ガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法とこれに用いる治具
【課題】ガスケット基板2における接着剤の塗布工程において、基板2の表面上に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生するのを極力防止することができ、もって塗布厚みを均一化するのに有効なガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法を提供する。
【解決手段】接着剤の乾燥工程時に、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具31の差し込み片33を橋渡し状に配置することにより塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させることにより基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【解決手段】接着剤の乾燥工程時に、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具31の差し込み片33を橋渡し状に配置することにより塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させることにより基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットを製造する過程においてガスケット基板に塗布する接着剤の塗布状態を制御するための接着剤塗布状態の制御方法と、この制御方法の実施に用いる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図28に示すように、金属製の薄板よりなるガスケット基板2を有し、この基板2の表面上にシール材として機能するゴム層3を被着してなる構造の金属ガスケット1が知られている。図示したガスケット1は、具体的には車両用内燃機関に用いるシリンダヘッド用ガスケットであって、基板2の平面内にはシリンダ用穴4、冷却水用のポート穴5および組付ボルト用の通し穴6等が多数設けられ、これらの各穴4,5,6の周りを取り囲むようにしてゴム層3が被着されている。このガスケット1は、以下のようにして製造される。
【0003】
すなわち先ず、金属製の薄板を所定の形状に打ち抜くことにより基板2を形成し、このとき必要に応じて基板2のシール部分を折り曲げることによりシール用ビード(図示せず)を形成する。次いで、スクリーン印刷等の手法によりゴム層3を所定の箇所に印刷し、その後加熱加硫して製品とする。基板2に対するゴム層3の接着力を高めるため、基板2には予め接着剤(図示せず)を塗布する。
【0004】
この接着剤の塗布工程においては、基板2に接着剤を均一に塗布するため、基板2全体を接着剤槽に浸し、その後、大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間固定し、この固定している間に、接着剤を風乾もしくは温風乾燥するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、このような工程によると、接着剤が未だ乾燥せずに流動可能な段階において、一部の接着剤が重力により基板2の表面を伝って下方向(重力により引っ張られる方向、矢印A方向)へ移動し、表面張力で部分的に溜まり、これがそのまま乾燥するので、接着剤の厚さが部分的に厚くなったり、あるいは部分的に薄くなったりする場合がある。
【0006】
例えば、図28のB部では、図29に拡大して示すように、基板2の上縁部およびポート穴5の下部内周縁部はそれぞれ接着剤が流れ出す一方なので、該部に塗布厚みの薄い部位(図上斜線を付して示す部位)11が発生し、またポート穴5の上部内周縁部は、接着剤が溜まる一方となるので、該部に塗布厚みの厚い部位(図上点々を付して示す部位)12が発生する。
【0007】
また、図28のC部では、図30に拡大して示すように、基板2の平面形状およびポート穴5の形状により、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生する。
【0008】
また、図28のD部では、図31に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し、また、ポート穴5の上部内周縁部に下向き凸状の舌片部7が設けられているので、このポート穴5の上部内周縁部および基板2の下縁部にそれぞれ塗布厚みの厚い部位12が発生する。
【0009】
更にまた、図28のE部では、図32に拡大して示すように、互いに隣り合うシリンダ用穴4のつなぎ部分8の間隔cが狭いことから接着剤の流路が狭められるので、その上側に接着剤が集まり易く、よってこれに起因して該部に塗布厚みの厚い部位12が発生する。また、各シリンダ用穴4の上部内周縁部にも塗布厚みの厚い部位が発生し易く、シリンダ用穴4の下部内周縁部には塗布厚みの薄い部位が発生し易い。
【0010】
しかしながら、接着剤は、その性能を維持するためには一定の厚さである必要があり、一定の厚さでない場合には接着強度が低下する等の問題がある。また、接着剤の塗り斑は外観上からしても好ましくない。
【0011】
【特許文献1】特開2003−83165号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上の点に鑑みて、ガスケット基板における接着剤の塗布工程において、基板の表面上に塗布厚みの厚い部位が発生するのを極力防止することができ、基板の表面上に塗布厚みの薄い部位が発生するのを極力防止することができ、また基板の表面上に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生するのを極力防止することができ、もって塗布厚みを均一化するのに有効なガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法とこれに用いる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように前記基板の外周部または前記基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、前記基板から前記治具へまたは前記治具から前記基板へと接着剤を伝わらせることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から前記治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を逃がすことにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより前記治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を供給することにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具を橋渡し状に配置することにより前記塗布厚みの厚くなり易い部位から前記塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を移動させることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5による治具は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いる治具であって、基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成することを特徴とする。
