説明

カルボキシル化エチレンポリマーブレンドの製造方法

本発明は、α,β−エチレン系不飽和モノ及び/又はジカルボン酸若しくはその無水物(カルボキシルモノマー)又は少なくとも1種のカルボキシルモノマーを含有するモノマー混合物0.05〜15重量部及びラジカル形成開始剤若しくは開始剤混合物0.01〜10重量部を第1工程では流体混合機内で、≧20g/10分のメルトフローレートMFR(190℃/2.16kg)を有する粒子状エチレンポリマー100重量部へ加える工程であって、前記エチレンポリマーはエチレンホモポリマー類(HDPE、LDPE)及び/又は重合された2〜≦20重量%の重合C3−12オレフィン単位(LLDPE、EOP)を有する直鎖状エチレンコポリマー類から選択される工程と、前記混合物を5〜120分間の反応時間にわたり30〜120℃の反応温度でグラフト重合させる工程とによってカルボキシル化エチレンポリマーブレンドを製造するための方法に関する。第2工程では、第1固相工程で得られた変性エチレンポリマー100pbw、<20g/10分のメルトフローレートMFR(190℃/2.16kg)を有するエチレンポリマー若しくはエチレンポリマーブレンドの混合物150〜4,000重量部及びオレフィン系エラストマー0〜4,000重量部が、反応押出機に連続的に加えられ、160〜260℃の温度で反応させられ、0.05〜1重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性エチレンポリマーブレンドが連続的に排出される。このようにして得られた生成物は、様々な素地のための、好ましくは金属表面上及び金属表面間の結合剤及び/又は接着剤として適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の異なるエチレンホモポリマー及び/又はコポリマーから構成されるカルボキシル化エチレンポリマーブレンドを2工程で製造する方法及び樹脂−金属複合材における接着促進剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
詳細には適合性若しくは接着促進剤(接着剤)としての数多くの用途には、密度の異なるポリエチレン類(LDPE、MDPE、HDPE)、エチレン/α,β−エチレン系不飽和C3−12−オレフィンコポリマー類(LLDPE、POE)、又はさらにプロピレンホモ(HPP)並びにランダム及び異相プロピレンコポリマー類(RCP、HCP)、エチレン/プロピレンコポリマー類(EPC)若しくはエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー類(EPDM)をベースとするカルボキシル化オレフィンポリマー類が使用され、これらは一般には高温(150〜300℃)での反応押出法を使用して、カルボキシル基含有モノマー、例えばアクリル酸、フマル酸及び特に、マレイン酸無水物をオレフィン系ポリマー骨格上に、ラジカル形成過酸化物開始剤の存在下で、グラフト化させる工程によって製造される(国際公開第91/18053号、米国特許第4,174,358号、米国特許第4,537,929号、米国特許第4,684,576号、米国特許第4,751,270号、米国特許第4,927,888号、欧州特許第0266221B1号、欧州特許第0287140B1号、欧州特許出願公開第0403109A2号、欧州特許第0467178B1号、欧州特許第0581360B1号、欧州特許第0696303B1号、欧州特許第0878510B1号)。
【0003】
低い反応温度、すなわちオレフィン系ポリマー骨格(グラフト素地)の融点未満の温度の溶媒中で実施されるグラフトカルボキシル化、好ましくはマレエート化(maleinization)は、技術的に極めて手間のかかるポリマー溶解、さらに特にグラフト反応完了後の溶媒分離及び回収、並びにグラフト生成物の精製が必要となるために、酸(無水物)モノマー類の溶融グラフト化に対する実用的な代替法ではないが、グラフト素地の溶融若しくは軟化温度未満で実施される固体−液体粒子状ポリマー相をベースとするオレフィンポリマー類のカルボキシル化は実用的な技術である(旧東独特許第275160A3号、旧東独特許第275161A3号、旧東独特許第300977A7号、独国特許第4123972A1号、独国特許第4342605A1号、欧州特許第0469693B1号)。
【0004】
