説明

カルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、シリコーン組成物、及び有機発光ダイオード

N−カルバゾリルアルキル基及び加水分解性基を有する硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、前記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンを含むシリコーン組成物、前記シリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、及びカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む有機発光ダイオード(OLED)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、さらに詳細にはN−カルバゾリルアルキル基及び加水分解性基を含む硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンに関する。本発明はまた、前記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンを含むシリコーン組成物、前記シリコーン組成物が硬化して得られる硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、及びカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバゾリルアルキル基を有するカルバゾリル基含有シクロシロキサン類は当分野で公知である。例えば、Hohle及びStrohrieglは、光反射性シクロシロキサン類の調製及び特徴付けを記載している(Proc. SPIE-Int. Soc. for Opt. Eng., 1999, 3796, 353-359)。このシクロシロキサン類(n=3,5)は、テトラメチルシクロテトラシロキサンとω−(カルバゾール−9−イル)アルケン類との間の、白金触媒を用いたヒドロシリル化反応によって調製された。
【0003】
【化1】

【0004】
Maudらは、カルバゾリルアルキル置換シクロシロキサン類の調製及び特徴付けを記載している(Synthetic Metals, 1993, 55-57, 890-895)。このシクロシロキサン類(a: n=4, m=3; b: n=4, m=11; c: n=5, m=3)は、還流トルエン中における、オリゴシクロメチルヒドロシラン類とω−(カルバゾール−9−イル)アルキル−1−エン類との間の白金触媒を用いたヒドロシリル化反応によって調製された。
【0005】
【化2】

【0006】
しかし、上述した文献はカルバゾリルアルキル基を有するシクロシロキサン類を開示しているが、本発明の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、シリコーン組成物、硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、又はOLEDを開示してはいない。
【非特許文献1】Hohle及びStrohriegl, Proc. SPIE-Int. Soc. for Opt. Eng., 1999, 3796, 353-359.
【非特許文献2】Maudら, Synthetic Metals, 1993, 55-57, 890-895.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明のまとめ〕
本発明は、下記式を有する硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンを目的とする。
【0008】
【化3】

【0009】
上記式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり;Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-であり(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hであり;Zは加水分解性基であり;mは2〜10の整数であり;nは2、3、4、5、又は6であり;pは0又は1である。
【0010】
本発明はまた、上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、縮合触媒、及び有機溶媒を含有するシリコーン組成物を目的とする。本発明はさらに、前記シリコーン組成物を硬化することによって調製される、硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを目的とする。
【0011】
本発明はさらに、
第一の相対する表面と第二の相対する表面とを有する基材;
前記第一の相対する表面上に重ねられた第一の電極層;
前記第一の電極層上に重ねられた発光要素[前記発光要素は、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、前記正孔輸送層及び電子輸送層は直接互いに重なり、且つ前記正孔輸送層と前記電子輸送層のうちの一つが、
(A)下記式:
【0012】
【化4】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hであり、Zは加水分解性基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5又は6であり、pは0又は1である)
を有する少なくとも1の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、(B)縮合触媒、及び(C)有機溶媒、を含有するシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、及び、
下記式:
【0013】
【化5】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5又は6である)
を有する少なくとも1のカルバゾリル官能基を有するシクロシロキサン、から選択されるカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む];並びに
前記発光要素に重ねられた第二の電極層、
を含む有機発光ダイオードを目的とする。
【0014】
本発明の上記硬化性のカルバゾリル基含有シクロシロキサンはエレクトロルミネッセンスを示し、適用電圧を印加した場合に発光する。さらに、本シクロシロキサンは、加水分解性基を有し、硬化して、耐久性のある架橋ポリシロキサンを生成することができる。さらに、本シクロシロキサンを少量の蛍光染料でドープし、エレクトロルミネッセンス効率を高め、硬化したポリシロキサンの色出力を調整しうる。
【0015】
本発明のシリコーン組成物は、一液型組成物として従来の方法で配合することができる。さらに、本シリコーン組成物は湿気の不存在下で良好な貯蔵安定性を有する。重要なこととしては、本組成物は、スピンコーティング、印刷、及びスプレーなどの従来の高速法によって基材に適用することができる。さらに、本シリコーン組成物は、穏和な温度から中庸の温度において、湿気に曝露することによって容易に硬化しうる。
【0016】
本発明のシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンは、エレクトロルミネッセンスを示す。さらに、この硬化したポリシロキサンは、様々な基材に対して良好なプライマーなしでの接着性を有する。この硬化したポリシロキサンはまた、優れた耐久性、耐化学薬品性、及び低温での柔軟性を示す。加えて、この硬化したポリシロキサンは、電磁スペクトルの可視領域において、高い透明性、一般的には100nmの厚さにおいて少なくとも95%の透過率を示す。重要なことには、このポリシロキサンは、OLEDデバイスの電極及び発光層に有害な酸または塩基成分を実質的に含まない。
【0017】
本発明のOLEDは、摩耗、有機溶媒、湿気、及び酸素に対して良好な耐性を示す。さらに、本OLEDは、高い量子効率及び光安定性を示す。
【0018】
本OLEDは、個別の発光デバイスとして、又は発光アレイもしくはディスプレイ、例えばフラットパネルディスプレイ、の活性要素として有用である。OLEDディスプレイは、時計、電話、ラップトップコンピュータ、ポケットベル、携帯電話、デジタルビデオカメラ、DVDプレーヤー、及び計算機を含む多くのデバイスにおいて有用である。
【0019】
本発明の上記及びその他の特徴、側面、及び利点は、以下の説明、添付した特許請求の範囲、及び付属する図面を参照してより良く理解されるようになるだろう。
【0020】
〔本発明の詳細な説明〕
本明細書で用いるとおり、「脂肪族不飽和を有しないヒドロカルビル(hydrocarbyl)基」の語は、脂肪族炭素-炭素二重結合及び脂肪族炭素-炭素三重結合をもたない基を意味する。「N−カルバゾリル」の語は、下記式:
【0021】
【化6】

を有する基を意味する。
【0022】
本発明による硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは下記式を有する。
【0023】
【化7】

