説明

カバーフィルム

【課題】ヒートシール性、剥離強度の安定性及び透明性に優れ、且つ高速剥離の際の「フィルム切れ」を起こしにくいカバーフィルムを提供する。
【解決手段】二軸延伸ポリエステル層(A)、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、及びシーラント層(C)を有し、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層したカバーフィルムで、シーラント層(C)が下記の成分(a)〜(c)である。(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計が5質量%以上25質量%以下である。成分(a)はスチレン系炭化水素と共役ジエンの共重合体が50〜80質量%、成分(b)はスチレン系炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が10〜35質量%、成分(c)はエチレン−α−オレフィンランダム共重合体、及び/又はオレフィン含有量が50質量%以上であるスチレン−オレフィンブロック共重合体が10〜30質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装体に使用するカバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進んでいる。電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に部品を自動的に実装することが行われている。自動実装に際し、電子部品を順次供給していくためにテーピング包装が一般的に行われている。テーピング包装は一定間隔で電子部品を収納する窪みを有した成形テープの窪み部に電子部品等を収納後、成形テープの上面に蓋材としてカバーフィルムを重ねてシールバー等でカバーフィルムの両端を長さ方向にヒートシールするものである。従来から、カバーフィルム材としては二軸延伸したPETフィルムを基材にシーラント層にホットメルト層を積層したものなどが使用されている。
【0003】
この様なカバーフィルムとポリスチレン、ポリ塩化ビニルあるいはポリカーボネートなどからなる窪みを有する部品収納テープ、例えばキャリアテープ等に収納された部品は、電子機器等の製造工程の部品の実装時には、カバーフィルムが自動剥離装置により剥離され、部品は自動取り出し機により取り出された後、回路基板等に実装される。
【0004】
実装速度の急激な高速化に伴い、カバーフィルムの剥離速度も0.1秒以下/タクトと極めて高速化している。剥離の際にはカバーフィルムに大きな衝撃的な応力が加わる。その結果、カバーフィルムが切断してしまう、「フィルム切れ」と呼ばれる問題がある。
【0005】
フィルム切れの対策として、二軸延伸したポリエステルフィルムなどの基材とシーラント層の間にポリプロピレンやナイロンやポリウレタン、エチレン−α−オレフィンなどの耐衝撃性や引裂伝播抵抗に優れた層を設ける方法(特許文献1〜5参照)、基材層を多層化する方法(特許文献6参照)がある。特許文献7、及び8にはスチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素の共重合体とエチレン−α−オレフィンおよび耐衝撃性ポリスチレンからなるシーラント層を有するカバーフィルムに関するものであるが、フィルム切れの改善方法については全く考慮されていない。
【特許文献1】特開平8−119373号公報
【特許文献2】特開平10−250020号公報
【特許文献3】特開2000−142788号公報
【特許文献4】特開2000−327024号公報
【特許文献5】特開平8−258888号公報
【特許文献6】特開平9−156684号公報
【特許文献7】特表2003−508253号公報
【特許文献8】特開2004−244115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒートシール性、剥離強度の安定性、及び透明性に優れ、且つ高速剥離の際の「フィルム切れ」を起こしにくいカバーフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)二軸延伸ポリエステル層(A)、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、及びシーラント層(C)を有するカバーフィルムである。
(2)スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層することを特徴とする前記(1)記載のカバーフィルムである。
(3)シーラント層(C)が下記の成分(a)〜(c)からなり、(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計が5質量%以上25質量%以下である前記(1)又は(2)記載のカバーフィルムである。成分(a)はスチレン系炭化水素65質量%以上90質量%未満と共役ジエン炭化水素10質量%以上35質量%未満からなり、曲げ弾性率が800MPa以上1700MPa以下であり、スチレン系炭化水素と共役ジエンの共重合体が50〜80質量%である。成分(b)はスチレン系炭化水素10質量%以上50質量%未満と共役ジエン炭化水素50質量%以上90質量%未満からなり、スチレン系炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が10〜35質量%である。成分(c)はエチレン−α−オレフィンランダム共重合体、および/またはオレフィン含有量が50質量%以上であるスチレン−オレフィンブロック共重合体が10〜30質量%である。
(4)スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)が、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素の共重合体であり、スチレン系炭化水素が75質量%以上95質量%未満、共役ジエン炭化水素が5質量%以上25質量%未満である、前記(1)〜(3)のいずれか1項記載のカバーフィルムである。
