説明

カーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法

【課題】カーボンナノチューブの内部チャネルを触媒反応器として用いるために特定の前処理を通じてカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持させることで、多様な触媒反応に応用できる金属触媒ナノ粒子が担持された高性能カーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は金属触媒ナノ粒子がカーボンナノチューブの内部チャネルの表面にのみ選択的に担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法に関するものであり、より詳しくは、特定の前処理を通じてカーボンナノチューブの内部表面に欠陥を形成した後、前処理されたカーボンナノチューブに気相の金属前駆体を流し、化学気相蒸着法でカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子が担持され得るように製造した優れた選択的触媒反応活性及び耐久性を有する金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブの内部チャネルの表面にのみ高分散状態で金属触媒ナノ粒子を担持して製造することで、触媒の耐久性及び選択的触媒反応活性が向上した金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは自らの電気伝導度、比表面積、水素貯蔵性及び物理/化学的耐久性などが他の炭素系物質に比べて非常に優れているので、触媒支持体としての使用が望まれる新素材である。従って、白金、ニッケル、ルテニウムなどの多様な金属触媒などを担持して燃料電池用触媒として用いることが好ましく、このような触媒は各種水素化反応及び脱水素化反応、改質反応及び脱黄、脱金属、脱窒反応などの触媒としての使用が望まれる。また、カーボンナノチューブは特有の表面構造によって金属触媒粒子を担持する場合、粒子同士の凝集を防止できるという長所を有する。しかしながら、現在までカーボンナノチューブに対する研究は合成方法に関するものが大半であり、カーボンナノチューブを触媒支持体として応用しようとする研究は非常に乏しい状況にある。
【0003】
近年の触媒分野の研究動向を詳察すると、表面積が大きく、それぞれの触媒反応に適した気孔構造を有する新たな支持体の合成が1つの分野であり、新たな触媒製造技術の開発による触媒粒子のナノ化がもう1つの分野である。金属触媒のナノ化と関連して、特に貴金属触媒の場合には最近になって原価が大幅に上昇することにより、粒子のナノ化及び高分散化によって触媒性能を向上させながらも使用量は低減させる技術の必要性が急浮上している。一例として、貴金属である白金触媒は各種水素化反応や改質反応などに広く用いられ、他の金属触媒に比べて優れた活性を示すにも拘らず、高い製造コストのため、その使用が制限されている。従って、このような問題を解決するためには触媒活性相である白金粒子の大きさをナノ規模に最小化し、高分散状態で担持することで、最少量の白金を用いて触媒活性点の数を最大化することが重要である。このためには触媒を支持している支持体の表面積が優れていなければならず、担持過程で触媒粒子が支持体表面で凝集しないようにしなければならない。また、触媒の使用中に支持体の表面から金属触媒が脱離する現象による耐久性の低下を最小化することが重要である。
【0004】
カーボン支持体の気孔内部又はカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ選択的に金属触媒成分を担持するようになれば、反応の進行に応じて触媒粒子が脱離する現象を大幅に減少させることができ、耐久性の低下を最小化できる。しかしながら、以前に発表された一部の文献で使用した既存の触媒製造方法である含浸法又は沈殿法によっては、カーボンナノチューブの内部チャネルに触媒粒子を所望の形態で均一に担持することは難しい。即ち、一般のカーボンナノチューブの内部チャネルは直径が3〜10nm程度と非常に小さく、このような小さなチャネルには金属前駆体が溶解している水溶液の表面張力によって非常に投入され難いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、カーボンナノチューブの内部チャネルを触媒反応器として用いるために特定の前処理を通じてカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持させることで、多様な触媒反応に応用できる金属触媒ナノ粒子が担持された高性能カーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持することで、一般の炭素系触媒支持体の問題点である繰り返し使用による耐久性の低下、即ち、金属成分が脱離する現象を画期的に減少させることができ、異性化反応などにおいて反応生成物の選択度に優れた金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこのような問題を解決するために、物性に優れ、触媒支持体としての使用が望まれるカーボンナノチューブを触媒支持体として用い、ここでカーボンナノチューブの内部チャネルを触媒反応器として用いるための特定の前処理を通じてカーボンナノチューブの内部チャネル表面に欠陥を形成した後、前記カーボンナノチューブに化学気相蒸着法を用いてカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持させてカーボンナノチューブ触媒を製造する場合、触媒の使用中に支持体の表面から金属触媒が脱離する現象による耐久性の低下問題を解決でき、多様な触媒反応のうち、異性化反応における多様な生成物(異性化物;isomers)の中から1つの生成物のみを選択的に得ようとする反応において優れた選択度を有する反応生成物を得るのに有利であるということが分かり、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、カーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するために加熱した後、金属触媒成分を除去するために塩酸処理する段階(段階1)と、前記段階1で塩酸処理されたカーボンナノチューブを混合酸溶液に沈積させた後、超音波処理を施す段階(段階2)と、前記段階2で超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置し、真空乾燥させる段階(段階3)と、前記段階3で真空乾燥したカーボンナノチューブに金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる段階(段階4)とを含むカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されたカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの内部チャネル表面に化学気相蒸着法により担持された金属触媒ナノ粒子を含むカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を提供する。
【0010】
以下、本発明に係るカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法を段階別に具体的に説明する。
【0011】
前記段階1は、カーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するために加熱した後、金属触媒成分を除去するために塩酸処理する段階である。カーボンナノチューブから炭素系不純物、即ち、無定形炭素粒子を除去するためにカーボンナノチューブを加熱する過程を行う。前記加熱過程は450〜550℃で加熱された空気雰囲気のオーブン内で30分〜2時間行われることが好ましい。次に、触媒支持体として用いられるカーボンナノチューブを製造する過程で触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属成分を除去するために塩酸処理する段階を行う。加熱過程を通じて炭素系不純物が除去されたカーボンナノチューブを塩酸溶液(6mol〜10mol)に浸漬し、6〜24時間維持した後、蒸留水で洗浄して100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させる。前記オーブンの温度が100℃未満の場合は水分の除去が難しく、120℃を超える場合にはカーボンナノチューブの変形を招くおそれがある。このような過程は、カーボンナノチューブを処理した塩酸溶液の色が無色となるまで繰り返すことが好ましい。
【0012】
前記段階2は、段階1で塩酸処理されたカーボンナノチューブを混合酸溶液に沈積させた後、超音波処理を施す段階である。カーボンナノチューブの内部チャネル表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置換させ、欠陥を形成するために混合酸溶液(14Mの硝酸(nitric acid)と98%の硫酸とを1:1の体積比で混合)に試料を浸漬し、3〜10分間超音波処理を施す。前記混合酸溶液は硝酸と硫酸とを1:1の体積比で混合した時に処理効果が最も良好であり、混合酸溶液の濃度が上記値より低ければ処理効果が低下し、逆に、混合酸溶液の濃度が提示した値より高ければカーボンナノチューブの表面に深刻な腐食が生じ得る。このような混合酸溶液を処理する過程によってカーボンナノチューブの内部チャネル表面に混合酸溶液が侵入してカーボンナノチューブの内部チャネル表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置換させ、欠陥を形成させることができる。
【0013】
一般の触媒製造方法である既存の含浸法によっては、カーボンナノチューブの内部チャネルに触媒を担持することが殆ど不可能であるが、これはカーボンナノチューブの内部チャネルの直径が一般の多重壁カーボンナノチューブの場合に数nmと小さく、表面張力の大きい前駆体水溶液が侵入し難いだけでなく、疏水性であるカーボンナノチューブの特性によって表面に金属前駆体が担持され難いためである。従って、本発明では上述した段階2を行って混合酸-超音波処理によって内部チャネルに水溶液の投入が容易になるように前処理を施すことを特徴とする。一旦投入された水溶液は蒸留水で外部表面を洗浄する過程中にも抜け出され難いという特性があるので、カーボンナノチューブの内部表面のみを処理するのに効果的である。
【0014】
前記段階3は、段階2で超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置し、真空乾燥させる段階である。
【0015】
超音波処理の後、カーボンナノチューブを常圧で蒸留水で表面を複数回洗浄しながら、ろ過した後、常温で30分〜360分間放置する。この過程で混合酸溶液は、常圧での洗浄過程によっては毛細管現象によりカーボンナノチューブの内部チャネルから抜け出され難いので、チャネルの内部を埋めた状態で表面に官能基を生成するようになる。即ち、カーボンナノチューブの外部表面でなく、チャネル内部のみ表面処理されるという効果がある。この場合、カーボンナノチューブの内部チャネルの直径は15nm以上が適切であり、これはそれ以下のチャネルでは毛細管現象が十分に発生しないためである(O. Ersen et al., “3D lectron Microscopy Study of Metal Particles Inside Muntiwalled Carbon nanotubes”, Nano letter 7(7)(2007), 1898-1907)。超音波処理の後、常温で混合酸溶液が含まれているカーボンナノチューブの放置時間は30分〜360分が適切であり、360分を超えて処理する場合にはカーボンナノチューブ表面に深刻な変形が生じるおそれがある。
【0016】
