説明

カップラベース増幅器における負荷不整合の適合

カップラベース増幅器は、増幅器の2つの出力信号振幅間の差分に基づく負荷不整合の測定方法を提供する。この測定方法を使用し、可変整合ネットワーク(VMNs)または増幅器供給電圧を制御して、一定の歪みレベルおよび高い電力伝達/効率を維持し、出力電力をも制御することができる。負荷不整合を、増幅器デバイスの出力振幅を比較することにより測定し、この比較に基づき歪みレベルの増加などの望ましくない動作に対処するように回路を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子増幅器に関するものであり、より詳細にはカップラベース増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、2台の増幅器デバイス102,104を含む、従来のカップラベース増幅器100の回路図である。負荷ZLに伝達する出力電力が、単一の増幅器デバイスの容量を超える場合に、代表的にこの回路構成を使用する。図では、ソースを電圧ソースおよび直列インピーダンスZSとして示す。3dBカップラ106,108が直角位相タイプ、例えば4分の1波長の電気的長さを有する電界結合線路である場合、個々の増幅器デバイス102,104とカップラとの間の不整合はソースと負荷の接続には現れない。図示するように、カップラの2次接続が特性インピーダンスZ0で終端することを注記することにする。この構成は、また増幅器デバイスの故障に対しある保護を備え、1台のデバイスが故障しても、増幅器は出力電力を下げてなお動作する。
【0003】
カップラベース増幅器は当技術では既知である。特許文献1(セリン(Selin)の米国特許第4,656,434号)では、出力カップラから入力カップラへのフィードバックにより、負荷の不整合を補正するカップラベース電力増幅器を開示する。特許文献2(アブドライアン(Abdollahian)他の米国特許第6,297,696号)では、出力電力反射の測定に基づく動的負荷インピーダンス整合を有するカップラベース電力増幅器を開示する。特許文献3(チェン(Cheng)他の米国特許第6,515,541号)では、カップラの分離ポートに接続するインピーダンス変更回路を有するカップラベース電力増幅器を開示し、1台の増幅器が停止すると、インピーダンスを変更する。特許文献4(コバヤシ(Kobayashi)の米国特許出願公開第2002/0186079号)では、増幅器の入力に接続するカップラおよび増幅器の出力に接続する整合ネットワークを有する平衡増幅器を開示する。
【特許文献1】米国特許第4,656,434号
【特許文献2】米国特許第6,297,696号
【特許文献3】米国特許第6,515,541号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0186079号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に記載したものなどの従来の増幅器に伴う問題は、増幅器を変動する負荷インピーダンスZLに接続すると、各増幅器デバイスにより「見える」インピーダンスZL1、ZL2がZLの公称値、例えば50Ωからずれることである。負荷が純粋に抵抗であれば、インピーダンスは実部および虚部双方に関して反対方向にずれる。一方の増幅器デバイスは負荷インピーダンスにほぼ等しい(即ち、ZL1≒ZL)インピーダンスに「見え」、他方の増幅器デバイスはλ/4の変形負荷インピーダンスのインピーダンス(即ち、ZL2≒Z20/ZL)に「見える」。これは、次にそれぞれ増幅器デバイス102、104の信号振幅VOUT1、VOUT2のずれに繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以前のカップラベース増幅器の欠点および問題を本発明により取り上げ、本発明は一態様においてカップラベース増幅器を提供し、この増幅器は、第1の分岐出力信号を生じる第1の分岐増幅器デバイス、第2の分岐出力信号を生じる第2の分岐増幅器デバイス、第1および第2の分岐増幅器デバイスに接続し、第1および第2の分岐信号を結合して、負荷に伝達するカップラ、第1の分岐出力信号に基づいて第1の包絡信号を生じる第1の包絡検出器、第2の分岐出力信号に基づいて第2の包絡信号を生じる第2の包絡検出器、および第1の包絡信号と第2の包絡信号との間の差分に対応する制御信号を形成する差動デバイスを含む。制御信号は負荷の反射係数に関係する。本発明の別の態様では、このようなカップラベース増幅器は、制御信号により制御する可変整合ネットワーク(variable matching network、VMN)をさらに含み、カップラの負荷と出力ポートとの間のインピーダンス変換を制御する。
