説明

カード用コネクタ

【課題】スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】ハウジングと、ハウジング内をスライド可能に形成され、カード81の装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、装着位置からの更なる押し込みより排出位置に押し戻されるスライド部材6と、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動してカード81を抜け止めするよう動作すると共に、排出位置へ押し出されるカード81に押し込まれることで、カード81の排出を許容するように動作する抜け止め部材9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、SIM(Subscriber Identity Module)カード用のカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SIMカード用のカード用コネクタとして、プッシュプッシュ式のカード用コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカード用コネクタには、ハウジング内において挿入方向及び排出方向にSIMカードと共にスライドするスライド部材を、装着位置においてロックするロック機構が設けられている。ロック機構は、SIMカードの押し込みによりスライド部材を装着位置でロックし、SIMカードの更なる押し込みによりスライド部材のロックを解除する。SIMカードは、スライド部材のロックが解除されると、スライド部材を排出方向に付勢する排出バネの付勢力によって、スライド部材を介して排出位置に押し戻される。
【0003】
ところで、SIMカードの側面には、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きが形成されていない。したがって、スライド部材が装着位置にロックされた状態であっても、振動等でSIMカードがコネクタから抜け出るおそれがある。このため、カード用コネクタの装着口側に抜け止め用の抜け止め部材を設ける構成が考えられる(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のカード用コネクタの抜け止め部材は、手動操作によって、装着口の一部を塞ぐ抜け止め位置と、抜け止め位置から退避する退避位置との間を移動される。SIMカードは、抜け止め部材の抜け止め位置への移動により、コネクタからの抜けが防止され、抜け止め部材の退避位置への移動により、コネクタへの抜差しが許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17183号公報
【特許文献2】特許第2717349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のカード用コネクタにおいては、抜け止め部材が手動操作されるため、SIMカードの装着時に抜け止め部材の操作を忘れるおそれがあり、SIMカードの抜けを確実に防止できないという問題があった。また、SIMカードの装着時には、SIMカードの挿入後に抜け止め部材を手動操作して抜け止めし、SIMカードの排出時には、抜け止め部材を手動操作して抜け止めを解除した後に、SIMカードを取り出す必要があるため、操作が煩雑になるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、カードの装着空間を形成するハウジングと、前記カードの挿入方向及び排出方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記カードの装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、前記装着位置からの更なる押し込みにより排出位置に戻されるスライド部材と、前記カードを抜け止め保持する保持部を、前記カードを抜け止めする抜け止め位置と、前記抜け止め位置から退避する退避位置との間で移動させる抜け止め部材とを備え、前記抜け止め部材は、前記スライド部材に設けられた連結部を介して前記スライド部材のスライドに連動され、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドにより前記保持部を前記抜け止め位置に移動し、前記スライド部材の前記排出位置へのスライドにより前記保持部に前記カードを当接させて、前記保持部を前記退避位置に移動することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、スライド部材の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材の保持部が抜け止め位置に移動される。よって、カードの装着時には、抜け止め部材の操作を忘れていても、保持部が抜け止め位置に移動されるため、保持部によってカード用コネクタからのカードの抜けを確実に防止することができる。また、スライド部材の排出位置へのスライドにより、保持部がカードに当接されて退避位置に移動される。よって、カードの排出時には、抜け止め部材を操作することなく、保持部が退避位置に移動されるため、保持部によってカードの排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材の手動操作が不要となるため、簡易にカードの装着動作及び排出動作を行うことができる。また、抜け止め部材の保持部が、排出方向に移動されたカードの当接により退避位置に移動されるため、カードをスムーズに排出させることができ、操作性を向上させることができる。さらに、カードの排出時に、保持部との当接によりカードが制動されるため、カードの不意な飛び出しを防止することができる。
【0009】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記連結部は、前記スライド部材が前記排出位置にある場合に、前記保持部の前記抜け止め位置への移動を規制する第一の規制部を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スライド部材が排出位置にあるカードの非装着時に、保持部が抜け止め位置に移動されることがないため、カード用コネクタに対するカードの装着が阻害されることがない。
