説明

カード用コネクタ

【課題】カードとの係合を解除するための機構を別途配設することなく、カードを排出する際にスライド部材がカードを保持から解放することができ、構造が簡素でコストが低く、小型化することができ、カードを容易に取外すことができるカード用コネクタを提供する。
【解決手段】スライド部材14は、カードと当接して押圧力を伝達するカード押圧部14c、カードの凹部と係合するカードロック部14d、付勢部材15の付勢力が作用する付勢力受部14f、及び、ハウジング11のストッパ部11hに当接して挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部14hを備え、カード押圧部14c、カードロック部14d、付勢力受部14f及びストッパ当接部14hがスライド部材14に一体的に形成されるとともに、付勢力受部14fとストッパ当接部14hとがオフセットされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(R)(Multi Media Card)、SD(R)(Secure Digital)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)(xD−Picture card)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、TransFlash(R)メモリカード、マイクロSD(R)カード等の各種メモリカードを利用するために、カード用コネクタを備えている。
【0003】
近年のカード用コネクタは、使い勝手の観点から、メモリカードを挿入する際にも取外す際にもメモリカードを押込むように操作するプッシュ/プッシュ構造を有するものが一般的である。しかし、プッシュ/プッシュ構造を有するカード用コネクタでは、メモリカードを排出する際にスプリングの反発力によって、メモリカードを係合して保持するスライド部材を移動させるようになっているが、メモリカードとスライド部材との係合が解除されないので、メモリカードを取外し難いことがある。そこで、スライド部材にカードロック部材を移動可能に取付け、メモリカードを排出する際にはカードロック部材を移動させてメモリカードとの係合を解除する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図5は従来のカード用コネクタを示す図である。
【0005】
図において、301はカード用コネクタのハウジングの側方に取付けられたスライド部材であり、係合突起303及びカードロック部材304が図示されないメモリカードと係合することによって、該メモリカードを保持しながら図における上下方向にスライドする。なお、前記スライド部材301は、コイルスプリング302によってメモリカードの排出方向(図における下方向)に付勢されている。ここで、スライド部材301の上面には窪(くぼ)み305が形成され、カードロック部材304は、窪み305内に収容されており、その上端がスライド部材301にピボット結合されることによって、前記上端を中心に回動する。そして、窪み305の左側面に形成された開口306から、カードロック部材304の下端に形成された係合部304aがハウジング内部に向けて突出し、メモリカード側面の凹部と係合するようになっている。
【0006】
また、係合部304aの先端は、ハウジング底面方向に突出しており、ハウジング底面に形成されたカードガイド307の側面に形成された傾斜面308に当接する。そのため、ハウジングからメモリカードを排出する際に、スライド部材301がコイルスプリング302によってメモリカードの排出方向に移動させられると、係合部304aの先端が傾斜面308に沿って移動するので、係合部304aはメモリカード側面から離れる方向に移動させられる。これにより、係合部304aとメモリカード側面の凹部との係合が解除されるので、メモリカードは、スライド部材301による保持から解放され、容易に取外すことができる。
【特許文献1】特開2003−6576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のカード用コネクタは、カードロック部材304を回動自在にスライド部材301の上面に取付ける必要があるので、構造が複雑化し、コストも高くなってしまう。また、カードロック部材304の係合部304aを移動させるための機構も必要とするので、更に構造が複雑化し、コストも高くなり、ハウジングが大型化してしまう。
【0008】
