説明

カバーレイフィルムおよびフレキシブルプリント配線板

【課題】電磁波シールド機能を有し、屈曲性に優れ、フレキシブルプリント配線板の薄肉化が可能であり、かつ電磁波シールド層をフレキシブルプリント配線板のグランド回路に接続させる必要がないカバーレイフィルム、フレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】カバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の片面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有し、カバーレイフィルム本体10が第1の絶縁性樹脂層22と電磁波シールド層24と抵抗体層26とを有するカバーレイフィルム10;絶縁性フィルム上に配線導体が形成されたフレキシブルプリント配線板本体と、該フレキシブルプリント配線板本体に絶縁性接着剤層30によって貼着されたカバーレイフィルム10とを有するフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド機能付きカバーレイフィルム、およびこれを備えたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板、電子部品等から発生する電磁波ノイズは、他の電気回路や電子部品に影響を与え、誤動作等の原因となることがあるため、電磁波ノイズをシールドする必要がある。そのため、電磁波シールド機能をフレキシブルプリント配線板に付与することが行われている。
【0003】
また、フレキシブルプリント配線板を備えた電子機器の小型化、多機能化に伴って、フレキシブルプリント配線板に許容される空間は狭くなってきている。そのため、フレキシブルプリント配線板には、薄肉化および折り曲げ半径の低減が求められており、厳しくなる屈曲条件においても、配線導体が断線することなく機能することが求められている。
【0004】
電磁波シールド機能付きフレキシブルプリント配線板としては、例えば、下記のものが提案されている。
(1)耐熱プラスチックフィルム表面の銅箔配線回路上に、アンダーコート層、金属粉を含む導電ペーストを塗布したシールド層、オーバーコート層を順次設け、銅箔配線回路のグランドパターンとシールド層とが適宜の間隔でアンダーコート層を貫通して電気的に接続しているフレキシブルプリント配線板(特許文献1)。
(2)カバーレイフィルムの片面に金属薄膜層と金属フィラーを含む導電性接着剤層とを順次設けた電磁波シールドフィルムを、プリント回路のうちグランド回路の一部を除いて絶縁する絶縁層が設けられた基体フィルム上に、導電性接着剤層が絶縁層およびグランド回路の一部と接着するように載置したフレキシブルプリント配線板(特許文献2)。
【0005】
しかし、(1)のフレキシブルプリント配線板は、下記の問題点を有する。
(i)金属粉を含むシールド層は、多くの異種材料界面を有しているため脆く、フレキシブル配線板の屈曲繰り返しに対し、十分な強度を有していない。
(ii)グランドパターンの一部を除く銅箔配線回路とシールド層との絶縁を保つためにアンダーコート層が必要であり、フレキシブルプリント配線板が厚くなる。
(iii)グランドパターンの一部とシールド層とを電気的に接続するために、アンダーコート層の一部に透孔を形成する必要があり、透孔の加工に手間がかかる。
【0006】
また、(2)のフレキシブルプリント配線板は、下記の問題点を有する。
(i)金属フィラーを含む導電性接着剤層は、多くの異種材料界面を有しているため脆く、フレキシブル配線板の屈曲繰り返しに対し、十分な強度を有していない。
(ii)グランド回路の一部を除くプリント回路と導電性接着剤層との絶縁を保つために絶縁層が必要であり、フレキシブルプリント配線板が厚くなる。
(iii)グランド回路の一部と導電性接着剤層とを電気的に接続するために、絶縁層の一部に貫通孔を形成する必要があり、貫通孔の加工に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−33999号公報
【特許文献2】特開2000−269632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電磁波シールド機能を有し、屈曲性に優れ、フレキシブルプリント配線板の薄肉化が可能であり、かつ電磁波シールド層をフレキシブルプリント配線板のグランド回路に接続させる必要がないカバーレイフィルムおよびフレキシブルプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカバーレイフィルムは、カバーレイフィルム本体と、該カバーレイフィルム本体の片面に設けられた絶縁性接着剤層とを有し、前記カバーレイフィルム本体が、第1の絶縁性樹脂層と電磁波シールド層と抵抗体層とを有することを特徴とする。
【0010】
前記抵抗体層の面積は、前記電磁波シールド層の面積より大きいことが好ましく、該抵抗体層は、前記電磁波シールド層と対向している領域(I)および前記電磁波シールド層と対向していない領域(II)を有することが好ましい。
前記電磁波シールド層の表面抵抗は、0.01〜5Ωであることが好ましく、前記抵抗体層の表面抵抗は、前記電磁波シールド層の表面抵抗の2〜100倍であることが好ましい。
【0011】
前記カバーレイフィルム本体は、さらに第2の絶縁性樹脂層を有し、前記第1の絶縁性樹脂層と前記第2の絶縁性樹脂層との間に、前記電磁波シールド層および前記抵抗体層が存在することが好ましい。
前記第2の絶縁性樹脂層は、ゴム弾性体からなることが好ましい。