超音波処理したカーボンナノチューブを自然放置した後、カーボンナノチューブの内部に入れられた混合酸溶液を除去するために真空乾燥過程を行う。前記段階3での真空乾燥過程は100〜120℃のオーブンで30分〜2時間行われることが好ましい。このような過程を通じて、カーボンナノチューブの内部チャネル表面に効果的に欠陥を生成できる。
【0017】
前記段階3は、カーボンナノチューブの内部チャネル表面にのみ金属触媒ナノ粒子を担持させることができる核心工程であって、上述した条件の下で超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置し、真空乾燥させることで、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子が担持され得る。
【0018】
前記段階4は、前記段階3で真空乾燥したカーボンナノチューブに金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる段階である。
【0019】
カーボンナノチューブの内部チャネル表面にのみ金属触媒ナノ粒子を担持するためには、一般の含浸法では効果的な担持が難しいので、特定の方法を適用しなければならない。本発明では化学気相蒸着法を用いてカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子を担持できる。
【0020】
前記段階1〜3で前処理したカーボンナノチューブの内部チャネルに担持される金属触媒ナノ粒子としては、白金ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子又はモリブデンナノ粒子を用いることができる。このような白金ナノ粒子、ルテニウムナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子、モリブデンナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させるためには金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて前記金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる。前記金属前駆体としては白金の場合、メチルトリメチルシクロペンタジエニル白金(MeCpPtMe)、Pt(Me)(Cp)、Pt(Tfacac)、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)(COD)、[PtMe(acac)](acac;acetylacetonato ligand)、PtCl(CO)、Pt(PF)、Pt(acac)、Pt(C)などを用い、ルテニウムの場合にはルテニウムアセチルアセトネート(Ru(acac))又はルテニウムカルボニル(Ru(CO))を用い、ニッケルの場合にはニッケルナイトレート(Ni(NO))又はニッケルカルボニル(Ni(CO))を用い、コバルトの場合にはCO(CO)NOなどを用い、モリブデンの場合にはMO(CO)などを用いることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、カーボンナノチューブに金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる方法は、以下の通り行われる。まず、前記段階1〜段階3を通じて内部表面が処理されたカーボンナノチューブを石英管の中央に位置させ、石英管の内部温度を100〜120℃に維持した状態で圧力を6〜10Torrで30〜120分以上維持して石英管内の不純物を除去し、カーボンナノチューブが位置する反応器内部を真空状態にする。続いて、予め加熱して気化された状態の金属前駆体を真空状態の石英管内部に流すことで、カーボンナノチューブの表面に金属触媒が担持されるようにする。触媒前駆体の気化のためには、図9に示す気化器内に金属前駆体を入れて容器の温度を金属前駆体の気化点まで上昇させることで気化が可能であり、化学気相蒸着時には気化器と石英管(反応器)との間のコックを開放することで、金属前駆体の気化によって常圧(1気圧)以上である気化器で真空状態である気化器内部のカーボンナノチューブまで伝達されるようにする。このとき、化学気相蒸着段階で最適の条件を見出すためには、金属前駆体を流すための伝達気体(carrier Gas)と反応温度の変化を通じた最適条件の検索が先行しなければならない。このように、石英管内部の真空状態を維持した後、金属触媒ナノ粒子を担持する過程を複数回繰り返す場合、カーボンナノチューブ表面に担持された金属触媒ナノ粒子の担持量を更に大幅に増加させることができる。
【0022】
また、本発明は、カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されたカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの内部チャネル表面に化学気相蒸着法により担持された金属触媒ナノ粒子を含むカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を提供する。
【0023】
前記カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するために加熱した後、金属触媒成分を除去するために塩酸処理する段階と、前記塩酸処理されたカーボンナノチューブを混合酸溶液に沈積させた後、超音波処理を施す段階と、前記超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置する段階と、前記自然放置したカーボンナノチューブを混合酸溶液を除去するために真空乾燥させる段階とを経て製造され得る。
【0024】
前記カーボンナノチューブの前処理段階は、本発明に係るカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法で説明したカーボンナノチューブの前処理段階と同じ条件で行われる。
【0025】
