説明

カムフォロアおよびそのカムフォロアに用いるニップル

【課題】 カムフォロアに対して、ニップルを簡単にはめ付けることができるようにする。
【解決手段】 ニップル本体13の一端に形成したフランジ14と、このフランジに連続させた大径部15と、さらにこの大径部に連続させるとともに、大径部よりもわずかに小径にした圧入誘導部16と、フランジ14とは反対側であるニップル本体13の先端に形成した小径部18と、この小径部と上記圧入誘導部との間に円錐状に形成した傾斜面19と、上記大径部の周囲に形成した複数の環状溝20とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カム機構に用いられたり、直線運動用に利用されたりするカムフォロアおよびそのニップルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカムフォロアとして特許文献1に記載されたものが従来知られている。この従来のカムフォロアは、スタッドの頭部を内輪部とし、その内輪部に外輪を組み付けるとともに、これら外輪と上記内輪部との間に針状ころを介在させている。また、スタッドの頭部には、スタッドを固定するための六角穴を設け、この六角穴に六角レンチを挿入して、当該スタッドを目的の箇所に固定する。そして、上記スタッドを貫通する給脂孔を形成するとともに、この給脂孔の両端に給脂用のニップルを圧入している。つまり、これらニップルは、簡単に取り外しができないようにしている。このようにしたカムフォロアには、ニップルを介してグリース等の油脂を注入して、針状ころの潤滑を良好に保つようにしている。
【0003】
また、上記のように給脂孔の両端にニップルを設けたのは、当該カムフォロアが取り付けられた状態からも、それに対する給脂が必要になるからである。なぜなら、当該カムフォロアの取り付け状態で給脂をする場合には、その取り付け状況に応じて給脂のしやすい方向が決まるので、上記のように給脂孔の両側にニップルを設けておけば、給脂のしやすい方向にあるニップルを選択して使用できるからである。
【特許文献1】特開2000−130446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにした従来のカムフォロアでは、給脂孔の両端に給脂用のニップルが固定されている。しかし、使用状況によっては、一方にのみ給脂用のニップルが備わっていれば足りる場合があり、このような場合でも、ユーザーは給脂孔の両端にニップルを取り付けたカムフォロアを購入しなければならず、その分、購入価格が上昇してしまい、経済性に劣るという問題があった。
また、上記のカムフォロアは、給脂孔にニップルを圧入して固定するため、ニップルの外径を給脂孔の内径よりも僅かに大きくした圧入しろを設けている。このとき、給脂孔の内径に対して圧入しろを大きくしすぎてしまったり、あるいは、給脂孔に対してニップルが傾いた状態で圧入してしまったりすると、ばりや削りかす等が大量に発生してしまい、これらばりや削りかす等が給脂孔に侵入してしまうおそれがある。このように、給脂孔にばりや削りかす等が侵入してしまうと、給脂したグリースとともに上記ばりや削りかす等が外輪と内輪部との間まで到達してしまい、針状ころのスムーズな回転が阻害されてしまうという問題があった。
この発明の目的は、スタッドの端面側の給脂孔を開放し、この開放した給脂孔に給脂用のニップルを簡単にはめ込むことができるカムフォロアおよびそのカムフォロアに用いるニップルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、スタッドの頭部を内輪部として、この内輪部に外輪をはめるとともに、これら内輪部と外輪との間に、針状ころ等の転動体を介在させてなり、かつ、上記スタッドを貫通する給脂孔を形成し、この給脂孔に給脂用のニップルを圧入してなるカムフォロアにおいて、上記スタッドの端面に開口する給脂孔の端部には、その開口の縁を円錐状態にしてなるテーパー部を形成するとともに、このテーパー部は、給脂孔の上記端部にフランジ付きニップルを挿入したとき、そのフランジの外周が当接して、フランジ端面とスタッド端面とが面一となる寸法関係、あるいはスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保った点に特徴を有する。