【0011】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記連結部は、前記スライド部材が前記装着位置にある場合に、前記保持部の前記退避位置への移動を規制する第二の規制部を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、スライド部材が装着位置にあるカードの装着時に、保持部が退避位置に移動されることがないため、カード用コネクタからのカードの無理抜きを防止することができる。
【0013】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、前記連結部は、前記ストッパを迂回するようにして、前記スライド部材から排出方向に延び、前記カードの装着口の近傍において前記抜け止め部材を前記スライド部材のスライドに連動させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ストッパが装着口の近傍におけるスライド部材と抜け止め部材との連動を規制することがない。
【0015】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材に形成されたカム従動面と、前記連結部に形成され、前記カム従動面に当接するカム部とによりカム機構が形成され、前記抜け止め部材は、前記カム機構により前記スライド部材の挿入方向へのスライドが変換されて、前記保持部を前記抜け止め位置に移動することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、スライド部材の挿入方向へのスライドと保持部の抜け止め位置への移動とを、簡易な構成で連動させることができる。
【0017】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材は、前記ハウジングに揺動可能に支持されており、前記カム機構により前記スライド部材のスライドが変換されて、前記保持部を揺動することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、抜け止め部材を揺動させることで、カード用コネクタの幅を広げることなく、保持部のカードに当接可能な部分を大きくとることができる。
【0019】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記抜け止め部材及び前記連結部により、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドに対し、前記保持部の抜け止め位置への移動を遅らせる遅延機構が形成されたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、挿入方向において長いカードが装着される場合であっても、保持部の抜け止め位置への移動を遅延することで、保持部と挿入途中のカードとの衝突を防止し、カードをスムーズに装着することができる。
【0021】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記遅延機構は、前記抜け止め部材に設けられたバネ部と、前記連結部に設けられ、前記バネ部に当接可能な当接部とを有し、前記スライド部材が前記排出位置から前記挿入方向に所定長だけスライドされる間、前記保持部が前記当接部に当接された前記バネ部により退避位置側に付勢されることで、前記保持部の抜け止め位置への移動を遅らせることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、バネ部と当接部との接触により保持部の移動タイミングを遅延させることができ、簡易な構成で遅延機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、カバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、スライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態の説明図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、抜け止め部材の揺動動作の遷移図である。
【図6】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、カード用コネクタによるカードの装着動作の説明図である。
【図7】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、カード用コネクタによるカードの排出動作の説明図である。
【図8】本発明に係るカード用コネクタの第二の実施の形態を示す図であり、カバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【図9】本発明に係るカード用コネクタの第二の実施の形態を示す図であり、スライド部材と抜け止め部材の平面図である。
【図10】本発明に係るカード用コネクタの第二の実施の形態を示す図であり、スライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
【図11】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、遅延機構の説明図である。
【図12】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、遅延機構による遅延動作の説明図である。
【図13】本発明に係るカード用コネクタの第一の実施の形態を示す図であり、カードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第一の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、SIMカードが装着されるカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0026】
まず、本実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカードについて説明する。図13は、本発明の第一の実施の形態に係るカードの平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図をそれぞれ示している。
