説明

カーテンウォール

【課題】 周囲の環境が変化しても、結露が発生しにくいカーテンウォールを提供する。
【解決手段】 スパンドレル部201、202の室外側にガラスパネル811、812を配し、ガラスパネルの背後に耐火パネル821、822を設けたカーテンウォール100において、耐火パネルはその室外側の少なくとも二点を固定ピース451、452により支持するとともに、その室内側は周囲を囲むようにシール部材461、462により支持可能として、シール部材はスパンドレル部型材421、422に着脱自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールに関し、特にスパンドレル部に結露が発生しにくいカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外装部として、カーテンウォールの使用が一般的なものとなっている。カーテンウォールは、工場等で組み立てたカーテンウォールユニットを、躯体に固定された取り付け金物に取り付けるだけで、現場において簡単に施工できる上、意匠性も高く、新築及び建て替えビルに広く採用されている。
【0003】
それぞれのカーテンウォールユニットは、開口部と、スパンドレル部(「腰部」ともいう。)とを備え、開口部は、室内側と室外側とがガラスパネルにより仕切られている。
【0004】
一方、スパンドレル部は、ビルの床や天井に対応する部分であり、室外側には開口部との同様のガラスパネルが張られている。また、その室内側には、所定の空間を隔てて、ビル内部の天井部や床部を室外側の視線から隠蔽するため、また、防火上の要請から、耐火パネルが配設されている。また、通常この耐火パネルを形成する材料としてケイ酸カルシウム板が使用されている。
【0005】
図9及び図10はかかるスパンドレル部を示す水平断面図、及び垂直断面図である。図示のスパンドレル部80には、室外側にガラスパネル81、室内側に耐火パネル82が配置され、これらガラスパネル81、耐火パネル82の間は、空間Sとされている。従来のカーテンウォールにおいては、図示されているように耐火パネル82は、下部底辺がスパンドレル部の台座86上に載置され、他の三辺はスパンドレル部の型材83、84、85に隙間なく密着して固定されている。
【0006】
一方、ガラスパネル81は、その周囲をスパンドレル部型材に取り付けられたビード91〜98により密封されている。従って、スパンドレル部の空間Sは、見込み方向の四面をスパンドレル部型材、室外側面をガラスパネル81、室内側面を耐火パネル82により囲まれた密閉空間とされていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のとおり耐火パネル82は通常ケイ酸カルシウムの板で形成されており、製造工程において、加水を行うために含水材料(製品)となっており、また透湿性を有することから、ガラスパネル81の室内側に結露が発生するという問題があった。すなわち空間Sの温度が上昇すると耐火パネル82から空間Sに湿気が放出される。放出された湿気は、カーテンウォールが設置された環境、すなわち日照条件、外気温などで空間Sの相対湿度が変化するため、条件により結露を発生したり、しなかったりする。たとえば、夜間になって、空間Sの温度が低下したときには、相対湿度が上がりガラス面に結露する。一方、カーテンウォールに西日などがあたって、温度上昇すると相対湿度が下がり、結露が発生しない、あるいは消失するのである。通常このような結露の発生、消失を繰り返しており、建物の外観上問題となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、周囲の環境が変化しても、結露が発生しにくいカーテンウォールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記課題解決のため種々検討した結果、以下の知見を得て本発明を完成させるに至った。
(1)夜間、日陰、建物北側等、日射の当たらない場合には、スパンドレル部の空間を密閉するほうが結露しにくい。
(2)一方、カーテンウォールに西日等の日射があたる場合には、スパンドレル部の空間を開放するほうが、結露が生じにくい。
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、スパンドレル部(201、202)の室外側にガラスパネル(811、812)を配し、ガラスパネルの背後に耐火パネル(821、822)を設けたカーテンウォール(100)であって、耐火パネルはその室外側の少なくとも二点が固定ピース(451〜454)により支持されるとともに、その室内側は周囲を囲むようにシール部材(461〜464)により支持可能とされ、シール部材はスパンドレル部型材(421、422、505、506)に着脱自在に取り付けられている、ことを特徴とするカーテンウォールにより前記課題を解決する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーテンウォールにおいて、周囲を囲むシール部材の少なくとも一部が取り外されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、カーテンウォールのおかれた状況に応じて、シール部材をつけたままにしておく、あるいは少なくとも一部を取り外すことが可能であるので、どのような施工場所であっても、結露の発生を抑制するカーテンウォールを提供することができる。