【0018】
更にまた、本発明の請求項6による治具は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載した製造方法の実施に用いる治具であって、基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成し、かつ前記差し込み片は前記基板に差し込み易いよう可撓性を有することを特徴とする。
【0019】
上記従来技術において、基板上に接着剤の塗布厚みの厚い部位が発生し易かったのは余分量の接着剤の逃げ場がなかったからであり、これに対して逃げ場を適切に設定すれば、余分量の接着剤を基板上から除去することが可能となる。また反対に、基板上に接着剤の塗布厚みの薄い部位が発生し易かったのは不足量の接着剤の供給元がなかったからであり、これに対して供給元を適切に設定すれば、不足量の接着剤を基板上へ補うことが可能となる。このような観点から本発明では、治具を用いて接着剤の逃がし流路または供給流路などを暫定的に形成することにした(請求項1〜3)。また例えば、基板に設けた穴部の上縁部に塗布厚みの厚い部位が発生するとともに同じ穴部の下縁部に塗布厚みの薄い部位が発生する場合には、治具を橋渡し状に架け渡すことにより、塗布厚みの厚い部位から薄い部位へと一部の接着剤を移動させることが可能となる(請求項4)。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0021】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように基板の外周部または基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、基板から治具へまたは治具から基板へと接着剤を伝わらせるようにしたために、塗布厚みが厚くなり易い部位では余分量の接着剤を逃がし、塗布厚みが薄くなり易い部位では不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に接着剤をほぼ均一に塗布することができる。したがって、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0022】
また、本発明の請求項2による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を逃がすようにしたために、前記部位において余分量の接着剤を逃がすことが可能とされ、これにより基板上に塗布厚みの厚い部位が発生するのを防止することができる。したがってこの分、基板上における塗布厚さを均一化できることから、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0023】
また、本発明の請求項3による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を供給するようにしたために、前記部位において不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に塗布厚みの薄い部位が発生するのを防止することができる。したがってこの分、基板上における塗布厚さを均一化できることから、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0024】
また、本発明の請求項4による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて橋渡し状に治具を配置することにより塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させるようにしたために、塗布厚みが厚くなり易い部位では余分量の接着剤を逃がし、塗布厚みが薄くなり易い部位では不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に接着剤をほぼ均一に塗布することができる。したがって、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0025】
また、請求項5または6によれば、請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いるのに好適な治具(膜厚均質化治具)が提供され、特に請求項6では、差し込み片が可撓性を有しているので、差し込み片を基板に差し込む作業が容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0027】
(1)本発明は、印刷によって金属ガスケットの表面にシール材(ゴム層)を所要のパターン形状および厚さで付着させた金属ガスケットに関し、基板(金属等)と弾性体(ゴム層)との接合のために接着剤を塗る技術に関する発明である。
【0028】
請求項1および2関連・・・
(2−1)ガスケット基板の液(接着剤)が溜まる部分に、液を逃がすための薄板(治具)を押し当てる。
(2−2)液溜まりの発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、その板に余分な液を伝わせ、余分な液溜まりを板側に逃がすことで、基板に液溜まりをなくす。
(2−3)本発明によれば、塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【0029】
請求項1および3関連・・・
(3−1)ガスケット基板の液が薄くなる部分に、液を供給するための薄板を押し当てる。
(3−2)液の薄膜が発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、所定の膜厚を形成するために必要な量の液を供給する。
(3−3)本発明によれば、塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【0030】
請求項1および4関連・・・
(4−1)部分的に薄くなる部位に厚くなる側からブリッジ(治具)を形成して液を供給し、簡単な構成で厚さを均一にする。
(4−2)一端を液溜まりの発生する部位に、他端を液の薄膜が発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、余分な液溜まりを逃がすとともにその逃がした液を液の薄膜が発生する部位に供給する。
(4−3)本発明によれば、ブリッジを設けるという簡易な方法により塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【実施例】