〔式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり;Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hである);Zは加水分解性基であり;mは2〜10の整数であり;nは2、3、4、5又は6であり;pは0又は1である。あるいはこれに代えて、添え字mは3〜10もしくは3〜6の値を有する。あるいはこれに代えて、添え字nは3、4又は5の値を有する。〕
【0024】
で表されるヒドロカルビル基は脂肪族不飽和をもたず、一般的には1〜10の炭素原子、あるいはこれに代えて1〜6の炭素原子、を有する。少なくとも3個の炭素原子を含む非環状ヒドロカルビル基は、分岐状又は非分岐状構造を有することができる。ヒドロカルビル基の例には、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及びオクタデシル);シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロへキシル、及びメチルシクロへキシル);アリール(例えば、フェニル及びナフチル);アルキルアリール(例えば、トリル及びキシリル);アラルキル(例えば、ベンジル及びフェネチル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
Yで表される二価の有機基は、一般的には1〜18の炭素原子、あるいはこれに代えて1〜10の炭素原子、あるいはこれに代えて1〜6の炭素原子、を有する。炭素及び水素に加えて、この二価の有機基は、この二価の官能基がヒドロシリル化反応(これは以下で説明され、ポリシロキサンを調製するため、もしくはポリシロキサン中の加水分解性基Zと反応するために用いられる)を阻害しないことを条件として、その他の原子、例えば、窒素、酸素及びハロゲンを含んでもよい。Yで表される二価の有機基の例には、ヒドロカルビレン(hydrocarbylene)(例えば、メチレン、プロピレン、及びフェニレン);ハロゲン置換ヒドロカルビレン(例えば、クロロエチレン及びフルオロエチレン);並びに、アルキレンオキシアルキレン(例えば、-CHOCHCHCH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHOCH(CH)CH-、及び-CHOCHCHOCHCH-);並びに、カルボニルオキシアルキレン(例えば、-C(=O)O-(CH-)、が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いるように、「加水分解性基」の語は、水と反応して、ケイ素に結合した-OH(シラノール)基を形成できる、ケイ素に結合した基Zを意味する。Zで表される加水分解性基の例には、-Cl、Br、-OR、-OCHCHOR、CHC(=O)O-、Et(Me)C=N-O-、CHC(=O)N(CH)-、及び-ONH(式中、RはC〜Cヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両者は脂肪族不飽和をもたない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
で表されるヒドロカルビル基の例は、分岐状及び非分岐状アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、へキシル、ヘプチル、オクチル;シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロへキシル、及びメチルシクロへキシル);フェニル;アルキルアリール(例えば、トリル及びキシリル);アラルキル(例えば、ベンジル及びフェネチル)が含まれるが、これらに限定されない。ハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、クロロフェニル、及びジクロロフェニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンの例には、以下の式:
[Si(Me)(CH2CH2CH2Cz)O]3[Si(Me)(CH2CH2CH2Si(OMe)3)O]、
[Si(Et)(CH2CH2CH2Cz)O]3[Si(Et)(CH2CH2CH2Si(OMe)3)O]、
[Si(Ph)(CH2CH2CH2Cz)O]3[Si(Ph)(CH2CH2CH2Si(OMe)3)O]、及び
[Si(Me)(CH2CH2CH2Cz)O]3[Si(Me)(CH2CH(Me)CO2CH2CH2CH2Si(OMe)3)O]
(式中、Meはメチル、Etはエチル、Phはフェニル、及び単位の順序は特定されない)を有するシクロシロキサン類が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは、(a)下記式を有する有機ハイドロジェンシクロシロキサン:
【0030】
【化8】

【0031】
と、(b)式Cz-(CHm−2-CH=CHを有するN−アルケニルカルバゾールと、(c)Z3−pSi-Y-CR=CH及びZ3−pSi-CR=CHから選択される式を有するアルケニルシランとを、(d)ヒドロシリル化触媒、及び場合により(e)有機溶媒の存在下で反応させることによって調製できる(式中、CzはN−カルバゾリルであり、R、R、Y、Z、m、n、及びpは、上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて先に定義し且つ例示したとおりである。
【0032】
有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)は下記式:
【0033】
【化9】

