カーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体
【課題】高密度化されたCNT層作製時における島状の収縮の問題を解決し、高密度で均一な厚みを有する配向したCNT層を基板上に被着してなる高品質なCNT膜構造体を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることを特徴とするカーボンナノチューブ膜構造体。
【解決手段】カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることを特徴とするカーボンナノチューブ膜構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、複数のカーボンナノチューブがフィルム面内の一方向に連続して配向してなるカーボンナノチューブ層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノテク分野におけるマイクロマシン(MEMS)用デバイスや電子デバイスの構成材料としてカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)を適用する機運が高まっている。このようなデバイスを実現するために、複数のCNTからなるフィルム状CNT集合体(以下、CNTフィルムとも称する)で構成されたCNT層を基板表面に被着したCNT膜構造体が要望されている。
【0003】
なお、本明細書において「カーボンナノチューブ(CNT)膜構造体」とは、基板上にCNT層が設けられたものを意味し、例えば電子デバイスやMEMS用デバイスのウエハとして使用されるものを指し、表面が平坦な基板のみならず、表面に凹凸を有する基板や、突出した構造部を有する基板の表層がCNTフィルムで覆われた3次元的なものをも包含する。また本明細書における「CNT集合体」とは、複数のCNT(例えば本数密度が
5×1011本/cm2以上)が層状または束状に集合した構造体を意味する。また本明細書で言う「CNTフィルム」とは、複数のCNTが薄膜状あるいは薄板状に集合したものを意味し、シート状、フォイル状、リボン状を含むものとする。
【0004】
従来、このようなCNT膜構造体を製造する技術として、基板の表面に段差を設け、段差の側壁から基板の表面と平行にCNTを成長させる技術、すなわち基板表面と平行に配向したCNT層を備えた膜構造体を、化学気相成長法(以下CVD法とも称す)を用いて製造する技術(特許文献1を参照されたい)や、スピンコート法でCNTの懸濁液を基板上に塗布することによってCNTからなる不織布を基板表面に被着する技術、つまり表面が平坦なCNT層を備えた膜構造体を製造する技術(特許文献2を参照されたい)が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のCNT膜構造体は、段差のついた基板を用いるため、CNT層の表面を平坦化することは実質的に不可能である。しかもその段差は、CNT層を形成するための段差であり、CNT膜構造体としては必要なものではない。このような段差は、むしろ配線の敷設を阻害するため、電子デバイスの製造が著しく困難になるといった問題がある。また、CNT層の形成過程において使用する基板(CNT合成用基板)と、膜構造体としての基板(ウエハ基板)とが同一であることが必要なため、任意の基板の任意の位置にCNT層を形成することは困難である上、CNT合成時の熱処理に耐えられる基板のみしかCNT膜構造体の製造に使用することはできない。さらに、このようにして形成されたCNT層は、一般に密度が低く(0.03g/cm3以下)ふわふわの状態であり、そのままではレジスト等の液剤がCNT同士間の隙間に浸み込んでしまうため、周知のパターニング技術やエッチング技術による成形加工が著しく困難である。
【0006】
他方、特許文献2に記載のCNT膜構造体では、所望の厚さのCNT層を得るためには、CNTの懸濁液を何度も塗り重ねる必要があり、製造工程が煩雑になりがちである。また複数のCNTを同一方向に配向させたCNT層には、電気的特性(例えば導電率)や光学的特性(例えば透過率)や機械的特性(例えば曲げ特性)などについて、CNTの配向方向とそれに直交する方向とで異なる特性、すなわち異方性を持たせることができるが、特許文献2に記載のCNT膜構造体では、その製法上、複数のCNTを同一方向に配向させる(異方性を与える)ことは困難である。
【0007】
複数の垂直配向CNTを基板上に合成した後、これを倒すことによって基板と平行にCNTを配向させる技術が特許文献3に提案されている。しかし特許文献3に記載のものは、バンドル化の防止を企図している(段落0048)ことに明らかな通り、複数のCNTを集合体化して用いる技術思想は認められない。またこれの場合も、周知のパターニング技術やエッチング技術による成形加工は実質的に不可能である。
【0008】
所定方向に配向したCNT集合体を高密度化して剛性を高める技術が特許文献4に提案されている。これによれば、低密度で強度が低いという従来のCNT集合体の問題は解決する。しかし特許文献4には、フィルム面に沿って複数のCNTが連続して配向したCNT層を形成することは示唆されていない。
【0009】
特許文献4においては、CNT集合体を液体に晒した後、配向方向に対して斜めの方向から平坦なプレート等を介して圧力を加え、これによってCNTを倒伏させる方法も考慮されている。しかしその場合、CNT集合体がプレートに貼りついたり、圧力に耐え切れずCNT集合体がダメージを受けたり、反り返りを生じたりするため、高密度で均一な厚さのCNT層を有するCNT膜構造体を得ることは困難である。さらに、膜の薄さとしても3μm〜20μmが限度である上に倒伏を伴うため、高さ寸法の大きいCNTを使用して薄膜を得ることは困難である。以上の理由から、特許文献4に記載のものは、高度な集積配置を要するMEMS用途には不適であった。
【0010】
また配向の点から言うと、特許文献4に記載されたCNT膜構造体は、基板から垂直配向したCNT集合体を斜めに圧伏してなり、圧伏処理の前後で基板上でのCNTの向きが外力によって強引に変更されている。つまり特許文献4に記載の技術は、圧力の加え具合が配向に大きく影響を与えるものであり、複数のCNTが高度に配向したCNT膜構造体を得ることは困難であった。
【0011】
仮に、単に基板上に垂直配向したCNT集合体(図1のaの状態)を液体に晒しても、図1のb、c、d(Nirupama Chakrapani et al, Capillarity-driven assembly of two dimensional cellular carbon nanotube foams, Proceedings of the National Academy of Sciences, 2004.3.23, vol. 101, p. 4009-4012を参照されたい)に示すように島状の形態となってしまい、CNTの配向方向が基板面と平行で且つ同じ方向を向いた均一な厚さのCNT層を形成することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−081622号公報
【特許文献2】特表2005−524000号公報
【特許文献3】特開2006−228818号公報
【特許文献4】特開2007−182352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上に挙げた各特許文献に見られる通り、従来は、高密度な配向CNT層を基板上に被着してなるCNT膜構造体を得る技術は皆無であった。そもそも、CNTの合成は高温雰囲気下で行われるために使用可能な基板が制限され、例えば、3次元構造(凹凸や何か別の構造物)を設けた基板上でCNTを合成しようとする技術思想自体が存在しなかった。つまり従来は、任意な基板の任意な位置に、任意な形状のCNT層を設けることは極めて困難であり、高密度な配向CNT膜構造体の製造は実質的に不可能であった。
【0014】
また、CVD法などで形成されたCNTフィルムは、一般にそのままの状態では重量密度が低いため、レジストなどの塗布が必要な周知の集積回路製造プロセスを適用することは不可能であった。
【0015】
また、CNTの配向性が低いか、あるいは全く配向していないCNT集合体によると、集合体中の個々のCNT同士の間隔が必然的に大きくなり、外力を加えるなどして圧縮しても充填密度が十分に高まらず(図2(a)を参照されたい)、所望の機械的特性を満足させられる一体性、固体性を得ることはできない。
【0016】
これらのことは、機械的動作を要するMEMS用途などにCNT膜構造体を供する上に大きな阻害要因となる。
【0017】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、フィルム面に沿って同じ方向に連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなる高品質なCNT膜構造体、つまり優れた物理特性を備える任意の形状のCNT膜と、任意の形状、材質の基板とを有するCNT膜構造体を提供することを主たる課題とする。
【0018】
また、本発明は、複数のCNTからなるCNT集合体で構成された異方性を有するCNT層を段差がない平坦な基板の表面に備えるCNT膜構造体、あるいは、突出した構造部や凹凸を備える基板の表面が異方性を有するCNT層で覆われている3次元的形状のCNT膜構造体を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、上記課題を解決するため、以下のCNT膜構造体及びCNTマイクロ構造体が提供される。
【0020】
〔1〕カーボンナノチューブ膜構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔2〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔3〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔4〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
凹凸を形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
凹凸上に両持ち梁又は片持ち梁にパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔5〕架橋カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板に形成されたピラーの高さ及び該ピラー上でカーボンナノチューブ膜が接する面積と間隔を制御して該ピラーに架橋して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする。
〔6〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
【発明の効果】
【0021】
上述の技術的手段ないし手法を採用した本発明によれば、フィルム面に沿って一方向に連続して配向した複数のCNTを高密度に充填してなり、且つ厚さが均一なフィルム状をなすCNT層を有するCNT膜構造体を容易に提供することが可能となり、課題の項で論じた諸問題を解決する上に多大な効果を奏することができる。
【0022】
このCNT膜構造体を構成する高度に配向したCNTフィルムは、上述のとおり、合成基板から取り外しても膜としての一体性を保持し得るほどに各CNT同士が強く結合している。つまり本発明により、合成基板からCNTフィルムを取り外し、他の任意の基板上に載置可能である、という従来技術に比して大きな転換点となる技術が得られる。この点について以下に説明する。
【0023】
液体を付着させたCNT集合体を乾燥させると高密度化が進む現象は、個々のCNTに付着した液体が蒸発する際の表面張力によって互いに隣接するCNT同士がくっつき合うことで起こるものと考えられる。つまりCNT集合体をフィルム状にし、その配向方向をウエハ基板の表面と平行にして高密度化処理を施すと、ウエハ基板の表面に沿っての個々のCNTの移動がCNTフィルムとウエハ基板との密着力によって制限されるのみならず、CNTフィルムの側部からなされる液体の蒸発が専ら高さ方向に表面張力を発生させることによってもCNTフィルムの収縮方向がウエハ基板に垂直な方向の1次元上に規定される。これらより、CNTフィルムは厚さ方向のみに均一に高密度化されるので、合成基板から垂直に成長したバルク状のCNT集合体に高密度化処理を施した際の島状に収縮するという問題が起こらない。
【0024】
すなわち、合成基板とは別のウエハ基板上にCNTフィルムを載置してそれに高密度化処理を施す本発明によれば、厚さ方向のみに高密度化が進み、重量密度が十分に高く且つフィルム面に沿って高度に配向したCNTフィルムが得られるため、任意の基板上の任意の位置に高密度なCNT層を設けたCNT膜構造体を作製することができる。
【0025】
このCNT膜構造体は、CNT層を形成する各CNT同士が密に結集(充填)していることから、個体としての一体性を維持することが可能であると共に、レジストの塗布が可能であるので(重量密度が0.1g/cm3のCNT層において確認)、周知の集積回路製造プロセス技術の適用が可能となる。この結果、従来はCNTの存在する場所に応じてCNTに対する加工工程を行っていたのに対し、任意の場所を予め設定してのデバイス作製が可能になるので、設計が容易になり、より一層の集積化が期待できる。さらには熱履歴のない基板を使用できるので、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路を形成するためのウエハとして、様々な応用分野への適用を企図し得る。
【0026】
また本発明によれば、凹凸を有する基板や、突出した構造物が設けられた基板上に、上記と同様のCNT層を備えた任意の3次元形状の膜構造体を容易に提供することができる。この膜構造体は、上記と同様に、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能なため、MEMS用途において必須の中空構造や3次元構造を、周知の集積回路製造プロセスを用いて作製することが可能になる。特に、3次元構造のMEMSデバイスの物理特性は、その形状に依存するため、所望の3次元形状が形成可能なことは、所望の物理特性を備えるMEMSデバイスの形成が可能となることを意味する。すなわち本発明により、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路の作製に好適に用いることができるウエハを提供することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、フィルム面内の一方向に複数のCNTが配向した高密度なCNT薄膜を容易に提供することができる。このCNT薄膜は、上記と同様な物性を備えており、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能なため、集積回路製造プロセスとの親和性が高められ、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路を形成するためのウエハの作製に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、バルク状CNT集合体を液体に晒した時の様子示す図であり、(a)は基板上に垂直配向したバルク状CNT集合体を示し、(b)、(c)、(d)は高密度化して島状の形態となった様子を異なる倍率で示す。
【図2】図2は、高密度化時のCNTの配向の重要性を模式的に示す説明図であり、(a)無配向のものであり、(b)は配向のものである。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るCNT膜構造体を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明のCNT膜構造体に適用されるCNTフィルムを示す図であり、(a)は光学顕微鏡写真像であり、(b)はその一部をさらに拡大した電子顕微鏡(TEM)写真像である。
【図5】図5は、CNTの積層法を例示する説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、液体に浸す前のCNTフィルムの様子を示す電子顕微鏡(SEM)写真像である。
【図9】図9は、本発明により作製されたCNT膜構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図10】図10は、薄膜の配向の様子を示す図であり、(a)は高密度化前の薄膜の原子間力顕微鏡(AFM)画像であり、(b)は高密度化後の薄膜のAFM画像であり、(c)は高密度化後の薄膜のラマンGバンド強度依存性を表すグラフである。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
【図12】図12は、本発明の実施例においてCNTフィルムの作製に用いたCVD装置を模式的に示す構成図である。
【図13】図13は、CNT膜構造体の構造の一実施例を示す斜視図であり、(a)は全体図であり、(b)は部分図であり、(c)は複数のピラーが設けられたウエハ基板であり、(d)はピラー頂部に合わせた格子状パターンをCNT層に施した様子である。
【図14】図14は、ピラーを異なる形状のものとしたCNT膜構造体の構造の別例を示す斜視図であり、(a)はパターニング前の様子であり、(b)はパターニング後の様子である。
【図15】図15は、3つ一組のピラーを複数組有するウエハ基板をCNT層で覆って3次元膜構造体とした斜視図であり、(a)はCNT層を設ける前の様子であり、(b)はCNT層を設けた後の様子であり、(c)は(b)を異なる倍率で示した様子であり、(d)はピラー頂部に合わせた直線状パターンをCNT層に施した様子である。
【図16】図16は、CNT膜構造体の構造の別例を示す斜視図であり、(a)は基板上に敷き詰めた複数の犠牲層を覆うようにCNT薄膜を載置してパターニングしたものであり、(b)は犠牲層を除去して中空構造を形成したものである。
【図17】図17は、2つのCNTフィルムを重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像であり、(a)は配向方向を平面上で直交させたものを示す、(b)は配向方向を同一にしたものを示す。
【図18】図18は、高密度化前後の変化を表すグラフであり、(a)はCNTフィルムの元の厚さと高密度化後の厚さとの関係であり、(b)はCNTフィルムの元の厚さと高密度化後の密度との関係である。
【図19】図19は、CNTの直径寸法と高密度化後の密度との関係を表すグラフである。
【図20】図20は、CNT層の抵抗率測定法を概念的に示す構成図である。
【図21】図21は、パターニングされたCNT層を抵抗率測定基板上に配置した様子を示す平面図である。
【図22】図22は、試料の幅と抵抗率との関係を示すグラフである。
【図23】図23は、平面基板に密着したCNT層の表面の凹凸の程度が表わされるように画像処理された原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【図24】図24は、図23のAFM画像を高速フーリエ変換して各方向の凹凸の分布を周波数分布で表した平面画像である。
【図25】図25は、CNTマイクロ構造体の製造方法の説明図である。
【図26】図26は、架橋CNTマイクロ構造体の製造方法の説明図である。
【図27】図27は、CNT載置法の説明図である。
【図28】図28は、CNT載置法の説明図である。
【図29】図29は、CNT載置法の説明図である。
【図30】図30は、CNT載置法の説明図である。
【図31】図31は、犠牲層を設けないでCNTマイクロ構造体を製造する方法を説明する図である。
【図32】図32は、犠牲層を設けてCNTマイクロ構造体を製造する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
<CNT膜構造体>
本発明の一実施形態に係るCNT膜構造体の基本構造を、図3の模式的断面図に示す。本実施形態のCNT膜構造体1は、CVD法によるCNTの合成に用いた合成用基板とは別のウエハ基板2の表面に、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向する複数のCNTの集合体を高密度化してなるCNT層3を被着して構成される。なお、ケースによっては、合成用基板をそのままウエハ基板2として用いてもよい。また、CNT層3は1枚又は複数枚のCNTフィルムを用いて形成することができる。
【0031】
CNT層3を構成する複数のCNTは、互いに隣り合うCNT同士がファン・デア・ワールス力によって強く結合しており、CNT層3におけるCNTの重量密度は、一般には0.1〜1.5g/cm3、より好ましくは0.2〜1.5g/cm3である。このように、CNT層3におけるCNTの重量密度が上記の下限値以上であると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、CNT層3が固体としてのリジッドな様相を呈し、所要の機械的強度(剛性、曲げ特性等)が得られるようになる。この逆に、CNTの重量密度が上記の値に満たないと、CNT層3を構成するCNT同士間に有意な隙間が発生する。そのため、CNT層3がリジッドな固体ではなくなり、所要の機械的強度が得られなくなることはもとより、例えばレジスト等の液剤を塗布しようとしても、CNT同士間の隙間に液剤が浸み込んでしまうので、周知のパターニング技術やエッチング技術の適応が困難となる。ここでCNT層3におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限から、その上限値は1.5g/cm3程度である。
【0032】
また、本発明において、CNT層3は、ヘルマンの配向係数(Herman’s orientation Factor)が0.6以上、より好ましくは0.7以上であることが高密度化の観点から望ましい。
【0033】
CNT層3の厚さは、CNT膜構造体1の用途に応じてその望ましい値を任意に設定することができる。これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。膜厚の上限値に格別な制限はないが、このような電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0034】
CNT層3が上記のような密度及び厚さであると、例えばCNT層3上にレジストを塗布し、リソグラフィーでレジストに任意のパターンを描き、レジストをマスクとしてCNT層3の不用部分をエッチングし、任意形状の回路あるいはデバイスを形成することが容易に実行可能となる。すなわちこれによれば、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能となり、集積回路製造プロセスとの親和性が高まる。
【0035】
CNT層3を構成するCNTは、単層であってもよいし、多層であってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT膜構造体1の用途等に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0036】
さらに、本発明のCNT膜構造体1のCNT層3は、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向する複数のCNTからなるCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。
【0037】
本発明のCNT膜構造体1は、化学気相成長工程(後に詳述する)において所望の厚さのCNTフィルムを合成し、これを高密度化して所望の厚さのCNT層3を形成することで作製してもよいし、化学気相成長工程において複数のCNTフィルムを合成し、これらを積層しながら高密度化し、所望の厚さのCNT層3を形成することで作製してもよい。前者の場合は、1枚のCNTフィルムによって目的とする密度のCNT層3が得られる利点があり、後者の場合は、複数のCNTフィルムを、配向方向を同じくして積層することもでき、また配向方向を異ならせて積層することもでき、多様にラミネートされたCNT層3が得られる利点がある。
【0038】
本発明のCNT膜構造体1に適用されるCNTフィルムの一例を図4に示す。図4の(a)は光学顕微鏡写真像であり、図4の(b)は電子顕微鏡(TEM)写真像である。このCNTフィルムが優れた配向性を有していることが本図から観察できる。
【0039】
CNTフィルムの積層例を図5に示す。複数のCNTフィルムを、その配向方向を同じくして積層した場合、重ねる枚数の設定により、CNT層3の厚さを容易に制御し得る利点がある。また、その配向方向を互いに異ならせて複数のCNTフィルムを積層した場合、厚さの制御が容易な点に加え、方向性が互いに異なる複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることが可能となる。
【0040】
本発明のCNT膜構造体1は、CNT層3の領域がウエハ基板2上に1つ形成されてもよいし、また複数形成されていてもよいし、さらにそれらの領域が互いに離間した形態として形成されていてもよい。
【0041】
さらに本発明によれば、CNT膜構造体1のウエハ基板2からCNT層3を剥離してCNT薄膜を作製することもできる。CNT層3の剥離方法としては、CNT膜構造体1を適宜な溶液中に浸漬し、ピンセット等の適宜な把持具で剥離する等の方法を用いることができる。
【0042】
複数枚のCNTフィルムを載置、高密度化する際には、基板表面上に液体の表面張力で基板の法線方向に収縮するだけでなく、一部のCNTフィルムが基板表面で反り返り高密度化することがあるため、次のことを考慮する。
(A1)複数枚のCNTフィルムを積層する場合、1枚目のCNTフィルムを設けたマイクロ構造体が2枚目のCNTフィルムを載置する際に、掃かれてしまうことがないようにすること。
(A2)例えば2枚目以降のCNTフィルムとして、厚みが8μmのものを用いた場合、高密度化に使用する液体によっては、2枚目以降のCNTフィルムが反り返ることがあるので、そのような状態となることを防止すること。
【0043】
上記A1の点については、CNTフィルムの厚みを20μmと薄くするとともに、CNTフィルムの積層数を実体顕微鏡で数えることで対処することができる。
【0044】
また、上記A2の点については、観察に用いる実体顕微鏡の照明の強度を、固化乾燥する直前に照明強度を最大から最小に変化させることで問題解消が可能となる。これは、実体顕微鏡の照度を調整することにより、CNTフィルムの乾燥状態が制御され、反り返りを抑制できているものと推認される。
【0045】
また、ピンセットで把持したCNTフィルムを、針がついたマニュピュレーターの針先に移し、同様に針のついたマニュピュレーターとともに、所望の位置、所望の配向で、マニュピュレーターを制御しながら、配置し、マニュピュレーターで押さえ、その後、高密度化に用いる溶液を滴下し、固化させることも好ましい。その際、反り返りのより効果的な防止を行うには、特に高密度化のための溶液として、メタノールを使用することが好ましい。このようにすると、下地にすでにCNTマイクロ構造体があった場合であっても、そのCNTマイクロ構造体のCNTフィルムを掃くことなく、2層目以降のCNTフィルムを容易に載置することができる。マニュピュレーターは乾燥後に外せばよい。このような方法は、厚みが4μm以下のCNTフィルムを扱う場合に効果的である。
【0046】
なお、本明細書において、CNTの配向状態とは、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.6以上、好ましくは0.7以上のものを言う。載置されるCNT膜構造体は、前記Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)は高密度化処理の如何に関わらず、0.6以上、好ましくは0.7以上であればよい。
【0047】
CNT膜構造体の位置を制御された状態とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域を、前記CNT膜構造体が載置されている状態を指す。さらに、CNT膜構造体の配向を制御された状態とは、CNT膜構造体が必要とする配向方向を許容可能な範囲で向いている状態を指す。CNT膜構造体に反り返りがない状態とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域を、前記CNT膜構造体が載置されている状態を指す。
【0048】
CNT層3を構成するCNTは、単層CNTであってもよいし、多層CNTであってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT膜構造体1の用途等に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0049】