本発明は、前記従来のカード用コネクタの問題点を解決して、カードと係合する係合部が一体的に形成されたスライド部材において、ストッパ部に当接する位置と付勢部材からの付勢力を受ける位置とをオフセットさせることによって、カードとの係合を解除するための機構を別途配設することなく、カードを排出する際にスライド部材がカードを保持から解放することができ、構造が簡素でコストが低く、小型化することができ、カードを容易に取外すことができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、前記ハウジングに挿入されたカードを保持してスライドするスライド部材、及び、該スライド部材をカードの挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、該付勢部材の付勢力によって、前記スライド部材を終端点から前記挿入方向と反対の方向に移動させてカードを排出するカード案内機構とを有するカード用コネクタであって、前記スライド部材は、前記カードと当接して押圧力を伝達するカード押圧部、前記カードの凹部と係合するカードロック部、前記付勢部材の付勢力が作用する付勢力受部、及び、前記ハウジングのストッパ部に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部を備え、前記カード押圧部、カードロック部、付勢力受部及びストッパ当接部が前記スライド部材に一体的に形成されるとともに、前記付勢力受部とストッパ当接部とがオフセットされている。
【0010】
本発明の他のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、前記ハウジングに挿入されたカードを保持してスライドするスライド部材、及び、該スライド部材をカードの挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記スライド部材をロック位置で停止させるとともに、前記カードを前記挿入方向に押込むプッシュ動作によってスライド部材が前記挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材の付勢力によって、前記スライド部材を終端点から前記挿入方向と反対の方向に移動させてカードを排出するカード案内機構とを有するカード用コネクタであって、前記スライド部材は、固定カムと係合するスライドカム部、前記カードと当接して押圧力を伝達するカード押圧部、前記カードの凹部と係合するカードロック部、前記付勢部材の付勢力が作用する付勢力受部、及び、前記ハウジングのストッパ部に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部を備え、前記スライドカム部、カード押圧部、カードロック部、付勢力受部及びストッパ当接部が前記スライド部材に一体的に形成されるとともに、前記付勢力受部とストッパ当接部とがオフセットされている。
【0011】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記スライド部材は、前記ストッパ当接部がハウジングのストッパ部に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止すると、傾動して前記カードを保持から解放する。
【0012】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記カードロック部は、前記スライド部材が傾動すると、前記カードの凹部との係合を解除する。
【0013】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記スライド部材の傾動は、前記ハウジングの傾動規制部によって規制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カード用コネクタは、カードと係合する係合部が一体的に形成されたスライド部材において、ストッパ部に当接する位置と付勢部材からの付勢力を受ける位置とをオフセットさせるようになっている。そのため、カードとの係合を解除するための機構を別途配設することなく、カードを排出する際にスライド部材がカードを保持から解放することができ、構造が簡素でコストが低く、小型化することができ、カードを容易に取外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図である。
【0017】
図2において、10は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ10の内部にはカード21が挿入され、前記カード用コネクタ10を介して、前記電子機器にカード21が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0018】
また、カードとしては、例えば、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、TransFlash(R)メモリカード、マイクロSD(R)カード等種々有るが、本実施の形態においては、マイクロSD(R)カードであるものとして説明する。また、本実施の形態において、カード用コネクタ10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ10又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ10又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0019】