前記カバーレイフィルム本体の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、絶縁性フィルム上に配線導体が形成されたフレキシブルプリント配線板本体と、該フレキシブルプリント配線板本体に前記絶縁性接着剤層によって貼着された本発明のカバーレイフィルムとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカバーレイフィルムは、電磁波シールド機能を有し、屈曲性に優れ、フレキシブルプリント配線板の薄肉化が可能であり、かつ電磁波シールド層をフレキシブルプリント配線板のグランド回路に接続させる必要がない。
本発明のフレキシブルプリント配線板は、電磁波シールド機能を有し、屈曲性に優れ、薄肉化が可能であり、かつ電磁波シールド層をグランド回路に接続させる必要がない。
さらには、配線導体上を絶縁層(電磁波シールド機能のない、通常のカバーレイフィルム等)で絶縁隔置する必要がないため、部材を低減すことができ、また工程を省力化できるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のカバーレイフィルムの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図4】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図6】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図7】本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。
【図8】本発明のフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図9】本発明のフレキシブルプリント配線板の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明のフレキシブルプリント配線板の他の例を示す斜視図である。
【図11】電磁波シールド機能の評価に用いたシステムを示す構成図である。
【図12】屈曲性の評価方法を説明する図である。
【図13】実施例1において電磁波シールド機能の評価を行った際に測定された受信特性を示すグラフである。
【図14】実施例2および比較例1において電磁波シールド機能の評価を行った際に測定された受信特性を示すグラフである。
【図15】従来のフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図16】実施例7において電磁波ノイズ抑制機能の評価を行った際に測定された伝送特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「対向」しているとは、上面から見たときに少なくとも一部が重なり合う状態をいう。
【0016】
<カバーレイフィルム>
図1は、本発明のカバーレイフィルムの一例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、第1の絶縁性樹脂層22と電磁波シールド層24と抵抗体層26とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の抵抗体層26側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。
【0017】
図2は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、抵抗体層26と第1の絶縁性樹脂層22と電磁波シールド層24と第2の絶縁性樹脂層28とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の電磁波シールド層24側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。
【0018】
図3は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、第1の絶縁性樹脂層22と抵抗体層26と電磁波シールド層24とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の電磁波シールド層24側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。
【0019】
図4は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、電磁波シールド層24と第1の絶縁性樹脂層22と抵抗体層26とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の抵抗体層26側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。
【0020】
図5は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、第1の絶縁性樹脂層22と電磁波シールド層24と抵抗体層26と第2の絶縁性樹脂層28とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の第2の絶縁性樹脂層28側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。
【0021】
図6は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、キャリアフィルム40の片面に、第1の絶縁性樹脂層22と電磁波シールド層24と抵抗体層26と第2の絶縁性樹脂層28とを順に形成してなるカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の第2の絶縁性樹脂層28側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。キャリアフィルム40は、カバーレイフィルム10をフレキシブルプリント配線板本体に貼着した後、剥離される。
