説明

カテキン及び/又はビタミンCを含有する水溶液を溶媒とした植物由来有用成分の抽出、製造方法と、抽出物及びその発酵物

【課題】
本発明は植物由来有効成分を、平易で安価に安全に効率よく抽出する製造方法と、その抽出物を有効に安定して利用する為のその発酵物に関するものである。
【解決手段】
植物由来有用成分を、天然物であり日常よく摂取しているカテキンとビタミンCの水溶液を溶媒として低温〜常温常圧、静止浸漬により効率よく抽出し、栄養豊富な抽出物を、その植物抽出茶として利用し、又発酵菌による発酵物の製造によって、保存性を高め、有効成分の安定化と質の向上を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキンとビタミンCという2つの強い還元力をもつ抗酸化物質の水溶液を溶媒として、人体に直接摂取する薬草、野菜、果実、花、樹木などから植物由来有用成分を安全に環境負荷なく抽出する製造方法とその抽出物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調理以外に植物由来成分の抽出は薬草、漢方薬のように乾燥したものを加熱煮沸いわゆる煎じて利用されたり焼酎に長期間漬ける「薬酒」として使われたりしている。又、飲用や健康食品医療品等の抽出にはアルコール等の有機溶剤によるもの、煮沸水蒸気抽出によるもの、水そのものの長時間浸漬によるものなどがある。熱水による抽出の場合は、それぞれ熱による成分の損失や細胞の破壊による不要残渣の流出があり、有機溶剤によるものは抽出後の減圧等アルコール分の除去等の欠点があり、水抽出は緩慢であまり抽出できない成分も多い。
【0003】
最近では超臨界によるCO2抽出等新技術が行われているが高価で大規模な装置が必要とされる。
【0004】
主として緑茶の渋みのもとであるカテキンは、コレラ菌や食中毒原因菌黄色ブドウ球菌やO−157菌の殺菌抗菌作用や、インフルエンザウイルスなどの抗ウイルス作用が知られている。又、人間のB細胞を増殖させ、抗体をつくる力を高めるという免疫力を強める作用もある。ビタミンCも抗ウイルス作用や食品の鮮度保持作用が知られているが、カテキンもビタミンCも自らを酸化する事で周りを還元する強い抗酸化物質であり、カテキンとビタミンCを併用すると還元力が保完し合い強化される。
カテキンが主で、ビタミンCが従である。(島村忠勝)
【非特許文献1】島村忠勝著「奇蹟のカテキン」PHP研究所 2000年4月4日発行P26〜139
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イ.水抽出の場合は、抽出が緩慢であまり抽出できない成分も多い。
ロ.煮沸、加熱抽出の場合は熱によるビタミン等成分の損失や細胞の破壊による不要残渣の混入がある。
ハ.アルコール等有機溶媒の場合は抽出後の溶媒の後処理が必要であり、環境にも負荷がある。
ニ.「薬酒」「果実酒」は、飲用アルコールの抽出効果を利用したものだが、抽出に数ヵ月以上の長期間がかかる。
ホ.CO2超臨界抽出の場合は複雑な装置が必要でコストが高い。
ヘ.高齢者、病人にとっては漢方薬を煎じたり冷ましたりする作業は大変である。もっと簡便に摂取可能にすること。
ト.食の細くなった高齢者には、そのものを沢山食べなくても、新鮮な野菜や果物等の有効成分を効率よく摂取できるのが望ましい。野菜抽出茶や果実抽出茶のような液体が欲しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によりカテキン及びビタミンC水溶液を溶媒に使うことによって、水抽出に比して、2倍以上〜数倍の抽出能力が確かめられた。大きいものは適当な大きさと厚さに切って、生であっても、乾燥したものであっても、落花生のような小さなものは種皮付き豆実ごと、産業に利用する場合は加温加圧も可であるが、ほとんどの場合常温常圧で、途中溶媒の濃度を均一にするための軽い撹拌をする以外、ほとんど静止状態でただ浸漬するだけで、直後から抽出が始まり、材料によっては20分〜30分で飲みごろになり、そのまま利用でき、濃すぎる場合は水で薄め、生臭い場合は電子レンジで1分間加熱する程度で生臭さが消え、渋みも減じ、好みによりハチミツ等加糖して味を整えて摂取する。ほとんどの抽出は24時間以内で行われる。酸化しやすい材料の場合は、冷蔵庫などの低温でも抽出できる。
【0007】
