説明

カーテン塗布装置

【課題】 感熱記録体やインクジェット記録媒体などの情報記録用紙の機能層を、低塗工量でかつ均一な塗膜を安定して塗工することのできるカーテン塗布装置及び塗工方法を提供する。
【解決手段】 多孔質プレートに円柱状ガイドを付帯したエッジガイドを有するカーテン塗布装置により、上記課題を解決する。本発明は、一対のエッジガイドの間に形成された少なくとも一層の塗液からなるカーテン膜が自由落下して、移動する支持体上に塗工層を形成させるカーテン塗布装置であって、該エッジガイドが多孔質プレートとそれに接した円柱状ガイドから成り、該2つの円柱状ガイドが対向するように配置されたカーテン塗布装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低塗工量で有効なカーテン塗布装置に関し、より詳細には、感熱記録体やインクジェット記録媒体などの情報記録用紙等を製造するために、低塗工量で均一な塗工層を形成させるためのカーテン塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱プリンターやインクジェットプリンターは、目覚しい性能の向上により、様々な分野に利用されており、それに応じてその記録媒体である感熱記録体やインクジェット記録媒体などの情報記録用紙に対しても様々な品質が要求されている。
情報記録用紙を構成する各層は様々な塗工方法で形成することが可能であるが、カーテン塗布方法を用いた場合に、カーテン膜を安定的に形成するための検討が種々行なわれてきた(特許文献1〜3等)。
【0003】
【特許文献1】特許3631367号
【特許文献2】特許3543245号
【特許文献2】特許3552113号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感熱記録体やインクジェット記録媒体などの情報記録用紙は、基紙上に記録機能等を持つ機能層を塗工したものであるが、その塗工層は、通常塗工量(固形分)が多くとも約6〜12g/m程度と少なく、かつその膜厚が均一であることが求められる。
通常、薄い膜厚を得るためにバーブレード等が用いられるが、その膜厚を均一にすることは容易ではない。一方、膜厚を均一にするためには、カーテン塗工法が適しているが、低塗工量の膜厚を得ることは容易ではない。カーテン塗工法においては低塗工量の塗工層を得るためには低流量で塗液(塗料)を供給するが、低流量で安定したカーテン膜(自由落下塗液膜)を形成させるには、塗料濃度を調整したり、界面活性剤の添加により塗液の表面張力を調整する必要があるが、情報記録用紙としての塗膜性能の要請から自由に変更できる範囲は限られている。このような場合に、カーテン膜のガイドエッジに水などの補助液を流す方法もあるが(特許文献3等)、情報記録用紙で用いるような条件下では十分ではない。
そこで、本願発明は、感熱記録体やインクジェット記録媒体などの情報記録用紙の機能層を、低塗工量でかつ均一な塗膜を安定して塗工することのできるカーテン塗布装置及び塗工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、カーテン膜を支える一対のエッジガイドが、それぞれ多孔質プレートとそれに接した円柱状ガイドから成るカーテン塗布装置により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、一対のエッジガイドの間に形成された少なくとも一層の塗液からなるカーテン膜が自由落下して、移動する支持体上に塗工層を形成させるカーテン塗布装置であって、該エッジガイドが多孔質プレートとそれに接した円柱状ガイドから成り、該2つの円柱状ガイドが対向するように配置されたカーテン塗布装置である。
更に、本発明は、このカーテン塗布装置を用いて支持体上に塗工量が12g/m以下の塗工層を形成させることから成る塗布方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカーテン塗布装置により塗布した場合には、特に低塗工量(低流量)において、カーテン膜にネックインや塗工層に塗工ムラが発生しにくい。
特に、本発明のカーテン塗布装置により、感熱記録体の感熱記録層及び保護層や、インクジェット記録媒体のインク受理層を塗工することにより、画質や可塑剤などに対するバリア性に優れた感熱記録体や、ベタ部の印字ムラが発生しにくいインクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のカーテン塗工装置はカーテン塗工に使用するための装置である。カーテン塗工は、2つのエッジガイドの間にカーテン状に塗液を流下して自由落下させ支持体(基材)に塗工する方法であり、スライド型カーテン、カップル型カーテン、ツイン型カーテン等の塗工方法があるが、本発明に於ては、これらに限定されるものではない。
【0008】
本発明のカーテン塗工装置の概略図を図1に示す。少なくとも一種の塗液を塗布ヘッド1から供給し、一対のエッジガイド2の間に少なくとも1層の塗液から成るカーテン膜3を形成させる。エッジガイド2は、この塗液からなるカーテン膜が自由落下するように、略鉛直に配設される。