本実施形態におけるCNT膜構造体1のCNT層3は、複数のCNTがフィルム面内の一方向に配向し且つ高密度化したCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。また、本実施形態におけるCNT膜構造体1のCNT層3を、その配向方向が互いに異なる複数枚のCNTフィルムを積層して形成するものとすれば、複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることができる。
【0050】
次に、CNTマイクロ構造体について述べる。ここで、「CNTマイクロ構造体」とは、パターニングし加工されたCNT膜構造体のことを指す。
【0051】
CNTマイクロ構造体を作成する方法について述べると、先ず、図25(a)に示すように、CNT膜構造体11にレジスト膜12を塗布する。レジスト膜11は、電子線レジスト、フォトレジスト等、形状を構築するレジストであれば任意のものを使用することができ、また、CNTに対してエッチングの選択比が低いものであっても、選択比以上にCNT膜構造体11よりも十分に厚いレジストを形成すればよい。
【0052】
次に、CNT膜構造体11の上に塗布したレジスト膜12に対し、レジスト膜12の性質に合わせた描画(例えば電子線描画や、フォトリソグラフィー)を行い、CNTマイクロ構造体11として構築したい所望の形状のレジスト膜12Aを描画する(図25(b))。
【0053】
次に、描画したレジストを現像し、CNT膜構造体11の上にレジストマスク13を形成する(図25(c))。そして、CNT膜構造体11に対してエッチングを行い、レジストマスク13を用いて、所望した形状にCNT膜構造体11を加工する(図6(d))。CNT膜構造体11を加工した後、レジストマスク13を除去し、所望の形状のCNTマイクロ構造体を得る(図25(e))。
【0054】
本発明において、CNT膜をパターニングする場合、次のことを考慮する必要がある。
(B1)高密度化したCNTフィルムでも、例えばエッチングの選択比の稼げるシリカ系のレジストHSQ(hydrogen silsesquioxane)(FOX16:日本ゼオン社製)を均一に塗布できないことがある。また、HSQレジストの再現性を得るのが難しいことがある。
(B2)配向の異なるCNTフィルムのマイクロ構造体を、一つの基板内に構築できることが望まれる。
【0055】
これに対して、本発明者らの検討の結果、HSQを塗布する前に、希釈したポリメチルメタクリレート(PMMA)もしくはレジスト(ZEP520A/日本ゼオン)を塗布固化してCNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布することにより、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防ぐことができる。
【0056】
また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することによりマスクを形成するとよい。さらに、HSQを不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で扱い、レジスト塗布時のみ必要場量だけ空気中に暴露して使用することも有効である。また、後述の載置、高密度化工程(転写)を行うことが好ましい。
【0057】
<立体CNTマイクロ構造体>
次に、本発明の別の実施形態に係る立体CNTマイクロ構造体について述べる。このCNTマイクロ構造体は、凸状構造物等を有するウエハ基板を用いて形成する。このウエハ基板の製造手順は図11に示すとおりである。
【0058】
本実施形態のCNT膜構造体21は、凸状構造物として複数のピラー23がその表面に形成されたウエハ基板22に、膜面内の一方向に複数のCNTが配向し且つ高密度化したCNT層24を被着してなるものであり、このCNT層24により、互いに異なる平面上(ウエハ基板の一般面とピラーの頂面)に置かれた2つの平面が形成されている。
【0059】
このような構造のものを作製する場合、次のことを考慮する必要がある。
(C1)凹凸にCNTフィルムを高密度化して載置する際、凹凸の形状によっては(具体的には、突起物であるピラーの高さと、間隔により)凹凸上に張るようにして載置されるCNTフィルムが破れることがある。
(C2)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルム、特にピラー間に張られたCNTフィルムに、レジストマスクとして利用するHSQ液体を塗布する際、突起物の上に張られたCNTフィルムの下側にHSQ液体が不均一に流れ、電子ビームによるマスク形成工程を行うことが困難となることがある。
(C3)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルムにおいて、特に段差を覆っている箇所では、レジストの塗布が十分行えず、マスク形成が困難となることがある。
(C4)プロセス最終段階で、溶液の処理が終わり、乾燥させる際に、乾燥方法によっては、構築した構造が崩壊してしまう。すなわち、立体構造が崩れたり、基板上に設計配置したCNT構造体の位置をずれてしまうことがある。
【0060】
上記C1に対しては、突起物であるピラーの高さや、ピラー上でCNTフィルムが接している面積、間隔をコントロールすることによりCNT破れが解消される。
【0061】
また、上記C2については、HSQを塗布する前に、希釈したPMMAを塗布固化させ、CNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布することにより、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防止できる。また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することによりマスクを形成することが望ましい。
【0062】
上記C3については、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTが接している面積と間隔のコントロールと、上記の2種類のレジスト塗布法を併用することにより問題解消ができる。
【0063】
上記C4に対しては、例えば高密度化にIPAを使用し、IPAの自然乾燥を用いることにより問題解消ができる。水溶液、特に水から乾燥させると、水分が蒸発する際にその表面張力により、立体構造を破壊(中空部分を基板にくっつけてしまう)したり、CNTフィルムが基板から動いたり、設計した構造体配置を狂わせてしまうことがある。また、アセトンを用いた場合も、その気化熱によりサンプルを冷却し、結露を引き起こし、水を用いて乾燥させた場合と同じ条件になるため、IPAやメタノールの使用が好ましい。また、上記乾燥方法の他に、IPAを用い、CO2による超臨界乾燥手法を用いることも有効である。
【0064】
<架橋CNTマイクロ構造体>
次に、本発明の別の実施形態に係る架橋CNTマイクロ構造体について述べる。この架橋CNTマイクロ構造体は、立体CNT膜構造体のCNT膜を所定のパターンに形成することにより得られる。
【0065】
本実施形態の架橋CNTマイクロ構造体を作製する方法を、図26を用いて説明する。
図26(a)に示すように、基板26を常法によりパターニングし、基板26のエッチング条件に耐性を持つマスク27を設ける。次に、基板31に対し所定のエッチング条件でエッチングを行い、所望の凹凸形状を形成する。また、上記のプロセスを経ないで図26(b)に示す形状を有する基板を用いてもよい。次に、図26(c)に示すように、凹凸形状を有する基板26上にCNT層28を形成し、CNT膜構造体を作製する。
【0066】
その後、図26(d)に示すように、凹凸形状の上に形成されたCNT層の上に,レジスト塗布を行い、基板26の凸状形態を架橋するような位置と形状で、前記CNT膜構造体の上にレジストマスク29を構築する。その後、CNT層28のエッチングを行い、レジストマスク29で所望した位置、形状に架橋CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図26(e))。そして、図26(f)に示すように、レジストマスク29を除去し、所望の位置に所望の形状で架橋CNTマイクロ構造体を得る。
【0067】
本発明の架橋CNTマイクロ構造体において、CNT層のパターニングを行う場合、次のことを考慮する必要がある。
(D1)凹凸にCNTフィルムを高密度化して載置する際、凹凸の形状により(具体的には、突起物であるピラーの高さと、間隔により)凹凸上に張るようにして載置されるCNT膜構造体が破れたり、たわむことがあるため、これを防止する。
(D2)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルム、特にピラー間に張られたCNTフィルムに、レジストマスクとして利用するHSQ液体を塗布する際、突起物の上に張られたCNTフィルムの下側にHSQ液体が不均一に流れ、電子ビームによるマスク形成工程を行うことが困難となることがある。
(D3)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルムで、特に段差を覆っている箇所のCNTフィルムにおいて、レジストの塗布が十分行えず、マスク形成が困難となることがある。
(D4)プロセス最終段階で、溶液の処理が終わり、乾燥させる際に、乾燥方法により構築した構造が崩落したり剥離してしまう問題がある。すなわち、架橋構造が崩れたり、突起物上に設計配置した架橋CNTマイクロ構造体の位置がずれてしまうことがある。
【0068】
上記D1に対しては、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTフィルムが接している面積、間隔をコントロールすることによりCNT破れとたわみの問題解消ができる。
【0069】
上記D2に対しては、HSQを塗布する前に、希釈したPMMAを塗布固化させ、CNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布して、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防止することができる。また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することにより、マスクを形成することが望ましい。
【0070】
上記D3に対しては、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTフィルムが接している面積と間隔のコントロールと、上記の2種類のレジスト塗布法を併用すること問題解消ができる。
【0071】
上記D4に対しては、例えば高密度化にIPAを使用し、IPAの自然乾燥を用いることにより問題解消ができる。水溶液、特に水から乾燥させると、水分が蒸発する際にその表面張力により、立体構造を破壊(中空部分を基板にくっつけてしまう)したり、CNTフィルムが基板から動いたりし、設計した構造体配置を狂わせてしまうことがある。また、アセトンを用いた場合も、その気化熱によりサンプルを冷却し、結露を引き起こし、水を用いて乾燥させた場合と同じ条件になるため、IPAやメタノールの使用が好ましい。また、上記乾燥方法の他に、IPAを用い、CO2の超臨界乾燥手法を用いることも有効である。
【0072】
本実施形態におけるCNT膜構造体のCNT層は、複数のCNTがフィルム面内の一方向に配向し且つ高密度化したCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。また、本実施形態におけるCNT膜構造体のCNT層を、その配向方向が互いに異なる複数枚のCNTフィルムを積層して形成するものとすれば、複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることができる。
【0073】
次に、CNT膜のエッチングについて述べると、CNT膜を例えば、O2による反応性イオンエッチング(RIE)で加工する際、焼き切れない毛羽だった残渣が残ることがある(O2プラズマに対するCと何らかの元素の不動態と推認される)。これに対しては、O2とArを用いたRIE、もしくはO2とCHF3を用いたRIE、もしくはこれら3つのRIE条件を組み合わせて加工を行うと効果的である。
【0074】
次に、本発明で使用するCVD装置について説明する。
本発明におけるCNT膜構造体の製造に用いたCVD装置の一例について、より具体的に説明する。このCVD装置31は、図12に示す通り、金属触媒を担持した合成用基板11を受容する石英ガラスからなる管状の反応チャンバ32(チューブ炉;型式:KTF030(直径30mm、加熱長36cm)/製造:光洋リンドバーグ株式会社)と、反応チャンバ32を外囲するように設けられた加熱コイル33と、原料ガスタンク34、触媒賦活物質タンク35、雰囲気ガスタンク36、並びに還元ガスタンク38内の各ガスを反応チャンバ32に供給すべく、反応チャンバ32の一端に接続された2つのガス供給管37、39(SUS304:内径4.35mm)と、反応チャンバ32の他端に接続されたガス排出管40(SUS304:内径4.35mm)とからなっている。また非常に微量の触媒賦活物質を高精度に制御して供給するために、原料ガスタンク34並びに雰囲気ガスタンク36付近の管路には、酸化物質を除去するための純化装置(図示せず)が付設されている。
【0075】
反応チャンバ32内の下方位置には、触媒被膜形成面11aを上方へ向けた状態の合成用基板11を保持した基板ホルダ41が設けられ、その上方には、複数の噴出孔を均一な密度で分散配置してなるシャワーヘッド42が設けられている。このシャワーヘッド42には、第1ガス供給管37の下流端が接続されており、その噴出孔は、基板ホルダ41に載置された合成用基板11の触媒被膜形成11aを臨む位置に設けられている。また各噴出孔は、その噴射軸線が合成基板2の触媒被膜形成面11aに直交する向きとなるように設けられる。つまりシャワーヘッド42に設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、合成基板11の触媒被膜形成面11aに概ね直交するようにされている。
【0076】
両ガス供給管37、39並びにガス排出管40の適所には、逆止弁、流量制御弁、および流量センサ等が設けられており、図示されていない制御装置からの制御信号によって各流量制御弁を適宜に開閉制御することにより、所定流量の原料ガス、触媒賦活物質、キャリアガス、並びに還元ガスが、2つのガス供給管37、39の両方、或いはいずれか一方から、反応プロセスに応じて連続的に或いは間欠的に反応チャンバ32内に供給される。
なお、触媒賦活物質の供給経路には、別のキャリアガス供給部(図示省略)が付設されており、触媒賦活物質は、例えばヘリウム等のキャリアガスと共に供給される。
【0077】
このように構成されたCVD装置31によれば、第1ガス供給管37を経てシャワーヘッド42の噴出孔から合成用基板11の触媒被膜形成面11aに各ガスをシャワーのように吹きかけて、或いは第2ガス供給管39の開口から反応チャンバ32内に各ガスを送り込んで、或いは2つのガス供給管37、39の両方から反応チャンバ32内に各ガスを送り込んで、合成用基板11の触媒被膜形成面11aに複数のCNTを成長させることができる。なお、複数のCNTの金属触媒からの成長方向は、合成用基板11の触媒膜形成面11aに対して垂直方向が一般的であるが、実質的に一定方向でありさえすれば、その角度に特別な規定はない。
【0078】
ここで、CNT膜構造体を作製する方法を、具体例により説明する。
CNT合成基板としてシリコンウエハ;20mm×20mmを用い、その上に厚さ600nmの酸化膜付金属触媒(存在量)としてFe;厚さ1nm/Al2O3;厚さ35nm、幅2μm×長さ1.5mmをスパッタリング蒸着にて成膜した。成膜条件は次のとおりである。
原料ガス:エチレン;供給速度20sccm
雰囲気ガス:ヘリウム;供給速度100sccm
圧力1大気圧
触媒賦活物質:水蒸気(存在量);9ppm
還元ガス:水素;供給速度900sccm
反応温度:750℃
反応時間:20分
シャワーヘッド:(表面サイズ:60.0mm×16.7mm、噴出孔径:0.4mm、噴出孔数:17行×6列等間隔)
【0079】
各弁は、初期状態では、58が開放、51から57が遮断されているものとする。
シャワーヘッド42を、基板11の上方に、触媒被膜形成面11aから6mm離間させて配置した。
【0080】
反応チャンバ32内を750℃に加熱した後、750℃の状態を維持しつつ弁53、54、57を開放し、第2供給管39から反応チャンバ32内に雰囲気ガス(100sccm)と還元ガス(900sccm)との混合ガス(トータル供給速度1000sccm)を送り込んだ。
【0081】
そこへ別工程のスパッタリング蒸着法によって触媒被膜を予め成膜した合成基板11を、基板ホルダ41に載置した状態で搬入し、反応チャンバ32の軸線方向の中心よりも3cm下流側に配置し、所定時間(6分)経過させた。これらの作業により、触媒被膜形成面11aの金属触媒が微粒子化され、単層CNTの成長用触媒として適合した状態に調整される。
【0082】
次に、弁57を遮断して第2供給管39からのガスの供給を止めると同時に、弁54を遮断して還元ガスの供給を止めた。
弁57、54の遮断と同時に、雰囲気ガスの供給速度を85sccmに低下させ、弁51、52、55、56を同時に開放することにより、原料ガス(供給速度10sccm)と、キャリアガス(ヘリウム)に混合された触媒賦活物質(相対湿度23%;供給速度5sccm)とを、第1ガス供給管37から雰囲気ガスと共に送り込み、これらをシャワーヘッド42の噴出孔から基板11の触媒被膜形成面11aに20分間吹きかけた。
【0083】
以上により、触媒微粒子にて原料ガスが熱分解してCNTが合成され、合成基板11上の金属触媒から垂直に成長した複数のCNTからなるCNTフィルムが得られる。本実施例では、幅2μm、長さ1.5mm(金属触媒パターンに応じた寸法である)、高さ900μmのCNTフィルムが得られた。
【0084】
本実施例によって製造される、単層CNTの配向集合体であるCNTフィルム及び後述する配向CNTフィルム群の特性は、製造条件の詳細に依存するが、前記実施例の製造条件では、典型値として、密度:0.03g/cm3、BET−比表面積:1200m2/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、ヘルマンの配向係数0.6であった。また、CNTフィルムは、基板から剥離した後でも、その一体性を保持できる。
【0085】
次に、CNTフィルム付きの合成用基板11を実体顕微鏡の視野に入るようにセットし、顕微鏡で観察しながら、CNTフィルム12を合成用基板11からピンセットで直接取り外した(図7)。
【0086】
次に、合成用基板11とは別の例えばシリコン製のウエハ基板を用意し、市販のパスツールピペットを用いてイソプロピルアルコール(以下、IPAと記す)をウエハ基板2上に滴下して液溜まりを作り、これを実体顕微鏡の視野下に置いた(CNTフィルム取り外し工程で使用する実体顕微鏡に、合成用基板11とウエハ基板2とを同時にセットしてもよい)。そして、CNTフィルム取り外し工程でピンセットに把持したCNTフィルム12を、フィルム面がウエハ基板面と平行となるようにしてIPA中に浸漬させた。この際、位置、形態の微調整にはピンセットにつけたPTFE蘆紙を用いて行った。
【0087】
次に、CNTフィルム12を浸したIPAを自然乾燥によって蒸発させた。この乾燥に要した時間は5分であった。
【0088】
この高密度化工程により、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚さ:2μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、厚さ:190nm、幅:1.5mm、長さ:900μmのCNT層(図7の符号3)となった。この際の収縮率は9.5%であった。
【0089】
本実施例におけるCNT層3は、厚さ:190nm、CNTの重量密度:0.3g/cm3、CNTの本数密度:4.3×1012本/cm2、ビッカース硬度:7Hv、比表面積:1000m2/g、純度:99.98質量%であった。
【0090】
CNTフィルム12を浸漬する液体を、IPA以外のアルコール類、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、DMFに変更しても、同様の実施結果が得られた。
【0091】
なお、合成用基板11からのCNTフィルム12の取り外し作業は、ピンセットで直接でも、ピンセットにPTFE濾紙を取り付けたものでも、同様に行うことができ、結果物に差は生じなかった。
【0092】
次に本発明のCNT膜構造体についてさらに詳述する。
CNT膜構造体とは、CNTフィルムの面に沿って同じ方向に連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ集合体のことを言い、重量密度は0.1g/cm3以上1.5g/cm3以下である。重量密度が当該範囲以下の場合では、パターニングのためのレジストがCNT集合体の間をとおりぬけてしまう。好ましくは、前記基板から、当該膜構造体の部分的な浮きや、裂け、破れの原因となるしわと、基板の放線方向以外の方向へのカーボンナノチューブフィルムの高密度化や、CNT膜構造体へのレジスト塗布時にCNT膜構造体の折り返りの原因となる、反り返りを抑止した処理が施されたものが望ましい。
【0093】
「高密度化された状態のCNTの配向状態」とは、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.6以上、好ましくは0.7以上のものを言う。載置されるCNT膜構造体は、前記Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)は高密度化処理の如何に関わらず、0.6以上、好ましくは0.7以上であればよい。
【0094】
「CNT膜構造体の位置を制御された状態」とは、CNT膜構造体が必要とする基板上の所望領域に、CNTフィルムが載置されている状態を指す。また、「CNT膜構造体の配向を制御された状態」とは、CNT膜構造体が必要とする配向方向を許容可能な範囲で向いている状態を指す。さらに、「CNT膜構造体に反り返りがない状態」とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域に、CNTフィルムの各CNTが上下方向の許容範囲内にある状態を指す。
【0095】
本発明に係るCNT膜構造体を製造する方法について、その製造工程を示すブロック図(図6)と図7を参照して詳しく説明する。
【0096】
先ず、化学気相成長工程(図6、7のステップS1)において、CNTフィルムを作製する。本実施形態では、触媒賦活物質として水分などを反応雰囲気中に存在させて多量の垂直配向CNTを成長させる方法(Kenji Hata et al, Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes, SCIENCE, 2004.11.19, vol. 306, p. 1362-1364を参照されたい)を適用してCNTフィルムを作製した。
【0097】
CVD法においてCNTを成長させる金属触媒は、これまでCNTの製造に使用された実績のある適宜な金属を用い、周知の成膜技術を用いて形成することができる。典型的には、マスクを用いたスパッタリング蒸着法で成膜した金属薄膜、例えば鉄薄膜、塩化鉄薄膜、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜等を例示することができる。
【0098】
金属触媒を担持する合成基板としては、従来周知の各種の材料を用いることができ、典型的には、鉄、ニッケル、クロムなどの金属及び金属の酸化物や、シリコン、石英、ガラスなどの非金属、あるいはセラミックスからなる表面が平坦なシート材あるいは板材などを使用することができる。
【0099】
金属触媒パターンの形状としては、1本の連続した直線状パターンとしてもよいし、一方向に沿って複数本を並べた破線状パターンとしてもよい。また金属触媒の膜厚は、触媒として用いる金属に応じた最適値に設定すればよく、例えば、鉄金属を用いた場合には、0.1nm以上100nm以下が好ましい。そしてその幅は、最終的に基板2に被着されるCNT層3の所要厚さに応じて設定すればよく、高密度化後におけるCNT層3の厚さの5〜20倍程度の値に設定すればよい。
【0100】
触媒をパターニングするとCNTの成長が悪くなる。触媒パターン形状がラインパターンだと、ラインが細くなるに従って、成長が悪くなり(高さがとれない)、高さの不均一性も増え、周りが生えなくなって真ん中だけ生える等の問題があった。
【0101】
この問題解決のために、鉄触媒を通常よりも厚めに積層した(1.2乃至2nm位)。エチレンのチューニング(エチレンを減らす。10sccm)初めは、20sccmだったのを10sccmに減らして成長させ、それに併せてシビアにXをチューニングした。
ここで金属触媒パターンの幅によって決定されるCNTフィルムの厚さは、高密度化後のCNT層の厚さのみならず、高密度化後のCNT層の重量密度をも制御するという点で重要である。高密度化前(合成直後)のCNT膜厚(元の厚さ)を制御することにより、CNTの重量密度を0.11g/cm3から0.54g/cm3まで制御可能である(元の厚さと高密度化後の厚さおよび密度との関係については後に詳述する)。
【0102】
CVD法における原料炭素源としての炭素化合物としては、従来と同様に、炭化水素、なかでも低級炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン等が好適なものとして使用可能である。
【0103】
反応の雰囲気ガスは、CNTと反応せず、成長温度で不活性であればよく、そのようなものとしては、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、ネオン、クリプトン、二酸化炭素、塩
素等や、これらの混合気体が例示できる。
【0104】
原料ガスと共に合成基板の金属触媒膜に接触させる触媒賦活物質としては、CNTの合成中に触媒微粒子に付着して触媒を失活させる炭素系不純物を触媒面から除去して触媒の地肌を清浄化する作用を持つ物質であれば何でもよく、一般には酸素を含み、成長温度でCNTにダメージを与えない物質であればよく、水蒸気の他に、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、アルデヒド類、酸、エステル類、酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物の使用も反応条件に応じて許容される。
【0105】
原料ガスの供給に先立って、雰囲気ガスに還元ガスを混入し、これを金属触媒膜に所定時間接触させるとよい。これにより、金属触媒膜に存在する金属触媒が微粒子化され、例えば単層CNTの成長に適合した状態に金属触媒が調整される。ここで適切な金属触媒膜の厚さ並びに還元反応条件を選択することにより、直径数ナノメートルの触媒微粒子を、1.0×1011〜1.0×1013(個/cm2)の密度に調整可能である。この密度は、基板の触媒膜形成面に直交する向きに配向した複数のCNTを成長させるのに好適である。なお、還元ガスとしては、金属触媒に作用してCNTの成長に適合した状態の微粒子化を促進し得るガスであればよく、例えば水素ガス並びにアンモニアや、これらの混合ガスが使用可能である。
【0106】
反応の雰囲気圧力は、これまでCNTが製造された圧力範囲であれば適用可能であり、例えば102Pa〜107Paの範囲の適切な値に設定することができる。
【0107】
CVD法における成長反応時の温度は、反応圧力、金属触媒、原料炭素源等を考慮することにより適宜定められるが、通常、400〜1200℃、より好ましくは600〜1000℃の範囲であるとCNTを良好に成長させることができる。
【0108】
このようにして基板上に合成されたCNTフィルムの様子を図8の電子顕微鏡(SEM)写真像に示す。このCNTフィルムを構成するCNTは、純度98質量%以上、重量密度0.029g/cm3程度、比表面積600〜1300m3(未開口)/1600〜2500m3(開口)であった。
【0109】