【0006】
本発明の別の態様では、少なくとも2台の分岐増幅器デバイスおよび負荷に信号を伝達するカップラを有するカップラベース増幅器の制御方法は、2台の分岐増幅器デバイスにより生成するそれぞれの出力信号間の差分に基づき制御信号を生成する工程、および制御信号に基づいて2台の分岐増幅器デバイスを制御する工程を含む。制御信号は負荷の反射係数に関係する。測定工程は、出力信号の包絡を検出する工程、1つの検出包絡を他の検出包絡から減算し、差分信号を形成する工程、および差分信号を参照と比較し、制御信号を形成する工程を含むことができる。
【0007】
本発明のさらに別の態様では、カップラベース増幅器は、第1の分岐出力信号を生じる第1の分岐増幅器デバイス、第2の分岐出力信号を生じる第2の分岐増幅器デバイス、第1および第2の分岐増幅器デバイスに接続し、第1および第2の分岐信号を結合して、負荷に伝達するカップラ、第1の分岐出力信号に基づいて第1の包絡信号を生じる第1の包絡検出器、第2の分岐出力信号に基づいて第2の包絡信号を生じる第2の包絡検出器を含む。増幅器は、第1の分岐増幅器への第1の調整可能な給電、第2の分岐増幅器への第2の調整可能な給電、第1の包絡信号と第1の調整可能な給電の出力レベルとの間の差分に対応する第1の制御信号を形成する第1の差動デバイス、および第2の包絡信号と第2の調整可能な給電の出力レベルとの間の差分に対応する第2の制御信号を形成する第2の差動デバイスをさらに含む。第1および第2の制御信号は負荷の反射係数に関係する。第1の制御信号は第1の調整可能な給電の出力レベルを制御し、第2の制御信号は第2の調整可能な給電の出力レベルを制御する。
【0008】
本発明の種々の目的、特徴および利点は図面と共に本明細書の記述を読むと明らかになろう。図面では同じ要素を同じ参照文字により示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、カップラベース増幅器の特性を利用し、2台の分岐信号増幅器の2つの出力信号振幅間の差分に基づく負荷不整合の測定方法を提供する。この測定方法を、可変整合ネットワーク(VMN)または各増幅器の個々の供給電圧の制御に使用して、一定の歪みレベルおよび高い電力伝達/効率を維持することができる。本願において記述する発明は、この特性を利用して、増幅器デバイスの出力振幅を比較することにより、負荷不整合を測定し、比較に基づいて回路を調整し、歪みレベルの増加など望ましくない動作に対処する。
【0010】
図2は、2つの電力ソースを持つ構成のカップラを図示する。この構成を使用して、2台の増幅器の出力をモデル化することができる。図では、2つの電力ソース(直列インピーダンスZSを持つ0.63ボルトのソース)は4分の1波長の電気的長さを持つ理想的電界結合線路の3dBカップラを駆動する。電力ソースはそれぞれの位相角により示すように直角位相にあって、公称動作条件下の出力負荷ZLに全電力を差し向ける。ソースは、それぞれのインピーダンスZL1、ZL2に「見える」。HP‐ADSなどのシステムにより好都合に実施することができるAC分析を、出力負荷インピーダンスZLが変動する場合の分岐信号の振幅差分|VOUT1|−|VOUT2|および出力電力を見出すのに使用することができる。
【0011】
このようなAC分析の結果を図3および図4に示すが、図はΓL(ΓL平面またはスミス(Smith)チャート平面」」の関数として信号振幅の差分を示し、ΓLはカップラベース構成の負荷の反射係数であり、公称インピーダンスは50Ωである。図3は、出力負荷インピーダンスZLの関数としての分岐信号振幅の差分を示し、図4は、出力負荷インピーダンスの関数としての負荷P−PMAXにおける正規化電力を示す。図3は、分岐信号振幅の差分が負荷の反射係数ΓLの実部に直接的に関係することを示す。
【0012】
より実際的な増幅器回路、特に1.95GHzで動作するシリコン‐ゲルマニューム(SiGe)電力増幅器の出力段が図2の単純化した回路図と同じ動作を示すかを調査した。SiGe電力増幅器はカップラと各増幅器デバイスとの間で共役的に整合しなかった。代わりに、インピーダンスレベルを所与の供給電圧に対する出力電力を最適化するように選択した。従って、ある程度動作に影響することが予想されうる不整合が存在した。
【0013】