本発明に係るカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒は、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ選択的に金属触媒ナノ粒子が担持されて製造される。このような触媒は、カーボンナノチューブの内部でのみ選択的に反応が起こるので、反応の進行に応じて触媒支持体表面から金属成分が脱離する現象による耐久性の低下が極めて稀であり、特に多様な触媒反応のうち、異性化反応における多様な生成物(異性化物;isomers)の中から1つの生成物のみを選択的に得ようとする反応において優れた選択度を有する反応生成物を得るのに有利である。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態によって製造した白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した写真である。図3に示すように、本発明によってカーボンナノチューブ触媒を製造する場合、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子が担持されて製造されることが分かる。上述したように、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持させて製造した本発明のカーボンナノチューブ触媒は、炭素系の支持体に担持された触媒の問題である繰り返し使用により触媒が脱離する現象、即ち、耐久性の低下問題を画期的に改善できるという効果を提供する。このような本発明に係るカーボンナノチューブ触媒の耐久性の改善効果は、下記の試験例5で詳細に説明する。
【0027】
白金触媒ナノ粒子を担持したカーボンナノチューブ触媒の場合、テトラリン又はベンゼンの水素化反応、メタノール及びエタノール以外にフェノールなどの酸化反応などに効果的である。
【0028】
ニッケル触媒ナノ粒子、モリブデン触媒ナノ粒子を担持したカーボンナノチューブ触媒の場合、脱黄、脱窒、脱金属反応などに非常に効果的に用いることができる。
【0029】
コバルト触媒ナノ粒子を担持したカーボンナノチューブ触媒の場合、脱黄、脱窒、脱金属反応で助触媒として使用されることができ、燃料電池用白金触媒に助触媒として使用されることができ、フィッシャ-トロプシュ(Fisher-Tropsch)反応用触媒、炭化水素の酸化反応及び部分酸化反応用触媒、改質反応、エタノールなどのアミン化反応用触媒、水素化反応用触媒、水性ガス置換反応用触媒などとして使用されることができる。
【0030】
また、ルテニウム系の触媒を担持したカーボンナノチューブ触媒の場合、COの水素化反応を通じたエタノールの生成反応などに非常に効果的である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持することで、耐久性及び選択的な触媒反応活性に優れた金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法を提供できるという効果を奏する。
【0032】
即ち、本発明は、カーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子を担持することで、一般の炭素系触媒支持体の問題である繰り返し使用による耐久性の低下、即ち、金属成分が脱離する現象を画期的に減少させることができ、異性化反応などにおいて反応生成物の選択度に優れた金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒及びこの製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1、比較例1及び比較例2で製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒に対して一酸化炭素(CO)をプローブ分子として用いてCO化学吸着実験を行った結果を示すグラフである。
【図2】実施例1の段階(1)過程で異なる前処理時間を適用した場合のカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡の結果を示すものである。図2の(a)は混合酸で処理する以前のカーボンナノチューブに関するものであり、図2の(b)は放置時間30分を維持したものであり、図2の(c)は放置時間90分、図2の(d)は放置時間240分、図2の(e)は放置時間を480分としたものである。
【図3】実施例1で製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した写真である。
【図4】比較例2で製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した写真である。
【図5】実施例1、比較例1及び比較例2で製造されたカーボンナノチューブ触媒のそれぞれに対してテトラリンの水素化反応を施して反応時間の経過に伴う反応転換率を測定して示すグラフである。
【図6】実施例1、比較例1及び比較例2で製造されたカーボンナノチューブ触媒のそれぞれに対してテトラリンの水素化反応を施してテトラリン反応転換率に伴う生成物の選択度を測定して示すグラフである。
【図7】実施例1と比較例2で製造されたカーボンナノチューブ触媒に対してベンゼンの水素化反応を行って触媒の長期間使用による触媒の耐久性を比較した結果を示すグラフである。
【図8】実施例1で白金ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させるために用いた化学気相蒸着装置を概略的に示す図である。
【図9】実施例1で白金前駆体を気化するために用いた気化器を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の理解を促進するために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【実施例】
【0035】
<実施例1>カーボンナノチューブの内部チャネルに白金触媒ナノ粒子を担持したカーボンナノチューブ触媒の製造
(1)カーボンナノチューブの内部チャネル表面の前処理段階
