説明

カスタマイズされた外科装置

特定の患者のためのカスタマイズされた外科器具またはプロテーゼを生産する方法を記載する。患者の身体部分の少なくとも1つのx線画像が取り込まれる。全体にわたって解剖学的一致点の稠密集合を有する統計モデルが、少なくとも1つのx線画像から得られる画像データを用いて例示されて、高精度の表面を有する身体部分の患者別モデルを生成する。患者別モデルからの患者固有のデータを用いて、身体部分に対して実行されるべき外科処置で使用されるカスタマイズされた外科器具またはプロテーゼのデザインを生成する。外科器具またはプロテーゼはその後、そのデザインを用いて製造される。身体部分の患者別モデルを生成するコンピューター実施方法も説明する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、外科装置をカスタマイズすること、特に、患者の取り込み画像から得られる患者固有のデータを用いて外科器具および/またはインプラントをカスタマイズすること、に関する。
【0002】
CTまたはMRIデータから患者別の器具またはインプラント(patient specific instruments or implants)を作る一般概念は、例えば米国特許第5,768134号および国際公開WO93/25157号で、これまでに説明されている。米国特許第5,768,134号は、追加的なデジタル情報と共に使用され得るデジタル化された医療情報を生成するためにCTスキャナまたはMRIスキャナを使用することと、身体部分に適合し、さらなる機能要素を取り付け可能なプロテーゼを作るためのラピッド・プロトタイピング法と、を記載している。国際公開WO93/25157号は、CTまたはMRIスキャンなどからの断層撮影データを用いた方法、および、個人のプロテーゼを作るためCNC機器と共に使用され得る、身体部分の3D再建物(3D reconstruction)を生成するための画像処理を記載している。患者の解剖学的構造に適合し、治療ツールの誘導、整列および位置付けのため患者に据え付けられる個々のテンプレートを、製造することができる。
【0003】
しかしながら、全ての医療施設がCTまたはMRIスキャナにアクセスできるわけではない。多くの場合、患者のCTまたはMRIデータは利用できない。さらに、CTスキャンは、患者に対するかなりの放射線量を伴うので、可能な場合は避けるべきである。さらに、多くの国では、規制により、スキャンを専門の放射線科医(specialist radiologist)が診断することが必要とされている。さらに、CTおよびMRIスキャンは、データ処理集約的(data processing intensive)であり、患者固有のデータをスキャンから引き出すため多大な処理時間を必要とする。データ処理は、データ品質の可変性および必要とされる表面再建物の精度のため、完全に自動化することができず、したがって、このようなアプローチが、大量生産スキームには不適切となる。
【0004】
患者の解剖学的構造の3Dモデルを生成する他のアプローチがある。例えば、統計的形状モデルおよび他の変形可能モデルに基づいたアプローチが、患者の実際の骨形状をモデリングするのに使用されることができる。例えば、米国特許第7,194,295号は、コンピューター支援のナビゲーションおよび/または手術前治療計画のための方法を記載しており、この方法では、患者のX線画像から得ることができる患者の特徴的データに基づいて、患者の身体部分の一般的モデルが改変される。米国特許出願公開第2005/0027492号は、複数組の2次元または3次元の形状間の一致を確立することにより、統計的形状モデルを構築する方法を記載している。しかしながら、これらの文書に記載されているアプローチは、前記方法においてCTまたはMRIスキャンに取って代わるように効果的に使用され得る3Dモデルをそれ自体で生成することができない。このようなモデリングアプローチは、インプラントまたは器具をカスタマイズするのに一般的に必要とされる、例えば1〜2mmの表面精度をそれ自体で生み出すものではない。
【0005】
したがって、CTもしくはMRI、または同様の3Dスキャンアプローチを使用せずに、カスタマイズされたインプラント、器具、または外科処置を提供できることが望ましい。
【0006】
本発明は、カスタマイズされた器具、インプラントを生産するため、または外科処置を特定の患者の解剖学的構造に合わせてカスタマイズするために使用され得る、高レベルの表面精度のモデルを結果として生じるモデリングアプローチを提供することにより、これを行う。
【0007】
本発明の第1の態様によると、特定の患者のための、カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼを生産する方法が提供され、この方法は、患者の身体部分の少なくとも1つの画像を取り込むことと、少なくとも1つの画像から得られる画像データを用いて、全体にわたって解剖学的一致点の稠密集合を有する統計的モデルを例示して、高精度の表面を有する身体部分の患者別モデルを生成することと、患者別モデルからの患者固有のデータを使用して、身体部分に対して行われるべき外科処置で使用されるカスタマイズされた外科器具またはプロテーゼのデザインを生成することと、そのデザインを使用して外科器具またはプロテーゼを製造することと、を含む。
【0008】
少なくとも1つの画像は、少なくとも1つのx線画像であってよい。しかしながら、超音波など他の2D画像化技術を使用して、患者の画像を取り込むこともできる。
【0009】
好ましくは、身体部分の少なくとも2つの画像を取り込む。さらに好ましくは、これらの2つの画像は、異なる方向から、好ましくは互いに対して約90°で、取り込まれる。
【0010】
患者別モデルは、約2mm未満だけ異なる表面形状を有することができる。好ましくは、約1mm未満だけ異なる表面形状である。患者別モデルは、患者の身体部分の表面形状と約1〜2mmだけ異なる表面形状を有することができる。
【0011】
好ましくは、身体部分は、患者の関節または関節の一部である。例えば、関節は、人体の股関節、膝関節、足首、肩関節、脊椎の一部、または他の関節であってよい。
【0012】
患者別モデルには、骨、および軟組織が含まれ得る。軟組織には、人体の筋肉、腱、半月板、靭帯、関節軟骨、および他の骨でない構造体が含まれ得る。
【0013】
デザインの作製は、骨および軟組織の双方に関連する患者固有のデータに基づくことができる。このように、インプラントまたは器具による軟組織への干渉または損傷を軽減することができる。
【0014】
カスタマイズされた外科器具のデザインには、外科器具の形状が含まれてよく、この形状により、外科器具を患者の身体部分に据え付けることができる。デザインは、外科器具の外側形状を含むことができ、この外側形状により、外科器具を、患者の身体部分周辺の空間に嵌め込むことができる。デザインは、器具のサイズを含むことができる。デザインは、器具の少なくとも一部の方向を含み得る。
【0015】
患者に関する人口統計データを、形状モデルに供給することができる。形状モデルは、患者の人口統計データに合う部分母集団からのモデルを例示することができる。
【0016】
