説明

カーボン除去装置およびカーボンを除去する方法

【課題】より低温の温度域で、良好なカーボン除去特性を示すカーボン除去装置を提供する。
【解決手段】アノード電極120と、カソード電極130と、前記両電極の間に設置されたプロトン導電性を有するプロトン導電膜110とを有し、アノード電極120にカーボンを付着させ、アノード電極120が水蒸気を含む環境に曝された状態で両電極に電流または電圧を印加し、水蒸気から解離した酸素によりアノード電極120に付着したカーボンを酸化してカーボンを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンを除去する装置に関する。特に本発明は、電気化学的手法を用いてカーボンを酸化除去する装置、およびそのような方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等のディーゼルエンジンから排出される排気ガスには、粒子状物質と呼ばれるカーボンを主体とした有害物質が含まれる。そこで、このような粒子状物質が、外界へ放出されることを抑制するため、排気ガスの排出流路には、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)のようなフィルタ等が設置される。その後、このDPFに捕集された粒子状物質は、高温処理等、各種方法で除去される。
【0003】
最近、このようなDPFのようなフィルタを用いた技術とは別に、電気化学的な方法を用いて、カーボンのような粒子状物質を除去する方法が検討されている。例えば、2つの電極に挟まれた酸素イオン導電体を使用し、この酸素イオン導電体を通る酸素イオンを利用して、カーボンを酸化除去させることが提案されている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2008−110277号公報
【特許文献2】特開2008−119618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようなカーボンを酸化除去させる技術では、カーボンの酸化反応を発生させるためには、酸素イオン導電体を介して、カソード電極からアノード電極まで、酸素イオンを流通させる必要がある。一般に、酸素イオン導電体が酸素イオン導電性を示すには、500〜600℃以上の高温が必要となる。しかしながら、例えばディーゼルエンジンからの排気ガスの温度は、通常約400℃以下である。このため、従来の技術をそのままディーゼルエンジンの排気ガスの環境に適用しても、カーボンの酸化反応を適正に生じさせることは、極めて難しい。従って、従来の技術の場合、カーボンの酸化反応を適正に生じさせるためには、外部からエネルギーを投与して、反応装置を加熱する必要が生じる。このように、従来の対応策では、エネルギー消費が増大するとともに、追加の加熱装置が必要となり、装置が複雑化、高コスト化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、より低温の温度域で、良好なカーボン除去特性を示すカーボン除去装置を提供することを目的とする。また、そのようなカーボン除去の方法を提供する方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、
アノード電極と、
カソード電極と、
前記両電極の間に設置されたプロトン導電性を有するプロトン導電膜と、
を有するカーボン除去装置が提供される。
【0007】
ここで、本発明によるカーボン除去装置は、さらに、前記アノード電極が曝される環境と、前記カソード電極が曝される環境とを分離することが可能な分離部材を有しても良い。
【0008】
また、本発明によるカーボン除去装置において、前記プロトン導電膜は、ペロブスカイト型材料または金属リン酸塩を含んでいても良い。
【0009】
特に、前記ペロブスカイト型材料は、BaCe1−x3−α、SrCe1−xYb3−α、BaZr1−x3−α、およびSrZr1−x3−αからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有していても良い(ただし、Xおよびαは、それぞれ、0≦X≦1、0≦α≦1の範囲である)。
【0010】
あるいは前記金属リン酸塩は、In3+またはAl3+がドープされた、SnP、SiP、TiPおよびZrPからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有していても良い。
【0011】
また、本発明によるカーボン除去装置において、前記アノード電極は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、カーボンおよびこれらの合金からなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有していても良い。
【0012】
あるいは前記アノード電極は、当該カーボン除去装置の使用中に前記アノード電極上に付着されるカーボンで構成されても良い。
【0013】
また、本発明によるカーボン除去装置において、前記カソード電極は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、カーボンおよびこれらの合金からなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有していても良い。
【0014】
また、本発明によるカーボン除去装置において、前記プロトン導電膜は、0.1mm〜10mmの範囲の厚さを有しても良い。
【0015】
さらに本発明では、カーボンを除去する方法であって、
(a)アノード電極、カソード電極、および前記両電極の間に設置されたプロトン導電性を有するプロトン導電膜、を有するカーボン除去装置を準備するステップと、
(b)前記カーボン除去装置のアノード電極に、カーボンを付着させるステップと、
(c)前記アノード電極が水蒸気を含む環境に曝された状態で、前記両電極を介して、前記カーボン除去装置に電流または電圧を印加するステップと、
(d)前記水蒸気により、前記アノード電極に付着したカーボンが酸化されるステップと、
を有するカーボンを除去する方法が提供される。
【0016】
ここで、本発明による方法において、前記ステップ(c)、(d)は、室温〜500℃の温度範囲で実施されても良い。
【0017】
また、本発明による方法において、前記ステップ(c)の水蒸気を含む環境は、0.01vol%〜90vol%の水蒸気分圧を有しても良い。
【0018】
また、本発明による方法において、前記カーボン除去装置は、さらに、前記アノード電極が曝される環境と、前記カソード電極の曝される環境とを分離することが可能な分離部材を有しても良い。
【0019】
また、本発明による方法において、前記カーボン除去装置の前記アノード電極は、前記ステップ(b)により形成されても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、より低温の温度域で、良好なカーボン除去特性を示すカーボン除去装置を提供することが可能となる。また、そのようなカーボン除去の方法を提供する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によるカーボン除去装置および方法について説明する前に、本発明の特徴および効果をより良く理解するため、従来のカーボン除去装置についてまず説明する。
【0022】
図1には、従来のカーボン除去装置の作動原理の概略図を示す。従来のカーボン除去装置1は、アノード電極20と、酸素イオン導電性を有する固体電解質膜10と、カソード電極30とを、この順に積層することにより構成される。
【0023】
従来のカーボン除去装置1を電源V1に接続した場合、カソード電極30では、

