説明

カメラ付きマニピュレータ

【課題】作業に適した方向からエンドエフェクタを観察することができるカメラ付きマニピュレータを提供する。
【解決手段】グリッパ型のエンドエフェクタ1を備えた先端のリンクに対して一つ手前のリンクに、エンドエフェクタ1と同軸上に回転可能な回転部20を設け、その上に、雲台2を介して作業対象物であるワーク4を認識するためのカメラ3を配置する。先端のリンクの回転角度θに応じて、回転部20の回転角度θcを制御するアクチュエータを駆動することで、エンドエフェクタ1がつかみ作業のときは可動面5に垂直な方向にカメラ3を設置する。組付作業時には、エンドエフェクタ1の可動面5に対して平行な方向にカメラ3が設置されるように回転部20を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラによって作業対象物を認識する機能を備えたカメラ付きマニピュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マニピュレータの先端に取り付けたエンドエフェクタを用いた組付作業において、組付の作業対象物を認識し、様々な作業領域において作業を行うためには、マニピュレータ上に備えられたカメラが必要となる。従来、マニピュレータ上に設置するカメラは、図7(a)に示すように、エンドエフェクタ101とともにカメラ103をマニピュレータ先端のリンクに取り付ける構成が主であった(特許文献1参照)。しかしながらこの構成では、カメラがエンドエフェクタを観察する方向は固定となる。また、図7(b)に示すように、カメラ203がエンドエフェクタ201を常に視野内に捉えられるようにカメラの方向を可変とする構成も知られている(特許文献2参照)。これは、複数の軸回りに回転することができる雲台202にカメラ203を設置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−277290号公報
【特許文献2】特開昭63−52990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、エンドエフェクタとともにカメラを先端のリンクに取り付ける構成では、カメラがエンドエフェクタを観察する方向が固定であるため、作業に適した方向からエンドエフェクタを観察することができない。
【0005】
特許文献2に記載されたように、複数の軸回りに回転することができる雲台を用いるものは、カメラが観察する方向を可変とすることができるが、カメラがエンドエフェクタを常に視野内に捉えるのみであり、エンドエフェクタのヨー軸周りの回転には対応しない。このため、作業に適した方向からはエンドエフェクタを観察することはできない。加えて、マニピュレータのリンクやリンク間のジョイント部によるオクルージョンが発生しうる。
【0006】
本発明は、マニピュレータの作業に適した方向からエンドエフェクタを観察することができるカメラ付きマニピュレータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のカメラ付きマニピュレータは、複数のリンクを連結した多関節のアームと、前記アームの先端のリンクもしくは先端より一つ手前のリンクに同軸上に回転可能に配置された回転部と、前記先端のリンクに連結されたエンドエフェクタと、前記回転部に支持された、作業対象物を認識するためのカメラと、前記エンドエフェクタの動作に応じて前記回転部を回転させるアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータは、前記エンドエフェクタが前記作業対象物を把持するつかみ作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して垂直方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させ、組付作業もしくは配置作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して平行方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
カメラを設置した雲台を、エンドエフェクタと同軸上に回転させる回転部に配置し、その回転角度を制御することで、マニピュレータの作業に適した方向からエンドエフェクタを観察することができる。
【0009】
例えば、エンドエフェクタが作業対象物を把持するつかみ作業では、作業対象物の位置を認識したい領域はエンドエフェクタが開閉する可動面と同平面になることが多い。このときは、カメラはエンドエフェクタの可動面に対して垂直方向に設置される。また、エンドエフェクタが作業対象物をつかんだ後、物体に組付ける組付作業もしくは作業対象物を所望の位置に配置する配置作業の開始時には、作業対象物はエンドエフェクタによりつかまれており、エンドエフェクタの可動方向には拘束されている。このため、作業対象物の位置を認識したい領域はエンドエフェクタの可動面に対して垂直な平面となり、作業対象物を認識するためのカメラはエンドエフェクタの可動面に対して平行方向に設置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1によるカメラ付きマニピュレータを説明する図である。
【図2】実施例2によるカメラ付きマニピュレータを説明する図である。