【0027】
図13(a)、(b)に示すように、カード81は、いわゆるSIMカードであり、上面視略矩形状に形成され情報記憶部を有する記憶媒体である。カード81の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面82が形成されている。傾斜面82は、カード81の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面82が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
【0028】
カード81の背面には、カード81の挿入方向における後端側の略半部に、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子15に接触して情報の読み出しまたは書込みをするための複数の接点パッド83が設けられている。また、カード81の側面は、挿入方向に沿って平坦に形成され、カード用コネクタ1のスライド部材6の側面に面接触される。すなわち、カード81は、カード用コネクタ1のスライド部材6に保持されることなく、スライド部材6に面接触された状態で挿入方向及び排出方向に動作される。
【0029】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の第一の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
【0030】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカード81の装着空間を形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2及びカバー3が組み合わされて装着口4を有する箱状体をなしている。コネクタ本体2の底壁部11における装着口4側の略前半部には、複数のコンタクト端子15が設けられている。各コンタクト端子15は、底壁部11の略前半部から奥壁部12側に向かって延在している。
【0031】
コネクタ本体2の奥壁部12には、カード81の装着検出用のスイッチ部5が設けられている。スイッチ部5は、奥壁部12に揺動可能に支持されたレバー21と、レバー21に設けられた接点バネ22とを有している。スイッチ部5は、奥壁部12の内側面に露出された一対の固定接点23、24に対向し、カード81の非装着時に、接点バネ22の一端を一方の固定接点23に接触させ、接点バネ22の他端を他方の固定接点24から離間させている。そして、スイッチ部5は、カード81により奥壁部12側に押し込まれると、レバー21の回動により接点バネ22の他端を他方の固定接点24に接触させて、カード81の装着を検出する。
【0032】
コネクタ本体2の一の側壁部13側には、側壁部13に沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁部12に当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。また、コネクタ本体2の装着口4側には、スライド部材6の排出方向へのスライドを遮るようにストッパ26が設けられている。ストッパ26は、スライド部材6に当接することで、スライド部材6を排出位置に規制する。
【0033】
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入方向及び排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6は、挿入方向の前端側からコネクタ本体2の中央に向かって延在する腕部31を有している。腕部31は、カード81の挿入方向の前端面に当接し、スライド部材6とカード81とを一体に動作させる。
【0034】
スライド部材6の上面にはハートカム溝39が形成されており、このハートカム溝39とストッパ26に設けられたラッチピン8とによりスライド部材6の位置が規定される。ラッチピン8は、スライド部材6のスライド方向に延在し、両端が底壁部11に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン8の一端は、ストッパ26に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝39上に摺動される。
【0035】
ハートカム溝39は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてラッチピン8の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁部12近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ラッチピン8とハートカム溝39は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0036】
また、スライド部材6には、ストッパ26の側方を通り装着口4側に延在する連結部32が設けられている。連結部32の先端の近傍には、スライド部材6に連動する抜け止め部材9が設けられている。抜け止め部材9は、カード81を抜け止め保持する保持片44を有している。また、抜け止め部材9は、連結部32を介してスライド部材6に連動し、装着口4の一部を塞ぐ抜け止め位置と抜け止め位置から退避した退避位置との間で保持片44を移動させる。
【0037】
カバー3は、金属製の板材を折り曲げて形成されており、上板の一側方にはラッチピン8を押えるピン押え35が形成されている。ピン押え35は、底壁部11側に切り起こされた片持ちバネであり、ラッチピン8の中間部分を下方に押圧してラッチピン8の他端をハートカム溝39に押し付けている。
【0038】
以下、図3及び図4を参照して、スライド部材と抜け止め部材との連動構成について説明する。図3は、本発明の第一の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。図4は、本発明の第一の実施の形態に係る寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態の説明図である。なお、図3においては、カードの排出時のスライド部材と抜け止め部材との連動状態を示している。