【0006】
第2の発明は、上記ニップル本体、フランジ部および上記テーパー部によって上記給脂孔内に空間が区画されるとともに、この空間にばりや削りかす等が溜まる点に特徴を有する。
第3の発明は、上記スタッドの頭部側端面には六角穴を形成するとともに、この六角穴に上記給脂孔の頭部側端部を開口し、かつ、給脂孔内には円錐状態にしてなる段突き止め部を形成し、この段突き止め部は、上記給脂孔の頭部側端部からフランジ付きニップルを挿入したとき、そのフランジの外周が当接して、フランジ端面と上記給脂孔の頭部側端部開口とが面一となる寸法関係、あるいは上記給脂孔の頭部側端部開口に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保った点に特徴を有する。
第4の発明は、上記ニップル本体、フランジ部および上記段突き止め部によって上記給脂孔内に空間が区画されるとともに、この空間にばりや削りかす等が溜まる点に特徴を有する。
【0007】
第5の発明は、スタッドの頭部を内輪部として、この内輪部に外輪をはめるとともに、これら内輪部と外輪との間に、針状ころ等の転動体を介在させてなり、かつ、上記スタッドを貫通する給脂孔を形成し、かつ、上記スタッドの端面に開口する給脂孔の端部には、その開口の縁を円錐形に面取りしてなるテーパー部を形成したカムフォロアに用いる給脂用のニップルであって、ニップル本体の一端に形成したフランジと、このフランジに連続させた大径部と、さらにこの大径部に連続させるとともに、大径部よりもわずかに小径にした圧入誘導部と、フランジとは反対側であるニップル本体の先端に形成した小径部と、この小径部と上記圧入誘導部との間に円錐状に形成した傾斜面と、上記大径部の周囲に形成した一または複数の環状溝とからなる点に特徴を有する。
【0008】
第6の発明は、上記フランジは、それがカムフォロアのテーパー部に当接したとき、フランジ端面とスタッド端面とが面一となる寸法関係、あるいはスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保った点に特徴を有する。
第7の発明は、上記環状溝は、フランジ側に位置する側面を軸線に対して傾斜させ、圧入誘導部側を軸線に対して直角にした点に特徴を有する。
第8の発明は、ニップル本体には、フランジ側からの油脂の流れのみを許容するチェック弁を設けた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、スタッドの端面に開口する給脂孔の端部にテーパー部を形成したので、給脂孔にニップルをはめ込むときに、ニップルはテーパー部にガイドされてスムーズに給脂孔にはめ込むことができる。特に、当該カムフォロアを目的の箇所に取り付けた状態では、上記給脂孔の向きが、ニップルをはめ込みやすい位置にあるとは限らない。しかし、ニップルをはめ込みにくい位置に給脂孔が開口していたとしても、上記のようにテーパー部がガイドするので、ニップルのはめ込み作業をスムーズに進めることができる。また、当然のこととして、カムフォロアを目的の箇所に取り付ける前に、ニップルをはめ込むときには、さらにその作業がやりやすくなる。
【0010】
しかも、給脂孔の端部にフランジ付きニップルを挿入したとき、上記テーパー部には、当該ニップルのフランジの外周が当接して、フランジ端面とスタッド端面とが面一となる寸法関係、あるいはスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保っているので、この給脂孔にはめ込んだニップルが、スタッドの端面から突き出るようなことがなくなる。もし、スタッドの端面からニップルが突き出てしまうと、状況によっては、その突き出た部分が障害になって、ニップルの取り付けが不可能ということにもなりかねない。しかし、この発明の場合には、上記したようにニップルが突き出るようなことがないので、取り付け不能などという問題が発生しない。
【0011】