基材4として、紙、再生紙、合成紙、フィルム、プラスチックフィルム、発泡プラスチックフィルム、不織布等、又はこれらを組み合わせた複合シートを使用することができる。基材4は、通常150〜600m/分のスピードで移動し、基材上に落下したカーテン膜3が基材4上に塗工層5を形成する。
塗液は、少なくとも1種類であり、用途に応じて、適宜複数種用いてもよい。複数層を塗工する場合には、カーテン膜はこれら各層に応じた複数の塗液層から成ってもよく、各層に応じて複数のカーテン膜を用いてもよく、またこれらの組み合わせであってもよい。この場合、塗液の種類に応じて複数の塗布ヘッド1を用いてもよい。
【0009】
エッジガイド2は、多孔質プレート6及び円柱状ガイド7から成る。
多孔質プレート6は、内部に1μm〜1mm程度の微細な穴を無数有し、その気孔率は15〜85%程度であるのが一般的である。塗液はこの微細な穴の毛細管現象によりエッジガイドに曳きつけられるため均一なカーテン膜が形成される。多孔質プレートの材質に特に制限はないが、多孔プレートの材質は耐久性の点から各種のセラミック製であることが望ましい。
円柱状ガイド7は、好ましくは直径が0.5〜3.0mmの円柱状である。円柱状ガイドの材質に特に制限はないが、金属製であることが望ましく、具体的にはアルミニウム、銅、鉄などの金属単体、ステンレス、真鋳などの合金、金属表面をメッキしたものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
多孔質プレート6と円柱状ガイド7はほぼ平行に組み合わされ、略鉛直方向を向く。円柱状ガイド7は多孔質プレート6に接し、2つの円柱状ガイドが、カーテン膜がこの2つの円柱状ガイドの間に形成されるように、対向するように配置される。
塗液と多孔質プレート6が接している部分を円柱状ガイド7が押さえつけている状態となるため、カーテン膜3にネックインが発生しにくい。
【0010】
また補助液8を、カーテン膜3とエッジガイド2間に供給してもよい。補助液として使用できる液体の種類・組成は特に制限されるものではなく、カーテン塗工する塗液に合わせて、水単独、界面活性剤により表面張力を調整した液体、増粘剤により粘度を調整した液体などを適宜選択することが望ましい。また、補助液の供給は、流量計付ポンプなど用いて行うことができる。
本発明において、エッジガイドを構成する多孔質プレートに補助液を20〜1000ml/分、より好ましくは50〜300ml/分供給することにより、多孔質プレートの塗料による目詰まりを防止することができるため、安定したカーテン膜を連続的に形成することができる。この供給する補助液が少ない場合はネックインが発生する問題が生じやすく、多い場合は幅方向の水分プロファイルの変動が大きくなり、塗工ムラの問題が生じやすくなる。なお、補助液は多孔質プレートの内部あるいは表面及び/又は裏面のどちらからでも供給することができ、流れ落ちる補助液は多孔質プレート下部から外部に排出される。
【0011】
このような構成のエッジガイドを持つカーテン塗布装置は、特に低塗工量(低流量)でカーテン膜にネックインや塗工層に塗工ムラが発生しにくいという特徴を持つ。
一般的な感熱記録体の製造において、感熱記録層の塗工量は3〜6g/m、保護層の塗工量は1〜3g/mであり、感熱記録層と保護層を同時に塗工した場合でも4〜9g/mである。またインクジェット記録媒体の製造において、インク受理層の塗工量は特に制限されるものではないが、12g/m以下であることが望ましく、より好ましくは6g/m以下である。一方、一般的なコート紙などの塗工量は通常12g/m〜20g/mであり、上記のような製造上の問題は生じにくい。
【0012】
カーテン塗工において低塗工量にする方法としては、一般に塗料濃度を調整することや、塗液の流量を調整することが行なわれている。
しかし、感熱記録体やインクジェット記録媒体で用いられる塗液は通常固形分濃度が30%以下であり、一般のコート紙の塗液の半分以下の濃度であるため、希釈した塗液を用いた場合は乾燥負荷が大きくなるといった操業上問題が発生するとともに、塗液の表面張力の上昇により安定したカーテン膜の形成が困難になる。また、流量を調整した場合、乾燥負荷の増大の問題はなくなるものの、薄いカーテン膜を安定的に形成させるためには、流量にあわせて塗液の表面張力を低下させる必要がある。
塗液の表面張力を低下させる方法としては、界面活性剤を添加することが一般的に行なわれている。しかし、界面活性剤の添加は、塗料粘度の低下、破断時間の低下させるため、塗工ムラが発生しやすくなるといった新たな問題が生じるため、界面活性剤を添加した塗液の粘度及び破断時間を増粘剤の添加によって調整することが行なわれているが、界面活性剤及び増粘剤は、情報記録用紙の品質に悪影響を及ぼすため、品質に影響を及ぼさない使用量では十分に塗料物性を調整することが困難である。
【0013】
このような情報記録用紙の品質上の要求から、カーテン塗布装置における塗液の流量は、3〜7kg/分・mが好ましく、塗液の表面張力は、35〜45mN/mが好ましい。これらは、複数種の塗液を用いて、カーテン膜が複数の塗液層から成る場合には、各塗液に関する性質をいう。