この方法は、身体部分の少なくとも1つのx線画像を処理して、患者の処理済み画像を生成することをさらに含んでよい。処理することは、統計モデルから再建されたCT画像から擬似x線画像を生成することを含むことができる。処理することは、身体部分の少なくとも1つのx線画像と同じように擬似x線画像を処理して、処理済みの擬似x線画像を生成することをさらに含んでよい。患者の処理済み画像と、処理済みの擬似x線画像とは、身体部分の患者別モデルの例示の一部として、比較されてよい。
【0017】
処理することは、高域フィルターを画像に適用することを含んでよい。このことは、鋭い骨の縁に対応しないアーチファクトを画像から取り除くのを助けることができる。
【0018】
処理することは、微分画像(differential image)を生成することを含み得る。微分画像は、画像間の差異から生成されることができる。
【0019】
処理することは、画像を、凸の特徴部画像(positive features image)および凹の特徴部画像(negative features image)に分離することを含んでよい。
【0020】
処理することは、微分画像の特徴部に広がり関数(broadening function)を適用することを含み得る。広がり関数は、適合(fitting)に、より近づいている微分画像の特徴を強調するのを助けることにより、最適化プロセスを助けることができる。
【0021】
処理することは、微分画像の特徴部に正規化関数(normalising function)を適用することを含み得る。正規化関数は、画像の特徴部のサイズ間の差異を縮小することができる。このことは、大きな特徴部が最適化プロセスを支配するのを防ぐのに役立つ。
【0022】
統計モデルは、解剖学的一致点(anatomical correspondences)の稠密集合を生成するため、最小記述長アプローチを用いて生成されることができる。
【0023】
このモデルは、表面モデルであってよい。一致点は、その表面の範囲に限られてよい。
【0024】
モデルは、体積モデルであってよい。一致点は、目的の全体積にわたって明確である(explicit)ことができる。
【0025】
患者別モデルを例示することは、準ニュートン最適化法(quasi-Newton optimisation method)を用いることを含んでよい。
【0026】
方法は、運動モデルを使用することをさらに含むことができる。患者固有のデータを、運動モデルにおいて用いて、身体部分の、見込みのある運動学的挙動を予測または決定することができる。運動モデルは、患者の身体部分の、見込みのある運動学的挙動を特定する運動学的データを決定することができる。
【0027】
運動モデルからのデータを、カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼの設計に使用することができる。
【0028】
本発明のさらなる態様によると、身体部分の患者別モデルを生成するための、コンピューター実施方法(computer implemented method)が提供され、この方法は、患者の身体部分のx線画像を処理して、フィルター処理および正規化された、患者の微分画像を生成することと、高密度の解剖学的一致点を有する統計モデルからCTスキャン型画像を再建し、CTスキャン型画像からのx線画像に対応する擬似x線画像を生成することと、x線画像と同じように擬似x線画像を処理して、擬似微分画像を生成することと、準ニュートン最適化法を用いて、患者の微分画像と擬似微分画像との間の残差(residual)に基づいて、費用関数を最適化し、身体部分の患者別モデルを生成することと、を含む。
【0029】
本発明のさらなる態様は、本発明のコンピューター実施方法態様を行うためにデータ処理デバイスにより実行可能なコンピュータープログラムコード、および、そのようなコンピュータープログラムコードを有する、コンピューター読取可能媒体を提供する。
【0030】
本発明のある実施形態を、ほんの一例として、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0031】
本発明は、統計モデルと組み合わせられた、1つ以上のx線画像を用いて、関節または他の身体部分の患者別の解剖学的構造を提供し、これは、その関節に対する整形外科処置で使用されるべきカスタマイズされた器具を設計および製造するため、または、患者のための、カスタマイズされたプロテーゼを設計および製造するために、使用されることができる。
【0032】
膝関節の外科処置を行う場合、大腿骨および脛骨の機械軸(mechanical axis)は、股関節および足首関節の1つ以上のx線画像から計算され得る。このx線画像は、画像から適切な測定値を取ることによって、撮影された膝関節のx線写真の座標系中に参照される。
【0033】
あつらえの器具および/またはプロテーゼのデザインは、統計モデルへの計画に関する骨の解剖学的構造および関連する軟組織の特徴部を組み込むことにより、完全に自動化されることができる。
【0034】
例えば、大腿骨の上で使用されるべき、あつらえの膝器具については、大腿骨頭の中央、上顆、髄内管の最遠位部分、および顆上の最遠位点を使用して、機械軸、大腿骨の回転、および関節線(joint line)を見積もることができる。さらに、関節表面の一部は、器具に対する接触表面を判断するためにモデル化されてよい。器具は、人工膝関節置換処置中に使用される、あつらえの大腿骨切断ガイドであってよく、このガイドは、モデルから得られかつ器具上に凹形態(negative form)で再現される接触表面に対して独自の位置で適合する。同様に、脛骨の機械軸、脛骨プラトーの形状、および脛骨器具の取り付け部位として役立つことのできる接触表面に関するモデル知識(model knowledge)を組み込んで、あつらえの脛骨切断ガイドが、そのモデルから製造されることができる。
【0035】
あつらえの器具は、股関節手術、例えば股関節の表面修復処置にも適用されてよい。ここでは、例えば、統計モデルは、大腿骨頸部軸の方向に関する情報を与え、表面修復インプラントを位置付けるための、あつらえのドリルガイドを製造することができる。このモードにより作られた大腿骨頭の表面は、ドリルガイドを大腿骨頭上に独自に位置付けるため、器具上に凹形態で再現される、ドリルガイド用の接触表面を決定するのに使用される。
【0036】
あつらえのインプラントの例は、オーダーメイドの単顆膝関節インプラントであってよく、このインプラントは、顆のうちの一方の上にのみ患者の顆形状を再現し、他方の顆は、手術中所定の場所にとどまっている。別の例は、内側顆および外側顆の、異なる、患者別の半径を有する、大腿骨インプラントである。
【0037】
統計的形状モデルは、それぞれがある特性を呈する部分母集団を含んでよい。例えば、統計的形状モデルは、外反膝の幾何学的外形を有する患者を含むことができる。患者の部分母集団に属する特定の患者は、モデルを例示するのに使用されているx線データから自動的に、モデルを例示するときに識別されることができるか、またはデータを、特定の部分母集団に属するとしてタグを付けるかもしくは別様に識別することにより、手動で示されることができる。患者が分類される部分母集団に応じて、あつらえの器具および/またはプロテーゼのデザインは異なっていてよい。例えば、患者が外反膝奇形を有する場合、内反膝または正常な幾何学的外形の膝と比べて、器具、例えば切断ブロックを骨形状に合わせるために利用可能な異なる表面があるかもしれない。同様に、異なる分類または種類のプロテーゼは、異なる種類の奇形を呈する膝にはより適切であるかもしれない。これにより、器具および/またはプロテーゼについて、異なるデザイン選択肢間における自動選択が可能となる。デザインの1選択肢は、所定の表面の幾何学的外形のための別の選択肢と比べて、外科医による、可能性のある配向不良に対する感受性が低くてよい。よって、このように、外科処置に使用されるデザインの解決策の頑健性を改善することができる。
