説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】簡易な構造でありながら、乗員の車外放出量を最小限に抑制可能なカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】カーテンエアバッグ装置は、膨張ガスによって展開するエアバッグ12と;前記エアバッグの前縁部と当該車両のAピラーとを連結するストラップ15とを備える。そして、米国高速道路交通安全局(NHTSA)が定める米国連邦自動車安全基準(FMVSS226)の規則策定通知(NPRM)による最前部の一次目標位置(Primary Target)A1点に対し、前記Aピラー11に連結される前記ストラップの前端部20の高さを前記エアバッグのA1点と同じ高さとし、前記エアバッグに連結される前記ストラップの後端部22を前記A1点より低くなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内側部に取り付けられたエアバッグが車両衝突時に、車体側壁と乗員の間に展開して乗員を保護する所謂カーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置には、ステアリングホイール内部に収容される運転席用エアバッグ装置や、窓枠の上縁部に沿って配置されるカーテンエアバッグ装置や、インストルメントパネル(インパネ)の内部に配置される助手席用エアバッグ装置等、種々のタイプがある。
【0003】
一般にカーテンエアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器と;収容状態において長尺状に折り畳まれ、ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグとを備えている。エアバッグは、ガスによって膨張するエアバッグ本体部と;当該エアバッグ本体部の上縁部に設けられ、車両に対して固定される複数の取り付けタブとを備えている。また、エアバッグの前端部に車両のAピラーと連結されるストラップを設け、膨張したエアバッグの回転運動を制御する構造が提案されている。このようなストラップは、乗員の車外放出量に大きな影響を与えるため最適に設計される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−302005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながら、乗員の車外放出量を最小限に抑制可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るカーテンエアバッグ装置は、膨張ガスによって展開するエアバッグと;前記エアバッグの前縁部と当該車両のAピラーとを連結するストラップとを備える。そして、米国高速道路交通安全局(NHTSA)が定める米国連邦自動車安全基準(FMVSS226)の規則策定通知(NPRM)による最前部の一次目標位置(Primary Target)A1点に対し、前記Aピラーに連結される前記ストラップの前端部の高さを前記エアバッグのA1点と同じ高さとし、前記エアバッグに連結される前記ストラップの後端部を前記A1点より低くなるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカーテンエアバッグ装置は、Aピラーに連結されるストラップを採用すると共に、その取り付け位置を最適化する構造であるため、簡易な構造でありながら、乗員の車外放出量を最小限に制御可能となる。
【0008】
なお、A1打点は、正式に制定されたFMVSS226では、セクション5.2:衝撃標的位置の決定(Determination of impact target
locations)で定められるターゲットロケーション(Target locations)のうち、フロントウインドウの一次目標位置(Primary target)の車両前方側に位置する打点としても定義されている。また、本願明細書で使用される「規則策定通知(NPRM)」は、NHTSAドケット番号(Docket No. NHTSA-2009-0183)として2009年12月2日公表されたものであり、正式に制定されたFMVSS226の基になっているものである。
【0009】
エアバッグが展開し、例えば、A1点に乗員の頭部が衝突したときに、ストラップの後端部はA1点よりも低くなっているため、エアバッグの下縁部が外側にめくれ上がるような回動を抑制することができる。それでも、エアバッグの下縁部がめくれ上がってエアバッグが車外に突出した場合には、一定の位置(100mm)でストラップが水平となって突っ張ることにより、それ以上の突出(すなわち、車外放出量)を回避することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の車室部分の断面図であり、展開時の状態を示す。
【図2】図2は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置の要部の構造を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10を備えた自動車の車室部分の断面図であり、展開時の状態を示す。図1に示すように、車室側方の窓ガラス(24)の上部において、ヘッドライニングに覆われたインナーパネルには、エアバッグ12が複数の取付けタブ14を用いてボルトによって固定される。