(式中、R及びnは、上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて上で定義し且つ例示したとおりである。)を有する。
【0034】
有機ハイドロジェンシクロシロキサンの例には、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルヘキサシクロシロキサン、及びヘプタメチルヘプタシクロシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
3、4、5、6、及び7個のケイ素原子を含む有機ハイドロジェンシクロシロキサンを調製する方法、例えば、クロロシラン類の加水分解と縮合は、当技術分野で周知である;これらのシクロシロキサン類の多くは市販されている。
【0036】
N−アルケニルカルバゾール(b)は、式Cz-(CHm−2-CH=CHを有する少なくとも1のN−アルケニルカルバゾールであり、ここでCzはN−カルバゾリルであり、mは硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて上で定義し且つ例示したとおりである。
【0037】
N−アルケニルカルバゾール(b)として用いるために適したN−アルケニルカルバゾールの例には、以下の式を有するカルバゾール類が含まれるがこれらに限定されない:CH=CH-Cz、CH=CH-CH-Cz、CH=CH-(CH-Cz、CH=CH-(CH-Cz、及びCH=CH-(CH-Cz(式中、CzはN−カルバゾリルである)。
【0038】
N−アルケニルカルバゾール(b)は、単一のN−アルケニルカルバゾール、又は2種以上の異なるN−アルケニルカルバゾール[それぞれ、式Cz-(CHm−2-CH=CH(Cz及びmは上で定義し且つ例示したとおりである。)]を含む混合物であることができる。
【0039】
N−アルケニルカルバゾールの調製法は当技術分野で周知である。例えば、N−アルケニルカルバゾールは、Hellerら(Makromol. Chem., 1964, 73, 48)によって記述されたように、式Br-(CHm−2-CH=CHを有するω−アルケニルブロマイドをカルバゾールナトリウムと反応させることによって調製できる。
【0040】
アルケニルシラン(c)は、Z3−pSi-Y-CR=CH及びZ3−pSi-CR=CH(式中、R、R、Y、Z、及びpは上記硬化性のカルバゾリル官能性基含有シクロシロキサンについて上で定義し且つ例示したとおりである)から選択される式を有する少なくとも1種のアルケニルシランである。
【0041】
アルケニルシラン(c)として用いるために適したアルケニルシランの例には、以下の式を有するシランが含まれるがこれらに限定されない:CH=C(Me)-C(=O)-OCHCHCHSi(OMe)、CH=CH-Si(OAc)、CH=CH-(CH-Si(OMe)、CH=CH-Si(OAc)(OMe)、及びCH=CH-CH-Si(OMe)(式中、Meはメチル、OAcはアセトキシである)。
【0042】
アルケニルシラン(c)は、それぞれがZ3−pSi-Y-CR=CH及びZ3−pSi-CR=CH(式中、R、R、Y、Z、及びpは、硬化性のカルバゾリル官能性基含有シクロシロキサンについて上で定義し且つ例示したとおりである)から選択される式を有する、単一のアルケニルシランであるか又は2種以上の異なるアルケニルシランを含む混合物であることができる。
【0043】
アルケニルシランの調製方法は当技術分野では周知である。例えば、アルケニルシランは、直接合成、グリニャール反応、アルケン又はアルキンへの有機ケイ素ヒドリドの付加、有機ケイ素ヒドリドとクロロオレフィンとの縮合、及びハロアルキルシランの脱ハロゲン化水素などの方法によって調製できる。これら及びその他の方法は、W. Nollによって、Chemistry and Technology of Silicones, Academic Press: New York, 1968中に記述されている。
【0044】
ヒドロシリル化触媒(d)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム)又は白金族金属を含む化合物を含有する任意の周知のヒドロシリル化触媒であることができる。ヒドロシリル化反応における高活性にもとづいて、好ましくは、白金族金属は白金である。
【0045】
好ましいヒドロシリル化触媒には、本明細書に援用する米国特許第3,419,593号明細書においてWillingによって開示された、塩化白金酸と特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が含まれる。この種の好ましい錯体は、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの反応生成物である。
【0046】
有機溶媒(e)は少なくとも1種の有機溶媒である。この有機溶媒は、本発明の方法の条件下で、有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)、N−アルケニルカルバゾール(b)、アルケニルシラン(c)、又は上記硬化性カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンと反応しない任意の非プロトン性もしくは双極性非プロトン性有機溶媒であることができ、成分(a)、(b)、(c)及び上記硬化性カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンと混和性である。
【0047】
有機溶媒の例には、飽和脂肪族炭化水素(例えば、n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、及びドデカン);脂環式炭化水素(例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサン);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン);環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、及びジオキサン);ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK);ハロゲン化アルカン類(例えば、トリクロロエタン);並びに、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、ブロモベンゼン及びクロロベンゼン)が含まれるがこれらに限定されない。有機溶媒(e)は、それぞれが上で定義したとおりの単一の有機溶媒又は2種以上の異なる有機溶媒を含む混合物であることができる。
【0048】
上記反応は、ヒドロシリル化反応に適した任意の標準的な反応器中で実施することができる。適した反応器には、ガラス及びテフロン(登録商標)ライニングしたガラス反応器が含まれる。反応器は撹拌などの混合の手段を備えていることが好ましい。さらに、好ましくは、本反応は、不活性雰囲気、例えば、窒素又はアルゴン中で、湿気のない状態で実施される。
【0049】
有機ハイドロジェンシクロシロキサン、N−アルケニルカルバゾール、アルケニルシラン、ヒドロシリル化触媒、及び有機溶媒は、任意の順序で混合されうる。一般的には、ヒドロシリル化触媒(d)の導入前に、有機ハイドロジェンシロキサン(a)及び場合により有機溶媒(e)に、同時もしくは任意の順序で順次、N−アルケニルカルバゾール(b)及びアルケニルシラン(c)が加えられる。有機溶媒(e)が存在する場合は、ヒドロシリル化触媒(d)は、(a)と(b)と(c)と(e)との混合物に添加される。有機溶媒(e)が存在しない場合は、(a)と(b)と(c)との混合物は、溶融物を形成するのに充分な温度、例えば60℃に加熱され、この溶融物にヒドロシリル化触媒(d)が添加される。
【0050】
反応は一般的には、0〜100℃、それに代えて室温(〜23℃)〜100℃の温度で実施される。温度が0℃未満である場合は、反応速度は一般的には非常に遅い。
【0051】
上記成分は、一般的には、ヒドロシリル化反応が完結するまで充分な時間の間反応される。「ヒドロシリル化反応が完結する」との語は、硬化性カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンが、以下の実施例で説明する方法を用いてFTIRスペクトルによって決定したときに、ケイ素に結合したいかなる水素原子も含まないことを意味する。反応時間はいくつかの因子、例えば、有機ハイドロジェンシクロシロキサン、N−アルケニルカルバゾール、及びアルケニルシランの構造、並びに温度、に左右される。反応時間は、室温〜100℃の温度で、一般的には50分〜24時間である。最適な反応時間は、以下の実施例欄で説明する方法を用いる定型実験によって決定することができる。
【0052】
有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)中のケイ素に結合した水素原子に対するN−アルケニルカルバゾール(b)のモル比は、一般的には0.67〜0.86、それに代えて0.75〜0.83である。有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)中のケイ素に結合した水素原子に対するアルケニルシラン(c)のモル比は、一般的には0.15〜0.35、それに代えて0.17〜0.25である。
【0053】
ヒドロシリル化触媒(d)の濃度は、N−アルケニルカルバゾール(b)及びアルケニルシラン(C)と有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)との反応を触媒するために充分な濃度である。一般的には、ヒドロシリル化触媒(d)の濃度は、有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)、N−アルケニルカルバゾール(b)、及びアルケニルシラン(c)の合計重量に対して0.1〜1000ppmの白金族金属、それに代えて1〜500ppmの白金族金属、それに代えて5〜150ppmの白金族金属を提供するために充分な量である。反応速度は0.1ppm未満の白金族金属では非常に遅い。1000ppmを超える白金族金属の使用は、反応速度に感知できる程度のいかなる増加をももたらさず、したがって経済的でない。
【0054】
有機溶媒(e)の濃度は、一般的には、反応混合物の全重量に対して0〜60%(w/w)、それに代えて30〜60%(w/w)、それに代えて40〜50%(w/w)である。
【0055】
上記硬化性カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは、シクロシロキサンの沈殿を起こさせるために充分な量のアルコールを加え、次に反応混合物を濾過してシクロシロキサンを得ることによって、反応混合物から回収することができる。このアルコールは一般的には、1〜6の炭素原子、それに代えて1〜3の炭素原子を有する。そのうえ、本アルコールは直鎖状、分岐状、又は環状構造を有することができる。アルコール中のヒドロキシル基は、一級、二級、又は三級脂肪族炭素原子に結合していることができる。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、及びシクロヘキサノールが含まれるがこれらに限定されない。
【0056】
本発明のシリコーン組成物は以下の:
(A)下記式:
【0057】
【化10】