ここで、前記カード用コネクタ10は、図2に示されるように、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたカード21を収容するハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形され、ハウジング11の上側に取付けられたシェル12とを有する。前記カード用コネクタ10は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、前方(図2における左上方)からカード21が挿入される。
【0020】
また、図1は、説明のためにシェル12を除去した状態のカード用コネクタ10を示す図である。図1に示されるように、ハウジング11は、カード21の挿入方向に関して手前側となる前縁側(図1における上側)が略U字状に切取られた形状を備える底壁部11a、及び、該底壁部11aの奥部において奥側の縁に沿って延在し、底壁部11aから立設する後壁部11bを有する。ここで、底壁部11aの上面には、前後方向に延在するように形成された端子装填(てん)溝11eが複数形成され、各端子装填溝11eには接続端子としての端子13が挿入されて取付けられている。そして、該端子13は、その根本部が前記端子装填溝11e内における底壁部11aの手前側の縁に近い部分に取付けられ、その先端部が後壁部11bに向けて斜め上方に延在して底壁部11aの上面より上方に突出している。前記端子13の先端部は、接触部として機能し、カード21の下面に配設された端子部材としての図示されないコンタクトパッドに接触して電気的に接続される。また、前記端子13の根本部から延在するソルダーテール部13aは、底壁部11aの手前側の縁から前方に向けて突出し、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
【0021】
そして、ハウジング11は、底壁部11aの一方の側縁に沿って前後方向に延在する側部としての第1側部11c、及び、底壁部11aの他方の側縁に沿って前後方向に延在する側部としての第2側部11dを有する。
【0022】
ここで、前記カード用コネクタ10は、カード用コネクタ10内にカード21を挿入する際にも、カード用コネクタ10内からカード21を取出す際にも、カード21を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものである。そのため、第1側部11cには、カード用コネクタ10内に挿入されたカード21を案内するためのカード案内機構のスライド部材14が前後方向、すなわち、カード21の挿入方向にスライド可能に取付けられている。
【0023】
そして、前記スライド部材14は、カード21を保持するためのカード保持部14aと、プッシュ/プッシュタイプの動作を行うためのカム機構におけるスライドカムとして機能するスライドカム部14bとから成る。なお、前記カード保持部14aとスライドカム部14bとは一体的に形成されている。そして、前記カード保持部14aは、カード21の一方の側面(図2に示される例において、挿入方向右側の側面)に形成された突出部22におけるカード21の挿入方向前方の縁部と当接して押圧力を伝達するカード押圧部14c、及び、カード21の前記側面において前記突出部22におけるカード21の挿入方向後方側に形成された凹部23と係合するカードロック部14dを備える。前記カード押圧部14c及びカードロック部14dは、ハウジング11の内側方向に向けて突出するように、カード保持部14aの一部として一体的に形成されている。そして、スライド部材14は、カード保持部14aのカード押圧部14c及びカードロック部14dによってカード21を保持し、該カード21とともに前後方向に移動する。
【0024】
また、カード保持部14aにおけるカード21の挿入方向前方の端面は、コイルスプリングから成る付勢部材15の付勢力を受ける付勢力受部14fとして機能し、付勢部材15を係止する係止突起14gを備え、付勢部材15の一端が取付けられている。また、該付勢部材15の他端は、後壁部11bの係止部11fに取付けられている。なお、該係止部11fも付勢部材15を係止する係止突起11gを備える。これにより、前記スライド部材14は、付勢部材15によって、カード21の挿入方向と反対の方向、すなわち、カード21の排出方向に付勢される。
【0025】