【0038】
あつらえの器具またはプロテーゼの幾何学的外形は様々であってよい。この可変性は、骨の統計モデル中に符号化されてよく、器具の形状が、骨の幾何学的外形に応じて最適化され得る。これは、器具を骨に据え付けることができる器具の適合表面に限定されないが、器具が嵌まる必要のある空間を考慮に入れるように変化され得る器具の外表面も含む。
【0039】
軟組織構造、例えば膝蓋腱も、統計的形状モデルに含まれてよい。器具の形状は、外科処置中、軟組織構造への干渉を最小限にするように改作されることができる。
【0040】
図1を参照すると、カスタマイズされた器具および/またはプロテーゼ設計プロセスの一環として、統計モデル102により使用される様々なデータソース、入力および出力を示す、概略的なフローチャート型の表100が示されている。プロセスの中心には、非常に正確な表面を有する、患者の解剖学的構造の3Dモデルを生成する、特定の種類の統計モデル102がある。すなわち、患者の骨のカスタマイズされたモデルの表面は、約1〜2mmの変動の範囲内、好ましくは約1mm以内で、患者の骨の実際の表面に一致しなければならない。使用される統計モデル、および患者の解剖学的構造のx線画像を用いて統計モデルを例示する方法は、以下でさらに詳細に説明する。
【0041】
外科的嗜好データ(Surgical preference data)104を統計モデルに提供することができる。外科的嗜好データ104は、少なくともどの関節または身体部分に対して外科処置が行われるかを示し、形状モデルは、外科処置のための適切な身体部分、例えば膝関節置換処置のための脛骨および大腿骨、のモデルを例示することができる。この外科的データは、例えば、同じ一般処置(general procedure)、例えば膝関節置換処置に対して異なる外科アプローチがとられる可能性がある場合に、使用されている外科アプローチを示す、他のデータ(other date)を含んでよい。外科アプローチデータは、低侵襲外科アプローチが使用されているかどうかも示すことができる。外科的データ104は、任意の軟組織戦略が使用されるかどうか、および、使用される場合にはどの戦略であるかということを示すこともできる。
【0042】
骨のみを示す、CT画像から構築された3Dモデルからの骨表面情報は、MRI画像または超音波画像など、軟組織を示すことのできる他の画像化モダリティから構築された3Dモデルと組み合わせられる。これは、例えば、同じ患者からの、位置合わせされたMRおよびCTデータのセットから単一モデルを構築すること、または骨形状もしくは他の特徴の類似性によって骨表面に位置合わせされる別個のMR軟組織モデルを用いること、によって、達成されることができる。いずれの場合も、X線写真から見積もられた特定の個人の骨表面のみを考慮に入れれば、統計モデルは、その特定の個人について、最も可能性の高い軟組織構造の見積もりを与える。
【0043】
したがって、関節軟骨ならびに関節の靭帯および腱など、手術に重要な軟組織構造を見積もることができる。例えば、関節軟骨の厚さの見積もりは、器具が取り付けられる3D表面の、より正確な説明を与え、手術における、より高い精度をもたらす。同様に、膝蓋腱の大きさおよび位置の見積もりは、この重要な構造を保存するように、手術を計画し、器具を構築することを可能にする。
【0044】
さらに、統計モデルは、特定の患者の健康な膝の、最も可能性の高い見積もりである膝の幾何学的外形を達成するのに必要とされる修正の程度に関して、予測および助言することができる。統計モデルから患者固有の解剖学的構造を特定するデータは、ソフトウェア運動モデルに渡されてよく、ソフトウェア運動モデルは、患者固有の解剖学的データを適用して、患者の関節、例えば膝関節の、運動学的挙動を決定することができる。関節の患者固有の運動学的挙動に関するデータは、次に、設計プロセスに提供されてよく、器具および/またはインプラントのデザインもまた、単なる静的挙動ではなく、運動学的挙動に基づくことができる。例えば、切断ブロック、または切断ブロックにより画定される切断ガイドの位置は、膝の運動学的挙動を特に補うかまたは修正するように、調節されてよい。同様に、インプラントの形状または構成は、関節の、予測された患者固有の運動学的挙動を考慮するため、関節の患者固有の運動学的挙動を特定するデータに基づいて調節されてよい。
【0045】
さらに、膝の様々な変形と相互に関係する、膝関節の運動学的挙動を特定するデータは、ソフトウェアにより自動的に識別されてよく、また、外科処置中に実行され得る潜在的な軟組織解離、例えばどの靭帯が解離するか、および解離の程度など、を、使用者に知らせるよう、モデリング段階中に使用されることができる。例えば、データは、制限された膝屈曲と関連する、後顆の後部に位置する骨増殖体;膝関節の内反もしくは外反の屈曲と関連する、特定の膝アラインメント変形(例えば大腿骨および脛骨の機械軸の内反もしくは外反のずれ);異常な(屈曲または屈曲および回転)膝の運動学的挙動(回転不安定性(rotational instability))と関連する、欠落した(損傷した、または発達不十分の)大腿骨顆、を特定することができる。
【0046】
画像データ106は、患者の解剖学的構造の、取り込まれたX線写真または他の投影画像から得られたデータを含む。X線データは、以下でさらに詳細に説明するように、例示されるモデルの表面精度を改善するように処理されている、x線画像から入手される。画像データも、処理されて、さらなる入力を統計モデルに与え、さらに正確なモデルを生成するのを助けることができる。例えば、膝関節の場合、画像データを処理して、膝の状態を識別するのを助けることができる。大腿骨軸と脛骨軸との間の角度が実質的に180°未満である場合、膝は、内反奇形を有するとして分類されてよく、この角度が実質的に180°超である場合、膝は、外反奇形を有するとして分類されてよく、角度が180°に近い場合、膝は、正常な幾何学的外形を有するとして分類されてよい。この情報は、その後、対応する膝分類を有する母集団からのデータに基づいたモデルを例示するため、統計モデルにより使用されることができる。
【0047】
患者に関する人口統計パラメーター108も、統計モデルに提供されてよい。例えば、人口統計パラメーターは、年齢、性別、民族性、ボディーマス指数、身長および患者に関する他の項目などの情報を含むことができる。人口統計パラメーターデータは、患者の身体部分のモデルの精度を改善するように、モデルを例示するのに使用される、対応する部分母集団、例えば老齢の女性、のデータを選択するために、統計モデルにより使用されてよい。
【0048】
モデル部分母集団を定めるデータ114も入力として提供されてよく、このデータ114は、特定の状態と定められた人々の様々な部分母集団、例えば内反もしくは外反奇形を有する人々の部分母集団、として術前に知られていた患者データに固有のモデルを含む。
【0049】
モデルに提供され得る他の情報は、患者のこれまでの病歴を特定するデータを含む。例えば、半月板除去が、モデルから自動的に生成される手術計画に影響を与えるかもしれない。
【0050】