(5)スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層したフィルムと、二軸延伸ポリエステル層(A)が、ポリオレフィン樹脂を介して積層されている、前記(1)〜(4)のいずれか1項記載のカバーフィルムである。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項記載のカバーフィルムを用いた、電子部品包装容器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカバーフィルムは、ヒートシール性や剥離強度の安定性、透明性に優れ、かつ高速剥離の際の「フィルム切れ」の発生を少なくすることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
二軸延伸ポリエステル層(A)は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、あるいは二軸延伸ポリエチレンナフタレートを主とする層である。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートおよび二軸延伸ポリエチレンナフタレートとしては、通常用いられているものの他に、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布または練り込まれたもの、またはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることが出来る。二軸延伸ポリエステル層は、薄すぎるとカバーフィルム剥離時の「フィルム切れ」を発生しやすく、一方厚すぎるとカバーフィルムの接着性の低下を招きやすいため、通常12〜25μm厚みのものを好適に用いることが出来る。
【0010】
スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)は、スチレン系炭化水素樹脂を主とする層である。スチレン系炭化水素樹脂とは、たとえば汎用のポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエングラフト共重合体などの、スチレンと共役ジエンの共重合体、スチレン−エチレンブロック共重合体、スチレン−エチレングラフト共重合体、スチレン−エチレン−ブテンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体などのスチレンとオレフィンの共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体などを用いることができ、これらのスチレン系炭化水素樹脂は単独あるいはそれらの二種以上を混合物として併用することも可能である。その中でも、スチレン系炭化水素が75質量%以上95質量%未満、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン炭化水素が5質量%以上25質量%未満である、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素の共重合体は、シーラント層(C)と積層した時にシーラント層との間に剥れを生じにくく、好適に用いることが出来る。
また、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)を、汎用ポリスチレンからなる層とスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる層などの異なる樹脂からなる二層以上の層から構成することも可能である。
【0011】
スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層することにより、カバーフィルムを高速剥離した際の「フィルム切れ」を抑制することが出来る。スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)は10μm以上50μm以下であることが好ましく、更に好ましくは20μm以上40μm以下である。スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)の厚みが10μm未満の場合、「フィルム切れ」を抑制する効果が低下する。一方、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)の厚みが50μmを超えると、カバーフィルムの接着性の低下を招きやすい。
【0012】
シーラント層(C)の(a)および(b)を構成するスチレン系炭化水素としては、例えばスチレン、α―メチルスチレン、及び各種アルキル置換スチレンなどであるが、なかでもスチレンを好適に用いることが出来る。また、共役ジエン系炭化水素とは、例えば、ブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエン、1、3−ヘキサジエン、2、3−ジメチル−1、3−ブタジエンなどが挙げられる。
【0013】
シーラント層(C)の成分(a)は、スチレン系炭化水素と共役ジエンからなる共重合体であり、スチレン系炭化水素ブロック−共役ジエンブロックであるジブロック共重合体、スチレン系炭化水素ブロック−共役ジエンブロック−スチレン系炭化水素ブロックであるトリブロック共重合体、スチレン系炭化水素ブロック−スチレン系炭化水素と共役ジエンの含有比が傾斜的に変化するテーパーブロック−スチレン系炭化水素ブロックとの構造を有するブロック共重合体、スチレン系炭化水素を主鎖とし共役ジエンを側鎖とするグラフト共重合体などが挙げられる。なかでもスチレン系炭化水素ブロック−スチレン系炭化水素と共役ジエンの含有比が傾斜的に変化するテーパーブロック−スチレン系炭化水素ブロックとの構造を有するブロック共重合体が、透明性が良好であり好ましい。スチレン系炭化水素65質量%以上90質量%未満と共役ジエン系炭化水素10質量%以上35質量%未満が好ましく、スチレン系炭化水素70質量%以上85質量%未満と共役ジエン系炭化水素15質量%以上30質量%未満がより好ましい。