たとえばカーテンウォールが日照を受ける場合には、シール部材の少なくとも一部を取り去って、日照により耐火パネルから放出された湿気をスパンドレル部の空間Sから、室内側に逃がす空気の流通路を形成することにより、日照がかげり、気温が低下しても結露が発生しにくいカーテンウォールとすることができる。一方、カーテンウォールがたとえば建物北面に配置されていたり、あるいは南側に高層の建物があって、終日日照を受けない状況下にある場合には、耐火パネル室内側周囲を支持しているシール部材をそのまま取り外さずにおくことにより、気温が低下してもガラス面に結露が発生するのを抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、シール部材の少なくとも一部が取り外されているので、たとえばカーテンウォールが日照を受ける場合には、日照により耐火パネルから放出された湿気をスパンドレル部の空間Sから、室内側に逃がす空気の流通路が形成されて、日照がかげり、気温が低下しても結露が発生しにくい。
【0015】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0017】
図1は、カーテンウォールの外観を示す(A)は正面図、(B)は側部断面図である。図示のカーテンウォール100は、ビル内部の室内(いわゆる居住空間)に対応する開口部10a、10b、…(以下において個々の開口部一般をさすときは、参照符号「10」を使用して「開口部10」ということがある。)と、天井及び床に対応するスパンドレル部20a、20b、…(以下において個々のスパンドレル部一般をさすときは、参照符号「20」を使用して「スパンドレル部20」ということがある。)とを備えている。開口部10a、10b、…とスパンドレル部20a、20b、…とは、それぞれが横方向に一列に配列され、開口部10a、10b、…とスパンドレル部20a、20b、…とが形成する横方向の各列は、上下方向に一段おきに配置されている。個々の開口部10とスパンドレル部20とは、カーテンウォール100の正面方向から見ると升目状を呈している。これらの各升目は、カーテンウォール100の上下方向にわたり配設されたユニット縦枠30a、30b、30c、…と、カーテンウォール100の左右方向にわたって配設された無目40a、40b;41a、41b;…により仕切られている。
【0018】
図2は、シール部材が取り付けられたカーテンウォールスパンドレル部の水平断面を示す図である。この図においては、ユニット縦枠30aの左右に配置された2つのスパンドレル部201、202があらわされている。
【0019】
建物の基礎鉄骨1には一対の連結部材51、52がボルト11、12により固定されている。さらに連結部材51、52にはそれぞれにボルト61、62により左縦材301、右縦材302が対向して固定されている。これら一対の左縦材301、及び右縦材302が組み合わせられてひとつのユニット縦枠30aとして機能している。左縦材301、及び右縦材302には、ゴム等で形成された弾性シール材311、312が取り付けられて、これら弾性シール材311、312の協働によりユニット縦枠30a内外の水密と通気とをはかっている。
【0020】
左縦材301、及び右縦材302のそれぞれの室外側先端部には、ビード911、931;912、932を介して単層ガラスパネル811、812が取り付けられている。また、左縦材301、及び右縦材302の中央部やや室内側よりの、互いに対向する面とは反対側に固定枠材401、402が固定金具441、442により取り付けられている。固定枠材401、402は水平断面が略「コ」の字型に形成され、一対の室内外側アーム411、412;421、422を、取り付け部431、432により連結している。上記固定金具441、442は取り付け部431、432に設けられた孔に差し入れられて、さらに左右の左縦材301、及び右縦材302に固定されている。
【0021】
室内側アーム421、422は、固定枠材401、402とは別部材として形成され、取り付け部431、432からL字状に張り出した部位に固定金具471、472により固定されている。
【0022】
室外側アーム411、412の先端には室内側に向けて、固定ピース451、452が取り付けられている。室内側アーム421、422の先端には室外側に向けて、シール部材461、462が取り付けられている。これら固定ピース451、452とシール部材461、462とに挟持されるように耐火パネル821、822が固定されている。
【0023】