一方、前記スライドカム部14bは、カード保持部14aの外側の側面、すなわち、ハウジング11の外側方向を向く側面に接続され、カード21の挿入方向前方に延在する。そして、スライドカム部14bの上面には、スライドカムとしてのカム溝14eが形成され、該カム溝14eには固定カムとしての細長いピン部材17の一端が係合している。また、該ピン部材17の他端は、ハウジング11の第1側部11cの前端に形成されたストッパ部11hの上面に係合し、ピボット結合されている。そして、前記ピン部材17とカム溝14eとが協働することによって、カード21とともに移動するスライド部材14にプッシュ/プッシュの動作を行わせるようになっている。これにより、前記カード案内機構は、カード21を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード21が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材15の付勢力によって、前記カード21を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出することができる。なお、前記ピン部材17及びカム溝14eから成るプッシュ/プッシュの動作を行うためのカム機構は従来周知であるので、その説明を省略する。
【0026】
また、前記ストッパ部11hにおけるカード21の挿入方向前方の端面は、カード21を排出させるように移動するスライド部材14を停止させるためのストッパ面11iとして機能する。そして、付勢部材15の付勢力によって、スライド部材14がカード21の挿入方向と反対の方向に移動させられてカード21が排出される際には、スライド部材14のストッパ当接部14hがストッパ部11hのストッパ面11iに当接することによって、スライド部材14が停止させられる。なお、ストッパ当接部14hは、スライドカム部14bにおけるカード21の挿入方向後方の端面である。
【0027】
図1に示される状態は、カード21をカード用コネクタ10に挿入する前の初期状態であり、この状態において、スライド部材14は、付勢部材15の付勢力によってカード21の挿入方向と反対の方向に付勢され、ストッパ部11hに押付けられて停止している。ここで、付勢部材15の付勢力を受ける付勢力受部14fはカード保持部14aの端面であるのに対し、ストッパ部11hのストッパ面11iに当接するストッパ当接部14hは、カード保持部14aの外側の側面に接続されたスライドカム部14bの端面である。すなわち、ストッパ当接部14hは、付勢部材15の付勢力の作用方向(ハウジング11の前後方向)に関して、付勢力受部14fの横方向に位置している。更に換言すると、付勢部材15から受ける付勢力の作用点である付勢力受部14fと、ストッパ部11hから受ける前記付勢力の反力の作用点であるストッパ当接部14hとは、オフセットされている。そのため、スライド部材14を上から観て反時計回り方向に回転させる回転モーメントが発生し、スライド部材14は、反時計回り方向に回転させられ、傾いた状態になっている。すなわち、図1に示されるように、カード保持部14aの長手方向の軸及びスライドカム部14bの長手方向の軸が、ストッパ部11hから受ける前記付勢力の反力の作用点であるストッパ当接部14hを中心として、ハウジング11の前後方向に対して反時計回り方向に傾いている。
【0028】
なお、ストッパ部11hにおけるハウジング11の内側方向を向く側面は、スライド部材14の傾動を規制する傾動規制部11jであり、カード21の挿入方向に進むほどハウジング11の内側に接近するような傾斜面となっている。なお、前記傾動規制部11jは、必ずしもストッパ部11hに形成される必要はなく、ハウジング11のいずれかの部位に形成されていればよい。また、カード保持部14aにおけるカード21の挿入方向後方の端部から前方に延在するハウジング11の外側方向を向く側面は、傾動当接部14iであり、スライド部材14が所定角度だけ傾くと傾動規制部11jに当接することによって、スライド部材14の傾動が規制されるようになっている。なお、前記所定角度とは、カードロック部14dとカード21の凹部23との係合が解除される角度である。
【0029】
また、スライド部材14は、カード21とともに前後方向にスライドする際には、傾きが元に戻った状態で、すなわち、カード保持部14aの長手方向の軸及びスライドカム部14bの長手方向の軸がハウジング11の前後方向に平行となった状態でスライドする。この場合、カード保持部14aは、ハウジング11の前後方向に延在するように第1側部11cに形成された第1スライドガイド壁11m及び第2スライドガイド壁11nに沿ってスライドする。また、スライドカム部14bは、ハウジング11の前後方向に延在するように第1側部11cの外側の側面に形成された外側壁11k、及び、ハウジング11の前後方向に延在するように付勢部材15の側方に立設された仕切壁11pに沿ってスライドする。
【0030】
次に、前記構成のカード用コネクタ10の動作について説明する。
【0031】
図3は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する状態を示す斜視図、図4は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタに挿入されたカードがロック位置にある状態を示す斜視図である。
【0032】