【0039】
図3に示すように、連結部32は、ストッパ26を迂回するように装着口4側に延在し、抜け止め部材9に当接可能に形成されている。このため、スライド部材6と抜け止め部材9は、装着口4近傍においてストッパ26により連動が規制されることがない。連結部32の先端部には、スライド部材6のスライドを抜け止め部材9のバネ片43に伝達可能な傾斜面33が形成されている。傾斜面33は、装着口4側に向かって側壁部13との間隔を狭めるように傾斜している。そして、傾斜面33は、スライド部材6のスライドに伴って移動されることで、抜け止め部材9のバネ片43を押圧する。
【0040】
抜け止め部材9は、金属板を折り曲げて形成されており、コネクタ本体2の底壁部11に設けられた支持突起41に揺動自在に支持される平板部42を有している。平板部42の奥壁部12側には、片持ちのバネ片43が設けられている。バネ片43は、平板部42に連なる基端部からストッパ26に向かって延在し、延在方向の途中部分で基端側に折り返されている。このバネ片43の自由端部側が、連結部32の傾斜面33に押圧されることで、抜け止め部材9が支持突起41を中心として揺動される。
【0041】
平板部42の装着口4側には、カード81を抜け止め保持する保持片44が設けられている。保持片44は、平板部42に連なる基端部から装着口4側(カード81側)に向かって延在し、途中部分で基端側に折り曲げられている。保持片44は、基端側の略半部でカード81を抜け止め保持する。保持片44の先端側の略半部は、退避位置においてカード81との接触を避けるように折り曲げられている。
【0042】
また、平板部42のバネ片43近傍は、連結部32に設けられた第一、第二の規制部48、49と共に、抜け止め部材9の揺動範囲を規制する規制片45となっている。規制片45は、連結部32において、第一、第二の規制部48、49に対して一段低くなった段部47に位置される。そして、抜け止め部材9は、スライド部材6が排出位置にある場合に、規制片45と第一の規制部48とによって抜け止め方向への揺動が規制される。これにより、カード81の非装着時に保持片44が抜け止め位置に移動されず、カード81の装着が阻害されることがない。また、抜け止め部材9は、スライド部材6が装着位置にある場合に、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向への揺動が規制される。これにより、カード81の装着時に保持片44が退避位置に移動されず、カード81の抜けが確実に防止される。
【0043】
この場合、抜け止め部材9は、バネ片43によりカード81の挿入方向における寸法誤差を吸収している。例えば、図4に示すように、カード用コネクタ1に、挿入方向における寸法が大きなカード81が装着された場合には、バネ片43が大きく撓んで抜け止め部材9の揺動量を調整し、保持片44によるカード81の抜け止めを可能とする。このように、抜け止め部材9は、バネ片43の撓みにより揺動量が調整される。また、カード用コネクタ1に外部からの振動等が加わっても、抜け止め部材9とスライド部材6との間で生じる振動がバネ片43に吸収されるため、異音の発生を防止でき、操作性を向上させることが可能となる。
【0044】
ここで、図5を参照して、抜け止め部材の揺動動作について説明する。図5は、本発明の第一の実施の形態に係る抜け止め部材の揺動動作の遷移図である。なお、図5において、(a)から(c)がカードの装着時における抜け止め部材の揺動動作、(c)から(e)がカードの排出時における抜け止め部材の揺動動作をそれぞれ示している。
【0045】
図5(a)に示すように、スライド部材6が排出位置にある場合、スライド部材6によってカード81が装着口4から押し出されている。このとき、抜け止め部材9は、保持片44を退避位置に位置させており、規制片45と第一の規制部48とにより抜け止め方向への揺動が規制されている。この状態からカード81が押し込まれると、スライド部材6が挿入方向にスライドされ、抜け止め部材9のバネ片43と連結部32の傾斜面33とが接触される。
【0046】
図5(b)に示すように、カード81が更に押し込まれ、スライド部材6がさらに挿入方向にスライドされると、バネ片43が傾斜面33に乗り上がり始める。抜け止め部材9は、バネ片43に対する傾斜面33の押し込みにより支持突起41を中心に抜け止め方向に揺動を開始する。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第一の規制部48とが離間されるため、揺動が規制されることがない。
【0047】
図5(c)に示すように、カード81がカード用コネクタ1に装着され、スライド部材6が装着位置までスライドされると、バネ片43が傾斜面33に完全に乗り上がる。抜け止め部材9は、抜け止め方向の揺動により保持片44を抜け止め位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側に突出され、カード用コネクタ1からのカード81の抜けが防止される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向の揺動が規制される。したがって、カード用コネクタ1からのカード81の無理抜きが防止される。
【0048】
このように、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード81の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード81の抜けを確実に防止することが可能となる。
【0049】
図5(c)に示す状態から、カード81が更に押し込まれると、スライド部材6がカード81と共に排出方向に押し戻され、第二の規制部49による抜け止め部材9の退避方向の揺動規制が解除される。
【0050】
図5(d)に示すように、スライド部材6が排出方向にスライドされると、カード81の後端によって抜け止め部材9の保持片44が押し込まれる。抜け止め部材9は、保持片44に対するカード81の押し出しにより支持突起41を中心に退避方向に揺動を開始する。このとき、バネ片43が傾斜面33を下るため、バネ片43に対する傾斜面33の押し込み量が小さくなり、抜け止め部材9の退避方向の揺動に対するバネ片43の抵抗が弱まる。
