説明

カバー部材および懸架装置

【課題】最圧縮時における衝突力に耐え得る強度を確保しつつ、構成部品の数を少なくすることが可能な技術を提供する。
【解決手段】円筒状の側部421と、側部421の中心線方向の一方の端部に設けられこの一方の端部における開口部を覆う覆い部422と、を備え、側部421と覆い部422とは一体的に連続するように成形されるとともに覆い部422の肉厚は側部421の肉厚よりも厚く成形され、覆い部422における中心線方向の一方の端部422bは平面であるとともに他方の端部422cの中央部には外側の部位423よりも中心線方向に突出した突出部424が設けられ、突出部424と外側の部位423とは中心線方向に対して傾斜する傾斜面425にて接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材および懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のダンパ(懸架装置)では、ダンパチューブのピストンロッドの外周にはバンプラバーが取り付けられており、バンプラバーの外周部にはカバー部材としてのバンプラバーカップが被着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−223412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のダンパ(懸架装置)では、ダンパ(懸架装置)の最圧縮時における衝突力に耐える必要があるなどの理由から、バンプラバーとバンプラバーカップとの間に下ストッパを配置し、振動吸収能を備えたマウントを構成する下ラバーとバンプラバーカップとの間に下座金を配置している。
ただ、組み立て工数削減の観点からは、構成部品の数は少ない方が望ましい。
本発明は、最圧縮時における衝突力に耐え得る強度を確保しつつ、構成部品の数を少なくすることが可能な部材または装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、円筒状の側部と、前記側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を備えるカバー部材であって、前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されるとともに当該覆い部の肉厚は当該側部の肉厚よりも厚く成形され、前記覆い部における前記中心線方向の一方の端部は平面であるとともに他方の端部の中央部には外側の部位よりも当該中心線方向に突出した突出部が設けられ、当該突出部と当該外側の部位とは当該中心線方向に対して傾斜する傾斜面にて接続されていることを特徴とするカバー部材である。
ここで、前記覆い部の前記外側の部位と前記傾斜面とは曲面を介して接続されているとよい。
また、回転成形加工、プレス加工、例えば深絞り加工にて成形されるとよい。
【0006】
他の観点から捉えると、本発明は、減衰装置を内蔵するシリンダと、前記シリンダ内に収納されたピストンを支持するピストンロッドと、前記ピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーと、前記バンプラバーの外周をカバーするカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、円筒状の側部と、当該側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を有し、前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されるとともに当該覆い部の肉厚は当該側部の肉厚よりも厚く成形され、前記覆い部における前記中心線方向の一方の端部は平面であるとともに他方の端部の中央部には外側の部位よりも当該中心線方向に突出した突出部が設けられ、当該突出部と当該外側の部位とは当該中心線方向に対して傾斜する傾斜面にて接続されていることを特徴とする懸架装置である。
ここで、前記カバー部材の前記覆い部の前記外側の部位と前記傾斜面とは曲面を介して接続されているとよい。
また、前記カバー部材は、回転成形加工、プレス加工、例えば深絞り加工にて成形されるとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最圧縮時における衝突力に耐え得る強度を確保しつつ、構成部品の数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係る懸架装置の概略構成を示す図である。
【図2】(a)は、シリンダから飛び出しているピストンロッドの長さが最短となる縮み状態を示す図であり、(b)は、シリンダから飛び出しているピストンロッドの長さが最長となる伸び状態を示す図である。
【図3】バンプラバーカップの概略構成を示す図である。
【図4】本実施の形態に係るバンプラバーカップと比較するための比較例の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る懸架装置100の概略構成を示す図である。
懸架装置100は、図1に示すように、減衰装置(不図示)を内蔵するシリンダ10と、このシリンダ10内に収納されたピストン(不図示)を支持するピストンロッド20と、このピストンロッド20の外側に配置されたスプリング30と、を備えている。ピストンロッド20は、円柱状の部材であり、円柱の中心線方向の一方の端部側にピストンが取り付けられ、中心線方向の他方の端部側にナット21が取り付けられている。以下、ピストンロッド20の円柱の中心線方向を、単に「中心線方向」と称す場合がある。
【0010】
懸架装置100は、シリンダ10の外周に取り付けられてスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、ピストンロッド20の中心線方向の他方の端部側における外周に取り付けられてスプリング30の上端部を支持する上スプリングシート32とを備えている。スプリング30の下端部と下スプリングシート31との間には下シートラバー35が介在し、スプリング30の上端部と上スプリングシート32との間には上シートラバー36が介在している。
【0011】
懸架装置100は、シリンダ10の下部に設けられた車輪側取付部40を備えている。一方、上スプリングシート32には、この懸架装置100を車体に取り付けるためのボルト33が取り付けられている。