器具デザインの選択肢データ110も提供される。器具デザインの選択肢データは、器具デザインが患者の特定の解剖学的構造に合わせてカスタマイズされるように変化され得る、様々な方法を特定する。例えば、内反膝、外反膝、および正常な膝のための、ある種類の器具の様々なバージョンが、そのモデルにより選択されることができる。別の例として、膝処置では、関節腔をモデル化し、大腿骨切断ガイドの遠位部分を関節腔に嵌まるように調節することができる。
【0051】
例えば、器具デザインの選択肢データは、器具を患者の身体に据え付けることができる適合表面を器具のどの部分が提供するのか、を特定することができる。カスタマイズされた大腿骨切断ガイド器具の場合、切断ガイドは、いくつかの表面領域、好ましくは少なくとも3つであるが、患者の大腿骨の表面形状に適合する少なくとも十分な表面もしくは表面領域、を備え、切断ガイドは、器具の適合表面により独自に定められる、単一位置で大腿骨に据え付けられ得る。このように器具をカスタマイズすることにより、器具の設置を誘導することは必要ではなくなる。これは、器具が単一の方法で患者の大腿骨に取り付けられ得るに過ぎず、よって、大腿骨上の正しい位置まで自動的に誘導されるためである。器具の切断ガイドは、適合表面に対して既知の関係を有し、そのため、切断ガイドを大腿骨に対して予め選択した位置で据え付けて、大腿骨切断を行うことができる。
【0052】
器具デザインの選択肢データ110は、任意の軟組織構造がどのように器具の特定のデザインと干渉する可能性があるかを示す軟組織干渉情報も含んでよく、そのため、器具デザインをカスタマイズして、任意の軟組織の干渉を回避または減少させようとすることができる。例えば、脛骨切断ガイドは、脛骨の内側前面に適合するように設計され得る。適合表面は、膝蓋腱により境界を付けられる。腱との干渉により、表面上に器具を設置する精度が低減され、あるいは、代わりに、腱は、処置を行うために損傷される必要があるかもしれない。これは、腱付着部位に関する情報をモデルに組み込むことで、防止できる。
【0053】
患者の骨のモデル、ならびに手術の種類および程度に応じて、あつらえの器具は、十字靭帯(前、後、もしくは両方)を保護し、かつ/または半月板を保護するように、個別に設計されてよい。
【0054】
インプラントデザインについて、モデルは、異なるインプラントデザインの選択肢を特定するデータ112を入手することができ、インプラント形状に関する決定が、大腿骨および脛骨の統計的モデル化形状ならびに軟組織(靭帯および半月板および軟骨)の統計的モデル化形状の幾何学的外形と、運動力学に対するその関わりに基づいて行われる。特に、インプラントの前方−後方(AP)、内側−外側(ML)の大きさ、インプラントの顆の湾曲、ならびに、前および後十字靭帯(ACL、PCL)を保護するための形状許容度が、統計モデルによって与えられる情報に基づいて決定される。さらに、モデルは、あつらえの膝蓋骨を設計するため、および膝蓋骨−大腿骨の干渉をカスタマイズするために使用されることができる。大腿骨および脛骨の顆のいくつかの別個の寸法(APもしくはML寸法、または顆の半径など)、ACL、PCLおよび側副靭帯の起点および挿入、膝蓋腱の挿入および起点、ならびに半月板の場所を用いて、インプラントの、最終的なカスタマイズされた形状を定めることができる。さらなる例として、統計モデルは、膝関節においてただ1つの顆が損傷されたことを見出し、それゆえ、全膝関節インプラントの代わりに単顆膝関節インプラントを選択することができる。
【0055】
前記の様々な入力データソースに基づいて、統計モデルは、図2を参照して以下で述べるように、患者のx線由来データを用いて例示され、患者の骨形状、および/または患者の表面軟組織形状を特定するデータを出力することができる。例えば、モデルは、膝関節置換処置のために、患者の脛骨の近位部分表面の形状、患者の大腿骨の遠位部分表面の形状、ならびに、膝蓋腱、大腿直筋腱、および内側および外側の側副靭帯の付着部位の幾何学的外形を特定するデータを出力できる。
【0056】
決定プロセス120は次に、カスタマイズされた器具および/またはプロテーゼを設計するために、患者固有の骨形状データおよび/または軟組織形状データを使用する。例えば、設計される器具が大腿骨切断ブロックである場合、大腿骨切断ブロック器具の一般的モデルは、患者の大腿骨の例示モデルの大きさに、より正確に合うように、調整され(scaled)てよい。器具の全体的なデザインを特定する様々なデータ項目122が、決定プロセスによって生成および出力される。決定プロセス120は、器具が嵌まらなければならない空間を考慮することにより、器具の外側形状を算出し、軟組織形状情報118に基づいて軟組織構造への干渉を低減または回避することもできる。決定プロセス126は、器具の適合部分が有する必要のある形状も算出し、骨形状データ116を用いて患者の骨の独自の位置に器具を据え付けることができる。
【0057】
器具の独自の付着部位をもたらすためモデル化された表面は、関節に近接した特別な表面であってよく、ここでは、骨増殖体、または統計モデルにより再建された骨形状からの他の強い逸脱がほとんど生じない。これらの表面は、高い精度でモデル化されることができ、患者別の器具の、結合表面として使用されてよい。
【0058】
カスタマイズされたプロテーゼが、追加的または代替的に患者のために設計される場合、決定プロセスは、患者の実際の解剖学的構造の形状にぴったり合うようにその身体部分用の一般的なインプラントデザイン、例えば、大腿骨膝関節インプラントを選択し、その後、患者の骨形状データ116に基づいてインプラントのデザインをカスタマイズすることによって、またはインプラントを、外科処置により適するようにする、例えば外反奇形の矯正を助ける、何らかの他の方法で、カスタマイズされたインプラントデザイン130を生成することもできる。
【0059】
統計モデルは、患者固有の骨形状を生成する。コンピューターは、この患者の健康的な発病前の膝関節全体の幾何学的外形で最も可能性の高いものが何かを使用者に通知することもできる。この情報は、再建手術のテンプレートおよびゴールとして役立つ。膝関節の、最も可能性の高い健康な発病前の形状は、年齢、性別、民族起源、ライフスタイルなどを含み、また健康な膝関節の幾何学的モデルを含む、いくつかの要因の関数となる。
【0060】
器具および/またはインプラントのデザインが完成すると、器具および/またはインプラントは、ラピッド・プロトタイピングまたは迅速生産技術など、任意の適切な製造技術を用いて製造され得る。
【0061】
画像データ106は、骨の形状を決定するのに使用される画像データを提供するだけでなく、カスタマイズされた器具およびインプラントを生産するのに使用され得る他の解剖学的情報を提供することができる。例えば、画像データ106は、患者の身体部分の機械軸を示すデータを含んでよく、この情報は、器具および/またはインプラントを設計する上で使用されることができる。
【0062】
患者の手足の機械軸は、いくつかの方法で、取り込み画像から再建することができる。例えば、患者の脚について、第1の方法では、患者の脚の、長期間にわたる1つ以上のx線写真を取り込むことができる。別の方法では、股関節、膝関節、および足首関節の1組の重なり合うx線画像を取り込み、それらの画像を、「縫い」合わせることができる。第3の方法では、1組の関節の外れた画像(disjointed images)を取り込むことができ、それらの画像には共通の参照物体が見え、これらの画像は、その後、互いに位置合わせされることができる。
