説明

カロチノイド、ニコチンアミド、亜鉛、カギカズラ種の水溶性抽出物を含有するサプリメントおよびこれを使用する方法

ヒトまたは他の哺乳動物に投与するためのサプリメントであって、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質を含有する。このサプリメントは、経口投与のための形態、特に栄養ドリンク剤の形態、または非経口投与のための処方物であり得る。組み合わさって、個人のDNA損傷に対する抵抗力を改善し、DNA修復能力を増強し、免疫細胞機能を刺激しそして腫瘍細胞増殖を阻害する有効量で、個人にこのサプリメントを毎日投与する工程を包含する、ヒトを処置する方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒトおよび他の動物を処置して、DNA損傷を軽減し、DNA修復能力を増強し、そして免疫機能を増強するためのサプリメントならびに使用方法に関する。より具体的には、本発明は、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質、カギカズラ種の水溶性抽出物質および水性媒体を含有する、液体サプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
βカロチンのようなカロチノイドの正確な作用機構は完全には理解されていないが、主要な機構の1つは、代謝の副産物として産生されるかまたは外因性の環境曝露から産生される、酸素フリーラジカル(oxygen derived free radical)を除去することであることは、科学的に広く認められている。フリーラジカル除去剤(scavenger)として、カロチノイドは、有毒な環境曝露または内因性の細胞代謝の誤りによって引き起こされる、細胞のDNA、RNAおよびタンパク質における化学的損傷(最終的に疾患状態をもたらし得る)を軽減するか、またはこの化学的損傷から守ることが期待され得る。
【0003】
ニコチンアミドおよびその代謝等価物であるニコチン酸(ナイアシン、ビタミンB)またはさらにナイアシンの合成前駆体であるトリプトファンは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞プールの形成および維持のための主要な前駆体である。NADは、細胞のATP産生および細胞の酸化還元電位の維持のために不可欠であり、そしてこれはまた、DNA修復酵素であるポリADP−リボシルトランスフェラーゼ(ADPRT)の基質でもある。ナイアシン剥奪は、動物系およびヒトのどちらにおいても、組織培養細胞におけるNADプールを著しく減少させる。NADを奪われた細胞は、DNA損傷に対して上昇した感受性を有し、そして軽度のニコチンアミド欠乏後、培養細胞中またはラット肝臓におけるポリ(ADP−リボース)産生のレベルは、著しく低かった。一方、ナイアシンが普通の栄養への補充として与えられた場合、NADプールは増大し、そして細胞は酸素ラジカルに対して感受性が低下した。従って、ニコチンアミド/ナイアシンの主要な作用機構は、NADおよびATPのプール供給(すなわち、これらの生化学物質は、生体のエネルギー供給源である)を増幅させることによって、エネルギー代謝についての細胞電位が上昇する点で、カロチノイドとは異なる。これもやはり、細胞、組織および器官に有用であり、DNA損傷を軽減し、DNA修復(すなわち、ポリADP−リボシル化)を増強し、そして疾患状態との関連が明らかである免疫機能を刺激する。
【0004】
亜鉛は、細胞の複製、DNA修復および抗酸化防御に関するいくつかの酵素機能における不可欠な補因子であることにより、疾患の発達および免疫機能に影響を与える点で、その作用機構に関してカロチノイドおよびニコチンアミドとは異なる。亜鉛は、細胞複製およびDNAポリメラーゼ活性に必要である。ポリアデノシン二リン酸リボシルトランスフェラーゼ(ADPRT)遺伝子およびシステイン残基を有する他のDNA修復タンパク質のDNA結合ドメイン内には2つのジンクフィンガーが存在し、そしてこれらのシステイン残基がそのチオール構成成分において酸化される場合、これらはDNA結合を妨げ、そしてDNA修復への関与を妨げる。その上さらに、スーパーオキシドジムスターゼは、細胞を有害なスーパーオキシドアニオンから守る抗酸化酵素である。なぜなら、このラジカル(スーパーオキシドアニオン)は、酵素反応の基質であり、これもまた亜鉛を補因子として必要とするからである。
【0005】
さらにその上、特許文献1(Peroに対する)は、カロチノイド、ニコチンアミドおよび亜鉛の組み合わせの、DNA損傷を軽減し、DNA修復能力を増強しそして免疫機能を増強するための、他の活性成分非存在下での使用を教示する。商業的には、これらの3種の物質の組み合わせは、Nicoplex(登録商標)の商標の下で市販されている。