【0022】
図7は、本発明のカバーレイフィルムの他の例を示す断面図である。カバーレイフィルム10は、電磁波シールド層24と第1の絶縁性樹脂層22と抵抗体層26とを順に有するカバーレイフィルム本体20と、カバーレイフィルム本体20の抵抗体層26側の面に設けられた絶縁性接着剤層30とを有する。抵抗体層26には欠落部27が形成されており、欠落部27において電磁波シールド層24は抵抗体層26と対向していない。
【0023】
(第1の絶縁性樹脂層)
第1の絶縁性樹脂層22は、樹脂またはゴム弾性体からなる層である。第1の絶縁性樹脂層22の表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
第1の絶縁性樹脂層22としては、フィルムからなる層が好ましい。
【0024】
フィルムの材料としては、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
フィルムの厚さは、可とう性の点から、3〜25μmが好ましい。
【0025】
(電磁波シールド層)
電磁波シールド層24は、導電性材料からなる層である。電磁波シールド層24の表面抵抗は、0.01〜5Ωが好ましく、0.01〜1Ωがより好ましい。電磁波シールド層24の透過減衰特性は、−10dB以下が好ましく、−40dB以下がより好ましい。透過減衰特性は、例えば、ASTM D4935に準拠した、シールド効果を平面波で測定する同軸管タイプシールド効果測定システム(キーコム社製)を用いて測定することがでる。
【0026】
導電性材料としては、金属(金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等);導電性粒子(金属粒子等)、導電性繊維(金属繊維、カーボンナノチューブ等)を樹脂に混合した導電性樹脂(導電ペースト等);導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール等)等が挙げられる。
電磁波シールド層24の形態としては、金属蒸着膜、金属箔、導電性樹脂または導電性高分子からなるフィルムまたは塗膜等が挙げられ、屈曲性、薄肉化、耐久性、導電性の点から、金属蒸着膜が特に好ましい。
【0027】
金属蒸着膜は、物理的蒸着法(EB蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタ法等)により形成される。
金属蒸着膜の厚さは、表面抵抗値、耐屈曲特性の点から、50〜200nmが好ましい。
【0028】
(抵抗体層)
抵抗体層26は、電磁波シールド層24より高い表面抵抗を有する層である。抵抗体層26の表面抵抗は、電磁波シールド層24の表面抵抗の2〜100倍が好ましい。
抵抗体層26の材料としては、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。材料の固有抵抗が低い場合は、抵抗体層26を薄くすることで、表面抵抗を高く調整できるが、厚さのコントロールが難しくなるため、抵抗体層26の材料としては、比較的高い固有抵抗を有する材料が好ましい。
【0029】
金属としては、強磁性金属、常磁性金属等が挙げられる。
強磁性金属としては、鉄、カルボニル鉄、鉄合金(Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Cr−Si、Fe−Cr−Al、Fe−Al−Si、Fe−Pt等)、コバルト、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。
常磁性金属としては、金、銀、銅、錫、鉛、タングステン、ケイ素、アルミニウム、チタン、クロム、タンタル、モリブデン、それらの合金、アモルファス合金、強磁性金属との合金等が挙げられる。
金属としては、酸化に対して抵抗力のある点から、ニッケル、鉄クロム合金、タングステン、クロム、タンタルが好ましく、実用的には、ニッケル、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金、タングステン、クロム、タンタルがより好ましく、ニッケルまたはニッケル合金が特に好ましい。
【0030】
導電性セラミックスとしては、金属と、ホウ素、炭素、窒素、ケイ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる1種以上の元素とからなる合金、金属間化合物、固溶体等が挙げられる。具体的には、窒化ニッケル、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化タングステン、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ケイ化クロム、ケイ化ジルコニウム等が挙げられる。
導電性セラミックスは、物理的蒸着法における反応性ガスとして、窒素、炭素、ケイ素、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる1種以上の元素を含むガスを用いることによって容易に得られる。
【0031】
抵抗体層26は、例えば、物理的蒸着法(EB蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタ法等)により形成される。
抵抗体層26の厚さは、5〜50nmが好ましい。
【0032】
抵抗体層26の面積は、電磁波シールド層24の面積より大きく、かつ該抵抗体層26は、電磁波シールド層24と対向している領域(I)および電磁波シールド層24と対向していない領域(II)を有することが好ましい。
【0033】
(第2の絶縁性樹脂層)
電磁波シールド層24および抵抗体層26は、フレキシブルプリント配線板の配線導体、外部の導体等に触れないように、第1の絶縁性樹脂層22と第2の絶縁性樹脂層28との間に存在することが好ましい。