【0051】
図5(e)に示すように、カード81がカード用コネクタ1から排出され、スライド部材6が排出位置までスライドされると、抜け止め部材9は、退避方向の揺動により保持片44を退避位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側から退避され、カード用コネクタ1に対するカード81の抜差しが許容される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と連結部32の第一の規制部48とによって抜け止め方向の揺動が規制される。
【0052】
このように、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。よって、カード81の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード81の排出が規制されることがない。
【0053】
図6及び図7を参照して、カード用コネクタの装着動作及び排出動作について説明する。図6は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの装着動作の説明図である。図7は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの排出動作の説明図である。なお、図6及び図7においては、説明の便宜上、カバーを省略している。
【0054】
最初に、カード用コネクタ1によるカード81の装着動作について説明する。図6(a)に示すように、カード用コネクタ1にカード81が挿入されると、カード81の先端がスライド部材6の腕部31に接触される。このとき、抜け止め部材9は、第一の規制部48によって抜け止め方向の揺動が規制されるため、抜け止め部材9がカード81の挿入を妨げることがない。この状態からカード81が押し込まれると、スライド部材6が装着位置に向かってスライドし、抜け止め部材9の抜け止め方向の揺動規制が解除される。
【0055】
図6(b)に示すように、カード81が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端にハートカム溝39が摺動されながら、スライド部材6が更に装着位置側にスライドされる。このスライド部材6の挿入方向のスライドに伴って、連結部32の傾斜面33に抜け止め部材9のバネ片43が押し込まれ、抜け止め部材9が支持突起41を中心として抜け止め方向に揺動される。
【0056】
図6(c)に示すように、カード81が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、カード81がスライド部材6と共に装着位置に保持される。そして、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置まで移動され、カード用コネクタ1からのカード81の抜けが防止される。また、カード81によってスイッチ部5が押し込まれて、カード81の装着が検出される。そして、装着位置に保持されることでカード81の接点パッド83が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15と接触し、カード81の情報記憶部と上位装置との間での信号の授受が可能となる。
【0057】
次に、カード用コネクタ1によるカード81の排出動作について説明する。図7(a)に示すように、カード81の装着状態においては、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、スライド部材6の排出方向へのスライドが規制されている。このとき、抜け止め部材9は、第二の規制部49によって退避方向の揺動が規制されるため、カード81の無理抜きが防止される。
【0058】
図7(b)に示すように、カード81が更に押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、スライド部材6が排出バネ7により排出位置に向かって押し戻される。このスライド部材6の排出方向のスライドによって、カード81の後端に抜け止め部材9の保持片44が押し出されて、抜け止め部材9が支持突起41を中心として退避方向に揺動される。
【0059】
図7(c)に示すように、スライド部材6が排出位置にスライドされると、カード81による押し出しにより、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。このようにして、カード81がカード用コネクタ1の装着口4から排出される。また、スイッチ部5へのカード81による押し込みが解除されるので、カード81の排出が検出される。そして、装着位置からカード81が排出位置に移動することでカード81の接点パッド83が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15から離間する。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、連結部32の傾斜面33に押し込まれることで、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード81の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード81の抜けを確実に防止することが可能となる。また、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動し、カード81に押圧されて保持片44が退避位置に移動される。よって、カード81の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード81の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材9に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード81の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。また、保持片44が、排出方向に移動されたカード81の当接により退避位置に移動されるため、カード81をスムーズに排出させることができ、操作性を向上させることができる。さらに、カード81の排出時に、保持片44との当接によりカード81が制動されるため、カード81の不意な飛び出しを防止することができる。
