説明

カラー画像表示装置、カラー画像表示方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】同じ色でも面積が大きくなると明度が高く見え、逆に面積が小さくなると明度が低く見えるという色彩の面積効果によって重要な色の見た目の色が異なって見えてしまう現象を抑制して、好ましい色再現を実現できる表示装置を提供する。
【解決手段】1画面分のカラー表示用データを格納する格納手段32と、明度を補正する対象色を指定する対象色指定手段34と、カラー表示用データのうちの対象色を有する連続した画素の数を積算して対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する対象色面積算出手段42と、1画面の全画像面積に対する対象色面積の比に基づいて、対象色を有する連続した画素の明度データを変更する明度補正手段46と、明度データを変更した後の対象色を有する連続した画素のデータを含めて1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する表示手段48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像表示装置およびカラー画像表示方法に関するものである。例えば、一つの画素が3原色の色で表示可能であり、3原色の色の混合比に対応する色信号を入力し表示するカラー画像表示装置およびカラー画像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示用のデバイスとしてCRT、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP等が使用されており、一般的な基本色としてはRGB(赤緑青)3原色が用いられている。
【0003】
こうした表示装置において、入力画像を忠実に再現させることは重要な要素である。入力画像を忠実に再現させる補正は、従来から種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、色彩の面積効果を補償する発明が開示されている。
【0004】
色彩の面積効果とは、同じ色でもその領域の面積の大小によって、明度が異なって見える現象である。色彩の面積効果によれば、同じ色でも面積が大きくなると明度が高く見え、逆に面積が小さくなると明度が低く見えると言われる。特許文献1では、入力された画像を変倍して、その変倍後の画像を出力する画像処理装置において、入力画像と出力画像との間の色彩の面積効果を補償する手法が提案されている。変倍後の画像データの明度値をその変倍の倍率に応じて補正することで、入力画像と出力画像の色彩について同じ印象をユーザーに与えることができる。
【0005】
図6および図7に、特許文献1に開示された手法における明度の補正手順を示す。図8(a)は読み込む原稿の例を示しており、ここでは、図8(a)に示す原稿を読み込む場合について説明する。図6〜図8を用いて、特許文献1の手法による明度の補正手順について説明する。
【0006】
カラー複写機で、ユーザがカラーコピーの条件を設定する過程を想定する。
【0007】
「オート濃度」モードが選択されているとき、タッチパネルにはモニタ画像を出力することを指示するための「画質モニタ」キーが表示される。ユーザがこの「画質モニタ」キーを押すと、CPUが、以下のように図6に示す画質モニタモードの処理を実行する。
【0008】
画質モニタモードが選択される(S601)と、まず、原稿ガラス上に載置されている図8(a)の原稿のサイズを、原稿サイズ検出センサの出力に基づいて判別する(S602)。
【0009】
次に、現在選択されている用紙サイズを判別する(S603)。そして、ユーザの希望するモニタ画像の数を入力させるために、タッチパネルに、「モニタの画像数を選んでください」と表示するとともに、倍率表示部に「AUTO(自動)」を表示する(S604)。ここで「AUTO(自動)」と表示する理由は、1枚の用紙の中に全てのモニタ画像を収めるために、モニタ画像数が2、4、8と多くなるにつれて変倍率を×70%、×50%、×35%と次第に小さくするからである。
【0010】
次に、CPUは、入力されたモニタ画像数に応じて変倍率を演算して設定する(S605)。
【0011】
次に、CPUは、明度補正処理部を制御して、図7に示す明度補正処理を行なう(S606)。具体的には、図7に示すように、CPUの制御に応じて明度補正処理部が明度補正テーブルを参照して(S701)、モニタ画像の倍率(S605の処理で設定された変倍率)と入力された原稿画像の明度値に応じてその明度値を補正する(S702)。
【0012】