カーボンナノチューブから炭素系不純物、即ち、無定形炭素粒子を除去するために450〜550℃で加熱した空気雰囲気のオーブン内で30分〜2時間加熱した。次は、触媒支持体として用いるカーボンナノチューブを製造する過程で触媒として用いられたニッケル、コバルト、鉄又はこれらの混合物金属性分を除去するために塩酸処理するが、カーボンナノチューブを塩酸溶液(6mol〜10mol)に浸漬し、6〜24時間維持した後、蒸留水で洗浄して100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させた。このような過程はカーボンナノチューブを処理した塩酸溶液の色が無色となるまで繰り返した。その後、カーボンナノチューブ表面、特に外部表面よりは内部チャネル表面の濡れ性を向上させ、酸化基を置換させ、表面に欠陥(defect)を生成するために混合酸溶液(14Mの硝酸と98%の硫酸とを1:1の体積比で混合)に試料を浸漬し、5分間超音波処理を施した。超音波処理後のカーボンナノチューブは蒸留水で表面を複数回洗浄した後にろ過して常温で60分間放置した。前記カーボンナノチューブの内部に入れられた混合酸溶液を除去するために真空乾燥を施した。
【0036】
(2)カーボンナノチューブの内部チャネル表面に白金触媒ナノ粒子を担持させる段階
前記のように前処理してカーボンナノチューブの内部表面に多数の欠陥が生成されたカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ白金触媒ナノ粒子を担持するために、化学気相蒸着法を用いた。化学気相蒸着法は、直径の小さいカーボンナノチューブの内部チャネルにナノ粒子の高分散担持が可能な方法であって、図8に示す化学気相蒸着装置を用いて行うことができる。
【0037】
以下、白金粒子の化学気相蒸着過程を説明すれば、前処理後に収集されたカーボンナノチューブ粉末を石英容器(quartz boat)に入れた後、石英管の中央に位置させ、石英管の内部温度を100〜120℃に維持した状態で圧力を6〜10Torrで120分以上維持して石英管内の不純物を除去すると同時に、カーボンナノチューブ試料が位置する反応器の内部を真空状態にした。続いて、予め加熱して気化された状態の金属前駆体を真空状態の石英管内部に流すことで、カーボンナノチューブの表面に白金ナノ粒子が担持されるようにした。白金前駆体の気化のためには、特別に考案された気化器内(図9)に白金前駆体であるメチルトリメチルシクロペンタジエニル白金 (MeCpPtMe)を入れ、窒素を30分以上流した後、容器を密閉させた状態で容器の温度を前駆体の気化点まで上昇させることで、気相に転換させた。白金前駆体の安定した気化のための最適の気化温度は50〜60℃が適切であり、化学気相蒸着の開始と共に気相の白金前駆体が位置する気化器とカーボンナノチューブ試料が位置する反応器(石英管)との間のコックを開放することで、気相の白金前駆体がカーボンナノチューブまで伝達されるようにした。白金前駆体の担持量を増加させるためには前記のような過程、即ち、石英管内部を真空状態に維持した後、気化器から気相の前駆体をパルス状に供給する担持過程を繰り返して白金触媒の担持量を更に大幅に増加させることができた。
【0038】
<比較例1>含浸法により白金触媒ナノ粒子を担持させたカーボンナノチューブ触媒の製造
(1)カーボンナノチューブの内部チャネル表面の前処理段階
実施例1と同じ方法で前処理してカーボンナノチューブを製造した。
【0039】
(2)カーボンナノチューブの内部チャネル表面に白金触媒ナノ粒子を担持させる段階
前記のように前処理してカーボンナノチューブ内部表面に多数の欠陥が生成されたカーボンナノチューブの内部チャネルに白金触媒ナノ粒子を担持するために改善された含浸法を用い、既存の含浸法に比べて超音波処理が施されるという差がある。
【0040】
まず、白金前駆体としては塩化白金酸(HPtCl)を用い、これを蒸留水に溶解させて白金前駆体水溶液を用意した。前記のように前処理された状態のカーボンナノチューブを入れ、超音波を30分間加える過程を5回繰り返した。超音波処理済みのカーボンナノチューブ試料は100℃のオーブンで12時間以上乾燥させ、続いて450℃の大気中で4時間焼成した。
【0041】
<比較例2>含浸法により白金触媒ナノ粒子を担持させたカーボンナノチューブ触媒の製造
(1)カーボンナノチューブの内部チャネル表面の前処理段階
実施例1と同じ方法で前処理してカーボンナノチューブを製造した。
【0042】
(2)カーボンナノチューブの内部チャネル表面に白金触媒ナノ粒子を担持させる段階
白金前駆体としては塩化白金酸(HPtCl)を用い、これを蒸留水に溶解させて水溶液を製造した。前記のように前処理された状態のカーボンナノチューブを前駆体水溶液に浸漬した状態で、超音波を30分間加えた後、常温で12時間放置した。この過程で超音波処理はカーボンナノチューブの表面に白金前駆体水溶液の接触を図るために施し、その後、常温で12時間放置することで、前駆体がカーボンナノチューブの表面に十分に含浸されるようにした。続いて、カーボンナノチューブが浸漬された溶液はろ過した後、110℃のオーブンで12時間乾燥させた後、450℃の大気中で4時間焼成した。
【0043】
<試験例1>触媒活性点数の測定
実施例1、比較例1及び比較例2で最終的に製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒に対して、白金触媒の活性点に選択的に吸着する一酸化炭素(CO)をプローブ分子として用いてCO化学吸着を行い、その結果を図1に示した。それぞれの触媒に対するCO化学吸着実験は常温でパルス技法を用いて行い、CO化学吸着実験以前に450℃で2時間水素を流すことで、金属状態に還元させた状態で吸着実験を行った。
【0044】
図1に示すように、CO化学吸着量は実施例1の場合が最も多いことが分かり、これはCOが吸着し得る触媒活性点の数が多いという意味であり、白金粒子がカーボンナノチューブの表面に十分に担持されたことを意味する。比較例1と比較例2の場合には実施例1の場合に比べてCO化学吸着量が顕著に少ないことが分かり、これから化学気相蒸着法によって製造された本発明のカーボンナノチューブ触媒の場合、触媒活性点の数を増加させるのに効果的であることが確認できる。白金触媒ナノ粒子の分布と各粒子の大きさは、下記の試験例3の透過電子顕微鏡(TEM)結果から直接確認できる。