本発明では、上記文献に記載された製造方法以外の製造方法を利用することができる。垂直配向のCNT集合体を得る技術としては、例えば、”Growth of vertically aligned single-walled carbon nanotube films on quartz substrates and their optical anisotropy”(Y.Murakami et al, Chemical Physics Letters 385(2004)298-303)、あるいは”Ultra-high-yield growth of vertical single-walled carbon nanotubes: Hidden roles of hydrogen and oxygen”(Guangyu Zhang et al, PNAS November 8, 2005, vol.102, no.45, 16141-16145)なども知られている。
【0110】
次のCNTフィルム取り外し工程(図6、7のステップS2)においては、合成用基板11に形成されたCNTフィルム12を合成用基板11から取り外すが、この工程は、合成基板11に形成されたCNTフィルム12をピンセットで把持して直接取り外す方法や、合成樹脂製のメンブレンをピンセットの先端に貼り付けておき、このメンブレンにCNTフィルム12を貼りつかせて取り外す方法を、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことによって実現することができる。メンブレンを用いる方法を採ると、CNTフィルム12との接触面積が増えるので、CNTフィルム12が掴み易くなり、微細な作業の際に作業者の手の震えなどが操作に与える影響を少なくすることができる。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、上記の利点を有するものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0111】
取り外し工程において、密集したCNTフィルム群から、CNTを取り出すことが困難なことがある。また、取り出したCNTフィルムを1枚ごとに分けることが困難なことがある。
【0112】
このため、実体顕微鏡とメンブレンフィルターを用い、実体顕微鏡下で観察しながら、メンブレンフィルターにてCNTフィルムをつけ、CNTフィルム群からCNTを取り出すことにより問題解消が可能となる。また、メンブレンフィルターで取り出したCNTは、1枚の時もあれば、複数枚ある時もあるが、本発明によれば、メンブレンフィルターで1枚ごとの取り出しが可能となった。
さらに、実体顕微鏡とピンセット及び、合成するCNTフィルムの厚みを2μm以上とすると、ピンセットでCNTフィルム1枚を取り出すことが可能となる。
【0113】
次の載置工程(図6、7のステップS3)においては、取り外し工程で取り外したCNTフィルム12をウエハ基板2上に載置し、且つCNTフィルム12を液体に晒すが、この工程にも、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことができる複数通りの実現方法がある。
【0114】
第一は、取り外し工程で取り外したCNTフィルム12を、液体が予め滴下されたウエハ基板2の上に移動させてピンセットから離す。その後、メンブレンのついたピンセットでCNTフィルム12を液体中の任意の位置に合わせる、という方法である。
【0115】
第二は、CNTフィルム12をウエハ基板2の上に移動させてピンセット13から離した後、ウエハ基板2上のCNTフィルム12が浸るように液体を滴下し、メンブレンのついたピンセットで液体中のCNTフィルム12の位置合わせを行う、という方法である。
【0116】
なお、ここでは1枚のCNTフィルム12をウエハ基板2の上に載置する例を示したが、前述のように複数のCNTフィルム12を重ねて載置するようにしてもよい。また、CNTフィルム12を液体に晒すのはウエハ基板2以外の場所としても構わない。
【0117】
ここでCNTフィルム12を晒す液体としては、CNTと親和性があり、蒸発後に残留する成分がないものを使用することが好ましい。そのような液体としては、例えば水、アルコール類(イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール)、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。また液体に晒す時間としては、CNTフィルムの内部に気泡が残らずに全体が満遍なく濡れるのに十分な時間であればよい。
【0118】
次の高密度化工程(図6、7のステップS4)においては、液体に晒してウエハ基板2の表面に載置した状態にあるCNTフィルム12を高密度化し、ウエハ基板2の表面に被着したCNT層3を形成する。この工程は、典型的には、液体が付着したCNTフィルム12を乾燥させることで行う。CNTフィルム12を乾燥させる手法としては、たとえば室温窒素雰囲気下での自然乾燥、真空引き乾燥、アルゴン等の不活性ガス存在下での加熱などを用いることができる。
【0119】
高密度化工程において、高密度化する際に溶液に浸したカーボンナノチューブフィルムもしくはカーボンナノチューブを扱うピンセット、カーボンナノチューブフィルムを扱っているメンブレンに泡が生じると、高密度化する際にシワができることがある。また、高密度化する際にCNTフィルムを所望の方向に合わせるのが難しいことがある。さらに、高密度化乾燥する際に溶媒が高密度化したCNTフィルム内に残ることがあった。これについては、CNTフィルムの厚みを20μm以下に薄くするとともに、の積層数を実体顕微鏡で数えることにより問題解消ができる。また20μm以下の厚みのCNTフィルムでも反り返りが起こる場合は、観察に用いる顕微鏡の照明の強度を、乾燥する直前に照明強度を最大から最小に変化させることにより問題解消ができる。CNTフィルムの乾燥状態が制御され反り返りを抑制できているものと推認される。また、高密度化に用いる基板上に載せた溶液に、CNTフィルム、もしくはCNTフィルムを扱うピンセット、CNTフィルムを扱っているメンブレンを十分に浸し、実体顕微鏡にて観察し、泡が生じないようにすることができる。さらに、ピンセットの先に、メンブレンフィルターを把持して、CNTフィルム同様基板上の溶液に浸し、顕微鏡でCNTフィルムの配向方向を観察しながら、ピンセットすなわちメンブレンフィルターを操作し、溶液中でCNTフィルムを動かすことにより、所望の位置、所望の配向に配置することができる。さらに、ピンセットで把持したCNTフィルムを、位置制御が可能な先端を有するマニュピュレーターに移し、マニュピュレーターにて所望の位置、所望の配向で、CNTフィルムを制御して配置し、マニュピュレーターで基板上に押さえ、その後、高密度化に用いる液体を滴下することにより、高密度化を行うことができる。位置制御が可能な先端として、タングステンのような高度を有する針状もしくは棒状の先端でも良く、または樹脂のような柔軟性のある先端でも良い。さらには、ピンセットのような端可能な治具を先端として利用しても良い。また、反り返りを効果的に防止できる高密度化に用いる溶液として好適には、メタノールが使用されるが、ケースバイケースで判断する。
【0120】
乾燥の際は、顕微鏡の照明強度を乾燥直前に最大から最小に変化させ、乾燥させることにより、所望の一方向にCNTの配向をあわせることが可能となる。またこの方法により、下地にすでにマイクロ構造体があった場合も、そのマイクロ構造体のCNTフィルムを掃くことなく、2層目以降のCNTフィルムを載置することが可能となる。マニュピュレーターは乾燥後外せばよい。また、次のプロセスで使う前に、真空中180℃で10分間保持する手法も好ましい。
【0121】
CNTフィルム12は、液体に浸されると、各CNT同士が密着して全体の体積が少し収縮し、液体が蒸発するときに密着度がより一層高まって体積がかなり収縮し、結果として高密度化したCNT層3が形成される。このとき、ウエハ基板2との接触抵抗により、ウエハ基板2と平行な面の面積収縮はほとんど無く、専らCNT層3の厚さ方向に収縮する。
【0122】
以上の各工程を経ることにより、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向した高密度なCNT層3が被着されたCNT膜構造体1が完成する。このようにして製造されたCNT膜構造体1の一例を図9の電子顕微鏡(SEM)写真像に示す。このようにして得られたCNT層3は、図10のbに示すように、合成基板11から取り外した直後のCNTフィルム12(図10(a))に比して高密度化によってもその配向性が損なわれることはない。この高密度化後のCNT層3が十分に異方性を有していることは、図10のcに示したラマンGバンド強度依存性の測定結果を見ても分かる。
【0123】
上記の高密度化工程は、CNTフィルム12を液体に晒した後に乾燥させる手法としたが、高密度化工程においてCNTフィルム12が収縮するメカニズムは、上述した通り、各CNT同士間に入り込んだ液体の表面張力によって各CNT同士が引き寄せられ、液体が蒸発した後も各CNT同士のくっついた状態が維持されるからであると推定される。従って、高密度化工程は、CNT同士間に表面張力を生じさせる手法であればよく、例えば高温蒸気などを用いる手法を適用することができる。
【0124】
さらに図27、図28を用いてCNT膜構造体の作成方法を詳述する(カーボンナノチューブフィルム1層のみ)。
【0125】
先ず、図27を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体の作成方法を詳述する。
CNT成長工程(a)
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の集団で成長させたCNTフィルム群を成長させる。
【0126】
CNTフィルム取り外し工程(b)
合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。そして上記処理をしたメンブレンを、選択したCNTフィルム群の一番端にあるCNTフィルムに当て、CNTフィルムをメンブレンに移す。所望の厚みが得られない場合は、とったCNTフィルムを両面テープにつけ、メンブレンから剥がし、また上記操作を繰り返す。
【0127】
CNTフィルムの載置、固定工程(c、d)
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にメンブレンごとカーボナノチューブフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸す。IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンを動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する。CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する。IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、CNTフィルム表面を観察し、溶液が蒸発しCNTの表面が見えるまで乾燥させる。
【0128】
乾燥工程(e)
乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180度で10分間乾燥を行う。
次に、図28を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体の他の作成方法を詳述する。
【0129】
CNT成長工程(a)
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の集団で成長させたCNTフィルム群(1つの群は全て同じ厚み、同じ間隔のCNTフィルムにする。)を成長させる。
合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0130】
CNTフィルム取り外し工程(b)
上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。ピンセットにて、CNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚さ2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のピンセットを駆使して、1枚のみを取り出す)。
【0131】
次に、載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にCNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で把持したピンセットごと浸しCNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0132】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する。CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する。
【0133】
IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、CNTフィルム表面を観察し、溶液が蒸発しCNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。
【0134】
乾燥工程
乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0135】
次に、図28を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体のさらに他の作成方法を詳述する
【0136】
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の手段で成長させたCNTフィルム群(1つの群は全て同じ厚み、同じ間隔のCNTフィルムにする。)を成長させる。
【0137】
そして、合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0138】
上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。そして、ピンセットにて、上記CNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0139】
次に、固い針を有したマニュピュレーターの針先に上記でとったCNTフィルムを移す。上記のマニュピュレーターの他に、柔らかい針先を有するマニュピュレーターを用い、二つのマニュピュレーターを操作して、CNTフィルムを基板上の所望の位置に所望の配向で載置する。載置の際、CNTフィルムを両端を基板にマニュピュレーターの二つの針でおさえる。この際、針を強く押さえつけてCNTフィルムを破らないように、基板を針につける前に、基板と針とが接する点を調整し、接点以上に針が基板を押さない様に事前に調整をしておく。
【0140】
上記で所望の位置、所望の配向で基板上に二つの針で押さえつけたCNTフィルムの上から、メタノールをパスツールピペットにて一滴滴下し、顕微鏡で表面を観察しながら高密度化を行う。顕微鏡で表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。
【0141】
乾燥が終了後、CNTフィルムを押さえつけている二つの針を上に上げて押さえつけを外す。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0142】
上記実施例における金属触媒の幅を4μmとし、それ以外は上記実施例と同様にして合成基板11の上に垂直配向のCNTフィルム12を作製した。そして、上記実施例と同様の工程を経てCNT膜構造体1を作製した。これによると、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚さ:4μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、高密度化工程後のCNT層3は、厚さ:250nm、幅:1.5mm、長さ:900μmとなり、収縮率は6.3%であり、重量密度は0.47g/cm3であった。
【0143】
次に、上記実施例における金属触媒の幅を7.5μmとし、それ以外は上記実施例と同様にして合成基板11の上に垂直配向のCNTフィルム12を作製した。そして、上記実施例と同様の工程を経てCNT膜構造体1を作製した。これによると、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚み:7.5μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、高密度化工程後のCNT層3は、厚さ:470nm、幅:1.5mm、長さ:900μmとなり、収縮率は6.3%であり、重量密度は0.47g/cm3であった。
【0144】
さらに、複数のCNT層をウエハ基板上に積層してなるCNT膜構造体の製造方法を以下に記載する。
金属触媒膜の幅を8μmとしたこと以外は実施例1同様にして合成基板に垂直配向のCNTフィルムを形成した。そして、実施例1と同様にして載置工程及び高密度化工程を経て1層目のCNT層を有するCNT膜構造体を製造した。さらに、このCNT膜構造体に実施例1と同様にしてIPAの液溜まりを形成し、その中に1層目のCNT層の配向方向と直交する向き、あるいは同じ向きに2枚目のCNTフィルムを浸漬して自然乾燥させた。図17(a)は、2つのCNTフィルムをその配向方向を互いに直交させて重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像であり、図17(b)は、2つのCNTフィルムをその配向方向を同一にして重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像である。なお、図17(b)の中央に黒く見える左右に走る線は重ね合わせの継ぎ目である。
【0145】
液体に浸す前のCNTフィルムの厚さは、1枚目が8μm、2枚目が8μm、高密度化後のCNT層の厚さは、1層目が574nm、2層目が580nm、その収縮率は、1層目が7.2%、2層目が7.3%、その重量密度は、1層目が0.41g/cm3、2層目が0.41g/cm3であった。
【0146】
以下本発明のCNTマイクロ構造体について詳述する。
CNTマイクロ構造体とは、所望の位置、所望の大きさに、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ集合体。前記集合体のHerman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.7以上のものを言う。所望の位置とは、任意の基板上でCNTの機能を必要とする位置に施設した状態を指し、所望の大きさとは、前記機能発現に必要な大きさを指す。CNTの機能とは、CNTが持つ特性利用した機能であり、電気特性、機械特性、磁気特性、ガス吸着特性がこれに当たる。これ以外でも、CNTが有する特性に関するものであればこれに当たる。
【0147】
以下にCNTマイクロ構造体を図29、図30を用いて詳述する。
上述したCNT膜構造体の製造方法を用い1層目のCNT膜構造体を製造する。CNT膜構造体の乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。レジストPMMA495を希釈液にて重量換算で5倍希釈した液を塗布し、4700rpmで1分間スピンコートを行い、180℃で1分間ベークし、副レジスト層を形成させた。これにより2層目の主レジストが高密度化したCNTフィルムに浸み込むことを抑制した。副レジスト層は、2層目の主レジスト層がCNT膜構造体に、染み込むことを抑制する機能を有しかつ、CNT膜構造体と同等にエッチング出来る材料であれば何でもよく、例えば、ZEP−520AやAZP−1357でも良い。希釈液は、副レジスト層として使うレジストを希釈可能であれば何でもよく、希釈量も、2層目の主レジストが描画できる範囲であれば、希釈量、塗布方法、ベーク条件は問わない。
【0148】
2層目の主レジストとして、さらにFOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、360nmのレジスト層を形成した。
【0149】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にてレジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。これを下記CNTエッチング工程の条件を用い、レジスト毎にCNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得、1つめの配向を有した1層目のCNTマイクロ構造体を構築した。
【0150】
以上の工程で得られたCNTマイクロ構造体もしくは、同様の構造を有するCNTマイクロ構造体の上に、前述CNT膜構造体の製造方法の前記実施例で用いた方法により、2層目のCNT膜構造体を製造した。
【0151】
2層目のCNT膜構造体に対して、上記と同様の手順を用い、2つめの配向を有する2層目のCNTマイクロ構造体を加工した(この間1層目のCNTマイクロ構造体は、その上にあるマスクによって、2層目のCNTが加工される間も保護される)。
【0152】
加工後、緩衝沸酸溶液にFOX16の層が除去できるまで浸し、次に純水、IPAと浸し、PMMAの除去液であるRemover−PG、もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に、残留したPMMA層が除去できるまで浸す。最後にIPAに浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。
IPAに浸した後自然乾燥させ、2つ以上の配向を有するCNTマイクロ構造体を構築する。
【0153】
次に、本発明の立体CNTマイクロ構造体について詳述する。
立体CNTマイクロ構造体とは、所望の位置、所望の大きさに、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着している面と連続した箇所が、被着面以外にある箇所を有するCNT集合体のことを言う。
【0154】
上記立体CNTマイクロ構造体の配向は、同一平面内にある立体CNTマイクロ構造体の中の少なくとも一部が、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)で0.6以上、より好ましくは0.7以上のものを言う。
【0155】
以下に立体CNTマイクロ構造体の製造方法を詳述する。
先ず、Siからなるウエハ基板22上にNiのマスク26を設け(図11(a))、次に、例えばO2/Ar反応性イオンエッチングによってウエハ基板22を垂直方向にエッチングし、例えば3つのピラー23を形成する(図11(b))。その後、第1の実施形態で述べた化学気相成長工程(ステップS1)、CNTフィルム取り外し工程(ステップS2)、載置工程(ステップS3)、高密度化工程(ステップS4)を経て、目的の3次元CNT膜構造体21が得られる(図11(c))。
【0156】
次に、図31を用いて犠牲層無しに立体CNTマイクロ構造体を製造する方法を詳述する。
図31(左上)のように、基板に常法でパターニングし、基板のエッチング条件に耐性を持つマスクを付ける。次に基板を所定のエッチング条件でエッチングし、任意の凹凸形状を有する基板を作製する。前記プロセスを経ないで形状を有する基板を利用してもよい。(図31の真ん中上)。凹凸形状を有する基板上にCNT膜構造体を形成する(図31(右上))。上記凹凸形状の上に形成されたCNT膜構造体の上に,レジスト塗布を行い、基板の凹凸状にある、前記CNT膜構造体の上にレジストマスクを立体CNTマイクロ構造体として得たい立体形状の上に、所望の形状で構築する(図31(右下))。次に、CNTのエッチングを行い、レジストマスクで所望した位置、形状に立体CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図31(真ん中下))。CNT膜構造体を加工した後、レジストマスクを除去し、所望の位置に所望の形状で立体CNTマイクロ構造体を得る(図31(左下))。
【0157】
本発明は、予め定められた立体形状部を有するウエハ基板に適用することも可能である。以下にその実施例を示す。
<ピラー形成工程>
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後にO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、スピンコーター(1H−D7/ミカサ)を用いたスピンコート法でレジスト(ZEP−520A/日本ゼオン)を塗布し、150℃で3分間ベークした。
【0158】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液(ZED−N50/日本ゼオン)で現像し、ピラーとする部分以外にマスクを形成した。その後、マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部位に厚さ100nmのNi層をスパッタリング蒸着した後、ストリップ液(ZDMAC/日本ゼオン)でレジストを除去し、かつIPAでリンスした。このようにして表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板が得られた。
【0159】
このNi層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置(RIE−00L/サムコ)にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板に、CHF3、SF6及びO2の混合ガス(CHF3:100W,8.5Pa,40sccm,45min/SF6:100W,8.5Pa,60sccm,45min/O2:100W,8.5Pa,55sccm,45min)を供給し、縦横に配列された複数のピラー23が形成されたウエハ基板22を得た。
【0160】
ピラー群の例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたものを図13(d)に示す。また、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を10μm、手前側に位置するピラー群のピラーの頂面の面積を:10μm×30μm、奥側に位置するピラー群のピラーの頂面の面積を:10μm×90μmとしたものを図14(a)に示す。またピラーの高さを3μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたものを図15(a)に示す。
【0161】
<化学気相成長工程><載置工程><高密度化工程>
別工程で作製したCNTフィルム12をメンブレン付きピンセットを用いて合成基板11から取り外し、上記のようなピラー群が形成された各ウエハ基板22の表面に載置し、それをIPAに満遍なく晒し、大気中で5分間自然乾燥させた後、真空引きしながら180℃で10分間ベークしてさらに乾燥させた。これにより、CNTフィルムが高密度化すると共にウエハ基板22の表面に密着し、高密度化したCNT層24が表層に形成されたCNT膜構造体21を得た。ここでウエハ基板22の表面に残ったNi層が、CNT層の密着性をより一層高める作用をなす。CNT層24は、互いに隣り合うピラー同士間を架橋する両持ち梁の長手方向についてCNTが配向しており、重量密度:0.48g/cm3、厚さ:250nm、全面積:110μm×110μmであった。
図13(a)(b)(c)、図14(a)、図15(b)(c)は、それぞれウエハ基板22にCNT層24が被着された様子である。
【0162】
<パターニング工程>
ピラー23、すなわち予め定められた立体形状部を備えたウエハ基板22にCNT層24を被着してなるCNT膜構造体21は、周知のパターニング技術を利用して加工することができる。
【0163】
このCNT膜構造体21を加工するに当たっては、先ず、CNT層24の表面に1層目のレジスト(重量比で5倍に希釈した495 PMMA A11/マイクロケム)をスピンコート法(4700rpm、1分間)で塗布し、ホットプレート上でベーク(180℃、1分間)し、80nmの副レジスト層を形成した。これにより2層目の主レジストがCNT層24に浸み込むことを抑制し得る。
【0164】
次に2層目の主レジスト(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート法(4500rpm、1分間)で副レジスト層上に塗布し、ホットプレート上でベーク(90℃、10分間)し、360nmの主レジスト層を形成した。
【0165】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて主レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA-100/日本ゼオン)で現像してマスクを形成した。この作業によって2層目に塗布した主レジスト層のみに所定パターンが形成される。
【0166】