この目的に特に適するポリマー骨格は、部分結晶性オレフィンポリマー類であり、該部分結晶性オレフィンポリマー類は、高いグラフト重合速度のための1つの前提条件であるが、ガラス温度と溶融温度との間で形成される非晶質相において、低分子化合物、例えば酸若しくは無水物モノマー類に対して高速の拡散速度を可能にする。
【0005】
所定の重合条件下では、フリーラジカル固相グラフト変性のためのポリマー骨格として特殊な形態を有する非晶性及び低結晶性オレフィンエラストマー類を使用することもまた可能であるが(欧州特許第0642538B1号、欧州特許第0805827B1号)、高度に効果的な接着促進剤として使用するために必要とされる特性、特に要求の厳しい金属/樹脂複合材を達成することはできない。
【0006】
特に有力な接着促進剤は、高密度のカルボキシ化(マレエート化)ポリエチレン類(HDPE)、若しくは低密度の分枝状ポリエチレン類(LDPE)に加えて、特に、低C3−12−オレフィンコモノマー成分(15重量%未満、LLDPE)、又は高C3−12−オレフィンコモノマー成分(15重量%超、POE)のいずれかを有する低密度のカルボキシル化直鎖状エチレンコポリマー類、特に、エチレン/オクテン(C)コポリマー類(EOC)、並びにさらにそれらのカルボキシル化のために排他的に溶融グラフト化することによって、好ましくはグラフト剤(米国特許第5,346,963号、米国特許第6,384,139B1号、米国特許第6,331,592B1号、米国特許第6,884,850B1号、独国特許第19841303A1号、国際公開第01/92357A1号、国際公開第98/42760A1号、欧州特許第0659784B1号)及び様々な用途のための接着剤(欧州特許第0696303B1号、欧州特許第0754731B1号、欧州特許第0878510B1号)としてMSAを使用して製造できる、主としてプロピレン単位からなるランダムプロピレン/エチレンコポリマー類である。
【0007】
特殊な用途領域において、溶融カルボキシル化(−マレエート化)エチレン/ビニルアセテート(EVA)又はエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー類(E(M)AE)を使用することもまた可能である(欧州特許出願公開第0266994A2号、欧州特許第0647246B1号、国際公開第93/01052A1号)。
【0008】
さらに、結晶性ポリオレフィン、例えばHDPE若しくはLLDPE及び非結晶性若しくは低結晶性オレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレンゴム(EPM)の溶融グラフトカルボキシル化混合物を使用する接着剤樹脂塊は公知である(欧州特許第0501762B1号)。
【0009】
公知の溶融グラフト化エチレンのホモポリマー及びコポリマー、並びにグラフト変性オレフィン系エラストマー類の欠点は、グラフト化反応中に増加して、接着剤として使用された場合に特にマイナスの作用を及ぼすそれらの高分子量、そして残留モノマーを除去するために概して費用がかさむ点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の欠点を回避しながら、ポリエチレン類(HDPE、LDPE)及び/又はエチレン/α,β−エチレン系不飽和C3−12−オレフィンコポリマー類(EPC、LLDPE、POE)をカルボキシ化することにより、接着促進剤(接着剤)を製造する方法を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、カルボキシル化エチレンポリマーブレンドを2工程で製造するための方法であって、第1工程では、流体混合反応器内において、エチレンホモポリマー類及び/又は、≧80〜98重量%のエチレン/2から≦20重量%のC3−12オレフィン単位の組成を有する直鎖状エチレンコポリマー類から選択される、≧20g/10分のMFR(メルトフローレート)(190℃/2.16kg荷重)を有する固体−液体粒子状エチレンポリマー100重量部(pbw)へ、α,β−エチレン系不飽和モノ及び/又はジカルボン酸若しくはその無水物(カルボキシルモノマー)、又は少なくとも1種のカルボキシルモノマー含有モノマー混合物0.05〜15pbw及び50〜200℃の1時間半減期温度(THW/1h)を有するフリーラジカル形成開始剤0.01〜10pbwを加え、若しくはこれに相当する開始剤混合物を加え、30〜120℃の反応温度で5〜120分間にわたりグラフト重合させ、続いて、