図5および図6は、図3および図4でシミュレートした関数的関係のSiGe回路に関するシミュレーション結果を示す。|VOUT1|−|VOUT2|の図5における図は実際のカップラの不完全さによりΓL平面において僅かに回転しているが、図3および図4と図5および図6を比較して容易に分かるように、ほぼ同じ特性が得られる。また、図6の正規化電力図も幾らか歪んでいる。にもかかわらず、分岐信号振幅の差分を負荷不整合の粗いが、有用な測定方法として使用できることが認識されよう。
【0014】
分岐信号振幅の差分は負荷不整合の測定量であるが、単一の(実部値の)量である。従って、スミスチャートにおいて負荷を見出すことのできる場所に関する完全な情報を提供しない。事実、分岐信号振幅の差分はΓLXの実部だけに大部分関係し、ΓLXは1台の増幅器デバイス、例えばカップラの入力ポートの1つの入力インピーダンスにより見た時の負荷の反射係数である。にもかかわらず、信号レベルならびに歪みレベルをほぼ一定に保つような、増幅器デバイス102、104の動作条件を提供することが目標であれば、その場合ΓLXの実部に頼れば十分である。
【0015】
図7に示す1台の増幅器デバイスの単純化したモデルを考察することにより、このための根本的理由を理解することができる。増幅器の出力を、負荷インピーダンスZLXを駆動する電流ソースIとしてモデル化する。その他を全て固定にすることにより、負荷にかかる絶対電圧信号レベル|V|はインピーダンスの絶対値|ZLX|に比例し、比例定数は単純に電流の絶対値|I|である。これは、オームの法則の表現として認識されよう。1台の増幅器デバイスより見る負荷である|ZLX|と図7の単純な例の場合の反射係数ΓLXとの間の関係を図8に示すが、図は対応する反射係数ΓLXの関数として正規化絶対インピーダンスZLX/Z0を示す。図8から、ΓLXの虚部は|ZLX|に限定的影響を有するに過ぎず、それ故また対応する信号レベルにも限定的影響を有するに過ぎない。
【0016】
実際、各増幅器デバイスは出力インピーダンス自体を有し、一般に出力インピーダンスの特性は非線形であり、複雑である。以上でシミュレートしたSiGe電力増幅器デバイスの場合、本質的に図9に示すのと同じ動作を観測したが、1台のSiGe増幅器デバイスの正規化出力レベルVLX/V0(即ち、公称負荷インピーダンスを使用する正規化絶対出力電圧)を反射係数ΓLXの関数として示す。図9からインピーダンスが増加する場合、増幅器段の出力インピーダンスにより出力が幾らか平坦になることが注目されよう。
【0017】
図10は、分岐信号振幅の差分を測定する増幅器100’の図であり、各増幅器デバイス102’、104’の分岐信号振幅は検出器110、112により検出する。図1の装置の場合のように、3dBカップラ106’を通じて増幅器デバイスを負荷インピーダンスZLに接続する。アテニュエータ、フィルタおよびその他の条件設定構成要素を、所望であれば検出器110、112の前に置くことができる。検出振幅を、例えば適する差分増幅器114により減算し、実際の分岐信号振幅VOUT1、VOUT2間の差分(または少なくとも差分の単調関数)に凡そ比例する制御信号VCTRLを得る。
【0018】
検出器110、112は、ショットキー(Schottky)ダイオード、または高周波数動作に適する低い「変化点」電圧(“knee”voltage)を有するその他の高速デバイスなどのダイオードおよび抵抗‐キャパシタ(R‐C)ネットワークを使用する包絡検出器でありうる。とはいえ、2台の検出器が適切に整合する限り、包絡に関係する測定量を生じる他のデバイスもまた使用できることが理解されよう。簡単さのため、包絡に関係する測定量は信号を検出する包絡の単調関数であることが好ましい。従って、電力検出器(例えば、線形電力または対数電力)をダイオード包絡検出器の代わりに使用することができる。例えば、ギルバート(Gilbert)セル増幅器を使用して、増幅器の出力信号を2乗することができ、2乗した結果を低域通過フィルタに通す。フィルタの出力は包絡電力に比例するものとなる。
【0019】
制御電圧VCTRLを増幅器の制御に使用して、変動する負荷状態に対する性能を最適化することができる。振幅差分制御信号に基づくカップラベース増幅器の動作を制御する2つの方法を以下に記述する。
【0020】