【0063】
図3は、この第3の方法を例示し、患者の脚308の股関節302、膝関節304および足首関節306と、共通の参照物体310のx線画像を取り込むグラフィカルな表示を示すものである。共通の参照物体310は、得られるx線画像で見ることのできる、複数のx線不透過性マーカー312、または基準を含む。参照物体上のマーカー312の位置は既知であるので、3つのx線画像302、304、306の相対位置は、それぞれの画像におけるマーカーの位置から判断されることができる。各領域の2つ以上のx線写真を、例えば、2つの異なる角度から入手して、3次元情報を与えることができる。異なる角度を使用する場合、異なる角度から撮られたx線写真を単一の共通座標系内に参照するのを容易にする、追加の較正物体を、視界に置くことができる。
【0064】
統計モデルは、膝関節表面の正確な骨モデルを再建でき、外科処置を計画するための解剖学的目印、例えば上顆、大腿骨の軸、脛骨の軸および機械軸、関節線、脛骨プラトーの深さなど、を自動的に抽出することができる。これにより、外科的切断を計画する自動化方法が提供される。これは、プランニングソフトウェアが、患者に固有の解剖学的情報を使用して、インプラントを正確に位置付けるためにどこで様々な切断を行うべきかを決定できるためである。あつらえの器具は、その後、決定プロセスにより設計されて、患者の膝関節の特定の表面に適合し、切断ガイドは適切な位置にあって、予定の切断を行い、それから、あつらえの器具が、迅速生産技術、例えばステレオリソグラフィーを用いて製造されることができる。
【0065】
本発明の方法全体を説明してきたが、この方法に使用される統計モデルの生成および例示を、図2を参照してさらに詳細に説明する。
【0066】
前述したように、カスタマイズされた器具およびインプラントを作るのに、統計モデルアプローチを使用することはできなかった。これは、十分な精度および再現性が、これまで利用できなかったためである。本発明は、驚いたことに、統計モデルアプローチの使用を可能にし、それにより、CTおよびMRlスキャンに基づくアプローチにかかわる問題を回避することが分かった、いくつかの技術を使用する。
【0067】
統計モデルは、モデル全体にわたる、高密度で高品質の1組の解剖学的一致点を含み、必要とされる表面精度を提供するのに役立つ。
【0068】
また、x線画像の事前処理を使用して、整合的結果を確実とするのを助ける。様々な処理技術が、以下のとおり使用されてよい。
【0069】
実用的な期間に、モデルに適合するように、問題の特定の特性を利用して、特定の最適化プロセスを使用し、数時間以内ではなく数分以内に正確な解答を生成する。
【0070】
図2は、概略的なプロセスフローチャート200を示すものであり、患者別骨モデルを生成する方法を示している。このフローチャートで示す方法は、実際には適切なソフトウェアにより、実行され得る。例示するように、統計モデル102は、最初は、統計モデル102が構築される母集団および様々な部分母集団を形成する多数の異なる身体のCTスキャン202から確立される。CTスキャンデータは、体積に基づく一致点適合プロセス(volume based correspondence matching process)204を用いて処理されて、高密度で高品質の1組の解剖学的一致点を有する統計モデルを生成する。前記のとおり、人口統計情報108は、特定のモデルが例示されているときに統計モデルに提供されてよく、このモデルは、特定の患者に適切な部分母集団のデータを使う。
【0071】
統計モデル102は、モデル化されている特定の身体部分の解剖学的目印と考えられ得る1組の一致点を含む。すなわち、解剖学的に何かを意味する1組の一致点が存在し、例えば、身体部分が遠位大腿骨であり、一致点のうち1つが内側上顆である場合、具体例が作られると、その具体例が、内側上顆に対応する点を有する。このことは、例えば具体例の外側顆をモデルの内側顆上に位置させることによって、数学的にぴったり合う(a good fit)ことができると共に現実的でない、具体例を防ぐ。より具体的には、本統計モデルは、形状データ、および形状データと相互に関連する画像強度データ(当技術分野では「テクスチャ」とも呼ぶ)の双方を含む、外観モデルである。
【0072】
主要な問題は、3Dモデルにおいて一致点を識別することである。これは、2Dでは手動で達成できるが、3Dでは実用的でない。プロセス204は、3Dで一致点を自動的に見つけ、この一致点は、その後、外観モデル102を構築するのに使用される。最小記述長アプローチが、US2005/0027492、および「A Unified Information-Theoretic Approach to Groupwise Non-Rigid Registration and Model Building」(コンピュータ・サイエンス 3565/2005巻、Medical Imaging, Springer Lecture Notesのproceedings of Information Processing、Carole J. Twining, Tim Cootes, Stephen Marsland, Vladimir Petrovic, Roy Schestowitz, and Chris J. Taylor)に記載のものと同様に使用され、これらの開示内容は、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み込まれる。生成されたモデルは、明確な一致点が表面の範囲に限定される表面モデルで、CT体積が各一致点に垂直に延びるプロファイルを使用して再建されているか、あるいは目的の体積全体にわたって明確な一致点がある体積モデルであってよい。
【0073】
1つ以上のx線写真を用いて所定の患者の最適モデルに到達するための方法で使用される最適化プロセスは、費用関数を使用する。費用関数は、残差(すなわち、モデルにより生成されたDRRの画像とx線画像データとの間の差異)の二乗和であり、モデルのパラメーターに対して最小化される。モデルのパラメーターには、3つの角度、3つの位置(CT体積におけるモデルの「姿勢」または位置)、および、スケールパラメータ、およびモデルに使用され得る様々な他のパラメーターが含まれる。
【0074】
工程210で、プロセスは、低解像度モデルで始まり、工程212で、モデルのための第1の組の候補パラメーターが選択される。姿勢パラメーターは、手動で選択され得る、第1の組の値(initial set of values)に設定され、モデルのその他のパラメーターは、平均値(mean or average value)に設定されてよい。次に工程214で、第1の組のパラメーター値を用いて、3D体積CT型画像が、モデルから構築される。費用関数にノイズが入りすぎて解くことができないようにし得る量子化効果(quantisation effects)を導入することなく、モデルデータから正確な3DのCT画像を生成しようとすることが重要である。
【0075】
図4は、複数のボクセル、例えばボクセル402、を含む再建CT画像のスライス400の概略的表示を示すものである。プロファイル・モデリング・アプローチについて、統計モデルデータは、CTスキャンを再建するために強度またはテクスチャデータの追加を誘導する、骨形状を特定するデータを提供する。
【0076】