1/2O+2e → O2− 式(1)

の反応が生じる。カソード電極30で生じたO2−イオンは、固体電解質膜10を通り、アノード電極20に到達する。アノード電極20では、

2−+C → CO+2e 式(2)

の反応が生じる。従って、アノード電極上で、該アノード電極上に付着したカーボンを酸化除去することができる。
【0024】
しかしながら、一般に、固体電解質膜10が酸素イオン導電性を示すのは、例えば約500℃以上のような極めて高温の温度域である。これに対して、一般のディーゼルエンジンの排気ガス温度は、約400℃以下である。このため、従来のカーボン除去装置1をそのままそのような環境に設置しても、付着したカーボンを適正に除去することは、極めて難しい。従って、このような方法では、カーボンの酸化反応を適正に生じさせるため、外部からエネルギーを投与して、装置を加熱する必要が生じる。このような対処では、エネルギー消費が増大するとともに、追加の加熱装置が必要となり、装置が複雑化、高コスト化してしまうという問題がある。
【0025】
以上の問題に鑑み、本願発明者は、より低温で効率よくカーボンを酸化除去することが可能なカーボン除去装置を開発することを目的として、鋭意研究を積み重ねた。その結果、本願発明者は、プロトン導電体を使用することにより、低温域においてもカーボンを適正に酸化させることが可能であることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0026】
以下、図面を用いて、本発明によるカーボン除去装置について説明する。
【0027】
図2には、本発明によるカーボン除去装置の一例の概略的な断面図を示す。また図3には、本発明によるカーボン除去装置の作動原理を示す。なお、両図において、各部材の寸法は、正確ではなく、各部材およびその相対寸法は、誇張して示されていることに留意する必要がある。
【0028】
図2に示すように、本発明によるカーボン除去装置100は、プロトン導電性を有するプロトン導電膜110と、このプロトン導電膜110の両表面に設置された、アノード電極120およびカソード電極130とを有する。カーボン除去装置100は、アノード電極120、プロトン導電膜110およびカソード電極130がこの順に積層されて構成される。アノード電極120は、該アノード電極に付着したカーボンを酸化除去させる役割を有する。カソード電極130は、プロトン導電膜110を通ってカソード電極に到達するHイオンを還元する役割を有する。なお、後述のように、アノード電極120は、装置製作直後の段階では、プロトン導電膜110上に形成されていなくても良い。
【0029】
次に、図3を用いて、本発明によるカーボン除去装置100の作動原理について説明する。本発明によるカーボン除去装置100を、図3のように電源Vに接続させると、アノード電極120は、アノード分極され、カソード電極130は、カソード分極される。
【0030】
アノード電極120では、周囲に水蒸気がある場合、以下の式(3)で示すように、水蒸気が水素イオンと酸素に分解する酸化反応が生じる:

2HO → 4H+O+4e 式(3)

ここで、Oの添え字の「」は、生成する酸素が活性な状態にあることを表すために付記されている。
【0031】
式(3)の反応により生じた水素イオンは、プロトン導電膜110を通り、カソード130まで移動する。カソード電極130上では、水素イオンは、環境中の酸素と反応して、水蒸気になる:

+4H+4e → 2HO 式(4)

ここで、アノード電極120上に、カーボンが付着している場合、このカーボンは、式(3)で生じた活性な酸素により酸化されて、二酸化炭素(CO)となり、電極上から放出される:

C+2O* → CO 式(5)

