説明

カラー画像形成装置

【課題】ハーフトーン等のトナー低付着量部分の電位低下を小さく抑え、トナー低付着量部分の画像荒れを防止するとともに、重ね合わせトナー像においても良好な二次転写性能を得ることが出来るカラー画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写体のトナー像担持面側に対向する側に配置した放電電極とグリッド電極を有する複数の除電器と、中間転写体を挟んで除電器に対向する位置に配置した対向電極と、を有する二次転写前除電手段を、一次転写手段と二次転写手段との間に配置し、複数の除電器のうち、中間転写体の回動方向上流側に配置した除電器のグリッド電極の電位と対向電極の電位との差が、中間転写体の回動方向下流側に配置した除電器のグリッド電極の電位と対向電極の電位との差、に比して大となるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの機能を併せ持つ電子写真方式を用いた画像形成装置に関わり、特に、中間転写体を有し、該中間転写体上に複数のカラートナー像を重ね合わて画像を形成するすカラー画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写体を用いた電子写真方式のカラー画像形成装置では、感光体である像担持体上に形成したトナー像を中間転写体上に転写し(一次転写)、該中間転写体上のトナー像を転写材上に転写する(二次転写)ものが知られている。かかるカラー画像形成装置では、像担持体上に順次形成された所定極性に帯電しているトナー像を静電気により中間転写体に重ね合わせて転写した後、その中間転写体上のトナー像を静電気により転写材上に一括して転写している。
【0003】
中間転写体を用いたカラー画像形成装置は、像担持体上に形成したトナー像を中間転写体上に重ね合わせることができるので、カラー画像を転写材上に形成するカラー画像形成装置に広く応用されている。このカラー画像形成装置では、像担持体に形成した各色のトナー像を中間転写体に重ね合わせて転写した後、この重ね合わせトナー像を静電気により転写材に一括転写する。
【0004】
トナー1粒子当たりの帯電量はほぼ均一であることから、中間転写体上のトナー層電位は所定面積内でのトナー付着量によって決まり、カラー画像形成装置では中間転写体上のトナー像のうち複数色のトナーが重ね合わされた部分の帯電電位は、1色のトナーのみが付着している部分の帯電電位よりも大きくなる。また例えば、中間転写体上のトナー像がベタ部及びハーフトーン部を有する場合、ベタ部の帯電電位はハーフトーン部よりも大きくなる。
【0005】
また、像担持体から中間転写体へトナー像を転写する一次転写部を通過した後のトナー像内での帯電電位のばらつきは、環境によっても発生する場合がある。
【0006】
このように中間転写体上のトナー像の電位のばらつきが大きいと、転写特性が互いに異なる部分が同一トナー像内に存在することになる。この転写特性の異なるすべての部分を同じ転写条件下で転写材に転写しようとすると、中間転写体から転写材への二次転写時に様々な画像不良が発生しやすい。
【0007】
近年、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの機能を合わせ持つ複合機等の画像形成装置においてカラー化が進み、また重合トナー、小粒径トナーの採用により、転写プロセスにおいても高画質化への要求が大きくなってきている。また、画像形成装置の高速化も進んでいる。これらのことに対し、良好な画像を得るためには、一次転写の回数や環境などによって変化する中間転写体上のトナー電位を略均一になるように補正し、二次転写性能を向上させる必要がある。
【0008】
特許文献1は、転写材に二次転写する前の中間転写体上のトナー像を帯電する転写前帯電手段を設けたものである。
【0009】
特許文献2は、二次転写前帯電手段の付加帯電後のトナー像の電位と、二次転写手段の電位との差をほぼ一定の値に保つように、電位差制御手段が二次転写前帯電手段の直流電源及び二次転写手段の直流電源を制御するものである。
【特許文献1】特開平10−274892号公報
【特許文献2】特開平11−143255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2に記載のカラー画像形成装置は、二次転写手段の上流側において、スコロトロン帯電器によってトナー像を帯電または除電する二次転写前除電手段を有するもので、トナーの帯電量を補正するため、中間転写体上に一次転写されたトナー像に対してAC、DCなどのコロナ放電による帯電を行い、帯電量を均一化する技術である。
【0011】