明度補正処理部は、明度補正テーブルを参照して、変倍が拡大であるとき明度値を減少させる補正を行なう一方、変倍が縮小であるとき明度値を増加させる補正を行なう。この理由は、色彩の面積効果によれば、同じ色でも面積が大きくなると明度は高く見え、逆に面積が小さくなると明度は低く見えるから、それを補償するためである。また、明度補正テーブルは、入力された原稿画像の明度値が高ければ、明度値に対する補正量が大きくなるように、逆に、入力された原稿画像の明度値が低ければ、元の画像データの明度値に対する補正量を小さくするように設定されている。この理由は、入力画像が肌色のように、明度値の高いものであれば色彩の面積効果が大きく、逆に入力画像が明度値の低いものであれば色彩の面積効果が小さくなるという、これらの効果の違いを補償するためである。
【0013】
上記した明度補正の効果について、モニタ画像の出力例を用いて、以下に具体的に説明する。
【0014】
図8(b)は、モニタ画像の出力例を示している。図8(a)の入力原稿に対して、モニタ画像数として8が指定された場合の出力例であり、ここでは図8(b)の出力用紙130のサイズは、図8(a)の入力原稿サイズと同じサイズが指定されて出力されたものとする。ここで、入力原稿の画像120の明度値をV=30とする。
【0015】
図8(a)の入力原稿に対して、図8(b)に示すように、8個のモニタ画像121〜128が明度順に1ページ内に並べて配置されたものとなる。図8(b)では、明度値が高いものほど斜線の密度が疎に、明度値が低いものほど斜線の密度が密に描かれている。
【0016】
図8(b)の8個のモニタ画像のうち、モニタ画像124が、図8(a)の入力原稿120と同じ明度を示す画像である。図8(a)の入力原稿と図8(b)の出力サイズは同じなので、モニタ画像124は画像120が縮小されて出力されることになるため、上記した明度補正処理によってモニタ画像124の明度値Vは画像120の明度値Vよりも明るくなるように補正され、その明度値はV=35である。しかし、色彩の面積効果によって、モニタ画像124がユーザに与える印象は入力原稿の画像120がユーザに与える印象と一致する。
【0017】
そして、モニタ画像124よりも明るいモニタ画像123、122、121の明度値は、それぞれ順に、(V+2)=37、(V+4)=39、(V+6)=41であり、モニタ画像124よりも暗いモニタ画像125、126、127、128の明度値は、それぞれ順に、(V−2)=33、(V−4)=31、(V−6)=29、(V−8)=27である。
【0018】
特許文献1では、以上のような手順で明度の補正が行なわれる。
【特許文献1】特開2001−339602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上述した従来の明度補正方法では、表示領域全体の面積による影響を考慮していないので、表示領域全体の面積が変わると、ユーザが受ける明るさの印象が変わってしまうという問題がある。
【0020】
特許文献1に記載の明度補正方法では、変倍率すなわち元の画像の面積と出力画像の面積に基づいてのみ明度の補正量を決定しており、表示領域全体の面積については考慮していない。
【0021】
しかし、画像の大きさが同じであっても、表示領域全体の面積が変わると、明度が同じ画像でも、ユーザがその画像から受ける明るさの印象は変わってくる。図8(c)は、図8(b)と同じ画像を、図8(b)の出力用紙130よりも大きい4倍のサイズの出力用紙131に出力した例を示している。図8(c)の破線で示す部分は、出力用紙131の用紙サイズの範囲を示している。
【0022】
図8(c)に示すモニタ画像121〜128は、図8(b)に示すモニタ画像121〜128と全く同じもの、すなわち明度も全て同じにして出力したものであるが、例えば同じ明度のモニタ画像124について見ると、ユーザーは、図8(c)の方が図8(b)よりも暗い印象を受けてしまう。これは、両者のモニタ画像124が同じ大きさであっても、図8(c)の方が出力用紙全体に対する面積比が小さくなっているためである。
【0023】
特許文献1に記載の明度補正方法では、図8(b)の出力用紙130に出力する場合も、それよりサイズの大きい図8(c)の出力用紙131に出力する場合も、どちらのモニタ画像124も同じ明度で出力することになり、その結果ユーザは、図8(b)と図8(c)では、同じ明度の両者のモニタ画像124について異なる明るさであるという印象を受けてしまうことになる。
【0024】
本発明は、上述した従来の課題を解決するもので、表示領域全体の面積による影響も考慮して、面積効果による色の見え方の違和感を減少させる、カラー画像表示装置およびカラー画像表示方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
1画面分のカラー表示用データを格納する格納手段と、
明度を補正する対象色を指定する対象色指定手段と、