第2の発明によれば、ニップル本体、フランジ部およびテーパー部によって、給脂孔内に空間を区画したので、給脂孔内にニップルを圧入する際に発生するばりや削りかす等を、当該空間内に保持することができる。したがって、ばりや削りかす等が大量に発生したとしても、それらが給脂孔に侵入することがなく、針状ころのスムーズな回転を保持することができる。
第3の発明によれば、フランジ端面と給脂孔の頭部側端部開口とが面一となる寸法関係、あるいは給脂孔の頭部側端部開口に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保ったので、ニップルが六角穴の範囲に突出することがない。したがって、六角穴に六角レンチを挿入する際にニップルが邪魔にならないので、六角レンチを十分に挿入することができ、スタッドを確実に回転させることができる。
第4の発明によれば、ニップル本体、フランジ部および段突き止め部によって、給脂孔内に空間を区画したので、給脂孔内にニップルを圧入する際に発生するばりや削りかす等を、当該空間内に保持することができる。したがって、ばりや削りかす等が大量に発生したとしても、それらが給脂孔に侵入することがなく、針状ころのスムーズな回転を保持することができる。
【0012】
第5の発明によれば、ニップル本体の大径部に連続する圧入誘導部を形成するとともに、ニップル本体の先端に円錐状の傾斜面を形成したので、このニップル本体を給脂孔にスムーズにはめ込むことができる。しかも、上記大径部には複数の環状溝を形成したので、給脂孔に当該ニップルを圧入するときの摩擦力を軽減でき、その分、ニップルを給脂孔にスムーズにはめ込むことができる。
さらに、第5,7の発明によれば、当該ニップルを圧入する際にばりや削りかす等が発生しても、それ等は上記環状溝内に納められて、大径部と給脂孔との間には侵入してこない。したがって、ばりや削りかす等によって給脂孔の表面が傷つけられたりしない。
【0013】
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、給脂孔にはめ込んだニップルが、スタッドの端面から突き出したりせず、当然のこととして、その突き出しによる問題も発生しない。
第8の発明によれば、ニップル本体には、フランジ側からの油脂の流れのみを許容するチェック弁を設けたので、注入した油脂が逆流することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1,2に示す第1実施形態は、スタッドSの頭部を内輪部1とし、この内輪部1の外周に外輪2を組み付けるとともに、これら内輪部1と外輪2との間に針状ころからなる転動体3を介在させている。なお、上記スタッドSの内輪部1側にはフランジ4を形成し、このフランジ4とスタッドSにはめた側板5との間で上記外輪2を支持している。
また、上記スタッドSのフランジ4側には、六角レンチを差し込む六角穴6を形成するとともに、スタッドSには、この六角穴6内およびフランジ4とは反対側におけるスタッドSの端面間を貫通する給脂孔7を形成している。
なお、上記フランジ4とは反対端であるスタッドSの端面側外周には雄ネジを形成し、この雄ネジで当該スタッドを目的の組み付け箇所に固定するようにしている。
【0015】
そして、上記フランジ4側における給脂孔7には、一方のニップル8をはめ込むが、このニップル8にはフランジ8aを形成するとともに、このフランジ8aが給脂孔7内に形成した段突き止め部9に当たって、その位置規制をする構成にしている。このようにして位置規制されたニップル8は、上記六角穴6の深さを十分に保つ位置に止められるとともに、転動体3に油脂を導くための導入孔10をふさがない位置関係を保つようにしている。
したがって、六角穴6に、図示していない六角レンチを十分に挿入して、六角レンチでスタッドSを回転させることができる。また、このニップル8から注入した油脂を、上記転動体3の位置まで確実に導くことができる。
【0016】
一方、上記給脂孔7であって、スタッドSのフランジ4とは反対側の端面における開口部分には、その開口の縁を円錐状態にしてなるテーパー部11を形成している。そして、このテーパー部11の奥には、ニップル圧入孔12を設けている。言い換えると、このニップル圧入孔12は、上記給脂孔7と連続する関係にしている。
【0017】