【0006】
特許文献2、特許文献3、特許文献4および同時継続の米国特許出願番号第10/093,794号において教示されるように、C−MED−100(登録商標)またはActivar AC−11TMとして公知のカギカズラ種の水溶性抽出物、従ってその生物活性成分であるカルボキシアルキルエステル類は、栄養補助食品として強力な栄養補給を与えることが公知である。なぜなら、カギカズラ種の水溶性抽出物は、DNA修復プロセスおよび免疫機能(言い換えると、老化を調節する重要な生理学的プロセスである)を増強させるからである。これらのプロセスはどちらも、核転写κΒ(NF−κΒ)の調節に関連する。NF−κΒは、(i)細胞をアポトーシス細胞死から救う核の事象および(ii)炎症促進性サイトカイン産生を、制御することが周知である。(非特許文献1、非特許文献2。)従って、この機構は、アポトーシスのプログラム細胞毒性への誘導を炎症促進性サイトカイン産生および炎症の阻害に直接的に結びつける。これは、上述の3種の化学物質の機構とは異なる。
【0007】
上で示したように、それぞれ別個の成分は、細胞レベルまたは分子レベルで、細胞の正常な機能を増強するための、異なる作用機構を有する。しかし、先行技術において、上述の4種の物質は、個体のDNA損傷に対する抵抗力を改善し、DNA修復能力および免疫機能を増強し、そして老化関連障害を予防することにおいてさらなる増強された機能を得るために、組成物中またはシステムとして使用されていないし、認識もされていない。
【0008】
一方で、酸性pHは種々の病態生理学的状態において重要な役割を果たすことが公知であり、動物モデルにおいて発癌性であることが実証されている。近年の研究は、酸性pHを、ヒトにおける前新生物性バレット食道の発症においても関連付けている。近年、Xiaoらは、マウス皮膚発癌モデル研究において、酸性pHバッファー(250mMクエン酸リン酸(pH2.5)100μl)のマウスの肌への塗布は、9,10−ジメチル−1,2−ベンズアントラセン(DMBA)−惹起マウスにおいて腫瘍を誘導することを示した(非特許文献3)。その上さらに、組織培養モデルにおけるXiaoらの研究は、酸性pHは、TOP2毒物VP−16(デメチルエピポドフィロトキシンエチリデン−D−グルコシド)の様に作用し、TOP2媒介性DNA損傷を誘導することを示唆している:(i)酸性pHは、TOP2依存性DNA損傷シグナルを誘導する(p53のアップレギュレーションおよびH2AX(毛細血管拡張性運動失調変異(ATM)キナーゼ/ATMおよびRad3関連(ATR)キナーゼについての基質)のSer−139リン酸化によって証明される);(ii)腫瘍細胞における酸性pH誘導性細胞毒性は、TOP2欠損細胞において軽減する;(iii)酸性pHは、TOP2依存性様式で、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子の変異頻度を上昇させる;ならびに(iv)酸性pHは、インビトロで可逆性のTOP2媒介性DNA鎖切断を誘導する。これらの科学研究結果は、酸性飲料(代表的に4未満のpHを有する、大衆的な炭酸飲料などの酸性飲料)を飲むことの不利益を強く示唆している。
【0009】
1950年代初期に、日本人は水道水を酸性の水とアルカリ性の水とに分ける水電離化装置を開発した。この開発者らは、アルカリ性の水は、ヒトを含む哺乳動物に有益であることを発見した。1966年に、日本政府の厚生省は、これらの型の水電離化装置を、健康改善医療用デバイスとして認可した。アルカリ性の水の提供の別のアプローチにおいて、特許文献5(Whangに対する)は、飲料水のためのアルカリ性添加剤を教示する。これは、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの混合物のアルカリ性溶液の濃縮物である。Whangは、約9から約12までの範囲のpHを有するアルカリ性の飲料水、および水道水に添加剤を加えることによりアルカリ性飲料水を作製する方法を、さらに教示する。
【特許文献1】米国特許第6,020,351号明細書
【特許文献2】米国特許第6,039,949号明細書
【特許文献3】米国特許第6,238,675号明細書
【特許文献4】米国特許第6,361,805号明細書
【特許文献5】米国特許第5,306,511号明細書
【非特許文献1】Beg AAおよびBaltimore D.,「An essential role for NF−κΒ in preventing TNF−α induced cell death.」,Science,1996年,第274巻,p.782−784