特許文献1及び2では、帯電量を均一化する事により、重ね合わせトナー像、即ち、高電位部の総電荷量を低下させると、同時に低電位部(トナー低付着量部)も除電してまいハーフトーン画像荒れ等の画像不良を発生する。
【0012】
トナー付着量が多くトナー層電位が高い場合に発生する転写電荷不足による濃度むらや、転写電荷を大きくしたときの放電発生などを防止するため、二次転写手段の上流側にスコロトロン電極を有する二次転写前除電手段を配置して中間転写体上のトナー像の除電を行っている。
【0013】
二次転写前除電手段ではスコロトロン帯電器を用いている。しかし、スコロトロン帯電器においても、低電位部の電位低下はある程度発生し、単に強い除電を使用とすると、高付着量部の除電は得られるが、低付着量部も低下してしまい、放電が弱いと高付着量部を所望の値まで電位低下させる事ができないという事となり、これらを両立させる事が困難であった。
【0014】
従来の1個の除電器により1回の二次転写前除電を行う場合、二次転写前除電手段に配置した1個の除電器のグリッド電位を、−150V、−100V、−50Vの3段階に設定し、除電前のトナー層電位に対する除電後のトナー層電位を測定した。その結果、1個の除電器では、重ね合わせベタ画像等のトナー高付着量領域の除電と、ハーフトーン画像等のトナー低付着量領域の除電とを両立させる除電後のトナー層電位の制御が達成されず、良好な画像が得られないという結果がえられた。
【0015】
本発明は、スコロトロン帯電器によるトナー層除電が、グリッド電位設定の違いにより、低電位部と高電位部における電位低下の傾きの比率が異なる点に着目し、1回目の除電を高グリッド電位とし、2回目の除電を低グリッド電位とする事により、2回とも同条件で除電を行った場合よりも、低付着量部分の電位低下を小さく抑える事が出来、良好な二次転写性能を得る事によって、高品位の二次転写画像を得るカラー画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的は、下記に記載の発明により達成される。
【0017】
複数の像担持体に形成した複数色のトナー像を一次転写手段により中間転写体に逐次転写して重ね合わせた後、前記中間転写体に担持された重ね合わせトナー像を二次転写手段により一括して転写材に転写するカラー画像形成装置において、
前記中間転写体のトナー像担持面側に対向する側に配置した放電電極とグリッド電極を有する複数の除電器と、前記中間転写体を挟んで前記除電器に対向する位置に配置した対向電極と、を有する二次転写前除電手段を、前記一次転写手段と前記二次転写手段との間に配置し、
複数の前記除電器のうち、前記中間転写体の回動方向上流側に配置した除電器の前記グリッド電極の電位と前記対向電極の電位との差が、
前記中間転写体の回動方向下流側に配置した除電器の前記グリッド電極の電位と前記対向電極の電位との差、に比して大となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカラー画像形成装置によれば、ハーフトーン等のトナー低付着量部分の電位低下を小さく抑える事が可能となり、トナー低付着量部分の画像荒れを防止するとともに、重ね合わせトナー像においても良好な二次転写性能を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を、実施の形態を用いて説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に限られるものではない。
【0020】
[カラー画像形成装置]
図1は本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置Aの全体構成を示す断面図である。
【0021】
このカラー画像形成装置Aは、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、ベルト状の中間転写体7、一次転写手段5Y,5M,5C,5K、二次転写手段8から成る中間転写ユニットと、定着装置11、及び給紙装置20を有する。
【0022】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、像担持体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段6Yを有する。
【0023】
マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、像担持体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段6Mを有する。
【0024】
シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、像担持体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段6Cを有する。