前記カラー表示用データのうちの前記対象色を有する連続した画素の数を積算して、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する対象色面積算出手段と、
前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記比が大きいほど暗くなり前記比が小さいほど明るくなるように、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、明度補正手段と、
明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて、前記1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する表示手段とを備えたカラー画像表示装置である。
【0026】
また、第2の本発明は、
さらに、全画像面積に対する対象色面積の比の値が大きさ順に所定の幅ごとに段階的にグループ分けされ、明度の変更度合いを示す補正倍率が前記グループごとに設定されている明度補正倍率テーブルを備え、
前記明度補正手段は、前記明度補正倍率テーブルに基づいて、前記比が属するグループの補正倍率を用いて前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、第1の本発明のカラー画像表示装置である。
【0027】
また、第3の本発明は、
前記明度補正手段は、前記比が予め決められた所定の値の場合には前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更せず、前記所定の値より大きい場合には前記明度データを暗くなるように変更し、前記所定の値より小さい場合には前記明度データを明るくなるように変更する、第1の本発明のカラー画像表示装置である。
【0028】
また、第4の本発明は、
前記対象色指定手段は、色相、彩度、明度の組み合わせにより、前記対象色を指定する、第1の本発明のカラー画像表示装置である。
【0029】
また、第5の本発明は、
積算された前記連続した画素の数が予め決められた所定数未満の場合には、前記明度補正手段は、前記対象色の画素の明度データを変更しない、第1の本発明のカラー画像表示装置である。
【0030】
また、第6の本発明は、
前記対象色面積算出手段は、X座標またはY座標が同一である前記対象色を有する連続した画素の数が、所定の画素数以上となる画素のみを積算する、第1の本発明のカラー画像表示装置である。
【0031】
また、第7の本発明は、
1画面分のカラー表示用データを格納する格納ステップと、
明度を補正する対象色を指定する対象色指定ステップと、
前記カラー表示用データのうちの前記対象色を有する連続した画素の数を積算して、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する対象色面積算出ステップと、
前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記比が大きいほど暗くなり前記比が小さいほど明るくなるように、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、明度補正ステップと、
明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて、前記1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する表示ステップとを備えたカラー画像表示方法である。
【0032】
また、第8の本発明は、
第7の本発明のカラー画像表示方法の、1画面分のカラー表示用データを格納する前記格納ステップ、明度を補正する対象色を指定する前記対象色指定ステップ、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する前記対象色面積算出ステップ、前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する前記明度補正ステップ、明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する前記表示ステップ、を実行するためにコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0033】
また、第9の本発明は、
第8の本発明のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータで利用可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、表示領域全体の面積による影響も考慮して、面積効果による色の見え方の違和感を減少させる、カラー画像表示装置およびカラー画像表示方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0036】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態の表示装置30の構成図を示す。