第2工程では、反応押出機内へ、第1固相工程で得られた変性エチレンポリマー100pbwを、エチレンホモポリマー類若しくは、≧85〜98重量のエチレン/2から≧15重量%のC3−12オレフィン単位の組成を有するエチレンコポリマー類、又はLLDPE及びHDPEからなる化合物若しくは反応器ブレンドから選択される、<20g/10分のMFR(190℃/2.16kg荷重)を有する未変性エチレンポリマー若しくはポリマーブレンド150〜4,000pbw、並びに10〜100重量%のプロピレン及び0〜90重量%の重合エチレン及び/又はC4−12−オレフィン及び/又はジエン単位、又は、10〜80重量%の重合ビニルアセテート若しくは(メタ)アクリル酸エステル単位の組成を有するエチレンコポリマーをベースとするオレフィン系エラストマー類0〜4,000pbwと共に、重量測定式注入装置によって連続的に注入し、結果として反応器の終端で0.5〜1重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性オレフィンポリマーブレンドが連続的に排出されるように160〜260℃の温度で反応させる方法である。
【0012】
本発明によるカルボキシル化プロセスにおいて、第1工程では、≧20g/10分のMFR(190℃、2.16kg荷重)を有するより易流動性のエチレンポリマー類、すなわち特に高密度の直鎖状ポリエチレン類(HDPE−NM)若しくは低密度の分枝状ポリエチレン類(LDPE−NM)、又は2から最大20重量%のC3−12オレフィン単位を有する直鎖状エチレンコポリマー類(LLDPE−NM、EOP−NM)から選択される低分子量M(NM)のエチレンポリマー類が選択されるが、その後の溶融グラフト工程においては、第1固相工程で変性されたエチレンポリマーと共に、<20g/10分のMFR(190℃/2.16kg荷重)を有する未変性の低流動性エチレンホモポリマー及び/又はコポリマー、すなわちHDPE−HM、LDPE−HM、LLDPE−HM又はさらにHDPE/LLDPE−ブレンド−HMに対応する高分子量M(HM)を有するエチレンポリマーが使用される。
【0013】
さらに通常は、5〜50重量%のエチレン及び/又はα,β−エチレン系不飽和C4−8−オレフィン及び/又はジエン単位、好ましくは10〜25重量%のエチレン単位(PER)を有するエラストマープロピレン類(ELPP)若しくはランダムプロピレンコポリマー類、又は≧20重量%のα,β−エチレン系不飽和C3−12−オレフィン単位(EOR)、好ましくはプロピレン、ブテン、ヘキセン若しくはメチル−ペンテン若しくはオクテン単位、特に好ましくは25〜50重量%のプロピレン(EPR)、1−ブテン(EBR)若しくは1−オクテン単位(EOR)を有するエチレンコポリマー類、又はエチレン/ビニルアセテート(EVA)若しくはエチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー(E(M)AE)から選択されるオレフィン系エラストマー、好ましくは≧15重量%の重合ブチルアクリレート単位(EBA)を有するエチレンコポリマーが使用される。
【0014】
接着剤のような一部の用途において、特に>3N/mmの接着強度が必要とされない場合は、オレフィン系エラストマー類の添加は省略することができる(0pbwエラストマーをベースとする特殊実施形態)。
【0015】
高圧及び高温下で、ラジカル開始剤を使用して製造された0.910〜0.940g/cm(LDPE)の公知の低密度の分枝状ポリエチレン類とは対照的に、0.940〜0.965g/cm(HDPE)の高密度の直鎖状ポリエチレン類、及び<0.940g/cm(LLDPE)の低密度の、直鎖状エチレン/<15重量%のC3−12−オレフィンコポリマーは、一般にはZiegler若しくはZiegler−Natta、又はPhillipsタイプの触媒を用いる配位触媒作用の公知の技術を用いて製造される。
【0016】
他方では、本発明によって使用できる、≧15重量%の高いC3−12−オレフィン成分を有するエチレンコポリマー類、及び主としてプロピレン単位、例えば特に、PER並びにエラストマー性ポリプロピレン類(ELPP)から構成されるオレフィンエラストマー類は、公知のように、特殊メタロセン触媒系を用いて製造される。
【0017】