【非特許文献2】Wang C−Y,Mayo M.W.,Baldwin A.S.,「TNF−α and cancer therapy−induced apoptosis:Potentiation by inhibition of NF−κΒ」,Science,1996年,第274巻,p.784−787
【非特許文献3】Xiaoら,「PNAS」,2003年4月,第100巻,第9号,p.5205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上の記載に基づき、DNA損傷に対する哺乳動物(特にヒト)の抵抗力を改善し、DNA修復能力および免疫機能を増強し、そして老化関連障害を予防することにおいてさらに増強された機能を有する、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給源物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質を含有する栄養補助食品を摂取することが望ましい。便利な栄養ドリンク剤の形態の、好ましくはアルカリ性のpHを有する、このようなサプリメントを提供することが、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
1つの実施形態において、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物に投与するためのサプリメントに向けられる。このサプリメントは、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質から本質的に構成される。このサプリメントは、経口投与の形態、特に栄養ドリンクのような液体サプリメントの形態であり得るか、または非経口投与のための形態であり得る。好ましくは、この液体サプリメントは、約7.5から約9.0までの範囲のpHを有する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、本発明のサプリメントを使用して、哺乳動物(特にヒト)を処置する方法に向けられる。この方法は、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質から本質的に構成されるサプリメントを哺乳動物に投与する方法を包含し、ここで、これらの物質は、組み合わさって、DNA損傷に対する抵抗力を改善し、DNA修復能力を増強し、免疫細胞機能を刺激しそして腫瘍細胞増殖を阻害するために有効な量の日用量で、この哺乳動物に投与される。好ましくは、ヒトを処置するためのこの日用量は、約50mgから150mgまでのカロチノイド、約50mgから約150mgまでのニコチンアミド、約5mgから約50mgまでの亜鉛塩、約100mgから約1000mgまでのカギカズラ種の水溶性抽出物を含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
1つの実施形態において、本発明は、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質から本質的に構成されるサプリメントを提供し、このサプリメントは経口で投与されて、インビボで細胞のDNA損傷に対する個体における抵抗力を上昇させ、細胞のDNA修復を増強し、そして免疫細胞機能を刺激する。本発明の基本的な原理は、DNA修復能力を増強し、免疫細胞の応答性を刺激し、そして腫瘍細胞増殖を阻害する、公知の特性を有するが作用機構の異なる物質を、組み合わせることである。より具体的には、カロチノイドは、細胞によって内因的に産生されるかまたは環境によって外因的に産生されるラジカルの、求電子性除去剤である。ニコチンアミドは、NADまたはATPの産生の増大を介して、エネルギーの供給源を増幅する。亜鉛は、抗酸化剤、複製酵素およびDNA修復酵素の細胞における不可欠な補因子である。カギカズラ種の水溶性抽出物質は、NF−κΒ阻害によるフリーラジカル損傷を予防し、アポトーシスにより分化および免疫細胞応答性を誘導し、DNA修復を増強し、そして腫瘍細胞増殖(言い換えれば、老化に関連する主要な因子)を阻害する。組み合わせにおいて、これらの4つの異なる機構は、DNA損傷に対する抵抗力の改善、DNA修復能力および免疫細胞応答性の増強、老化関連障害の予防を相乗的に達成し得る。
【0014】
用語「カロチノイド物質」は、本明細書中で使用される場合、αカロチン、βカロチン、γカロチン、リコペンまたはこれらの組み合わせのようなカロチノイドを意味する。用語「ニコチンアミド物質」は、本明細書中で使用される場合、ニコチンアミド、ナイアシン、トリプトファン(ナイアシン合成のアミノ酸前駆体)、NAD(ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチド)、NADH(還元型NAD)、NADP(NADリン酸)、NADPH(還元型NADP)またはこれらの組み合わせを含むことを意味する。用語「亜鉛供給物質」は、本明細書中で使用される場合、ヒトおよび/または他の動物への投与のための亜鉛の適切な供給源を意味し、例えば、1種以上の亜鉛塩(硫酸亜鉛またはメチオニンまたはアスパラギン酸塩のようなアミノ酸、ジペプチド、グルコン酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、酸化物または酢酸塩などの他の亜鉛塩)を意味する。