保存する場合は、抽出溶剤を一度沸騰させてから狭口のガラスビンに一杯に詰めてフタをするか、これを冷ましてペットボトルに一杯に詰めて冷蔵庫で保存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、薬草、野菜、果実、花、樹木などのうち、毒を持つものと、未解明ながらカテキンとビタミンCに合体して有害になる成分を持つ植物以外の、人間に有用な日本及び外国のすべての植物の有効成分の抽出に適しており、常温常圧、静止状態の自然抽出でありながら、不要残渣が混入せず、触媒の後始末もいらず、複雑な装置も不用で低コストであり、あらゆる植物の有効成分が抽出できる。30分から一昼夜の間に、素材に特有な豊潤な味と香気の濃厚な、すぐ利用できる抽出溶液が得られ、溶媒が健康によい天然物なので安全かつ安心である。生のままでも、乾燥したものでも、皮だけでも、皮付きのままでも抽出できる。抽出溶液が濃すぎた時は水で薄めたり、緑茶で濃度を調整してそのまま摂取できる。抽出溶液に生臭嗅があったり、渋みが強い場合は抽出後の加熱、煮沸や電子レンジの加熱により、摂取しやすくなる。沸騰前の温度でも生臭嗅は消える。濃縮抽出液やこれを発酵させたものは栄養価が高く他の加工食品、飲料、料理にも利用できる。種皮をむかないままでも抽出できるので実豆は別用途に利用できる。(落花生、黒豆等)
穀物は、例えば玄米のままの抽出も可能であり、その胚芽や米糠からの静止自然抽出によるエキスのみの抽出も可能である。カテキン浸漬処理により、抽出と並行して食中毒菌の殺菌まで同時に行われることになる。これが、食物有用成分の抽出の際のカテキン溶媒の優れた特徴といえる。ビタミンCを入れると、抽出力とともに保存性も強化される。
【0009】
従来の健康茶が加熱、煮沸、加圧、減圧抽出し、その抽出物に他の成分を添加して製造されていたのに比して、この製造方法によれば、カテキン溶媒中に相性の良い複数素材を適当な大きさ厚さで混ぜて浸漬するだけで目的の抽出茶を得る事ができる。薬草を焼酎に漬けた薬酒や果実酒などが数ヵ月から数年の熟成期間が必要なのに対して、この抽出液により製造される薬茶は数十分から一昼夜の短時間で十分な濃度で製造される。従って新鮮な素材を利用できる。アルコールに弱い女子、児童、老人でも摂取できる。今まで容易に利用できなかった有効成分(例えば玉ネギの皮など)も利用できる。又、これら各素材の特有の豊潤な味と香気の濃厚な抽出溶液は、栄養成分豊富な為、空気中の雑菌が繁殖しやすく、酸化による劣化を招きやすい。これを安定した食材とするため、これを濃縮し、乳酸菌や麹菌や酢酸菌などで発酵させる事が保存性を高め有効成分の安定化と質の向上の上で欠かせない工程である。
【0010】
又、本発明は乾燥植物の有効成分の抽出に優れることから各種漢方薬を緑茶抽出物によって抽出できる−「漢方薬緑茶」。緑茶も漢方薬のひとつであり、緑茶と併用して害のある漢方薬は現在のところ報告されていない。和漢薬は約500種類有るが「小ペットボトル入り漢方薬緑茶」やティーパック漢方薬を冷たい緑茶で抽出して使え、緑茶の有効成分と漢方薬の相乗効果が期待できる。化学薬品と違い、すべて天然物であり、安全安心であり、身体にやさしい医療ができる。
【0011】
植物にとって、子孫を継ぐ大切な種子は危害を及ぼす外敵や、各種の細菌、太陽の強い紫外線などから実を守るために、様々な抗菌抗酸化成分を種皮に貯えているが、このポリフェノール類は人間にとっても大変有効な植物由来有用成分である。
本発明は、このポリフェノール類の抽出にも優れた力を発揮する。各種種皮抽出茶が生み出される。(例、落花生の種皮抽出茶、ぶどうの種皮抽出茶、玉ねぎの種皮抽出茶、栗皮渋皮抽出物、きんかんの種皮抽出茶等)
【0012】
コーヒーは、コーヒー豆を焙煎すなわち培って煎じたものだが、本発明によって、培ってから緑茶浸漬する事でコーヒー緑茶をつくることができる。穀物の黒米、落花生のバレンシアタイプの紫豆を培ったもの、キャンベラブドウの黒果皮、ブルーベリー、ハスカップ、紫いも、ブドウ、黒豆など色の濃い高ポリフェノールの穀物や種子をそのまま、または培ったものを緑茶で抽出すると、紫、紺、黒の緑茶ができあがる。
【0013】
本発明のカテキン溶液の溶媒としての能力を知る為、研究の進展に合わせて日付は異なるが、同じ種皮付き乾燥落花生を従来広く使われている代表的溶媒であるエタノール80%溶液で3時間同条件で比較の為抽出を行ったところ、市販緑茶濃度でさえ遜色のないか、それ以上の結果を得た(図5)。
【0014】
千葉県産巨峰ぶどうの実を丁寧にはがし、軽くしぼった果皮を同じカテキン溶液に同条件で1:1.1、3時間浸漬して、レスベラトロールの抽出を得られた(図6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
高齢者や一般人誰でも手軽に漢方薬を利用できる小ペットボトル入り「漢方薬緑茶」や、緑茶の価値を拡げた「レスベラトロール緑茶」や「高ポリフェノール緑茶」などの登場が期待される。又、細胞膜を破壊して絞ったジュースでない「有機生野菜抽出エキス」「果皮エキス」なども期待される。本発明によって、樹皮や果皮、種皮、球根等に含まれる未利用有効成分の抽出、発見、利用が期待される。