固定ピース451、452は、耐火パネル821、822の室外側の面に少なくとも2点で当接されていれば良く、室外側面の全周にわたり配設されることはない。一方、シール部材461、462は、耐火パネル821、822の室内側面の周囲全周にわたって当接されている。なお、耐火パネル821、822の周囲四辺の各片に、別ピースのシール部材の端部同士を当接させて、連続するように配置することが好ましい。
【0024】
なお、図2において、円形の鎖線4(A)にて囲まれた範囲を拡大して、図4(A)に示す。これについては後に説明する。
【0025】
図3は、図2に示されたカーテンウォールスパンドレル部201、202から、シール部材461、462を取り除いたものを示す水平断面図である。大半が図2に示された部材と同一の部材であるので、これらについては図2において使用した参照符号と同一の参照符号を付して、その説明は省略する。なお、図3において、円形の鎖線4(B)にて囲まれた範囲を拡大して、図4(B)に示す。
【0026】
図4(A)は図2の4(A)部を、(B)は図3の4(B)部をそれぞれ拡大して示す図である。図4(A)に示される状態、すなわちシール部材462が取り付けられている状態におけるカーテンウォールスパンドレル部202において、室外側のガラスパネル812と室内側の耐火パネル822との間に位置する空間S2は、その周囲をガラスパネル812、ビード932、右縦材302、固定枠材402、シール部材462、及び耐火パネル822等により囲まれている。これに対し、図4(B)に示されるように、シール部材462が取り外されると、スパンドレル部空間S2から耐火パネル822の端部外側を経て室内側に抜ける空気の通路R1(図において鎖線の矢印で表されている。)が形成され、スパンドレル部内部の空気を室内側に流出させることが可能となる。
【0027】
図5は、シール部材が取り付けられたカーテンウォールスパンドレル部の垂直断面を示す図である。図示のスパンドレル部201は、上方の開口部101、下方の開口部102の間に配置されている。スパンドレル部201の上部には、上部無目500aが備えられている。上部無目500aは、開口部101側の第一ピース501と、スパンドレル部201側の第二ピース502が組み合わされて形成されている。一方、スパンドレル部201の下部には下部無目500bが備えられている。
【0028】
第二ピース502にはビード913、933が、下部無目500bにはビード914、及びビード934が取り付けられ、これら各ビードにより単層ガラスパネル811が室外側に固定されている。一方、第二ピース502の室内側には上部アーム505が取り付けられている。第二ピース502の下部室内側には固定ピース453が取り付けられている。上部アーム505の先端にはシール部材463が取り付けられている。
【0029】
下部無目500bの室内側上部にはアーム部506が形成されており、先端側において2つに分岐したアーム部506の各先端には、室外側に固定ピース454が、室内側にはシール部材464がそれぞれに取り付けられている。そしてこれら室外側に配置された固定ピース453、454と、室内側に配置されたシール部材463、464に挟持されるようにして、耐火パネル821が配置されている。
【0030】
なお、図2の説明でもあったように、固定ピース453、454は、耐火パネル821の室外側の面に少なくとも2点で当接されていれば良く、室外側面の全周にわたり配設されることはない。一方、シール部材463、464は、耐火パネル821の室内側面の周囲全周にわたって当接されている必要がある。なお、耐火パネル821の周囲四辺の各片に、別ピースのシール部材461、462、463、464の端部同士を当接させて、連続するように配置することが好ましい。
【0031】
なお、図5において、円形の鎖線7(A)にて囲まれた範囲を拡大して、図7(A)に示す。これについては後に説明する。
【0032】
図6は、図5に示されたカーテンウォールスパンドレル部201から、シール部材463、464を取り除いたものを示す垂直断面図である。大半が図5に示された部材と同一の部材であるので、これらについては図5において使用した参照符号と同一の参照符号を付して、その説明は省略する。なお、図6において、円形の鎖線7(B)にて囲まれた範囲を拡大して、図7(B)に示す。
【0033】
図7(A)は図5の7(A)部を、(B)は図6の7(B)部をそれぞれ拡大して示す図である。図7(A)に示される状態、すなわちシール部材464が取り付けられている状態におけるカーテンウォールスパンドレル部201において、室外側のガラスパネル811と室内側の耐火パネル821との間に位置する空間S1は、その周囲をガラスパネル811、ビード933、第二ピース502、上部アーム505、シール部材463、耐火パネル821、シール部材464、下部無目500b、ビード934により囲まれている。これに対し、図7(B)に示されるように、シール部材464が取り外されると、スパンドレル部空間S1から耐火パネル821の下端部下側を経て室内側に抜ける空気の通路R2(図において鎖線の矢印で表されている。)が形成され、スパンドレル部201内部の空気を室内側に流出させることが可能となる。