また、電磁波シールド層24が絶縁性接着剤層30に隣接している場合、絶縁性接着剤が流動して電磁波シールド層24とフレキシブルプリント配線板の配線導体とが接触する可能性があるため、電磁波シールド層24と絶縁性接着剤層30との間に、第2の絶縁性樹脂層28を存在させることが好ましい。
また、カバーレイフィルム10表層に電磁波シールド層24がある場合、電磁波シールド層24と外部の導体とが接触する可能性があるため、電磁波シールド層24の表面にコーティング等により第2の絶縁性樹脂層28を設けてもよい。
【0034】
第2の絶縁性樹脂層28は、樹脂またはゴム弾性体からなる層である。第2の絶縁性樹脂層28の表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
第2の絶縁性樹脂層28としては、ゴム弾性体が好ましく、耐熱性、可とう性を有するゴム弾性体がより好ましい。ゴム弾性体としては、DMA法による貯蔵弾性率が1×106Pa以下のものが好ましい。該ゴム弾性体としては、ポリウレタン、ニトリルゴム、これらの混合物、変性物等が挙げられる。
【0035】
ポリウレタンの耐熱性を向上させる方法としては、ハードセグメントの割合を増やす方法;ハードセグメントに多くのウレア結合を導入する方法;ゾル−ゲル法を応用した、シリカ粒子とのハイブリッド体を合成する方法等が挙げられる。
ハイブリッド体は、加水分解性アルコキシシラン(例えばテトラエトキシシラン)の加水分解および重縮合を利用して、いわゆるフィラー効果によりポリウレタンにシリカ粒子を分散させたものである。ハイブリッド体は、高分子鎖とシリカ粒子とのネットワークが形成されることにより300℃でも低粘度化することはない。また、シリカ粒子と湿式めっきや物理的蒸着で形成された金属膜との親和性が高く、密着性が高くなる。
第2の絶縁性樹脂層28は、ゴム弾性体の溶剤溶液をコーティングすることによって形成される。
第2の絶縁性樹脂層28の厚さは、2〜10μmが好ましい。
【0036】
(カバーレイフィルム本体)
カバーレイフィルム本体20の厚さは、屈曲性の点から、5〜50μmが好ましい。カバーレイフィルム本体20の厚さが5μm以上であれば、カバーレイフィルム10が十分な強度を有し、絶縁信頼性が高くなる。カバーレイフィルム本体20の厚さが50μm以下であれば、フレキシブルプリント配線板の屈曲性が良好となり、繰り返しの折り曲げによっても配線導体にクラックが生じにくく、断線しにくい。
【0037】
(絶縁性接着剤層)
絶縁性接着剤層30は、カバーレイフィルム本体20をフレキシブルプリント配線板に貼着させるものである。
絶縁性接着剤としては、エポキシ樹脂に可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)を含有させた半硬化状態のものが好ましい。該絶縁性接着剤は、熱プレス等の加熱により流動状態となり、再活性化することにより接着性を発現する。
絶縁性接着剤中には、絶縁性接着剤が流動して電磁波シールド層24とフレキシブルプリント配線板の配線導体とが接触することを防ぐために、粒径が1〜10μm程度のスペーサー粒子を含むことも可能であり、該粒子が、流動性調整あるいは難燃性等の別の機能を有していても構わない。
【0038】
絶縁性接着剤層30の厚さは、絶縁性接着剤が流動状態となり、フレキシブルプリント配線板の配線導体間を十分に埋めるため、5〜40μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0039】
以上説明したカバーレイフィルム10にあっては、下記の理由から電磁波シールド層24をフレキシブルプリント配線板のグランド回路に接続させなくても、電磁波シールド機能を有する。そのため、電磁波シールド層24をグランド回路に接続させるために接着剤層に導電性を付与する必要がなくなり、屈曲性が向上する。また、接着剤層が導電性を有さないため、接着剤層とフレキシブルプリント配線板の配線導体との間を絶縁するための絶縁層が不要となり、フレキシブルプリント配線板の薄肉化が可能となる。
【0040】
電磁波シールド層24をフレキシブルプリント配線板のグランド回路に接続させなくてもよい理由としては、下記のことが考えられる。
グランド回路に接続していない電磁波シールド層24はアンテナとして働き、電磁波ノイズは電磁波シールド層24内を高周波電流となって流れ、その縁端部から再度放出される。再放出時には、電磁波シールド層24の縁端部に電磁界の変動が生まれ、そのうち磁界変動に伴う渦電流が抵抗体層26に流れて、熱損失するため、電磁波ノイズのエネルギーが減衰するものと考えられる。
【0041】
そのため、抵抗体層26の面積を電磁波シールド層24の面積より大きくし、該抵抗体層26が、電磁波シールド層24と対向している領域(I)および電磁波シールド層24と対向していない領域(II)を有すようにする、すなわちカバーレイフィルム10を上面から見た際に、電磁波シールド層24の縁端部が抵抗体層26の内部に存在するようにして、縁端部からの渦電流が効率よく抵抗体層26に流れるようにすることが好ましい。
【0042】
<フレキシブルプリント配線板>
図8は、本発明のフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図であり、図9は、斜視図である。フレキシブルプリント配線板50は、絶縁性フィルム62上に配線導体64が形成されたフレキシブルプリント配線板本体60と、フレキシブルプリント配線板本体60の両面に絶縁性接着剤層30によって貼着された2つのカバーレイフィルム10とを有する。
フレキシブルプリント配線板50の端部は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、カバーレイフィルム10に覆われていない。該端部以外は折り曲げられる部位であって、通常、折り曲げ外径1〜3mmで180度ほど折り曲げられる。