まず、カード21をカード用コネクタ10に挿入して、該カード用コネクタ10が取付けられた電子機器にカード21を装着する動作について説明する。なお、図3及び4は、図1と同様に、説明のためにシェル12を除去した状態を示している。
【0033】
この場合、利用者が手指等によってカード21をカード用コネクタ10の前方から挿入する。そして、利用者がカード21をプッシュしてカード用コネクタ10内に押込むと、図3に示されるように、カード21の挿入方向先端における右側の側面に形成された突出部22がカード保持部14aのカード押圧部14cに当接する。なお、この状態において、カード21の下面に配設された図示されないコンタクトパッドは、端子13の先端部にまで到達していない。
【0034】
続いて、利用者がカード21をプッシュして更に押込むと、前記突出部22がカード押圧部14cをカード21の挿入方向に押圧する。この場合、利用者の手指等が発揮する押圧力が付勢部材15の付勢力よりも強いので、スライド部材14を反時計回り方向に回転させる回転モーメントは消滅する。また、厳密には、当初の期間は、カード押圧部14cの先端が突出部22に当接して押圧されるので、カード保持部14aに時計回り方向に回転させる回転モーメントが生じる。これにより、スライド部材14全体が時計回り方向に回転させられ、カード21をカード用コネクタ10に挿入する前の初期状態における傾きが元に戻り、カード保持部14aの長手方向の軸及びスライドカム部14bの長手方向の軸がハウジング11の前後方向に平行となる。
【0035】
また、スライド部材14の傾きが元に戻る際に、傾動当接部14iは傾動規制部11jから離間し、カードロック部14dは、図3に示される位置から右方へ移動し、カード21の凹部23に進入して係合する。これにより、カード保持部14aは、カード押圧部14cとカードロック部14dとが突出部22を前後から把持することによってカード21を保持した状態となるので、スライド部材14はカード21とともに前後方向に移動可能となる。なお、カード21は、シェル12の側壁等によって横方向の移動が規制されているので、カード保持部14aからの力を受けても、図3における右方へ移動することがない。
【0036】
そして、利用者がカード21をプッシュして更に押込むと、該カード21は、スライド部材14とともに、後壁部11bに向けて移動する。この際、利用者の手指等が発揮する押圧力は、カード21の突出部22からカード押圧部14cを通してスライド部材14に伝達される。そして、該スライド部材14がコイルスプリングから成る付勢部材15を圧縮するので、スライド部材14及びカード21は、付勢部材15の反発力を受けるが、該反発力が利用者の手指等が発揮する押圧力よりも弱いので、前記反発力に抗して移動する。この場合、カード保持部14aは、第1側部11cに形成された第1スライドガイド壁11m及び第2スライドガイド壁11nに沿ってスライドする。また、スライドカム部14bは、第1側部11cの外側の側面に形成された外側壁11k、及び、付勢部材15の側方に立設された仕切壁11pに沿ってスライドする。そして、スライド部材14及びカード21は、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。
【0037】
続いて、利用者がカード21をプッシュする動作を止め、カード21に対する押圧力を解除すると、付勢部材15の反発力によって、スライド部材14及びカード21は後壁部11bから離脱する向きに移動させられる。そして、図4に示されるように、スライド部材14及びカード21は、カード用コネクタ10内でカード21をロックした状態で保持するロック位置で停止する。これは、スライドカム部14bのカム溝14eと係合しているピン部材17が、カム溝14eの一部に係止してスライドカム部14bの動きを停止させることによって、スライド部材14を前記ロック位置で停止させているからである。
【0038】
そして、カード21は、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ10が取付けられた電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード21がロック位置に保持されている場合、カード21のコンタクトパッドは、端子13の先端部と接触して導通している。
【0039】
次に、カード21をカード用コネクタ10から排出させて取出す動作について説明する。
【0040】
この場合、利用者が手指等によってカード21をプッシュして押込むと、スライド部材14及びカード21は、ロック位置から後壁部11bに向けて移動させられる。そして、利用者がカード21をプッシュして更に押込むと、スライド部材14及びカード21は、最も前進した位置である終端点に到達してフルストローク状態となる。
【0041】