カーテン塗布装置における塗液の流量は、一定時間且つ一定長さのカーテン膜を実測して測定する。塗液の表面張力は、デュヌイ式表面及び界面張力測定器(島津製作所製)によって測定した。
従来のエッジガイドは、塗液の流量が10kg/分・m程度、塗液の表面張力50mN/m程度を想定したものであり、塗液の流量を3〜7kg/分・m、塗液の表面張力を35mN/m程度まで下げても、安定したカーテン膜が形成されない(後記の比較例1〜4)。一方、本発明のエッジガイドは、塗液の表面張力を35〜45mN/mに調整すれば、塗液の流量を3〜7kg/分・mにしても安定したカーテン膜が形成することができる。
【0014】
更に、本発明で使用する塗液の物性として、B型粘度が200〜1500mPa・sであることが望ましい。B型粘度が高い場合は塗工層のレベリングが不十分となり塗工ムラの原因となり、B型粘度が低い場合は塗液と支持体が接触したときに塗液がはじかれ塗工ムラが発生する。また、破断時間(洩糸性)0.03秒以上、より好ましくは0.1秒以上に調整することが望ましい。感熱記録層及び保護層、インク受理層の塗液の破断時間が0.03秒未満であると、カーテン膜が不均一な状態となるため、塗工欠陥が発生する。
なお、本発明において破断時間は、伸長粘度計(機器名:CaBER1、Thermo Haake社製)によって測定することができる。
【0015】
本発明において、塗液の表面張力、破断時間(洩糸性)、B型粘度は、ポリカルボン酸ナトリウムなどの増粘剤、アセチレングリコール、エチレングリコールなどの界面活性剤によって調整することが可能である。但し、界面活性剤、増粘剤は感熱記録体の過剰な添加は、感熱記録体やインクジェット記録媒体の品質に悪影響を与える恐れがある。このため、界面活性剤の添加量(乾燥重量)は、感熱記録層(乾燥重量)に対して2重量%以下、保護層(乾燥重量)に対して6%以下、インク受理層(乾燥重量)に対して1%以下であることが望ましい。また、増粘剤(乾燥重量)の添加量は感熱記録層(乾燥重量)に対して2重量%以下、保護層(乾燥重量)に対して9%以下、インク受理層(乾燥重量)に対して1%以下であることが望ましい。
【0016】
本発明のカーテン塗布装置及び塗布方法は、低塗工量の感熱記録体の感熱記録層及び保護層や、インクジェット記録媒体のインク受理層を塗布するために適している。
感熱記録体は、支持体(基材)上に電子供与性ロイコ染料及び電子受容性顕色剤を含む感熱記録層を有するが、この他に適宜、アンダーコート層、中間層、保護層(オーバーコート層)を設けることができる。これら各層は、当該技術分野の知られているものを用いることができる(例えば、国際公開WO 2006/075467等を参照されたい。)。
また、インクジェット記録媒体は、顔料及びバインダーを主成分とするインク受理層を単層あるいは複数層有するが、この他に適宜、アンダーコート層、バックコート層、光沢層(オーバーコート層)を設けることができる。これら各層は、当該技術分野の知られているものを用いることができる(例えば、特許第3539718号等を参照されたい。)。
【実施例】
【0017】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、各実施例中、特にことわらない限り「部」は「重量部」を示す。
[実施例1]
下記配合からなる配合物を攪拌分散して、アンダーコート層塗料を調製した。
U液(アンダーコート層塗料)
焼成カオリン(エンゲルハード社製商品名:アンシレックス90、吸油量90cc/100g) 100部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(固形分48%) 40部
ポリビニルアルコール 10%水溶液 30部
水 146部
次いで、アンダーコート層塗料を支持体(50g/mの基紙)の片面にバリバーブレードコーティングした後、乾燥を行ない、乾燥塗布量10.0g/m のアンダーコート層塗工紙を得た。
【0018】
下記配合の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)、及び増感剤分散液(C液)を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5ミクロンになるまで湿式磨砕を行なった。
A液(顕色剤分散液)
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン 12.7部
ポリビニルアルコール 8.5%水溶液 18.8部
水 4.2部
B液(ロイコ染料分散液)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB−2)
3.8部
ポリビニルアルコール 8.5%水溶液 5.0部
水 5.0部
C液(増感剤分散液)
シュウ酸ジベンジル 8.6部
ポリビニルアルコール 8.5%水溶液 11.4部
水 16.0部
【0019】
次いで下記の割合で分散液を混合して感熱記録層の塗布液(固形分27%)とした。