【0043】
図10は、本発明のフレキシブル配線板の他の例を示す断面図である。フレキシブルプリント配線板50は、図7に示す、抵抗体層26の一部が欠落したカバーレイフィルム10を用いた例である。フレキシブルプリント配線板本体60は、絶縁性フィルム62の片面上に配線導体64および配線導体66を有し、他方の面にグランド層68を有するマイクロストリップ構造となっている。配線導体64は、抵抗体層26が欠落した欠落部27に位置するように設けられ、抵抗体層26とは対向していない。
抵抗体層26は、電磁波シールド層24内を流れる高周波電流を熱損失させると同時に、配線導体内を流れる高周波の電磁波ノイズをも熱損失させる。すなわち、上述した理由と同様に、配線導体に電磁波ノイズ流れると、配線導体の縁端部に電磁界の変動が生まれ、そのうち磁界変動に伴う渦電流が抵抗体層26に流れて、熱損失するため、電磁波ノイズのエネルギーが減衰するものと考えられる。
よって、抵抗体層26に欠落部27を形成し、高周波電流を抑制したくない配線導体に抵抗体層26を対向させないようにし、電磁波ノイズを抑制したい配線導体に抵抗体層26を対向させるようにする。図10のフレキシブルプリント配線板50の場合、配線導体64の高速信号等の高周波電流を抑制することなく、配線導体66を流れる電磁波ノイズを抑制できる。
【0044】
(フレキシブルプリント配線板本体)
フレキシブルプリント配線板本体60は、銅張積層板の銅箔を既存のエッチング手法により所望の形状のパターンに形成したものである。
銅張積層板としては、絶縁性フィルムの少なくとも片面側に銅箔を接着剤で貼り合わせた2〜3層構造のもの;銅箔上にフィルムを形成する樹脂溶液等をキャストした2層構造のもの等が挙げられる。
【0045】
(絶縁性フィルム)
絶縁性フィルム62の表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
絶縁性フィルム62は、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等がより好ましい。
絶縁性フィルム62の厚さは、5〜50μmが好ましく、屈曲性の点から、6〜25μmがより好ましく、10〜25μmが特に好ましい。
【0046】
(銅箔)
銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、3〜18μmが好ましい。
【0047】
以上説明したフレキシブルプリント配線板50にあっては、上述した理由から電磁波シールド層24を配線導体64のグランド回路に接続させなくても、電磁波シールド機能を有する。そのため、電磁波シールド層24をグランド回路に接続させるために接着剤層に導電性を付与する必要がなくなり、屈曲性が向上する。また、接着剤層が導電性を有さないため、接着剤層と配線導体64との間を絶縁するための絶縁層が不要となり、フレキシブルプリント配線板50の薄肉化が可能となる。また、従来は必要であった、グランド回路と導電性接着剤層とを電気的に接続するために、絶縁層に貫通孔を形成する手間も不要である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
(各層の厚さ)
透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H9000NAR)を用いてカバーレイフィルムの断面を観察し、各層の5箇所の厚さを測定し、平均した。
【0050】
(表面抵抗)
石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、該電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を50gの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で電極間の抵抗を測定し、この値を持って表面抵抗とした。
【0051】
(電磁波シールド機能の評価)
カバーレイフィルム10の電磁波シールド機能を評価した。図11に示すシステムを用い、スペクトラムアナライザ72を内蔵したトラッキングジェネレータに同軸ケーブルで接続したシールドループアンテナ74(ループ径:8mm、ループ中心からマイクロストリップライン76までの距離:10mm)から発信した電磁波ノイズ(1MHzから2GHz)をライン長55mmのマイクロストリップライン76(Z:50Ω、基板サイズ:50mm×80mm、背面:全面グランド)で受け、カバーレイフィルム10でマイクロストリップライン76を覆うか否かの状態で受信特性をスペクトラムアナライザ72で測定した。
【0052】
(屈曲性の評価)
図12に示すように、スライドする2枚の基板82および基板84にフレキシブルプリント配線板50を固定し、端部電極間の抵抗値をモニタリングした。基板82と基板84との間隔Dが折り曲げ外径(=折り曲げ半径×2)となる。スライド条件は、ストローク40mmで、往復回数は60回/分で行い、初期抵抗値が2倍になった回数を破断回数とした。
【0053】
〔実施例1〕
80mm×80mm×厚さ12.5μmのポリイミドフィルムの表面の中央に、開口部が50mm×45mmのマスクを被せた。該開口部に、マグネトロンスパッタ法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、50mm×45mm×厚さ120nmのアルミニウム蒸着膜(表面抵抗:2Ω)を形成した。
アルミニウム蒸着膜側の表面に、マグネトロンスパッタ法にてニッケルを物理的に蒸着させ、80mm×80mm×厚さ20nmのニッケル蒸着膜(表面抵抗:20Ω)を形成した。