上記のようにしたニップル圧入孔12に圧入する他方のニップルNは、図2に示すように、そのニップル本体13の外端にフランジ14を設けるとともに、このフランジ14に連続する大径部15を設けている。さらに、この大径部15に連続して圧入誘導部16を設けているが、この圧入誘導部16は、大径部15よりもほんのわずかだけ小径にしている。しかも、この大径部15と圧入誘導部16との間には傾斜部17を設けている。このようにした大径部15は、それを前記ニップル圧入孔12に圧入するに足りるだけの外径を保っている。
したがって、ニップルNの大径部15をニップル圧入孔12に圧入するときには、大径部15よりもほんのわずかだけ小径の圧入誘導部16がニップル圧入孔12にスムーズに挿入され、それに続いて大径部15が上記ニップル圧入孔12に圧入されることになる。
【0018】
また、上記ニップル本体13の先端には小径部18を設けるとともに、この小径部18と上記圧入誘導部16との間を、円錐状の傾斜面19を介して連続させている。この傾斜面19は、ニップル本体13をニップル圧入孔12に圧入するときにガイドとなる役割を果たすものである。
さらに、上記大径部15の外周には複数の環状溝20を形成するとともに、この環状溝20は、フランジ14側に位置する側面を軸線に対して傾斜させ、圧入誘導部16側を軸線に対して直角にしている。このようにした環状溝20は、ニップルNを圧入する際に発生する削りかすやばり等を取り込む機能を果たす。
【0019】
上記のようにしたニップルNを上記ニップル圧入孔12に圧入したときには、ニップルNのフランジ14の外周が、給脂孔7に形成したテーパー部11に当接し、フランジ14の端面がスタッドSの端面からやや沈むようにしている。言い換えると、上記フランジ14とテーパー部11とは、スタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保っている。このようにスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保っているので、ニップルNがスタッドS端面から外方に突き出したりしない。なお、ニップルNがスタッドS端面から突き出さなければ、上記フランジ14とスタッドS端面とが面一となる寸法関係を保っても良いこと当然である。
【0020】
そして、上記ニップルNをニップル圧入孔12に圧入した状態で、ニップル本体13およびフランジ14と、給脂孔7に形成したテーパー部11とによって、空間24が形成されるようにしている。この空間24は、ニップルNをニップル圧入孔12に圧入する際に発生する削りかすやばり等が、給脂孔7から外部にこぼれないように保持する機能を果たす。
また、上記ニップル本体13には、フランジ14側からの油脂の流れのみを許容するチェック弁21を設けているが、このチェック弁21は、ボール22とスプリング23とからなるものである。
【0021】
次に、スタッドSの端面側すなわちテーパー部11を形成した側からニップルNをはめ込む場合について説明する。先ず、ニップルNの小径部18を前方に向けて、ニップル本体13をテーパー部11に挿入する。このようにしてニップル本体13をテーパー部11に挿入すると、そのテーパー部11とニップル本体13の傾斜面19とが相まって、ニップル本体13がニップル圧入孔12へと必然的に導かれる。したがって、この挿入過程で、ニップル本体13が倒れたりして、それが挿入しにくくなったりすることはない。
【0022】
上記のようにしてニップル本体13の小径部18がニップル圧入孔12に導かれていくと、それにともなって圧入誘導部16も上記ニップル圧入孔12に誘導される。このとき、圧入誘導部16の外径が、ニップル圧入孔12に圧入すべき大径部15の外径よりもほんのわずかに小さいので、上記圧入誘導部16は、ニップル圧入孔12にスムーズに挿入されることになる。
【0023】
圧入誘導部16がニップル圧入孔12に挿入されれば、ニップル本体13はニップル圧入孔12に仮止めされ、安定した状態になる。このようにニップル本体13がニップル圧入孔12に仮止めされれば、後は、当該ニップル本体13を打ち込むだけで、ニップルNをはめ込むことができる。