【0031】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0032】
図1に示すように、上記図28と同じ構造のガスケット1を製造するに際して当該実施例に係る制御方法は以下のように適用される。当該制御方法は上記ガスケット1の製造方法の一部である。尚、図示したガスケット1は上記したようにシリンダヘッド用の金属ガスケットであって、金属製の薄板よりなるガスケット基板2の表面上にシール材として機能するゴム層3を被着するものであって、基板2の平面内にシリンダ用穴4、冷却水用のポート穴5および組付ボルト用の通し穴6等が多数設けられ、これらの各穴4,5,6の周りを取り囲むようにしてゴム層3が被着される。また当該制御方法は、上記ガスケット1の製造過程において、基板2を接着剤槽に浸漬してから接着剤(図示せず)の乾燥工程時に実施されるので、基板2の表面上には未だゴム層3は被着されていないタイミングで実施される。したがって図では、未だ被着されていないゴム層3は一点鎖線の仮想線をもって描いている。
【0033】
第一実施例・・・
当該第一実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位(液溜まり)が発生しないよう、塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向(矢印A方向)の下流側(図では下側)に治具(制御用治具)31を配置することにより、塗布厚みの厚くなり易い部位から治具31へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を逃がすことによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【0034】
例えば、図1のB部では、図2に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の上部内周縁部の下側に治具31を配置する。
【0035】
また、図1のC部では、図3に拡大して示すように、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的には基板2の下縁部の更に下側に治具31を配置する。
【0036】
また、図1のD部では、図4に拡大して示すように、下向き凸状の舌片部7を有するポート穴5の上部内周縁部および基板2の下縁部にそれぞれ塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の上部内周縁部の下側(舌片部7の下側)および基板2の下縁部の更に下側にそれぞれ治具31を配置する。
【0037】
また、図1のE部では、図5に拡大して示すように、シリンダ用穴4のつなぎ部分8の上側やシリンダ用穴4の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはシリンダ用穴4の上部内周縁部の下側に治具31を配置する。
【0038】
尚、上記図2ないし図5の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図1ないし図5にその正面方向の配置状態を示すとともに図6の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図6参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図2では、この差し込み片33が6片平行に並べられている。図3では、この差し込み片33が5片平行に並べられている。図4では、差し込み片33が基板2の下側に3片平行に並べられ、舌片部7の下側にも1片配置されている。図5では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33が5片放射状に並べられている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの厚くなり易い部位の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって基板2から差し込み片33へとつながる接着剤の逃がし流路が形成される。
【0039】
差し込み片33の形状は、図6に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図7に示すように、平板状の差し込み片33にスリット34を形成して差し込み片33の上部を弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端部上縁に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端部上縁に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0040】
何れにしても、1枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図1または図8(図1のF−G−H−I線断面図)に示すようになり、基板2上の余分な接着剤は、基板2上を流下し、差し込み片33へと伝って基板2上から取り除かれる。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みが厚い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0041】
第二実施例・・・
当該第二実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位(薄膜部)が発生しないよう、塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向(矢印A方向)の上流側(図では上側)に治具(制御用治具)31を配置することにより、治具31から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を供給することによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。治具31から塗布厚みの薄くなり易い部位へと供給される接着剤は例えば、治具31を基板2とともに接着剤層に浸漬することにより治具31上に確保される。
【0042】
図9のB部では、図10に拡大して示すように、基板2の上縁部およびポート穴5の下部内周縁部にそれぞれ塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的には基板2の上縁部の更に上側およびポート穴5の下部内周縁部の上側にそれぞれ治具31を配置する。
【0043】
また、図9のC部では、図11に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0044】
また、図9のD部では、図12に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0045】
また、図9のE部では、図13に拡大して示すように、シリンダ用穴4の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはシリンダ用穴4の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0046】