ニッケル蒸着膜の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、図1に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0054】
カバーレイフィルム10から、電磁波シールド機能評価用のマイクロストリップ基板と同じ大きさ(50mm×80mm)のサンプルを切り出した。上面から見た際に抵抗体層26の内部に存在する電磁波シールド層24の縁端部の長さは50mm×2である。
図11に示すマイクロストリップ基板に該サンプルの絶縁性接着剤層30側を押し当て、マイクロストリップライン76をカバーレイフィルム10で覆った。シールドループアンテナ74から1MHzから2GHzの掃引された高周波信号を出力し、受信特性を測定した。受信特性を図13に示す。また、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態での受信特性も図13に示す。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大40dBほど減衰した。
【0055】
ついで、厚さ12μmのポリイミドフィルムと厚さ18μmの圧延銅箔とからなる2層構造の銅張積層板(20mm×120mm)に、線幅:0.5mm、線長:120mmの配線導体を形成し、配線導体側とポリイミドフィルム側の両面に、端部電極を除いてカバーレイフィルム10(20mm×100mm)を熱プレスにより貼着し、図8および図9に示すフレキシブルプリント配線板50を得た。電磁波シールド層24は配線導体64を覆うように設けられているが、配線導体64には接地されていない。
フレキシブルプリント配線板50を、図12に示す基板82および基板84にハンダ接続し、間隔Dを1mm(折り曲げ半径は0.5mm)とし、ストローク:40mmで基板をスライドさせ、往復回数:60回/分で破断回数を測定した。破断回数は68万回であった。
【0056】
〔実施例2〕
80mm×80mm×厚さ3μmのポリフェニレンサルファイドフィルムの表面の中央に、開口部が40mm×45mmのマスクを被せた。該開口部に、イオンビーム蒸着法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、40mm×45mm×厚さ100nmのアルミニウム蒸着膜(表面抵抗:2.5Ω)を形成した。
ポリフェニレンサルファイドフィルムの裏面に、マグネトロンスパッタ法にて鉄コバルト合金を物理的に蒸着させ、80mm×80mm×厚さ5nmの鉄コバルト合金蒸着膜(表面抵抗:250Ω)を形成した。
アルミニウム蒸着膜側の表面に、ポリウレタンにナノサイズのシリカ粒子を分散させたハイブリッド体(貯蔵弾性率:1×106Pa)の溶剤溶液を塗布し、厚さ10μmのハイブリッド体層を形成した。
ハイブリッド体層の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が12μmになるように塗布し、図2に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0057】
カバーレイフィルム10から、50mm×45mmのサンプルを切り出した。上面から見た際に抵抗体層26の内部に存在する電磁波シールド層24の縁端部の長さは45mm×2である。
実施例1と同様にして電磁波シールド機能を評価した。受信特性を図14に示す。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大35dBほど減衰した。
【0058】
ついで、実施例1と同様にしてカバーレイフィルム10が両面に貼着されたフレキシブルプリント配線板を作製した。電磁波シールド層は配線導体を覆うように設けられているが、配線導体には接地されていない。該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を評価した。ただし、間隔Dは1.4mmとした。破断回数は250万回であった。
【0059】
〔比較例1〕
図15に示す構造を有するフレキシブルプリント配線板150を作製した。
まず、厚さ12.5μmのポリイミドフィルム120の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、絶縁性接着剤層130を形成し、カバーレイフィルム110を得た。カバーレイフィルム110には接地のための透孔112を形成した。
【0060】
ついで、厚さ12μmのポリイミドフィルム162と厚さ18μmの圧延銅箔とからなる2層構造の銅張積層板(20mm×120mm)に、線幅:0.5mm、線長:120mmの配線導体164を形成し、フレキシブルプリント配線板本体160を得た。
フレキシブルプリント配線板本体160に、端部電極を除いてカバーレイフィルム110(20mm×100mm)を熱プレスにより貼着した。
【0061】
厚さ3μmのポリフェニレンサルファイドフィルム172の表面に、イオンビーム蒸着法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、厚さ100nmのアルミニウム蒸着膜174を形成した。
ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤に、平均粒径が10μmのニッケル粒子を5体積%分散させた導電性接着剤を用意した。
アルミニウム蒸着膜174の表面に、導電性接着剤を、乾燥膜厚が12μmになるように塗布し、導電性接着剤層176を形成し、電磁波シールドフィルム170を得た。電磁波シールドフィルム170を50mm×45mmの大きさに切り出した。
【0062】
電磁波シールドフィルム170のアルミニウム蒸着膜174に、接地されているプローブを接触させて接地した以外は、実施例2と同様にして電磁波シールド機能の評価を行った。受信特性を図14に示す。電磁波シールド効果は実施例2と同等であった。