【0025】
黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、像担持体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段6Kを有する。
【0026】
像担持体1Y,1M,1C,1Kとしては、OPC感光体やaSi感光体等の周知のものが用いられるが、OPC感光体が好ましく、特に、負帯電性のOPC感光体が好ましく本実施の形態では、負帯電性のOPCが用いられる。
【0027】
ベルト状の中間転写体7は、半導電性であり、複数の支持ローラ71,72,73,74、及びバックアップローラ75により巻回され、循環移動可能に支持される。本実施の形態では、中間転写体7は、支持ローラ73,74の間が平面状に支持されている。
【0028】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体7上に一次転写手段5Y,5M,5C,5Kにより逐次転写されて(一次転写)、合成されたカラー画像が形成される。
【0029】
給紙装置20の給紙カセット21内に収容された転写材Pは、給紙手段(第1給紙部)22により給紙され、給紙ローラ23,24,25、レジストローラ(第2給紙部)26等を経て、二次転写手段8に搬送され、転写材P上にカラー画像が転写される(二次転写)。
【0030】
カラー画像が転写された転写材Pは、定着装置11により熱と圧力とを加えられ、転写材P上のカラートナー画像(或いは単色トナー画像)が定着されて転写材P上に固定され、排紙ローラ27から排出され、機外の排紙トレイ28上に載置される。
【0031】
一方、二次転写手段8により転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した中間転写体7は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0032】
[一次転写手段]
図2は該カラー画像形成装置Aの要部を示す断面図である。
【0033】
イエロー色の画像を転写する一次転写手段5Yは、一次転写ローラ5YAと、一次転写ローラ5YAに電圧を印加する直流電源5YEとから構成されている。一次転写ローラ5YAは、中間転写体7を介して像担持体1Yに対向し、中間転写体7の内面に摺接する。直流電源5YEは接地されている。
【0034】
マゼンタ色の画像を転写する一次転写手段5Mは、一次転写ローラ5MAと、一次転写ローラ5MAに電圧を印加する直流電源5MEとから構成されている。一次転写ローラ5MAは、中間転写体7を介して像担持体1Mに対向し、中間転写体7の内面に摺接する。直流電源5MEは接地されている。
【0035】
シアン色の画像を転写する一次転写手段5Cは、一次転写ローラ5CAと、一次転写ローラ5CAに電圧を印加する直流電源5CEとから構成されている。一次転写ローラ5CAは、中間転写体7を介して像担持体1Cに対向し、中間転写体7の内面に摺接する。直流電源5CEは接地されている。
【0036】
黒色画像を転写する一次転写手段5Kは、一次転写ローラ5KAと、一次転写ローラ5KAに電圧を印加する直流電源5KEとから構成されている。一次転写ローラ5KAは、中間転写体7を介して像担持体1Kに対向し、中間転写体7の内面に摺接する。直流電源5KEは接地されている。
【0037】
一次転写手段5Y,5M,5C,5Kの各直流電源5YE,5ME,5CE,5KEには、電流値40μA、電圧値+1.5kVが印加される。
【0038】
また、一次転写手段5Y,5M,5C,5Kは、一次転写時以外の場合には、図示しない駆動手段により移動され、中間転写体7の内面から離間して退避する。
【0039】
[二次転写手段]
二次転写手段8は、バックアップローラ75、二次転写ローラ8A、直流電源8E等から構成されている。導電性材料から成るバックアップローラ75は、中間転写体7を介して二次転写ローラ8Aに対向し、中間転写体7の内面に摺接する。
【0040】
バックアップローラ75は直流電圧を印加する直流電源8Eに接続されている。二次転写手段8の直流電源8Eには、電流値50μA、電圧値+3kVが印加される。直流電源8Eは中間転写体7に当接する二次転写ローラ8Aに付着した残留トナーを逆バイアス印加により中間転写体7に転移させてクリーニングする。
【0041】
二次転写ローラ8Aのバックアップローラ75は、一次転写ローラ5YA,5MA,5CA,5KAとほぼ同じ構成をなし、中間転写体7の内面側に圧接する。導電性のバックアップローラ75は、ローラ本体と、ローラ本体の表面に形成された弾性層とにより形成されている。
【0042】
中間転写体7は、ポリアミドあるいはポリイミド等を材料とする単層又は多層ベルトで、体積抵抗率107〜1012Ωcmのものが用いられている。