【0045】
<試験例2>前処理時間の変化によるカーボンナノチューブの形状(透過電子顕微鏡分析)
実施例1の段階(1)で前処理時間の変化によるカーボンナノチューブの形状変化を透過電子顕微鏡を用いて分析し、その結果を図2に示した。
【0046】
図2は、実施例1の段階(1)でカーボンナノチューブの前処理過程のうち、超音波処理(5分)を通じてカーボンナノチューブの内部に混合酸溶液を入れた後、蒸留水で洗浄し、ろ過されたカーボンナノチューブを常温で異なる時間放置した後、真空乾燥した状態のカーボンナノチューブを透過電子顕微鏡で分析した結果を示すものである。図2の(a)は混合酸で処理する以前のカーボンナノチューブに関するものであり、図2の(b)は放置時間を30分間維持したものであり、図2の(c)は放置時間90分、図2の(d)は放置時間240分、図2の(e)は放置時間を480分としたものである。図2の(a)、(b)、(c)及び(d)の結果を詳察すると、放置時間が増加するほど、カーボンナノチューブの壁厚が次第に減少することが分かる。混合酸処理を通じて表面に官能基が形成されることは確認できないが、カーボンナノチューブの壁厚が次第に減少することから混合酸処理の効果を間接的に確認できる。一方、放置時間が480分に増加した図2の(e)の場合にはカーボンナノチューブに深刻な変形が生じることが分かる。カーボンナノチューブが自ら切断されたり、壊れて長さが非常に短くなったことが分かる、このような結果から360分以上放置する場合、カーボンナノチューブに深刻な変形が発生し得るので、適切でないことが分かる。
【0047】
<試験例3>カーボンナノチューブ触媒の透過電子顕微鏡分析
実施例1と比較例2から最終的に製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒のそれぞれに対して透過電子顕微鏡で測定して図3と図4に示した。
【0048】
図3は、実施例1で製造された白金ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した写真である。図3に示すように、大部分の白金触媒ナノ粒子はカーボンナノチューブの内部チャネルに均等に分布していることが確認でき、その分布が非常に均一であり、粒子の大きさも1nm前後と極めて小さく形成されることが確認できた。一部の少数の粒子はカーボンナノチューブの外壁にも担持されることが確認できるが、これは製造過程のうち、前処理過程でカーボンナノチューブの内部チャネルではなく、外部チャネルにも欠陥が発生し得るためである。
【0049】
図4は、比較例2で製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した写真である。図4に示すように、カーボンナノチューブの表面に白金触媒ナノ粒子が担持されたことが確認され、粒子の大きさは最少で2〜3nmから最大で10nmまで分布した。このように白金触媒ナノ粒子の大きさが実施例1の場合に比べて非常に大きく不均一であり、粒子の分布も均一でなかった。これは、超音波を加える時間又は回数が増加するほど、カーボンナノチューブ表面に担持される金属触媒の担持量が増加するが、一定回数以上に担持させると、白金触媒粒子の凝集現象が発生するので、金属担持量に対する触媒活性点の数が減少する現象を示す。このように超音波を適用した含浸法の場合、カーボンナノチューブの内部チャネルに流入する金属触媒の量が増加し、相対的に高い担持量の触媒製造が容易であるという長所がある反面、触媒粒子の大きさが実施例1の化学気相蒸着法の場合に比べて大きく形成されるという短所がある。
【0050】
このような結果から試験例1のCO化学吸着結果を説明できるが、即ち、実施例1の場合には比較例1や比較例2の場合に比べてカーボンナノチューブ表面に形成された白金粒子の大きさが非常に小さく、分布も非常に均一であることが確認できる。結果として、実施例1の場合、COが吸着し得る触媒活性点の数が最も多く形成されるので、試験例1でのような結果を得ることができる。
【0051】
<試験例4>カーボンナノチューブの触媒反応活性測定
実施例1、比較例1及び比較例2で最終的に製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒のそれぞれに対して、テトラリンの水素化反応を施し、反応時間の経過に伴う反応転換率及び生成物の選択度を比較し、その結果をそれぞれ図5と図6に示した。テトラリンの水素化反応は、ステンレススチール反応器を用いて275℃、35barで気相反応で行い、生成物の組成はガスクロマトグラフィ(HP7890)を用いて分析した。
【0052】
図5は、実施例1、比較例1及び比較例2で最終的に製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒に対して測定した反応時間によるテトラリンの反応転換率を示すグラフである。図5に示すように、実施例1の場合に反応転換率値が最も大きく示され、比較例2の場合には反応転換率が最も低く示される。これは試験例1でCO化学吸着結果から確認した通り、触媒活性点の数は実施例1の場合に最も多いためであると考えられる。
【0053】
図6は、実施例1、比較例1及び比較例2で最終的に製造された白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒に対して測定したテトラリンの反応転換率による生成物の選択度、即ち、trans-decalineとcis-decaline生成物の比を比較したグラフである。図6に示すように、大部分の白金触媒ナノ粒子がカーボンナノチューブの内部チャネルに担持された実施例1の場合、trans-decaline/cis-decalineの割合が大きく示される反面、比較例1と比較例2の場合には小さな値を示すことが分かる。これは実施例1の場合、カーボンナノチューブ内部で大部分の触媒反応が行われるので、相対的に分子直径の大きいcis-decaline形態よりはtrans-decaline形態の生成物がより多く生成されるためである。反面、比較例1と2の場合には大部分の触媒粒子がナノチューブの外部に存在するので、trans-decaline/cis-decalineの比は実施例1の場合よりも小さく示される。