また、懸架装置100は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の外周に圧入されたバンプラバー41と、このバンプラバー41の外周部に配置されたバンプラバーカップ42と、を備えている。また、懸架装置100は、シリンダ10におけるピストンロッド20の摺動部に装着されたバンプストッパキャップ43を備えている。このバンプストッパキャップ43には、懸架装置100の最圧縮時にバンプラバー41が衝突するキャップ板43aが取り付けられている。
【0012】
また、懸架装置100は、上端部がバンプラバーカップ42の外周に装着されるとともに下端部が下スプリングシート31に装着され、この間のシリンダ10およびピストンロッド20の外周を覆う蛇腹状のダストカバー50を備えている。ダストカバー50の下端部は、下スプリングシート31に、例えば、締め付けリング(不図示)およびビスにて締結されている。
また、懸架装置100は、ピストンロッド20の上端部側において上下方向に配置され、振動を吸収する複数(本実施形態においては2個)のマウントラバー61と、複数のマウントラバー61の内側に配置された円筒状のマウントカラー62と、バンプラバーカップ42の上面とともに複数のマウントラバー61を上下から挟む上座金63と、を備えている。複数のマウントラバー61の内の上側のマウントラバー61は、上スプリングシート32にその上端から凹むように形成された凹みに挿入されている。下側のマウントラバー61は、上スプリングシート32の下方に配置されたマウントラバーカップ65により、その上端および外周が覆われている。
【0013】
図2(a)は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の長さが最短となる縮み状態を示す図であり、図2(b)は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の長さが最長となる伸び状態を示す図である。
以上のように構成された懸架装置100は、図2(a)に示す縮み状態および図2(b)に示す伸び状態に変化し、スプリング30にて路面からの衝撃を吸収したりシリンダ10が内蔵する減衰装置にてスプリング30の伸縮振動を制振したりすることで、路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車体を路面に対して押さえつける機能とを果たす。これにより、車両の乗り心地や操縦安定性が向上する。
【0014】
次に、バンプラバーカップ42について詳述する。
図3は、バンプラバーカップ42の概略構成を示す図である。図3(a)は、斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIB−IIIB部の断面図である。
バンプラバーカップ42は、円筒状の側部421と、側部421の中心線方向におけるマウントラバー61側の端部に設けられて、この端部の開口部を覆う覆い部422と、を備えている。側部421の中心線方向におけるマウントラバー61側とは反対側の端部は開口しており、その開口部からバンプラバー41が挿入される。これにより、バンプラバーカップ42は、バンプラバー41におけるマウントラバー61側の端部の外周を覆う。
【0015】
覆い部422の肉厚は、懸架装置100の最圧縮時における衝突力に耐え得るように、側部421の肉厚よりも厚く形成されている。覆い部422には、ピストンロッド20を通すための貫通孔422aが形成されている。また、覆い部422は、中心線方向におけるマウントラバー61側の端部である第1の端部422bが平面であり、バンプラバー41側(マウントラバー61側とは反対側)の端部である第2の端部422cには凸部が設けられている。つまり、第2の端部422cの中央部(貫通孔422aの周囲)には、平面状の外側の部位(側部421側の部位)423から突出した突出部424が設けられている。突出部424における最も突出した部位の最外周424aと、外側の部位423とは、曲面426を介して、中心線方向に対して傾斜する傾斜面425にて接続されている。外側の部位423と側部421との接続部位における内側の部位には曲面427が形成されている。
【0016】
上述した形状のバンプラバーカップ42においては、器状であるため内側にバンプラバー41を納めることができるとともに、特に側部421の肉厚よりも覆い部422の肉厚の方が厚く、第2の端部422c側には突出部424が設けられているため、懸架装置100の最圧縮時における衝突力に耐え得ることができる。
【0017】
図4は、本実施の形態に係るバンプラバーカップ42と比較するための比較例の構成を例示した図である。図4(a)は、斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB部の断面図であり、懸架装置100に装着した状態を示す断面図である。
比較例は、図4に示すように、内側にバンプラバー41を納める薄肉の器状の部材51と、この器状の部材51とマウントラバー61との間に配置されて懸架装置100の最圧縮時における衝突力を受けるための第1の円盤状の部材52と、器状の部材51とバンプラバー41との間に配置されて懸架装置100の最圧縮時における衝突力を受けるための第2の円盤状の部材53と、を備えている。
【0018】
本実施の形態に係るバンプラバーカップ42は、この比較例の構成における器状の部材51、第1の円盤状の部材52および第2の円盤状の部材53が有する機能を1つの部品で実現する部材である。それゆえ、本実施の形態に係る懸架装置100においては、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。また、第1の円盤状の部材52および/または第2の円盤状の部材53に、器状の部材51に対する組み付け方向が定められている場合には、比較例の構成であると、第1の円盤状の部材52および/または第2の円盤状の部材53を誤って間違った方向に組み付けてしまうおそれがあるが、本実施の形態に係る懸架装置100においては、誤組されることはない。
【0019】
また、本実施の形態に係るバンプラバーカップ42は、上述したように、覆い部422の肉厚を側部421の肉厚よりも大きくし、突出部424の最外周424aと外側の部位423とを曲面426を介して傾斜面425で接続するとともに、外側の部位423と側部421とを曲面427で接続している。それゆえ、バンプラバーカップ42を、板金をプレス加工することにより製造することが可能である。例えば、1枚の鋼板を深絞り加工することでバンプラバーカップ42を製造することが可能である。また、肉厚が均一な器状の部材(例えば上記器状の部材51)を回転させながら圧力を加えて塑性変形させる回転成形加工を用いても製造することが可能である。