尚、上記図10ないし図13の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図9ないし図13にその正面方向の配置状態を示すとともに図14の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図14参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図10では、この差し込み片33が基板2の上縁部の更に上側とポート穴5の下側内周縁部の上側に6片ずつ平行に並べられている(基板2の上縁部は全体に薄くなり易いので、該部には全体に万遍なく配置されている)。図11では、差し込み片33がポート穴5の下側内周縁部の上側に4片平行に並べられている。図12では、差し込み片33がポート穴5の下側内周縁部の上側に3片平行に並べられている。図13では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33がシリンダ用穴4の下側内周縁部の上側に5片放射状に並べられている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの薄くなり易い部位の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって差し込み片33から基板2へとつながる接着剤の供給流路が形成される。
【0047】
差し込み片33の形状は、図14に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図15に示すように、平板状の差し込み片33にスリット34を形成して差し込み片33の下部を弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端部下縁に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端部下縁に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0048】
何れにしても、1枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図9または図16(図9のJ−K−L−M線断面図)に示すようになり、差し込み片33から基板2上へと接着剤が流下して不足分が補われる。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みが薄い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0049】
第三実施例・・・
当該第三実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位(液溜まり)や薄い部位(薄膜部)が発生しないよう、接着剤の移動方向(矢印A方向)における上流側(図では上側)に位置する塗布厚みの厚くなり易い部位から下流側(図では下側)に位置する塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具(制御用治具)31を橋渡し状に配置することにより、塗布厚みの厚くなり易い部位から薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させることによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【0050】
図17のB部では、図18に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0051】
また、図17のC部では、図19に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0052】
また、図17のD部では、図20に拡大して示すように、下向き凸状の舌片部7を有するポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0053】
また、図17のE部では、図21に拡大して示すように、シリンダ用穴4の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、シリンダ用穴4の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0054】
尚、上記図18ないし図21の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図17ないし図21にその正面方向の配置状態を示すとともに図22の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図22参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図18では、この差し込み片33がポート穴5内に6片平行に並べられている。図19では、この差し込み片33がポート穴5内に4片平行に並べられている。図20では、この差し込み片33がポート穴5内に3片平行に並べられている。また図21では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33が5片平行に並べられており、各片33において、その上端部および下端部はそれぞれシリンダ用穴4の内周縁部に対して直交するよう放射状に設定されている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの厚くなり易い部位および塗布厚みの薄くなり易い部位間の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へとつながる接着剤の流路が形成される。
【0055】
差し込み片33の形状は、図22に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図23に示すように、平板状の差し込み片33に複数のスリット34を形成して差し込み片33の上部および下部をそれぞれ弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端縁部に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端縁部に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0056】
何れにしても、一枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図17または図24に示すようになり、塗布厚みの厚くなり易い部位上の余分な接着剤は、基板2上を流下して差し込み片33へ伝わり、この差し込み片33から塗布厚みの薄くなり易い部位へと移動する。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みの厚い部位および薄い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0057】