成分(a)のスチレン系炭化水素が65質量%未満の場合、製膜性が悪くなる傾向にあり、フィルムを得るのが困難になる場合がある。一方、90質量%以上ではカバーフィルムをヒートシールする際に十分な接着強度を得るのが困難になり易い。また、成分(a)の曲げ弾性率は800MPa以上1700MPa以下であり、好ましくは1000MPa以上、1500MPa以下が好ましい。曲げ弾性率は、JIS K7171にて曲げ速度2mm/分の速度で測定した値である。曲げ弾性率が1700MPaを超えると、カバーフィルムをヒートシールする際に十分な剥離強度を得るのが困難になりやすい。一方、曲げ弾性率が800MPa未満の場合、カバーフィルムの粘着性が高くなる傾向にあり、電子部品のキャリアテープの蓋材として用いた場合に、キャリアテープに収納した電子部品がカバーフィルムに付着し易くなる傾向にあり、さらには熱シールした後に剥離強度が変動しやすいため好ましくない。成分(a)の曲げ弾性率は、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素の含有量、および分子構造により調整することが可能である。共役ジエン系炭化水素の量が高いほど曲げ弾性率が低く、また、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素がブロック共重合体に近いほど、曲げ弾性率が低くなる。
【0014】
シーラント層(C)の成分(b)は、スチレン系炭化水素10質量%以上50質量%未満と共役ジエン系炭化水素50質量%以上90質量%未満からなるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素のブロック共重合体が好ましく、スチレン系炭化水素25質量%以上50質量%未満と共役ジエン系炭化水素50質量%以上75質量%未満からなるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素のブロック共重合体がより好ましい。スチレン系炭化水素の含量が10質量%未満の場合には、製膜時にフィルムの厚みムラを生じやすく良好なフィルムが得られにくい。一方、スチレン系炭化水素の含量が50質量%以上では、カバーフィルムをヒートシールする際に十分な剥離強度を得るのが困難になる場合がある。成分(b)はスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるジブロックあるいはトリブロック共重合体である。ブロック共重合体にすることにより、カバーテープのヒートシールの際に、十分な接着強度を得られやすい。
【0015】
シーラント層の成分(c)を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどが挙げられる。その中でも、プロピレン、1−ブテンを好適に用いることができる。成分(c)の添加によりカバーフィルムを剥離する時の剥離強度のバラツキを抑えることができる。
【0016】
シーラント層(C)の成分(c)を構成するオレフィン含有量が50質量%以上であるスチレン−オレフィンブロック共重合体としては、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレンジブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレンジブロック共重合体などが挙げられる。オレフィン含有量が50質量%以上のスチレン−オレフィンブロック共重合体の添加によりカバーフィルムを剥離する時の剥離強度のバラツキを抑えることができる。
【0017】
成分(a)〜(c)の樹脂組成物の配合比は、成分(a)は50〜80質量%が好ましく、より好ましくは50〜70質量%、成分(b)は10〜35質量%が好ましく、より好ましくは15〜30質量%、成分(c)10〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜20質量%であり、なお且つ成分(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計が5質量%以上25質量%以下を好適に用いることができる。成分(a)が50質量%未満であると製膜時にフィルムの厚みムラを生じやすく良好なフィルムが得られにくい。一方、成分(a)が80質量%を超えるとカバーフィルムをヒートシールする際に十分な剥離強度を得るのが困難になりやすいため、剥離の際の剥離強度の最大値と最小値の差が大きくなりやすく、カバーテープの剥離時にキャリアテープが搬送レール中で暴れやすくなる。成分(b)が10質量%未満の場合には十分な接着強度が得られにくい。一方、成分(b)が35質量%を超えると製膜時にフィルムの厚みムラを生じやすく良好なフィルムが得られにくいばかりでなく、またヒートシールしたフィルムを剥離する際の剥離強度が高くなりやすい。成分(c)については、10質量%未満では剥離強度の温度依存性が大きくなる傾向にあり、目的とする剥離強度を得るのが困難になりやすい。また、剥離の際の剥離強度の最大値と最小値の差が大きくなり易いため、その結果としてカバーフィルム剥離時にキャリアテープが搬送レール中で暴れやすくなる。一方、成分(c)が30質量%を超えるとカバーフィルムの透明性が低下する傾向にあり、カバーフィルムをヒートシールする際に十分な接着強度が得られにくい。
【0018】
成分(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計は5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計が5質量%未満の場合には、剥離の際の剥離強度の最大値と最小値の差が大きくなりやすく、カバーテープの剥離時にキャリアテープが搬送レール中で暴れやすくなる。一方、25質量%を超えると、カバーフィルムの透明性が低下する傾向にあり、カバーフィルムをヒートシールする際に十分な接着強度が得られにくい。
【0019】