【図3】実施例3によるカメラ付きマニピュレータを説明する図である。
【図4】実施例4によるカメラ付きマニピュレータを説明する図である。
【図5】実施例4による他物体とカメラの干渉を回避する動作を説明する図である。
【図6】図5の装置の動作を説明するフローチャートである。
【図7】従来例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係るもので、これは、アームを6軸のものとし、組付作業を挿入作業としたカメラ付きマニピュレータである。図1(a)に示すように、グリッパ型のエンドエフェクタ1は、マニピュレータのアーム先端のリンクに連結され、先端から一つ手前のリンクには、回転部20が配置される。この回転部20に雲台2が取り付けられ、その雲台2にカメラ3が取り付けられている。回転部20を回転させるアクチュエータはこの回転部20内に含まれているとする。カメラ3は、作業対象物であるワーク4を認識するために用いられる。ジョイント(継手)11〜16は、多関節のアームの複数のリンクを連結する回転継手又は旋回継手である。アーム先端のジョイント16の回転角度θと、カメラ3を支持する回転部20の回転角度θcは同軸上の回転角度である。
【0012】
図1(b)は、エンドエフェクタ1がつかみ作業を行う時の様子を示す。作業対象物であるワーク4を把持することを目的としたつかみ作業のときは、ワーク4の位置を認識したい領域はエンドエフェクタ1の可動(開閉)する平面である可動面5に平行な面となる。これは、ワーク4は作業台の上に置かれているため、ワークがずれる方向は可動面5に平行な方向となるからである。それゆえ、カメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5に対して垂直方向に配置され、その位置から可動面5を観察するのが、作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0013】
なお、ここでいう可動面とは、エンドエフェクタの把持中心方向と、エンドエフェクタが動作する方向から規定される面を指す。また、可動面に対して垂直な方向とは、可動面の垂線方向と平行な方向を指し、可動面に対して平行な方向とは前記垂直な方向に対して、ジョイント16の回転軸周りに直角となる方向を指す。これは、以下の各実施例においても同様である。
【0014】
よって、つかみ作業のときは、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して垂直方向となるように、カメラ3が設置された回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと、カメラ3を設置した回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が75°〜105°の間になるようにアクチュエータの制御を行う。なお、ここでは、可動面5と平行な方向にカメラに置かれている状態をθ=θcとする。以下の実施例でもこれは同様である。
【0015】
図1(c)はエンドエフェクタ1が挿入作業(組付作業)を行う時の様子を表した図である。この図に示すように、ワーク4をワーク挿入対象6に挿入することを目的とした挿入作業のときは、挿入作業開始時や挿入作業中の補正のためにワーク4の把持状態を認識する必要がある。エンドエフェクタ1がワーク4を把持した状態において、ワーク4はエンドエフェクタ1の可動方向には拘束されているため、ワーク4の状態を認識すべき領域はエンドエフェクタ1の可動面5に垂直な面となる。そのためカメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5と平行な方向に設置され、その位置から可動面5と垂直な平面を観察するのが、作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0016】
よって、組付作業のときは、カメラ3が設置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向となるように、カメラ3を支持する回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が15°以内になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0017】
このように、カメラ3を回転部20により、エンドエフェクタ1を連結したリンクと同軸上に回転可能とし、その回転角度θcを、ジョイント16の回転角度θに応じて制御することで、作業に適した方向からエンドエフェクタ1を観察できる。
【実施例2】
【0018】
図2は実施例2に係るもので、図1(a)においては回転部及びカメラを先端のリンクから一つ手前のリンクに取り付けたのに対し、本実施例は図2(a)に示すように先端のリンクにエンドエフェクタ1と回転部20及びカメラ3を取り付けてある。その他の点は実施例1と同様であるから説明は省略する。
【0019】