【0015】
カギカズラ種(Uncaria species)としては、tomentosa、guianensis、pteropoda、homomalla、perrottetiiまたはrhynchopyllaが挙げられる。用語「カギカズラ種の水溶性抽出物」とは、本明細書中で使用される場合、米国特許第6,361,805号、同第6,238,675号および同第6,039,949号(本明細書によりその全体が参考として援用される)に記載される方法を用いて得られるカギカズラ種の水溶性抽出物をいう。その上さらに、カギカズラ種の水溶性抽出物質の生物活性成分は、同時継続特許出願番号第10/093,794号(本明細書によりその全体が参考として援用される)に記載されるように、カルボキシアルキルエステル類であることが同定されている。
【0016】
カギカズラ種の水溶性抽出物は、商品名Activar AC−11TMまたは商品名C−Med−100(登録商標)の下でOptigenex,Inc,New York,NYから市販されている。より具体的には、Activar AC−11TMは、Uncaria tomentosaの樹皮からの湯抽出物(hot water extract)であり、米国特許第6,039,949号に記載されるプロセスに従って製造される。簡潔には、この抽出物は、150gmの樹皮を5リットルの水道水中で12時間95℃で加熱し、水溶性画分をデカントし、得られた水抽出物を限外濾過して、10,000より大きい分子量を有する全ての成分を除去することから製造される。10,000未満の分子量を有する画分は、噴霧乾燥される。製品は、ベージュから橙褐色の吸湿性の微細粉末の形態であり、16%以上のカルボキシアルキルエステル類、0.05%未満の(10,000ダルトン未満)インドールアルカロイド類および0%の(10,000ダルトンより大きい)インドールアルカロイド類を含有し、水に容易に溶解可能である(400mg/mlより大きい水中溶解性)。
【0017】
本発明の例示的または好ましい実施形態において、このカロチノイド物質は、αカロチン、βカロチン、γカロチン、リコペンおよびこれらの混合物であり得る;このニコチンアミド物質は、ニコチンアミド、ナイアシン、トリプトファンまたはこれらの混合物であり得る;そして亜鉛供給物質は、1種以上の亜鉛塩であり得る。これらの物質は、購入可能である。2社の利用可能な供給元は、C.E.Jamieson,Ltd.(Ontario,Canada)およびIntegrated Biopharma,Inc.(Hillside,NJ)である。このカロチノイドは、100mgの軟質ゲルカプセル中のCaroplexとして、またはリコペンもしくはβカロチンの水溶性形態として供給され得る。ニコチンアミドは100mg錠剤であり、グルコン酸亜鉛は10mg錠剤またはNucycle Therapy,Inc.(Hillside,NJ)の製品Phytozinc(登録商標)である。Caroplexは、ヤシ油から製造されたカロチノイドの天然供給源であり、βカロチン=60%、αカロチン=34%、γカロチン=3%およびリコペン=3%を含有する。これらの3種の物質の他の形態または用量もまた、利用可能である。
【0018】
サプリメント中の活性成分の濃度は、製品の形態に依存し、広範な範囲であり得る。1つの実施形態において、このサプリメントは、約5mgから約100mgまでのカロチノイド、約5mgから約100mgまでのニコチンアミド、約1mgから約30mgまでの亜鉛塩、約10mgから約600mgまでのカギカズラ種の水溶性抽出物(薬学的に受容可能な液体キャリア100ml中のActivar AC−11TMの形態)を有し得る。
【0019】
このサプリメントは、種々の投薬形態であり得、例えば、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル剤、錠剤または散剤、あるいは液体投薬形態(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、粉末または顆粒の分散剤、乳剤または水性懸濁剤もしくは油性懸濁剤)であり得る。無菌液体投薬形態で非経口的に投与されることもまた、可能である。
【0020】