カバーフィルムには、必要に応じて帯電防止処理工程を行うことができる。帯電防止剤として、例えば、界面活性剤系帯電防止剤、高分子型帯電防止剤、および酸化アンチモンや酸化スズなどの金属酸化物微粒子を含有する導電化剤等を、グラビアロールを用いたロールコーターやスプレー等により塗布することができる。また、帯電防止処理を行う前に、これらの帯電防止剤を均一に塗布するためにフィルムの表裏面をコロナ放電処理やオゾン処理することが好ましい。特に、コロナ放電処理することが好ましい。また、シーラント層(C)に、界面活性剤系帯電防止剤、高分子型帯電防止剤、および酸化アンチモンや酸化スズなどの金属酸化物微粒子を含有する導電化剤等を含有させることにより、帯電防止処理を行うこともできる。
【0020】
フィルムを製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)はインフレーション法、Tダイ法、キャスティング法、あるいはカレンダー法などの方法により、フィルム化することができる。一方、シーラント層(C)を構成する各成分はヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、マゼラー等の混合機を用いてブレンドし、これを直接押出機でフィルム化するか、あるいはブレンド物を一度単軸あるいは二軸の押出機で混練押し出ししてペレットを得た後、ペレットを更に押出機で押し出してフィルム化する方法などが可能である。フィルム化の方法としては、インフレーション法、Tダイ法、キャスティング法、あるいはカレンダー法等のいずれの方法を用いても差し支えないが、通常はインフレーション法やTダイ法が用いられる。スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)を構成する樹脂とシーラント層(C)を構成する樹脂を、それぞれ別の単軸または二軸の押出機を用いて溶融混練し、両者をフィードブロックやマルチマニホールドダイを介して積層一体化した後、Tダイから押し出しすることにより、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)が積層された二層フィルムを得ることも可能である。
【0021】
二軸延伸ポリエステル層(A)、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、シーラント層(C)を有してなるカバーフィルムは、少なくとも(A)〜(C)の層を有するカバーフィルムであり、各層の間に、各層の接着を目的としたアンカーコート剤層やポリオレフィン樹脂などの層を含むことも可能である。また、(A)層と(B)層の間、あるいは(B)層と(C)層の間に、カバーフィルムの帯電防止を目的とした帯電防止層を設けることも出来る。
【0022】
二軸延伸ポリエステル層(A)、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、シーラント層(C)を有してなるカバーフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムにウレタン樹脂などのアンカーコート剤を塗布し、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)となるフィルムをポリオレフィン樹脂を介して押出ラミネートすることにより二軸延伸ポリエステル層(A)とスチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)で構成される積層フィルムとし、さらにこのフィルムのスチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)の表面にウレタン樹脂などのアンカーコート剤を塗布し、シーラント層(C)のフィルムをポリオレフィン樹脂を介して押出ラミネートする方法により製造することが可能である。あるいは、ウレタン樹脂などのアンカーコート剤を塗布した二軸延伸ポリエステルフィルムと、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層一体化した二層フィルムのスチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)の表面とを、ポリオレフィン樹脂を介して押出ラミネートする方法により製造することができる。さらには、二軸延伸ポリエステルフィルムと、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層一体化した二層フィルムのスチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)の表面とを接着剤を介してドライラミネートする方法により製造することも可能である。
【0023】
フィルムの製造機としては、一般的なラミネーターを用いることができる。アンカーコート剤を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布するためのコーターとしては、ロールコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、バーコーター、ダイコーター等の通常使用されているものを用いることができる。
【0024】
ポリオレフィン樹脂を押し出すためのラミネーターのダイは、例えば、T−ダイを用いることができる。またフィルム幅を調整するためのディッケルを備えていても良い。
【0025】
カバーフィルムの全体の厚さは40〜100μmの範囲を好適に用いることができる。カバーフィルムの全体の厚さが40μm未満の場合には、カバーフィルムが薄いため取り扱いが難しく、また、カバーフィルム剥離時にフィルムが切れ易くなる。一方、カバーフィルム全体の厚さが100μmを超えるとヒートシールが困難になる場合がある。
【0026】
カバーフィルムにおいて、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)が直接積層されていることが好ましく、二軸延伸ポリエステル層(A)/スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)/シーラント層(C)の順に積層した構造を持つものを好適に用いることができる。