【0061】
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。本発明の第二の実施の形態に係るカード用コネクタは、上述した第一の実施の形態に係るカード用コネクタとスライド部材と抜け止め部材との連動構成についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。図8は、本発明の第二の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。図9は、本発明の第二の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材の平面図である。図10は、本発明の第二の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
【0062】
図8に示すように、カード用コネクタ51は、スライド部材55と抜け止め部材56とを除いて、第一実施の形態に示すカード用コネクタと同一の構成になっている。スライド部材55は、コネクタ本体52の一の側壁部58に沿ってスライド可能に配置されており、図示しない排出バネによって排出方向に付勢されている。また、スライド部材55の排出方向における前方には、スライド部材55のスライドを規制するストッパ61が設けられている。ストッパ61の近傍には、スライド部材55に連動して、カード81を抜け止めする抜け止め部材56が設けられている。
【0063】
図9に示すように、スライド部材55には、装着口側に延在する連結部62が設けられており、連結部62にはストッパ61を収容可能な開口63が形成されている。このため、スライド部材55と抜け止め部材56は、装着口近傍においてストッパ61により連動が規制されることがない。また、開口63内にストッパ61が配置されるため、ストッパ61の上方を通るように連結部62を迂回させる構成と比較して、カード用コネクタ51を薄型化することが可能となる。
【0064】
連結部62の先端部には、底壁部59側に向かって突出したカム部64が形成されている。カム部64は、側壁部58との間に抜け止め部材56のレバー66を収容可能な間隔を空けて形成される。カム部64は、スライド部材55のスライドに伴ってレバー66の側面65に摺接することで、抜け止め部材56を駆動させる。すなわち、カム部64とカム従動面として機能するレバー66の側面65とでカム機構が形成される。
【0065】
抜け止め部材56は、上面視略円弧状のレバー66と、レバー66の先端側に設けられた保持部67とを有している。レバー66の背面には、揺動突起68が底壁部59側に突出されている。抜け止め部材56は、揺動突起68がコネクタ本体52の底壁部59に設けられた支持穴に挿入されることで、底壁部59に揺動可能に支持される。レバー66の側面65は、略円弧状に延在しており、カム部64に摺接される摺接面になっている。このレバー66の円弧状の側面65が、カム部64に押圧されることで、抜け止め部材56が支持穴を中心として揺動される。
【0066】
図10(a)に示すように、スライド部材55が排出位置にある場合、カム部64が保持部67側のレバー66の一端側に接しており、保持部67が退避位置に位置されている。この状態からカード81が押し込まれると、スライド部材55が挿入方向にスライドされ、カム部64がレバー66の側面65を一端側から他端側に向かって摺動する。そして、カム部64がレバー66の側面65の他端側に摺接することで、支持穴を中心として抜け止め部材56が抜け止め方向に揺動される。
【0067】
図10(b)に示すように、カード81が更に押し込まれ、スライド部材55が装着位置までスライドされると、抜け止め部材56の保持部67が抜け止め位置まで移動される。これにより、保持部67が、装着口側に突出され、カード用コネクタ51からのカード81の抜けが防止される。また、ラッチピン57の他端がハートカム溝69の係止部分に係止され、カード81がスライド部材55と共に装着位置に保持される。
【0068】
このように、スライド部材55の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材56の保持部67が抜け止め位置に移動される。よって、カード81の装着動作で、抜け止め部材56により抜け止めされるため、カード用コネクタ51からのカード81の抜けを確実に防止することが可能となる。
【0069】
図10(c)に示すように、カード81が更に押し込まれると、ラッチピン57とハートカム溝69との係止状態が解除されて、スライド部材55がカード81と共に排出方向に押し戻される。スライド部材55が排出方向にスライドされると、カード81の後端に抜け止め部材56の保持部67が押し出されて、抜け止め部材56が支持穴を中心として退避方向に揺動される。
【0070】
図10(d)に示すように、カード81がカード用コネクタ51から排出され、スライド部材55が排出位置までスライドされると、抜け止め部材56の保持部67が退避位置まで移動される。これにより、抜け止め部材56の保持部67が装着口側から退避され、カード81用コネクタに対するカード81の抜差しが許容される。
【0071】
このように、スライド部材55の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材56の保持部67が退避位置に移動される。よって、カード81の排出動作で、抜け止め部材56の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ51からのカード81の排出が規制されることがない。