図2(b)はエンドエフェクタ1が剛体である作業対象物を把持する、つかみ作業を行う時の様子を示すものである。剛体であるワーク7をつかむことを目的としたつかみ作業のときは、ワーク7の位置を認識したい領域は実施例1と同様にエンドエフェクタ1の可動面5に平行な面となる。そのためカメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5と垂直な方向に配置され、その位置から可動面5を観察するのが作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0020】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して垂直方向となるように、カメラ3が設置された回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が75°〜105°の間になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0021】
また、図2(c)はエンドエフェクタ1が柔軟物である作業対象物を把持する、つかみ作業を行う時の様子を示すもので、ここでは柔軟物としてケーブルを例にした。作業対象物がケーブルのような柔軟物の場合は、まずグリッパを開いた状態で大まかにつかんだ後、カメラにより柔軟物の位置を認識し、正確につかむ必要がある。この場合は、柔軟物はエンドエフェクタが開閉する可動面と平行な方向には倣うため、正確につかむためには可動面と垂直な平面方向のつかみ方をカメラで認識することにより補正する必要がある。それゆえ、柔軟物であるワーク8をつかむことを目的とした作業のときは、ワーク8の位置を認識したい領域はエンドエフェクタ1の可動面5に垂直な面となる。そのためカメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5と平行な方向に配置され、その位置から可動面5を観察するのが作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0022】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向となるように、カメラ3が設置された回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が15°以内になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0023】
なお、ここでは作業対象物が剛体と柔軟物のどちらであるかはマニピュレータの教示時に予め設定しておく。
【0024】
このように、カメラ3を回転部20により、エンドエフェクタ1を連結したリンクと同軸上に回転可能とし、その回転角度θcを、ジョイント16の回転角度θに応じて制御することで、作業に適した方向からエンドエフェクタ1を観察できる。
【実施例3】
【0025】
図3は実施例3に係るもので、本実施例では、図3(a)に示すように、回転部20に継手を介してエンドエフェクタ1を保持させている。その他の点は実施例2と同様であるから説明は省略する。
【0026】
図3(b)は、エンドエフェクタ1が挿入作業(組付作業もしくは配置作業)を行う時の様子を表した図である。ここでは実施例1と同様に、カメラ3はエンドエフェクタ1の可動面5と平行な方向に設置され、その位置から可動面5を観察するのが、作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0027】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向となるように、カメラ3が設置された回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が15°以内になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0028】
また、図3(c)は挿入作業後に、ワーク4の挿入対象6に対する挿入状態(組付状態もしくは配置状態)を検査する検査作業を行う時の様子を表わす。作業対象物が組み付けられたもしくは配置された位置や姿勢を検査する検査作業時には、組付作業時もしくは配置作業時に認識した領域とは異なる領域を認識する必要がある。本実施例のように、挿入状態を検査することを目的とした作業の時は、エンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向からカメラが観察しても挿入口が見られないため、検査を行うことができない。そのためカメラ3は、挿入口を検査できるように、エンドエフェクタ1の可動面5と垂直な方向に配置されるのが、作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0029】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向となるように、カメラ3が設置された回転部20をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部20の回転角度θcの差(|θ−θc|)が75°〜105°の間になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0030】
このように、カメラ3を回転部20により、エンドエフェクタ1を連結したリンクと同軸上に回転可能とし、その回転角度θcを、ジョイント16の回転角度θに応じて制御することで、作業に適した方向からエンドエフェクタ1を観察できる。
【実施例4】
【0031】