〔式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hである)、Zは加水分解性基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5又は6であり、pは0又は1である。〕;
(B)縮合触媒;及び
(C)有機溶媒、
を含有する。
【0058】
成分(A)は少なくとも1の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンであり、このシクロシロキサンは上に記載し且つ例示したとおりである。成分(A)は単一の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンであるか、又は2種以上の異なるシクロシロキサンの混合物であることができる。
【0059】
成分(B)は少なくとも1種の縮合触媒である。この縮合触媒は、ケイ素に結合したヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進し、Si−O−Si結合を形成するために一般的に使用される任意の縮合触媒であることができる。縮合触媒の例には、錫(II)及び錫(IV)化合物、例えば、錫ジラウレート、錫ジオクトエート、及びテトラブチル錫;ならびにチタン化合物、例えばチタンテトラブトキシド、が含まれるがこれらに限定されない。成分(B)は単一の縮合触媒であるか、又は2種以上の異なる縮合触媒を含む混合物であることができる。
【0060】
成分(B)の濃度は、一般的には、成分(A)の総重量に対して0.1〜10%(w/w)、それに代えて0.5〜5%(w/w)、それに代えて1〜3%(w/w)である。
【0061】
成分(C)は少なくとも1種の有機溶媒である。有機溶媒の例には、飽和脂肪族炭化水素(例えば、n−ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、及びドデカン);脂環族炭化水素(例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサン);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレン);環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン);ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK));ハロゲン化アルカン(例えば、トリクロロエタン);並びに、ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、ブロモベンゼン及びクロロベンゼン)が含まれるがこれらに限定されない。
【0062】
成分(C)はそれぞれ上で定義された単一の有機溶媒又は2種以上の異なる有機溶媒であることができる。有機溶媒の濃度は一般的には、本シリコーン組成物の総重量に対して70〜99%(w/w)、それに代えて85〜99%(w/w)である。
【0063】
本シリコーン組成物が、pが1の値を有する成分(A)を含む場合は、本組成物は一般的には、式RSiZ4−t(RはC〜Cヒドロカルビルまたはハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Zは上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて上述した通りであり、tは0又は1である)を有する架橋剤をさらに含む。シランの例には、アルコキシシラン(例えば、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH3)3、CH3Si[O(CH2)3CH3]3、CH3CH2Si(OCH2CH3)3、C6H5Si(OCH3)3、C6H5CH2Si(OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH3)3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH2OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCH2CH2OCH3)3、C6H5Si(OCH2CH2OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、及びSi(OC3H7)4);有機アセトキシシラン類(例えば、CH3Si(OCOCH3)3、CH3CH2Si(OCOCH3)3、及びCH2=CHSi(OCOCH3)3);有機イミノオキシシラン類(例えば、CH3Si[O-N=C(CH3)CH2CH3]3、Si[O-N=C(CH3)CH2CH3]4、及びCH2=CHSi[O-N=C(CH3)CH2CH3]3);有機アセトアミドシラン類(例えば、CH3Si[NHC(=O)CH3]3及びC6H5Si[NHC(=O)CH3]3);アミノシラン類(例えば、CH3Si[NH(s-C4H9)]3及びCH3Si(NHC6H11)3);並びに、有機アミノオキシシラン類が含まれる。
【0064】
上記架橋剤はそれぞれ上述した単一のシラン又は2種以上の異なるシランの混合物であることができる。また、三官能及び四官能シランの調製方法は当技術分野で周知である;これらのシランの多くは市販されている。
【0065】
存在する場合は、本シリコーン組成物中の架橋剤の濃度は、本組成物を硬化(架橋)させるために充分な濃度である。架橋剤の正確な量は所望する硬化の程度に左右され、硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン中の加水分解性基Zのモル数に対して、架橋剤中の珪素に結合した加水分解性基のモル数の割合が増加するにしたがい、硬化の程度は増加する。一般的には、架橋剤の濃度は、硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン中の加水分解性基当り0.9〜1.0の珪素結合加水分解性基を提供するために充分な濃度である。架橋剤の最適量は、通常行う試験によって容易に決定できる。
【0066】
本発明のシリコーン組成物は、一般的には、成分(A)、(B)及び(C)、並びにいずれかの任意選択した成分を、室温で、上述した比率で混合することによって調製される。
【0067】
混合は、粉砕、ブレンド、及び撹拌などの当技術分野で公知の任意の手法によって、バッチ法又は連続法のいずれかで実施できる。具体的な装置は、成分の粘度及び最終的なシリコーン組成物の粘度によって決定される。
【0068】
本発明による、硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンは、上述したシリコーン組成物を硬化することによって調製される。上記シリコーン組成物は、適度な温度で湿気に組成物を曝露することによって硬化することができる。硬化は、熱の適用及び/又は高湿度に曝露することによって加速させることができる。硬化速度は、温度、湿度、カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンの構造、及び加水分解性基の性質を含む多くの要因に左右される。例えば、本シリコーン組成物は、約室温(23℃)〜約80℃の温度で、30%の相対湿度に、24〜72時間のあいだ曝露することによって硬化させることができる。
【0069】
本発明による有機発光ダイオードは、
第一の相対する表面と第二の相対する表面とを有する基材;
前記第一の相対する表面上に重ねられた第一の電極層;
前記第一の電極層上に重ねられた発光要素[前記発光要素は、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、前記正孔輸送層及び電子輸送層は直接互いに重なり、且つ前記正孔輸送層と前記電子輸送層のうちの一つが、
(A)下記式:
【0070】
【化11】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hである)であり、Zは加水分解性基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5又は6であり、pは0又は1である)
を有する少なくとも1種の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、(B)縮合触媒、及び(C)有機溶媒、を含有するシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、及び、
下記式:
【0071】
【化12】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5又は6である)
を有する、カルバゾリル官能基を有する少なくとも1種のシクロシロキサンから選択されるカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む];並びに
前記発光要素に重ねられた第二の電極層、
を含む。
【0072】
指定した成分に対する、前記第一の電極層、発光要素、及び第二の電極層の位置に関して用いる「重ねる」の語は、OLEDが図(Figure)1〜4に示したように基材でもって第一の電極層の下に方向づけられる場合は、その特定層が指定成分上に直接重なっているか又はそれらの間に1以上の中間層をもって指定した成分上に重なっていることを意味する。例えば、OLED中の基材表面の第一の相対する表面に対して、第一の電極層の位置に関して用いられる「重ねる」の語は、前記第一の電極層が前記表面上に直接重なるか、又は1以上の中間層によって前記表面から分離されていることを意味する。
【0073】
基材は、2つの相対する表面を有する剛性の又は柔軟な材料であることができる。さらに、基材は電磁スペクトルの可視領域において、光に対して透明もしくは不透明であることができる。本明細書中で用いるように、「透明」の語は、特定成分(例えば、基材もしくは電極層)が、電磁スペクトルの可視領域(〜400から〜700nm)において、光に対して少なくとも30%、それに代えて少なくとも60%、それに代えて少なくとも80%のパーセント透過率を有することを意味する。また、本明細書で用いるように、「不透明」の語は、その成分が、電磁スペクトルの可視領域において、光に対し30%未満のパーセント透過率しか有しないことを意味する。
【0074】
基材の例には、半導体材料(例えば、シリコン、二酸化ケイ素の表面層を有するシリコン、及びガリウム砒素);石英;溶融石英;酸化アルミニウム;セラミック;ガラス;金属箔;ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリエチレンテレフタレート);フルオロカーボンポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニルフルオライド);ポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標));ポリイミド;ポリエステル(例えば、ポリ(メチルメタクリレート));エポキシ樹脂;ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;及びポリエーテルスルホン、が含まれるがこれらに限定されない。
【0075】
第一の電極層は、OLEDのアノード又はカソードとして機能しうる。第一の電極層は可視光に対して透明又は不透明であってよい。アノードは、一般的には、高仕事関数(>4eV)の金属、合金、又は金属酸化物(例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物、ニッケル、及び金)から選択される。カソードは低仕事関数(<4eV)の金属(例えば、Ca、Mg、及びAl);上述のような高仕事関数(>4eV)の金属、合金、又は金属酸化物;あるいは低仕事関数の金属と、高仕事関数もしくは低仕事関数を有する少なくとも1の他の金属との合金(例えば、Mg‐Al、Ag‐Mg、Al‐Li、In‐Mg、及びAl‐Ca)であることができる。OLEDの作製においてアノード及びカソード層を堆積させる方法、たとえば、蒸発(蒸着)、共蒸発(共蒸着)、DCマグネトロンスパッタリング、又はRFスパッタリングは、当技術分野で周知である。
【0076】
以下に説明するように、上記発光要素は、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、正孔輸送層及び電子輸送層は互いの上に直接重なり、正孔輸送層及び電子輸送層の1つがカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含んでいる。発光要素の配向は、OLED中のアノード及びカソードの相対位置に左右される。正孔輸送層はアノードと電子輸送層との間に配置され、電子輸送層は正孔輸送層とカソードとの間に配置される。正孔輸送層の厚さは、一般的には20〜100nm、それに代えて30〜50nmである。電子輸送層の厚さは、一般的には20〜100nm、それに代えて30〜50nmである。
【0077】
上記OLEDの硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンは、本発明の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、縮合触媒、及び有機溶媒を含有するシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンであることができる。本シリコーン組成物及び本組成物を硬化させる方法は、上述したとおりである。
【0078】
上記に代えて、本OLEDのカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンは、下記式を有するカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンであることができる。
【0079】
【化13】