参照により本明細書に組み込む、デント(Dent)他による米国特許出願公開第2002/0101907A1号に記載するような、カップラの出力ポートと負荷との間の可変整合ネットワーク(VMN)により、各増幅器デバイスより見たインピーダンスを、信号レベルと歪みの積が、負荷インピーダンスが変化する場合に本質的に一定になるように制御することができる。電力伝達もまた改善することができる。このような装置を、図10の装置の場合のように分岐増幅器102''、104''、3dBカップラ106''、包絡検出器110''、112''および差分デバイス114''を有するカップラベース増幅器100''の図である図11に示す。図11の装置は、また差分器114''により生じる差分信号VCTRLにより制御されるVMN116を有する。実際、VMNは差分信号の符号(sign)のみを必要としうることが理解されよう。インピーダンスZLTはカップラ106''より見るVMN116により変形した負荷インピーダンスZLである。図11に示す種類の装置は増幅器に良く定義されたインピーダンスを達成する。
【0021】
例えば、1以上が可変である集中または分散回路要素(個別および/または集積)を含む通常の整合ネットワークを使用することにより、適応するVMN116を幾つかの方法で実装することができる。可変回路要素は、マイクロ電子機械(micro-electro-mechanical、MEMs)システム、バラクタダイオード、スイッチなどでありうる。適切な時間連続関数、またはディジタル(例えばマイクロプロセッサベースの)関数またはアルゴリズムのいずれかを使用し、歪みおよび電力伝達に関して絶えずまたは連続的に増幅器性能を最適化して、これら可変回路要素を以上に説明した制御信号VCTRLにより直接的または間接的に制御する。
【0022】
図12は、1台の分岐増幅器デバイス(例えば上部分岐デバイス102'')が負荷インピーダンスZLの増加と共に増加するインピーダンスに見え、一方他の分岐増幅器デバイス(例えば下部分岐デバイス104'')が対応して減少する負荷インピーダンスに見えると仮定する、図11に示したような回路構成に適するカップラベース増幅器の最適化法の簡単な一例のフローチャートである。本方法は、測定する差分信号VCTRLに基づいてVMN116を制御する(ステップ202)。VCTRLがゼロまたはある閾値より小さいことが判明すれば、VMN116を調整して、インピーダンスZLTを減少させる(ステップ206)。対応して、VCTRLがゼロまたはある閾値より大きいことが判明すれば、VMN116を調整して、インピーダンスZLTを増加させる(ステップ208)。インピーダンスを増加または減少させる本技術の詳細は整合ネットワークの詳細に依存することが理解されよう。
【0023】
以上に注記したように、VMNを幾つかの方法で実装することができ、以上に引用した米国特許出願公開第2002/0101907A1号では回路例を記載している。図13は、固定インダクタおよび可変キャパシタに基づくVMNの例を示す。この例では、VMN116は、2つの並列回路116−1、116−2および1つの直列回路116−3を含む、3つの共振サブ回路を有する。負荷がカップラに対して所望の公称インピーダンスを示せば、各サブ回路が動作周波数に共振することを保証することにより、キャパシタは同調して、VMNを見えなくすることができよう。サブ回路のキャパシタの変化によりサブ回路を実効的に誘導性または容量性にすることになろう。従って、良く確立された整合ネットワークの設計法により、高インピーダンスをより低いインピーダンス、およびその逆に(または、以上に説明したように歪みに関して最も重要な側面であるRe[ΓL]=0に向けて少なくとも移動させる)変形することができる。
【0024】
図13に示す回路が、VMNとして利用できる多くの例の中の一例に過ぎないこと、およびそれほど複雑でない、およびより複雑な両回路を、整合ネットワークの帯域幅、コスト、自由度、正確さおよび解像度などに依存して導出することができる、ことが理解されよう。図13の可変キャパシタのような可変回路要素を、例えば連続する範囲の容量性の値を供給するバリキャップダイオードによる多くの方法で実装することができる。このような連続的に変化しうるキャパシタの代わりに、または加えて、1以上のセットの固定キャパシタおよび/またはインダクタおよびスイッチは、ある範囲の離散値を供給することができる。図14は、個々の閉スイッチおよびキャパシタC1、C2、...、CNの値に依存して、VMN116で使用することができる可変総キャパシタンスCTOTを生じるN個のC1、C2、...、CNおよびそれぞれのスイッチのセットの一例を示す。
【0025】