従って、本発明によるカーボン除去装置100により、カーボンを酸化除去することができる。
【0032】
このような本発明によるカーボン除去装置100は、従来の装置に比べて、以下の特徴および利点を有する:
(1)本発明では、カーボン除去装置内にプロトン導電膜が設置される。プロトン導電膜のプロトン導電性は、固体電解質膜の酸素イオン導電性に比べて、より低い温度で得ることができる。従って、本発明によるカーボン除去装置100は、従来の酸素イオン導電性を有する固体電解質膜に比べて、より低温で使用することができる。
(2)本発明では、カーボンを酸化させる酸化源として、活性な酸素が使用される。従来の酸素イオン導電性を有する固体電解質膜を使用する装置では、カーボンを酸化させる酸素源は、固体電解質膜内を移動してアノードに到達する酸素イオンである(図1参照)。この酸素イオンの反応性は、比較的弱いため、カーボンの酸化反応速度もそれ程大きくはない。これに対して、本発明では、カーボンの酸化反応に、極めて反応性の高い活性な酸素が使用されるため、カーボンの酸化速度が大きく、比較的速やかにカーボンを酸化させることができる。
(3)カーボンの酸化源となる酸素(活性な酸素)は、水蒸気の分解により提供される。これは、本発明によるカーボン除去装置のカーボン除去特性は、使用環境の酸素分圧には、ほとんど依存しないことを意味する。一般に、ディーゼルエンジンの排気ガス中の酸素分圧は、運転モードにより大きく変動し、例えばリッチ燃焼運転モードのような還元性雰囲気では、排気ガス中の酸素分圧は、著しく小さくなる。従って、酸素イオン導電性を有する固体電解質膜を用いた従来のカーボン除去装置では、カーボン除去の特性が酸素分圧に依存し、常に良好なカーボン除去特性を発揮することは難しい。一方、水蒸気は、いかなる運転モードでも、ディーゼルエンジンの排気ガス環境中には、常にある程度の分圧で含まれている。従って、カーボンの酸化源となる酸素が水蒸気の分解により供給される本発明では、環境条件に影響されることなく、常に良好なカーボン除去特性を発揮することができる。
【0033】
以下、本発明のカーボン除去装置100を構成する各部材について、より詳しく説明する。
【0034】
(プロトン導電膜110)
本発明のカーボン除去装置100において、プロトン導電膜110は、プロトン導電性を有するものであれば、いかなる膜も使用できる。プロトン導電膜110は、例えば、BaCe1−x3−α、SrCe1−xYb3−α、BaZr1−x3−α、SrZr1−x3−α、のようなペロブスカイト型材料で構成されても良い。ここで、Xおよびαは、それぞれ、0≦X≦1、0≦α≦1の範囲であり、例えば、X=0.1であっても良い。一般に、ペロブスカイト型材料で構成されたプロトン導電膜110において、極めて良好なプロトン導電性が得られる温度範囲は、300℃〜800℃程度である。勿論、これ以外の温度域で使用しても良いことは、当業者には明らかである。
【0035】
あるいはプロトン導電膜110は、例えば、金属リン酸塩であっても良い。金属リン酸塩としては、In3+もしくはAl3+をドープしたSnP、SiP、TiPまたはZrPであっても良く、例えば、In3+またはAl3+をドープしたSnPである。なお、In3+およびAl3+のドープ量は、特に限られないが、おおよそ5mol%〜20mol%の範囲であっても良く、例えば10mol%である。なお、ドープ量が20mol%を超えると、相分離が生じて2相になる場合がある。一般に、金属リン酸塩材料で構成されたプロトン導電膜110において、極めて良好なプロトン導電性が得られる温度範囲は、100℃〜400℃程度である。勿論、これ以外の温度域で使用しても良いことは、当業者には明らかである。
【0036】
プロトン導電膜110は、ガス透過性の少ない緻密な膜であっても、ガス透過性が大きな多孔質膜であっても良い。なお、プロトン導電膜110の厚さは、特に限られないが、例えば、0.1mmから10mmの範囲であっても良く、例えば1mmである。
【0037】
(アノード電極120)
本発明のカーボン除去装置100において、アノード電極120は、導電性のある部材であれば、いかなる材料、形態および寸法であっても良い。アノード電極120の材質は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)のような金属またはこれらの合金である。さらに、カーボンを電極材料として使用しても良い。
【0038】