【0043】
中間転写体7は、二次転写手段8により転写材Pに二次転写した後、クリーニング手段6Aを通過してクリーニングされる。
【0044】
二次転写ローラ8Aは、二次転写時以外の場合には、図示しない駆動手段により移動され、中間転写体7の表面から離間して退避する。
【0045】
[二次転写前除電手段]
中間転写体7に沿った一次転写手段5Kと支持ローラ74との間で、中間転写体7が平面状に支持される位置に、本発明に係る二次転写前除電手段9が配設されている。
【0046】
中間転写方式のカラー画像形成装置において、単色では二次転写性能が良好である場合であっても、重ね合わせ画像では二次転写不良になって、高画質の画像が得られないという問題がある。これは中間転写体7上に形成されるトナー像が1層から最大で4層までの広範囲の付着量を有しており、それぞれの付着量に応じて二次転写条件の適正化がくずれてしまう事による。
【0047】
この問題を解決するために、導電性ブラシや導電性発泡部材等の対向電極を中間転写体7に面接触させて接地を行う事によって従来以上の除電効率の向上が達成される。
【0048】
本発明の二次転写前除電手段9は、中間転写体7の画像担持側に配置された第1の除電器9A1、第2の除電器9A2と、無端ベルト状の中間転写体7の内面側に配置された2個の第1の対向電極9B1、第2の対向電極9B2と、から構成されている。
【0049】
〈第1の除電器9A1、第2の除電器9A2〉
図3は二次転写前除電手段9の断面図である(実施の形態1)。
【0050】
中間転写体7の回動方向上流側に配置された第1の除電器9A1は、放電電極(放電ワイヤ)91A1、グリッド電極92A1、サイドプレート93A1から成るスコロトロン除電極である。
【0051】
放電電極91A1は直流電源E1に接続されている。グリッド電極92A1は中間転写体7のベルト面と間隔をもって対向配置され、直流電源E2に接続されている。サイドプレート93A1は図示しない回路によりグリッド電極92A1と同電位に接続されている。
【0052】
放電電極91A1は、直径が20〜150μmのタングステン、ステンレス鋼、金などの線材を用いることができるが、特に表面が金で形成されていることが好ましい。線材そのものを金で作製するか、あるいは、ステンレス鋼やタングステン等の基材の表面を金で被覆しても良い。金被膜の厚さは、オゾン等の放電生成物の除去効率や製造コスト、放電効率の観点から、平均膜厚で1μm〜5μmが好ましい。
【0053】
グリッド電極92A1は、ワイヤ状のグリッドや、板金にエッチング等によってパターン形成された板状グリッドや、金メッキが施された板状グリッド等が採用される。
【0054】
放電電極91A2にはトナーと逆極性の放電がなされる直流電圧が、グリッド電極92A2にはトナーと同極性の直流電圧が印加される。
【0055】
中間転写体7の回動方向下流側に配置された第2の除電器9A2は、放電電極91A2、グリッド電極92A2、ケーシング93A2から成るスコロトロン除電極である。
【0056】
放電電極91A2は直流電源E3に接続されている。グリッド電極92A2は中間転写体7のベルト面と間隔をもって対向配置され、直流電源E4に接続されている。サイドプレート93A2は図示しない回路によりグリッド電極92A2と同電位に接続されている。
【0057】
放電電極91A2は、放電電極91A1と同様の構成をなす。グリッド電極92A2もグリッド電極92A1と同様の構成をなす。放電電極91A2にはトナーと逆極性の放電がなされる直流電圧が、グリッド電極92A2にはトナーと同極性の直流電圧が印加される。
【0058】
〈第1の対向電極9B1、第2の対向電極9B2〉
二次転写前除電手段9に対向する中間転写体7の内面側には、導電性ブラシ及び導電性ブラシを圧着解除する圧着解除機構で構成される第1の対向電極9B1、第2の対向電極9B2が配設されている。導電性ブラシは、中間転写体7の内面側に摺接し、接地されている。
【0059】
導電性ブラシは、素材はアクリル、ナイロン、ポリエステル等の導電性樹脂素材で構成され、線径はISOにより提唱された番手法による計量単位で0.111テックス乃至0.778テックス、ブラシ密度は12000本/cm2乃至77000本/cm2、原糸抵抗値は100乃至105Ωcmで構成されることが好ましい。
【0060】
第1の対向電極9B1は直流電源E5に接続され、トナーと逆極性の直流電圧が印加される。第2の対向電極9B2は直流電源E6に接続され、トナーと逆極性の直流電圧が印加される。なお、直流電源E5と直流電源E6とを共通化して単一の電源にする事も可能である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