特に、溶融グラフト工程のための、化合物若しくはさらにまた反応器ブレンドの形態にある少なくとも2種の異なるエチレン(コ)ポリマー類からなるブレンドの使用は、本発明による方法の適切な実施形態であり、その実施形態によると、第2工程では、<20g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する、10〜90重量%のLDPE若しくはLLDPE及び90〜10重量%のHDPE、好ましくは20〜80重量%のLLDPE及び80〜20重量%のHDPEのブレンドが反応器内、好ましくは二軸型混錬反応器(DSK)内で使用される。
【0018】
カルボキシルモノマー、好ましくはマレイン酸無水物(MSA)及び/又はアクリル酸(AS)をビニル芳香族化合物類の群からのコモノマー、好ましくはスチレン、及び/又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸のC1−12−アルキルエステル類、好ましくはメチルメタクリレート(MMA)、又はメチルアクリレート(MA)若しくはエチルアクリレート(EA)若しくはブチルアクリレート(BA)と混合して使用することもでき、99〜20重量%のカルボキシル及び1〜80重量%のコモノマー、好ましくは90〜50重量%のMSA及び/又はAS及び10〜50重量%のスチレンの組成に相当する量で、固相工程において使用できる。
【0019】
ラジカル開始2工程グラフト化は、十分に高度のカルボキシル化並びに一様なグラフト化を達成するために、有益にはラジカル形成剤、又は好ましくは少なくとも2種の異なるラジカル形成剤の混合物を用いて、50〜200℃の1時間半減期温度(THW/1h)、若しくは1分後に85〜250℃(0.1Mモノクロローベンゼン溶液中で測定)の1分間半減期温度(THW1min)を有する有機過酸化物を全エチレンポリマーグラフト素地量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.02〜2重量%の濃度で使用して実施される。
【0020】
使用可能なラジカル形成剤の選択できる例は、55〜66℃の1時間半減期温度(THW/1h)を有するジアルキルペルオキシド−ジカーボネート類、好ましくは65℃のTHW/1hを有するジブチルペルオキシド−ジカーボネート(DBPOC)及びジセチルペルオキシド−ジカーボネート(DCPOC)、80℃のTHW/1hを有するジラウリルペルオキシド(DLPO)、91℃のTHW/1hを有するジベンゾイルペルオキシド(DBPO)、91℃のTHW/1hを有するtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)、98℃のTHW/1hを有するtert−ブチルペルオキシイソブチレート(TBPIB)、113℃のTHW/1hを有する1,1−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン(DTBPC)、122℃のTHW/1hを有するtert−ブチルペルベンゾエート(TBPB)、132℃のTHW/1hを有するジクミルペルオキシド(DCP)、134℃のTHW/1hを有する2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(DHBP)、141℃のTHW/1hを有する2,5−ジメチル−2,5−ジ(ブチルペルオキシ)−(3)ヘキシン(DYBP)、141℃のTHW/1hを有するジ−tert−ブチルペルオキシド(TBP)、166℃のTHW/1hを有するクミン−ヒドロペルオキシド(CHP)及び185℃のTHW/1hを有するtert−ブチル−ヒドロペルオキシド(TBHP)である。
【0021】
カルボキシル化エチレンポリマー類若しくはエチレンコポリマーブレンド類を製造するための方法の好ましい実施形態は、第1工程では、特にエチレンホモポリマー(HDPE−NM、LDPE−NM)及び/又は≧90〜98重量%のエチレン/2から≦10重量%のC3−8−オレフィン単位の組成を有する直鎖状エチレンコポリマー(LLDPE−NM)から選択される、20〜1,000g/10分のMFR(190℃/2.16kg)を有する粒子状エチレンポリマー100pbwへ、0.2〜12pbwのMSAが単独で、又は0.02〜6pbwのスチレンとのモノマー混合物として、50〜120℃及び120〜180℃の異なる1時間半減期温度(THW/1h)を有する少なくとも2種のラジカル形成開始剤からなる混合物0.05〜5pbwを加えて、50〜100℃の反応温度で、8〜80分間の反応時間にわたってグラフト重合され、続いて、