また、別の態様では、アノード電極120は、装置製作直後の段階では、「積極的に」設置されていなくても良い。すなわち、本発明によるカーボン除去装置では、使用中にアノード電極上に付着する、酸化除去の対象となるカーボン自身をアノード電極として使用することもできる。この場合、カーボンは、装置の使用中にアノード電極に付着されるので、装置の使用前の段階では、「積極的に」設置しておく必要はない。
【0039】
なお、プロトン導電膜110上に、アノード電極120を「積極的に」設置しておく場合、アノード電極120の厚さは、特に限られない。アノード電極120の厚さは、例えば、0.01mmから1mmの範囲であっても良く、例えば50μmである。
【0040】
(カソード電極130)
本発明のカーボン除去装置100において、カソード電極130には、基本的にアノード電極120と同様の材質、形態、寸法のものを使用することができる。ただし、カソード電極130にカーボンを使用する場合は、アノード電極のカーボンとは異なり、そのようなカーボン電極を予め設置しておく必要がある。
【0041】
なお、図2には示していないが、本発明によるカーボン除去装置は、プロトン導電膜110、アノード電極120およびカソード電極130の他、追加の部材を有しても良い。例えば、アノード電極120および/またはカソード電極130の上に、さらに金属メッシュのような集電部材を設置しても良い。これにより、それぞれの電極で電気化学反応により生じた電子または電流を、より確実に回収することができる。また、両電極またはそれぞれの電極上の金属メッシュから、リード線を外部に導出しておき、これらのリード線を利用して、外部電源と本発明によるカーボン除去装置とを接続することにより、各電極での電気化学反応を生じさせても良い。
【0042】
(第2のカーボン除去装置)
次に、本発明による別のカーボン除去装置について説明する。図4には、本発明による第2のカーボン除去装置200の一例の概略的な断面図を示す。第2のカーボン除去装置200は、前述の図2に示したカーボン除去装置100と同様の構成部材を有する。従って、図4において、図2と同じ部材には、同じ参照符号が付されている。
【0043】
第2のカーボン除去装置200は、プロトン導電膜110と、この両表面に設置されたアノード電極120およびカソード電極130を有する。なお、前述のように、装置の使用前の段階では、アノード電極120は、設置されていなくても良い。
【0044】
第2のカーボン除去装置200は、さらに、カソード電極130の上部に設置された管状部材250を有する。管状部材250は、開放された一端が、カソード電極130と接するように配置されており、他端は、ゴム栓のような封止部材255で封止されている。封止部材255には、2つの貫通孔が設けられており、その一つには、入口管260が挿入され、別の一つには、出口管270が挿入されている。入口管260は、一方の先端が、出口管270に比べて、カソード電極130の表面に、より近接するように設置されることが好ましい。これにより、反応に必要なガス(例えば空気)をより確実にカソード電極表面に供給することが可能となる。なお、入口管260および出口管270の材質は、特に限られない。これに対して、管状部材250は、カソード電極130と直接接触するため、絶縁性材料で構成される。これらの管状部材250、入口管260および出口管270は、例えばアルミナ等のセラミック部材で構成されても良い。また、管状部材250とカソード電極130の固定方法は、特に限られない。両者は、図の状態とは異なるが、例えば、管状部材250の内径に沿って、カソード電極130を管状部材250の先端に挿嵌することにより固定されても良い。
【0045】
このように構成された第2のカーボン除去装置200では、アノード電極120が曝される環境と、カソード電極130が曝される環境を分離することができる。従って、例えば、アノード電極120の側を、カーボンの酸化除去が必要な環境に曝されるようにした状態のまま、カソード電極130の側に、別個の制御されたガスを供給することが可能となる。
【0046】
なお、図4の例では、アノード電極120が曝される環境と、カソード電極130が曝される環境を分離するため、管状部材250を設置したが、この管状部材は、一例に過ぎない。すなわち、本発明による第2のカーボン除去装置は、図4に示すような構成に限られるものではなく、両電極を分離する別の分離部材を使用しても良いことは、当業者には明らかである。
【0047】
(カーボンを酸化除去する方法)
次に、カーボンを酸化除去する方法について、より詳しく説明する。図5には、カーボンを酸化除去する方法のフローチャートを示す。
【0048】