図4は実施例4に係るもので、本実施例は、図4(a)に示すように、実施例1の回転部20の代わりに、先端のジョイント16とその1つ手前のジョイント15の間に、これらのジョイントと直列に組み込まれた回転継手を有する回転部21を用いる。それゆえ、マニピュレータは7軸となり、雲台2は、先端のジョイント16に直列に連結された回転部21に取り付けられ、その雲台2の上にカメラ3が設置される。その他の点は実施例1と同様であるから説明は省略する。
【0032】
図4(b)はエンドエフェクタがつかみ作業を行う時の様子を示すもので、作業対象物であるワーク7をつかむことを目的としたつかみ作業のときは、ワーク7の位置を認識したい領域はエンドエフェクタ1の可動面5に平行な面となる。そのためカメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5と垂直な方向に配置され、その位置から可動面5を観察するのが作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0033】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して垂直方向となるように、カメラ3が設置された回転部21をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部21の回転角度θcの差(|θ−θc|)が75°〜105°の間になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0034】
また、図4(c)はエンドエフェクタ1が配置作業を行う時の様子を示すもので、ワーク7をフィクスチャ9に配置することを目的とした作業のときは、作業開始時にワーク7の把持状態を認識する必要がある。エンドエフェクタ1がワーク7を把持した状態において、ワーク7はエンドエフェクタ1の可動方向には拘束されているため、ワーク7の状態を認識するべき領域はエンドエフェクタ1の可動面5に垂直な面となる。そのためカメラ3は、エンドエフェクタ1の可動面5と平行な方向に配置され、その位置から可動面5と垂直な平面を観察するのが作業に適したエンドエフェクタ1の観察方向となる。
【0035】
よって、カメラ3が配置される位置がエンドエフェクタ1の可動面5に対して平行方向となるように、カメラ3が設置された回転部21をアクチュエータによって回転させる。例えば、エンドエフェクタ1が取り付けられている先端のジョイント16の回転角度θと回転部21の回転角度θcの差(|θ−θc|)が15°以内になるようにアクチュエータの制御を行う。
【0036】
一方で、他物体とカメラの干渉が起こる場合には、その干渉の回避を考慮した上で、所望のカメラ位置との差が最小となるように、カメラを支持する回転部を回転させる必要がある。
【0037】
図5(a)は、他物体10とカメラ3の干渉の回避を考慮して、回転部21のアクチュエータを制御している様子を示すもので、カメラ3との干渉を起こしうる他物体10とカメラ3の干渉の危険性を検知するセンサ30を設ける。このセンサ30は他物体10の周りに光線を出しており、その光線が遮られたかどうかを監視する。これにより、カメラ3が他物体10に近づいて干渉の危険性が生じたことを検知する。センサ30による検知結果は、ジョイント16及び回転部21のそれぞれのアクチュエータを制御する制御装置31に送信される。そして、干渉が起こらない範囲でθとθcの相対角が所望の値に近づくように回転部21が制御される。図5(b)は、図5(a)におけるカメラ3と他物体10との干渉が回避されている状態を示す。
【0038】
なお、本実施例では干渉の危険性を作業中にセンサを用いて検知する手段について述べているが、事前に検知しておき、それを避けるように教示してもよい。これには、実際の障害物などを含めた環境と同じ環境をコンピュータ上で仮想的に構築し、そのコンピュータ上での仮想環境において、実際のカメラ付マニピュレータと同じ構成のモデルを動作させる方法がある。この仮想環境上での動作過程において、他物体とカメラが干渉しないかどうかを検査する。この方法により、干渉をさけることも考慮した上で、カメラ位置を制御する回転部の回転角を作業に適した方向に教示することができる。
【0039】
図6は干渉回避を考慮した場合の動作決定についてのフローチャートを表す。回転部21の制御が開始されると、目的の作業に応じて所望のカメラ位置が決定され(ステップS1)、その位置にカメラ3を移動させるために制御装置31により回転部21のアクチュエータの制御を開始する(ステップS2)。アクチュエータの制御中においては、制御装置31は他物体10とカメラ3の干渉を検知するセンサ30をリアルタイムに監視する(ステップS3)。そして、他物体10とカメラ3の干渉危険性がセンサ30により検知されない場合は、ジョイント16の回転角度θと回転部21の回転角度θcの差(|θ−θc|)が所望の角度になるように回転部21のアクチュエータが制御される(ステップS4)。他物体10とカメラ3の干渉危険性がセンサ30により検知された場合は、他物体10とカメラ3の干渉が起きない範囲で、回転角度の差(|θ−θc|)と、所望の差との差が最小になるように、回転部21のアクチュエータを制御する(ステップS5)。この作業をマニピュレータの動作中は繰り返し、マニピュレータの動作が終了したら(ステップS6)、回転部21のアクチュエータの制御を終了する。
【0040】