第2工程では、第1固相工程において得られた変性エチレン(コ)ポリマー、特にエチレンホモポリマー類(HDPE−HM、LDPE−HM)若しくは>90〜98重量%のエチレン/2から≦10重量%のC3−8−オレフィン単位の組成を有するエチレンコポリマー(LLDPE−HM)若しくはHDPE/LLPDEブレンド−HMから選択される、0.1〜20g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する180〜3,600pbwの未変性エチレンポリマー若しくはポリマーブレンド100pbw、並びに50〜75重量%のエチレン及び25〜50重量%のC3−8−オレフィン単位(EOR)、又は70〜100重量%のプロピレン及び0〜30重量%のエチレン単位からなる、少なくとも1種の公知の安定剤及び/又は酸化防止剤を含有するエラストマー(ELPP、PER)の混合物100〜3,000pbwが反応させられ、連続的に押出機の中へ170〜250℃の素地温度で注入され、0.1〜0.6重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性オレフィンポリマーブレンドが押出機ノズルから連続的に排出されることからなる。
【0022】
この好ましい方法の変形実施形態に対応して、オレフィン系エラストマーと共に、別個の混合技術を用いてその中に分散さていた、全カルボキシル化エチレンポリマーブレンドのために必要な全量の安定剤/酸化防止剤が加えられる。
【0023】
使用できる安定剤及び/又は酸化防止剤は、オレフィンエラストマー100pbwに対して、0.01〜5pbw、好ましくは0.1〜2pbwの量にある、オレフィン系ポリマー及びエラストマーのために公知の物質、特に、立体障害フェノール系化合物をベースとする一次酸化防止剤である。さらにまた各場合において少なくとも1種の一次及び少なくとも1種の二次酸化防止剤の組み合わせ、例えば1種の立体障害フェノール系及び1種のホスファイト化合物系を使用することもまた可能である。
【0024】
好ましくは、0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性エチレンポリマーブレンドは、様々な素地のための、好ましくは金属表面上の及び金属表面間の接着促進剤及び/又は接着剤として使用される。
【0025】
以下では、本発明による方法について、実施例によって詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0026】
実施例1
第1工程(固相グラフト化工程)
温度調節することができ、連続的に調節可能な攪拌器を装備したReimelt Henschel社製の流体混合反応器内に、0.920g/cmの密度、47g/10分のMFR(190℃、2.16kg)及び0.21mmの平均粒子径dを有する96.6pbwのLLDPE粉末(LLDPE−1)を0.16pbwのジセチルペルオキシ−ジカーボネート(DCPOC)、0.47pbwの2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサン(DHBP)及び2.69pbwのMSAと共に、20℃の反応器内部温度で予備配置する。次に、N雰囲気下、400/分の攪拌速度で、1.2℃/分の加熱速度で同時に温度を上昇させながら反応混合物を分散させ、70℃の最終反応温度TR1に達したら、その温度で60分間の時間tR1にわたり維持する。
【0027】
固相反応は、反応生成物を20℃の冷却ミキサー内へ排出することによって終了し、後に反応生成物は第2溶融グラフト工程のためにそこから取り出す(実施例13)。
【0028】
実施例2〜12
実施例1に記載したプロセス管理によると、他のグラフト変性エチレン(コ)ポリマー類は、固相内で以下のエチレンポリマーグラフト素地粉末:
LLDPE−1:密度0.920g/cm、MFR(190℃、2.16kg)=47g/10分
LLDPE−2:密度0.915g/cm、MFR(190℃、2.16kg)=25g/10分
HDPE−1:密度0.958g/cm、MFR(190℃、2.16kg)=38g/10分
16重量%のC成分を有するエチレン/オクテンコポリマー(EOP):密度0.913g/cm、MFR(190℃、2.16kg)=30g/10分
を用いて、MSA若しくはAS、又はMSA/スチレン(S)若しくはAS/S混合物、並びに2つの過酸化物開始剤の組み合わせを加えることによって製造される。
【0029】
使用した開始剤は、DHBP、DCPOC及びDLPOであった。
【0030】
実施例1において使用した装填速度及び加熱速度を維持しながら変更された重要なパラメータは、反応終点温度TR1及びTR1に関連する反応時間tR1、並びに表1に列挙した実施例に対応するモノマー/開始剤比であった。