なお、ニップルNの大径部15をニップル圧入孔12に圧入すると、削りかすやばり等が発生するが、大径部15外周には複数の環状溝20を形成しているので、削りかすやばり等を当該環状溝20内に取り込むことができる。
そして、上記大径部15の外径がニップル圧入孔12の内径に対して大きすぎる場合には、削りかすやばり等が大量に発生してしまい、それを環状溝20内に取り込みきれなくなる。環状溝20内に取り込めなかった削りかすやばり等は、ニップル本体13がニップル圧入孔12内に進入するのに伴って、ニップル本体13外周からフランジ14側に向かって移動するとともに、上記空間24内に保持されることとなる。
【0024】
仮に、テーパー部11および空間24がなければ、フランジ14が着座する給脂孔7の着座面に削りかすやばり等がかみ込んでしまい、所定の位置までニップルNをしっかりと挿入することができなくなってしまう。特に、フランジ14の端面とスタッドSの端面とが面一となる寸法関係を保っている場合には、フランジ14の着座面にかみ込んだ削りかすやばり等の分だけ、フランジ14がスタッドS端面から突出してしまう。
しかし、上記のように、給脂孔7の端面開口部分にテーパー部11を形成するとともに、このテーパー部11とニップルNとによって給脂孔7を区画して空間24を形成すれば、削りかすやばり等を確実に空間24内に取り込むことができるので、ニップルNを所定の位置まで確実に挿入することができる。特に、フランジ14の端面とスタッドSの端面とが面一となる寸法関係を保っている場合であっても、フランジ14がスタッドSの端面から突出することがない。
このように、削りかすやばり等が大量に発生した場合でも、それらを空間24内に保持することができるので、確実に所定の位置までニップルNを挿入することができる。そして、ニップル圧入孔12にはめ込んだニップルNからグリース等の油脂を注入すれば、転動体3のスムーズな転動を保持することができる。
【0025】
上記の第1実施形態によれば、例えば、一方のニップル8のみをはめ込んだカムフォロアを市場に提供し、ユーザーは、他方のニップルNのみを必要に応じてはめ込むことができる。言い換えると、ユーザーは、ニップル8およびNの両方をはめ込んだコスト高のカムフォロアを購入する必要がなく、その分、ユーザーにとって経済性が向上することになる。
また、ユーザーは他方のニップルNを簡単にはめ込むことができるので、ユーザー側における作業性も向上することになる。
【0026】
図3に示す第2実施形態は、スタッドSのフランジ4側における給脂孔7に、ニップルNをはめ込んだ点のみ上記第1実施形態と異なり、その他の構成は上記第1実施形態と同じである。したがって、上記第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細に説明する。なお、ニップルNは、上記第1実施形態におけるニップルNと同じ構成である。
スタッドSの頭部側端面には、六角穴6を形成するとともに、この六角穴6に給脂孔7の頭部側端部25を開口させている。上記給脂孔7の頭部側には、上記六角穴6に連続するとともに六角穴6よりも径を小さくした拡径部26と、この拡径部26に連続するとともに、拡径部26よりもさらに径を小さくしたニップル圧入部27とを備えている。
また、上記拡径部26とニップル圧入部27との間には、その開口の縁を円錐状態にしてなる段突き止め部9を形成している。
【0027】
一方、上記ニップル圧入部27に圧入するニップルNは、上記ニップルNと同様、そのニップル本体13の外端にフランジ14を設けるとともに、このフランジ14に連続する大径部15を設けている。さらに、この大径部15に連続して圧入誘導部16を設けているが、この圧入誘導部16は、大径部15よりもほんのわずかだけ小径にしている。このようにした大径部15は、それを前記ニップル圧入部27に圧入するに足りるだけの外径を保っている。
したがって、ニップルNの大径部15をニップル圧入部27に圧入するときには、大径部15よりもほんのわずかだけ小径の圧入誘導部16がニップル圧入部27にスムーズに挿入され、それに続いて大径部15が上記ニップル圧入部27に圧入されることになる。
【0028】
また、上記ニップル本体13の先端には小径部18を設けるとともに、この小径部18と上記圧入誘導部16との間を、円錐状の傾斜面19を介して連続させている。この傾斜面19は、ニップル本体13をニップル圧入部27に圧入するときにガイドとなる役割を果たすものである。