また、増幅器と負荷との間のカップラが、それ自体キャパシタ、インダクタ、変圧器および伝送線路を含む、1以上の可変誘導性構成要素を含む誘導性要素でありうる、ことが認識されよう。従って、図11でカップラ106''およびVMN116の周りに鎖線により示すように、VMNおよびカップラ機能を、単一の回路ブロックで効果的に実装できる。このように、カップラは信号VCTRLに同調、応答でき、負荷とカップラの出力ポートとの間のインピーダンス変換を制御することができる。
【0026】
カップラベース増幅器の動作を制御する別の方法は各分岐増幅器デバイスへの個別給電の供給を含む。給電に十分な限界余裕があれば、利得が増加すると、給電により歪みの増加を回避すべく各増幅器デバイスの所要信号範囲を探知することができる。これを、包絡検出器110'''、112'''、3dBカップラ106'''および調整可能な給電部を有するカップラベース増幅器100'''の図である図15により図示する。分岐増幅器デバイス102'''、104'''のそれぞれをそれ自体の供給電圧、例えばそれぞれのDC/DCコンバータ118、120に接続する。図示するように、各DC/DCコンバータを参照(例えば、DC/DCコンバータの供給電圧出力)と包絡検出器により生じる検出信号振幅との間の差分により制御する。差分制御信号をそれぞれの差分増幅器122、124により生成する。供給電圧レベルVsupply1、Vsupply2を制御し、検出信号と参照との間の差分を、各増幅器デバイスが飽和しないか、または望まないレベルの歪みを生成しないようなレベルに保つ。換言すれば、1台の増幅器デバイスより見る場合の負荷のインピーダンスレベルが増加すると、その場合デバイスの出力電圧Vout1またはVout2も増加し、従ってDC/DCコンバータを制御し、より高い出力電圧Voutを可能にするより高い供給電圧を生成する。
【0027】
単一の増幅器に適用する類似の技術は、本出願人による米国特許第6,133,792号(ハンソン(Hansson))に記載されている。この給電制御技術は、以上に記述するVMNベースの解決法のように負荷変更によりもたらす実際の不整合を補正しないことが理解されよう。代わりに、増幅器は単に歪みレベルの増加を回避するために信号変化範囲に余裕を作るだけである。
【0028】
増幅器により生じる出力信号の電力レベル制御を増幅器の入力信号振幅を変更することにより実装することがよくある、ことが理解されよう。にもかかわらず、出力電力をまた増幅器のエネルギー供給を通じて制御できる、ことも認識されよう。例えば以上に記述したように、供給電圧を適するレベル、例えば出力信号に関する線形性、または他の要求条件を満たすレベルに減少させることにより、電力レベルを下げることができる。それ故、負荷不整合の補正への検出器110'''、112'''の使用の他に、検出器をまた個々の増幅器デバイス102'''、104'''および増幅器100'''の電力制御に使用することができる。さらに、無線送信機では、検出器は送信電力の測定量を生成することができ、これらを送信機の電力制御ループに使用することができる。
【0029】
以上に引用した米国特許出願公開第2002/0101907A1号に記載するVMNは、電力伝達、効率性および一定レベルの歪みを維持するようにVMNを適合させるのに使用することができる負荷インピーダンスの完全な特性化/測定のための一般的な解決法を提供する。この解決法は、有力ではあるが、複雑である。本明細書に記述する技術は、カップラベースの電力増幅器構成に頼り、この構成に、より簡単な包絡検出技術を使用して、増幅器出力信号レベルの変動およびその結果また間接的に歪みになる負荷不整合部(負荷の反射係数の実部)を測定することができる。本願に記述する技術の別の利点は、出力信号レベル差の実際値に頼る必要がないことである。この量の符号(sign)だけでVMNの制御には十分である。
【0030】
以上に記述した手順を必要なときに繰り返し実施し、理解を容易にするために、本発明の多くの態様を、例えばプログラム可能なコンピュータシステムの要素により実行できる動作シーケンスに関して記述することが認められよう。さらに、ある場合には検出包絡差を使用して、直接的、または間接的にVMNの要素を制御することにより、アナログの時間の連続する方法で本手順を実施することが可能である。特別な回路(例えば、特別な機能を実行する相互接続する個別論理ゲートまたはアプリケーション専用集積回路)、1以上のプロセッサにより実行するプログラム命令、または両者の組み合わせにより、種々の動作を実行することができることが認識されよう。