続いて、利用者がカード21をプッシュする動作を止め、カード21に対する押圧力を解除すると、付勢部材15の反発力によって、スライド部材14及びカード21は、後壁部11bから離脱する向きに移動させられ、ロック位置の方向に復帰する。この際、付勢部材15の反発力は、押圧力となり、カード押圧部14cを通してカード21の突出部22に伝達される。そして、スライド部材14がロック位置に到達しても、スライドカム部14bのカム溝14eと係合しているピン部材17がカム溝14eの一部に係止しないので、スライド部材14の動きが規制されず、前記ロック位置で停止させられない。そのため、スライド部材14及びカード21は、前記ロック位置を通過し、カード21の挿入方向と反対の方向に更に移動する。
【0042】
そして、スライド部材14及びカード21は、スライド部材14のストッパ当接部14hがストッパ部11hのストッパ面11iに当接することによって停止させられる。この状態は、図3に示される状態と同様である。一方、スライド部材14の付勢力受部14fは付勢部材15の付勢力を受け続けている。そして、前記ストッパ当接部14hと付勢力受部14fとは、オフセットされている。そのため、スライド部材14を上から観て反時計回り方向に回転させる回転モーメントが発生し、スライド部材14は、反時計回り方向に回転させられ、傾いた状態になる。
【0043】
このように、スライド部材14が傾動することによって、カードロック部14dは、上から観て左方へ移動し、カード21の凹部23から離脱して係合を解除する。なお、スライド部材14の傾動は、カード保持部14aの傾動当接部14iがストッパ部11hの傾動規制部11jに当接することによって、所定角度で規制される。なお、該所定角度とは、図3に示されるように、カードロック部14dとカード21の凹部23との係合が解除される角度である。
【0044】
そして、カードロック部14dとカード21の凹部23との係合が解除されることによって、カード21は、カード保持部14aによる保持から解放され、スライド部材14から離れることが可能になる。そのため、カード21は、利用者が手指等によって引張ることにより、容易にカード用コネクタ10から取出すことができる。
【0045】
このように、本実施の形態においては、スライド部材14が、カード21と当接して押圧力を伝達するカード押圧部14c、カード21の凹部23と係合するカードロック部14d、付勢部材15の付勢力が作用する付勢力受部14f、及び、ストッパ部11hに当接して挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部14hを備え、前記カード押圧部14c、カードロック部14d、付勢力受部14f及びストッパ当接部14hがスライド部材14に一体的に形成されるとともに、付勢力受部14fとストッパ当接部14hとがオフセットされている。また、スライドカム部14bもスライド部材14に一体的に形成されている。
【0046】
そのため、カード21との係合を解除するための機構を別途配設しなくても、カード21を排出する際にスライド部材14がカード21の保持を解放することができる。また、構造が簡素でコストが低く、小型化することができ、カード21を容易に取外すことができる。
【0047】
また、スライド部材14は、ストッパ当接部14hがハウジング11のストッパ部11hに当接してカード21の挿入方向と反対の方向の移動を停止すると、傾動してカード21を保持から解放する。これは、ストッパ部11hから受ける前記付勢力の反力の作用点であるストッパ当接部14hが、付勢部材15の付勢力の作用方向に関して、付勢部材15から受ける付勢力の作用点である付勢力受部14fの横に位置しているために、回転モーメントが発生するためである。そのため、付勢部材15の付勢力を利用して、確実にカード21を解放することができる。
【0048】
さらに、スライド部材14の傾動は、傾動規制部11jによって規制される。そのため、スライド部材14は、カードロック部14dとカード21の凹部23との係合が解除される角度以上には傾動しないので、所定の姿勢を維持することができる。これにより、次回にカード21をカード用コネクタ10に挿入する際にも、カードロック部14dがカード21の凹部23と確実に係合し、スライド部材14がカード21を確実に保持することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタに挿入されたカードがロック位置にある状態を示す斜視図である。
【図5】従来のカード用コネクタを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 カード用コネクタ
11 ハウジング
11a 底壁部
11b 後壁部
11c 第1側部
11d 第2側部
11e 端子装填溝
11f 係止部
11g、14g 係止突起
11h ストッパ部
11i ストッパ面
11j 傾動規制部
11k 外側壁
11m 第1スライドガイド壁
11n 第2スライドガイド壁
11p 仕切壁
12 シェル
13 端子
13a ソルダーテール部
14、301 スライド部材
14a カード保持部
14b スライドカム部
14c カード押圧部
14d カードロック部
14e カム溝
14f 付勢力受部
14h ストッパ当接部
14i 傾動当接部
15 付勢部材