[画像形成条件]
画像形成装置:タンデム型フルカラー複写機(コニカミノルタ8050(登録商標)改造機)、連続複写速度はフルカラーモードでA4判用紙を毎分51枚出力する。
【0063】
図4は、二次転写前除電手段9の要部を示す模式図である(実施の形態2)。
【0064】
本実施例では、発明の効果を確認するために、図2に示した一次転写手段5Y,5M,5C,5K、及び二次転写手段8を配設し、黒色のトナー像を形成する4段目の画像形成部10Kに配置された像担持体1K、帯電手段2K、現像手段4K及びクリーニング手段6Kを取り外して、そこに二次転写前除電手段9を設置したカラー画像形成装置Aで画像を形成した。
【0065】
像担持体1Y,1M,1C:外径φ60mm
転写材Pの搬送ライン速度:220mm/sec
現像剤:キャリアの平均粒径20〜60μm、重合トナーの平均粒径3〜7μm
帯電手段2Y,2M,2C:帯電電圧V0は−700V(可変:左記は標準値)
露光手段3Y,3M,3C:半導体レーザ(波長780nm)、露光時の像形成体表面電位Viは−50V
現像手段4Y,4M,4C:現像スリーブの電位Vdcは−500V(可変:左記は標準値)、現像バイアス電圧交流成分Vacは1kVp−pの矩形波(周波数5kHz)
一次転写ローラ5YA,5MA,5CA:導電性ローラ使用、ローラ押圧50N(ニュートン)、転写電流40μA、転写電圧+1.5kVを印加
二次転写手段8:中間転写体7をバックアップローラ75と二次転写ローラ8Aとで挟み込んだ構成であり、電気抵抗値はともに1×107Ω、温湿度とカウンターとでマトリックスを組んだ電流値テーブルから所定の電流値を選択して印加する。
【0066】
押圧力F:50N(ニュートン)、転写材搬送方向ニップ幅:3mm
二次転写ローラ8Aの弾性層:半導電性NBRソリッドゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、体積抵抗値4×107Ω、外径φ40mm、
中間転写体7:ポリイミド樹脂、シームレス半導電性ベルト(体積抵抗率109Ωcm)、張架テンション50N、線速220mm/sec
[二次転写前除電手段9]
〈第1の除電器9A1、第2の除電器9A2〉
通常、像担持体に使用されるスコロトロン帯電器と同形状の第1の除電器9A1と第2の除電器9A2とを平行に並べて設置した。
【0067】
放電電極91A1には高圧の直流電源E1が、放電電極91A2には高圧の直流電源E2がそれぞれ接続され、0〜400μAの電流が印加される。グリッド電極92A1には高圧の直流電源E3が、グリッド電極92A2には高圧の直流電源E4がそれぞれ接続し、0〜−300Vの電圧が印加される。
【0068】
放電電極91A1,91A2にはトナーと逆極性の放電がなされる直流のバイアス電圧直流電圧が、グリッド電極92A1,92A2には直流電圧が印加できる構成となっている。グリッド電極92A1,92A2の開口率は90%である。
【0069】
本実施の形態においては、放電電極91A1,91A2にはトナーと逆極性の放電がなされる直流電圧が、グリッド電極92A1,92A2には直流電圧が印加できる構成となっている。
【0070】
本実施例では、負の電荷を有するトナー像に対して、二次転写前除電手段9の放電電極91A1,91A2に正の電圧を、グリッド電極92A1,92A2に負の電圧を印加する。
【0071】
サイドプレート93A1,93A2はグリッド電極92A1,92A2と同電位とした。グリッド電極92A1,92A2と中間転写体7との距離は1mmで平行するように設置した。
【0072】
放電電極91A1の幅(中間転写体7の進行方向の長さ)は30mm、長手方向の長さ(中間転写体7の進行方向と直交する長さ)は320mmとした。
【0073】
第1の除電器9A1、第2の除電器9A2に対向する中間転写体7の内面側には、導電性ブラシ及び導電性ブラシを圧着解除する圧着解除機構で構成される第1の対向電極9B1、第2の対向電極91B2がそれぞれ配設されている。
【0074】
導電性ブラシは、原糸の抵抗値が102Ω、線径が3デニール(1デニールは、長さ450mで質量50mgのときの繊維の太さ)、密度が200kF/インチ2(Fはフィラメント数、1インチは25.4mm)、毛長が3mmである。
【0075】
第1の対向電極9B1、第2の対向電極91B2の導電性ブラシの幅(中間転写体7の進行方向の長さ)は30mm、長手方向の長さ(中間転写体7の進行方向と直交する長さ)は320mmとした。
【0076】
中間転写体7の回動方向上流側に配置した第1の除電器9A1のグリッド電極92A1の電位Vg1と、第1の対向電極9B1の電位Vb1との差の絶対値|Vg1−Vb1|が、下流側に配置した第2の除電器9A2のグリッド電極92A2の電位Vg2と第2の対向電極9B2の電位Vb2との差の絶対値|Vg2−Vb2|に比して大となるように設定した(|Vg1−Vb1|>|Vg2−Vb2|)。