感熱記録層塗料(下層)
A液(顕色剤分散液) 36.0部
B液(ロイコ染料分散液) 13.8部
C液(増感剤分散液) 36.0部
ポリビニルアルコール 8.5%水溶液 25.0部
界面活性剤 50%水溶液 0.25部
増粘剤 12%水溶液 2.1部
なお、得られた塗料の物性は次の通りであった。
表面張力:39mN/m
破断時間:0.06秒
B型粘度:300mPa・s
【0020】
次いで下記の割合で混合して保護層の塗布液(固形分16%)とした。
保護層塗布液(上層)
水酸化アルミニウム(39%分散液) 6.0部
ポリビニルアルコール 8.5%水溶液 30.0部
ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイドリンZ−7−30、固形分30%、粒径5.5μm、中京油脂) 1.7部
架橋剤(WS−4020) 25%水溶液 1.9部
架橋剤(スミレッズSPI102A) 45%水溶液 1.1部
界面活性剤 50%水溶液 0.4部
なお、得られた塗布液の物性は次の通りであった。
表面張力:38mN/m
破断時間:0.15秒
B型粘度:750mPa・s
【0021】
次いで、感熱記録層及び保護層の塗工液を真空脱泡機を用いて脱気処理した後、スライド型カーテン塗工装置を用いて感熱記録層及び保護層を積層したカーテン膜に形成して、支持体上に塗布した。エッジガイドはセラミック製多孔質のプレートを用い、円柱状ガイドは直径1.0mmの金属(鉄製)を用いた。また、エッジプレート上部から補助液(水)を50ml/分で供給した。カーテン膜の下層流量は3.7kg/分・m、上層流量:3.1kg/分・mであり、塗工速度(基紙の移動速度)は250m/分とした。その結果、塗布量(乾燥重量)は、感熱記録層が4.0g/m、保護層が2.0g/mであった。
乾燥後、このシートをスーパーカレンダーで処理後、基紙上に順に感熱記録層及び保護層を有する感熱記録紙を得た。
【0022】
[実施例2]
補助液(水)の量を100ml/分として、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
[実施例3]
補助液の量を300ml/分として、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
[実施例4]
円柱状ガイドの直径を0.5mmに変更して、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[実施例5]
円柱状ガイドの直径を3.0mmに変更して、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[実施例6]
円柱状ガイドの直径を10.0mmに変更して、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[実施例7]
保護層を設けず、感熱記録層のみとし、流量を3.0kg/分・m(塗布量:3.2g/m2)に変更して、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[実施例8]
補助液(水)を流さなかった以外は実施例2と同様に感熱記録体を得た。
【0023】
[比較例1]
エッジガイドを多孔質プレートのみとして、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[比較例2]
エッジガイドを多孔質プレートのみとし、補助液を供給せずに、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
[比較例3]
エッジガイドを円柱状ガイドのみとし、補助液を供給せずに、実施例2と同様に感熱記録体を得た。
【0024】
得られた感熱記録体について次の評価を行った。
[ネックイン]
○:エッジガイドからカーテン膜が離れない
△:エッジガイドからカーテン膜が不定期的に離れる
×:エッジガイドからカーテン膜が常に離れている(塗工不可能)
[塗工ムラ]
○:均一な塗工層が得られる。
△:ネックイン発生時に未塗工部分が発生する。
×:常に未塗工部分が発生する(塗工不可能)。
[画質(感熱)]
大倉電機社製のTH−PMDを使用し、作成した感熱記録体に印加エネルギー0.34mJ/dotでべた印字を行った。印字後の画質を下記の基準で評価した。
◎:全くムラが見られない。
○:僅かにムラが見られる。
△:若干、ムラが見られる。
×:ムラがはっきりと見られる。
[バリア性]
感熱紙の表面を油性赤マジックで複数回往復し、保護層の被覆性の程度を目視評価した。
○:被覆性は十分であり、発色は見られない。
△:被覆性が若干不足しており、僅かに発色が見られる。
×:被覆性が不足しており、発色している。
【0025】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0026】
[実施例9]
下記配合からなる配合物及び適量の水を用いて攪拌分散して、固形分が20%のインクジェット受理層用塗工液を調製した。
インクジェット受理層用塗工液
非晶質シリカ 100部