【0037】
本実施の形態1の表示装置30は、書き込み手段31、画像メモリ32、信号変換手段33、対象色指定手段34、対象色頻度算出手段35、対象色頻度判定手段36、画素信号抽出手段38、X方向ヒストグラム作成手段39、ベタ画像抽出手段40、対象画像位置記憶手段41、面積演算手段42、倍率演算手段43、補正明度決定手段44、対象画像判定手段45、RGB信号補正手段46、読み込み手段47、RGB表示手段48から構成される。
【0038】
以下、本実施の形態1の表示装置30の各構成部分の動作について説明する。
【0039】
書き込み手段31は、時系列で入力されるRGB信号を画像メモリ32に記録する手段である。画像メモリ32は、入力されたRGB信号を画面の位置に対応したアドレスに格納するメモリであり、色補正を行おうとする1フレームの画像が記録される。アドレスを指定して、RGB信号を書き込みまたは読み出すことができる。
【0040】
信号変換手段33は、RGB信号から色相、彩度、明度の各信号を演算し作成する手段である。
【0041】
対象色指定手段34は、補正を行いたい対象画像の色(以降、対象色と呼ぶ)を、色相、彩度、明度の組み合わせにより指定する手段である。なお、ここで指定する色相、彩度、明度の組み合わせは、それぞれの値に多少の範囲を持たせて指定する方が、実用的である。
【0042】
対象色頻度算出手段35は、画像メモリ32に記録された1フレームの画像について、対象色指定手段34で指定された対象色の頻度を算出する手段である。
【0043】
対象色頻度判定手段36は、対象色頻度算出手段35で算出された対象色の頻度が、予め設定されている閾値以上かどうかを判定する手段である。対象色の頻度が閾値以上の場合には、画素信号抽出手段38に通知する頻度判定信号を1(True)とする。なお、この場合の閾値が、本発明の予め決められた所定数の一例にあたる。対象色の頻度がこの閾値未満の場合は、ハッチング等の小さな領域と判断されるので、このような小さな領域を対象色の領域に含めないようにする。
【0044】
画素信号抽出手段38は、対象色頻度判定手段36から通知される頻度判定信号が1(True)のとき、1フレームの画像の各画素の中から対象色を有する画素を抽出する手段である。
【0045】
X方向ヒストグラム作成手段39は、画像のX方向(またはY方向)に対する頻度ヒストグラムを作成する手段である。対象色を持つ画素が、X方向ライン(またはY方向ライン)にどれだけあるかを調べることにより、この頻度ヒストグラムを作成できる。
【0046】
ベタ画像抽出手段40は、連続した対象色を有する画素の領域を抽出する手段である。対象色を有する同一のX方向アドレス値の画素が、予め決められた所定の画素数以上の画素を、対象色を有する画素の領域として抽出する。そして、対象色を有する画素の領域があった場合には、「ベタ画像が存在すること」をベタ画像判定信号により対象画像位置記憶手段41に通知する。
【0047】
対象画像位置記憶手段41は、ベタ画像抽出手段40からのベタ画像判定信号によりベタ画像が存在すると通知された場合に、対象色を有する対象画像が画面のどの位置に存在するかを記憶する手段である。
【0048】
面積演算手段42は、対象色を有する対象画像の面積を、ベタ画像抽出手段40から取得する、ベタ画像であると判定された対象色を有する画素の頻度を累積することにより算出する手段である。
【0049】
倍率演算手段43は、対象画像の明度変更の補正倍率の設定を行なう手段である。
【0050】
補正明度決定手段44は、倍率演算手段43で設定された補正倍率を、対象色の明度に乗じることで補正後の対象色の明度とする、補正後の対象色の明度(以降、補正明度と呼ぶ)を決定する手段である。
【0051】
対象画像判定手段45は、対象画像位置記憶手段41より与えられる対象色の位置情報が、読み込み手段47から指定される読み込みアドレスと等しいかどうかを判定する手段である。読み込みアドレスと等しいとき、対象画像判定手段45は、その読み込みアドレスの画素が対象色の画素であると判断し、RGB信号補正手段46への対象画像判定信号を、1(True)とする。
【0052】
RGB信号補正手段46は、対象画像判定手段45から通知される対象画像判定信号と、読み込み手段47から指定される読み込みアドレスによって画像メモリ32から読み出されるRGB信号と、補正明度決定手段44から取得する補正明度とから、明度データを補正したRGB信号79を作成する手段である。RGB信号補正手段46は、対象画像判定信号が1(True)のとき、画像メモリ32から読み出されるRGB信号を変更し、その明度データが補正明度となるようにRGB信号79を作成する。