経口使用を意図する組成物は、当該分野で公知の方法に従って、薬学的組成物を製造するために調製され得、そしてこのような組成物は、薬学的に洗練されかつ口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、香料添加剤、着色剤および保存剤を含む1種以上の薬剤を含有し得る。
【0021】
錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合されている、活性成分を含有する。このような賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤(例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたは乳糖);顆粒化崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム);および潤沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)が挙げられる。圧縮錠剤は、コーティングなしでもよく、または公知の技術により、任意の不快な味を隠しそして錠剤を空気から保護するために糖コーティングされていてもフィルムコーティングされていてもよく、または胃腸管における選択的な崩壊および吸収のために腸溶コーティングされていてもよい。
【0022】
硬質ゼラチンカプセル剤または液体充填軟質ゼラチンカプセル剤は、活性成分および不活性粉末キャリアまたは不活性液体キャリア(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、乳酸、レシチンデンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油、薬学的に受容可能な合成油およびカプセル剤の製造に適した他の希釈剤であるが、これらに限定されない)を含有し得る。錠剤およびカプセル剤のどちらも、一定時間にわたる医薬の持続的な放出を提供する徐放性製品として製造され得る。
【0023】
さらなる実施形態において、本発明は、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質、カギカズラ種の水溶性抽出物および水性媒体から本質的に構成される液体サプリメントを、インビボで個体の細胞DNA損傷に対する抵抗力を上昇させ、細胞DNA修復を増強し、そして免疫細胞応答性を刺激するために経口投与される栄養ドリンク剤として提供する。
【0024】
この液体サプリメントは、当該分野で公知の飲料の製造のための方法に従って調製される。カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物は、水性媒体中に溶解されるかまたは懸濁されて、濃縮液体サプリメントまたは栄養ドリンク剤を製造する。栄養ドリンク剤として、液体サプリメント中の活性成分の濃度は、上述の濃度範囲の低い部分であり得る。なぜなら、消費者は、1日に多数のドリンク剤を摂取し得るからである。
【0025】
好ましくは、栄養ドリンク剤の形態で、この液体サプリメントは、約7.5から約9の範囲のアルカリ性pHを有する。このpHは、薬学的に受容可能なpH調整剤またはバッファーを用いてこの液体サプリメントのpHを調整することにより得られ得る。pH調整剤およびバッファーの適切な例としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムおよびリン酸バッファーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
さらに、この液体サプリメントはまた、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物中の、水性懸濁剤の形態でもあり得る。このような賦形剤は、懸濁剤(例えば、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴム);分散剤または湿潤剤(例えば、例えばレシチンのような天然に存在するホスファチド、または例えばステアリン酸ポリオキシエチレンのような脂肪酸を有するアルキレンオキシドの濃縮生成物、または例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールのような長鎖脂肪族アルコールを有するエチレンオキシドの濃縮生成物、または例えばポリエチレンソルビトールモノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分的エステルを有するエチレンオキシドの濃縮生成物、または例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートのような脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分的エステルを有するエチレンオキシドの濃縮生成物)である。水性懸濁剤はまた、1種以上の保存剤(例えば、エチル、n−プロピルまたはp−ヒドロキシベンゾエート)、1種以上の着色剤、1種以上の香料添加剤、および1種以上の甘味剤(例えば、ショ糖、サッカリンまたはシクラミン酸ナトリウムまたはシクラミン酸カルシウム)を含有し得る。