これを反応性イオンエッチング装置(RIE−200L/サムコ)にて、先ず、O2(10sccm、80W、10Pa、7min)を、次に、O2及びAr(10sccm、80W、10Pa、3min)を供給し、1層目の副レジスト層およびCNT層24のマスクから露出している部分、すなわち不用部分を除去した。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0167】
最後に、2層目の主レジスト層を緩衝弗酸(110−BHF(4.7%HF,36.2%NH4F,59.1%H2O)/森田化学工業)を用いて除去し、且つ純水でリンスした後、1層目の副レジスト層を剥離液(PG/マイクロケム)で除去し、且つIPAで洗浄して自然乾燥させることにより、目的物が得られた。
【0168】
図13(e)は、ピラー頂部に合わせて幅1μmの格子状パターンを形成した例であり、図14(b)は、互いに隣接したピラーの頂面同士に架橋した幅が5μmの直線ビーム(梁)状パターンを形成した例であり、図15(d)は、ピラーの頂面同士とウエハ基板の一般面とを連続的に結ぶ直線状パターンを形成した例である。
【0169】
なお、ピラー形成工程並びにパターニング工程で用いる液剤や機材は、上記実施例に限るものではない。またピラーの寸法も適宜に設定可能である。
【0170】
次に、図32を用いて犠牲層を設けてCNTマイクロ構造体を製造する方法を詳述する。
図32(左上)の様に、任意の基板を用意する。図32(真ん中上)のように、何らかの処理により除去が可能なレジスト等の物質で、形状パターンを構築する。もしくは前記プロセスを経ないで、何らかの処理により除去可能な物質で予め凹凸形状を有した基板を利用してもよい。次に、何らかの処理により除去可能な物質で凹凸形状を有する基板上にCNT膜構造体を形成する(図32(右上))。上記凹凸形状の上に形成されたCNT膜構造体の上に,レジスト塗布を行い、基板の凹凸状にある、前記CNT膜構造体の上にレジストマスクを立体CNTマイクロ構造体として得たい立体形状の上に、所望の形状で構築する(図32(右下))。
【0171】
次に、CNTのエッチングを行い、レジストマスクで所望した位置、形状に立体CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図32(真ん中下))。CNT膜構造体を加工した後、レジストマスク及びCNTの下にある除去可能な物質で構築してある凹凸を除去し、所望の位置に所望の形状で立体CNTマイクロ構造体を得る(図32(左下))。
【0172】
本実施形態においては、ウエハ基板22をエッチングして凸状構造物としてのピラー23を形成するものとしたが、本発明においては、載置工程(ステップS3)の前に所定形状の犠牲層をウエハ基板に形成し、高密度化工程(ステップS4)の後にその犠牲層を除去することにより、CNT層の3次元的な形状制御を行うこともできる。その場合は、例えばHSQ(hydrogen silsesquioxane)を用いて犠牲層を形成し、緩衝弗酸を用いて犠牲層を除去することができるが、これに限定されない。
【0173】
犠牲層によって凹凸を形成し、高密度化されたCNT層を作成する方法を詳述する。
CNT膜の形成後に犠牲層を除去することにより、CNT層の形状を任意の3次元構造に制御することも可能である。例えば、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板を用意し、その表面をIPAで超音波洗浄し、且つO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、150℃で10分間ベークして脱水する。これにHSQ(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート(4500rpm、1分間)で塗布し、且つ250℃で2分間ベークして470nmのレジスト層を形成した。これに電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%ZTMA−100/日本ゼオン)で現像することにより、所定パターンに対応した形状の犠牲層を得ることができる。
【0174】
この犠牲層付きウエハ基板上に高密度化されたCNT層を形成し、それに例えば犠牲層に対応した形状をパターニングすることができる。このパターニング手法としては、レジスト(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート法(4500rpm、1分間)でCNT層上に塗布し、90℃で10分間ベークして厚さ360nmのレジスト層を形成した後、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にてレジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%ZTMA−100/日本ゼオン)で現像してマスクを形成する。これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ)にてO2及びAr(O2/Ar=10sccm/10sccm、80W,10Pa,2min)を供給し、CNT層のマスクから露出した部分、すなわち不用部分を除去した。そしてレジスト層は、50%弗酸の蒸気に25分間さらすドライエッチング法にて除去した。
【0175】
図16(a)は、長さ5μm、幅1μmの複数の犠牲層を基板上に敷き詰め、犠牲層を覆うようにCNTフィルムを載置し、矩形パターンをパターニングしたものである。
犠牲層(FOX16/ダウコーニング)は、緩衝弗酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業)で除去し、且つIPAで洗浄する。その後、IPA中に浸されたCNT層及び犠牲層付き基板を、超臨界乾燥装置(隆祥産業製)を用いて二酸化炭素で超臨界乾燥を施すことにより、3次元構造を有するCNT層を形成することができる。図16(b)は、図16(a)に示された犠牲層を除去して中空構造を形成したものである。
【0176】
本実施形態においても、CNT層24を構成する複数のCNTは、互いに隣り合うCNT同士がファン・デア・ワールス力によって強く結合しており、その重量密度は、0.1g/cm3以上、より好ましくは0.2g/cm3以上である。CNT層24におけるCNTの重量密度が上記の下限値以上であると、CNT層24が固体としてのリジッドな様相を呈し、所要の機械的強度(剛性、曲げ特性等)が得られるようになる。CNT層24におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限から、その上限値は1.5g/cm3程度である。
【0177】
CNT層24の厚さは、CNT膜構造体21の用途に応じてその望ましい値を任意に設定することができる。これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。膜厚の上限値に格別な制限はないが、このような電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0178】
CNT層24が上記のような密度及び厚さであると、例えばCNT層24上にレジストを塗布し、リソグラフィーでレジストに任意のパターンを描き、レジストをマスクとしてCNT層24の不用部分をエッチングし、任意形状の立体的回路あるいは立体的デバイスを形成することが容易に実行可能となる。すなわちこれによれば、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能となり、集積回路製造プロセスとの親和性が高まる。
【0179】
以下本発明の架橋CNTマイクロ構造体について詳述する。
架橋CNTマイクロ構造体とは、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層が、任意の基板のある面と同一もしくは異なる面を、ある間隔をもって架橋しているCNT集合体のことを言う。前記架橋CNTマイクロ構造体の配向は、同一平面内にある立体CNTマイクロ構造体の中の少なくとも一部が、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)で0.6以上、より好ましくは0.7以上のものを言う。
【0180】
以下に架橋CNTマイクロ構造体の製造方法を図26を用いて詳述する。
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後、O2プラズマに300W、1分間暴露し基板を清浄化した。基板清浄化後上で、スピンコーターを用いてレジストZEP−520Aを4700rpmでスピンコートし、コート後150℃で3分間ベークした。電子線描画装置でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液ZED−N50/で現像し、ピラーとする部分以にマスクを形成した。マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部分に厚さ100nmのNi層をスパッタリング装置にて成膜した後、ストリップ液ZDMACでレジストを除去し、かつIPAでリンスし、表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板を得た。上記Ni層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板の両サイドを表面に酸化膜のない4インチのシリコン基板を二つに割ったそれぞれを配置し、CHF3を40sccm、SF6を60sccm、O2を55sccm同時にエッチングチェンバー内に流入し、放電出力100W、処理時間45分でエッチングを行い、所望のピラー構造体もしくはトレンチ構造体を得た。(例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたピラー群や、頂面の面積を10μm×90μmとしたトレンチ群を作製した。)PTFE製のメンブレンフィルターを、X形のピンセットに把持し、3mm×1mm位のエリアが把持部以外に出来るよう加工する。
【0181】
載置高密度化工程で作製したCNTフィルム群から、実験に適切な厚みのCNT(厚さ4μmもしくは8μm)を選択する。Misterピンセットにて、上記で選択したCNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のMisterピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0182】
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にMisterピンセット毎CNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸し、CNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0183】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンフィルターを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する(CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する)。IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0184】
次に、レジストPMMA495を希釈液にて重量換算で5倍希釈した液を塗布し、4700rpmで1分間スピンコートを行い、180℃のホットプレート上で1分間し、80nmの副レジスト層を形成した。これにより2層目の主レジストが高密度化したCNTフィルムに浸み込むことを抑制した。
2層目の主レジストとして、さらにFOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、360nmのレジスト層を形成した。
【0185】
次いで、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて上記レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。これを下記加工工程で示すと同様な条件を用い、上記レジスト毎CNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得た。
【0186】
加工後、干渉沸酸溶液に20秒間浸し、次に純水20秒、2回浸し洗浄し、IPAに20秒浸し、PMMAの除去液であるRemover−PGに3分もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に1分30秒浸し、PMMA層を除去した。最後に乾かさずにIPAに3分間浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。IPAに浸した後自然乾燥させる。
【0187】
次に、架橋CNTマイクロ構造体の他の製造方法を詳述する。
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後、O2プラズマに300W、1分間暴露し基板を清浄化した。基板清浄化後上で、スピンコーターを用いてレジストZEP−520Aを4700rpmでスピンコートし、コート後150℃で3分間ベークした。電子線描画装置でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液ZED−N50/で現像し、ピラーとする部分以にマスクを形成した。マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部分に厚さ100nmのNi層をスパッタリング装置にて成膜した後、ストリップ液ZDMACでレジストを除去し、かつIPAでリンスし、表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板を得た。
【0188】
上記Ni層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板の両サイドを表面に酸化膜のない4インチのシリコン基板を二つに割ったそれぞれを配置し、CHF3を40sccm、SF6を60sccm、O2を55sccm同時にエッチングチェンバー内に流入し、放電出力100W、処理時間45分でエッチングを行い、所望のピラー構造体もしくはトレンチ構造体を得た(例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたピラー群や、頂面の面積を10μm×90μmとしたトレンチ群を作製した)。PTFE製のメンブレンフィルターを、X形のピンセットに把持し、3mm×1mm位のエリアが把持部意外に出来るよう加工した。載置高密度化工程で作製したCNTフィルム群から、実験に適切な厚みのカCNTフィルム(厚み4μmもしくは8μm)を選択する。
【0189】
Misterピンセットにて、上記で選択したCNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のMisterピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0190】
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にMisterピンセット毎CNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸し、CNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0191】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンフィルターを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する(CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する)。
【0192】
IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0193】
次に、FOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、ベークを行った。これを3回繰り返しレジスト層を形成した。そして、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて上記レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。
【0194】
これを下記加工工程の実施例と同様な条件を用い、上記レジスト毎CNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得た。加工後、干渉沸酸溶液に20秒間浸し、次に純水20秒、2回浸し洗浄し、IPAに20秒浸し、PMMAの除去液であるRemover−PGに3分もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に1分30秒浸し、PMMA層を除去した。最後に乾かさずにIPAに3分間浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。IPAに浸した後自然乾燥させる。
【0195】
以下CNTマイクロ構造体、架橋CNTマイクロ構造体を作成する際に用いるCNT膜のエッチングについて以下に述べる。
削りたい形状にマスクがカーボンナノチューブ上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで40秒乃至1分行う。場合により上記手順を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0196】
削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで7分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ。チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで3分行う。場合により上記手順を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0197】
次に、別の実施例を述べると、削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を76sccm、CHF3を4sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで1分行う。場合により上記操作を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0198】
さらに別の実施例を述べると、削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで40秒乃至1分行う。残渣除去のため、O2を76sccm、CHF3を4sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで1分行う。場合により上記操作を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0199】
次に、任意の基板上に形成されたCNT層を、基板から剥離して高密度配向CNT膜として得るための手法を以下に示す。
本発明によるCNT膜構造体は、CNT層とウエハ基板との接触部が一体化しており、通常の加工プロセスに対しては十分な密着力がある。しかしながら、高密度化工程で使用したようなCNTと親和性のある液体に浸し、さらに外力を加えることにより、CNT層を基板から剥離することができる。
【0200】
基板から剥離したCNT膜は、内部に液体を含んでいるが、フッ素系樹脂製の板材の上で乾燥させることにより、再度高密度化させることが可能である。
具体的には、実施例1の手法で得たCNT膜構造体を、緩衝沸酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業)に浸漬し、CNT層の接合面である基板表面の酸化膜を除去することにより、ウエハ基板からCNT層を剥離させた。そしてウエハ基板から剥がし取ったCNT層をフッ素系樹脂製の板材上で自然乾燥させ、高密度な配向CNT膜を得た。
【0201】
〔検証例1〕
本発明の高密度化工程における高密度化処理の前後での膜厚および重量密度の制御性を検証した結果を以下に示す。このための実験条件は、所望の厚さのCNTフィルムを所望の枚数得るために、化学気相成長工程に供する金属触媒膜の幅(高密度化前のCNTフィルムの厚さ)を、1μmを2セット、2μmを1セット、4μmを2セット、7.5μmを4セットと設定した。
【0202】
この結果について図18を参照して以下に説明する。図18(a)に示す通り、高密度化前の厚さ(元の厚さ)が7.5μmであったCNTフィルムは、高密度化後は平均0.5μm程度に収縮するのに対し、元の厚さが1、2、4μmのCNTフィルムは、高密度化後はそれぞれ0.2μm〜0.3μmに収縮した。これは、高密度化後は、元の厚さに応じて異なる密度となることを示唆している。
【0203】
他方、高密度化前のCNTフィルムは、重量が極めて小さいため、その重量密度の計測は困難である。そこで、高密度化前のCNTフィルムの重量密度を、線状のパターニングを施さずに金属触媒膜を全面に形成した基板から成長させたバルク状CNT集合体の密度をもって推定するものとした。
【0204】
ここでバルク状CNT集合体の密度は、重さ/体積で計算されるが、様々な条件の下で、バルク状CNT集合体の密度は一定となることが知られている(Don N. Futaba, et al, 84% Catalyst Activity of Water-Assisted Growth of Single Walled Carbon Nanotube Forest Characterization by a Statistical and Macroscopic Approach, Journal of Physical Chemistry B, 2006, vol. 110, p. 8035-8038を参照されたい) 。この参照文献には、バルク状CNT集合体の重量密度は、集合体の高さが200μmから1mmまでの範囲では一定の値(0.029g/cm3)であることが報告されている。つまりバルク状CNT集合体の成長と略同等の成長条件および触媒を用いて成長させたCNTフィルムの密度は、バルク状CNT集合体の密度と大きく相違しないものと推察できる。
【0205】
高密度化工程でのCNTフィルムの圧縮率を〈圧縮率=元の厚さ÷高密度化後の厚さ〉と定義すると、高密度化後のCNTフィルムの重量密度は、〈CNT密度=圧縮率×0.029g/cm3〉となる。これによって各厚さのCNTフィルムの高密度化後の重量密度を導出すると、図18(b)に示した関係となる。本検証例では、CNTフィルムの元の厚さを制御することにより、重量密度を0.11g/cm3から0.54g/cm3まで制御することができた。
【0206】
このようにして得られた重量密度が0.11g/cm3のCNTフィルムにおいても、基板との密着性が十分に保たれており、上述の各実施例と同様のパターニングが可能であった。これに対し、高密度化前のCNTフィルム(重量密度0.029g/cm3)の場合は、基板との密着性不足やレジストの侵食などにより、公知のエッチング、リソグラフィー技術の適応が実質的に不可能であった。
【0207】
本発明において制御可能なCNTフィルムの重量密度の上限は、本検証例に用いた0.54g/cm3に限定されない。本明細書では明記しないが、原理的には、CNTの直径を制御することによってさらに幅広い範囲での重量密度を実現することが可能である。すべてのCNTが等しい直径を有し、且つ高密度化工程によってすべてのCNTが最密充填されるものと仮定すると、CNTの直径寸法が小さくなるに従って高密度化後のCNT密度は増加することが容易に計算できる(図19を参照されたい)。上述した各実施例で用いたCNTフィルムにおけるCNTの平均直径は2.8nm程度であるが、この場合のCNTが最密充填したときの重量密度は、図19に示す通り、0.78g/cm3程度である。この点に関しては、すでに非特許文献(Ya-Qiong Xu, et al, Vertical Array Growth of Small Diameter Single-Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc., 128 (20), 6560 -6561, 2006)に報告されている技術を用いることにより、CNTの直径をより小さいもの(1.0nm程度)にすることは可能であることが分かっている。このことから、CNTの直径を小さくすることにより、最大1.5g/cm3程度までは重量密度を高めることが可能であると考えられる。
【0208】
〔検証例2〕
異方性の程度、換言すると配向性の度合いは、CNT薄膜の抵抗率を四端子法で計測することによって知ることができる。この四端子法は、例えば図20に示すように、幅が2μmの4つのAu電極7a〜7dを2μmの間隔をおいて配置してなる計測サイトにCNT薄膜5を載置して行う。
【0209】
本検証例における四端子法による抵抗率の計測は、図21に示すように、図20に示した計測サイトが6組設けられた計測基板を用意すると共に、CNTの配向方向(図21中に矢印で示す)に平行な向きと直交する向きとのそれぞれについて互いに異なる幅寸法(平行:1、2、5、10μm、直交:2、5μm)の計測部位をパターニングした厚さが306nm、重量密度が0.28g/cm3、平均直径が2.8nmのCNT薄膜と、厚さが835nm、重量密度が0.19g/cm3、平均直径が2.8nmのCNT薄膜とを用意し、各計測サイトの電極に対応するように、各CNT薄膜に形成された計測部位を計測基板の各電極上に配置して行った。
【0210】
表面抵抗と抵抗率とは、以下の関係式に基づいて計算される。
【数1】
但し、Rは抵抗(Ω)、Rsは表面抵抗(Ω/□)、ρは抵抗率(Ωcm)、Lは電極同士の間隔、tはCNT薄膜の厚さ、Wは計測部位の幅である。
【0211】
その結果、厚さ306nmのCNT薄膜の表面抵抗は82Ω/□、厚さ835nmのCNTフィルムの表面抵抗は296Ω/□であり、計測部位の幅による違いは殆ど無視し得る範囲であった。また図22に示した通り、厚さ306nmのCNT薄膜の抵抗率(■、●)は、配向方向に平行な向きについては0.009Ωcm、配向方向に直交する向きについては0.27Ωcmであり、厚さ835nmのCNT薄膜の抵抗率(□、○)は、配向方向に平行な向きについては0.007Ωcm、配向方向に直交する向きについては0.13Ωcmであり、異方性が確認された。平行と直交との比(異方性の程度)は、厚さ306nmのCNT薄膜が1:30、厚さ845nmのCNT薄膜が1:18であった。
【0212】
〔検証例3〕
厚さが450nm、CNTの重量密度が0.46g/cm3、CNTの平均直径が2.8nmのCNT薄膜について、ヘルマンの配向係数によって配向性を定量的に評価した。
図23は、平面基板に密着したCNT薄膜の表面の凹凸の程度が表わされるように画像処理された原子間力顕微鏡(AFM:Atomic force microscope)画像であり、図24は、このAFM画像を高速フーリエ変換(FFT)して各方向の凹凸の分布を周波数分布で表した平面画像である。
図23において、CNTが縦方向に延在していることが既に分かるが、これを各方向についての周波数分布で表した図24において、周波数分布の輪郭は、横軸を長軸とする扁平な楕円状をなしている。これはCNTが図23にて上下方向に配向していることを表している。そしてこの楕円が扁平であるほど配向性が高いことを表す。この配向性の程度は、ヘルマンの配向係数(HOF)で定量的に表現することができる。
HOFは、以下の式により定義される。
【0213】
【数2】
但し、φは試料の長手方向の方位と基準方位との間の角度、IはFFT画像から得られる強度プロフィルである。
【0214】
HOFにおいては、φ=0方向について完全配向ならばf=1となり、完全無配向ならばf=−0.5となる。
その結果、本実施例においては、f=0.57であった。
【0215】
なお、HOFについては、必要ならば以下の文献を参照されたい。
1.Klug, H. and Alexander, L.E., X-ray Diffraction Procedures, (2nd ed., John Wiley & Sons, Inc.,New York, 1974).
2.Lovell, R. and Mitchell, G.R., Acta Crystallogr A37, 135 (1981).