さらに、上記大径部15の外周には環状溝20を1つのみ形成するとともに、この環状溝20は、フランジ14側に位置する側面を軸線に対して傾斜させ、圧入誘導部16側を軸線に対して直角にしている。このようにした環状溝20は、ニップルNを圧入する際に発生する削りかすやばり等を取り込む機能を果たす。
【0029】
上記のようにしたニップルNを上記ニップル圧入部27に圧入したときには、ニップルNのフランジ14の外周が、給脂孔7に形成した段突き止め部9に当接し、フランジ14の端面が上記給脂孔7の頭部側端部25からやや沈むようにしている。言い換えると、上記フランジ14と段突き止め部9とは、頭部側端部25に対してフランジ14端面がやや沈む寸法関係を保っている。このように頭部側端部25に対してフランジ14端面がやや沈む寸法関係を保っているので、ニップルNが六角穴6の範囲内に突き出したりしない。なお、ニップルNが六角穴6から突き出さなければ、上記フランジ14と頭部側端部25とが面一となる寸法関係を保っても良いこと当然である。
【0030】
そして、上記ニップルNをニップル圧入部27に圧入した状態で、ニップル本体13およびフランジ14と、給脂孔7に形成した段突き止め部9とによって、空間24が形成されるようにしている。この空間24は、ニップルNをニップル圧入部27に圧入する際に発生する削りかすやばり等が、給脂孔7から外部にこぼれないように保持する機能を果たす。
なお、図示しないが、上記ニップルNと同様、ニップルNにもフランジ14側からの油脂の流れのみを許容するチェック弁を設けている。
【0031】
次に、スタッドSの頭部側にニップルNをはめ込む場合について説明する。先ず、ニップルNの小径部18を前方に向けて、ニップル本体13を六角穴6から給脂孔7に挿入する。このようにしてニップル本体13を挿入すると、段突き止め部9とニップル本体13の傾斜面19とが相まって、ニップル本体13がニップル圧入部27へと必然的に導かれる。したがって、この挿入過程で、ニップル本体13が倒れたりして、それが挿入しにくくなったりすることはない。
【0032】
上記のようにしてニップル本体13の小径部18がニップル圧入部27に導かれていくと、それにともなって圧入誘導部16も上記ニップル圧入部27に誘導される。このとき、圧入誘導部16の外径が、ニップル圧入部27に圧入すべき大径部15の外径よりもほんのわずか小さいので、上記圧入誘導部16は、ニップル圧入部27にスムーズに挿入されることになる。
【0033】
圧入誘導部16がニップル圧入部27に挿入されれば、ニップル本体13はニップル圧入部27に仮止めされ、安定した状態になる。このようにニップル本体13がニップル圧入部27に仮止めされれば、後は、当該ニップル本体13を打ち込むだけではめ込むことができる。
また、ニップルNの大径部15をニップル圧入孔12に圧入すると、削りかすやばり等が発生するが、大径部15外周には環状溝20を形成しているので、削りかすやばり等を当該環状溝20内に取り込むことができる。
なお、上記大径部15の外径がニップル圧入部27の内径に対して大きすぎると、削りかすやばり等が大量に発生してしまい、それを環状溝20内に取り込みきれなくなる。環状溝20内に取り込めなかった削りかすやばり等は、ニップル本体13がニップル圧入部27内に進入するのに伴って、ニップル本体13外周からフランジ14側に向かって移動するとともに、上記空間24内に保持されることとなる。
【0034】
上記第2実施形態によれば、用途に応じて頭部側とその反対側とのいずれか必要な方にだけ、簡単にニップルをはめ込むことができる。
また、フランジ14端面と給脂孔7の頭部側端部25とが面一となる寸法関係、あるいは給脂孔7の頭部側端部25に対してフランジ14端面がやや沈む寸法関係を保ったので、六角穴6に六角レンチを十分に挿入することができ、六角レンチでスタッドSを確実に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】カムフォロアの断面図である。
【図2】ニップルの一部断面図である。