(式中、R、m、及びnは、上記硬化性カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて上で定義し且つ例示したとおりである。)
【0080】
カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンの例には、以下の式を有するポリシロキサンが含まれるがこれらに限定されない: [Si(Me)(CH2CH2CH2Cz)O]3、[Si(Me)(CH2CH2CH2Cz)O]4、[Si(Me)CH2CH2CH2Cz]O]5、[Si(Et)(CH2CH2CH2Cz)O]4、[Si(Ph)(CH2CH2CH2Cz)O]4、及び[Si(Me)(CH2CH2CH2CH2CH2Cz)O]4(式中、Meはメチル、Etはエチル、及びPhはフェニルである)。
【0081】
上記カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは、(a)下記式:
【0082】
【化14】

を有する有機ハイドロジェンシクロシロキサンを、(d)ヒドロシリル化触媒と、場合によっては(e)有機溶媒の存在下で、(b)式Cz-(CHm−2-CH=CHを有するN−アルケニルカルバゾールと反応させることによって調製できる。有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)、並びに成分(b)、(d)及び(e)は、硬化性のカルバゾール官能基含有シクロシロキサンの調製法において上で説明し且つ例示したとおりである。
【0083】
上記カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンを調製するための反応は、有機ハイドロジェンシクロシロキサン(a)のケイ素に結合した水素原子に対するN−アルケニルカルバゾール(b)のモル比は一般的には1.0〜1.2、それに代えて1.05〜1.1であることを除き、上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンの調製について上述した方法で実施することができる。その上、上記カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは、上記硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンについて説明したように反応混合物から回収することができる。
【0084】
上記硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを調製するために用いるシリコーン組成物、及び上記カルバゾリル官能基含有ポリシロキサンは、OLEDの構成に応じて、スピンコーティング、ディッピング、スプレー、ブラシ塗布、及び印刷などの従来法を用いて、第一の電極層、正孔輸送層、又は電子輸送層に適用することができる。カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンはまた、適用前に有機溶媒中に溶解することができ、有機溶媒は本発明のシリコーン組成物について上述したとおりである。
【0085】
正孔輸送層がカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンである場合は、電子輸送層は、OLEDデバイス中の電子輸送材料、電子注入/電子輸送材料、又は発光材料として一般的に用いられる任意の低分子量有機化合物もしくは有機ポリマーであることができる。電子輸送層としての使用に適した低分子量有機化合物は、当分野で周知であり、米国特許第5,952,778号明細書;同4,539,507号明細書;同4,356,429号明細書;同4,769,292号明細書;同6,048,573号明細書;及び同5,969,474号明細書に例示されているとおりである。低分子量化合物の例には、芳香族化合物(例えば、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、及びペリレン);ブタジエン類(例えば、1,4−ジフェニルブタジエン及びテトラフェニルブタジエン);クマリン類;アクリジン;スチルベン類(例えば、トランススチルベン);及びキレート化されたオキシノイド化合物(例えば、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)、Alq)、が含まれるがこれらに限定されない。これらの低分子量有機化合物は、真空蒸発(蒸着)及び昇華を含めた通常の薄膜作製方法によって堆積されることができる。
【0086】
電子輸送層としての使用に適した有機ポリマーは当分野で周知であり、米国特許第5,952,778号明細書;同5,247,190号明細書;同5,807,627号明細書;同6,048,573号明細書;同6,255,774号明細書中に例示されているとおりである。有機ポリマーの例は、ポリ(フェニレンビニレン)類、例えば、ポリ(1,4−フェニレンビニレン);ポリ−(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン)類、例えば、ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチルへキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEHPPV)、ポリ(2−メトキシ−5−(2−メチルペンチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−ペンチルオキシ−1,4−フェニレンビニレン)、及びポリ(2−メトキシ−5−ドデシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン);ポリ(2,5−ジアルキル−1,4−フェニレンビニレン類;ポリ(フェニレン);ポリ(2,5−ジアルキル−1,4−フェニレン)類;ポリ(p−フェニレン);ポリ(チオフェン)類、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)類;ポリ(アルキルチエニレン)類、例えば、ポリ(3−ドデシルチエニレン);ポリ(フルオレン)類、例えば、ポリ(9,9−ジアルキルフルオリン)類;及び、ポリアニリン類、が含まれるがこれらに限定されない。これら有機ポリマーは、スピンコーティング、ディッピング、スプレー、ブラシがけ、及び印刷(例えば、ステンシル印刷及びスクリーン印刷)などの従来の溶媒コーティング手法によって適用可能である。
【0087】
電子輸送層がカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンである場合、正孔輸送層は、OLEDデバイス中の正孔輸送材料、正孔注入材料、もしくは正孔注入/正孔輸送材料として一般的に用いられる任意の有機化合物であることができる。正孔輸送層として用いるために適した有機化合物は当分野で周知であり、米国特許第4,720,432号明細書;同5,593,788号明細書;同5,969,474号明細書;同4,539,507号明細書;同6,048,573号明細書;同4,888,211号明細書中に例示されているとおりである。有機化合物の例には、芳香族第三級アミン類、例えばモノアリールアミン類、ジアリールアミン類、トリアリールアミン類、及びテトラアリールジアミン類;ヒドラゾン類;カルバゾール類;トリアゾール類;イミダゾール類;アミノ基を有するオキサジアゾール類;ポリチオフェン類、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(これはH.C.Starck Inc.からBaytron(登録商標)Pの名称で販売されている);及びポルフィリン系化合物、例えば、フタロシアニン類及び金属含有フタロシアニン類、が含まれるがこれらに限定されない。この有機化合物は、真空蒸発(蒸着)及び昇華を含めた従来の薄層作製法によって適用することができる。
【0088】
発光要素中の発光層の中の電子輸送層又は正孔輸送層は、さらに蛍光染料を含むことができる。OLEDデバイス中で用いるために適した蛍光染料は、米国特許第4,769,292号明細書に示されているように、当分野において周知である。蛍光染料の例には、クマリン類;ジシアノメチレンピラン類、例えば、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)4H−ピラン;ジシアノメチレンチオピラン類;ポリメチン;オキサベンゾアントラセン;キサンテン;ピリリウム及びチアピリリウム;カボスチリル;及びペリレン蛍光染料が含まれるがこれらに限定されない。
【0089】
第二の電極層はOLED中でアノード又はカソードのいずれかとして機能しうる。第二の電極層は可視領域において光に対して透明又は不透明であってよい。アノード及びカソード材料の例及びそれらの形成方法は、上記第一の電極層について上述したとおりである。
【0090】