本発明によるカーボンを酸化除去する方法は、アノード電極、カソード電極および両電極に挟まれたプロトン導電膜からなるカーボン除去装置を準備するステップ(ステップS110)と、アノード電極にカーボンを付着させるステップ(ステップS120)と、アノード電極が水蒸気を含む環境に曝された状態で、カーボン除去装置の両電極に、電流または電圧を印加するステップ(ステップS130)と、前記水蒸気により、アノード電極に付着したカーボンを酸化するステップ(ステップS140)とにより実施される。
【0049】
まず、ステップS110では、前述の図2または図4に示したような、アノード電極、カソード電極およびプロトン導電膜を有するカーボン除去装置が準備される。
【0050】
次に、ステップS120では、例えば、カーボン除去装置がカーボン除去の必要な環境に設置され、アノード電極上に、カーボンが付着される。
【0051】
なお、当然のことながら、アノード電極が設置される環境は、通常のディーゼルエンジンの排気ガスの環境であっても良い。
【0052】
次に、ステップS130では、アノード電極が水蒸気を含む環境に曝された状態で、カーボン除去装置の両電極に、電流または電圧が印加される。なお、このステップは、前述のステップS120と逆の順番にしても良い。
【0053】
アノード電極が曝される環境に含まれるHO分圧は、特に限られないが、例えば0.01vol%〜90%の範囲であっても良い。HO分圧は、例えば1vol%〜10vol%である。なお、当然のことながら、この環境は、通常のディーゼルエンジンの排気ガスの環境であっても良い。
【0054】
次のステップS140では、ステップS130によって印加された電流または電圧により、アノード電極上では、前述の式(3)および(5)の反応が生じ、カソード電極上では、前述の式(4)の反応が生じる。これにより、アノード電極上に付着しているカーボンが酸化され、カーボンがCOとなって除去される。
【0055】
前述のように、本発明では、カーボンの酸化源となる酸素(活性)は、水蒸気の分解により提供されるため、使用環境中に存在する酸素は、反応にはほとんど関与しない。通常、水蒸気は、ディーゼルエンジンの排気ガス環境中には、常にある程度の分圧で含まれている。従って、カーボンの酸化源となる酸素が水蒸気の分解により供給される本発明では、ディーゼルエンジンの排気ガス環境中においても、エンジンの作動条件に影響されることなく、常に良好なカーボン除去特性を発揮することができる。
【0056】
また前述のように、従来の酸素イオン導電性を有する固体電解質膜を使用する方法では、カーボンを酸化させる酸素源は、酸素イオンである。従って、カーボンの酸化反応速度は、それ程大きくはない。これに対して、本発明では、カーボンの酸化反応に、極めて反応性の高い活性な酸素が使用されるため、カーボンの酸化速度が大きく、比較的速やかにカーボンの酸化反応を生じさせることができる。
【0057】
さらに本発明では、両電極の間には、酸素イオン導電性を有する固体電解質の代わりに、プロトン導電膜が設置される。このため、本発明の方法では、カーボンの除去は、室温〜800℃の広い温度範囲で実施することができる。処理温度は、例えば、室温〜500℃の範囲であっても良く、これは、従来のカーボン除去の使用温度に比べて有意に低い温度域である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
(プロトン導電膜の調製)
SnO粉末(純度98%、和光純薬工業製)13.6g、In粉末(純度99.9%、和光純薬工業製)1.39g、およびHPO(純度85%、和光純薬工業製)31.1gを混合し、この混合粉末を蒸留水80mlに加え、300℃で撹拌した。得られたスラリー状混合物をアルミナ坩堝に移し、大気焼成炉内に650℃で2.5時間保持し、スラリー状混合物を焼成した。次に、得られた仮焼体を乳鉢を用いて粉砕し、これを型(直径14mm)に入れてペレットを作製した。その後、このペレットをビニールで真空包装し、静水圧プレスを用いて1000kgfcm−2の圧力で加圧し、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を得た。このプロトン導電膜の寸法は、直径13mm、厚さ1.0mmであった。
【0060】
(カーボン除去装置サンプルの作製)
次に、前述の方法で調製したSn0.9In0.1プロトン導電膜を用いて、カーボン除去装置のサンプルを作製した。まず、プロトン導電膜の一方の表面に、アノード電極を設置した。アノード電極には、白金黒とカーボンの混合粉末を使用した(カーボンは、本装置の除去対象ともなるものである)。まず、2mgの白金黒粉末(和光純薬工業製)と、5mgのカーボン粉末(ブラックパール)を、十分に混合し、混合粉末を調製した。
【0061】