骨の骨404の形状上の1組の点(単純にするため図4には5つの点のみが示されるが、実際、より多数の点を使用して、骨のテクスチャをより正確に再建する)それぞれについて、骨の局所表面に垂直な線、例えば406、を決定する。次に、強度の値が、骨の内側および外側の両方で、その線に沿った複数の点408それぞれにおいて計算される。法線406に沿った各点408の強度の値は、逆線形補間プロセス(reverse linear interpolation process)を用いて計算される。複数のサンプル点408が同じボクセルに入ることができるが、各サンプル点の値は、そのサンプル点がボクセルからどれぐらい遠いかに基づいて、そのボクセルの強度の加重和として計算される。CT体積は、多重解像度法を用いて再建される。代替的な実施形態では、体積モデルを、プロファイルモデルの代わりに用いてよい。工程214では、骨のプロファイルおよびテクスチャは、CT画像が現在のパラメーターについて再建されるまで、CT画像の全スライスについて決定される。
【0077】
次に、工程216で、デジタル的に再建されたX線写真(DRR)が、患者の実際の投影x線画像と比較するため、再建されたCTスキャンから生成される。図5は、複数のボクセル506を含むCT画像504を通過するいくつかの光線502と、生成されている投影X線写真508の平面と、の概略的な表示500を示す。例示するように、各光線、例えば510は、複数のボクセルを通過し、光線のライン510に沿った複数の位置512における値をサンプリングすることで、得られるDRR画像について各光線経路の合計強度値を計算するため、線形補間法が、ここでも使用される。各光線のラインは、サブボクセル長に分割され、CTボクセル強度値の線形補間が各サンプル点について決定されて、DRRの対応する強度値を計算する。
【0078】
患者の最初のx線画像データ240は、最適化プロセスの工程220で再建されたCTスキャンから生成されたDRRと比較するための患者画像データを準備するために、様々なフィルター処理および正規化プロセスを受ける。工程218により示すように、同じフィルター処理および正規化プロセスをDRRに適用するが、正規化およびフィルター処理プロセスは、以下で患者画像データに関して説明する。患者画像の事前処理は、病院により行われる画像化プロセスから得ることができるx線画像間の差異を取り去るのを助ける(例えば異なるX線写真環境、X線写真、X線撮影処置、またはX線写真のスキャン)。
【0079】
画像強度の絶対値に取り組むのではなく、画像は、強度または輝度の差異と連携することにより、エッジを識別するように処理される。骨のエッジに対応しないと思われる、はっきりしないエッジ(non-sharp edges)を画像から除去するために、高域フィルターが初期x線画像データに適用され、4または5ピクセル以上にわたるエッジを除去する。また、いくらかのピクセル上に延びるカーネルを有する平滑化フィルターが、元のx線画像データに適用されて、スペックルノイズを画像データから除去するのを助ける。
【0080】
最適化プロセスは、患者の微分画像と、再建されたCT画像から生成されたDRRの微分画像との間の差異を調べる。最適化プロセスにより最小化されるのは、費用関数である、このような差異または残差の2乗である。指数関数的な平滑化演算子が、微分画像のピークを広げるように、微分画像データに適用される。
【0081】
微分画像のピークを広げるために平滑化演算子を適用することに加え、微分画像は、凸部分および凹部分(positive and negative parts)に分解される。すなわち、各微分画像がその正の向きのピークおよび負の向きのピーク(its positive sense peaks and its negative sense peaks)に分解されるように半波整流フィルターが適用される。したがって、各微分画像の画素は、正のピークについて左‐右および上−下情報を、負のピークについて左−右および上−下情報を含む。
【0082】
画像データのフィルター処理に加え、正規化処置が工程244および218で微分画像データに適用される。正規化は、単にエッジの大きさに適用されてよく、すなわち、ピークの高さを単に調節し、または、異なる画像のいくつかの構成要素により定められるベクトルに適用されてもよい。双曲線正接、S字型(sigmoid)またはERF関数が、微分ピーク高さ(diffeiential peak heights)に適用されるように、正規化関数として使用されてよい。
【0083】
異なる2方向からの患者のx線写真の画像データ、および対応する2つのDRR画像が高域フィルター処理され、半波整流され、広げられ、正規化された後、患者およびDRR微分画像データは引き去られ、これにより、残差画像が工程220で生じる。問題は次に、残差画像を最小化するためにモデルパラメーターを変える方法に帰着する。使用する最適化アプローチは、準ニュートン最適化法であり、この方法は、厳密には2次法(quadratic method)ではないが、線形法より良い。工程230で、初期モデルパラメーターに基づく現在のモデルは、最良に適合しないので、有限差分を用いて、モデルパラメーターの現在の値に関する費用関数の実際の勾配(残差値の2乗和)を表す関数行列式を見つける。ニュートン法を次に用いて、解の近似に飛び、パラメーター値は、近似解に対応する新しい見積もりに更新される。
【0084】
新しいパラメーター値の残差を計算し、関数行列式が更新された勾配に対応するよう更新され、別のニュートンジャンプ(Newton jump)が、次の近似解に対して行われる。関数行列式を更新し新モデルパラメーターを生成する最適化法および工程232は、図2のプロセスループで示されるように、数回繰り返される。モデルからのCTスキャン再建に使用される解像度は、より良い解を識別するのを助けるため、必要な場合に増大されてよい。最適化プロセスは、工程230で最良の解が見つけられたと判断されるまで、繰り返されてよい。関数行列式の更新が誤差を蓄積する傾向があるので、これには、最終工程において勾配の最大限の完全な有限差分再計算を実行することを伴うことができる。この方法は次に、さらに高い解像度の統計モデルを用いて、しかし工程212で最初の候補モデルパラメーターとして最適化プロセスから決定されたモデルパラメーターを用いて、繰り返されることができる。この方法を用いた最適化により、従来の非線形最適化ツール(conventional non-linear optimiser)で必要とされていた数時間以内ではなく、数分で、十分正確な解答がもたらされる。
【0085】
最後に、必要な表面精度について必要とされるのと同じだけの、統計モデルの解像度の増大が適用された後で、患者の患者別の骨および/または軟組織モデルが工程236で出力される。前記の検討は、x線画像における骨の構造に焦点を当てているが、一般的な教示は、画像中の軟組織構造もカバーするよう広げられてよいことが理解されるであろう。患者固有の骨および軟組織情報は、次に、図1を参照して前述したように、器具および/またはプロテーゼのカスタマイズされたデザインおよび製造に使用される。
【0086】