ポリビニルアルコール 50部
エチレン酢酸ビニルエマルジョン 15部
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド 10部
スチレンアクリル系サイズ剤 3部
界面活性剤 0.5部
水 適量
得られた塗工液の物性は次の通りであった。
表面張力:43mN/m
破断時間:0.25秒
B型粘度:650mPa・s
【0027】
次いで、塗工液を真空脱泡機を用いて脱気処理した後、スライド型カーテン塗工装置を用いてインク受理層をカーテン膜に形成して支持体(80g/mの基紙)上に塗布した。エッジガイドはセラミック製多孔質のプレートを用い、円柱状ガイドは直径1.0mmの金属(鉄製)を用いた。また、エッジプレート上部から補助液(水)を流量100ml/分で供給した。カーテン膜の流量は5kg/分・mであり、塗工速度(基紙の移動速度)は200m/分であった。その結果、塗布量(乾燥重量)は5.0g/mであった。
その後、乾燥して、インクジェット記録媒体を得た。
【0028】
[比較例4]
エッジガイドを多孔質プレートのみとして、実施例8と同様に感熱記録体を得た。
[比較例5]
実施例8で用いた塗工液をバーブレードコーターを用いて支持体(80g/mの基紙)上に塗布した。塗工速度は400m/分、塗工量は8.0g/mであった。その後、乾燥して、インクジェット記録媒体を得た。
【0029】
得られたインクジェット記録媒体について、ネックインと塗工ムラについては上記と同様の評価を行い、画質については次の評価を行った。
[画質(インクジェット)]
インクジェットプリンター(キヤノン社製、PIXUS iP4100)でベタ印字(モード:普通紙、きれい、色:青紫)をし、下記の基準で目視評価した。
○:印字ムラがない
×:印字ムラがある
【0030】
評価結果を表2に示す。
【表2】

【0031】
本発明のカーテン塗工装置を用いたことにより、情報記録用紙の製造においてネックインや塗工ムラが発生することなく、優れた画質とバリア性を有する感熱記録体や、塗工ムラを防止したインクジェット記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明のカーテン塗布装置の概略を示す図である。Aは装置全体、Bはエッジガイドの拡大図を示す。本図は、塗布ヘッド1を2つ持つ場合を示す。Aの矢印は基材の移動方向を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 塗布ヘッド
2 エッジガイド
3 カーテン膜
4 基材(支持体)
5 塗工層
6 多孔質プレート
7 円柱状ガイド
8 補助液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のエッジガイドの間に形成された少なくとも一層の塗液からなるカーテン膜が自由落下して、移動する支持体上に塗工層を形成させるカーテン塗布装置であって、該エッジガイドが多孔質プレートとそれに接した円柱状ガイドから成り、該2つの円柱状ガイドが対向するように配置されたカーテン塗布装置。
【請求項2】
前記円柱状ガイドの直径が0.5〜3.0mmである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
補助液が前記カーテン膜と前記エッジガイド間に供給される請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーテン塗布装置を用いて支持体上に塗工量が12g/m以下の塗工層を形成させることから成る塗布方法。
【請求項5】
塗工層を形成する塗液の流量が3〜7kg/分・mである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
塗液の表面張力が35〜45mN/mである請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記塗液が、少なくとも無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料と電子受容性顕色剤を含み、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法により支持体上に感熱発色層を含む少なくとも1の塗工層を形成させることから成る感熱記録体の製法。
【請求項8】
前記塗液が、少なくとも顔料及びバインダーを含み、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法により支持体上にインク受理層を含む少なくとも1の塗工層を形成させることから成るインクジェット記録媒体の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−34563(P2009−34563A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198703(P2007−198703)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】