【0053】
読み込み手段47は、アドレスを指定して、画像メモリ32に記録されているRGB信号を取り出す手段である。画像メモリ32から読み出されたRGB信号は、RGB信号補正手段46を経て読み込み手段47に入力される。また、読み込み手段47は、RGB信号補正手段46を経て入力されたRGB信号から、RGB表示手段48に映像を表示させるための形式に合わせた同期信号とRGB信号を作成し、出力する手段でもある。
【0054】
RGB表示手段48は、読み込み手段47から入力される同期信号とRGB信号から、映像を表示する手段である。
【0055】
なお、表示装置30が、本発明のカラー画像表示装置の一例にあたる。また、画像メモリ32が、本発明の格納手段の一例にあたる。また、対象色頻度算出手段35、対象色頻度判定手段36、画素信号抽出手段38、X方向ヒストグラム作成手段39、ベタ画像抽出手段40、面積演算手段42を組み合わせたものが、本発明の対象色面積算出手段の一例にあたる。また、倍率演算手段43、補正明度決定手段44、RGB信号補正手段46を組み合わせたものが、本発明の明度補正手段の一例にあたる。また、読み込み手段47とRGB表示手段48を組み合わせたものが、本発明の表示手段の一例にあたる。
【0056】
次に、本実施の形態1の表示装置30において明度を補正する動作について説明する。
【0057】
図2に、本実施の形態1で明度補正を行いたい表示画面の例を示す。全表示領域11は、画面上で表示できる全体領域であり、対象画像10の部分が、明度補正を行わせる色の領域を示している。
【0058】
図3は、本実施の形態1の明度の補正手順を示している。
【0059】
まず、対象色指定手段34で、補正を行いたい対象色を指定する(S301)。ここでは、対象色として図2の対象画像10の部分の色を指定するものとする。対象色の、色相、彩度、明度を設定することにより、対象画像10を指定する。なお、S301の処理が、本発明の対象色指定ステップの一例にあたる。
【0060】
次に、書き込み手段31が、時系列で入力されるRGB信号を画像メモリ32に記録する。なお、この画像メモリ32にRGB信号を格納する処理が、本発明の格納ステップの一例にあたる。
【0061】
次に、対象色頻度算出手段35は、色補正を行いたいある全体画像(ここでは、全表示領域11)について、対象色を有する対象画像10の頻度を抽出する(S302)。
【0062】
ここで、対象色頻度判定手段36が、対象色の頻度が予め決められている閾値よりも大きいと判定した場合(S303)には、X方向ヒストグラム作成手段39は、画素信号抽出手段38で抽出された対象色を有する画素から、対象色を有する領域すなわち対象画像10について、画像のX方向(Y方向でもよい)に対する頻度ヒストグラムを作成する(S304)。
【0063】
図2の全表示領域11の下に、全表示領域11内の対象色の頻度ヒストグラムの例を示しており、X方向ヒストグラム作成手段39は、このような頻度ヒストグラムを作成する。図2の場合には、全表示領域11内で対象色を有する領域は対象画像10の部分だけなので、その頻度ヒストグラムは図2に示すようなヒストグラムとなる。
【0064】
そして、ベタ画像抽出手段40は、X方向ヒストグラム作成手段39で作成された頻度ヒストグラムより、対象画像10からベタ画像の領域を抽出する(S305)。
【0065】
ベタ画像の抽出は、X方向の各アドレスにおける対象色画素の頻度を用いて行う。図4は、X方向のアドレスに対する対象色を有する画素の頻度の一例を示している。この図4の頻度ヒストグラムを用いて、その頻度が所定のしきい値以上で所定画素数以上連続している領域をベタ部と判定し、それ以外の領域をベタ部ではない(非ベタ部)と判定する。図4の場合には、対象色の頻度が所定のしきい値を超えているX〜Xの範囲をベタ部、それ以外を非ベタ部と判定する。なお、この場合のしきい値が、本発明の所定の画素数の一例にあたる。
【0066】
次に、面積演算手段42が、対象画像10内のベタ部の領域の面積を演算する(S306)。ベタ部の領域の面積は、ベタ部の領域の対象色を有する画素の頻度の累積により求める。ここでは、図2に示すように、対象色を有する対象画像10の領域は1つの領域なので、対象画像10の領域そのものがベタ画像の領域と判定されるので、対象画像10の面積が算出されることになる。
【0067】
なお、S304〜S306の処理が、本発明の対象色面積算出ステップの一例にあたる。
【0068】
次に、倍率演算手段43が、ここで求められた対象画像10の面積を用いて、対象色の明度変更の補正倍率の設定を行ない(S307)、補正明度決定手段44が、その補正倍率を対象色の明度データに乗じることで新しい明度データ(補正明度)を決定する(S308)。
【0069】