このように、カメラ3を回転部21により、エンドエフェクタ1を連結したリンクと同軸上に回転可能とし、その回転角度θcを、ジョイント16の回転角度θに応じて制御することで、作業に適した方向からエンドエフェクタ1を観察できる。
【0041】
本実施例では、回転部21を、マニピュレータのジョイント11〜16と直列に組み込むことで、マニピュレータの外側に取り付けられる部材は、カメラ3と雲台2のみとなり、他の実施例に比べて小型化が可能となる。このように小型化することで、カメラ3が回転部21から突出する長さを短縮し、作業に応じてカメラ3を回転させてもその回転領域を小さくできる。これによって、他物体との干渉が起こりうる領域を小さくできるため、他物体との干渉の回避がしやすくなる。
【0042】
他物体10とカメラ3の干渉が起こる場合には、その干渉の回避を考慮した上で所望のカメラ位置との差が最小となるように回転部21の回転角度を制御する。これによって、他物体10とカメラ3の干渉を回避する条件下で、作業に適した方向からエンドエフェクタ1を観察することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 エンドエフェクタ
2 雲台
3 カメラ
4、7、8 ワーク
11〜16 ジョイント
20、21 回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクを連結した多関節のアームと、
前記アームの先端のリンクもしくは先端より一つ手前のリンクに同軸上に回転可能に配置された回転部と、
前記先端のリンクに連結されたエンドエフェクタと、
前記回転部に支持された、作業対象物を認識するためのカメラと、
前記エンドエフェクタの動作に応じて前記回転部を回転させるアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータは、前記エンドエフェクタが前記作業対象物を把持するつかみ作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して垂直方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させ、組付作業もしくは配置作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して平行方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させることを特徴とするカメラ付きマニピュレータ。
【請求項2】
複数のリンクを連結した多関節のアームと、
前記アームの先端のリンクもしくは先端より一つ手前のリンクに同軸上に回転可能に配置された回転部と、
前記先端のリンクに連結されたエンドエフェクタと、
前記回転部に支持された、作業対象物を認識するためのカメラと、
前記エンドエフェクタの動作に応じて前記回転部を回転させるアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータは、前記エンドエフェクタが前記作業対象物を把持するつかみ作業において、前記作業対象物が剛体であるときは前記エンドエフェクタの可動面に対して垂直方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させ、前記作業対象物が柔軟物であるときは前記エンドエフェクタの可動面に対して平行方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させることを特徴とするカメラ付きマニピュレータ。
【請求項3】
複数のリンクを連結した多関節のアームと、
前記アームの先端のリンクもしくは先端より一つ手前のリンクに同軸上に回転可能に配置された回転部と、
前記先端のリンクに連結されたエンドエフェクタと、
前記回転部に支持された、作業対象物を認識するためのカメラと、
前記エンドエフェクタの動作に応じて前記回転部を回転させるアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータは、組付作業もしくは配置作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して平行方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させ、前記作業対象物の組付状態もしくは配置状態を検査する検査作業のときは前記エンドエフェクタの可動面に対して垂直方向に前記カメラが配置されるように前記回転部を回転させることを特徴とするカメラ付きマニピュレータ。
【請求項4】
他物体と前記カメラとの干渉を事前に検査する手段もしくは作業中に検知する手段を有し、
前記アクチュエータは、前記干渉を回避するように前記回転部を回転させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカメラ付きマニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−703(P2011−703A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108546(P2010−108546)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】