17 ピン部材
21 カード
22 突出部
23 凹部
302 コイルスプリング
303 係合突起
304 カードロック部材
304a 係合部
305 窪み
306 開口
307 カードガイド
308 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)端子部材を備えるカード(21)を収容するハウジング(11)と、
(b)該ハウジング(11)に取付けられ、前記カード(21)の端子部材と接触する接続端子(13)と、
(c)前記ハウジング(11)に挿入されたカード(21)を保持してスライドするスライド部材(14)、及び、該スライド部材(14)をカード(21)の挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材(15)を備え、該付勢部材(15)の付勢力によって、前記スライド部材(14)を終端点から前記挿入方向と反対の方向に移動させてカード(21)を排出するカード案内機構とを有するカード用コネクタ(10)であって、
(d)前記スライド部材(14)は、前記カード(21)と当接して押圧力を伝達するカード押圧部(14c)、前記カード(21)の凹部(23)と係合するカードロック部(14d)、前記付勢部材(15)の付勢力が作用する付勢力受部(14f)、及び、前記ハウジング(11)のストッパ部(11h)に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部(14h)を備え、
(e)前記カード押圧部(14c)、カードロック部(14d)、付勢力受部(14f)及びストッパ当接部(14h)が前記スライド部材(14)に一体的に形成されるとともに、前記付勢力受部(14f)とストッパ当接部(14h)とがオフセットされていることを特徴とするカード用コネクタ(10)。
【請求項2】
(a)端子部材を備えるカード(21)を収容するハウジング(11)と、
(b)該ハウジング(11)に取付けられ、前記カード(21)の端子部材と接触する接続端子(13)と、
(c)前記ハウジング(11)に挿入されたカード(21)を保持してスライドするスライド部材(14)、及び、該スライド部材(14)をカード(21)の挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材(15)を備え、前記スライド部材(14)をロック位置で停止させるとともに、前記カード(21)を前記挿入方向に押込むプッシュ動作によってスライド部材(14)が前記挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材(15)の付勢力によって、前記スライド部材(14)を終端点から前記挿入方向と反対の方向に移動させてカード(21)を排出するカード案内機構とを有するカード用コネクタ(10)であって、
(d)前記スライド部材(14)は、固定カム(17)と係合するスライドカム部(14b)、前記カード(21)と当接して押圧力を伝達するカード押圧部(14c)、前記カード(21)の凹部(23)と係合するカードロック部(14d)、前記付勢部材(15)の付勢力が作用する付勢力受部(14f)、及び、前記ハウジング(11)のストッパ部(11h)に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止させるストッパ当接部(14h)を備え、
(e)前記スライドカム部(14b)、カード押圧部(14c)、カードロック部(14d)、付勢力受部(14f)及びストッパ当接部(14h)が前記スライド部材(14)に一体的に形成されるとともに、前記付勢力受部(14f)とストッパ当接部(14h)とがオフセットされていることを特徴とするカード用コネクタ(10)。
【請求項3】
前記スライド部材(14)は、前記ストッパ当接部(14h)がハウジング(11)のストッパ部(11h)に当接して前記挿入方向と反対の方向の移動を停止すると、傾動して前記カード(21)を保持から解放する請求項1又は2に記載のカード用コネクタ(10)。
【請求項4】
前記カードロック部(14d)は、前記スライド部材(14)が傾動すると、前記カード(21)の凹部(23)との係合を解除する請求項3に記載のカード用コネクタ(10)。
【請求項5】
前記スライド部材(14)の傾動は、前記ハウジング(11)の傾動規制部(11j)によって規制される請求項3又は4に記載のカード用コネクタ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−103139(P2007−103139A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290553(P2005−290553)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレーテッド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】