【0027】
本発明の電子部品用のカバーフィルムは、これを使用することにより、チップ型電子部品の保管、輸送、実装中に電子部品が汚染することを防止し、実用的な剥離強度を容易に得るためのヒートシール性、容易に取り出せるための易開封性に優れ、また透明性に優れるために充填したチップ型電子部品を視認することが可能であり、また高速剥離の際に起こりやすいカバーフィルムの「フィルム切れ」を少なくすることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
シーラント層(C)を構成する樹脂組成物(a)として、スチレンブロック−スチレンとブタジエンのテーパーブロック−スチレンブロックからなるブロック共重合体(電気化学工業製、「デンカクリアレン」、スチレン含量84質量%、ブタジエン含量16質量%、曲げ弾性率1350MPa)、(b)スチレン−ブタジエンブロック共重合体(JSR製、「STRレジン」、スチレン含量43質量%、ブタジエン含量57質量%)、(c)エチレン−1−ブテンランダム共重合体(三井化学製、「タフマーA」)を表1に示された組成になるように各々ブレンドし、直径40mmの単軸押出機を用いて200℃で混練し、シーラント層(C)を構成する樹脂組成物を得た。この樹脂組成物と、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)を構成する樹脂組成物としてスチレンブロック−スチレンとブタジエンのテーパーブロック−スチレンブロックからなるブロック共重合体(電気化学工業製、「デンカクリアレン」、スチレン含量85質量%、ブタジエン含量15質量%)とを別々の単軸押出機から押出し、マルチマニホールドダイで積層することにより二層フィルムを得た。この二層フィルムを押出ラミネート法によりポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン製、「ノバテックLC」)を介して、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と積層させて電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムを得た。
【0029】
(実施例2〜13)
実施例1と同様の方法にて、キャリアテープ用カバーフィルムを作成した、結果を表1および表2に示した。
【0030】
(比較例1〜10)
実施例1〜13と同様に、表3に示したようにシーラント層(C)の成分(a)〜(c)を配合し、この樹脂組成物とポリオレフィン樹脂として低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン製、「UBEポリエチレン」)、あるいは低密度ポリエチレン50質量%とエチレン−1−ブテンランダム共重合体50質量%との混合品を別々の単軸押出機から押し出し、マルチマニホールドダイで積層することにより二層フィルムを得た。この二層フィルムを押出ラミネート法によりポリエチレン樹脂を介して、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と積層させて電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムを得た。
【0031】
各例で使用したスチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、シーラント層(C)を構成する樹脂組成物(a)、(b)、(c)は次の通りである。
(B)樹脂1:スチレンブロック−スチレンとブタジエンのテーパーブロック−スチレンブロックからなるブロック共重合体(電気化学工業製、「デンカクリアレン」、スチレン含量85質量%、ブタジエン含量15質量%)
(B)樹脂2:スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体(スチレン含量45質量%、メタクリル酸メチル含量50質量%、ブタジエン含量5質量%)
(B)樹脂3:汎用ポリスチレン(東洋スチレン製、「トーヨースチロール」)
(B)樹脂4:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン製、「UBEポリエチレン」)
(B)樹脂5:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン製、「UBEポリエチレン」)50質量%とエチレン−1−ブテンランダム共重合体(三井化学製、「タフマーA」)50質量%を混合した樹脂
(a)樹脂1:スチレンブロック−スチレンとブタジエンのテーパーブロック−スチレンブロックからなるブロック共重合体(電気化学工業製、「デンカクリアレン」、スチレン含量84質量%、ブタジエン含量16質量%、曲げ弾性率1350MPa)
(a)樹脂2:スチレンブロック−スチレンとブタジエンのテーパーブロック−スチレンブロックからなるブロック共重合体(電気化学工業製、「デンカクリアレン」、スチレン含量83質量%、ブタジエン含量17質量%、曲げ弾性率1430MPa)
(a)樹脂3:スチレン−ブタジエングラフト共重合体(東洋スチレン製、「トーヨースチロールHI」、スチレン含量86質量%、ブタジエン含量14質量%、曲げ弾性率1600MPa)
(b)樹脂1:スチレン−ブタジエンブロック共重合体(JSR製、「TRレジン」、スチレン含量43質量%、ブタジエン含量57質量%)
(c)樹脂1:エチレン−1−ブテンランダム共重合体(三井化学製、「タフマーA」)
(c)樹脂2:スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ製、「タフテックH」、スチレン含量30質量%、エチレン/ブチレン含量70質量%)
【0032】
前記の各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーフィルムに対して、下記に示す評価を行った。これらの結果を表1、表2および表3にまとめて示す。