次に、この混合粉末をプロトン導電膜上に、実質的に均一に分散させた。次に、これらの混合粉末の上から、手で押圧を加え、混合粉末とプロトン導電膜を圧着させた。これにより、プロトン導電膜上にアノード電極が設置された。またカソード電極には、前述の白金黒粉末(和光純薬工業製)を使用した。この粉末を、前述のアノード電極の場合と同様の方法により、プロトン導電膜の他方の表面上に圧着させることにより、カソード電極を形成した。各電極面積は、0.5cmとした。
【0062】
次に、それぞれの電極上に、集電体として金メッシュ(メッシュ#100)を配置し、それぞれの金メッシュに接続された金線(直径0.2mmφ)を、通電用のリード線として使用した。このような方法で、カーボン除去装置サンプルを作製した。
【0063】
(カーボン除去特性測定用の測定装置の構成)
前述の方法により作製したサンプルを用いて、サンプルのカーボン除去特性の評価を行うための測定装置を構成した。図6には、測定装置の概略的な構成を示す。
【0064】
図6に示すように、測定装置600は、前述の方法で作製したサンプル605と、該サンプル605のアノード電極605A側に設置された外側および内側アルミナ管610Aおよび615Aと、サンプル605のカソード電極605C側に設置された外側および内側アルミナ管610Cおよび615Cと、を有する。外側アルミナ管610Aおよび610Cは、それぞれ、内側アルミナ管615Aおよび615Cを取り囲むようにして設置される。なお、外側アルミナ管610Aは、サンプル605に接触するように設置されるのに対して、内側アルミナ管615Aは、サンプル605に接触しないように設置される。同様に、外側アルミナ管610Cは、サンプル605に接触するように設置され、内側アルミナ管615Cは、サンプル605に接触しないように設置される。これらのアルミナ管の設置により、外側アルミナ管610Aと内側アルミナ管615Aの間には、アノード供給ガス流路630Aが形成され、内側アルミナ管615Aの内側には、アノード排出ガス流路635Aが形成される。同様に、外側アルミナ管610Cと内側アルミナ管615Cの間には、カソード供給ガス流路630Cが形成され、内側アルミナ管615Cの内側には、カソード排出ガス流路635Cが形成される。
【0065】
このような測定装置600において、アノード供給ガス流路630Aに、外部から混合ガス(本実施例では、3vol%の水蒸気を含むアルゴンガス)が供給されると、この混合ガスは、サンプル605のアノード電極605A上に供給された後、反応により二酸化炭素ガス(CO)が生じた場合は、このCOガスとともに、アノード排出ガス流路635Aを介して排出される。一方、カソード供給ガス流路630Cに、外部から混合ガス(本実施例では、空気)が供給されると、この混合ガスは、サンプル605のカソード電極605C上に供給された後、反応により水(または水蒸気)が生じた場合は、この水(または水蒸気)とともに、カソード排出ガス流路635Cを介して排出される。従って、アノード排出ガス流路635Aを介して排出される混合ガスを、ガスクロマトグラフィ装置(CP2002;Varian社製)に導入することにより、サンプル605から排出されるCO量を測定することができる。
【0066】
(サンプルのカーボン除去特性の測定:実験1)
このような測定装置600を用いて、以下の方法で、アノード排出ガス流路635Aから排出される混合ガス中のCO濃度を測定した。なおサンプル605は、25℃に設定した。アノードおよびカソード供給ガス流路630A、630Cに供給するそれぞれの混合ガス流速は、30ml/minとした。
【0067】
まず、サンプルから導出されている2本のリード線を、ガルバノスタット(HA501;北斗電工社製)に接続する。サンプル605のアノード電極605Aがアノード側に分極されるように、ガルバノスタットからサンプル605に電流を供給する。最初に印加する電流密度は、3mA/cm程度である。電流印加後、アノード排出ガス流路635Aから排出される混合ガス中のCO濃度が安定するまで、その状態を維持する。安定になった際のCO濃度の値を求める。次に、電流密度を上昇させ、同様の測定を実施する。このような測定を電流密度が最大10mA/cmとなるまで継続した。
【0068】
測定の結果、印加電流密度の上昇とともに、排出されるCO濃度は、直線的に増加することがわかった。
【0069】
次に、得られた結果から、以下の(i)〜(iii)により、それぞれの電流でのカーボン除去の電流効率ηeffを求めた。
【0070】
(i)サンプルのアノード電極で生じる正味のアノード反応は、前述の式(3)と式(5)の和により表され、