繊維などの配向性の評価法として、X線回折測定法が一般に知られているが、これは試料に対するX線の入射角度と回折強度との関係から算出するものであり、膜の平面に沿ってCNTが配向した薄膜の場合、厚さが極度に小さい試料では、配向方向に平行な方向からの入射に対する回折強度の計測が不能であった。それが本検証例によると、原子間力顕微鏡(AFM)による平面画像から高速フーリエ変換を用いて配向性を評価するので、厚さが極度に小さい薄膜でも容易に配向性を評価することができる。
【0216】
〔検証例4〕
透明なガラススライド上に置いた厚さ306nmと835nmの2つのCNT薄膜に対して640nmの波長の光を照射してCNT薄膜の透過率を計測した。その結果、それぞれ61.8%と16.7%の値を示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、複数のカーボンナノチューブがフィルム面内の一方向に連続して配向してなるカーボンナノチューブ層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ膜構造体及びカーボンナノチューブマイクロ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノテク分野におけるマイクロマシン(MEMS)用デバイスや電子デバイスの構成材料としてカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称する)を適用する機運が高まっている。このようなデバイスを実現するために、複数のCNTからなるフィルム状CNT集合体(以下、CNTフィルムとも称する)で構成されたCNT層を基板表面に被着したCNT膜構造体が要望されている。
【0003】
なお、本明細書において「カーボンナノチューブ(CNT)膜構造体」とは、基板上にCNT層が設けられたものを意味し、例えば電子デバイスやMEMS用デバイスのウエハとして使用されるものを指し、表面が平坦な基板のみならず、表面に凹凸を有する基板や、突出した構造部を有する基板の表層がCNTフィルムで覆われた3次元的なものをも包含する。また本明細書における「CNT集合体」とは、複数のCNT(例えば本数密度が
5×1011本/cm2以上)が層状または束状に集合した構造体を意味する。また本明細書で言う「CNTフィルム」とは、複数のCNTが薄膜状あるいは薄板状に集合したものを意味し、シート状、フォイル状、リボン状を含むものとする。
【0004】
従来、このようなCNT膜構造体を製造する技術として、基板の表面に段差を設け、段差の側壁から基板の表面と平行にCNTを成長させる技術、すなわち基板表面と平行に配向したCNT層を備えた膜構造体を、化学気相成長法(以下CVD法とも称す)を用いて製造する技術(特許文献1を参照されたい)や、スピンコート法でCNTの懸濁液を基板上に塗布することによってCNTからなる不織布を基板表面に被着する技術、つまり表面が平坦なCNT層を備えた膜構造体を製造する技術(特許文献2を参照されたい)が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のCNT膜構造体は、段差のついた基板を用いるため、CNT層の表面を平坦化することは実質的に不可能である。しかもその段差は、CNT層を形成するための段差であり、CNT膜構造体としては必要なものではない。このような段差は、むしろ配線の敷設を阻害するため、電子デバイスの製造が著しく困難になるといった問題がある。また、CNT層の形成過程において使用する基板(CNT合成用基板)と、膜構造体としての基板(ウエハ基板)とが同一であることが必要なため、任意の基板の任意の位置にCNT層を形成することは困難である上、CNT合成時の熱処理に耐えられる基板のみしかCNT膜構造体の製造に使用することはできない。さらに、このようにして形成されたCNT層は、一般に密度が低く(0.03g/cm3以下)ふわふわの状態であり、そのままではレジスト等の液剤がCNT同士間の隙間に浸み込んでしまうため、周知のパターニング技術やエッチング技術による成形加工が著しく困難である。
【0006】
他方、特許文献2に記載のCNT膜構造体では、所望の厚さのCNT層を得るためには、CNTの懸濁液を何度も塗り重ねる必要があり、製造工程が煩雑になりがちである。また複数のCNTを同一方向に配向させたCNT層には、電気的特性(例えば導電率)や光学的特性(例えば透過率)や機械的特性(例えば曲げ特性)などについて、CNTの配向方向とそれに直交する方向とで異なる特性、すなわち異方性を持たせることができるが、特許文献2に記載のCNT膜構造体では、その製法上、複数のCNTを同一方向に配向させる(異方性を与える)ことは困難である。
【0007】
複数の垂直配向CNTを基板上に合成した後、これを倒すことによって基板と平行にCNTを配向させる技術が特許文献3に提案されている。しかし特許文献3に記載のものは、バンドル化の防止を企図している(段落0048)ことに明らかな通り、複数のCNTを集合体化して用いる技術思想は認められない。またこれの場合も、周知のパターニング技術やエッチング技術による成形加工は実質的に不可能である。
【0008】
所定方向に配向したCNT集合体を高密度化して剛性を高める技術が特許文献4に提案されている。これによれば、低密度で強度が低いという従来のCNT集合体の問題は解決する。しかし特許文献4には、フィルム面に沿って複数のCNTが連続して配向したCNT層を形成することは示唆されていない。
【0009】
特許文献4においては、CNT集合体を液体に晒した後、配向方向に対して斜めの方向から平坦なプレート等を介して圧力を加え、これによってCNTを倒伏させる方法も考慮されている。しかしその場合、CNT集合体がプレートに貼りついたり、圧力に耐え切れずCNT集合体がダメージを受けたり、反り返りを生じたりするため、高密度で均一な厚さのCNT層を有するCNT膜構造体を得ることは困難である。さらに、膜の薄さとしても3μm〜20μmが限度である上に倒伏を伴うため、高さ寸法の大きいCNTを使用して薄膜を得ることは困難である。以上の理由から、特許文献4に記載のものは、高度な集積配置を要するMEMS用途には不適であった。
【0010】
また配向の点から言うと、特許文献4に記載されたCNT膜構造体は、基板から垂直配向したCNT集合体を斜めに圧伏してなり、圧伏処理の前後で基板上でのCNTの向きが外力によって強引に変更されている。つまり特許文献4に記載の技術は、圧力の加え具合が配向に大きく影響を与えるものであり、複数のCNTが高度に配向したCNT膜構造体を得ることは困難であった。
【0011】
仮に、単に基板上に垂直配向したCNT集合体(図1のaの状態)を液体に晒しても、図1のb、c、d(Nirupama Chakrapani et al, Capillarity-driven assembly of two dimensional cellular carbon nanotube foams, Proceedings of the National Academy of Sciences, 2004.3.23, vol. 101, p. 4009-4012を参照されたい)に示すように島状の形態となってしまい、CNTの配向方向が基板面と平行で且つ同じ方向を向いた均一な厚さのCNT層を形成することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−081622号公報
【特許文献2】特表2005−524000号公報
【特許文献3】特開2006−228818号公報
【特許文献4】特開2007−182352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上に挙げた各特許文献に見られる通り、従来は、高密度な配向CNT層を基板上に被着してなるCNT膜構造体を得る技術は皆無であった。そもそも、CNTの合成は高温雰囲気下で行われるために使用可能な基板が制限され、例えば、3次元構造(凹凸や何か別の構造物)を設けた基板上でCNTを合成しようとする技術思想自体が存在しなかった。つまり従来は、任意な基板の任意な位置に、任意な形状のCNT層を設けることは極めて困難であり、高密度な配向CNT膜構造体の製造は実質的に不可能であった。
【0014】
また、CVD法などで形成されたCNTフィルムは、一般にそのままの状態では重量密度が低いため、レジストなどの塗布が必要な周知の集積回路製造プロセスを適用することは不可能であった。
【0015】
また、CNTの配向性が低いか、あるいは全く配向していないCNT集合体によると、集合体中の個々のCNT同士の間隔が必然的に大きくなり、外力を加えるなどして圧縮しても充填密度が十分に高まらず(図2(a)を参照されたい)、所望の機械的特性を満足させられる一体性、固体性を得ることはできない。
【0016】
これらのことは、機械的動作を要するMEMS用途などにCNT膜構造体を供する上に大きな阻害要因となる。
【0017】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、フィルム面に沿って同じ方向に連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなる高品質なCNT膜構造体、つまり優れた物理特性を備える任意の形状のCNT膜と、任意の形状、材質の基板とを有するCNT膜構造体を提供することを主たる課題とする。
【0018】
また、本発明は、複数のCNTからなるCNT集合体で構成された異方性を有するCNT層を段差がない平坦な基板の表面に備えるCNT膜構造体、あるいは、突出した構造部や凹凸を備える基板の表面が異方性を有するCNT層で覆われている3次元的形状のCNT膜構造体を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、上記課題を解決するため、以下のCNT膜構造体及びCNTマイクロ構造体が提供される。
【0020】
〔1〕カーボンナノチューブ膜構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔2〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔3〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔4〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
凹凸を形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
凹凸上に両持ち梁又は片持ち梁にパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
〔5〕架橋カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板に形成されたピラーの高さ及び該ピラー上でカーボンナノチューブ膜が接する面積と間隔を制御して該ピラーに架橋して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする。
〔6〕カーボンナノチューブマイクロ構造体において、
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜とを備えることとする。
【発明の効果】
【0021】
上述の技術的手段ないし手法を採用した本発明によれば、フィルム面に沿って一方向に連続して配向した複数のCNTを高密度に充填してなり、且つ厚さが均一なフィルム状をなすCNT層を有するCNT膜構造体を容易に提供することが可能となり、課題の項で論じた諸問題を解決する上に多大な効果を奏することができる。
【0022】
このCNT膜構造体を構成する高度に配向したCNTフィルムは、上述のとおり、合成基板から取り外しても膜としての一体性を保持し得るほどに各CNT同士が強く結合している。つまり本発明により、合成基板からCNTフィルムを取り外し、他の任意の基板上に載置可能である、という従来技術に比して大きな転換点となる技術が得られる。この点について以下に説明する。
【0023】
液体を付着させたCNT集合体を乾燥させると高密度化が進む現象は、個々のCNTに付着した液体が蒸発する際の表面張力によって互いに隣接するCNT同士がくっつき合うことで起こるものと考えられる。つまりCNT集合体をフィルム状にし、その配向方向をウエハ基板の表面と平行にして高密度化処理を施すと、ウエハ基板の表面に沿っての個々のCNTの移動がCNTフィルムとウエハ基板との密着力によって制限されるのみならず、CNTフィルムの側部からなされる液体の蒸発が専ら高さ方向に表面張力を発生させることによってもCNTフィルムの収縮方向がウエハ基板に垂直な方向の1次元上に規定される。これらより、CNTフィルムは厚さ方向のみに均一に高密度化されるので、合成基板から垂直に成長したバルク状のCNT集合体に高密度化処理を施した際の島状に収縮するという問題が起こらない。
【0024】
すなわち、合成基板とは別のウエハ基板上にCNTフィルムを載置してそれに高密度化処理を施す本発明によれば、厚さ方向のみに高密度化が進み、重量密度が十分に高く且つフィルム面に沿って高度に配向したCNTフィルムが得られるため、任意の基板上の任意の位置に高密度なCNT層を設けたCNT膜構造体を作製することができる。
【0025】
このCNT膜構造体は、CNT層を形成する各CNT同士が密に結集(充填)していることから、個体としての一体性を維持することが可能であると共に、レジストの塗布が可能であるので(重量密度が0.1g/cm3のCNT層において確認)、周知の集積回路製造プロセス技術の適用が可能となる。この結果、従来はCNTの存在する場所に応じてCNTに対する加工工程を行っていたのに対し、任意の場所を予め設定してのデバイス作製が可能になるので、設計が容易になり、より一層の集積化が期待できる。さらには熱履歴のない基板を使用できるので、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路を形成するためのウエハとして、様々な応用分野への適用を企図し得る。
【0026】
また本発明によれば、凹凸を有する基板や、突出した構造物が設けられた基板上に、上記と同様のCNT層を備えた任意の3次元形状の膜構造体を容易に提供することができる。この膜構造体は、上記と同様に、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能なため、MEMS用途において必須の中空構造や3次元構造を、周知の集積回路製造プロセスを用いて作製することが可能になる。特に、3次元構造のMEMSデバイスの物理特性は、その形状に依存するため、所望の3次元形状が形成可能なことは、所望の物理特性を備えるMEMSデバイスの形成が可能となることを意味する。すなわち本発明により、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路の作製に好適に用いることができるウエハを提供することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、フィルム面内の一方向に複数のCNTが配向した高密度なCNT薄膜を容易に提供することができる。このCNT薄膜は、上記と同様な物性を備えており、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能なため、集積回路製造プロセスとの親和性が高められ、電子デバイスやMEMSデバイス、あるいは電子回路を形成するためのウエハの作製に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、バルク状CNT集合体を液体に晒した時の様子示す図であり、(a)は基板上に垂直配向したバルク状CNT集合体を示し、(b)、(c)、(d)は高密度化して島状の形態となった様子を異なる倍率で示す。
【図2】図2は、高密度化時のCNTの配向の重要性を模式的に示す説明図であり、(a)無配向のものであり、(b)は配向のものである。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るCNT膜構造体を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明のCNT膜構造体に適用されるCNTフィルムを示す図であり、(a)は光学顕微鏡写真像であり、(b)はその一部をさらに拡大した電子顕微鏡(TEM)写真像である。
【図5】図5は、CNTの積層法を例示する説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、液体に浸す前のCNTフィルムの様子を示す電子顕微鏡(SEM)写真像である。
【図9】図9は、本発明により作製されたCNT膜構造体の一例を示す電子顕微鏡写真像である。
【図10】図10は、薄膜の配向の様子を示す図であり、(a)は高密度化前の薄膜の原子間力顕微鏡(AFM)画像であり、(b)は高密度化後の薄膜のAFM画像であり、(c)は高密度化後の薄膜のラマンGバンド強度依存性を表すグラフである。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態に係るCNT膜構造体の製造工程の一部を模式的に示す説明図である。
【図12】図12は、本発明の実施例においてCNTフィルムの作製に用いたCVD装置を模式的に示す構成図である。
【図13】図13は、CNT膜構造体の構造の一実施例を示す斜視図であり、(a)は全体図であり、(b)は部分図であり、(c)は複数のピラーが設けられたウエハ基板であり、(d)はピラー頂部に合わせた格子状パターンをCNT層に施した様子である。
【図14】図14は、ピラーを異なる形状のものとしたCNT膜構造体の構造の別例を示す斜視図であり、(a)はパターニング前の様子であり、(b)はパターニング後の様子である。
【図15】図15は、3つ一組のピラーを複数組有するウエハ基板をCNT層で覆って3次元膜構造体とした斜視図であり、(a)はCNT層を設ける前の様子であり、(b)はCNT層を設けた後の様子であり、(c)は(b)を異なる倍率で示した様子であり、(d)はピラー頂部に合わせた直線状パターンをCNT層に施した様子である。
【図16】図16は、CNT膜構造体の構造の別例を示す斜視図であり、(a)は基板上に敷き詰めた複数の犠牲層を覆うようにCNT薄膜を載置してパターニングしたものであり、(b)は犠牲層を除去して中空構造を形成したものである。
【図17】図17は、2つのCNTフィルムを重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像であり、(a)は配向方向を平面上で直交させたものを示す、(b)は配向方向を同一にしたものを示す。
【図18】図18は、高密度化前後の変化を表すグラフであり、(a)はCNTフィルムの元の厚さと高密度化後の厚さとの関係であり、(b)はCNTフィルムの元の厚さと高密度化後の密度との関係である。
【図19】図19は、CNTの直径寸法と高密度化後の密度との関係を表すグラフである。
【図20】図20は、CNT層の抵抗率測定法を概念的に示す構成図である。
【図21】図21は、パターニングされたCNT層を抵抗率測定基板上に配置した様子を示す平面図である。
【図22】図22は、試料の幅と抵抗率との関係を示すグラフである。
【図23】図23は、平面基板に密着したCNT層の表面の凹凸の程度が表わされるように画像処理された原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【図24】図24は、図23のAFM画像を高速フーリエ変換して各方向の凹凸の分布を周波数分布で表した平面画像である。
【図25】図25は、CNTマイクロ構造体の製造方法の説明図である。
【図26】図26は、架橋CNTマイクロ構造体の製造方法の説明図である。
【図27】図27は、CNT載置法の説明図である。
【図28】図28は、CNT載置法の説明図である。
【図29】図29は、CNT載置法の説明図である。
【図30】図30は、CNT載置法の説明図である。
【図31】図31は、犠牲層を設けないでCNTマイクロ構造体を製造する方法を説明する図である。
【図32】図32は、犠牲層を設けてCNTマイクロ構造体を製造する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
<CNT膜構造体>
本発明の一実施形態に係るCNT膜構造体の基本構造を、図3の模式的断面図に示す。本実施形態のCNT膜構造体1は、CVD法によるCNTの合成に用いた合成用基板とは別のウエハ基板2の表面に、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向する複数のCNTの集合体を高密度化してなるCNT層3を被着して構成される。なお、ケースによっては、合成用基板をそのままウエハ基板2として用いてもよい。また、CNT層3は1枚又は複数枚のCNTフィルムを用いて形成することができる。
【0031】
CNT層3を構成する複数のCNTは、互いに隣り合うCNT同士がファン・デア・ワールス力によって強く結合しており、CNT層3におけるCNTの重量密度は、一般には0.1〜1.5g/cm3、より好ましくは0.2〜1.5g/cm3である。このように、CNT層3におけるCNTの重量密度が上記の下限値以上であると、均一に且つ隙間なくCNTが充填され、CNT層3が固体としてのリジッドな様相を呈し、所要の機械的強度(剛性、曲げ特性等)が得られるようになる。この逆に、CNTの重量密度が上記の値に満たないと、CNT層3を構成するCNT同士間に有意な隙間が発生する。そのため、CNT層3がリジッドな固体ではなくなり、所要の機械的強度が得られなくなることはもとより、例えばレジスト等の液剤を塗布しようとしても、CNT同士間の隙間に液剤が浸み込んでしまうので、周知のパターニング技術やエッチング技術の適応が困難となる。ここでCNT層3におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限から、その上限値は1.5g/cm3程度である。
【0032】
また、本発明において、CNT層3は、ヘルマンの配向係数(Herman’s orientation Factor)が0.6以上、より好ましくは0.7以上であることが高密度化の観点から望ましい。
【0033】
CNT層3の厚さは、CNT膜構造体1の用途に応じてその望ましい値を任意に設定することができる。これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。膜厚の上限値に格別な制限はないが、このような電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0034】
CNT層3が上記のような密度及び厚さであると、例えばCNT層3上にレジストを塗布し、リソグラフィーでレジストに任意のパターンを描き、レジストをマスクとしてCNT層3の不用部分をエッチングし、任意形状の回路あるいはデバイスを形成することが容易に実行可能となる。すなわちこれによれば、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能となり、集積回路製造プロセスとの親和性が高まる。
【0035】
CNT層3を構成するCNTは、単層であってもよいし、多層であってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT膜構造体1の用途等に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0036】
さらに、本発明のCNT膜構造体1のCNT層3は、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向する複数のCNTからなるCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。
【0037】
本発明のCNT膜構造体1は、化学気相成長工程(後に詳述する)において所望の厚さのCNTフィルムを合成し、これを高密度化して所望の厚さのCNT層3を形成することで作製してもよいし、化学気相成長工程において複数のCNTフィルムを合成し、これらを積層しながら高密度化し、所望の厚さのCNT層3を形成することで作製してもよい。前者の場合は、1枚のCNTフィルムによって目的とする密度のCNT層3が得られる利点があり、後者の場合は、複数のCNTフィルムを、配向方向を同じくして積層することもでき、また配向方向を異ならせて積層することもでき、多様にラミネートされたCNT層3が得られる利点がある。
【0038】
本発明のCNT膜構造体1に適用されるCNTフィルムの一例を図4に示す。図4の(a)は光学顕微鏡写真像であり、図4の(b)は電子顕微鏡(TEM)写真像である。このCNTフィルムが優れた配向性を有していることが本図から観察できる。
【0039】
CNTフィルムの積層例を図5に示す。複数のCNTフィルムを、その配向方向を同じくして積層した場合、重ねる枚数の設定により、CNT層3の厚さを容易に制御し得る利点がある。また、その配向方向を互いに異ならせて複数のCNTフィルムを積層した場合、厚さの制御が容易な点に加え、方向性が互いに異なる複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることが可能となる。
【0040】
本発明のCNT膜構造体1は、CNT層3の領域がウエハ基板2上に1つ形成されてもよいし、また複数形成されていてもよいし、さらにそれらの領域が互いに離間した形態として形成されていてもよい。
【0041】
さらに本発明によれば、CNT膜構造体1のウエハ基板2からCNT層3を剥離してCNT薄膜を作製することもできる。CNT層3の剥離方法としては、CNT膜構造体1を適宜な溶液中に浸漬し、ピンセット等の適宜な把持具で剥離する等の方法を用いることができる。
【0042】
複数枚のCNTフィルムを載置、高密度化する際には、基板表面上に液体の表面張力で基板の法線方向に収縮するだけでなく、一部のCNTフィルムが基板表面で反り返り高密度化することがあるため、次のことを考慮する。
(A1)複数枚のCNTフィルムを積層する場合、1枚目のCNTフィルムを設けたマイクロ構造体が2枚目のCNTフィルムを載置する際に、掃かれてしまうことがないようにすること。
(A2)例えば2枚目以降のCNTフィルムとして、厚みが8μmのものを用いた場合、高密度化に使用する液体によっては、2枚目以降のCNTフィルムが反り返ることがあるので、そのような状態となることを防止すること。
【0043】
上記A1の点については、CNTフィルムの厚みを20μmと薄くするとともに、CNTフィルムの積層数を実体顕微鏡で数えることで対処することができる。
【0044】
また、上記A2の点については、観察に用いる実体顕微鏡の照明の強度を、固化乾燥する直前に照明強度を最大から最小に変化させることで問題解消が可能となる。これは、実体顕微鏡の照度を調整することにより、CNTフィルムの乾燥状態が制御され、反り返りを抑制できているものと推認される。
【0045】
また、ピンセットで把持したCNTフィルムを、針がついたマニュピュレーターの針先に移し、同様に針のついたマニュピュレーターとともに、所望の位置、所望の配向で、マニュピュレーターを制御しながら、配置し、マニュピュレーターで押さえ、その後、高密度化に用いる溶液を滴下し、固化させることも好ましい。その際、反り返りのより効果的な防止を行うには、特に高密度化のための溶液として、メタノールを使用することが好ましい。このようにすると、下地にすでにCNTマイクロ構造体があった場合であっても、そのCNTマイクロ構造体のCNTフィルムを掃くことなく、2層目以降のCNTフィルムを容易に載置することができる。マニュピュレーターは乾燥後に外せばよい。このような方法は、厚みが4μm以下のCNTフィルムを扱う場合に効果的である。
【0046】
なお、本明細書において、CNTの配向状態とは、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.6以上、好ましくは0.7以上のものを言う。載置されるCNT膜構造体は、前記Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)は高密度化処理の如何に関わらず、0.6以上、好ましくは0.7以上であればよい。
【0047】
CNT膜構造体の位置を制御された状態とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域を、前記CNT膜構造体が載置されている状態を指す。さらに、CNT膜構造体の配向を制御された状態とは、CNT膜構造体が必要とする配向方向を許容可能な範囲で向いている状態を指す。CNT膜構造体に反り返りがない状態とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域を、前記CNT膜構造体が載置されている状態を指す。
【0048】
CNT層3を構成するCNTは、単層CNTであってもよいし、多層CNTであってもよい。いずれの種類のCNTを用いるかは、CNT膜構造体1の用途等に応じて決めることができ、例えば、高い導電性や可撓性などが要求される場合には単層CNTを用いることができ、剛性や金属的性質などが重視される場合には多層CNTを用いることができる。
【0049】
本実施形態におけるCNT膜構造体1のCNT層3は、複数のCNTがフィルム面内の一方向に配向し且つ高密度化したCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。また、本実施形態におけるCNT膜構造体1のCNT層3を、その配向方向が互いに異なる複数枚のCNTフィルムを積層して形成するものとすれば、複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることができる。
【0050】
次に、CNTマイクロ構造体について述べる。ここで、「CNTマイクロ構造体」とは、パターニングし加工されたCNT膜構造体のことを指す。
【0051】