【0027】
さらなる実施形態において、本発明は、DNA損傷を低下させ、DNA修復プロセスを改善し、免疫機能を増強しそして老化関連障害を予防するためのサプリメントの使用の方法を提供する。
【0028】
このサプリメントの好ましい日用量は、約50mgから150mgまでのカロチノイド、約50mgから約150mgまでのニコチンアミド、約5mgから約50mgまでの亜鉛塩、約100mgから約1000mgまでのカギカズラ種の水溶性抽出物(Activar AC−11TMの形態)である。
【0029】
実施例1から実施例3は、DNA修復能力の増強を介してDNA損傷に対する抵抗力を改善し、それによって免疫機能を刺激するための、本発明のサプリメントを用いた効果を説明する。これらは、言い換えると、内因性酸化(一般に、老化の主要な原因と考えられる)の還元を導き得、老化関連疾患の軽減をもたらし得る。
【0030】
以下の実施例は、本発明の例示であり、決して特許請求の範囲において規定される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本開示に従い、種々の他の成分および割合が使用され得ることが理解される。
【実施例】
【0031】
(実施例1.12Gyガンマ線照射曝露後の一本鎖DNA分裂(SSB)によるDNA修復のインビボ評価)
4種のサプリメントを、この試験において使用した:(1)ニコチンアミド(NAMと略す);(2)亜鉛(グルコン酸亜鉛);(3)カロチノイド(リコペンおよびβカロチン);および(4)市販製品であるNicoplex(登録商標)(5%リコペン、20% βカロチン、13.3%グルコン酸亜鉛および61.7%ニコチンアミド)。これらのサプリメントを、各々、トウモロコシ油または水に溶解した。
【0032】
5群の体重175〜200gmの雌W/Fuラットを、試験において使用した。ラットの4試験群に、胃管栄養によりこれらのサプリメントのうちそれぞれ1種を、各々8週間毎日経口投与した。コントロール群に、液体媒体(トウモロコシ油または水)を経口投与した。8週間のサプリメント投与後、ラットを137Cs供給源における12Gy(Scanitronics、1.56Gy/分)の全身照射で処理し、3時間修復させた。次いで動物を屠殺した。脾臓の単個細胞浮遊液(single−cell suspension)を調製し、次いで、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を添加した後に−80℃で凍結させた。凍結脾臓細胞を、アルカリ溶出を用いたDNA一本鎖分裂(SSB)の評価のために、分析前に直接ポリカーボネートフィルター上に重ねることによって37℃で迅速に解凍した。このプロセスは、Olssonら,Br J Can 74:368−373,1996(本明細書中でその全体が参考として援用される)によって詳細に記載されている。
【0033】
図1は、試験結果を示す。示されるように、コントロール群と比較して、上述の4種のサプリメントの各々により処理したラットの、照射に曝露された後のDNA修復の実質的な修復を、百分率で示した。特に、Nicoplex(登録商標)の形態の3種の各々のサプリメントの組み合わせは、個々のサプリメントの単独での機能よりも、ラットのDNA修復を実質的に増強させた。
【0034】
これらのデータは、ニコチンアミド、亜鉛およびカロチノイドの物質群を合わせた場合、これらが互いに代謝的に競合しないことを示した。従って、これらの3種の物質のいずれか2種の組み合わせ(例えば、ニコチンアミド物質と亜鉛物質の組み合わせ、ニコチンアミド物質とカロチノイド物質の組み合わせ、または亜鉛物質とカロチノイド物質との組み合わせ)が、DNA修復を増大させるために使用され得る。
【0035】
(実施例2.NF−κΒ活性のインビトロ分析)
マウスリンパ腫70Z/3細胞株は、組換えられているが転写されない(transcriptionally silent)免疫グロブリン(Ig)k遺伝子座を有し、この発現は、リポ多糖類(LPS)のようなアクチベータによって誘導され得ることが公知である(SenおよびBaltimore,Cell 47:921−928,1986)。Ig軽鎖発現は、細胞表面上に発現されるIg分子のアセンブリを導き、従って、Ig発現についての70Z/3細胞の表面染色は、NF−κΒについての便利な測定を提示する。
【0036】