【0063】
ついで、カバーレイフィルム110側とポリイミドフィルム120側の両面に、電磁波シールドフィルム170(20mm×100mm)を熱プレスにより貼着し、図15に示すフレキシブルプリント配線板150を得た。カバーレイフィルム110側の電磁波シールドフィルム170のアルミニウム蒸着膜174は、透孔112を通して導電性接着剤層176により配線導体164のグランド回路に接地した。
該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を実施例2と同様に評価した。破断回数は30万回であり、実施例2に比べ劣っていた。
【0064】
〔実施例3〕
50mm×80mm×厚さ10μmのポリイミドフィルムの表面に、マグネトロンスパッタ法にてニッケルクロム合金を物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ30nmのニッケルクロム合金蒸着膜(表面抵抗:50Ω)を形成した。
ニッケルクロム合金蒸着膜の表面に、銀フレーク粉を混合した導電ペーストをコーティングして、50mm×45mm×厚さ7μmの導電塗膜(表面抵抗:5Ω)を形成した。
さらにその表面に、ニトリル変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、図3に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0065】
実施例1と同様にして電磁波シールド機能を評価した。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大30dBほど減衰した。
ついで、実施例1と同様にしてカバーレイフィルム10が両面に貼着されたフレキシブルプリント配線板を作製した。電磁波シールド層は配線導体を覆うように設けられているが、配線導体には接地されていない。該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を評価した。破断回数は32万回であった。
【0066】
〔実施例4〕
50mm×80mm×厚さ10μmのポリイミドフィルムの表面に、銀フレーク粉を混合した導電ペーストをコーティングして、50mm×45mm×厚さ7μmの導電塗膜(表面抵抗:5Ω)を形成した。
ポリイミドフィルムの裏面に、マグネトロンスパッタ法にてニッケルクロム合金を物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ30nmのニッケルクロム合金蒸着膜(表面抵抗:50Ω)を形成した。
ニッケルクロム合金蒸着膜の表面に、ニトリル変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、図4に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0067】
実施例1と同様にして電磁波シールド機能を評価した。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大30dBほど減衰した。
ついで、実施例1と同様にしてカバーレイフィルム10が両面に貼着されたフレキシブルプリント配線板を作製した。電磁波シールド層は配線導体を覆うように設けられているが、配線導体には接地されていない。該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を評価した。破断回数は35万回であった。
【0068】
〔実施例5〕
50mm×80mm×厚さ12.5μmのポリイミドフィルムの表面に、EB蒸着法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、50mm×45mm×厚さ100nmのアルミニウム蒸着膜(表面抵抗:2.5Ω)を形成し、縁端部をエッチングして、50mm×45mmの大きさとした。
アルミニウム蒸着膜側の表面に、EB蒸着法にてニッケルを物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ25nmのニッケル蒸着膜(表面抵抗:15Ω)を形成した。
ニッケル蒸着膜の表面に、ポリウレタンにナノサイズのシリカ粒子を分散させたハイブリッド体(貯蔵弾性率:1×106Pa)の溶剤溶液を塗布し、厚さ4μmのハイブリッド体層を形成した。
ハイブリッド体層の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、図5に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0069】
実施例1と同様にして電磁波シールド機能を評価した。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大40dBほど減衰した。
ついで、実施例1と同様にしてカバーレイフィルム10が両面に貼着されたフレキシブルプリント配線板を作製した。電磁波シールド層は配線導体を覆うように設けられているが、配線導体には接地されていない。該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を評価した。破断回数は40万回であった。
【0070】
〔実施例6〕
50mm×80mm×厚さ50μmのポリエステルフィルムからなる離型性のキャリアフィルムに、ポリウレタンにナノサイズのシリカ粒子を分散させたハイブリッド体(貯蔵弾性率:1×106Pa)の溶剤溶液を塗布し、厚さ15μmのハイブリッド体層を形成した。
ハイブリッド体層の表面に、EB蒸着法にて銅を物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ100nmの銅蒸着膜(表面抵抗:1.5Ω)を形成し、縁端部をエッチングして、50mm×45mmの大きさとした。