【0012】
なお、符号11はAピラーを示す。また、エアバッグ12の前縁部とAピラー11とを連結するストラップ15が設けられている。ストラップ15は、エアバッグ12と同一の素材(ファブリック)により、幅の均一な帯状に成形さすることができる。なお、ストラップ15自体は、エアバッグと別素材(例えば、合成樹脂等)で成形することもできる。
【0013】
図2に示すように、所謂打点A1に対して、Aピラー11に連結されるストラップ15の前端部20の高さをA1点と同じ高さとする。また、ストラップ15の後端部22をA1点より低くなるように設定されている。ここで、「A1点」とは、米国高速道路交通安全局(NHTSA)が定める米国連邦自動車安全基準(FMVSS226)の規則策定通知(NPRM)による最前部の一次目標位置(Primary Target)を示す。また「高さ」は水平に対する垂直方向の絶対的な位置を意味する。
【0014】
エアバッグ12は、長尺状に畳まれ、車両の窓上縁に配置されたヘッドライニングに覆われた状態で収容され、作動時にヘッドライニングとルーフパネルとの隙間から下方に向かって膨張展開することで車両内の乗員を保護するようになっている。エアバッグ12には、ガス供給装置(図示せず)から膨張ガスが供給される。
【0015】
エアバッグ12は、複数枚(例えば、2枚又は3枚)のシートを重ね合わせて縫合、接着又は溶着により袋状にしたもの、または、一枚織りで袋部が形成されたものを採用することができる。一般に、エアバッグ12は、インフレータから供給されるガスを内部に導くガス導入管と;ガスによって膨張する複数のチャンバーと;ガス導入管から導入されたガスを各チャンバーに導くダクトとを備えている。
【0016】
次に、本実施例にかかるエアバッグ装置の動作について簡単に説明する。車両走行中に、ロールオーバ、側面衝突、横転等の非常事態が発生すると、車両に備えられたセンサがその異常な振動をキャッチして、その信号を基に発火信号を図示せぬインフレータに送る。インフレータ内部には、センサからの発火信号を受けてインフレータを駆動させるプロペラントが備えられている。
【0017】
インフレータの作動によって、エアバッグ12に膨張ガスが流れ込み、エアバッグ12が窓24に沿うように下側に向かって展開する。
【0018】
図3は、カーテンエアバッグ装置10のAピラー11周辺の構造(状態)を示し、(A)が車室内から見た様子、(B)がフロントガラス側から見た様子を示す。図3の例では、乗員の頭部がエアバッグ12のA1点に衝突してエアバッグ12が窓ガラス14の外側にはみ出している。この時、展開したエアバッグ12は最前部のタブ14、前端部20を支点として下縁部側が車両外側に向かって回動することになる。
【0019】
本実施例では、ストラップ15の後端部22はA1点よりも低くなっているため、エアバッグ12が展開し、例えば、A1点に乗員の頭部が衝突したときには、エアバッグ12の下縁部が外側にめくれ上がるような回動を抑制することができる。それでも、エアバッグ12の下縁部がめくれ上がってエアバッグ12が車外に突出した場合には、FMVSS226の基準である車外放出量が100mmとなったときに、ストラップ15が概ね水平となる。すなわち、ストラップ15の前端部20と後端部22とが同じ高さになり、ストラップが突っ張ることにより、エアバッグ12のそれ以上の回動(すなわち、車外放出量)が規制され、車外放出量を100mm以下にすることができる。
【0020】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。

【符号の説明】
【0021】
10:カーテンエアバッグ装置
12:エアバッグ
14:取り付けタブ
15:ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の側部にてカーテン状に展開し、当該車両内の乗員を保護するカーテンエアバッグ装置において、
膨張ガスによって展開するエアバッグと;
前記エアバッグの前縁部と当該車両のAピラーとを連結するストラップとを
を備え、
米国高速道路交通安全局(NHTSA)が定める米国連邦自動車安全基準(FMVSS226)の規則策定通知(NPRM)による最前部の一次目標位置(Primary Target)A1点に対し、
前記Aピラーに連結される前記ストラップの前端部の高さを前記エアバッグのA1点と同じ高さとし、前記エアバッグに連結される前記ストラップの後端部を前記A1点より低くなるようにしたことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
米国高速道路交通安全局(NHTSA)が定める米国連邦自動車安全基準(FMVSS226)の規則策定通知(NPRM)によるテストにおいて、乗員の車外放出量が100mmに達した時点で、前記ストラップの前端部と後端部とが同じ高さになるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−46174(P2012−46174A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165834(P2011−165834)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
【Fターム(参考)】