CNTマイクロ構造体を作成する方法について述べると、先ず、図25(a)に示すように、CNT膜構造体11にレジスト膜12を塗布する。レジスト膜11は、電子線レジスト、フォトレジスト等、形状を構築するレジストであれば任意のものを使用することができ、また、CNTに対してエッチングの選択比が低いものであっても、選択比以上にCNT膜構造体11よりも十分に厚いレジストを形成すればよい。
【0052】
次に、CNT膜構造体11の上に塗布したレジスト膜12に対し、レジスト膜12の性質に合わせた描画(例えば電子線描画や、フォトリソグラフィー)を行い、CNTマイクロ構造体11として構築したい所望の形状のレジスト膜12Aを描画する(図25(b))。
【0053】
次に、描画したレジストを現像し、CNT膜構造体11の上にレジストマスク13を形成する(図25(c))。そして、CNT膜構造体11に対してエッチングを行い、レジストマスク13を用いて、所望した形状にCNT膜構造体11を加工する(図6(d))。CNT膜構造体11を加工した後、レジストマスク13を除去し、所望の形状のCNTマイクロ構造体を得る(図25(e))。
【0054】
本発明において、CNT膜をパターニングする場合、次のことを考慮する必要がある。
(B1)高密度化したCNTフィルムでも、例えばエッチングの選択比の稼げるシリカ系のレジストHSQ(hydrogen silsesquioxane)(FOX16:日本ゼオン社製)を均一に塗布できないことがある。また、HSQレジストの再現性を得るのが難しいことがある。
(B2)配向の異なるCNTフィルムのマイクロ構造体を、一つの基板内に構築できることが望まれる。
【0055】
これに対して、本発明者らの検討の結果、HSQを塗布する前に、希釈したポリメチルメタクリレート(PMMA)もしくはレジスト(ZEP520A/日本ゼオン)を塗布固化してCNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布することにより、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防ぐことができる。
【0056】
また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することによりマスクを形成するとよい。さらに、HSQを不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で扱い、レジスト塗布時のみ必要場量だけ空気中に暴露して使用することも有効である。また、後述の載置、高密度化工程(転写)を行うことが好ましい。
【0057】
<立体CNTマイクロ構造体>
次に、本発明の別の実施形態に係る立体CNTマイクロ構造体について述べる。このCNTマイクロ構造体は、凸状構造物等を有するウエハ基板を用いて形成する。このウエハ基板の製造手順は図11に示すとおりである。
【0058】
本実施形態のCNT膜構造体21は、凸状構造物として複数のピラー23がその表面に形成されたウエハ基板22に、膜面内の一方向に複数のCNTが配向し且つ高密度化したCNT層24を被着してなるものであり、このCNT層24により、互いに異なる平面上(ウエハ基板の一般面とピラーの頂面)に置かれた2つの平面が形成されている。
【0059】
このような構造のものを作製する場合、次のことを考慮する必要がある。
(C1)凹凸にCNTフィルムを高密度化して載置する際、凹凸の形状によっては(具体的には、突起物であるピラーの高さと、間隔により)凹凸上に張るようにして載置されるCNTフィルムが破れることがある。
(C2)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルム、特にピラー間に張られたCNTフィルムに、レジストマスクとして利用するHSQ液体を塗布する際、突起物の上に張られたCNTフィルムの下側にHSQ液体が不均一に流れ、電子ビームによるマスク形成工程を行うことが困難となることがある。
(C3)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルムにおいて、特に段差を覆っている箇所では、レジストの塗布が十分行えず、マスク形成が困難となることがある。
(C4)プロセス最終段階で、溶液の処理が終わり、乾燥させる際に、乾燥方法によっては、構築した構造が崩壊してしまう。すなわち、立体構造が崩れたり、基板上に設計配置したCNT構造体の位置をずれてしまうことがある。
【0060】
上記C1に対しては、突起物であるピラーの高さや、ピラー上でCNTフィルムが接している面積、間隔をコントロールすることによりCNT破れが解消される。
【0061】
また、上記C2については、HSQを塗布する前に、希釈したPMMAを塗布固化させ、CNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布することにより、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防止できる。また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することによりマスクを形成することが望ましい。
【0062】
上記C3については、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTが接している面積と間隔のコントロールと、上記の2種類のレジスト塗布法を併用することにより問題解消ができる。
【0063】
上記C4に対しては、例えば高密度化にIPAを使用し、IPAの自然乾燥を用いることにより問題解消ができる。水溶液、特に水から乾燥させると、水分が蒸発する際にその表面張力により、立体構造を破壊(中空部分を基板にくっつけてしまう)したり、CNTフィルムが基板から動いたり、設計した構造体配置を狂わせてしまうことがある。また、アセトンを用いた場合も、その気化熱によりサンプルを冷却し、結露を引き起こし、水を用いて乾燥させた場合と同じ条件になるため、IPAやメタノールの使用が好ましい。また、上記乾燥方法の他に、IPAを用い、CO2による超臨界乾燥手法を用いることも有効である。
【0064】
<架橋CNTマイクロ構造体>
次に、本発明の別の実施形態に係る架橋CNTマイクロ構造体について述べる。この架橋CNTマイクロ構造体は、立体CNT膜構造体のCNT膜を所定のパターンに形成することにより得られる。
【0065】
本実施形態の架橋CNTマイクロ構造体を作製する方法を、図26を用いて説明する。
図26(a)に示すように、基板26を常法によりパターニングし、基板26のエッチング条件に耐性を持つマスク27を設ける。次に、基板31に対し所定のエッチング条件でエッチングを行い、所望の凹凸形状を形成する。また、上記のプロセスを経ないで図26(b)に示す形状を有する基板を用いてもよい。次に、図26(c)に示すように、凹凸形状を有する基板26上にCNT層28を形成し、CNT膜構造体を作製する。
【0066】
その後、図26(d)に示すように、凹凸形状の上に形成されたCNT層の上に,レジスト塗布を行い、基板26の凸状形態を架橋するような位置と形状で、前記CNT膜構造体の上にレジストマスク29を構築する。その後、CNT層28のエッチングを行い、レジストマスク29で所望した位置、形状に架橋CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図26(e))。そして、図26(f)に示すように、レジストマスク29を除去し、所望の位置に所望の形状で架橋CNTマイクロ構造体を得る。
【0067】
本発明の架橋CNTマイクロ構造体において、CNT層のパターニングを行う場合、次のことを考慮する必要がある。
(D1)凹凸にCNTフィルムを高密度化して載置する際、凹凸の形状により(具体的には、突起物であるピラーの高さと、間隔により)凹凸上に張るようにして載置されるCNT膜構造体が破れたり、たわむことがあるため、これを防止する。
(D2)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルム、特にピラー間に張られたCNTフィルムに、レジストマスクとして利用するHSQ液体を塗布する際、突起物の上に張られたCNTフィルムの下側にHSQ液体が不均一に流れ、電子ビームによるマスク形成工程を行うことが困難となることがある。
(D3)凹凸に載置した高密度化したCNTフィルムで、特に段差を覆っている箇所のCNTフィルムにおいて、レジストの塗布が十分行えず、マスク形成が困難となることがある。
(D4)プロセス最終段階で、溶液の処理が終わり、乾燥させる際に、乾燥方法により構築した構造が崩落したり剥離してしまう問題がある。すなわち、架橋構造が崩れたり、突起物上に設計配置した架橋CNTマイクロ構造体の位置がずれてしまうことがある。
【0068】
上記D1に対しては、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTフィルムが接している面積、間隔をコントロールすることによりCNT破れとたわみの問題解消ができる。
【0069】
上記D2に対しては、HSQを塗布する前に、希釈したPMMAを塗布固化させ、CNTフィルム上に膜を形成し、その上にHSQを塗布して、CNTフィルムの下側へのHSQの流入を防止することができる。また、HSQを2度もしくは3度塗布し、CNTフィルム内及びその下側に十分にしみこませ、載置したCNTフィルムの上側にマスクを形成するに十分なHSQを供給することにより、マスクを形成することが望ましい。
【0070】
上記D3に対しては、突起物であるピラーの高さ、ピラー上でCNTフィルムが接している面積と間隔のコントロールと、上記の2種類のレジスト塗布法を併用すること問題解消ができる。
【0071】
上記D4に対しては、例えば高密度化にIPAを使用し、IPAの自然乾燥を用いることにより問題解消ができる。水溶液、特に水から乾燥させると、水分が蒸発する際にその表面張力により、立体構造を破壊(中空部分を基板にくっつけてしまう)したり、CNTフィルムが基板から動いたりし、設計した構造体配置を狂わせてしまうことがある。また、アセトンを用いた場合も、その気化熱によりサンプルを冷却し、結露を引き起こし、水を用いて乾燥させた場合と同じ条件になるため、IPAやメタノールの使用が好ましい。また、上記乾燥方法の他に、IPAを用い、CO2の超臨界乾燥手法を用いることも有効である。
【0072】
本実施形態におけるCNT膜構造体のCNT層は、複数のCNTがフィルム面内の一方向に配向し且つ高密度化したCNTフィルムで構成されているため、配向方向とそれに直交する方向とで電気的特性や光学的特性や機械的特性の異方性を持たせることができる。また、本実施形態におけるCNT膜構造体のCNT層を、その配向方向が互いに異なる複数枚のCNTフィルムを積層して形成するものとすれば、複数の異方性を持たせたり、異方性を任意に制御したりすることができる。
【0073】
次に、CNT膜のエッチングについて述べると、CNT膜を例えば、O2による反応性イオンエッチング(RIE)で加工する際、焼き切れない毛羽だった残渣が残ることがある(O2プラズマに対するCと何らかの元素の不動態と推認される)。これに対しては、O2とArを用いたRIE、もしくはO2とCHF3を用いたRIE、もしくはこれら3つのRIE条件を組み合わせて加工を行うと効果的である。
【0074】
次に、本発明で使用するCVD装置について説明する。
本発明におけるCNT膜構造体の製造に用いたCVD装置の一例について、より具体的に説明する。このCVD装置31は、図12に示す通り、金属触媒を担持した合成用基板11を受容する石英ガラスからなる管状の反応チャンバ32(チューブ炉;型式:KTF030(直径30mm、加熱長36cm)/製造:光洋リンドバーグ株式会社)と、反応チャンバ32を外囲するように設けられた加熱コイル33と、原料ガスタンク34、触媒賦活物質タンク35、雰囲気ガスタンク36、並びに還元ガスタンク38内の各ガスを反応チャンバ32に供給すべく、反応チャンバ32の一端に接続された2つのガス供給管37、39(SUS304:内径4.35mm)と、反応チャンバ32の他端に接続されたガス排出管40(SUS304:内径4.35mm)とからなっている。また非常に微量の触媒賦活物質を高精度に制御して供給するために、原料ガスタンク34並びに雰囲気ガスタンク36付近の管路には、酸化物質を除去するための純化装置(図示せず)が付設されている。
【0075】
反応チャンバ32内の下方位置には、触媒被膜形成面11aを上方へ向けた状態の合成用基板11を保持した基板ホルダ41が設けられ、その上方には、複数の噴出孔を均一な密度で分散配置してなるシャワーヘッド42が設けられている。このシャワーヘッド42には、第1ガス供給管37の下流端が接続されており、その噴出孔は、基板ホルダ41に載置された合成用基板11の触媒被膜形成11aを臨む位置に設けられている。また各噴出孔は、その噴射軸線が合成基板2の触媒被膜形成面11aに直交する向きとなるように設けられる。つまりシャワーヘッド42に設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、合成基板11の触媒被膜形成面11aに概ね直交するようにされている。
【0076】
両ガス供給管37、39並びにガス排出管40の適所には、逆止弁、流量制御弁、および流量センサ等が設けられており、図示されていない制御装置からの制御信号によって各流量制御弁を適宜に開閉制御することにより、所定流量の原料ガス、触媒賦活物質、キャリアガス、並びに還元ガスが、2つのガス供給管37、39の両方、或いはいずれか一方から、反応プロセスに応じて連続的に或いは間欠的に反応チャンバ32内に供給される。
なお、触媒賦活物質の供給経路には、別のキャリアガス供給部(図示省略)が付設されており、触媒賦活物質は、例えばヘリウム等のキャリアガスと共に供給される。
【0077】
このように構成されたCVD装置31によれば、第1ガス供給管37を経てシャワーヘッド42の噴出孔から合成用基板11の触媒被膜形成面11aに各ガスをシャワーのように吹きかけて、或いは第2ガス供給管39の開口から反応チャンバ32内に各ガスを送り込んで、或いは2つのガス供給管37、39の両方から反応チャンバ32内に各ガスを送り込んで、合成用基板11の触媒被膜形成面11aに複数のCNTを成長させることができる。なお、複数のCNTの金属触媒からの成長方向は、合成用基板11の触媒膜形成面11aに対して垂直方向が一般的であるが、実質的に一定方向でありさえすれば、その角度に特別な規定はない。
【0078】
ここで、CNT膜構造体を作製する方法を、具体例により説明する。
CNT合成基板としてシリコンウエハ;20mm×20mmを用い、その上に厚さ600nmの酸化膜付金属触媒(存在量)としてFe;厚さ1nm/Al2O3;厚さ35nm、幅2μm×長さ1.5mmをスパッタリング蒸着にて成膜した。成膜条件は次のとおりである。
原料ガス:エチレン;供給速度20sccm
雰囲気ガス:ヘリウム;供給速度100sccm
圧力1大気圧
触媒賦活物質:水蒸気(存在量);9ppm
還元ガス:水素;供給速度900sccm
反応温度:750℃
反応時間:20分
シャワーヘッド:(表面サイズ:60.0mm×16.7mm、噴出孔径:0.4mm、噴出孔数:17行×6列等間隔)
【0079】
各弁は、初期状態では、58が開放、51から57が遮断されているものとする。
シャワーヘッド42を、基板11の上方に、触媒被膜形成面11aから6mm離間させて配置した。
【0080】
反応チャンバ32内を750℃に加熱した後、750℃の状態を維持しつつ弁53、54、57を開放し、第2供給管39から反応チャンバ32内に雰囲気ガス(100sccm)と還元ガス(900sccm)との混合ガス(トータル供給速度1000sccm)を送り込んだ。
【0081】
そこへ別工程のスパッタリング蒸着法によって触媒被膜を予め成膜した合成基板11を、基板ホルダ41に載置した状態で搬入し、反応チャンバ32の軸線方向の中心よりも3cm下流側に配置し、所定時間(6分)経過させた。これらの作業により、触媒被膜形成面11aの金属触媒が微粒子化され、単層CNTの成長用触媒として適合した状態に調整される。
【0082】
次に、弁57を遮断して第2供給管39からのガスの供給を止めると同時に、弁54を遮断して還元ガスの供給を止めた。
弁57、54の遮断と同時に、雰囲気ガスの供給速度を85sccmに低下させ、弁51、52、55、56を同時に開放することにより、原料ガス(供給速度10sccm)と、キャリアガス(ヘリウム)に混合された触媒賦活物質(相対湿度23%;供給速度5sccm)とを、第1ガス供給管37から雰囲気ガスと共に送り込み、これらをシャワーヘッド42の噴出孔から基板11の触媒被膜形成面11aに20分間吹きかけた。
【0083】
以上により、触媒微粒子にて原料ガスが熱分解してCNTが合成され、合成基板11上の金属触媒から垂直に成長した複数のCNTからなるCNTフィルムが得られる。本実施例では、幅2μm、長さ1.5mm(金属触媒パターンに応じた寸法である)、高さ900μmのCNTフィルムが得られた。
【0084】
本実施例によって製造される、単層CNTの配向集合体であるCNTフィルム及び後述する配向CNTフィルム群の特性は、製造条件の詳細に依存するが、前記実施例の製造条件では、典型値として、密度:0.03g/cm3、BET−比表面積:1200m2/g、平均外径:2.5nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%、ヘルマンの配向係数0.6であった。また、CNTフィルムは、基板から剥離した後でも、その一体性を保持できる。
【0085】
次に、CNTフィルム付きの合成用基板11を実体顕微鏡の視野に入るようにセットし、顕微鏡で観察しながら、CNTフィルム12を合成用基板11からピンセットで直接取り外した(図7)。
【0086】
次に、合成用基板11とは別の例えばシリコン製のウエハ基板を用意し、市販のパスツールピペットを用いてイソプロピルアルコール(以下、IPAと記す)をウエハ基板2上に滴下して液溜まりを作り、これを実体顕微鏡の視野下に置いた(CNTフィルム取り外し工程で使用する実体顕微鏡に、合成用基板11とウエハ基板2とを同時にセットしてもよい)。そして、CNTフィルム取り外し工程でピンセットに把持したCNTフィルム12を、フィルム面がウエハ基板面と平行となるようにしてIPA中に浸漬させた。この際、位置、形態の微調整にはピンセットにつけたPTFE蘆紙を用いて行った。
【0087】
次に、CNTフィルム12を浸したIPAを自然乾燥によって蒸発させた。この乾燥に要した時間は5分であった。
【0088】
この高密度化工程により、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚さ:2μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、厚さ:190nm、幅:1.5mm、長さ:900μmのCNT層(図7の符号3)となった。この際の収縮率は9.5%であった。
【0089】
本実施例におけるCNT層3は、厚さ:190nm、CNTの重量密度:0.3g/cm3、CNTの本数密度:4.3×1012本/cm2、ビッカース硬度:7Hv、比表面積:1000m2/g、純度:99.98質量%であった。
【0090】
CNTフィルム12を浸漬する液体を、IPA以外のアルコール類、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、DMFに変更しても、同様の実施結果が得られた。
【0091】
なお、合成用基板11からのCNTフィルム12の取り外し作業は、ピンセットで直接でも、ピンセットにPTFE濾紙を取り付けたものでも、同様に行うことができ、結果物に差は生じなかった。
【0092】
次に本発明のCNT膜構造体についてさらに詳述する。
CNT膜構造体とは、CNTフィルムの面に沿って同じ方向に連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ集合体のことを言い、重量密度は0.1g/cm3以上1.5g/cm3以下である。重量密度が当該範囲以下の場合では、パターニングのためのレジストがCNT集合体の間をとおりぬけてしまう。好ましくは、前記基板から、当該膜構造体の部分的な浮きや、裂け、破れの原因となるしわと、基板の放線方向以外の方向へのカーボンナノチューブフィルムの高密度化や、CNT膜構造体へのレジスト塗布時にCNT膜構造体の折り返りの原因となる、反り返りを抑止した処理が施されたものが望ましい。
【0093】
「高密度化された状態のCNTの配向状態」とは、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.6以上、好ましくは0.7以上のものを言う。載置されるCNT膜構造体は、前記Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)は高密度化処理の如何に関わらず、0.6以上、好ましくは0.7以上であればよい。
【0094】
「CNT膜構造体の位置を制御された状態」とは、CNT膜構造体が必要とする基板上の所望領域に、CNTフィルムが載置されている状態を指す。また、「CNT膜構造体の配向を制御された状態」とは、CNT膜構造体が必要とする配向方向を許容可能な範囲で向いている状態を指す。さらに、「CNT膜構造体に反り返りがない状態」とは、CNT膜構造体を必要とする基板上の所望領域に、CNTフィルムの各CNTが上下方向の許容範囲内にある状態を指す。
【0095】
本発明に係るCNT膜構造体を製造する方法について、その製造工程を示すブロック図(図6)と図7を参照して詳しく説明する。
【0096】
先ず、化学気相成長工程(図6、7のステップS1)において、CNTフィルムを作製する。本実施形態では、触媒賦活物質として水分などを反応雰囲気中に存在させて多量の垂直配向CNTを成長させる方法(Kenji Hata et al, Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes, SCIENCE, 2004.11.19, vol. 306, p. 1362-1364を参照されたい)を適用してCNTフィルムを作製した。
【0097】
CVD法においてCNTを成長させる金属触媒は、これまでCNTの製造に使用された実績のある適宜な金属を用い、周知の成膜技術を用いて形成することができる。典型的には、マスクを用いたスパッタリング蒸着法で成膜した金属薄膜、例えば鉄薄膜、塩化鉄薄膜、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜等を例示することができる。
【0098】
金属触媒を担持する合成基板としては、従来周知の各種の材料を用いることができ、典型的には、鉄、ニッケル、クロムなどの金属及び金属の酸化物や、シリコン、石英、ガラスなどの非金属、あるいはセラミックスからなる表面が平坦なシート材あるいは板材などを使用することができる。
【0099】
金属触媒パターンの形状としては、1本の連続した直線状パターンとしてもよいし、一方向に沿って複数本を並べた破線状パターンとしてもよい。また金属触媒の膜厚は、触媒として用いる金属に応じた最適値に設定すればよく、例えば、鉄金属を用いた場合には、0.1nm以上100nm以下が好ましい。そしてその幅は、最終的に基板2に被着されるCNT層3の所要厚さに応じて設定すればよく、高密度化後におけるCNT層3の厚さの5〜20倍程度の値に設定すればよい。
【0100】
触媒をパターニングするとCNTの成長が悪くなる。触媒パターン形状がラインパターンだと、ラインが細くなるに従って、成長が悪くなり(高さがとれない)、高さの不均一性も増え、周りが生えなくなって真ん中だけ生える等の問題があった。
【0101】
この問題解決のために、鉄触媒を通常よりも厚めに積層した(1.2乃至2nm位)。エチレンのチューニング(エチレンを減らす。10sccm)初めは、20sccmだったのを10sccmに減らして成長させ、それに併せてシビアにXをチューニングした。
ここで金属触媒パターンの幅によって決定されるCNTフィルムの厚さは、高密度化後のCNT層の厚さのみならず、高密度化後のCNT層の重量密度をも制御するという点で重要である。高密度化前(合成直後)のCNT膜厚(元の厚さ)を制御することにより、CNTの重量密度を0.11g/cm3から0.54g/cm3まで制御可能である(元の厚さと高密度化後の厚さおよび密度との関係については後に詳述する)。
【0102】
CVD法における原料炭素源としての炭素化合物としては、従来と同様に、炭化水素、なかでも低級炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン等が好適なものとして使用可能である。
【0103】
反応の雰囲気ガスは、CNTと反応せず、成長温度で不活性であればよく、そのようなものとしては、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、ネオン、クリプトン、二酸化炭素、塩
素等や、これらの混合気体が例示できる。
【0104】
原料ガスと共に合成基板の金属触媒膜に接触させる触媒賦活物質としては、CNTの合成中に触媒微粒子に付着して触媒を失活させる炭素系不純物を触媒面から除去して触媒の地肌を清浄化する作用を持つ物質であれば何でもよく、一般には酸素を含み、成長温度でCNTにダメージを与えない物質であればよく、水蒸気の他に、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン等のケトン類、アルデヒド類、酸、エステル類、酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物の使用も反応条件に応じて許容される。
【0105】
原料ガスの供給に先立って、雰囲気ガスに還元ガスを混入し、これを金属触媒膜に所定時間接触させるとよい。これにより、金属触媒膜に存在する金属触媒が微粒子化され、例えば単層CNTの成長に適合した状態に金属触媒が調整される。ここで適切な金属触媒膜の厚さ並びに還元反応条件を選択することにより、直径数ナノメートルの触媒微粒子を、1.0×1011〜1.0×1013(個/cm2)の密度に調整可能である。この密度は、基板の触媒膜形成面に直交する向きに配向した複数のCNTを成長させるのに好適である。なお、還元ガスとしては、金属触媒に作用してCNTの成長に適合した状態の微粒子化を促進し得るガスであればよく、例えば水素ガス並びにアンモニアや、これらの混合ガスが使用可能である。
【0106】
反応の雰囲気圧力は、これまでCNTが製造された圧力範囲であれば適用可能であり、例えば102Pa〜107Paの範囲の適切な値に設定することができる。
【0107】
CVD法における成長反応時の温度は、反応圧力、金属触媒、原料炭素源等を考慮することにより適宜定められるが、通常、400〜1200℃、より好ましくは600〜1000℃の範囲であるとCNTを良好に成長させることができる。
【0108】
このようにして基板上に合成されたCNTフィルムの様子を図8の電子顕微鏡(SEM)写真像に示す。このCNTフィルムを構成するCNTは、純度98質量%以上、重量密度0.029g/cm3程度、比表面積600〜1300m3(未開口)/1600〜2500m3(開口)であった。
【0109】
本発明では、上記文献に記載された製造方法以外の製造方法を利用することができる。垂直配向のCNT集合体を得る技術としては、例えば、”Growth of vertically aligned single-walled carbon nanotube films on quartz substrates and their optical anisotropy”(Y.Murakami et al, Chemical Physics Letters 385(2004)298-303)、あるいは”Ultra-high-yield growth of vertical single-walled carbon nanotubes: Hidden roles of hydrogen and oxygen”(Guangyu Zhang et al, PNAS November 8, 2005, vol.102, no.45, 16141-16145)なども知られている。
【0110】
次のCNTフィルム取り外し工程(図6、7のステップS2)においては、合成用基板11に形成されたCNTフィルム12を合成用基板11から取り外すが、この工程は、合成基板11に形成されたCNTフィルム12をピンセットで把持して直接取り外す方法や、合成樹脂製のメンブレンをピンセットの先端に貼り付けておき、このメンブレンにCNTフィルム12を貼りつかせて取り外す方法を、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことによって実現することができる。メンブレンを用いる方法を採ると、CNTフィルム12との接触面積が増えるので、CNTフィルム12が掴み易くなり、微細な作業の際に作業者の手の震えなどが操作に与える影響を少なくすることができる。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、上記の利点を有するものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0111】
取り外し工程において、密集したCNTフィルム群から、CNTを取り出すことが困難なことがある。また、取り出したCNTフィルムを1枚ごとに分けることが困難なことがある。
【0112】
このため、実体顕微鏡とメンブレンフィルターを用い、実体顕微鏡下で観察しながら、メンブレンフィルターにてCNTフィルムをつけ、CNTフィルム群からCNTを取り出すことにより問題解消が可能となる。また、メンブレンフィルターで取り出したCNTは、1枚の時もあれば、複数枚ある時もあるが、本発明によれば、メンブレンフィルターで1枚ごとの取り出しが可能となった。
さらに、実体顕微鏡とピンセット及び、合成するCNTフィルムの厚みを2μm以上とすると、ピンセットでCNTフィルム1枚を取り出すことが可能となる。
【0113】
次の載置工程(図6、7のステップS3)においては、取り外し工程で取り外したCNTフィルム12をウエハ基板2上に載置し、且つCNTフィルム12を液体に晒すが、この工程にも、状況に応じて実施者が適宜に選ぶことができる複数通りの実現方法がある。