尚、図1に示したように、当該第三実施例では、基板2の上縁部に塗布厚みの薄い部位が発生しないよう、ここにも差し込み片33が一列に並んで設けられている。また、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位が発生しないよう、ここにも差し込み片33並んで設けられている。
【0058】
上記各実施例に共通して、図25に示すように、治具ベース32が基板2の周りを取り囲む周縁部39を有する場合には、この周縁部39の内面に一部の差し込み片33を内側へ向けて設けるようにしても良い。図では、基板2の下縁部の更に下側に上向きの差し込み片33が設けられるとともに、基板2の上縁部の更に上側に下向きの差し込み片33が設けられている。図26(A)および(B)に拡大して示すように、この差し込み片33は四角形の平板形状に形成されているが、上記と同様に、差し込み案内用の傾斜面(図示せず)を設けたり、あるいは、同図(C)に示すように差し込み量規制用の段差部37を設けたりしても良い。また図27に示すように、その立ち上がりの一部に正面U字形の屈曲部40を設けることにより上記可撓性を設定するようにしても良い。
【0059】
また、上記各実施例では、各差し込み片33は、基板2に差し込まれた状態において、基板2の板厚面に接触することにより流路を形成する構成とされているが、差し込み片33は、基板2に接触しなくても基板2の板厚面との間隔が狭ければ接着剤を流すことができるので、接着剤を流すことができる範囲内(例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下)であれば差し込み片33は基板2に対して非接触の構造であっても良い。このように一部または全部の差し込み片33を非接触構造とすると、これらを基板2に差し込み易くなる。
【0060】
また、基板2を接着剤槽に浸漬する際には、基板支え板(図示せず)を用い、この支え板によって基板2を支持した状態で接着剤槽に浸漬するのが一般的であるが、本発明の治具31はこの支え板と併用される。また、この支え板と治具31は両者を一体化しても良く、あるいはベース部分のみを共有化するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図2】図1におけるB部拡大図
【図3】図1におけるC部拡大図
【図4】図1におけるD部拡大図
【図5】図1におけるE部拡大図
【図6】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図7】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図8】同治具の縦断面図であって図1におけるF−G−H−I線断面図
【図9】本発明の第二実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図10】図9におけるB部拡大図
【図11】図9におけるC部拡大図
【図12】図9におけるD部拡大図
【図13】図9におけるE部拡大図
【図14】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図15】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図16】同治具の縦断面図であって図9におけるJ−K−L−M線断面図
【図17】本発明の第三実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図18】図17におけるB部拡大図
【図19】図17におけるC部拡大図
【図20】図17におけるD部拡大図
【図21】図17におけるE部拡大図
【図22】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図23】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図24】同治具の縦断面図であって図17におけるN−O−P−Q線断面図
【図25】制御用治具の他の例を示す縦断面図
【図26】同治具における差し込み片の形状示す側面図および正面図
【図27】同差し込み片の他の例を示す側面図および正面図
【図28】ガスケットの一例を示す正面図
【図29】図28のB部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図30】図28のC部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図31】図28のD部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図32】図28のE部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【符号の説明】
【0062】
1 ガスケット
2 基板
3 ゴム層
4 シリンダ用穴
5 ポート穴
6 通し穴
7 舌片部
8 つなぎ部分
11 塗布厚みの薄い部位
12 塗布厚みの厚い部位
31 治具
32 治具ベース
33 差し込み片
34 スリット
35 弾性片
36 傾斜部
37 段差部
39 ベース周縁部
40 屈曲部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットを製造する過程においてガスケット基板に塗布する接着剤の塗布状態を制御するための接着剤塗布状態の制御方法と、この制御方法の実施に用いる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図28に示すように、金属製の薄板よりなるガスケット基板2を有し、この基板2の表面上にシール材として機能するゴム層3を被着してなる構造の金属ガスケット1が知られている。図示したガスケット1は、具体的には車両用内燃機関に用いるシリンダヘッド用ガスケットであって、基板2の平面内にはシリンダ用穴4、冷却水用のポート穴5および組付ボルト用の通し穴6等が多数設けられ、これらの各穴4,5,6の周りを取り囲むようにしてゴム層3が被着されている。このガスケット1は、以下のようにして製造される。
【0003】
すなわち先ず、金属製の薄板を所定の形状に打ち抜くことにより基板2を形成し、このとき必要に応じて基板2のシール部分を折り曲げることによりシール用ビード(図示せず)を形成する。次いで、スクリーン印刷等の手法によりゴム層3を所定の箇所に印刷し、その後加熱加硫して製品とする。基板2に対するゴム層3の接着力を高めるため、基板2には予め接着剤(図示せず)を塗布する。
【0004】
この接着剤の塗布工程においては、基板2に接着剤を均一に塗布するため、基板2全体を接着剤槽に浸し、その後、大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間固定し、この固定している間に、接着剤を風乾もしくは温風乾燥するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、このような工程によると、接着剤が未だ乾燥せずに流動可能な段階において、一部の接着剤が重力により基板2の表面を伝って下方向(重力により引っ張られる方向、矢印A方向)へ移動し、表面張力で部分的に溜まり、これがそのまま乾燥するので、接着剤の厚さが部分的に厚くなったり、あるいは部分的に薄くなったりする場合がある。