【0077】
第1の対向電極9B1、第2の対向電極9B2の導電性ブラシは、それぞれ中間転写体7の内面側に摺接し接地されている場合には、電位Vb1、電位Vb2は0Vである。したがって、|Vg1|>|Vg2|である。
【0078】
発明の効果を確認する方法として、第1の除電器9A1、第2の除電器9A2の除電能力を、中間転写体7の回動方向上流側を下流側に比して小さくした実施例1と、上流側と下流側とを同条件とした比較例1,2,3と、上流側を下流側に比して大きくした比較例4と、における除電前後でのトナー層の電位を測定した結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1において、実施例1では、上流側のグリッド電極92A1の電位Vg1の絶対値を下流側のグリッド電極92A2の電位Vg2の絶対値より大となるように設定した。即ち、上流側のグリット電極92A1及び下流側のグリット電極92A2を、トナー像の電荷と同極性の負電圧に印加し、1回目の除電を−150Vの高グリッド電位とし、2回目の除電を−50Vの低グリッド電位とする事により、トナー低付着量部分のトナー層の電位低下を小さく抑える事ができ、良好な二次転写性を得る事ができる。
【0081】
また、表1において、実施例1では、上流側の放電電極91A1の電流値I1を、下流側の放電電極91A2の電流値I2より大となるように設定した。即ち、上流側の放電電極91A1の電流値I1を350μA、下流側の放電電極91A2の電流値I2を200μAとする事により、トナー低付着量部分のトナー層の電位低下を小さく抑える事ができ、良好な二次転写性を得る事ができる。
【0082】
なお、グリッド電極92A1の電位Vg1、グリッド電極92A2の電位Vg2、放電電極91A1の電流値I1、放電電極91A2の電流値I2は表1の実施例1に示す数値に限定されるものではない。
【0083】
図5は、2個の第1の除電器9A1、第2の除電器9A2により2回の二次転写前除電を行った後のトナー層電位を測定した特性図である。
【0084】
線分aは、2個のグリッド電位Vg1、Vg2による除電前と除電後のトナー層電位を示す。
【0085】
線分b1は比較例1のトナー層電位を示す。上流側の第1の除電器9A1のグリッド電極92A1の電位Vg1を−150V、下流側の第2の除電器9A2のグリッド電極92A2の電位Vg2を同じく−150Vに設定したものである(|Vg1|=|Vg2|)。
【0086】
線分b2は比較例2のトナー層電位を示す。第1の除電器9A1のグリッド電極92A1の電位Vg1を−50V、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2の電位Vg2を同じく−50Vに設定したものである(|Vg1|=|Vg2|)。
【0087】
線分b3は比較例3のトナー層電位を示す。第1の除電器9A1のグリッド電極92A1の電位Vg1を−100V、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2の電位Vg2を同じく−100Vに設定したものである(|Vg1|=|Vg2|)。
【0088】
線分b4は比較例4のトナー層電位を示す。第1の除電器9A1のグリッド電極92A1の電位Vg1を−50V、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2の電位Vg2を−150Vに設定したものである(|Vg1|>|Vg2|)。
【0089】
除電後のトナー層電位は、低付着量トナー層の電位低下を抑制しつつ、高付着量領域において−70〜−80Vの範囲内に安定して良好な電位制御性を得る事ができ、良好な画像形成が達成される。
【0090】
比較例1,3,4では、重ね合わせベタ画像等の高付着量領域の電位低下性能が得られず、高付着量領域での転写不良が発生する。比較例2の線分b2ではハーフトーン画像等の低付着量領域に近い領域での電位が低下して低付着量領域での画像荒れが発生してしまう。
【0091】
図6〜図11は、二次転写前除電手段9の他の実施の形態を示す模式図であり、電源の配置や電圧印加方式の異なるものである。なお、図面に使用されている符号について図4と同じ機能を有する部分には、同符号を付している。また、図4と異なる点を説明する。
【0092】
これらの図に示す二次転写前除電手段9において、次式が成り立つ条件であれば、実施例1と同様の効果が達成される。
【0093】
|Vg1−Vb1|>|Vg2−Vb2|
図6に示す二次転写前除電手段9は、第1の対向電極9B1に直流電源E5を接続し、電位Vb1を印加し、第2の対向電極9B2に直流電源E6を接続し、電位Vb2を印加するものである。