一般的に、本発明の実施形態は、1つ以上のコンピューターシステムに格納されるか、またはそのコンピューターシステムを通じて転送されるデータを関わらせる様々なプロセスを使用する。本発明の実施形態は、これらの操作を行う装置にも関する。この装置は、必要な目的のために特別に構成されてよく、または、コンピューターに格納されたコンピュータプログラムおよび/またはデータ構造により選択的に作動または再構成される汎用コンピューターであってもよい。本明細書で提示されるプロセスは、任意の特定のコンピューターまたは他の装置に本質的に関連しているものではない。特に、様々な汎用機器が、本明細書の教示に従ってかかれたプログラムと共に使用されてよく、または、必要な方法工程を行うためにより特殊化された装置を構築することが、より好都合であってもよい。
【0087】
さらに、本発明の実施形態は、コンピューターが実行する様々な操作を行うためにプログラム命令および/またはデータ(データ構造を含む)を含むコンピューター読取可能媒体またはコンピュータプログラム製品に関する。コンピューター読取可能媒体の例には、ハードディスク、フロッピーディスクおよび磁気テープなどの磁気媒体;CD−ROMディスクなどの光学媒体;光磁気媒体;半導体メモリデバイス、ならびに読取専用メモリデバイス(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)など、プログラム命令を格納および実行するように特別に構成されたハードウェアデバイスが含まれるが、これらに限定されない。本発明のデータおよびプログラム命令は、搬送波または他の輸送媒体において具現化されてもよい。プログラム命令の例には、コンパイラにより生成されたものなどの機械コード、およびインタープリターを用いてコンピューターにより実施され得るより高いレベルコードを含むファイルの双方が含まれる。
【0088】
前記は、特定のプロセスおよび装置による本発明を一般的に説明したものであるが、本発明は、より広範囲の適用性を有する。特に、本発明の態様は、任意の特定の種類の外科器具、インプラントまたは外科処置に限定されず、実質的にあらゆるインプラント、器具、または、器具もしくはインプラントのカスタマイズが有益である処置に適用されてよい。当業者は、前記の説明を考慮すると、他の変形、改変、および代替案を認識するであろう。
【0089】
〔実施の態様〕
(1) 特定の患者のためのカスタマイズされた外科器具またはプロテーゼを生産する方法において、
前記患者の身体部分の少なくとも1つのx線画像を取り込むことと、
前記身体部分の前記少なくとも1つのx線画像を処理して、処理済みの患者画像を生成することと、
最小距離長さアプローチを用いて生成され、全体にわたって解剖学的一致点の稠密集合を有する統計モデルを、前記処理済みの患者画像から得られる画像データを用いて例示して、高精度の表面を有する前記身体部分の患者別モデルを生成することと、
前記患者別モデルからの患者固有のデータを使用し、前記身体部分に対して実行されるべき外科処置で使用される前記カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼのデザインを生成することと、
前記デザインを使用して前記外科器具またはプロテーゼを製造することと、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記患者別モデルは、前記患者の身体部分の表面形状と約1〜2mm未満だけ異なる表面形状を有する、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記患者別モデルは、骨と、軟組織または関節軟骨のうち少なくとも一方と、を含む、方法。
(4) 実施態様3に記載の方法において、
前記デザインを生成することは、骨、および軟組織または関節軟骨のうち少なくとも一方、の双方に関する患者固有のデータに基づく、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記カスタマイズされた外科器具の前記デザインは、前記患者の身体部分上に前記外科器具を据え付けることを可能にする前記外科器具の形状、および/または、前記患者の身体部分周辺の空間に前記外科器具を嵌め込むことを可能にする前記外科器具の外側形状を含む、方法。
(6) 実施態様1に記載の方法において、
前記患者に関する人口統計データが、形状モデルに供給され、
前記形状モデルは、前記患者の前記人口統計データに合う部分母集団からのモデルを例示する、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記統計モデルから再建されたCT画像から擬似x線画像を生成することと、
前記身体部分の前記少なくとも1つのx線画像と同様に前記擬似x線画像を処理して、処理済みの擬似x線画像を生成することと、
前記身体部分の前記患者別モデルの例示の一環として前記処理済みの患者画像と処理済みの擬似x線画像とを比較することと、
をさらに含む、方法。
(8) 実施態様7に記載の方法において、
処理することは、前記画像に高域フィルターを適用することを含む、方法。
(9) 実施態様7に記載の方法において、
処理することは、微分画像を生成することを含む、方法。
(10) 実施態様9に記載の方法において、
処理することは、前記画像を、凸の特徴部画像および凹の特徴部画像に分解することを含む、方法。
【0090】
(11) 実施態様9に記載の方法において、
処理することは、広がり関数を前記微分画像の特徴部に適用することを含む、方法。
(12) 実施態様9に記載の方法において、
処理することは、正規化関数を前記微分画像の特徴部に適用することを含む、方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
前記モデルは、表面モデルであり、前記一致点は、前記表面の範囲に限定される、方法。
(14) 実施態様1に記載の方法において、
前記モデルは、体積モデルであり、前記一致点は、目的の体積全体にわたって明確である、方法。
(15) 実施態様1に記載の方法において、
前記患者別モデルを例示することは、準ニュートン最適化方法を使用することを含む、方法。
(16) 実施態様1に記載の方法において、
運動モデルにおいて前記患者別モデルからの患者固有のデータを用いて、前記患者の身体部分の、見込みのある運動学的挙動を特定する運動学的データを決定すること、
をさらに含む、方法。
(17) 実施態様16に記載の方法において、
前記運動学的データは、前記カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼの前記デザインを生成するのにも使用される、方法。
(18) 身体部分の患者別モデルを生成するコンピューター実施方法において、
患者の身体部分のx線画像を処理して、フィルター処理および正規化された、患者の微分画像を生成することと、
高密度の解剖学的一致点を有する統計モデルからCTスキャン型画像を再建し、前記CTスキャン型画像から前記x線画像に対応する擬似x線画像を生成することと、
前記x線画像と同様に前記擬似x線画像を処理して、擬似微分画像を生成することと、
準ニュートン最適化方法を用いて、前記患者の微分画像と、前記擬似微分画像との間の残差に基づき費用関数を最適化して、前記身体部分の患者別モデルを生成することと、
を含む、方法。
(19) コンピューター読取可能媒体において、実施態様18に記載の方法を実施するためにデータ処理デバイスにより実行可能なコンピュータープログラムコードを有する、媒体。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】カスタマイズされた器具を設計するプロセスを示す、概略的フローチャートを示す。
【図2】統計的形状モデルの確立および使用を示す、概略的フローチャートを示す。