市販の製品であるActivar AC−11TM、Nicoplex(登録商標)、およびこれらの組み合わせを、この試験において使用した。これらの製品を、水性媒体中に溶解し、3種の試験サプリメント媒体を作製した:(1)12μg/mlのActivar AC−11TM;(2)136μg/mlのNicoplex(登録商標);および(3)12μg/mlのActivar AC−11TM+136μg/mlのNicoplex(登録商標)。
【0037】
70Z/3細胞を、各サプリメント媒体と共にそれぞれ5時間事前インキュベートし、その後、これらをNF−κΒの発現を誘導するために25μg/mlのリポ多糖類(Difco 055−B5)で処理した。NF−κΒ誘導性発現の減少の百分率を、NF−κΒ阻害の指標として記録した。このプロセスは、Libergら,Br J Cancer 81(6):981−988,1999(本明細書中でその全体が参考として援用される)において詳細に記載される。
【0038】
図2は、リポ多糖類(lipopoluysaccharride)インビトロ刺激後の70Z/3マウスリンパ腫細胞のNF−κΒ阻害を示す。示されるように、12μg/mlのActivar AC−11TMおよび136μg/mlのNicoplex(登録商標)の組み合わせを含有するサプリメントは、NF−κΒ阻害に対し、各々個々の効果の単なる組み合わせよりも大きい、予期せぬ著しい増強を達成した。この結果は、カロチノイド、ニコチンアミド、亜鉛およびカギカズラ種の水溶性抽出物を含有する組成物において得られる強い相乗効果を実証した。
【0039】
(実施例3.腫瘍増殖阻害のインビトロ分析)
市販の製品である市販の製品であるActivar AC−11TM(566mg)、Nicoplex(登録商標)(50mg)、およびこれらの組み合わせを、この試験において使用した。
【0040】
ヒト白血病HL−60細胞を、10%ウシ胎仔血清で富化したRPMI 1640媒体において、湿度80%の37℃インキュベーターの5%二酸化炭素中で増殖させた。全ての実験において用いた細胞を、インビトロアッセイに使用する前にまず2×10の初期濃度で2日間培養した。これは、指数増殖期およびトリパンブルー排除による95%の細胞生存度をもたらした。次に、これらのサプリメントの抗増殖能力を、比色定量MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)アッセイ(本明細書中でその全体が参考として援用されるSchweitzerら,Exper Hematol 21:573−578,1993によって記載される)によって決定した。
【0041】
より具体的には、これらのサプリメントの10μlの2連の連続希釈物を、96ウェル平底プレート(Corning,NY)中の190μlの細胞(0.05×10)に加え、以下の最終連続濃度を得た:Nicoplex(登録商標)について0〜500μg/ml、Activar AC−11TMについて0〜1000μg/ml、そしてActivar AC−11TM+Nicoplex(登録商標)の組み合わせについて0〜60μg/ml。プレートを、37℃で72時間インキュベートし、20μl MTT(5mg/ml、Sigma)でパルスし、次いで、さらに3時間37℃でインキュベートした。減少したMTTを、150μlのDMSOおよび25μlの0.1Mグリシンのバッファー(pH=10.5)での細胞の溶解後に、自動化プレートリーダーを用いて540nmで分光光度的に測定した。各サプリメントについてのIC50(阻害濃度50%)値を、連続希釈曲線プロットから計算し、図3に記録した。
【0042】
示されるように、カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛物質の組み合わせであるNicoplex(登録商標)は、HL−60増殖の阻害において強い阻害効果を有した。さらに、Activar AC−11TMおよびNicoplex(登録商標)の組み合わせは、個別のActivar AC−11TMまたはNicoplex(登録商標)よりも、HL−60増殖の阻害において著しい増強を達成した。実施例2に示したNF−κΒ阻害の改善と同様、カロチノイド、ニコチンアミド、亜鉛およびカギカズラ種の水溶性抽出物質を含有する組成物を用い、腫瘍細胞増殖の阻害において強い相乗効果が得られる。
【0043】
本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して開示されているが、提供された全ての詳細に限定されると理解されるべきではない。当業者によって理解されるように、記載した実施形態の改変および変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得、そして他の実施形態が本開示に含まれることが理解されるべきである。本明細書中で列挙した全ての参考文献は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、実施例1に記載されるように、異なるサプリメントで処理したラットの、放射線照射に対する一本鎖切断の百分率(SSB%)で表されるDNA修復を示す。