本発明のOLEDは、アノードと正孔輸送層の間に入れられた正孔注入層、及び/又はカソードと電子輸送層との間に入れられた電子注入層をさらに含むことができる。正孔注入層は、5〜20nm、それに代わって7〜10nmの厚さを一般に有する。正孔注入層として用いるために適した材料の例には、銅フタロシアニンが含まれるがこれに限定されない。電子注入層は、0.5〜5nm、それに代えて1〜3nmの厚さを一般に有する。電子注入層として用いるために適した材料の例には、アルカリ金属フッ化物、例えば、フッ化リチウム及びフッ化セシウム;及びアルカリ金属カルボキシレート、例えば酢酸リチウム及び酢酸セシウム、が含まれるがこれらに限定されない。正孔注入層及び電子注入層は従来法、熱蒸発(蒸着)によって形成可能である。
【0091】
図(Figure)1に示したとおり、本発明によるOLEDの第一の態様は、第一の相対する表面100Aと第二の相対する表面100Bとを有する基材100、前記第一の相対する表面100A上の第一の電極層102(前記第一の電極層102はアノードである)、前記第一の電極層102に重ねられた発光要素104(前記発光要素104は、正孔輸送層106と、前記正孔輸送層106上に直接重ねられた電子輸送層108とを含み、前記正孔輸送層106はカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む)、及び、発光要素104に重ねられている第二の電極層110(前記第二の電極層110はカソードである)を含んでいる。
【0092】
図(Figure)2に示したとおり、本発明によるOLEDの第二の態様は、第一の相対する表面200Aと第二の相対する表面200Bとを有する基材200、前記第一の相対する表面200A上の第一の電極層202(前記第一の電極層202はアノードである)、前記第一の電極層202に重ねられた発光要素204(前記発光要素204は、正孔輸送層206と、前記正孔輸送層206上に直接重ねられた電子輸送層208とを含み、前記電子輸送層208はカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む)、及び前記発光要素204に重ねられた第二の電極層210(前記第二の電極層210はカソードである)を含んでいる。
【0093】
図(Figure)3に示したとおり、本発明によるOLEDの第三の態様は、第一の相対する表面300Aと第二の相対する表面300Bとを有する基材300、前記第一の相対する表面300A上の第一の電極層302(前記第一の電極層302はカソードである)、前記第一の電極層302に重ねられた発光要素304(前記発光要素304は、電子輸送層308と、前記電子輸送層308上に直接重ねられた正孔輸送層306とを含み、前記正孔輸送層306はカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む)、及び前記発光要素304に重ねられた第二の電極層310(前記第二の電極層310はアノードである)を含んでいる。
【0094】
図(Figure)4に示したとおり、本発明によるOLEDの第四の態様は、第一の相対する表面400Aと第二の相対する表面400Bとを有する基材400、前記第一の相対する表面400A上の第一の電極層402(前記第一の電極層402はカソードである)、前記第一の電極層402に重ねられた発光要素404(前記発光要素404は、電子輸送層408と、前記電子輸送層408上に直接重ねられた正孔輸送層406とを含み、前記電子輸送層408はカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む)、及び前記発光要素404に重ねられた第二の電極層410(前記第二の電極層410はアノードである)を含んでいる。
【0095】
本発明の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンは、エレクトロルミネッセンスを示し、印加電圧を受けた場合に発光する。さらに、本シクロシロキサンは加水分解性基を有し、硬化して耐久性のある架橋したポリシロキサンを生成することができる。また、本シクロシロキサンは、少量の蛍光染料でドープし、エレクトロルミネッセンス効率を高め、硬化したポリシロキサンの色出力を調整することができる。
【0096】
本発明のシリコーン組成物は、一成分型組成物として都合よく配合することができる。さらに本シリコーン組成物は、湿気の不存在下で良好な貯蔵安定性を有する。重要なことには、本組成物は、スピンコーティング、印刷、及びスプレーなどの従来の高速方法によって基材に適用することができる。また、本シリコーン組成物は穏和な温度から中庸の温度において湿気に曝すことによって容易に硬化することができる。
【0097】
本発明のシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾール官能基含有ポリシロキサンは、エレクトロルミネッセンスを示す。さらに、この硬化したポリシロキサンは、様々な基材に対してプライマーなしでの良好な接着性を有する。この硬化したポリシロキサンはまた、優れた耐久性、耐化学薬品性、及び低温での柔軟性を示す。加えて、この硬化したポリシロキサンは、高い透明性、一般的には、電磁気スペクトルの可視領域において100nmの厚さで少なくとも95%透過率を示す。重要なことには、本ポリシロキサンは、OLEDデバイスの電極及び発光層に悪影響を及ぼす酸性もしくは塩基性成分を実質的に含まない。
【0098】
本発明のOLEDは、摩耗、有機溶媒、湿気、及び酸素に対して良好な耐久性を示す。さらに、本OLEDは高い量子効率及び光安定性を示す。
【0099】
本OLEDは、個別の発光デバイスとして、又は発光アレイもしくはディスプレイ、例えばフラットパネルディスプレイの活性エレメントとして有用である。OLEDディスプレイは、時計、電話、ラップトップコンピュータ、ポケットベル、携帯電話、デジタルビデオカメラ、DVDプレーヤー、及び計算機を含めた多くのデバイスにおいて有用である。
【0100】
〔実施例〕
本発明のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、シリコーン組成物、及びOLEDをより良く説明するために以下の実施例を提供するが、付属の特許請求の範囲に記した本発明を限定するものとして考えられるべきではない。他に示さないかぎり、実施例で報告する全ての部数及びパーセントは重量による。以下の方法及び材料を実施例で用いる。
【0101】
[分子量の測定]
カルバゾリル官能基含有シクロシロキサン類の数平均分子量及び重量平均分子量(Mn及びMw)は、室温(〜23℃)で、PLgel(Polymer Laboratories, Inc.)5-μmカラム、1mL/分のTHF移動相、及び屈折率検出器を用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。線形回帰較正のためにポリスチレン標準品を用いた。
【0102】
〔赤外スペクトル〕
カルバゾリル官能基含有シクロシロキサンの赤外スペクトルは、Perkin Elmer Instruments 1600 FT-IR分光計で記録した。ポリシロキサンを含む反応混合物の試料をTHF又はトルエンに溶解し、約10%の濃度にした。この溶液の液滴をNaCl窓に塗布し、乾燥窒素気流下で溶媒を蒸発させてポリシロキサンの薄膜を形成した。
【0103】
〔フィルム厚さ〕
硬化した又は未硬化のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンフィルムの厚さは、KLA-Tencor AS-500表面測定器を用いて測定した。計測前に、フィルム(2〜3mm幅及び4〜5mm長さ)を除去し、基材を露出させた。フィルム厚さは基材の被覆された表面及び被覆されていない表面の間の段差で測定した。ミクロン(μm)単位で表された厚さについての報告値は、同一基材の異なる場所で行った3回の測定の平均値を表す。
【0104】
〔ITOで被覆されたガラス基材の洗浄法〕
10Ω/四方の表面抵抗を有する、ITOで被覆されたスライドガラス(Thin Film Technology, Inc., Buellton, CA)を、25mm角の基材に切断した。この基材を、10分間、1%Alconox粉末クリーナー(Alconox, Inc.)の水溶液を含む超音波浴中に浸漬し、次に脱イオン水ですすいだ。基材を次に各溶媒中に10分間、超音波振動をかけながら以下の溶媒のそれぞれの中に順次浸漬した:イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、及びトルエン。ガラス基材は次に乾燥窒素流下で乾燥した。
【0105】
〔OLEDにおけるシクロシロキサンフィルムの形成〕
OLED中のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサンフィルムは、基材上にシクロシロキサンの溶液を堆積させ、3000rpmの速度で20秒作動するCHEMAT Technology Model KW-4A spin-coaterを使用して溶液を薄膜にキャストすることによって形成した。
【0106】
〔OLEDにおける有機フィルムとSiOの堆積〕