銅蒸着膜およびハイブリッド体層の表面に、窒素ガスを含む反応性ガスを用いた反応性スパッタ法によりニッケルを物理的に蒸着させ、50mm×80mm×厚さ40nmの窒化ニッケル蒸着膜(表面抵抗:18Ω)を形成した。
窒化ニッケル蒸着膜の表面に、ポリウレタンにナノサイズのシリカ粒子を分散させたハイブリッド体(貯蔵弾性率:1×106Pa)の溶剤溶液を塗布し、厚さ5μmのハイブリッド体層を形成した。
ハイブリッド体層の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が10μmになるように塗布し、図6に示すカバーレイフィルム10を得た。キャリアフィルム40は、カバーレイフィルム10をフレキシブルプリント配線板本体に貼着した後、剥離した。
【0071】
実施例1と同様にして電磁波シールド機能を評価した。マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われていない状態に比べ、マイクロストリップライン76がカバーレイフィルム10で覆われた状態では、受信特性は数dBから最大45dBほど減衰した。
ついで、実施例1と同様にしてカバーレイフィルム10が両面に貼着されたフレキシブルプリント配線板を作製した。電磁波シールド層は配線導体を覆うように設けられているが、配線導体には接地されていない。該フレキシブルプリント配線板の屈曲性を評価した。破断回数は47万回であった。
【0072】
〔実施例7〕
50mm×80mm×厚さ10μmのポリイミドフィルムの表面に、酸素プラズマ処理により親水化処理を施した後、マスクを被せ、銀を抵抗加熱蒸着して、50mm×45mm×厚さ7μmの導電塗膜(表面抵抗:0.3Ω)を形成した。
ポリイミドフィルムの裏面に、マグネトロンスパッタ法にて窒素存在下でニッケルを反応性スパッタで蒸着させ、50mm×80mm×厚さ30nmの窒化ニッケル蒸着膜(表面抵抗:50Ω)を形成した。ついで、窒化ニッケル蒸着膜の一部を酸によりエッチングし、20mm×80mmの欠落部を形成した。
窒化ニッケル蒸着膜の表面に、ニトリル変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、図7に示すカバーレイフィルム10を得た。
【0073】
ついで、図10に示すように、配線導体66が抵抗体層26と対向するように、かつ配線導体64が欠落部27に位置するようにフレキシブル配線板本体60にカバーレイフィルム10を貼着してフレキシブル配線板50を得た。
配線導体66および配線導体64の端部をネットワークアナライザに接続し、各配線導体の伝送特性を測定した。結果を図16に示す。抵抗体層26の効果により、配線導体66を流れる高周波の電磁波ノイズは抑制され、また、欠落部27により、配線導体64においては良好な高周波信号の透過特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のカバーレイフィルムを備えたフレキシブルプリント配線板は、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム器、ノートパソコン、光モジュール等の小型電子機器用のフレキシブルプリント配線板として有用である。
【符号の説明】
【0075】
10 カバーレイフィルム
20 カバーレイフィルム本体
22 第1の絶縁性樹脂層
24 電磁波シールド層
26 抵抗体層
28 第2の絶縁性樹脂層
30 絶縁性接着剤層
50 フレキシブルプリント配線板
60 フレキシブルプリント配線板本体
62 絶縁性フィルム
64 配線導体
66 配線導体
68 グランド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーレイフィルム本体と、
該カバーレイフィルム本体の片面に設けられた絶縁性接着剤層と
を有し、
前記カバーレイフィルム本体が、第1の絶縁性樹脂層と電磁波シールド層と抵抗体層とを有する、カバーレイフィルム。
【請求項2】
前記抵抗体層の面積が、前記電磁波シールド層の面積より大きく、
該抵抗体層が、前記電磁波シールド層と対向している領域(I)および前記電磁波シールド層と対向していない領域(II)を有する、請求項1に記載のカバーレイフィルム。
【請求項3】
前記電磁波シールド層の表面抵抗が、0.01〜5Ωであり、
前記抵抗体層の表面抵抗が、前記電磁波シールド層の表面抵抗の2〜100倍である、請求項1または2に記載のカバーレイフィルム。
【請求項4】
前記カバーレイフィルム本体が、さらに第2の絶縁性樹脂層を有し、
前記第1の絶縁性樹脂層と前記第2の絶縁性樹脂層との間に、前記電磁波シールド層および前記抵抗体層が存在する、請求項1〜3のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項5】
前記第2の絶縁性樹脂層が、ゴム弾性体からなる、請求項4に記載のカバーレイフィルム。
【請求項6】
前記カバーレイフィルム本体の厚さが、5〜50μmである、請求項1〜5のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項7】
絶縁性フィルム上に配線導体が形成されたフレキシブルプリント配線板本体と、
該フレキシブルプリント配線板本体に前記絶縁性接着剤層によって貼着された請求項1〜6のいずれかに記載のカバーレイフィルムと
を有する、フレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−283901(P2009−283901A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34001(P2009−34001)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】