【図3】カムフォロアの部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 内輪部
2 外輪
3 転動体
6 六角穴
7 給脂孔
8 ニップル
9 段突き止め部
11 テーパー部
13 ニップル本体
14 フランジ
15 大径部
16 圧入誘導部
18 小径部
19 傾斜面
20 環状溝
24 空間
25 頭部側端部
N,N ニップル
S スタッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドの頭部を内輪部として、この内輪部に外輪をはめるとともに、これら内輪部と外輪との間に、針状ころ等の転動体を介在させてなり、かつ、上記スタッドを貫通する給脂孔を形成し、この給脂孔に給脂用のニップルを圧入してなるカムフォロアにおいて、上記スタッドの端面に開口する給脂孔の端部には、その開口の縁を円錐状態にしてなるテーパー部を形成するとともに、このテーパー部は、給脂孔の上記端部にフランジ付きニップルを挿入したとき、そのフランジの外周が当接して、フランジ端面とスタッド端面とが面一となる寸法関係、あるいはスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保ったことを特徴とするカムフォロア。
【請求項2】
上記ニップル本体、フランジ部および上記テーパー部によって上記給脂孔内に空間が区画されるとともに、この空間にばりや削りかす等が溜まる構成にした請求項1に記載のカムフォロア。
【請求項3】
上記スタッドの頭部側端面には六角穴を形成するとともに、この六角穴に上記給脂孔の頭部側端部を開口し、かつ、給脂孔内には円錐状態にしてなる段突き止め部を形成し、この段突き止め部は、上記給脂孔の頭部側端部からフランジ付きニップルを挿入したとき、そのフランジの外周が当接して、フランジ端面と上記給脂孔の頭部側端部開口とが面一となる寸法関係、あるいは上記給脂孔の頭部側端部開口に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保ったことを特徴とする請求項1または2に記載のカムフォロア。
【請求項4】
上記ニップル本体、フランジ部および上記段突き止め部によって上記給脂孔内に空間が区画されるとともに、この空間にばりや削りかす等を溜める構成にした請求項3に記載のカムフォロア。
【請求項5】
スタッドの頭部を内輪部として、この内輪部に外輪をはめるとともに、これら内輪部と外輪との間に、針状ころ等の転動体を介在させてなり、かつ、上記スタッドを貫通する給脂孔を形成し、かつ、上記スタッドの端面に開口する給脂孔の端部には、その開口の縁を円錐形に面取りしてなるテーパー部を形成したカムフォロアに用いる給脂用のニップルであって、ニップル本体の一端に形成したフランジと、このフランジに連続させた大径部と、さらにこの大径部に連続させるとともに、大径部よりもわずかに小径にした圧入誘導部と、フランジとは反対側であるニップル本体の先端に形成した小径部と、この小径部と上記圧入誘導部との間に円錐状に形成した傾斜面と、上記大径部の周囲に形成した一または複数の環状溝とからなるカムフォロア用ニップル。
【請求項6】
上記フランジは、それがカムフォロアのテーパー部に当接したとき、フランジ端面とスタッド端面とが面一となる寸法関係、あるいはスタッド端面に対してフランジ端面がやや沈む寸法関係を保った請求項5に記載のカムフォロア用ニップル。
【請求項7】
上記環状溝は、フランジ側に位置する側面を軸線に対して傾斜させ、圧入誘導部側を軸線に対して直角にした請求項5又は6のいずれかに記載されたカムフォロア用ニップル。
【請求項8】
ニップル本体には、フランジ側からの油脂の流れのみを許容するチェック弁を設けた請求項5〜7のいずれかに記載したカムフォロア用ニップル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−14483(P2008−14483A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248001(P2006−248001)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】