S303の処理において、対象色の頻度が予め決められている閾値以下であると判定された場合は、上記の補正明度の決定処理(S304〜S308)は行なわない。
【0070】
S307の処理で設定される補正倍率は、係数A、対象画像10の面積、全画像の面積(全表示領域11の面積)を用いて、例えば数1によって与えられる。
【0071】
【数1】


数1において、例えば、対象画像面積が全画像面積の1/4のときに明度の変更をせず、対象画像面積が全画像面積の1/4より大きいときに明度を下げ、小さいときに明度を上げたいとした場合には、係数A=2とすればよい。
【0072】
図5(a)は、係数A=2とした場合の、数1で示される、補正倍率と、対象画像面積および全画像面積の関係を示している。
【0073】
この場合、例えば、対象画像面積/全画像面積=1/4の場合、数1より補正倍率は1となる。そして、例えば、対象画像面積/全画像面積=1/16の場合には、補正倍率は2となり、明度を上げることができ、対象画像面積/全画像面積=1の場合には、補正倍率は0.5となり、明度を下げることができる。
【0074】
なお、この場合における、明度の変更を行わない1/4という面積比(対象画像面積/全画像面積)の値が、本発明の予め決められた所定の値の一例にあたる。
【0075】
そして、対象画像判定手段45は、対象画像位置記憶手段41より与えられる対象画像10の位置情報が、読み込み手段47から指定される読み込みアドレスと等しいかどうかを判定し、等しいときには、対象画像判定信号を1(True)としてRGB信号補正手段46に通知する。
【0076】
RGB信号補正手段46は、対象画像判定信号と、画像メモリ32から読み出されるRGB信号と、補正明度決定手段44から取得する補正明度75とから、読み込み手段47に入力するRGB信号を作成する。RGB信号補正手段46は、対象画像判定信号が1(True)のとき、画像メモリ32から読み出されるRGB信号を変更し、明度データを補正明度のデータとしたRGB信号を作成する。
【0077】
なお、S307およびS308の処理と、ここでRGB信号補正手段46が補正明度のデータを有するRGB信号を作成する処理とを合わせた処理が、本発明の明度補正ステップの一例にあたる。
【0078】
読み込み手段47は、読み込みアドレスを指定して画像メモリ32に記録されているRGB信号を取り出す。画像メモリ32から取り出されるRGB信号は、RGB信号補正手段46を経て、読み込み手段47に入力される。読み込み手段47は、入力されたRGB信号から、RGB表示手段48によって表示させるための同期信号およびRGB信号を作成し、RGB表示手段48に入力する。
【0079】
RGB表示手段48は、読み込み手段47から入力された同期信号およびRGB信号から、映像を表示する。なお、RGB表示手段48が映像を表示する処理が、本発明の表示ステップの一例にあたる。
【0080】
なお、S303の処理で対象色頻度判定手段36により対象色の領域が無いと判定された場合、すなわち頻度判定信号が1(True)でない場合は、図3に示すように、X方向ヒストグラム作成手段39、ベタ画像抽出手段40、対象画像位置記憶手段41、面積演算手段42、倍率演算手段43、補正明度決定手段44の処理を行なう必要はなく、明度変更は行なわなくてよい。
【0081】
また、本実施の形態1では、S301の処理で対象色指定手段34は、色相、彩度、明度の組み合わせにより対象色を指定することとしたが、必ずしもこれらの色の3要素の組み合わせで指定しなくてもよく、これらの3要素のうちのいずれかの要素、または2つの要素の組み合わせにより対象色を指定するようにしてもよい。
【0082】
また、本実施の形態1では、倍率演算手段43で補正倍率を求める処理を、数1を用いて算出することとしたが、全画像面積に対する対象画像面積の比に関連づけられた補正倍率を持つ明度補正倍率テーブルを設けて、この明度補正倍率テーブルを用いて補正倍率を決定するようにしてもよい。
【0083】
図5(b)は、明度補正倍率テーブルを用いる場合の、明度補正倍率テーブルに設定される面積比(対象画像面積/全画像面積)とそれに対応づけられる補正倍率の一例を示している。このように面積比を所定の幅ごとにグループ分けし、そのグループ毎に補正倍率を設定した明度補正倍率テーブルを用いることにより、面積比から補正倍率を求めることができる。
【0084】
なお、表示させるディスプレイの特性に応じて適正な明度補正が行われるように、倍率演算手段43で使用される補正倍率の計算式やその係数、明度補正倍率テーブルを、ディスプレイ毎にその特性に合ったものを使用するようにする。
【0085】
以上に説明したように、本発明のカラー画像表示装置またはカラー画像表示方法を使用することにより、表示領域全体の面積が変わっても、面積効果による色の見え方の違和感をユーザに感じさせないように表示させることができる。