【図2】図2は、実施例2に記載されるように、異なったサプリメントで処理した70Z/2細胞における、NF−κΒ阻害を示す。
【図3】図3は、実施例3に記載されるように、異なったサプリメントで処理したヒト白血病HL−60細胞のHL−60増殖阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは他の哺乳動物に投与するためのサプリメントであって、該サプリメントは、以下:
(a)カロチノイド物質;
(b)ニコチンアミド物質;
(c)亜鉛供給物質;および
(d)カギカズラ種の水溶性抽出物質
から本質的に構成される、サプリメント。
【請求項2】
前記ニコチンアミド物質が、ニコチンアミド、ナイアシン、トリプトファン、ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチド(NAD)、還元型NAD(NADH)、NADリン酸(NADP)、還元型NADP(NADPH)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項3】
前記カロチノイド物質が、αカロチン、βカロチン、γカロチン、リコペンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項4】
前記亜鉛供給物質が、1種以上の亜鉛塩である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項5】
前記サプリメントが、経口投与のための形態である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項6】
前記サプリメントが、非経口投与のための形態である、請求項1に記載のサプリメント。
【請求項7】
ヒトまたは他の哺乳動物に投与するための液体サプリメントであって、該液体サプリメントは、以下:
(a)ニコチンアミド物質;
(b)亜鉛供給物質;
(c)カギカズラ種の水溶性抽出物質;および
(d)水性媒体
から本質的に構成される、液体サプリメント。
【請求項8】
前記ニコチンアミド物質が、ニコチンアミド、ナイアシン、トリプトファン、NAD、NADH、NADP、NADPHおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項7に記載の液体サプリメント。
【請求項9】
前記亜鉛供給物質が、1種以上の亜鉛塩である、請求項7に記載の液体サプリメント。
【請求項10】
カロチノイド物質をさらに含有する、請求項7に記載の液体サプリメント。
【請求項11】
前記カロチノイド物質が、αカロチン、βカロチン、γカロチン、リコペンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項10に記載の液体サプリメント。
【請求項12】
前記液体サプリメントが、約7.5から約9.0までの範囲のpHを有する、請求項7に記載の液体サプリメント。
【請求項13】
前記液体サプリメントが、栄養ドリンク剤の形態である、請求項7に記載の液体サプリメント。
【請求項14】
カロチノイド物質、ニコチンアミド物質、亜鉛供給物質およびカギカズラ種の水溶性抽出物質から本質的に構成されるサプリメントを、哺乳動物に投与する工程を包含する、該哺乳動物を処置する方法であって、該物質群は、組み合わさって、DNA損傷に対する抵抗力を改善し、DNA修復能力を増強し、免疫細胞機能を刺激しそして腫瘍細胞増殖を阻害するために有効な量の日用量で該哺乳動物に投与される方法。
【請求項15】
前記日用量が、約50mgから150mgまでのカロチノイド、約50から約150mgまでのニコチンアミド、約5mgから約50mgまでの亜鉛塩、約100mgから約1000mgまでのカギカズラ種の水溶性抽出物を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−532673(P2007−532673A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508554(P2007−508554)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/012795
【国際公開番号】WO2005/115428
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506343519)
【出願人】(506340781)
【Fターム(参考)】