【0054】
結果として、カーボンナノチューブ内部に触媒粒子が担持された触媒を用いる場合、反応結果として得られる多様な異性化物のうち、特定形態の異性化物のみを選択的に得ることができるという大きい長所がある。
【0055】
<試験例5>カーボンナノチューブ触媒の耐久性測定
実施例1と比較例2で製造されたカーボンナノチューブ触媒に対して長期間使用による耐久性の試験のために、ベンゼンの水素化反応を対象として触媒の長期間使用による触媒の耐久性を比較してその結果を図7に示す。
【0056】
ベンゼンの水素化反応はステンレススチール反応器(130ml)で液相で行われ、15〜20mlのエタノールに5〜10%のベンゼンを溶解させ、これに0.1gの触媒を添加し、90℃、10気圧の水素雰囲気で300rpmで攪拌しながら水素化反応を行った。実施例1と比較例2で製造されたカーボンナノチューブ触媒の耐久性を測定するために、前記のような同じ水素化反応を行うものの、反応時間は12時間、24時間(1日)、72時間(3日)、120時間(5日)、168時間(7日)とそれぞれ異なるようにし、反応時間が終了した後、それぞれのカーボンナノチューブ触媒を収集してエタノールで洗浄して乾燥させた後、同じ反応に再び投入した後、反応時間12時間経過後にベンゼンの転換率を測定する方法を用いた。
【0057】
図7に示すように、実施例1のカーボンナノチューブ触媒はそれぞれ1日、3日、7日用いた触媒の場合、反応転換率がほぼ類似して示されることが分かる。しかしながら、比較例2の場合には反応時間の経過に伴って触媒の耐久性が顕著に減少することが確認できる。また、反応転換率の値も実施例1の場合に比べて低下することが分かる。このような結果から、実施例1のカーボンナノチューブ触媒はカーボンナノチューブの内部チャネルにのみ金属触媒ナノ粒子が担持されて製造されることで、反応の進行による耐久性の低下が殆ど起こらないことが分かる。即ち、カーボンナノチューブをはじめとする大部分の炭素支持体担持触媒の場合には炭素支持体の表面の中性的特性により担持された触媒粒子との結合力が弱く形成され、従って、反応中に触媒粒子の相当部分が支持体から脱離する現象による耐久性の低下が深刻な問題として浮上している。カーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒を担持する技術は、前記のような耐久性の低下を防止できる重要な技術であって、今後多様な応用を期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するために加熱した後、金属触媒成分を除去するために塩酸処理する段階(段階1)と、
前記段階1で塩酸処理されたカーボンナノチューブを混合酸溶液に沈積させた後、超音波処理を施す段階(段階2)と、
前記段階2で超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置し、真空乾燥させる段階(段階3)と、
前記段階3で真空乾燥したカーボンナノチューブに金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる段階(段階4)と
を含むカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項2】
前記段階1でカーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するための加熱過程は、450〜550℃で加熱した空気雰囲気のオーブン内で30分〜2時間行われ、カーボンナノチューブの塩酸処理は、カーボンナノチューブを塩酸溶液(6〜10mol)に沈積させて6〜24時間維持した後、蒸留水で洗浄し、100〜120℃のオーブンで12〜24時間乾燥させて行われることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項3】
前記段階2で塩酸処理されたカーボンナノチューブは、14Mの硝酸と98%の硫酸とを1:1の体積比で混合した混合酸溶液に沈積させた後、3〜10分間超音波処理されることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項4】
前記段階3ではカーボンナノチューブを室温で蒸留水を用いて洗浄した後、30分〜360分間自然放置することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項5】
前記段階3での真空乾燥過程は、100〜120℃のオーブンで30分〜2時間行われることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項6】
前記段階4でカーボンナノチューブに担持される金属触媒ナノ粒子は白金粒子、ルテニウム粒子、ニッケル粒子、コバルト粒子又はモリブデン粒子であり、白金粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持するための白金前駆体として、メチルトリメチルシクロペンタジエニル白金(MeCpPtMe)、Pt(Me)(Cp)、Pt(Tfacac)、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)(COD)、[PtMe(acac)](acac;acetylacetonato ligand)、PtCl(CO)、Pt(PF)、Pt(acac)及びPt(C)からなる群より選択されるものを用い、ルテニウム粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持するためのルテニウム前駆体として、ルテニウムアセチルアセトネート(Ru(acac))又はルテニウムカルボニル(Ru(CO))を用い、ニッケル粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持するためのニッケル前駆体として、ニッケルナイトレート(Ni(NO))又はニッケルカルボニル(Ni(CO))を用い、コバルト粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持するためのコバルト前駆体として、CO(CO)NOを用い、モリブデン粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持するためのモリブデン前駆体として、MO(CO)を用いることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項7】