結晶バランス厚さモニターを備えたBOC Edwards Auto 306高真空堆積システムを使用して熱蒸発(熱蒸着)によって、銅フタロシアニン、Alq、及びシリコンモノオキシド(SiO)の薄膜を堆積させた。基材は蒸発源の上に位置した回転試料ホルダー内に配置し、適切なマスクで覆った。蒸発源は有機化合物の試料又はSiOを酸化アルミニウムるつぼ中に配置することによって調製した。るつぼは次にタングステン螺旋ワイヤー中に置いた。真空チャンバー内の圧力を2.0×10−6mbarまで低下させた。基材はこの圧力で少なくとも30分間、気体除去させた。試料ホルダーを回転させながら、タングステンフィラメントを介して蒸発源を加熱することによって、有機又はSiOフィルムを堆積させた。堆積速度(0.1〜0.3nm/秒)及びフィルムの厚さは、堆積工程の間、監視した。
【0107】
〔OLED中における金属フィルムの堆積〕
金属及び合金のフィルム(例えば、Al及びLiF)は、結晶バランスフィルム厚さモニターを備えたBOC Edwards model E306A Coaring Systemを使用して、10−6mbarの初期真空下で、熱蒸発によって堆積させた。酸化アルミニウムるつぼ中に金属を置き且つそのるつぼをタングステン螺旋ワイヤー中に置くことによるか、又はタングステンの籠中に金属を直接置くことによって蒸発源を調製した。異なる金属の多数層が必要な場合は、各金属の堆積のために、回転可能なターレット中に適切な蒸発源を置いた。フィルムの堆積速度(0.1〜0.3nm/秒)及び厚さは、堆積工程の間、監視した。
【0108】
〔点灯電圧、明るさ、及び相対効率〕
乾燥窒素ラインに接続した黒色プラスチック箱を用いて、サンプル室を構築した。この箱中の試料ホルダーはガラス基材上のOLED電極の相対位置に合致した5の金属接触ピンを有する。これらの金属ピンはKeithley 2400電源計に接続され、これを通して所定電圧(0.5V)を印加し、電流を測定する。OLEDの前面に光ダイオード検出器を、OLEDと一直線上に取り付けた。光ダイオードは、光ダイオードによってうみだされるシグナルを測定するInternational Light IL 1700 Radiometerと接続した。明るさ及び相対効率を、それぞれ14V及び500cd/cmで測定した。
【0109】
〔OLEDのエレクトロルミネッセンススペクトル〕
OLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルを、Fluorlog II Single Grating Spectrometerを使用して測定した。OLEDは分光蛍光計のサンプル室の中央に固定し、測定時は黒色パネルで励起源を覆った。電源計を使用してOLEDに電圧を印加し、OLEDからの発光スペクトルを分光蛍光計で記録した。強度対波長のプロットから、最大強度における発光波長(λmax)及び最大強度における半値幅(PW50)をOLEDについて測定した。
【0110】
〔実施例1:カルバゾリル官能基含有シクロテトラシロキサンの調製〕
N−アリルカルバゾール(5g、0.024モル)、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.45g(6.0ミリモル)、及び無水トルエン5gを、ラバーセプタムを備えた乾燥フラスコ中で混合した。乾燥窒素でフラスコをパージした後、2−プロパノール中の0.31%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと0.19%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(IV)錯体とからなる溶液0.06gを、シリンジを使用してフラスコに添加した。このフラスコを80℃で1時間、オイルバス中に置いた。トルエンのほとんどは留去によって除去し、得られた粘稠流動体を20mLのn−ヘキサン中に分散させた。この混合物を夜通し置いた後、粗生成物からヘキサンをデカンテーションした。生成物中の、ケイ素に結合した水素原子の不存在は、FTIRスペクトルによって確認した。粗生成物を最小量の電子部品用グレード(電子用グレード)のトルエン(〜3mL)中に溶解し、〜20mLの電子グレードの2−プロパノールを添加することによってカルバゾリル官能基含有シクロテトラシロキサンを沈殿させた。この溶解/沈殿プロセスを3回繰り返した。最終沈殿物を真空オーブン中、アルゴン下で10分間、さらに真空下(〜133Pa)で2時間、140〜150℃に加熱した。カルバゾリル官能基含有シクロテトラシロキサンは、837の数平均分子量、及び1.01の多分散度を有していた。
【0111】
〔実施例2:カルバゾリル官能性シクロペンタシロキサンの調製〕
N−アリルカルバゾール(2.5g、0.012モル)、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン0.72g(2.4ミリモル)、及び無水トルエン5gを、ラバーセプタムを備えた乾燥フラスコ中で混合した。乾燥窒素でフラスコをパージした後、2−プロパノール中の0.31%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと0.19%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(IV)錯体とからなる溶液0.009gを、シリンジを使用してフラスコに添加した。このフラスコを室温に5時間保ち、次に試料の一部をFTIR分析のために回収した。FTIRスペクトルは残存するSi−H官能基の吸収を示していた。フラスコに窒素で通風し、連続して窒素パージし、混合物を100℃に約15分間加熱した。反応混合物のFTIRスペクトルは、残存するSi−H基を全く示さなかった。粗生成物を電子グレードのトルエンの最少量(〜3ml)中に溶解し、電子グレードの2−プロパノール約20mLを添加することによってカルバゾリル官能基含有シクロペンタシロキサンを沈殿させた。溶解/沈殿工程を3回繰り返した。最終沈殿物を真空オーブン中、アルゴン下で10分間、さらに真空下(〜133Pa)で2時間、140〜150℃に加熱した。カルバゾリル官能基含有シクロペンタシロキサンは、949の数平均分子量、及び1.03の多分散度を有していた。
【0112】
〔硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロペンタシロキサンの調製〕
N−アリルカルバゾール(6.55g、0.032モル)、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン2.5g(8.3ミリモル)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2.62g(0.011モル)及び無水トルエン7gを、ラバーセプタムを備えた乾燥フラスコ中で混合した。乾燥窒素でフラスコをパージした後、トルエン中の0.31%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと0.19%の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(IV)錯体とからなる溶液0.025gを、シリンジを使用してフラスコに添加した。このフラスコを室温に3時間保ち、次に80℃のオイルバス中に5時間置いた。FTIRスペクトルは未反応のSi−H及びC=C官能基に対する吸収を2154cm−1及び1716cm−1にそれぞれ示した。フラスコに窒素で通風し、連続して窒素パージし、混合物を100℃に約15分間加熱した。加熱した物質のFTIR分析でSi−H基がないことを確認した。粗生成物を最少量(3mL)の無水トルエン中に溶かし、20mLのメタノールを添加することによってカルバゾリル官能基含有シクロペンタシロキサンを沈殿させた。溶解/沈殿工程を3回繰り返した。残った固体を約40mLの無水トルエン中に溶解し、26.6%の固形分含量を有する濃縮貯蔵溶液を作った。
【0113】
〔OLEDの作製〕
4種のOLED(以下の図(figure)参照)を以下のように作製した:シリコンモノオキシド(100nm)を、長方形(6×25mm)を有するマスクを通して、予備洗浄したITOコートガラス基材(25mm×25mm)の第一の端面に沿って熱蒸着させた。3Mスコッチブランドテープの一片(5mm×25mm)を、上記SiO蒸着に対して直角に、基材の第二の端面に沿って適用した。実施例2の1.5%のカルバゾリル官能基含有シクロペンタシロキサンからなるトルエン溶液をITO表面上にスピンコートして、40nmの厚さを有する正孔輸送層を形成した。この複合体を窒素下で80℃に30分間、オーブン中で加熱し、次に室温に冷却させた。トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)、Alq、を上記正孔輸送層上に熱蒸着して、電子輸送層(30nm)を形成した。上記の一片のテープを基材から除去してアノード(ITO)を露出させた。4つの長方形の開口部(3mm×16mm)を有するマスクを通して、上記電子輸送層と上記SiO蒸着物上にアルミニウム(100nm)を蒸着することによって4つのカソードを形成した。代表的OLEDの電子的及び光学的特性を表1に示す。
【0114】
【化15】