(1)曇価
JIS K 7105:1998に準ずる測定法Aによる積分球式測定装置を用いて曇価を測定した。
(2)ヒートシール性
テーピング機(システメーション社、ST−60)を使用し、シールヘッド巾0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力3.5MPa、送り長16mm、シール時間0.2秒×2(ダブルシール)にてシールヘッド温度160℃から190℃まで10℃間隔で、5.5mm巾のカバーフィルムをポリカーボネート製キャリアテープ(スリーエム製)にヒートシールした。24時間放置後、毎分300mmの速度、剥離角度180°でカバーフィルムを剥離し、160℃から190℃のいずれかのシールヘッド温度でヒートシールした時の平均剥離強度が0.3〜0.6Nの範囲にあるものを「優」とし、平均剥離強度が0.15〜0.3Nまたは0.6〜0.8Nの範囲にあるものを「良」とし、0.10〜0.15Nまたは0.8〜1.0Nの範囲にあるものを「可」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1、表2および表3のシール性の欄に示す。
(3)フィルム切れ性
テーピング機(システメーション社、ST−60)を使用し、シールヘッド巾0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力3.5MPa、送り長16mm、シール時間0.5秒×2(ダブルシール)にて、シールヘッド温度を調整することにより、平均剥離強度が1.5Nおよび2.0Nとなる様に、21.5mm巾のカバーフィルムを24mm巾のポリスチレンからなる電子部品キャリアテープにシールした。カバーフィルムをシールしたキャリアテープを550mmの長さで切り取り、両面粘着テープを貼った垂直な壁にキャリアテープのポケット底部を貼り付けた。貼り付けてあるキャリアテープの上部からカバーフィルムを50mm剥がし、カバーフィルムをクリップで挟み、このクリップに質量1000gの重りを取り付けた。その後、重りを自然落下させた時に、剥離強度2.0Nでもカバーフィルムが切れなかったものを「優」、剥離強度1.5Nでカバーフィルムが切れなかったものを「良」、剥離強度が1.5Nで切れが観察されたものを「不良」として表記した。結果を表1、表2および表3のフィルム切れ性の欄に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1はフィルム切れ性試験方法
【符号の説明】
【0037】
1.壁
2.両面粘着テープ
3.キャリアテープ
4.カバーフィルム
5.クリップ
6.紐
7.重り

【0038】
本発明により提供されるカバーフィルムは、実用的な剥離強度を容易に得るためのヒートシール性、及び電子部品を視認することが可能な透明性に優れ、更に、高速剥離の際に起こりやすいカバーフィルムの「フィルム切れ」を少なくすることができる。

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のカバーフィルムは、電子部品の他に、各種小型電気部品にも適応できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステル層(A)、スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)、及びシーラント層(C)を有するカバーフィルム
【請求項2】
スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層することを特徴とする請求項1記載のカバーフィルム。
【請求項3】
シーラント層(C)が下記の成分(a)〜(c)からなり、(a)〜(c)の合計100質量%中に含有する飽和炭化水素の合計が5質量%以上25質量%以下である、請求項1又は請求項2記載のカバーフィルム。
(a)スチレン系炭化水素65質量%以上90質量%未満と共役ジエン炭化水素10質量%以上35質量%未満からなり、曲げ弾性率が800MPa以上1700MPa以下である、スチレン系炭化水素と共役ジエンの共重合体:50〜80質量%
(b)スチレン系炭化水素10質量%以上50質量%未満と共役ジエン炭化水素50質量%以上90質量%未満からなる、スチレン系炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体:10〜35質量%
(c)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、および/またはオレフィン含有量が50質量%以上であるスチレン−オレフィンブロック共重合体:10〜30質量%
【請求項4】
スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)が、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素の共重合体であり、スチレン系炭化水素が75質量%以上95質量%未満、共役ジエン炭化水素が5質量%以上25質量%未満である、請求項1〜3のいずれか1項記載のカバーフィルム。
【請求項5】
スチレン系炭化水素樹脂からなる層(B)とシーラント層(C)を積層したフィルムと、二軸延伸ポリエステル層(A)が、ポリオレフィン樹脂を介して積層されている、請求項1〜4のいずれか1項記載のカバーフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のカバーフィルムを用いた、電子部品包装容器。



【図1】
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【公開番号】特開2007−90725(P2007−90725A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284631(P2005−284631)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】