前記段階4で金属前駆体を流し、化学気相蒸着法を用いて金属粒子をカーボンナノチューブの内部チャネルに担持させる過程は、前記段階3で真空乾燥させるカーボンナノチューブを石英管の中央に位置させ、石英管の内部温度を100〜120℃に維持した状態で圧力を6〜10Torrで30〜120分間維持して石英管内の不純物を除去する段階と、前記カーボンナノチューブが位置する反応器の内部を真空状態にする段階と、予め加熱して気化された状態の金属前駆体を真空状態の石英管の内部に流すことで、カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持される段階とを経て行われることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが位置する反応器の内部を真空状態にする段階を行った後、予め加熱して気化された状態の金属前駆体を真空状態の石英管の内部に繰り返して流すことで、カーボンナノチューブの内部チャネル表面に担持される金属触媒ナノ粒子の量を増加させることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒の製造方法。
【請求項9】
カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されたカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの内部チャネル表面に化学気相蒸着法により担持された金属触媒ナノ粒子を含むカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブの内部チャネル表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブから炭素系不純物を除去するために加熱した後、金属触媒成分を除去するために塩酸処理する段階と、前記塩酸処理されたカーボンナノチューブを混合酸溶液に沈積させた後、超音波処理を施す段階と、前記超音波処理したカーボンナノチューブを洗浄した後、自然放置する段階と、前記自然放置したカーボンナノチューブを混合酸溶液を除去するために真空乾燥させる段階とを経て前処理されることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項11】
前記金属触媒ナノ粒子は白金触媒ナノ粒子であり、前記カーボンナノチューブの内部チャネルに白金触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒はテトラリン又はベンゼンの水素化反応又はアルコールの酸化反応に用いられることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項12】
前記金属触媒ナノ粒子はルテニウム触媒ナノ粒子であり、前記カーボンナノチューブの内部チャネルにルテニウム触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒は一酸化炭素の水素化反応を通じたエタノール生成反応に用いられることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項13】
前記金属触媒ナノ粒子はニッケル触媒ナノ粒子であり、前記カーボンナノチューブの内部チャネルにニッケル触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒は脱黄、脱窒又は脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項14】
前記金属触媒ナノ粒子はモリブデン触媒ナノ粒子であり、前記カーボンナノチューブの内部チャネルにモリブデン触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒は脱黄、脱窒又は脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。
【請求項15】
前記金属触媒ナノ粒子は、コバルト触媒ナノ粒子であり、前記カーボンナノチューブの内部チャネルにコバルト触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒は、脱黄、脱窒、脱金属反応で助触媒、燃料電池用白金触媒の助触媒、フィッシャトロプシュ反応用触媒、炭化水素の酸化反応及び部分酸化反応用触媒、改質反応用触媒、アミン化反応用触媒、水素化反応用触媒又は水性ガス置換反応用触媒として用いられることを特徴とする請求項9に記載のカーボンナノチューブの内部チャネルに金属触媒ナノ粒子が担持されたカーボンナノチューブ触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−269302(P2010−269302A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220331(P2009−220331)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(507403551)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】