【0031】
このように、本発明を、以上に記述する全てではないが、多くの異なる形式で実施することができ、全てのこのような形式は本発明の範囲内にあると考えられる。本発明の種々の態様のそれぞれに対し、このような形式を、記述する動作を実行するように「構成する論理」、または代わって記述する動作を実行する「論理」と呼ぶことができる。
【0032】
本願において使用する場合、用語「備える」および「備えている」は記述する特徴、整数、工程または構成要素の存在を明記し、1以上の他の特徴、整数、工程、構成要素またはそのグループの存在または追加を排除するものではないことを強調する。
【0033】
以上に記述する個々の実施形態は単に例示するものであり、決して限定するものと考えるべきではない。本発明の範囲は添付する特許請求の範囲により定められ、特許請求の範囲に入る全ての変更および等価物は特許請求の範囲に包含されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のカップラベース増幅器の回路図である。
【図2】2つの電力ソースを持つ構成のカップラの例図である。
【図3】従来のカップラベース増幅器の出力負荷の関数としてシミュレートした分岐信号の振幅差分を示す図である。
【図4】従来のカップラベース増幅器の出力負荷の関数としてシミュレートした負荷における正規化電力を示す図である。
【図5】従来のカップラベース増幅器の出力負荷の関数としての分岐信号の振幅差分を示す図である
【図6】従来のカップラベース増幅器の出力負荷の関数として正規化した負荷における電力を示す図である。
【図7】増幅器デバイスのモデルを示す。
【図8】図7のモデルに対応する反射係数の関数としてシミュレートした正規化絶対インピーダンスを示す図である。
【図9】負荷の反射係数の関数として測定した増幅器デバイスの正規化出力レベルを示す図である。
【図10】各増幅器デバイスの信号振幅を包絡検出器により検出し、信号振幅の差分を測定する増幅器の図である。
【図11】包絡検出器および振幅差分信号により制御する可変整合ネットワークを有するカップラベース増幅器の図である。
【図12】「アルゴリズム的」増幅器の最適化法のフローチャートである。
【図13】固定インダクタおよび可変キャパシタに基づく例示的可変整合ネットワークを示す。
【図14】可変総キャパシタンスを生じるキャパシタとそれぞれのスイッチの例示的セットを示す。
【図15】包絡検出器および調整可能な給電を有するカップラベース増幅器の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップラベース増幅器であって、
第1の分岐出力信号を生じる第1の分岐増幅器デバイスと、
第2の分岐出力信号を生じる第2の分岐増幅器デバイスと、
前記第1および第2の分岐増幅器デバイスに接続し、前記第1および第2の分岐信号を結合して、負荷に伝達するカップラと、
前記第1の分岐出力信号に基づいて第1の包絡信号を生じる第1の包絡検出器と、
前記第2の分岐出力信号に基づいて第2の包絡信号を生じる第2の包絡検出器と、
前記第1の包絡信号と前記第2の包絡信号との間の差分に対応する制御信号を形成する差動デバイスであって、前記制御信号が前記負荷の反射係数に関係する差動デバイスとを備えることを特徴とする増幅器。
【請求項2】
前記第1および第2の包絡信号が前記それぞれの分岐出力信号の前記包絡の単調関数に従うことを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記第1および第2の包絡検出器の少なくとも1つがダイオードを含むことを特徴とする請求項2に記載の増幅器。
【請求項4】
前記ダイオードがショットキー(Schottky)ダイオードであることを特徴とする請求項3に記載の増幅器。
【請求項5】
前記第1および第2の包絡検出器が電力検出器であることを特徴とする請求項2に記載の増幅器。
【請求項6】
前記カップラと前記負荷との間に接続される可変整合ネットワーク(variable matching network、VMN)をさらに備え、前記VMNは、前記負荷と前記カップラの出力ポートとの間のインピーダンス変換が制御されるように、前記制御信号により制御されることを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
【請求項7】
前記制御信号が前記差分の符号であることを特徴とする請求項6に記載の増幅器。
【請求項8】