【0006】
例えば、図28のB部では、図29に拡大して示すように、基板2の上縁部およびポート穴5の下部内周縁部はそれぞれ接着剤が流れ出す一方なので、該部に塗布厚みの薄い部位(図上斜線を付して示す部位)11が発生し、またポート穴5の上部内周縁部は、接着剤が溜まる一方となるので、該部に塗布厚みの厚い部位(図上点々を付して示す部位)12が発生する。
【0007】
また、図28のC部では、図30に拡大して示すように、基板2の平面形状およびポート穴5の形状により、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生する。
【0008】
また、図28のD部では、図31に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し、また、ポート穴5の上部内周縁部に下向き凸状の舌片部7が設けられているので、このポート穴5の上部内周縁部および基板2の下縁部にそれぞれ塗布厚みの厚い部位12が発生する。
【0009】
更にまた、図28のE部では、図32に拡大して示すように、互いに隣り合うシリンダ用穴4のつなぎ部分8の間隔cが狭いことから接着剤の流路が狭められるので、その上側に接着剤が集まり易く、よってこれに起因して該部に塗布厚みの厚い部位12が発生する。また、各シリンダ用穴4の上部内周縁部にも塗布厚みの厚い部位が発生し易く、シリンダ用穴4の下部内周縁部には塗布厚みの薄い部位が発生し易い。
【0010】
しかしながら、接着剤は、その性能を維持するためには一定の厚さである必要があり、一定の厚さでない場合には接着強度が低下する等の問題がある。また、接着剤の塗り斑は外観上からしても好ましくない。
【0011】
【特許文献1】特開2003−83165号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上の点に鑑みて、ガスケット基板における接着剤の塗布工程において、基板の表面上に塗布厚みの厚い部位が発生するのを極力防止することができ、基板の表面上に塗布厚みの薄い部位が発生するのを極力防止することができ、また基板の表面上に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生するのを極力防止することができ、もって塗布厚みを均一化するのに有効なガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法とこれに用いる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように前記基板の外周部または前記基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、前記基板から前記治具へまたは前記治具から前記基板へと接着剤を伝わらせることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から前記治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を逃がすことにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより前記治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を供給することにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4による制御方法は、ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具を橋渡し状に配置することにより前記塗布厚みの厚くなり易い部位から前記塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を移動させることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5による治具は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いる治具であって、基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成することを特徴とする。
【0018】
更にまた、本発明の請求項6による治具は、上記した請求項1ないし4の何れかに記載した製造方法の実施に用いる治具であって、基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成し、かつ前記差し込み片は前記基板に差し込み易いよう可撓性を有することを特徴とする。
【0019】
上記従来技術において、基板上に接着剤の塗布厚みの厚い部位が発生し易かったのは余分量の接着剤の逃げ場がなかったからであり、これに対して逃げ場を適切に設定すれば、余分量の接着剤を基板上から除去することが可能となる。また反対に、基板上に接着剤の塗布厚みの薄い部位が発生し易かったのは不足量の接着剤の供給元がなかったからであり、これに対して供給元を適切に設定すれば、不足量の接着剤を基板上へ補うことが可能となる。このような観点から本発明では、治具を用いて接着剤の逃がし流路または供給流路などを暫定的に形成することにした(請求項1〜3)。また例えば、基板に設けた穴部の上縁部に塗布厚みの厚い部位が発生するとともに同じ穴部の下縁部に塗布厚みの薄い部位が発生する場合には、治具を橋渡し状に架け渡すことにより、塗布厚みの厚い部位から薄い部位へと一部の接着剤を移動させることが可能となる(請求項4)。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0021】
すなわち、上記構成を備えた本発明の請求項1による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように基板の外周部または基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、基板から治具へまたは治具から基板へと接着剤を伝わらせるようにしたために、塗布厚みが厚くなり易い部位では余分量の接着剤を逃がし、塗布厚みが薄くなり易い部位では不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に接着剤をほぼ均一に塗布することができる。したがって、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0022】
また、本発明の請求項2による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を逃がすようにしたために、前記部位において余分量の接着剤を逃がすことが可能とされ、これにより基板上に塗布厚みの厚い部位が発生するのを防止することができる。したがってこの分、基板上における塗布厚さを均一化できることから、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0023】