【0072】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ51によれば、第一の実施の形態と同様に、カード用コネクタ51からのカード81の抜けを確実に防止することができると共に、抜け止め部材56によってカード81の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材56に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード81の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。また、カード81の排出時にカード81によって保持部67が退避位置に押し出されるため、カード81のスムーズな排出及び不意な飛び出しを防止することが可能となる。さらに、レバー66の側面65をカム従動面とすることで、薄型の抜け止め部材56を使用しても、カム部64からの押圧力に対する部品強度を高めることが可能となる。また、部品強度が高められることから、抜け止め部材56を薄く形成することができ、カード用コネクタ51を薄型化することが可能となる。
【0073】
なお、上記した第一、第二の実施の形態に係るカード用コネクタに、スライド部材の装着位置へのスライドに対して保持部の抜け止め位置への移動を遅らせる遅延機構を設けることも可能である。ここで、図11及び図12を参照して、遅延機構について説明する。図11は、本発明の実施の形態に係る遅延機構の説明図である。図12は、本発明の実施の形態に係る遅延機構による遅延動作の説明図である。なお、図11及び図12においては、説明の便宜上、第一、第二の実施の形態とは異なる連結構成を例示して説明する。
【0074】
図11に示すように、連結部71の先端部には、コネクタ本体72の底壁部側に向かって突出した突出部79が形成されている。突出部79は、コネクタ本体72の側壁部73との間に抜け止め部材74のレバー75を収容可能な間隔を空けて形成される。突出部79は、スライド部材84のスライド方向に延在し、抜け止め部材74を駆動させるカム部として機能する他、後述する抜け止め部材74のバネ部78に当接して抜け止め部材74の駆動を遅らせる当接部として機能する。
【0075】
抜け止め部材74は、金属板により形成され、上面視略円弧状のレバー75と、レバー75の先端側に設けられた保持部76とを有している。レバー75は、底壁部に設けられた支持突起77に揺動自在に支持されている。レバー75の側面85の後端側は、突出部79に当接される当接面となっている。このレバー75の側面85の後端側が、突出部79に押圧されることで、抜け止め部材74が支持穴を中心として抜け止め方向に揺動される。
【0076】
また、レバー75には、カード81の排出位置において突出部79に当接する片持ちのバネ部78が設けられている。バネ部78は、突出部79に当接することで、抜け止め部材74を退避方向に付勢する。この場合、バネ部78に当接される突出部79は、連結部71の先端から挿入方向に所定長だけ延在する。したがって、バネ部78は、スライド部材84の装着位置へのスライド時に、連結部71の先端から所定長だけ抜け止め部材74の抜け止め方向への揺動に抵抗する。
【0077】
よって、抜け止め部材74は、バネ部78と突出部79とが当接される間だけ、スライド部材84のスライドに対して抜け止め方向への揺動が遅延する。なお、遅延量は、突出部79のスライド方向における延在長によって調整することができ、例えば、カード81の挿入方向における寸法誤差を吸収する長さに調整することが好ましい。
【0078】
図12(a)に示すように、スライド部材84が排出位置にある場合、スライド部材84と共にカード81が装着口から押し出されている。このとき、抜け止め部材74は、保持部76を退避位置に位置させている。この状態からカード81が押し込まれると、スライド部材84の挿入方向へのスライドに伴って、突出部79が挿入方向に移動される。
【0079】
図12(b)に示すように、カード81が更に押し込まれ、スライド部材84がさらに挿入方向にスライドされると、突出部79がレバー75の側面85の後端側に当接し、抜け止め部材74を抜け止め方向へ押圧する。このとき、抜け止め部材74は、バネ部78と突出部79との当接により退避方向に付勢されるため、抜け止め方向への揺動が抑制される。
【0080】
図12(c)に示すように、カード81が更に押し込まれ、スライド部材84がさらに挿入方向にスライドされると、バネ部78が突出部79から外れ、抜け止め部材74が抜け止め方向に揺動を開始する。このような構成により、スライド部材84の装着位置へのスライド方向に対して、抜け止め部材74の抜け止め方向への揺動を遅延させることが可能となる。よって、挿入方向において長いカード81が装着される場合であっても、保持部76の抜け止め位置への移動を遅延することで、保持部76と挿入途中のカード81との衝突を防止し、カード81をスムーズに装着することができる。
【0081】
なお、上記した各実施の形態においては、本発明をSIMカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。SIMカード以外にも、側面に切欠きが形成されたSDカード等に対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。また、上記した各実施の形態においては、本発明をカードの接点パッドとコネクタのコンタクト端子とを接触させて信号の授受を行う接触式のカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。カード装着位置において、光学式や磁気式の信号読み出し書込み部材によってカードとコネクタとの信号の授受を行う非接触式のカード用コネクタに適用しても良い。
【0082】
また、上記した各実施の形態においては、本発明を1種類のカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。2種類以上のカードに対応可能なコンバイン型のカード用コネクタや、3種類以上のカードに対応可能なカード用コネクタに適用してもよい。
【0083】
また、上記した各実施の形態においては、保持部が抜け止め部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。保持部は、抜け止め部材によって抜け止め位置と退避位置とに移動される構成であればよく、抜け止め部材と別体に形成されていてもよい。
【0084】
また、上記した各実施の形態においては、連結部がスライド部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。連結部は、スライド部材のスライドに伴って抜け止め部材を連動させるものであればよく、スライド部材と別体に形成されていてもよい。
