32は、車幅方向の両外側部に設けたため、清掃作業時に体重をかけるなどの状況が発生しやすい部分で力を吸収し、カバー本体部24の変形や移動を抑制して外観を良好にできる。さらに、車幅方向の両外側部では、意匠状、カウルトップカバー11の対向部28及びこの対向部28を支える部分を平面視で大きく湾曲させる必要があり、1枚の板で形成すると挫屈荷重すなわち反力が大きくなりすぎて衝撃吸収特性の調整が煩雑となる場合があるが、連結部32を設けることにより、反力すなわち衝撃吸収特性の調整を容易にできる。一方、車幅方向の中央部分では、対向部28を車体部材取付部27及びカバー本体部28の少なくとも一方、本実施の形態では車体部材取付部27に連結する1枚の板状の前壁部30を設けたため、構造を簡略化して、軽量化や製造コストの低減が容易になる。
【0039】
このようにして、車体1のフード3とフロントガラス5との間のカウル部6を覆うカウルトップカバー11として好適な特性の衝撃吸収構造が実現される。
【0040】
また、このカウルトップカバー11は、図1に示す状態を基準とすると、相対的に上下方向に接離される金型を備え、例えば上側の型が図1に示す矢印B方向に型抜きされる成型機を用いて樹脂にて形成されるが、車体部材取付部27は対向部28よりも前方に突出する部分であり、これら車体部材取付部27と対向部28との間の部分は前方例えば図1に示す矢印C方向にスライドするコマを用いる必要がある。この点、本実施の形態では、第2の連結板部52は、第3の連結板部53より前方に突出するように位置しており、この第2の連結板部52を設けなかったと仮定した場合のコマのスライド量S2に対して、コマのスライド量S1を小さくできる。このように、成型機のコマのスライド量を抑制できるため、金型すなわち成型機の大きさを小さくして、製造コストを低減できる。
【0041】
また、第2の連結板部52の面に沿った方向と、車体部材取付部27の車体取付板部43の面に沿った方向とのなす角度θは90度より大きく180度より小さい鈍角に設定されているため、この角度θを90度以下とした場合に比べて、この角の部分での成形後の樹脂の変形が小さく、特に付近一な収縮変形による上側への波打ちなどの変形を抑制できる。そこで、車体1へ組み付ける組み立て性を良好にできるとともに、車体1への組み付け後の隙間の発生を抑制して、気密性を良好にできる。
【0042】
また、上記の実施の形態において、図7に示すように、連結部32と前壁部30との境界部に、隣接する部分より容易に変形する変形容易部60を設けることができる。この変形容易部60は、いわば弱部であり、例えば、対向部28を切り欠いて設けたスリット部61と、このスリット部61に連続し、第1の連結板部51の部分の厚さ寸法を小さくした薄肉部62とを備えている。そして、この変形容易部60により、1枚の板状の前壁部30よりも反力が大きくなりやすい連結部32の反力を小さくして、カウルトップカバー11の長手方向の全長に沿って反力を容易に均一に好適な低い値に設定でき、外観の向上及び衝撃吸収特性の向上が容易に実現される。
【0043】
また、上記の実施の形態では、連結部32は、連結央部50で3枚の平板状の連結板部51,52,53を突き合わせる構成としたが、この構成に限られず、連結央部50に隣接する部分で厚さ寸法を大小に変化させ、反力を調整することができる。
【0044】
例えば、図8に示すように、第1の連結板部51と第2の連結板部52との間の部分に上下方向を長手方向とするリブ65を両側方向に所定間隔で複数配置し、あるいは、図9に示すように、第2の連結板部52と第3の連結板部53との間に上下方向を長手方向とするリブ66を両側方向に所定間隔で複数配置することができる。
【0045】
また、上記の実施の形態では、第1の連結板部51と第3の連結板部53とは同一平面上に形成したが、この構成に限られず、図10に示すように、連結央部50から互いに傾斜する方向に突設することもできる。
【0046】
また、上記の実施の形態では、連結部32は、車幅方向の両外側に設けたが、この構成に限られず、カウルトップカバー11の長手方向の全長あるいはほぼ全長に沿って形成することもできる。
【0047】
上記の各実施の形態において、カウルトップカバー11は、車幅方向に分割し、連結構造により組み合わせて構成することもできる。また、カウルトップカバー11は、車体1の前部以外の部分に設け、例えば、リアガラスとリアのトランクフードとの間に配置することもできる。
【0048】
また、上記の各実施の形態において、ウインドシールドは、ガラス製のものに限られず、アクリルなどの透明な素材を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラスとボンネットフードとの間に配置されるカウルトップカバーに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のカウルトップカバーの一実施の形態を示す図3のI−I相当位置の断面図である。
【図2】同上カウルトップカバーを備えた車両の一部の斜視図である。
【図3】同上カウルトップカバーの斜視図である。
【図4】同上カウルトップカバーの一部を拡大した斜視図である。
【図5】同上カウルトップカバーの図3のII−II相当位置の断面図である。
【図6】同上カウルトップカバーの動作の説明図であり、(a)は本実施の形態、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
【図7】本発明のカウルトップカバーの他の実施の形態を示す一部の斜視図である。
【図8】本発明のカウルトップカバーのさらに他の実施の形態を示す一部の断面図である。
【図9】本発明のカウルトップカバーのさらに他の実施の形態を示す一部の断面図である。
【図10】本発明のカウルトップカバーのさらに他の実施の形態を示す一部の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
3 相手部材としてのフード
5 ウインドシールドとしてのフロントガラス
5a 縁部
6 カウル部
11 カウルトップカバー
14 車体部材としての車体パネル
24 カバー本体部
25 ウインドシールド取付部としての嵌着部
27 車体部材取付部
28 対向部
30 第4の連結板部としての前壁部
32 連結部
43 車体取付板部
47 シール部材としてのフードシール
50 連結央部
51 第1の連結板部
52 第2の連結板部
53 第3の連結板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドの縁部と車体部材とに支持されて、これらウインドシールドと車体部材に対向する相手部材との間のカウル部を覆うカウルトップカバーであって、
連結央部、この連結央部から第1の方向に延設された第1の連結板部、前記連結央部から第2の方向に延設された第2の連結板部、及び前記連結央部から第3の方向に延設された第3の連結板部を備えた連結部と、
前記第1の連結板部に連続し、前記相手部材に対向する対向部と、
前記第2の連結板部に連続し、前記車体部材に取り付けられる車体部材取付部と、
前記第3の連結板部に連続し、前記カウル部を覆うカバー本体部と、
このカバー本体部に連続し、前記ウインドシールドの縁部に取り付けられるウインドシールド取付部とを具備した
ことを特徴とするカウルトップカバー。
【請求項2】
相手部材は、車体部材の上方に位置するフードを構成し、
対向部には、前記フードに密着するシール部材が設けられた
ことを特徴とする請求項1記載のカウルトップカバー。
【請求項3】
連結部は、車幅方向の両外側部に設けられ、
車幅方向の中央部分には、対向部を車体部材取付部及びカバー本体部の少なくとも一方に連結する板状の第4の連結板部が設けられた
ことを特徴とする請求項1または2記載のカウルトップカバー。
【請求項4】
連結部と第4の連結板部との境界部に、隣接する部分より容易に変形する変形容易部が設けられた
ことを特徴とする請求項3記載のカウルトップカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−125991(P2010−125991A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302915(P2008−302915)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】