また、本発明の請求項3による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を供給するようにしたために、前記部位において不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に塗布厚みの薄い部位が発生するのを防止することができる。したがってこの分、基板上における塗布厚さを均一化できることから、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0024】
また、本発明の請求項4による制御方法においては、基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて橋渡し状に治具を配置することにより塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させるようにしたために、塗布厚みが厚くなり易い部位では余分量の接着剤を逃がし、塗布厚みが薄くなり易い部位では不足量の接着剤を供給することが可能とされ、これにより基板上に接着剤をほぼ均一に塗布することができる。したがって、基板に対するゴム層の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0025】
また、請求項5または6によれば、請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いるのに好適な治具(膜厚均質化治具)が提供され、特に請求項6では、差し込み片が可撓性を有しているので、差し込み片を基板に差し込む作業が容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0027】
(1)本発明は、印刷によって金属ガスケットの表面にシール材(ゴム層)を所要のパターン形状および厚さで付着させた金属ガスケットに関し、基板(金属等)と弾性体(ゴム層)との接合のために接着剤を塗る技術に関する発明である。
【0028】
請求項1および2関連・・・
(2−1)ガスケット基板の液(接着剤)が溜まる部分に、液を逃がすための薄板(治具)を押し当てる。
(2−2)液溜まりの発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、その板に余分な液を伝わせ、余分な液溜まりを板側に逃がすことで、基板に液溜まりをなくす。
(2−3)本発明によれば、塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【0029】
請求項1および3関連・・・
(3−1)ガスケット基板の液が薄くなる部分に、液を供給するための薄板を押し当てる。
(3−2)液の薄膜が発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、所定の膜厚を形成するために必要な量の液を供給する。
(3−3)本発明によれば、塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【0030】
請求項1および4関連・・・
(4−1)部分的に薄くなる部位に厚くなる側からブリッジ(治具)を形成して液を供給し、簡単な構成で厚さを均一にする。
(4−2)一端を液溜まりの発生する部位に、他端を液の薄膜が発生する部位に、基板と角度をもって、可撓性を有する板を押し付け、余分な液溜まりを逃がすとともにその逃がした液を液の薄膜が発生する部位に供給する。
(4−3)本発明によれば、ブリッジを設けるという簡易な方法により塗布する接着剤の膜厚を均質化できることから、所定の厚さの接着層を形成できるので、接着強度が低下することなく、優れたガスケットが得られる。
【実施例】
【0031】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0032】
図1に示すように、上記図28と同じ構造のガスケット1を製造するに際して当該実施例に係る制御方法は以下のように適用される。当該制御方法は上記ガスケット1の製造方法の一部である。尚、図示したガスケット1は上記したようにシリンダヘッド用の金属ガスケットであって、金属製の薄板よりなるガスケット基板2の表面上にシール材として機能するゴム層3を被着するものであって、基板2の平面内にシリンダ用穴4、冷却水用のポート穴5および組付ボルト用の通し穴6等が多数設けられ、これらの各穴4,5,6の周りを取り囲むようにしてゴム層3が被着される。また当該制御方法は、上記ガスケット1の製造過程において、基板2を接着剤槽に浸漬してから接着剤(図示せず)の乾燥工程時に実施されるので、基板2の表面上には未だゴム層3は被着されていないタイミングで実施される。したがって図では、未だ被着されていないゴム層3は一点鎖線の仮想線をもって描いている。
【0033】
第一実施例・・・
当該第一実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位(液溜まり)が発生しないよう、塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向(矢印A方向)の下流側(図では下側)に治具(制御用治具)31を配置することにより、塗布厚みの厚くなり易い部位から治具31へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を逃がすことによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【0034】
例えば、図1のB部では、図2に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の上部内周縁部の下側に治具31を配置する。
【0035】
また、図1のC部では、図3に拡大して示すように、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的には基板2の下縁部の更に下側に治具31を配置する。
【0036】
また、図1のD部では、図4に拡大して示すように、下向き凸状の舌片部7を有するポート穴5の上部内周縁部および基板2の下縁部にそれぞれ塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の上部内周縁部の下側(舌片部7の下側)および基板2の下縁部の更に下側にそれぞれ治具31を配置する。
【0037】
また、図1のE部では、図5に拡大して示すように、シリンダ用穴4のつなぎ部分8の上側やシリンダ用穴4の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この塗布厚みの厚い部位12の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはシリンダ用穴4の上部内周縁部の下側に治具31を配置する。
【0038】