前記カップラを前記制御信号により制御し、前記負荷と前記カップラをインピーダンス整合させることを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
【請求項9】
少なくとも2台の分岐増幅器デバイスおよび負荷に信号を伝達するカップラを有するカップラベース増幅器の制御方法であって、
2台の分岐増幅器デバイスにより生成するそれぞれの出力信号間の差分に基づき制御信号を生成する工程であって、該制御信号が前記負荷の反射係数に関係する、制御信号を生成する工程と、
前記制御信号に基づいて前記2台の分岐増幅器デバイスを制御する工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記測定工程が、
前記出力信号の包絡を検出する工程と、
1つの検出包絡を該他の検出包絡から減算し、差分信号を形成する工程と、
前記差分信号を参照と比較し、前記制御信号を形成する工程とを備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御信号が前記差分信号の信号であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記出力信号の包絡を検出する工程が、該出力信号の電力を検出する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記制御する工程が整合ネットワークのインピーダンスを変化させる工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
整合ネットワークの前記インピーダンスを変化させる工程がキャパシタンスおよびインダクタンスの少なくとも1つを変化させる工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記制御する工程が、前記分岐増幅器デバイスの少なくとも1台に供給する少なくとも1つの給電レベルを変化させる工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
カップラベース増幅器であって、
第1の分岐出力信号を生じる第1の分岐増幅器デバイスと、
第2の分岐出力信号を生じる第2の分岐増幅器デバイスと、
前記第1および第2の分岐増幅器デバイスに接続し、前記第1および第2の分岐信号を結合して、負荷に伝達するカップラと、
前記第1の分岐出力信号に基づいて第1の包絡信号を生じる第1の包絡検出器と、
前記第2の分岐出力信号に基づいて第2の包絡信号を生じる第2の包絡検出器と、
前記第1の分岐増幅器への第1の調整可能な給電部と、
前記第2の分岐増幅器への第2の調整可能な給電部と、
前記第1の包絡信号と前記第1の調整可能な給電の出力レベルとの間の差分に対応する第1の制御信号を形成する第1の差動デバイスであって、該第1の制御信号が前記負荷の反射係数に関係する、第1の差動デバイスと、
前記第2の包絡信号と前記第2の調整可能な給電の出力レベルとの間の差分に対応する第2の制御信号を形成する第2の差動デバイスであって、該第2の制御信号が前記負荷の反射係数に関係する、第2の差動デバイスとを備え、
前記第1の制御信号が前記第1の調整可能な給電の前記出力レベルを制御し、前記第2の制御信号が前記第2の調整可能な給電の前記出力レベルを制御することを特徴とする増幅器。
【請求項17】
前記第1および第2の包絡信号が前記それぞれの分岐出力信号の前記包絡の単調関数に従うことを特徴とする請求項16に記載の増幅器。
【請求項18】
前記第1および第2の包絡検出器の少なくとも1つがダイオードを含むことを特徴とする請求項17に記載の増幅器。
【請求項19】
前記ダイオードがショットキーダイオードであることを特徴とする請求項18に記載の増幅器。
【請求項20】
前記第1および第2の包絡検出器が電力検出器であることを特徴とする請求項17に記載の増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−526147(P2008−526147A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548737(P2007−548737)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013952
【国際公開番号】WO2006/069749
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】