【0115】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1(Figure 1)は、本発明によるOLEDの第一の態様の断面図を示す。図2(Figure 2)は、本発明によるOLEDの第二の態様の断面図を示す。図3(Figure 3)は、本発明によるOLEDの第三の態様の断面図を示す。図4(Figure 4)は、本発明によるOLEDの第四の態様の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

〔式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり;Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hである);Zは加水分解性基であり;mは2〜10の整数であり;nは2、3、4、5又は6であり;pは0又は1である。〕
を有する硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン。
【請求項2】
nが3、4、又は5の値を有する、請求項1記載の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン。
【請求項3】
(A)下記式:
【化2】

〔式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり;Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hである);Zは加水分解性基であり;mは2〜10の整数であり;nは2、3、4、5又は6であり;pは0又は1である。〕
を有する硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン;
(B)縮合触媒;及び
(C)有機溶媒
を含むシリコーン組成物。
【請求項4】
pが1の値を有し、さらに式RSiZ4−t(RはC〜Cヒドロカルビル又はハロゲン置換ヒドロカルビルであり、Zは加水分解性基であり、tは0又は1である)を有する架橋剤を含む、請求項3に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
第一の相対する表面と第二の相対する表面とを有する基材;
前記第一の相対する表面上に重ねられた第一の電極層;
前記第一の電極層上に重ねられた発光要素[前記発光要素は、正孔輸送層及び電子輸送層を含み、前記正孔輸送層及び前記電子輸送層は直接互いに重なり、且つ前記正孔輸送層と前記電子輸送層のうちの一つが、
(A)下記式:
【化3】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、Rは-CH-CHR-又は-CH-CHR-Y-(Yは二価の有機基であり、RはR又は-Hであり、Zは加水分解性基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5、又は6であり、pは0又は1である)
を有する少なくとも1種の硬化性のカルバゾリル官能基含有シクロシロキサン、(B)縮合触媒、及び(C)有機溶媒、を含有するシリコーン組成物を硬化させることによって調製される硬化したカルバゾリル官能基含有ポリシロキサン、及び、
下記式:
【化4】

(式中、Rは脂肪族不飽和を有しないC〜C10ヒドロカルビル基であり、mは2〜10の整数であり、nは2、3、4、5、又は6である)
を有する、カルバゾリル官能基を有する少なくとも1種のシクロシロキサンから選択されるカルバゾリル官能基含有ポリシロキサンを含む];並びに
前記発光要素に重ねられた第二の電極層、
を含む有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記正孔輸送層が、カルバゾリル官能基含有ポリシロキサンである、請求項5に記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
前記電子輸送層が、カルバゾリル官能基含有ポリシロキサンである、請求項5に記載の有機発光ダイオード。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−502813(P2007−502813A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523836(P2006−523836)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020661
【国際公開番号】WO2005/019307
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】