【0094】
図7に示す二次転写前除電手段9は、第1の除電器9A1のグリッド電極92A1と、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2とは共通の直流電源E7に接続され、電位Vgを印加するものである。
【0095】
図8に示す二次転写前除電手段9は、第1の対向電極9B1と第2の対向電極9B2は共通の直流電源E8に接続され、電位Vbを印加するものである。
【0096】
図9に示す二次転写前除電手段9は、1個の除電器9A内には、2本の放電電極91A1,91A2が架設され、放電電極91A1は直流電源E1に、放電電極91A2は直流電源E2にそれぞれ接続されているものである。
【0097】
図10に示す二次転写前除電手段9は、第1の対向電極9B1と第2の対向電極9B2は図8と同様な共通の直流電源E8に接続され、電位Vbが印加されるものである。
【0098】
図11に示す二次転写前除電手段9では、1個の除電器9A内に2本の放電電極91A1,91A2が架設されていて、放電電極91A1は直流電源E1に、放電電極91A2は直流電源E2にそれぞれ接続されている。第1の除電器9A1のグリッド電極92A1と、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2とは共通の直流電源E7に接続され、電位Vgが印加される。
【0099】
[実施例2]
図12は、実施例2の二次転写前除電手段9の要部を示す模式図である。なお、図面に使用されている符号について図6と同じ機能を有する部分には、同符号を付している。また、図6と異なる点を説明する。
【0100】
実施例2の二次転写前除電手段9は、中間転写体7の回動方向上流側から順に、第1の除電器9A1と第1の対向電極9B1、第2の除電器9A2と第2の対向電極9B2、第3の除電器9A3と第3の対向電極9B3が配列されている。
【0101】
第1の除電器9A1のグリッド電極92A1は直流電源E3を接続し電位Vg1が印加され、第2の除電器9A2のグリッド電極92A2は直流電源E4を接続し電位Vg2が印加され、第3の除電器9A3のグリッド電極92A3は直流電源E9を接続し電位Vg3が印加される。
【0102】
第1の対向電極9B1は直流電源E5を接続し電位Vb1が印加され、第2の対向電極9B2は直流電源E6を接続し電位Vb2が印加され、第3の対向電極9B3は直流電源E10を接続し電位Vb3が印加される。
【0103】
実施例2においては、最上流に位置する第1の除電器9A1と第1の対向電極9B1の電位差の絶対値|Vg1−Vb1|、中間に位置する第2の除電器9A2と第2の対向電極9B2の電位差の絶対値|Vg2−Vb2|、最下流に位置する第3の除電器9A3と第3の対向電極9B3の電位差の絶対値|Vg3−Vb3|、を下記の関係式を満たすように設定する。
【0104】
|Vg1−Vb1|≧|Vg2−Vb2|≧|Vg3−Vb3|
このように3個の除電器9A1,9A2,9A3と3個の対向電極9B1,9B2,9B3によりそれぞれ除電電位を設定する事によって、除電後のトナー層電位は、トナー低付着量領域の電位低下が抑制され、トナー中付着量領域からトナー高付着量領域に亘って更に安定して良好な電位制御性を得る事ができ、高画質のカラー画像形成が達成される。
【0105】
上記の各実施例では、上流側と下流側の中間転写体7への放電出力、即ち、中間転写体7に到達するイオン量を変える手段として、放電電極91A1,91A2等の出力電位を変えたが、その他の方法によっても同様の効果を得ることが可能である。
【0106】
即ち、グリッド電極92A1,92A2等の開口率により出力電位を変える方法がある。例えば、上流側の開口率を90%に設定し、下流側の開口率を上流側の開口率より小さい80%に設定する。
【0107】
或いは、上流側の放電電極91A1の中間転写体7からの距離を7mmに設定し、下流側の放電電極91A2の中間転写体7からの距離を上流側より大きい8.5mmに設定する。
【0108】
このようにグリッド電極92A1,92A2、及び放電電極91A1,91A2を設定する事により、ハーフトーン等のトナー低付着量部分の電位低下を小さく抑える事が可能となり、トナー低付着量部分の画像荒れを防止するとともに、重ね合わせトナー像においても良好な二次転写性能を得ることが出来る。
【0109】
また、本実施の形態では、中間転写体7として中間転写ベルトを用いた例について説明したが、本発明は、他の形状の中間転写体を用いるもの、例えば、中間転写ドラムにも適用する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態に係るカラー画像形成装置の全体構成を示す断面図。
【図2】カラー画像形成装置の要部を示す断面図。