【表1】

【0031】
表1は、第1工程のために重要なプロセスパラメータを含む。
・実施例番号(第1列)
・使用したエチレンポリマー(グラフト素地)(重量%)(第2列)
・使用した開始剤のタイプ及び濃度(重量%)(第3列)
・MSA又はASは、濃度を示している(重量%)(第4列)
・スチレン(S)は、濃度を示している(重量%)(第5列)
・反応時間(tR1)(分)(第6列)
・反応終点温度(TR1)(℃)(第7列)
【0032】
実施例13〜27
第2工程(溶融グラフト工程)
第1工程において得られた実施例1に記載の固相生成物粉末は、1.16pbw/時(MT/時)の注入速度で定量はかりを用いて、水中増粒子機(UWG)を装備したWerner&Pfleiderer社製の二軸型混錬押出機ZSK25型内へ注入する(L=42D;温度範囲:175〜250℃;スクリュー回転数:300rpm)。同時に、別のはかりを通して、0.88重量%のIrganox 1330(Ciba社製)が事前に加えられていた、5.84MT/時のLLDPE−3顆粒子(密度0.917g/cm;MFR(190/2.16)=2.3g/10分)及び3.0MT/時の粒子状プロピレン/エチレン(20重量%)エラストマーを容積メルトフローレートMVR(190/2.16)=1.2cm/10分)(PER)で注入する。
【0033】
反応押出は、固相グラフト生成物LLDPE−3顆粒子とPERとの間の上述した質量比に一致して、10MT/時の平均スループットで発生する。
【0034】
押出機ノズルから207℃の温度Tで排出された生成ストランドは、UWGによって加工される。顆粒子を乾燥させた後に、以下の特性値が決定される(実施例13):
MFR(190℃/5kg)=2.7g/10分、及び
マレエート化度CSex=0.25重量%
【0035】
第1工程においてグラフト変性されたエチレンポリマー類の他に、第2グラフト工程では以下のエチレンポリマーグラフト素地:
LLDPE−3:密度0.917g/cm及びMFR(190/2.16)=2.3g/10分
LLDPE−4:密度0.922g/cm及びMFR(190/2.16)=4.9g/10分
HDPE−2:密度0.962g/cm及びMFR(190/2.16)=0.5g/10分
−PEブレンド(40重量%のLLDPE及び60重量%のHDPEの反応器ブレンド組成物)、MFR(190/2.16)=0.8g/10分
並びに以下のオレフィンエラストマー類(各場合に0.88重量%のIrganox 1330を含有する):
−PER、密度0.855g/cm及びMVR(190/2.16)=1.2g/10分
−EOR−1、密度0.868g/cm及びMFR(190/2.16)=0.5g/10分
−EOR−2、密度0.870g/cm及びMFR(190/2.16)=5g/10分
を使用した。
【表2】

【0036】
表2の説明
第1列:実施例の番号
第2列:使用した固相グラフト生成物の濃度(pbw/時(MT/時))、対応する表1の実施例番号とともに示している
第3列:使用したLLDPE−HM、HDPE−HM若しくはLLDPE/HDPEブレンドHM(PE−HM)のタイプ及び濃度(MT/時)
第4列:使用したオレフィンエラストマーのタイプ及び濃度(MT/時)
第5列:ZSKノズルで測定した平均質量温度(T)(℃)
第6列:メルトフローレートMFR(190℃、5kg)(g/10分)
第7列:グラフト化カルボン酸含量(CSex)(重量%)
第8列:接着若しくは剥離強度(N/mm)
【0037】
グラフト化MSA若しくはAS含量CSex、すなわちグラフト化度(カルボキシル化度、又はMSAグラフト化においてはマレエート化度とも呼ばれる)を、以下のように、カルボン酸の成分(MSA若しくはMA)によって中和されないKOHの逆滴定によって決定する:
沸騰メタノール中で得られた残留物を80℃で6時間にわたり処理した後、100mLの水飽和キシレン及び20mLの0.1M メタノール性KOHの混合液とともに2gのグラフト生成物サンプルに数滴の1%メタノール性フェノールフタレイン溶液を添加し、0.1M HClで滴定する。
【0038】
メルトフローレートMFR(190℃/5kg荷重)は、ISO1133に従って決定した。
【0039】
上記の表2は、上述した成分から得られたカルボキシル化エチレン(コ)ポリマー系について得られた溶融グラフトパラメータ、MFR及びCSex値を列挙している。