【0034】
図8は、耐火パネルの室内側に当接されるシール部材の取り外しのパターンを示す図である。図3、図4(B)、図6、図7(B)にはいずれも、シール部材461〜464を取り外した状態を説明したが、スパンドレル部の通気をはかるためには、耐火パネル821、822の室内側面の周囲に当接されるシール部材461〜464のうち、少なくともひとつがはずされていれば足りる。
【0035】
図8(A)は、四辺全てのシール部材が取り付けられている状態を示し、図2、及び図5に対応するものである。図8(B)は、スパンドレル部の通気をはかる上で、最も好ましい態様を示すもので、上下のシール部材463、464が取り去られている。かかる態様にすれば、スパンドレル部の上下から通気をはかることができ、またこれら上下の位置は、建物の床面、天井部に位置するため、作業性も良い。図8(C)は、上部のシール部材463のみを取り去った態様、図8(D)は下部のシール部材464のみを取り去った態様、図8(E)は左右のシール部材461、462を取り去った態様、図8(F)は四辺全てのシール部材461〜464を取り去った態様をそれぞれ表している。図8(A)の態様を除き、いずれの態様によっても、スパンドレル部の通気をはかることができ、スパンドレル部に日照があたる場合のガラスパネル室内側面における結露を抑制することができる。
【0036】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォールもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カーテンウォールの外観を示す(A)は正面図、(B)は側部断面図である。
【図2】シール部材が取り付けられたカーテンウォールスパンドレル部の水平断面を示す図である。
【図3】シール部材が取り外されたカーテンウォールスパンドレル部の水平断面を示す図である。
【図4】(A)は図2の4(A)部を、(B)は図3の4(B)部をそれぞれ拡大して示す図である。
【図5】シール部材が取り付けられたカーテンウォールスパンドレル部の垂直断面を示す図である。
【図6】シール部材が取り外されたカーテンウォールスパンドレル部の垂直断面を示す図である。
【図7】(A)は図5の7(A)部を、(B)は図6の7(B)部をそれぞれ拡大して示す図である。
【図8】耐火パネルの室内側に当接されるシール部材の取り外しのパターンを示す図である。
【図9】従来のカーテンウォールスパンドレル部を示す水平断面図である。
【図10】従来のカーテンウォールスパンドレル部を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0038】
R1、R2 空気通路
S スパンドレル部空間
1 基礎鉄骨
11、12 ボルト
10、10a、10b、10c、… 開口部
20、20a、20b、20c、… スパンドレル部
30、30a、30b、30c、… ユニット縦枠
40a、41a、42a… 上側無目
40b、41b、42b… 下側無目
51、52 連結部材
61、62 ボルト
80 スパンドレル部
81 ガラスパネル
82 耐火パネル
83、84、85 型材
86 台座
91〜98 ビード
100 カーテンウォール
101、102 開口部
201、202 スパンドレル部
301 左縦材
302 右縦材
311、312 弾性シール材
401、402 固定枠材
411、412 室外側アーム
421、422 室内側アーム
431、432 取り付け部
441、442 固定金具
451、452 固定ピース
453、454 固定ピース
461、462 シール部材
463、464 シール部材
471、472 固定金具
500a 上部無目
500b 下部無目
501 第一ピース
502 第二ピース
505 上部アーム
506 下部アーム
811、812 ガラスパネル
821、822 耐火パネル
911、912、931、932 ビード
913、914、933、934 ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンドレル部の室外側にガラスパネルを配し、該ガラスパネルの背後に耐火パネルを設けたカーテンウォールであって、
前記耐火パネルは、その室外側の少なくとも二点が固定ピースにより支持されるとともに、その室内側は、周囲を囲むようにシール部材により支持可能とされ、
該シール部材は、前記スパンドレル部型材に着脱自在に取り付けられている、
ことを特徴とするカーテンウォール。
【請求項2】
前記周囲を囲むシール部材の少なくとも一部が取り外された請求項1に記載のカーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−118225(P2006−118225A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307605(P2004−307605)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】