【図3】二次転写前除電手段の断面図(実施の形態1)。
【図4】二次転写前除電手段の要部を示す模式図(実施の形態2)。
【図5】本発明に係る2個の除電器により2回の二次転写前除電を行った後のトナー層電位を測定した特性図。
【図6】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図7】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図8】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図9】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図10】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図11】二次転写前除電手段の他の実施の形態を示す模式図。
【図12】実施例2の二次転写前除電手段の要部を示す模式図。
【符号の説明】
【0111】
1Y,1M,1C,1K 像担持体
5Y,5M,5C,5K 一次転写手段
7 中間転写体
8 二次転写手段
9 二次転写前除電手段
9A 除電器
9A1 第1の除電器
9A2 第2の除電器
9A3 第3の除電器
9B1 第1の対向電極
9B2 第2の対向電極
9B3 第3の対向電極
91A1,91A2 放電電極(放電ワイヤ)
92A1,92A2,92A3 グリッド電極
93A1,93A2 サイドプレート
A カラー画像形成装置
E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9,E10 直流電源
Vg,Vg1,Vg2,Vg3,Vb,Vb1,Vb2,Vb3 電位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の像担持体に形成した複数色のトナー像を一次転写手段により中間転写体に逐次転写して重ね合わせた後、前記中間転写体に担持された重ね合わせトナー像を二次転写手段により一括して転写材に転写するカラー画像形成装置において、
前記中間転写体のトナー像担持面側に対向する側に配置した放電電極とグリッド電極を有する複数の除電器と、前記中間転写体を挟んで前記除電器に対向する位置に配置した対向電極と、を有する二次転写前除電手段を、前記一次転写手段と前記二次転写手段との間に配置し、
複数の前記除電器のうち、前記中間転写体の回動方向上流側に配置した除電器の前記グリッド電極の電位と前記対向電極の電位との差が、
前記中間転写体の回動方向下流側に配置した除電器の前記グリッド電極の電位と前記対向電極の電位との差、に比して大となるように設定したことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項2】
上流側に配置された前記除電器の前記放電電極の電位の絶対値が、下流側に配置された前記除電器の前記放電電極の電位の絶対値に比して大であることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。
【請求項3】
上流側に配置された前記除電器の前記グリッド電極の開口率が、下流側に配置された前記除電器の前記グリッド電極の開口率に比して大であることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。
【請求項4】
上流側に配置された前記除電器の前記放電電極と前記グリッド電極との距離が、下流側に配置された前記除電器の前記放電電極と前記グリッド電極との距離より小であることを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。
【請求項5】
上流側に配置された前記除電器の放電電極及び下流側に配置された前記除電器の放電電極が、前記中間転写体に担持されたトナー像の電荷と逆極性の電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項6】
上流側に配置された前記除電器のグリット電極及び下流側に配置された前記除電器のグリット電極が、前記中間転写体に担持されたトナー像の電荷と同極性の電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のカラー画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−225752(P2007−225752A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45063(P2006−45063)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】