【0086】
例えば、図8(b)と図8(c)のように全画像面積(130および131)が異なる場合でも、図8(b)の画像124と図8(c)の画像124が同じ明るさに見えるように、図8(c)の画像124の明度を図8(b)の画像124の明度よりも下げて、ユーザが同じ明るさと感じるようにすることができる。
【0087】
また、特許文献1に示される従来技術では、「入力された画像を変倍して、その変倍後の画像を出力する」システムでない場合には、明度を補正することができなかった。例えば、表示ディスプレイに、ある色をもつ対象画像が色を変えずに面積を変えながら、複数回表示されているような場合などには対応できなかった。本発明のカラー画像表示装置またはカラー画像表示方法では、このような場合にも適用でき、ある画像が色を変えずに面積を変えながら複数回表示されるような場合でも、ユーザにその画像の明るさが変わっていくような印象を与えることなく表示することができる。
【0088】
このように、本発明のカラー画像表示装置またはカラー画像表示方法を用いると、同じ色でも面積が大きくなると明度が高く見え、逆に面積が小さくなると明度が低く見える現象(面積効果)を相殺することができ、忠実な色味の伝達が可能となる。
【0089】
なお、本発明のプログラムは、上述した本発明のカラー画像表示方法の、格納ステップ、対象色指定ステップ、対象色面積算出ステップ、明度補正ステップ、表示ステップ、の全部又は一部のステップの動作をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0090】
また、本発明の記録媒体は、上述した本発明のカラー画像表示方法の、格納ステップ、対象色指定ステップ、対象色面積算出ステップ、明度補正ステップ、表示ステップ、の全部又は一部のステップの動作をコンピュータにより実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能かつ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協働して利用される記録媒体である。
【0091】
なお、上記本発明の上記「一部のステップ」とは、それらの複数のステップの内の、一つ又は幾つかのステップを意味する。
【0092】
また、本発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
【0093】
また、記録媒体としては、ROM等が含まれる。
【0094】
また、上述した本発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
【0095】
なお、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係るカラー画像表示装置およびカラー画像表示方法は、表示領域全体の面積による影響も考慮して、面積効果による色の見え方の違和感を減少させる効果を有し、3原色の色の混合比に対応する色信号を入力し表示するカラー画像表示装置およびカラー画像表示方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態1の表示装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1で明度補正を行いたい表示画面の例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の明度の補正手順を示す図
【図4】本発明の実施の形態1におけるベタ画像を抽出する方法を説明する図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における、補正倍率と面積比(対象画像面積/全画像面積)の関係の一例を示した図、(b)本発明の実施の形態1における、明度補正倍率テーブルに設定される補正倍率と面積比(対象画像面積/全画像面積)の関係の一例を示した図
【図6】従来の明度を補正する際の画質モニタモードの処理手順を示す図
【図7】従来の明度を補正する際の明度補正処理部の処理手順を示す図
【図8】(a)読み込む原稿の例を示す図、(b)モニタ画像の出力例を示す図、(c)サイズの異なる用紙にモニタ画像を出力する例を示す図
【符号の説明】
【0098】
30 表示装置
31 書き込み手段
32 画像メモリ
33 信号変換手段
34 対象色指定手段
35 対象色頻度算出手段
36 対象色頻度判定手段
38 画素信号抽出手段
39 X方向ヒストグラム作成手段
40 ベタ画像抽出手段
41 対象画像位置記憶手段
42 面積演算手段
43 倍率演算手段
44 補正明度決定手段
45 対象画像判定手段
46 RGB信号補正手段
47 読み込み手段