【0040】
さらに、表2は、本発明によるカルボキシル化エチレンコポリマーブレンドを評価するための重要な特性としての接着強度(変性剥離強度)についての特性値を列挙している。
【0041】
比較のために、表2では、固相内でグラフト化されたエチレン(コ)ポリマー類の1つを事前配置せずに、溶融物内でのみグラフトカルボキシル化された4つのエチレン(コ)ポリマー(比較例13A、比較例15A、比較例18A及び比較例22A)が記載され、これらの場合は本発明による実施例とは対照的に、第1工程において製造されたグラフト生成物の代わりに、各場合に使用されるPE−HMの一部に混合されたMSA及び開始剤DHBPが注入される。従って、比較例13Aによると、第1はかりを通して1.10MT/時のLLDPE−3、0.05MT/時のMSA及び0.01MT/時のDHBPの混合物が注入され、第2はかりを通して5.84MT/時の純粋LLDPE−3が注入される。他の3つの比較例についてもこの方法が適切に繰り返された。
【0042】
使用した接着強度の特性値は、Zwick GmBH社製の材料試験機TC−FR010TH.A5Vにおいて、100mm/分の引張速度でクランプで挟み付けたアルミニウムシート片/0.3mm接着促進剤シート/アルミニウムシート片複合材(Al/HV/Al)の試験片について決定した剥離強度である。
【0043】
乾燥させた後、UWGによって得られた顆粒子を厚さ0.3mmのシートに押出成形し、長さ80mm及び幅40mmの片に切断し、同一寸法の2枚のアルミニウム片内に配置する。次にAl/HV/Al複合材を180℃のホットキャビネット内でアニーリングし、ホットキャビネット内に様々な長さの保管時間にわたって置いた後、追加の重量若しくは圧力を適用せずに測定する。
【0044】
8分間の保管時間後、3片の(13.3×80)mmに切断したAl/HV/Al片上で測定を実施する。表2に列挙した剥離強度は、試験した接着剤について4種のAl/HV/Al複合材(従って12の個別試験片)から各場合について得られた平均値である。
【0045】
グラフト生成物の特性値及び純粋溶融カルボキシル化生成物(比較例13A、15A、18A及び22A)の特性値間の比較が示すように、本発明によって製造されたカルボキシル化エチレンポリマーブレンドは、高い接着強度(剥離強度)と共に、使用に十分に適した1〜7g/10分のMFR(190℃/5kg)値に相当する溶融粘度を特徴とする。
【0046】
さらに、これらの新規な接着促進剤の高い剥離強度が長時間のアニーリング後であっても変化しないままであることを指摘しておかなければならない。2工程の固相/溶融グラフトカルボキシル化に基づくこの結果は、予想できないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル化エチレンポリマーブレンドを製造するための方法であって、
第1工程では、流体混合反応器内において、エチレンホモポリマー類(HDPE−NM、LDPE−NM)及び/又は≧80〜98重量%のエチレン/2から≦20重量%のC3−12オレフィン単位の組成を有する直鎖状エチレンコポリマー類(LLDPE−NM、EOP−NM)から選択される、≧20g/10分のMFR(メルトフローレート)(190℃/2.16kg荷重)を有する固体−液体粒子状エチレンポリマー100重量部(pbw)へ、0.05〜15pbwのα,β−エチレン系不飽和モノ及び/又はジカルボン酸若しくはその無水物(カルボキシルモノマー)、又は少なくとも1種のカルボキシルモノマーを含有するモノマー混合物及び50〜200℃の1時間半減期温度(THW/1h)を有する0.01〜10pbwのフリーラジカル形成開始剤を加え、又は相当する開始剤混合物を加え、30〜120℃の反応温度で5〜120分間にわたりグラフト重合させ、続いて、
第2工程では、反応押出機内へ第1固相工程で得られた変性エチレンポリマー100pbwを、エチレンホモポリマー類(HDPE−HM、LDPE−HM)若しくは組成物≧85〜98重量のエチレン/2〜≧15重量%のC3−12オレフィン単位のエチレンコポリマー類(LLDPE−HM)、又はLLDPE及びHDPEからなる化合物若しくは反応器ブレンド(HDPE/LLDPE−ブレンド−HM)から選択される、<20g/10分のMFR(190℃/2.16kg荷重)を有する未変性エチレンポリマー若しくはポリマーブレンド150〜4,000pbw、並びに10〜100重量%のプロピレン及び0〜90重量%の重合エチレン及び/又はC4−12−オレフィン及び/