C+2HO → CO+4H+4e 式(6)

となる。
【0071】
この反応による理論上のCO生成量n(mol)は、

n(mol)=I(A)×t(sec)
/{z×F(C/mol)} 式(7)

で表される。ここで、I(A)は電流であり、t(sec)は時間、F(C/mol)は、ファラデー定数である。zは、電気化学反応(すなわち式(6))の電子数であり、4である。
【0072】
(ii)一例として、電流Iを10mAとすると、ガス流速は、30ml/minであるので、1分当たりの理論上のCO生成量nは、式(7)より、n(mol/min)=1.554μmolと見積もられる。
【0073】
この値をガス濃度C(vol%)に変換すると、単位面積当たりでは、

C(vol%)=n(mol/min)×2.24×10(mL/mol)/30(ml/min)×100=0.116(vol%) 式(8)

となる。
【0074】
(iii)そこで、測定によって得られたCO濃度の測定結果P(vol%)により、以下の式(9)から、電流効率ηeffが求められる。

ηeff(%)=(測定結果P(vol%)/C(vol%))×100 式(9)

この式(9)を用いて算出された電流効率ηeffは、42%であった。(なお、算出された電流効率ηeffは、いずれの電流における測定結果を用いても同様であった。)このことから、本発明によるカーボン除去装置では、室温レベルにおいても、良好なカーボン除去特性が得られることがわかった。
【0075】
(サンプルのカーボン除去特性の測定:実験2〜7)
次に、サンプルの温度を50℃〜300℃の範囲で変化させて、実験1と同様の実験2〜7を行った。実験2では、サンプル温度を50℃とし、実験3では、サンプル温度を100℃とし、実験4では、サンプル温度を150℃とし、実験5では、サンプル温度を200℃とし、実験6では、サンプル温度を250℃とし、実験7では、サンプル温度を300℃とした。なお、実験3では、測定の最大電流密度を30mA/cm程度とし、実験4では、測定の最大電流密度を40mA/cm程度とし、実験5〜7では、最大電流密度を50mA/cm程度とした。
【0076】
実験の結果、いずれのサンプル温度でも、印加電流と発生CO濃度は、比例関係にあることが確認された。
【0077】
表1には、実験1〜7におけるサンプル温度と、カーボン除去の電流効率ηeffの測定結果をまとめて示す。また、図7には、サンプルの温度とカーボン除去の電流効率ηeffの関係を示す。
【0078】
【表1】

表1および図7から明らかなように、サンプル温度の上昇とともに、カーボン除去の電流効率ηeffは、上昇した。特に、サンプル温度が200℃を超えると、カーボン除去の電流効率ηeffは、100%となり(実験5〜7)、投与したエネルギーがカーボン除去に有効に利用されていることがわかった。
【0079】
(実施例2)
実施例1と同様の方法により、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を有するカーボン除去装置のサンプルを作製した。ただし、この実施例2では、サンプルのアノード電極に含まれるカーボンとして、ブラックパール粉末に代えて、アセチレンブラック粉末(DENKA社製)を設置した。アセチレンブラックの設置量は、5mgとした。
【0080】
このサンプルを用いて、実施例1と同様の方法により、カーボン除去特性の評価を行った(実験8とする)。なお、サンプルの測定温度は、200℃とした。
【0081】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を有するカーボン除去装置のサンプルを作製した。ただし、この実施例3では、サンプルのアノード電極に含まれるカーボンとして、ブラックパール粉末に代えて、カーボンブラック粉末(シグマアルドリッチジャパン社製)を設置した。カーボンブラックの設置量は、5mgとした。
【0082】
このサンプルを用いて、実施例1と同様の方法により、カーボン除去特性の評価を行った(実験9とする)。なお、サンプルの測定温度は、200℃とした。
【0083】
実験8および9の結果を、前述の図7および表1にまとめて示す。これらの結果から、アノード電極に設置されるカーボンの種類を、アセチレンブラック(実施例2)またはカーボンブラック(実施例3)に変更しても、カーボン除去の電流効率ηeffに変化は生じず、200℃では、いずれも100%の高い電流効率ηeffが得られることがわかった。
【0084】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を有するカーボン除去装置のサンプルを作製した。ただし、この実施例4では、サンプルのアノード電極として、ブラックパール粉末のみを使用し、白金黒は使用しなかった。従ってこの実施例では、アノード電極の構成材料自身が被除去対象となる。ブラックパール粉末の設置量は、5mgとした。
【0085】
このサンプルを用いて、サンプル温度を25℃〜300℃の範囲で変化させて、実施例1と同様の方法により、カーボン除去特性の評価を行った(それぞれ、実験10〜16とする)。
【0086】
(実施例5)
実施例4と同様の方法により、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を有するカーボン除去装置のサンプルを作製した。ただし、この実施例5では、サンプルのアノード電極として、ブラックパール粉末の代わりに、アセチレンブラック粉末(DENKA社製)を使用した。アセチレンブラックの設置量は、5mgである。
【0087】
このサンプルを用いて、実施例1と同様の方法により、カーボン除去特性の評価を行った(実験17とする)。なお、サンプルの測定温度は、200℃とした。
【0088】
(実施例6)
実施例4と同様の方法により、Sn0.9In0.1プロトン導電膜を有するカーボン除去装置のサンプルを作製した。ただし、この実施例6では、アノード電極として、ブラックパール粉末の代わりに、カーボンブラック粉末(シグマアルドリッチジャパン社製)を使用した。カーボンブラックの設置量は、5mgである。
【0089】
このサンプルを用いて、実施例1と同様の方法により、カーボン除去特性の評価を行った(実験18とする)。なお、サンプルの測定温度は、200℃とした。
【0090】
実験10〜18の結果を、表2にまとめて示す。また、図8には、実施例4〜6に係るサンプルの温度とカーボン除去効率ηeffの関係を示す。
【0091】
【表2】