【0085】
また、上記した各実施の形態においては、スライド部材及び抜け止め部材がカム機構を介して連動する構成としたが、この構成に限定されるものではない。スライド部材及び抜け止め部材は、どのような構成で連動してもよい。また、抜け止め部材は、スライド部材の挿入方向のスライドのみに連動する構成としてもよいし、スライド部材の排出方向のスライドのみに連動する構成としてもよい。
【0086】
また、上記した各実施の形態においては、抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して揺動される構成としたが、この構成に限定されるものではない。抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して、スライド方向に直交するカード用コネクタの幅方向にスライドして、保持部を保持位置に移動させる構成としてもよい。
【0087】
また、上記した各実施の形態においては、遅延機構は、抜け止め部材に設けられたバネ部と連結部に当接部として設けられた突出部とで構成したが、この構成に限定されるものではない。遅延機構は、スライド部材のスライドに対して、抜け止め部材の保持部の抜け止め位置への移動を遅らせる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0088】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、スライド部材からの外れを防止するための保持用の切欠きを持たないカードを使用しても、煩雑な操作を要することなく、カードの装着時にカードの抜けを確実に防止することができるという効果を有し、特に、SIMカード用のカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1、51 カード用コネクタ
2、52、72 コネクタ本体(ハウジング)
3 カバー(ハウジング)
4 装着口
6、55、84 スライド部材
7 排出バネ
8、57 ラッチピン
9、56、74 抜け止め部材
26、61 ストッパ
32、62、71 連結部
33 傾斜面
43 バネ片
44 保持片(保持部)
45 規制片
48 第一の規制部
49 第二の規制部
63 開口
64 カム部(カム機構)
65、85 側面(カム機構、カム従動面)
67、76 保持部
78 バネ部(遅延機構)
79 突出部(遅延機構、当接部)
81 カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの装着空間を形成するハウジングと、
前記カードの挿入方向及び排出方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライド可能に形成され、前記カードの装着空間への押し込みにより装着位置で保持され、前記装着位置からの更なる押し込みにより排出位置に戻されるスライド部材と、
前記カードを抜け止め保持する保持部を、前記カードを抜け止めする抜け止め位置と、前記抜け止め位置から退避する退避位置との間で移動させる抜け止め部材とを備え、
前記抜け止め部材は、前記スライド部材に設けられた連結部を介して前記スライド部材のスライドに連動され、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドにより前記保持部を前記抜け止め位置に移動し、前記スライド部材の前記排出位置へのスライドにより前記保持部に前記カードを当接させて、前記保持部を前記退避位置に移動することを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記連結部は、前記スライド部材が前記排出位置にある場合に、前記保持部の前記抜け止め位置への移動を規制する第一の規制部を有することを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記連結部は、前記スライド部材が前記装着位置にある場合に、前記保持部の前記退避位置への移動を規制する第二の規制部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記スライド部材の排出方向への移動を規制するストッパを備え、
前記連結部は、前記ストッパを迂回するようにして、前記スライド部材から排出方向に延び、前記カードの装着口の近傍において前記抜け止め部材を前記スライド部材のスライドに連動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記抜け止め部材に形成されたカム従動面と、前記連結部に形成され、前記カム従動面に当接するカム部とによりカム機構が形成され、
前記抜け止め部材は、前記カム機構により前記スライド部材の挿入方向へのスライドが変換されて、前記保持部を前記抜け止め位置に移動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記抜け止め部材は、前記ハウジングに揺動可能に支持されており、前記カム機構により前記スライド部材のスライドが変換されて、前記保持部を揺動することを特徴とする請求項5に記載のカード用コネクタ。
【請求項7】
前記抜け止め部材及び前記連結部により、前記スライド部材の前記装着位置へのスライドに対し、前記保持部の抜け止め位置への移動を遅らせる遅延機構が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項8】
前記遅延機構は、前記抜け止め部材に設けられたバネ部と、前記連結部に設けられ、前記バネ部に当接可能な当接部とを有し、
前記スライド部材が前記排出位置から前記挿入方向に所定長だけスライドされる間、前記保持部が前記当接部に当接された前記バネ部により退避位置側に付勢されることで、前記保持部の抜け止め位置への移動を遅らせることを特徴とする請求項7に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−171141(P2011−171141A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34534(P2010−34534)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】