48 RGB表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1画面分のカラー表示用データを格納する格納手段と、
明度を補正する対象色を指定する対象色指定手段と、
前記カラー表示用データのうちの前記対象色を有する連続した画素の数を積算して、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する対象色面積算出手段と、
前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記比が大きいほど暗くなり前記比が小さいほど明るくなるように、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、明度補正手段と、
明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて、前記1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する表示手段とを備えたカラー画像表示装置。
【請求項2】
さらに、全画像面積に対する対象色面積の比の値が大きさ順に所定の幅ごとに段階的にグループ分けされ、明度の変更度合いを示す補正倍率が前記グループごとに設定されている明度補正倍率テーブルを備え、
前記明度補正手段は、前記明度補正倍率テーブルに基づいて、前記比が属するグループの補正倍率を用いて前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、請求項1に記載のカラー画像表示装置。
【請求項3】
前記明度補正手段は、前記比が予め決められた所定の値の場合には前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更せず、前記所定の値より大きい場合には前記明度データを暗くなるように変更し、前記所定の値より小さい場合には前記明度データを明るくなるように変更する、請求項1に記載のカラー画像表示装置。
【請求項4】
前記対象色指定手段は、色相、彩度、明度の組み合わせにより、前記対象色を指定する、請求項1に記載のカラー画像表示装置。
【請求項5】
積算された前記連続した画素の数が予め決められた所定数未満の場合には、前記明度補正手段は、前記対象色の画素の明度データを変更しない、請求項1に記載のカラー画像表示装置。
【請求項6】
前記対象色面積算出手段は、X座標またはY座標が同一である前記対象色を有する連続した画素の数が、所定の画素数以上となる画素のみを積算する、請求項1に記載のカラー画像表示装置。
【請求項7】
1画面分のカラー表示用データを格納する格納ステップと、
明度を補正する対象色を指定する対象色指定ステップと、
前記カラー表示用データのうちの前記対象色を有する連続した画素の数を積算して、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する対象色面積算出ステップと、
前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記比が大きいほど暗くなり前記比が小さいほど明るくなるように、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する、明度補正ステップと、
明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて、前記1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する表示ステップとを備えたカラー画像表示方法。
【請求項8】
請求項7に記載のカラー画像表示方法の、1画面分のカラー表示用データを格納する前記格納ステップ、明度を補正する対象色を指定する前記対象色指定ステップ、前記対象色を有する連続した画素が占める対象色面積を算出する前記対象色面積算出ステップ、前記1画面分のカラー表示用データが占める全画像面積に対する前記対象色面積の比に基づいて、前記対象色を有する連続した画素の明度データを変更する前記明度補正ステップ、明度データを変更した後の前記対象色を有する連続した画素のデータを含めて1画面分のカラー表示用データに基づいてカラー表示する前記表示ステップ、を実行するためにコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータで利用可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−330094(P2006−330094A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149887(P2005−149887)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】