又はジエン単位、又は10〜80重量%の重合ビニルアセテート(EVA)若しくは(メタ)アクリル酸エステル単位(E(M)AE)を有するエチレンコポリマーをベースとするオレフィン系エラストマー類0〜4,000pbwと共に、重量測定式注入装置によって反応押出機内へ連続的に注入し、結果として反応器の終端で0.5〜1重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性オレフィンポリマーブレンドが連続的に排出されるように160〜260℃の温度で反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
カルボキシルモノマーとしてのマレイン酸無水物(MSA)及び/又はアクリル酸(AS)若しくはそれらの混合物を、ビニル芳香族化合物類、好ましくはスチレン、及び/又はアクリル酸若しくはメタクリル酸のC1−12−アルキルエステル類、好ましくはメチルメタクリレート(MMA)、又はメチルアクリレート(MA)若しくはエチルアクリレート(EA)若しくはブチルアクリレート(BA)の群からのコモノマーと共に、99〜20重量%のカルボキシルモノマー/1〜80重量%のコモノマーの組成で、好ましくは90〜50重量%のMSA及び/又はAS/10〜50重量%のスチレンの組成で、固相工程において使用することを特徴とする、請求項1に記載のカルボキシル化エチレンポリマーブレンドを製造するための方法。
【請求項3】
第1工程では、エチレンホモポリマー(HDPE−NM、LDPE−NM)及び/又は≧90〜98重量%のエチレン/2から≦10重量%のC3−8−オレフィン単位の組成を有する直鎖状エチレンコポリマー(LLDPE−NM)から選択される、20〜1,000g/10分のMFR(190℃/2.16kg)を有する粒子状エチレンポリマー100pbwへ、MSA0.2〜12pbwを単独で、又はスチレン0.02〜6pbwとのモノマー混合物として、50〜120℃及び120〜180℃の異なる1時間半減期温度(THW/1h)を有する少なくとも2種のラジカル形成開始剤からなる混合物0.05〜5pbwとともに加えて、50〜100℃の反応温度で、8〜80分間の反応時間にわたってグラフト重合し、続いて
第2工程では、押出機内へ、第1固相工程において得られた変性エチレン(コ)ポリマー、特にエチレンホモポリマー類(HDPE−HM、LDPE−HM)又は組成物>90〜98重量%のエチレン/2から≦10重量%のC3−8−オレフィン単位のエチレンコポリマー類(LLDPE−HM)、若しくはHDPE/LLPDEブレンドから選択される、0.1〜20g/10分のMFR(190℃、2.16kg)を有する180〜3,600pbwの未変性エチレンポリマー若しくはポリマーブレンド100pbw、並びに50〜75重量%のエチレン及び25〜50重量%のC3−8−オレフィン単位(EOR)、又は70〜100重量%のプロピレン及び0〜30重量%のエチレン単位からなる、少なくとも1種の公知の安定剤及び/又は酸化防止剤を含有する、エラストマー(ELPP、PER)の混合物100〜3,000pbwを連続的に注入し、170〜250℃の素地温度で反応させ、0.1〜0.6重量%のカルボキシル化度を有するグラフト変性オレフィンポリマーブレンドが押出機ノズルから連続的に取り出すことを特徴とする、請求項1及び2に記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィン系エラストマーは、別個の混合工程において加えられる一次酸化防止剤、好ましくは立体障害フェノール類の群からの化合物、又は各場合において少なくとも1種の一次酸化防止剤及び1つの二次酸化防止剤、好ましくは1つの立体障害フェノール化合物及び1つのホスファイト化合物の組み合わせを含む系をオレフィンエラストマー100pbwに対して0.01〜5pbwの量で含有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2010−539258(P2010−539258A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524348(P2010−524348)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001506
【国際公開番号】WO2009/033465
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】