【実施例】
【0016】
種皮付き乾燥落花生の種皮有効成分の抽出による「落花生種皮健康茶」の製造方法。八街産千葉半立種の種皮付き乾燥落花生をビタミンC入りカテキン溶媒に3時間浸漬後、抽出溶液を取り出した。カテキン溶媒は市販2L入り緑茶(せん茶)ペットボトルビタミンC入りを溶媒としてそのまま使う。ビタミンCは緑茶の褐変防止の為、少量使われている。落花生の豆は大きさにばらつきがあるので、種重量比で1対カテキン溶液1の割合でビーカーにひたひた状態で浸漬したが、乾燥した豆が水分を吸収したので途中カテキン溶液を1割足して1対1.1の割合になった。3時間浸漬後、豆を取り出し、水を吸ってやわらかくなった種皮をむいて重量を測ると皮重量は全体の約5.6%であった。茶色い皮は細い皮脈のみが茶色のままで、皮全体は脱色して透明に透けて見えた。抽出溶液は、黄褐色だった緑茶の色が濃い烏龍茶の黒褐色に変わっていた。
【0017】
この抽出溶液1:9アセトニトリルで高速液体クロマトグラフ分析法により、落花生種皮中の注目される有効成分レスベラトロールの抽出分析を行った。
レスベラトロールは心臓病の予防効果や抗ガン作用をもつと見られており、熱湯やエタノールなどに溶けやすい事が知られており、2003年にはカリフォルニア大学により赤ワインとともに落花生種皮中のレスベラトロールが老化を遅らせる効果がみとめられる事が研究発表されている。(インターネット資料)
又、最近では落花生種皮の水浸漬抽出エキスが骨髄細胞増殖活性を示す造血機能回復剤の有効成分として特許登録されている。
【特許文献1】特許第3217278号(P3217278)
【0018】
【非特許文献2】日本産ラッカセイの種皮、種皮及び落花生の加工品のレスベラトロール含有量 掲載紙:Nippon Kagaku Kaishi Vol.50No,12,570−573(2003)
【0019】
この黒褐色の常温常圧自然抽出溶液は溶媒のカテキン水溶液は市販のペットボトル緑茶であり、落花生は乾燥しているとはいえ生落花生の種皮である。念の為に電子レンジで1分間加熱後、熱いので水で薄めて、そのまま飲用する。これが落花生種皮健康茶である。残った種皮にはまだ多くの成分や豊富な食物せんいが含まれており、そのまま他の落花生加工食品原料として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カテキン水溶液による落花生レスベラトロールの抽出チャート
【図2】図1を数秒間煮沸した物。レスベラトロールの熱による分解はない。
【図3】水による抽出チャート
【図4】カテキン水溶液
【図5】種皮付落花生の80%エタノール抽出チャート
【図6】ぶどう果汁(巨峰)のカテキン溶液による抽出チャートいずれも高速液体クロマトグラフ分析法のチャート(千葉県産業支援技術研究所) 図1、図2の抽出では18分過ぎのレスベラトロールのほかに、水では抽出されない16分過ぎの不明成分の抽出が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン及び/またはビタミンCを含有する水溶液を溶媒として、低温〜常温常圧、又は加温加圧下に有用成分含有植物を浸漬処理する事で抽出することを特徴とする植物由来有用成分の製造方法とその抽出物。
【請求項2】
茶葉抽出物水溶液を溶媒として、低温〜常温常圧、又は加温加圧下に浸漬処理する事で抽出することを特徴とする植物由来有用成分の製造方法とその抽出物。
【請求項3】
請求項2のうち、特に緑茶抽出物水溶液を溶媒として、低温〜常温常圧、又は加温加圧下において、浸漬処理して得られる植物由来有用成分茶の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2、3の抽出物を濃縮した物を、乳酸菌又は麹菌又は酢酸菌のいずれかひとつにより発酵させた発酵物。
【請求項5】
請求項3、による緑茶抽出物水溶液を溶媒として漢方薬を抽出する事で得られる漢方薬緑茶。
【請求項6】
請求項3、で得られる落花生種皮、ぶどう種皮、玉ねぎの皮など植物種皮から抽出される各種種皮抽出茶。
【請求項7】
請求項3による、高ポリフェノールを含む、穀物、種皮植物をそのまま緑茶に浸漬、又は焙煎したものを再び緑茶浸漬処理して得られる紫、紺、黒の緑茶。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−40695(P2009−40695A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204841(P2007−204841)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(507273437)
【Fターム(参考)】