【図3】患者の身体の異なる部分を画像化するグラフィカルな実例を示す。
【図4】CTスキャン型画像のテクスチャを再建するところを示す、グラフィカルな表示を示す。
【図5】CTスキャン型画像から擬似X線写真を生成するところを示す、グラフィカルな表示を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の患者のためのカスタマイズされた外科器具またはプロテーゼを生産する方法において、
前記患者の身体部分の少なくとも1つのx線画像を取り込むことと、
前記身体部分の前記少なくとも1つのx線画像を処理して、処理済みの患者画像を生成することと、
最小距離長さアプローチを用いて生成され、全体にわたって解剖学的一致点の稠密集合を有する統計モデルを、前記処理済みの患者画像から得られる画像データを用いて例示して、高精度の表面を有する前記身体部分の患者別モデルを生成することと、
前記患者別モデルからの患者固有のデータを使用し、前記身体部分に対して実行されるべき外科処置で使用される前記カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼのデザインを生成することと、
前記デザインを使用して前記外科器具またはプロテーゼを製造することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記患者別モデルは、前記患者の身体部分の表面形状と約1〜2mm未満だけ異なる表面形状を有する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記患者別モデルは、骨と、軟組織または関節軟骨のうち少なくとも一方と、を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記デザインを生成することは、骨、および軟組織または関節軟骨のうち少なくとも一方、の双方に関する患者固有のデータに基づく、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記カスタマイズされた外科器具の前記デザインは、前記患者の身体部分上に前記外科器具を据え付けることを可能にする前記外科器具の形状、および/または、前記患者の身体部分周辺の空間に前記外科器具を嵌め込むことを可能にする前記外科器具の外側形状を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記患者に関する人口統計データが、形状モデルに供給され、
前記形状モデルは、前記患者の前記人口統計データに合う部分母集団からのモデルを例示する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記統計モデルから再建されたCT画像から擬似x線画像を生成することと、
前記身体部分の前記少なくとも1つのx線画像と同様に前記擬似x線画像を処理して、処理済みの擬似x線画像を生成することと、
前記身体部分の前記患者別モデルの例示の一環として前記処理済みの患者画像と処理済みの擬似x線画像とを比較することと、
をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
処理することは、前記画像に高域フィルターを適用することを含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
処理することは、微分画像を生成することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
処理することは、前記画像を、凸の特徴部画像および凹の特徴部画像に分解することを含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
処理することは、広がり関数を前記微分画像の特徴部に適用することを含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
処理することは、正規化関数を前記微分画像の特徴部に適用することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
前記モデルは、表面モデルであり、前記一致点は、前記表面の範囲に限定される、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
前記モデルは、体積モデルであり、前記一致点は、目的の体積全体にわたって明確である、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
前記患者別モデルを例示することは、準ニュートン最適化方法を使用することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
運動モデルにおいて前記患者別モデルからの患者固有のデータを用いて、前記患者の身体部分の、見込みのある運動学的挙動を特定する運動学的データを決定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記運動学的データは、前記カスタマイズされた外科器具またはプロテーゼの前記デザインを生成するのにも使用される、方法。
【請求項18】
身体部分の患者別モデルを生成するコンピューター実施方法において、
患者の身体部分のx線画像を処理して、フィルター処理および正規化された、患者の微分画像を生成することと、
高密度の解剖学的一致点を有する統計モデルからCTスキャン型画像を再建し、前記CTスキャン型画像から前記x線画像に対応する擬似x線画像を生成することと、
前記x線画像と同様に前記擬似x線画像を処理して、擬似微分画像を生成することと、
準ニュートン最適化方法を用いて、前記患者の微分画像と、前記擬似微分画像との間の残差に基づき費用関数を最適化して、前記身体部分の患者別モデルを生成することと、
を含む、方法。
【請求項19】
コンピューター読取可能媒体において、請求項18に記載の方法を実施するためにデータ処理デバイスにより実行可能なコンピュータープログラムコードを有する、媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517579(P2011−517579A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548168(P2010−548168)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000517
【国際公開番号】WO2009/106816
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【出願人】(506300914)デピュイ・オーソぺディー・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY ORTHOPADIE GMBH
【出願人】(510231536)イモーフィックス・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Imorphics Ltd
【住所又は居所原語表記】Kilburn House, Lloyd Street North, Manchester Science Park, Manchester M15 6SE,  United Kingdom
【Fターム(参考)】