表2の実験10の結果から、前述の実施例1の実験1の場合と同様、アノード電極としてカーボンのみを使用したサンプルにおいても、25℃の低温域において、39%の高い電流効率ηeffが得られることがわかった。
【0092】
また、表2の実験10〜16および図8の結果から、サンプル温度の上昇とともに電流効率は増大し、200℃以上では、電流効率が100%となり、良好なカーボン除去特性が得られることがわかった。さらに、実験17(実施例5)および18(実施例6)の結果から、除去対象となるカーボンの種類を、アセチレンブラックまたはカーボンブラックに変えても、200℃における電流効率は、100%を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えば、ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中に含まれる粒子状物質が外界へ放出されることを抑制する、排気ガス浄化装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】従来のカーボン除去装置の作動原理を示した図である。
【図2】本発明によるカーボン除去装置の一例の概略的な断面図である。
【図3】本発明によるカーボン除去装置の作動原理を示した図である。
【図4】本発明による別のカーボン除去装置の一例の概略的な断面図である。
【図5】本発明によるカーボン除去方法のフローチャートである。
【図6】カーボン除去特性を評価するための測定装置を概略的に示した図である。
【図7】実施例1〜3に係るサンプルの温度とカーボン除去の電流効率の関係を示したグラフである。
【図8】実施例4〜6に係るサンプルの温度とカーボン除去の電流効率の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0095】
V1、V 電源
1 従来のカーボン除去装置
10 固体電解質膜
20 アノード電極
30 カソード電極
100 本発明によるカーボン除去装置
110 プロトン導電膜
120 アノード電極
130 カソード電極
200 本発明による別のカーボン除去装置
250 管状部材
255 封止部材
260 入口管
270 出口管
600 測定装置
605 サンプル
605A アノード電極
605C カソード電極
610A 外側アルミナ管
615A 内側アルミナ管
610C 外側アルミナ管
615C 内側アルミナ管
630A アノード供給ガス流路
635A アノード排出ガス流路
630C カソード供給ガス流路
635C カソード排出ガス流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極と、
カソード電極と、
前記両電極の間に設置されたプロトン導電性を有するプロトン導電膜と、
を有するカーボン除去装置。
【請求項2】
さらに、前記アノード電極が曝される環境と、前記カソード電極が曝される環境とを分離することが可能な分離部材を有することを特徴とする請求項1に記載のカーボン除去装置。
【請求項3】
前記プロトン導電膜は、ペロブスカイト型材料または金属リン酸塩を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のカーボン除去装置。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型材料は、BaCe1−x3−α、SrCe1−xYb3−α、BaZr1−x3−α、およびSrZr1−x3−αからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項3に記載のカーボン除去装置(ただし、Xおよびαは、それぞれ、0≦X≦1、0≦α≦1の範囲である)。
【請求項5】
前記金属リン酸塩は、In3+またはAl3+がドープされた、SnP、SiP、TiPおよびZrPからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項3に記載のカーボン除去装置。
【請求項6】
前記アノード電極は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、カーボンおよびこれらの合金からなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のカーボン除去装置。
【請求項7】
前記アノード電極は、当該カーボン除去装置の使用中に前記アノード電極上に付着されるカーボンで構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のカーボン除去装置。
【請求項8】
前記カソード電極は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、カーボンおよびこれらの合金からなる群から選定された、少なくとも一つの材料を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のカーボン除去装置。
【請求項9】
前記プロトン導電膜は、0.1mm〜10mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のカーボン除去装置。
【請求項10】
カーボンを除去する方法であって、
(a)アノード電極、カソード電極、および前記両電極の間に設置されたプロトン導電性を有するプロトン導電膜、を有するカーボン除去装置を準備するステップと、
(b)前記カーボン除去装置のアノード電極に、カーボンを付着させるステップと、
(c)前記アノード電極が水蒸気を含む環境に曝された状態で、前記両電極を介して、前記カーボン除去装置に電流または電圧を印加するステップと、
(d)前記水蒸気により、前記アノード電極に付着したカーボンが酸化されるステップと、
を有するカーボンを除去する方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)、(d)は、室温〜500℃の温度範囲で実施されることを特徴とする請求項10に記載のカーボンを除去する方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)の水蒸気を含む環境は、0.01vol%〜90vol%の水蒸気分圧を有することを特徴とする請求項10または11に記載のカーボンを除去する方法。
【請求項13】
前記カーボン除去装置は、さらに、前記アノード電極が曝される環境と、前記カソード電極の曝される環境とを分離することが可能な分離部材を有することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一つに記載のカーボンを除去する方法。
【請求項14】
前記カーボン除去装置の前記アノード電極は、前記ステップ(b)により形成されることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一つに記載のカーボンを除去する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−29796(P2010−29796A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195378(P2008−195378)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】