【0114】
第一は、取り外し工程で取り外したCNTフィルム12を、液体が予め滴下されたウエハ基板2の上に移動させてピンセットから離す。その後、メンブレンのついたピンセットでCNTフィルム12を液体中の任意の位置に合わせる、という方法である。
【0115】
第二は、CNTフィルム12をウエハ基板2の上に移動させてピンセット13から離した後、ウエハ基板2上のCNTフィルム12が浸るように液体を滴下し、メンブレンのついたピンセットで液体中のCNTフィルム12の位置合わせを行う、という方法である。
【0116】
なお、ここでは1枚のCNTフィルム12をウエハ基板2の上に載置する例を示したが、前述のように複数のCNTフィルム12を重ねて載置するようにしてもよい。また、CNTフィルム12を液体に晒すのはウエハ基板2以外の場所としても構わない。
【0117】
ここでCNTフィルム12を晒す液体としては、CNTと親和性があり、蒸発後に残留する成分がないものを使用することが好ましい。そのような液体としては、例えば水、アルコール類(イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール)、アセトン類(アセトン)、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、DMF(ジメチルホルムアミド)等を用いることができる。また液体に晒す時間としては、CNTフィルムの内部に気泡が残らずに全体が満遍なく濡れるのに十分な時間であればよい。
【0118】
次の高密度化工程(図6、7のステップS4)においては、液体に晒してウエハ基板2の表面に載置した状態にあるCNTフィルム12を高密度化し、ウエハ基板2の表面に被着したCNT層3を形成する。この工程は、典型的には、液体が付着したCNTフィルム12を乾燥させることで行う。CNTフィルム12を乾燥させる手法としては、たとえば室温窒素雰囲気下での自然乾燥、真空引き乾燥、アルゴン等の不活性ガス存在下での加熱などを用いることができる。
【0119】
高密度化工程において、高密度化する際に溶液に浸したカーボンナノチューブフィルムもしくはカーボンナノチューブを扱うピンセット、カーボンナノチューブフィルムを扱っているメンブレンに泡が生じると、高密度化する際にシワができることがある。また、高密度化する際にCNTフィルムを所望の方向に合わせるのが難しいことがある。さらに、高密度化乾燥する際に溶媒が高密度化したCNTフィルム内に残ることがあった。これについては、CNTフィルムの厚みを20μm以下に薄くするとともに、の積層数を実体顕微鏡で数えることにより問題解消ができる。また20μm以下の厚みのCNTフィルムでも反り返りが起こる場合は、観察に用いる顕微鏡の照明の強度を、乾燥する直前に照明強度を最大から最小に変化させることにより問題解消ができる。CNTフィルムの乾燥状態が制御され反り返りを抑制できているものと推認される。また、高密度化に用いる基板上に載せた溶液に、CNTフィルム、もしくはCNTフィルムを扱うピンセット、CNTフィルムを扱っているメンブレンを十分に浸し、実体顕微鏡にて観察し、泡が生じないようにすることができる。さらに、ピンセットの先に、メンブレンフィルターを把持して、CNTフィルム同様基板上の溶液に浸し、顕微鏡でCNTフィルムの配向方向を観察しながら、ピンセットすなわちメンブレンフィルターを操作し、溶液中でCNTフィルムを動かすことにより、所望の位置、所望の配向に配置することができる。さらに、ピンセットで把持したCNTフィルムを、位置制御が可能な先端を有するマニュピュレーターに移し、マニュピュレーターにて所望の位置、所望の配向で、CNTフィルムを制御して配置し、マニュピュレーターで基板上に押さえ、その後、高密度化に用いる液体を滴下することにより、高密度化を行うことができる。位置制御が可能な先端として、タングステンのような高度を有する針状もしくは棒状の先端でも良く、または樹脂のような柔軟性のある先端でも良い。さらには、ピンセットのような端可能な治具を先端として利用しても良い。また、反り返りを効果的に防止できる高密度化に用いる溶液として好適には、メタノールが使用されるが、ケースバイケースで判断する。
【0120】
乾燥の際は、顕微鏡の照明強度を乾燥直前に最大から最小に変化させ、乾燥させることにより、所望の一方向にCNTの配向をあわせることが可能となる。またこの方法により、下地にすでにマイクロ構造体があった場合も、そのマイクロ構造体のCNTフィルムを掃くことなく、2層目以降のCNTフィルムを載置することが可能となる。マニュピュレーターは乾燥後外せばよい。また、次のプロセスで使う前に、真空中180℃で10分間保持する手法も好ましい。
【0121】
CNTフィルム12は、液体に浸されると、各CNT同士が密着して全体の体積が少し収縮し、液体が蒸発するときに密着度がより一層高まって体積がかなり収縮し、結果として高密度化したCNT層3が形成される。このとき、ウエハ基板2との接触抵抗により、ウエハ基板2と平行な面の面積収縮はほとんど無く、専らCNT層3の厚さ方向に収縮する。
【0122】
以上の各工程を経ることにより、ウエハ基板2の表面と平行な一方向に配向した高密度なCNT層3が被着されたCNT膜構造体1が完成する。このようにして製造されたCNT膜構造体1の一例を図9の電子顕微鏡(SEM)写真像に示す。このようにして得られたCNT層3は、図10のbに示すように、合成基板11から取り外した直後のCNTフィルム12(図10(a))に比して高密度化によってもその配向性が損なわれることはない。この高密度化後のCNT層3が十分に異方性を有していることは、図10のcに示したラマンGバンド強度依存性の測定結果を見ても分かる。
【0123】
上記の高密度化工程は、CNTフィルム12を液体に晒した後に乾燥させる手法としたが、高密度化工程においてCNTフィルム12が収縮するメカニズムは、上述した通り、各CNT同士間に入り込んだ液体の表面張力によって各CNT同士が引き寄せられ、液体が蒸発した後も各CNT同士のくっついた状態が維持されるからであると推定される。従って、高密度化工程は、CNT同士間に表面張力を生じさせる手法であればよく、例えば高温蒸気などを用いる手法を適用することができる。
【0124】
さらに図27、図28を用いてCNT膜構造体の作成方法を詳述する(カーボンナノチューブフィルム1層のみ)。
【0125】
先ず、図27を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体の作成方法を詳述する。
CNT成長工程(a)
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の集団で成長させたCNTフィルム群を成長させる。
【0126】
CNTフィルム取り外し工程(b)
合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。そして上記処理をしたメンブレンを、選択したCNTフィルム群の一番端にあるCNTフィルムに当て、CNTフィルムをメンブレンに移す。所望の厚みが得られない場合は、とったCNTフィルムを両面テープにつけ、メンブレンから剥がし、また上記操作を繰り返す。
【0127】
CNTフィルムの載置、固定工程(c、d)
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にメンブレンごとカーボナノチューブフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸す。IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンを動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する。CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する。IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、CNTフィルム表面を観察し、溶液が蒸発しCNTの表面が見えるまで乾燥させる。
【0128】
乾燥工程(e)
乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180度で10分間乾燥を行う。
次に、図28を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体の他の作成方法を詳述する。
【0129】
CNT成長工程(a)
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の集団で成長させたCNTフィルム群(1つの群は全て同じ厚み、同じ間隔のCNTフィルムにする。)を成長させる。
合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0130】
CNTフィルム取り外し工程(b)
上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。ピンセットにて、CNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚さ2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のピンセットを駆使して、1枚のみを取り出す)。
【0131】
次に、載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にCNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で把持したピンセットごと浸しCNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0132】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する。CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する。
【0133】
IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、CNTフィルム表面を観察し、溶液が蒸発しCNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。
【0134】
乾燥工程
乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0135】
次に、図28を用いてCNTフィルム1層のみのCNT膜構造体のさらに他の作成方法を詳述する
【0136】
基板上に、厚み8μm、4μm、2μm、1μmもしくは0.5μm、幅1.5mm(触媒塗布エリア)、高さ500μm(CNTの軸方向)程度の配向CNTフィルムを、各厚みにおいて1枚以上の手段で成長させたCNTフィルム群(1つの群は全て同じ厚み、同じ間隔のCNTフィルムにする。)を成長させる。
【0137】
そして、合成樹脂製のメンブレンを、ピンセットに把持もしくは貼り付けておき、メンブレンを加工する。好適には、加工したメンブレンが、CNTフィルムに接触させたとき、十分な接触面積を稼げればよく、CNTフィルムより大きくても小さくてもよい。この場合、メンブレンとしてPTFE濾紙を好適に用いることができるが、接触した際に、CNTフィルムを貼り付かせることが出来るものであれば、PTFE濾紙以外でも使用可能である。
【0138】
上記CNTフィルム群から実験に適切な厚みのCNTフィルムを選択する。そして、ピンセットにて、上記CNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0139】
次に、固い針を有したマニュピュレーターの針先に上記でとったCNTフィルムを移す。上記のマニュピュレーターの他に、柔らかい針先を有するマニュピュレーターを用い、二つのマニュピュレーターを操作して、CNTフィルムを基板上の所望の位置に所望の配向で載置する。載置の際、CNTフィルムを両端を基板にマニュピュレーターの二つの針でおさえる。この際、針を強く押さえつけてCNTフィルムを破らないように、基板を針につける前に、基板と針とが接する点を調整し、接点以上に針が基板を押さない様に事前に調整をしておく。
【0140】
上記で所望の位置、所望の配向で基板上に二つの針で押さえつけたCNTフィルムの上から、メタノールをパスツールピペットにて一滴滴下し、顕微鏡で表面を観察しながら高密度化を行う。顕微鏡で表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。
【0141】
乾燥が終了後、CNTフィルムを押さえつけている二つの針を上に上げて押さえつけを外す。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0142】
上記実施例における金属触媒の幅を4μmとし、それ以外は上記実施例と同様にして合成基板11の上に垂直配向のCNTフィルム12を作製した。そして、上記実施例と同様の工程を経てCNT膜構造体1を作製した。これによると、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚さ:4μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、高密度化工程後のCNT層3は、厚さ:250nm、幅:1.5mm、長さ:900μmとなり、収縮率は6.3%であり、重量密度は0.47g/cm3であった。
【0143】
次に、上記実施例における金属触媒の幅を7.5μmとし、それ以外は上記実施例と同様にして合成基板11の上に垂直配向のCNTフィルム12を作製した。そして、上記実施例と同様の工程を経てCNT膜構造体1を作製した。これによると、液体浸漬前のCNTフィルム12が、厚み:7.5μm、幅:1.5mm、長さ:900μmであったのが、高密度化工程後のCNT層3は、厚さ:470nm、幅:1.5mm、長さ:900μmとなり、収縮率は6.3%であり、重量密度は0.47g/cm3であった。
【0144】
さらに、複数のCNT層をウエハ基板上に積層してなるCNT膜構造体の製造方法を以下に記載する。
金属触媒膜の幅を8μmとしたこと以外は実施例1同様にして合成基板に垂直配向のCNTフィルムを形成した。そして、実施例1と同様にして載置工程及び高密度化工程を経て1層目のCNT層を有するCNT膜構造体を製造した。さらに、このCNT膜構造体に実施例1と同様にしてIPAの液溜まりを形成し、その中に1層目のCNT層の配向方向と直交する向き、あるいは同じ向きに2枚目のCNTフィルムを浸漬して自然乾燥させた。図17(a)は、2つのCNTフィルムをその配向方向を互いに直交させて重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像であり、図17(b)は、2つのCNTフィルムをその配向方向を同一にして重ね合わせた様子を示す電子顕微鏡写真像である。なお、図17(b)の中央に黒く見える左右に走る線は重ね合わせの継ぎ目である。
【0145】
液体に浸す前のCNTフィルムの厚さは、1枚目が8μm、2枚目が8μm、高密度化後のCNT層の厚さは、1層目が574nm、2層目が580nm、その収縮率は、1層目が7.2%、2層目が7.3%、その重量密度は、1層目が0.41g/cm3、2層目が0.41g/cm3であった。
【0146】
以下本発明のCNTマイクロ構造体について詳述する。
CNTマイクロ構造体とは、所望の位置、所望の大きさに、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着してなるカーボンナノチューブ集合体。前記集合体のHerman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)が0.7以上のものを言う。所望の位置とは、任意の基板上でCNTの機能を必要とする位置に施設した状態を指し、所望の大きさとは、前記機能発現に必要な大きさを指す。CNTの機能とは、CNTが持つ特性利用した機能であり、電気特性、機械特性、磁気特性、ガス吸着特性がこれに当たる。これ以外でも、CNTが有する特性に関するものであればこれに当たる。
【0147】
以下にCNTマイクロ構造体を図29、図30を用いて詳述する。
上述したCNT膜構造体の製造方法を用い1層目のCNT膜構造体を製造する。CNT膜構造体の乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。レジストPMMA495を希釈液にて重量換算で5倍希釈した液を塗布し、4700rpmで1分間スピンコートを行い、180℃で1分間ベークし、副レジスト層を形成させた。これにより2層目の主レジストが高密度化したCNTフィルムに浸み込むことを抑制した。副レジスト層は、2層目の主レジスト層がCNT膜構造体に、染み込むことを抑制する機能を有しかつ、CNT膜構造体と同等にエッチング出来る材料であれば何でもよく、例えば、ZEP−520AやAZP−1357でも良い。希釈液は、副レジスト層として使うレジストを希釈可能であれば何でもよく、希釈量も、2層目の主レジストが描画できる範囲であれば、希釈量、塗布方法、ベーク条件は問わない。
【0148】
2層目の主レジストとして、さらにFOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、360nmのレジスト層を形成した。
【0149】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にてレジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。これを下記CNTエッチング工程の条件を用い、レジスト毎にCNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得、1つめの配向を有した1層目のCNTマイクロ構造体を構築した。
【0150】
以上の工程で得られたCNTマイクロ構造体もしくは、同様の構造を有するCNTマイクロ構造体の上に、前述CNT膜構造体の製造方法の前記実施例で用いた方法により、2層目のCNT膜構造体を製造した。
【0151】
2層目のCNT膜構造体に対して、上記と同様の手順を用い、2つめの配向を有する2層目のCNTマイクロ構造体を加工した(この間1層目のCNTマイクロ構造体は、その上にあるマスクによって、2層目のCNTが加工される間も保護される)。
【0152】
加工後、緩衝沸酸溶液にFOX16の層が除去できるまで浸し、次に純水、IPAと浸し、PMMAの除去液であるRemover−PG、もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に、残留したPMMA層が除去できるまで浸す。最後にIPAに浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。
IPAに浸した後自然乾燥させ、2つ以上の配向を有するCNTマイクロ構造体を構築する。
【0153】
次に、本発明の立体CNTマイクロ構造体について詳述する。
立体CNTマイクロ構造体とは、所望の位置、所望の大きさに、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層を基板上に被着している面と連続した箇所が、被着面以外にある箇所を有するCNT集合体のことを言う。
【0154】
上記立体CNTマイクロ構造体の配向は、同一平面内にある立体CNTマイクロ構造体の中の少なくとも一部が、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)で0.6以上、より好ましくは0.7以上のものを言う。
【0155】
以下に立体CNTマイクロ構造体の製造方法を詳述する。
先ず、Siからなるウエハ基板22上にNiのマスク26を設け(図11(a))、次に、例えばO2/Ar反応性イオンエッチングによってウエハ基板22を垂直方向にエッチングし、例えば3つのピラー23を形成する(図11(b))。その後、第1の実施形態で述べた化学気相成長工程(ステップS1)、CNTフィルム取り外し工程(ステップS2)、載置工程(ステップS3)、高密度化工程(ステップS4)を経て、目的の3次元CNT膜構造体21が得られる(図11(c))。
【0156】
次に、図31を用いて犠牲層無しに立体CNTマイクロ構造体を製造する方法を詳述する。
図31(左上)のように、基板に常法でパターニングし、基板のエッチング条件に耐性を持つマスクを付ける。次に基板を所定のエッチング条件でエッチングし、任意の凹凸形状を有する基板を作製する。前記プロセスを経ないで形状を有する基板を利用してもよい。(図31の真ん中上)。凹凸形状を有する基板上にCNT膜構造体を形成する(図31(右上))。上記凹凸形状の上に形成されたCNT膜構造体の上に,レジスト塗布を行い、基板の凹凸状にある、前記CNT膜構造体の上にレジストマスクを立体CNTマイクロ構造体として得たい立体形状の上に、所望の形状で構築する(図31(右下))。次に、CNTのエッチングを行い、レジストマスクで所望した位置、形状に立体CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図31(真ん中下))。CNT膜構造体を加工した後、レジストマスクを除去し、所望の位置に所望の形状で立体CNTマイクロ構造体を得る(図31(左下))。
【0157】
本発明は、予め定められた立体形状部を有するウエハ基板に適用することも可能である。以下にその実施例を示す。
<ピラー形成工程>
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後にO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、スピンコーター(1H−D7/ミカサ)を用いたスピンコート法でレジスト(ZEP−520A/日本ゼオン)を塗布し、150℃で3分間ベークした。
【0158】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液(ZED−N50/日本ゼオン)で現像し、ピラーとする部分以外にマスクを形成した。その後、マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部位に厚さ100nmのNi層をスパッタリング蒸着した後、ストリップ液(ZDMAC/日本ゼオン)でレジストを除去し、かつIPAでリンスした。このようにして表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板が得られた。
【0159】
このNi層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置(RIE−00L/サムコ)にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板に、CHF3、SF6及びO2の混合ガス(CHF3:100W,8.5Pa,40sccm,45min/SF6:100W,8.5Pa,60sccm,45min/O2:100W,8.5Pa,55sccm,45min)を供給し、縦横に配列された複数のピラー23が形成されたウエハ基板22を得た。
【0160】
ピラー群の例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたものを図13(d)に示す。また、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を10μm、手前側に位置するピラー群のピラーの頂面の面積を:10μm×30μm、奥側に位置するピラー群のピラーの頂面の面積を:10μm×90μmとしたものを図14(a)に示す。またピラーの高さを3μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたものを図15(a)に示す。
【0161】
<化学気相成長工程><載置工程><高密度化工程>
別工程で作製したCNTフィルム12をメンブレン付きピンセットを用いて合成基板11から取り外し、上記のようなピラー群が形成された各ウエハ基板22の表面に載置し、それをIPAに満遍なく晒し、大気中で5分間自然乾燥させた後、真空引きしながら180℃で10分間ベークしてさらに乾燥させた。これにより、CNTフィルムが高密度化すると共にウエハ基板22の表面に密着し、高密度化したCNT層24が表層に形成されたCNT膜構造体21を得た。ここでウエハ基板22の表面に残ったNi層が、CNT層の密着性をより一層高める作用をなす。CNT層24は、互いに隣り合うピラー同士間を架橋する両持ち梁の長手方向についてCNTが配向しており、重量密度:0.48g/cm3、厚さ:250nm、全面積:110μm×110μmであった。
図13(a)(b)(c)、図14(a)、図15(b)(c)は、それぞれウエハ基板22にCNT層24が被着された様子である。
【0162】
<パターニング工程>
ピラー23、すなわち予め定められた立体形状部を備えたウエハ基板22にCNT層24を被着してなるCNT膜構造体21は、周知のパターニング技術を利用して加工することができる。
【0163】
このCNT膜構造体21を加工するに当たっては、先ず、CNT層24の表面に1層目のレジスト(重量比で5倍に希釈した495 PMMA A11/マイクロケム)をスピンコート法(4700rpm、1分間)で塗布し、ホットプレート上でベーク(180℃、1分間)し、80nmの副レジスト層を形成した。これにより2層目の主レジストがCNT層24に浸み込むことを抑制し得る。
【0164】
次に2層目の主レジスト(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート法(4500rpm、1分間)で副レジスト層上に塗布し、ホットプレート上でベーク(90℃、10分間)し、360nmの主レジスト層を形成した。
【0165】
次に、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて主レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA-100/日本ゼオン)で現像してマスクを形成した。この作業によって2層目に塗布した主レジスト層のみに所定パターンが形成される。
【0166】
これを反応性イオンエッチング装置(RIE−200L/サムコ)にて、先ず、O2(10sccm、80W、10Pa、7min)を、次に、O2及びAr(10sccm、80W、10Pa、3min)を供給し、1層目の副レジスト層およびCNT層24のマスクから露出している部分、すなわち不用部分を除去した。ここでArを導入することにより、CNTのケバがきれいに除去され、シャープなエッジが得られた。
【0167】
最後に、2層目の主レジスト層を緩衝弗酸(110−BHF(4.7%HF,36.2%NH4F,59.1%H2O)/森田化学工業)を用いて除去し、且つ純水でリンスした後、1層目の副レジスト層を剥離液(PG/マイクロケム)で除去し、且つIPAで洗浄して自然乾燥させることにより、目的物が得られた。
【0168】
図13(e)は、ピラー頂部に合わせて幅1μmの格子状パターンを形成した例であり、図14(b)は、互いに隣接したピラーの頂面同士に架橋した幅が5μmの直線ビーム(梁)状パターンを形成した例であり、図15(d)は、ピラーの頂面同士とウエハ基板の一般面とを連続的に結ぶ直線状パターンを形成した例である。
【0169】
なお、ピラー形成工程並びにパターニング工程で用いる液剤や機材は、上記実施例に限るものではない。またピラーの寸法も適宜に設定可能である。
【0170】
次に、図32を用いて犠牲層を設けてCNTマイクロ構造体を製造する方法を詳述する。
図32(左上)の様に、任意の基板を用意する。図32(真ん中上)のように、何らかの処理により除去が可能なレジスト等の物質で、形状パターンを構築する。もしくは前記プロセスを経ないで、何らかの処理により除去可能な物質で予め凹凸形状を有した基板を利用してもよい。次に、何らかの処理により除去可能な物質で凹凸形状を有する基板上にCNT膜構造体を形成する(図32(右上))。上記凹凸形状の上に形成されたCNT膜構造体の上に,レジスト塗布を行い、基板の凹凸状にある、前記CNT膜構造体の上にレジストマスクを立体CNTマイクロ構造体として得たい立体形状の上に、所望の形状で構築する(図32(右下))。
【0171】
次に、CNTのエッチングを行い、レジストマスクで所望した位置、形状に立体CNTマイクロ構造体を構築するよう、CNT膜構造体を加工する(図32(真ん中下))。CNT膜構造体を加工した後、レジストマスク及びCNTの下にある除去可能な物質で構築してある凹凸を除去し、所望の位置に所望の形状で立体CNTマイクロ構造体を得る(図32(左下))。
【0172】
本実施形態においては、ウエハ基板22をエッチングして凸状構造物としてのピラー23を形成するものとしたが、本発明においては、載置工程(ステップS3)の前に所定形状の犠牲層をウエハ基板に形成し、高密度化工程(ステップS4)の後にその犠牲層を除去することにより、CNT層の3次元的な形状制御を行うこともできる。その場合は、例えばHSQ(hydrogen silsesquioxane)を用いて犠牲層を形成し、緩衝弗酸を用いて犠牲層を除去することができるが、これに限定されない。
【0173】
犠牲層によって凹凸を形成し、高密度化されたCNT層を作成する方法を詳述する。
CNT膜の形成後に犠牲層を除去することにより、CNT層の形状を任意の3次元構造に制御することも可能である。例えば、厚さ200nmのSi3N4層を有するシリコン基板を用意し、その表面をIPAで超音波洗浄し、且つO2プラズマを300Wで1分間照射して清浄化した上で、150℃で10分間ベークして脱水する。これにHSQ(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート(4500rpm、1分間)で塗布し、且つ250℃で2分間ベークして470nmのレジスト層を形成した。これに電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%ZTMA−100/日本ゼオン)で現像することにより、所定パターンに対応した形状の犠牲層を得ることができる。