このように、バンプラバーカップ42を、回転成形加工またはプレス加工(深絞り加工)にて製造することにより、比較例の構成と比べて、生産性を損なうことなく、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。
【0020】
また、バンプラバーカップ42を回転成形加工またはプレス加工することにより、側部421と覆い部422とは曲面427を介して一体的に連続するように成形されるとともに、突出部424、傾斜面425および外側の部位423は曲面426を介して一体的に連続するように成形される。それゆえ、回転成形加工またはプレス加工(深絞り加工)されたバンプラバーカップ42は、例えば、比較例の器状の部材51に、第1の円盤状の部材52および第2の円盤状の部材53を溶接することで1つの部品に仕上げた物よりも残留応力を小さくすることができ、懸架装置100の最圧縮時における衝突力に対する耐力は高い。
【0021】
なお、比較例の構成における器状の部材51、第1の円盤状の部材52および第2の円盤状の部材53を、1つの部品にしつつ、懸架装置100の最圧縮時における衝突力に耐え得る形状にするために、肉厚が均一な器状の部材(例えば上記器状の部材51)であってその肉厚を本実施の形態に係るバンプラバーカップ42の覆い部422の肉厚と同一とした部材を用いることも考えられる。しかしながら、かかる部材では、側部(本実施の形態に係るバンプラバーカップ42の側部421に相当する部位)の肉厚も厚くなるため、本実施の形態に係るバンプラバーカップ42に比べて、重量増となってしまう。それゆえ、本実施の形態に係るバンプラバーカップ42は、重量増を伴うことなく、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。
【0022】
本実施の形態に係るバンプラバーカップ42を、切削加工で製造することも可能である。切削加工で製造されたバンプラバーカップ42を用いても、重量増を伴うことなく、比較例の構成と比べて部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。また、誤組を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
10…シリンダ、20…ピストンロッド、30…スプリング、41…バンプラバー、42…バンプラバーカップ、61…マウントラバー、100…懸架装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の側部と、
前記側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、
を備えるカバー部材であって、
前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されるとともに当該覆い部の肉厚は当該側部の肉厚よりも厚く成形され、
前記覆い部における前記中心線方向の一方の端部は平面であるとともに他方の端部の中央部には外側の部位よりも当該中心線方向に突出した突出部が設けられ、当該突出部と当該外側の部位とは当該中心線方向に対して傾斜する傾斜面にて接続されている
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記覆い部の前記外側の部位と前記傾斜面とは曲面を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
回転成形加工にて成形されることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項4】
プレス加工にて成形されることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項5】
深絞り加工にて成形されることを特徴とする請求項4に記載のカバー部材。
【請求項6】
減衰装置を内蔵するシリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンを支持するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーと、
前記バンプラバーの外周をカバーするカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
円筒状の側部と、当該側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を有し、
前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されるとともに当該覆い部の肉厚は当該側部の肉厚よりも厚く成形され、
前記覆い部における前記中心線方向の一方の端部は平面であるとともに他方の端部の中央部には外側の部位よりも当該中心線方向に突出した突出部が設けられ、当該突出部と当該外側の部位とは当該中心線方向に対して傾斜する傾斜面にて接続されている
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項7】
前記カバー部材の前記覆い部の前記外側の部位と前記傾斜面とは曲面を介して接続されていることを特徴とする請求項5に記載の懸架装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、回転成形加工にて成形されることを特徴とする請求項6または7に記載のカバー部材。
【請求項9】
前記カバー部材は、プレス加工にて成形されることを特徴とする請求項6または7に記載の懸架装置。
【請求項10】
前記カバー部材は、深絞り加工にて成形されることを特徴とする請求項9に記載の懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68296(P2013−68296A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208352(P2011−208352)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】