【0174】
この犠牲層付きウエハ基板上に高密度化されたCNT層を形成し、それに例えば犠牲層に対応した形状をパターニングすることができる。このパターニング手法としては、レジスト(FOX16/ダウコーニング)をスピンコート法(4500rpm、1分間)でCNT層上に塗布し、90℃で10分間ベークして厚さ360nmのレジスト層を形成した後、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にてレジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%ZTMA−100/日本ゼオン)で現像してマスクを形成する。これを反応性イオンエッチング装置(RIE-200L/サムコ)にてO2及びAr(O2/Ar=10sccm/10sccm、80W,10Pa,2min)を供給し、CNT層のマスクから露出した部分、すなわち不用部分を除去した。そしてレジスト層は、50%弗酸の蒸気に25分間さらすドライエッチング法にて除去した。
【0175】
図16(a)は、長さ5μm、幅1μmの複数の犠牲層を基板上に敷き詰め、犠牲層を覆うようにCNTフィルムを載置し、矩形パターンをパターニングしたものである。
犠牲層(FOX16/ダウコーニング)は、緩衝弗酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業)で除去し、且つIPAで洗浄する。その後、IPA中に浸されたCNT層及び犠牲層付き基板を、超臨界乾燥装置(隆祥産業製)を用いて二酸化炭素で超臨界乾燥を施すことにより、3次元構造を有するCNT層を形成することができる。図16(b)は、図16(a)に示された犠牲層を除去して中空構造を形成したものである。
【0176】
本実施形態においても、CNT層24を構成する複数のCNTは、互いに隣り合うCNT同士がファン・デア・ワールス力によって強く結合しており、その重量密度は、0.1g/cm3以上、より好ましくは0.2g/cm3以上である。CNT層24におけるCNTの重量密度が上記の下限値以上であると、CNT層24が固体としてのリジッドな様相を呈し、所要の機械的強度(剛性、曲げ特性等)が得られるようになる。CNT層24におけるCNTの重量密度は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、製造上の制限から、その上限値は1.5g/cm3程度である。
【0177】
CNT層24の厚さは、CNT膜構造体21の用途に応じてその望ましい値を任意に設定することができる。これが10nm以上であると、膜としての一体性を保持できるようになると共に、電子デバイスやMEMS用デバイスに用いる物品としての機能を発揮する上に要する導電性が得られるようになる。膜厚の上限値に格別な制限はないが、このような電子デバイスやMEMS用デバイスに利用する場合は、100nm〜50μm程度の範囲が好ましい。
【0178】
CNT層24が上記のような密度及び厚さであると、例えばCNT層24上にレジストを塗布し、リソグラフィーでレジストに任意のパターンを描き、レジストをマスクとしてCNT層24の不用部分をエッチングし、任意形状の立体的回路あるいは立体的デバイスを形成することが容易に実行可能となる。すなわちこれによれば、周知のパターニング技術やエッチング技術の適用が可能となり、集積回路製造プロセスとの親和性が高まる。
【0179】
以下本発明の架橋CNTマイクロ構造体について詳述する。
架橋CNTマイクロ構造体とは、連続して配向した複数のCNTからなり且つ高密度で均一な厚さを有するCNT層が、任意の基板のある面と同一もしくは異なる面を、ある間隔をもって架橋しているCNT集合体のことを言う。前記架橋CNTマイクロ構造体の配向は、同一平面内にある立体CNTマイクロ構造体の中の少なくとも一部が、Herman’s Orientation Factor(ヘルマンの配向係数)で0.6以上、より好ましくは0.7以上のものを言う。
【0180】
以下に架橋CNTマイクロ構造体の製造方法を図26を用いて詳述する。
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後、O2プラズマに300W、1分間暴露し基板を清浄化した。基板清浄化後上で、スピンコーターを用いてレジストZEP−520Aを4700rpmでスピンコートし、コート後150℃で3分間ベークした。電子線描画装置でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液ZED−N50/で現像し、ピラーとする部分以にマスクを形成した。マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部分に厚さ100nmのNi層をスパッタリング装置にて成膜した後、ストリップ液ZDMACでレジストを除去し、かつIPAでリンスし、表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板を得た。上記Ni層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板の両サイドを表面に酸化膜のない4インチのシリコン基板を二つに割ったそれぞれを配置し、CHF3を40sccm、SF6を60sccm、O2を55sccm同時にエッチングチェンバー内に流入し、放電出力100W、処理時間45分でエッチングを行い、所望のピラー構造体もしくはトレンチ構造体を得た。(例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたピラー群や、頂面の面積を10μm×90μmとしたトレンチ群を作製した。)PTFE製のメンブレンフィルターを、X形のピンセットに把持し、3mm×1mm位のエリアが把持部以外に出来るよう加工する。
【0181】
載置高密度化工程で作製したCNTフィルム群から、実験に適切な厚みのCNT(厚さ4μmもしくは8μm)を選択する。Misterピンセットにて、上記で選択したCNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のMisterピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0182】
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にMisterピンセット毎CNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸し、CNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0183】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンフィルターを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する(CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する)。IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0184】
次に、レジストPMMA495を希釈液にて重量換算で5倍希釈した液を塗布し、4700rpmで1分間スピンコートを行い、180℃のホットプレート上で1分間し、80nmの副レジスト層を形成した。これにより2層目の主レジストが高密度化したCNTフィルムに浸み込むことを抑制した。
2層目の主レジストとして、さらにFOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、360nmのレジスト層を形成した。
【0185】
次いで、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて上記レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。これを下記加工工程で示すと同様な条件を用い、上記レジスト毎CNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得た。
【0186】
加工後、干渉沸酸溶液に20秒間浸し、次に純水20秒、2回浸し洗浄し、IPAに20秒浸し、PMMAの除去液であるRemover−PGに3分もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に1分30秒浸し、PMMA層を除去した。最後に乾かさずにIPAに3分間浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。IPAに浸した後自然乾燥させる。
【0187】
次に、架橋CNTマイクロ構造体の他の製造方法を詳述する。
500nm厚の酸化膜付きのシリコン基板を用意し、これの表面をIPAで超音波洗浄した後、O2プラズマに300W、1分間暴露し基板を清浄化した。基板清浄化後上で、スピンコーターを用いてレジストZEP−520Aを4700rpmでスピンコートし、コート後150℃で3分間ベークした。電子線描画装置でレジスト層にピラーの頂面を描画し、現像液ZED−N50/で現像し、ピラーとする部分以にマスクを形成した。マスクから露出した部分、つまりピラーの頂面となる部分に厚さ100nmのNi層をスパッタリング装置にて成膜した後、ストリップ液ZDMACでレジストを除去し、かつIPAでリンスし、表面の一部がNi層でマスクされたシリコン基板を得た。
【0188】
上記Ni層マスク付きシリコン基板の表面をO2プラズマで清浄化し、Ni層のパターンをマスクとして酸化膜と共にシリコン基板を反応性イオンエッチング装置にてエッチングした。その際、Ni層マスク付きシリコン基板の両サイドを表面に酸化膜のない4インチのシリコン基板を二つに割ったそれぞれを配置し、CHF3を40sccm、SF6を60sccm、O2を55sccm同時にエッチングチェンバー内に流入し、放電出力100W、処理時間45分でエッチングを行い、所望のピラー構造体もしくはトレンチ構造体を得た(例として、ピラーの高さを5μm、ピラー間隔を4μm、ピラーの頂面の面積を2μm×2μmとしたピラー群や、頂面の面積を10μm×90μmとしたトレンチ群を作製した)。PTFE製のメンブレンフィルターを、X形のピンセットに把持し、3mm×1mm位のエリアが把持部意外に出来るよう加工した。載置高密度化工程で作製したCNTフィルム群から、実験に適切な厚みのカCNTフィルム(厚み4μmもしくは8μm)を選択する。
【0189】
Misterピンセットにて、上記で選択したCNTフィルムを実体顕微鏡下で1枚のみ把持し(厚み2μm以上の場合に可能)基板から取り出す(2枚以上基板からとった場合は、実体顕微鏡下で、2本のMisterピンセットで1枚のみを取り出す)。
【0190】
載置する基板に、IPA溶液を滴下し表面上に液玉を作り、その中にMisterピンセット毎CNTフィルムを、実体顕微鏡の観察下で浸し、CNTフィルムをピンセットから離し液中に泳がせる。
【0191】
IPAの蒸発の際、実体顕微鏡で観察しながら、メンブレンフィルターを溶液中に浸して動かし、CNTフィルムの載置位置、配向方向を制御する(CNTフィルムは通常溶液に浸した際泳ぐが、溶液が蒸発し、動くことが不可能になる段階まで、観察し、溶液の蒸発に伴う載置位置、配向方向の変化を制御する)。
【0192】
IPA溶液の蒸発し、液量が少なくなり、CNTフィルムが移動不可能になったら、表面の乾燥状態を観察し、CNTの表面が見え始めたら観察に用いている光の強度を最大から最小にし、乾燥させる。乾燥を十分に行うため、レジスト塗布前に、真空中180℃で10分間乾燥を行う。
【0193】
次に、FOX16を塗布し、4500rpmで1分間スピンコートを行い、ベークを行った。これを3回繰り返しレジスト層を形成した。そして、電子線描画装置(CABL8000/クレステック)にて上記レジスト層に所定のパターンを描画し、それを水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.38%のZTMA−100)で現像してFOX16のマスクを形成した。
【0194】
これを下記加工工程の実施例と同様な条件を用い、上記レジスト毎CNTをエッチングし、所望の構造体を所望の位置に得た。加工後、干渉沸酸溶液に20秒間浸し、次に純水20秒、2回浸し洗浄し、IPAに20秒浸し、PMMAの除去液であるRemover−PGに3分もしくはPMMAの現像溶液であるMIBK:IPA=1:1の溶液に1分30秒浸し、PMMA層を除去した。最後に乾かさずにIPAに3分間浸す(このマスク除去のプロセス中は、溶液から溶液にはすぐに移動し、サンプルを乾燥させない)。IPAに浸した後自然乾燥させる。
【0195】
以下CNTマイクロ構造体、架橋CNTマイクロ構造体を作成する際に用いるCNT膜のエッチングについて以下に述べる。
削りたい形状にマスクがカーボンナノチューブ上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで40秒乃至1分行う。場合により上記手順を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0196】
削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで7分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ。チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで3分行う。場合により上記手順を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0197】
次に、別の実施例を述べると、削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を76sccm、CHF3を4sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで1分行う。場合により上記操作を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0198】
さらに別の実施例を述べると、削りたい形状にマスクがCNTフィルム上に乗っている試料を平行平板型の反応性イオンエッチング装置に入れる。O2を10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで4分乃至10分エッチングを行う。残渣除去のため、O2を10sccm、Arを10sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで40秒乃至1分行う。残渣除去のため、O2を76sccm、CHF3を4sccm流入させ、チェンバー内の圧力を10Paに保ち、出力を80Wで1分行う。場合により上記操作を順番に2、3回繰り返す。プロセス終了後真空雰囲気から取り出す。
【0199】
次に、任意の基板上に形成されたCNT層を、基板から剥離して高密度配向CNT膜として得るための手法を以下に示す。
本発明によるCNT膜構造体は、CNT層とウエハ基板との接触部が一体化しており、通常の加工プロセスに対しては十分な密着力がある。しかしながら、高密度化工程で使用したようなCNTと親和性のある液体に浸し、さらに外力を加えることにより、CNT層を基板から剥離することができる。
【0200】
基板から剥離したCNT膜は、内部に液体を含んでいるが、フッ素系樹脂製の板材の上で乾燥させることにより、再度高密度化させることが可能である。
具体的には、実施例1の手法で得たCNT膜構造体を、緩衝沸酸(4.7%HF、36.2%NH4F、59.1%H2O/森田化学工業)に浸漬し、CNT層の接合面である基板表面の酸化膜を除去することにより、ウエハ基板からCNT層を剥離させた。そしてウエハ基板から剥がし取ったCNT層をフッ素系樹脂製の板材上で自然乾燥させ、高密度な配向CNT膜を得た。
【0201】
〔検証例1〕
本発明の高密度化工程における高密度化処理の前後での膜厚および重量密度の制御性を検証した結果を以下に示す。このための実験条件は、所望の厚さのCNTフィルムを所望の枚数得るために、化学気相成長工程に供する金属触媒膜の幅(高密度化前のCNTフィルムの厚さ)を、1μmを2セット、2μmを1セット、4μmを2セット、7.5μmを4セットと設定した。
【0202】
この結果について図18を参照して以下に説明する。図18(a)に示す通り、高密度化前の厚さ(元の厚さ)が7.5μmであったCNTフィルムは、高密度化後は平均0.5μm程度に収縮するのに対し、元の厚さが1、2、4μmのCNTフィルムは、高密度化後はそれぞれ0.2μm〜0.3μmに収縮した。これは、高密度化後は、元の厚さに応じて異なる密度となることを示唆している。
【0203】
他方、高密度化前のCNTフィルムは、重量が極めて小さいため、その重量密度の計測は困難である。そこで、高密度化前のCNTフィルムの重量密度を、線状のパターニングを施さずに金属触媒膜を全面に形成した基板から成長させたバルク状CNT集合体の密度をもって推定するものとした。
【0204】
ここでバルク状CNT集合体の密度は、重さ/体積で計算されるが、様々な条件の下で、バルク状CNT集合体の密度は一定となることが知られている(Don N. Futaba, et al, 84% Catalyst Activity of Water-Assisted Growth of Single Walled Carbon Nanotube Forest Characterization by a Statistical and Macroscopic Approach, Journal of Physical Chemistry B, 2006, vol. 110, p. 8035-8038を参照されたい) 。この参照文献には、バルク状CNT集合体の重量密度は、集合体の高さが200μmから1mmまでの範囲では一定の値(0.029g/cm3)であることが報告されている。つまりバルク状CNT集合体の成長と略同等の成長条件および触媒を用いて成長させたCNTフィルムの密度は、バルク状CNT集合体の密度と大きく相違しないものと推察できる。
【0205】
高密度化工程でのCNTフィルムの圧縮率を〈圧縮率=元の厚さ÷高密度化後の厚さ〉と定義すると、高密度化後のCNTフィルムの重量密度は、〈CNT密度=圧縮率×0.029g/cm3〉となる。これによって各厚さのCNTフィルムの高密度化後の重量密度を導出すると、図18(b)に示した関係となる。本検証例では、CNTフィルムの元の厚さを制御することにより、重量密度を0.11g/cm3から0.54g/cm3まで制御することができた。
【0206】
このようにして得られた重量密度が0.11g/cm3のCNTフィルムにおいても、基板との密着性が十分に保たれており、上述の各実施例と同様のパターニングが可能であった。これに対し、高密度化前のCNTフィルム(重量密度0.029g/cm3)の場合は、基板との密着性不足やレジストの侵食などにより、公知のエッチング、リソグラフィー技術の適応が実質的に不可能であった。
【0207】
本発明において制御可能なCNTフィルムの重量密度の上限は、本検証例に用いた0.54g/cm3に限定されない。本明細書では明記しないが、原理的には、CNTの直径を制御することによってさらに幅広い範囲での重量密度を実現することが可能である。すべてのCNTが等しい直径を有し、且つ高密度化工程によってすべてのCNTが最密充填されるものと仮定すると、CNTの直径寸法が小さくなるに従って高密度化後のCNT密度は増加することが容易に計算できる(図19を参照されたい)。上述した各実施例で用いたCNTフィルムにおけるCNTの平均直径は2.8nm程度であるが、この場合のCNTが最密充填したときの重量密度は、図19に示す通り、0.78g/cm3程度である。この点に関しては、すでに非特許文献(Ya-Qiong Xu, et al, Vertical Array Growth of Small Diameter Single-Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc., 128 (20), 6560 -6561, 2006)に報告されている技術を用いることにより、CNTの直径をより小さいもの(1.0nm程度)にすることは可能であることが分かっている。このことから、CNTの直径を小さくすることにより、最大1.5g/cm3程度までは重量密度を高めることが可能であると考えられる。
【0208】
〔検証例2〕
異方性の程度、換言すると配向性の度合いは、CNT薄膜の抵抗率を四端子法で計測することによって知ることができる。この四端子法は、例えば図20に示すように、幅が2μmの4つのAu電極7a〜7dを2μmの間隔をおいて配置してなる計測サイトにCNT薄膜5を載置して行う。
【0209】
本検証例における四端子法による抵抗率の計測は、図21に示すように、図20に示した計測サイトが6組設けられた計測基板を用意すると共に、CNTの配向方向(図21中に矢印で示す)に平行な向きと直交する向きとのそれぞれについて互いに異なる幅寸法(平行:1、2、5、10μm、直交:2、5μm)の計測部位をパターニングした厚さが306nm、重量密度が0.28g/cm3、平均直径が2.8nmのCNT薄膜と、厚さが835nm、重量密度が0.19g/cm3、平均直径が2.8nmのCNT薄膜とを用意し、各計測サイトの電極に対応するように、各CNT薄膜に形成された計測部位を計測基板の各電極上に配置して行った。
【0210】
表面抵抗と抵抗率とは、以下の関係式に基づいて計算される。
【数1】
但し、Rは抵抗(Ω)、Rsは表面抵抗(Ω/□)、ρは抵抗率(Ωcm)、Lは電極同士の間隔、tはCNT薄膜の厚さ、Wは計測部位の幅である。
【0211】
その結果、厚さ306nmのCNT薄膜の表面抵抗は82Ω/□、厚さ835nmのCNTフィルムの表面抵抗は296Ω/□であり、計測部位の幅による違いは殆ど無視し得る範囲であった。また図22に示した通り、厚さ306nmのCNT薄膜の抵抗率(■、●)は、配向方向に平行な向きについては0.009Ωcm、配向方向に直交する向きについては0.27Ωcmであり、厚さ835nmのCNT薄膜の抵抗率(□、○)は、配向方向に平行な向きについては0.007Ωcm、配向方向に直交する向きについては0.13Ωcmであり、異方性が確認された。平行と直交との比(異方性の程度)は、厚さ306nmのCNT薄膜が1:30、厚さ845nmのCNT薄膜が1:18であった。
【0212】
〔検証例3〕
厚さが450nm、CNTの重量密度が0.46g/cm3、CNTの平均直径が2.8nmのCNT薄膜について、ヘルマンの配向係数によって配向性を定量的に評価した。
図23は、平面基板に密着したCNT薄膜の表面の凹凸の程度が表わされるように画像処理された原子間力顕微鏡(AFM:Atomic force microscope)画像であり、図24は、このAFM画像を高速フーリエ変換(FFT)して各方向の凹凸の分布を周波数分布で表した平面画像である。
図23において、CNTが縦方向に延在していることが既に分かるが、これを各方向についての周波数分布で表した図24において、周波数分布の輪郭は、横軸を長軸とする扁平な楕円状をなしている。これはCNTが図23にて上下方向に配向していることを表している。そしてこの楕円が扁平であるほど配向性が高いことを表す。この配向性の程度は、ヘルマンの配向係数(HOF)で定量的に表現することができる。
HOFは、以下の式により定義される。
【0213】
【数2】
但し、φは試料の長手方向の方位と基準方位との間の角度、IはFFT画像から得られる強度プロフィルである。
【0214】
HOFにおいては、φ=0方向について完全配向ならばf=1となり、完全無配向ならばf=−0.5となる。
その結果、本実施例においては、f=0.57であった。
【0215】
なお、HOFについては、必要ならば以下の文献を参照されたい。
1.Klug, H. and Alexander, L.E., X-ray Diffraction Procedures, (2nd ed., John Wiley & Sons, Inc.,New York, 1974).
2.Lovell, R. and Mitchell, G.R., Acta Crystallogr A37, 135 (1981).
繊維などの配向性の評価法として、X線回折測定法が一般に知られているが、これは試料に対するX線の入射角度と回折強度との関係から算出するものであり、膜の平面に沿ってCNTが配向した薄膜の場合、厚さが極度に小さい試料では、配向方向に平行な方向からの入射に対する回折強度の計測が不能であった。それが本検証例によると、原子間力顕微鏡(AFM)による平面画像から高速フーリエ変換を用いて配向性を評価するので、厚さが極度に小さい薄膜でも容易に配向性を評価することができる。
【0216】
〔検証例4〕
透明なガラススライド上に置いた厚さ306nmと835nmの2つのCNT薄膜に対して640nmの波長の光を照射してCNT薄膜の透過率を計測した。その結果、それぞれ61.8%と16.7%の値を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ膜構造体。
【請求項2】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項3】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項4】
凹凸を形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
凹凸上に両持ち梁又は片持ち梁にパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする立体カーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項5】
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板に形成されたピラーの高さ及び該ピラー上でカーボンナノチューブ膜が接する面積と間隔を制御して該ピラーに架橋して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする架橋カーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項6】
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項1】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ膜構造体。
【請求項2】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項3】
カーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項4】
凹凸を形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
凹凸上に両持ち梁又は片持ち梁にパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする立体カーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項5】
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板に形成されたピラーの高さ及び該ピラー上でカーボンナノチューブ膜が接する面積と間隔を制御して該ピラーに架橋して載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とする架橋カーボンナノチューブマイクロ構造体。
【請求項6】
ピラーを形成したカーボンナノチューブ成長用基板以外の基板と、
前記基板上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第1カーボンナノチューブ膜と、
前記第1カーボンナノチューブ膜上に位置及び/又は配向を制御して、かつパターニングされて載置された重量密度が0.1g/cm3以上の高密度化処理第2カーボンナノチューブ膜と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブマイクロ構造体。
【図3】
【図6】
【図12】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図6】
【図12】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2011−98885(P2011−98885A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267790(P2010−267790)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2010−500803(P2010−500803)の分割
【原出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「高集積・複合MEMS製造技術開発事業 MEMS/ナノ機能の複合技術の開発(ナノ材料(CNTなど)の選択的形成技術)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2010−500803(P2010−500803)の分割
【原出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「高集積・複合MEMS製造技術開発事業 MEMS/ナノ機能の複合技術の開発(ナノ材料(CNTなど)の選択的形成技術)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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