尚、上記図2ないし図5の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図1ないし図5にその正面方向の配置状態を示すとともに図6の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図6参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図2では、この差し込み片33が6片平行に並べられている。図3では、この差し込み片33が5片平行に並べられている。図4では、差し込み片33が基板2の下側に3片平行に並べられ、舌片部7の下側にも1片配置されている。図5では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33が5片放射状に並べられている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの厚くなり易い部位の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって基板2から差し込み片33へとつながる接着剤の逃がし流路が形成される。
【0039】
差し込み片33の形状は、図6に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図7に示すように、平板状の差し込み片33にスリット34を形成して差し込み片33の上部を弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端部上縁に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端部上縁に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0040】
何れにしても、1枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図1または図8(図1のF−G−H−I線断面図)に示すようになり、基板2上の余分な接着剤は、基板2上を流下し、差し込み片33へと伝って基板2上から取り除かれる。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みが厚い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0041】
第二実施例・・・
当該第二実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位(薄膜部)が発生しないよう、塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向(矢印A方向)の上流側(図では上側)に治具(制御用治具)31を配置することにより、治具31から塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を供給することによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。治具31から塗布厚みの薄くなり易い部位へと供給される接着剤は例えば、治具31を基板2とともに接着剤層に浸漬することにより治具31上に確保される。
【0042】
図9のB部では、図10に拡大して示すように、基板2の上縁部およびポート穴5の下部内周縁部にそれぞれ塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的には基板2の上縁部の更に上側およびポート穴5の下部内周縁部の上側にそれぞれ治具31を配置する。
【0043】
また、図9のC部では、図11に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0044】
また、図9のD部では、図12に拡大して示すように、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはポート穴5の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0045】
また、図9のE部では、図13に拡大して示すように、シリンダ用穴4の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この塗布厚みの薄い部位11の発生を防止すべく、該部位の下流側すなわち具体的にはシリンダ用穴4の下部内周縁部の上側に治具31を配置する。
【0046】
尚、上記図10ないし図13の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図9ないし図13にその正面方向の配置状態を示すとともに図14の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図14参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図10では、この差し込み片33が基板2の上縁部の更に上側とポート穴5の下側内周縁部の上側に6片ずつ平行に並べられている(基板2の上縁部は全体に薄くなり易いので、該部には全体に万遍なく配置されている)。図11では、差し込み片33がポート穴5の下側内周縁部の上側に4片平行に並べられている。図12では、差し込み片33がポート穴5の下側内周縁部の上側に3片平行に並べられている。図13では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33がシリンダ用穴4の下側内周縁部の上側に5片放射状に並べられている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの薄くなり易い部位の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって差し込み片33から基板2へとつながる接着剤の供給流路が形成される。
【0047】
差し込み片33の形状は、図14に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図15に示すように、平板状の差し込み片33にスリット34を形成して差し込み片33の下部を弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端部下縁に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端部下縁に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0048】
何れにしても、1枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図9または図16(図9のJ−K−L−M線断面図)に示すようになり、差し込み片33から基板2上へと接着剤が流下して不足分が補われる。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みが薄い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0049】
第三実施例・・・
当該第三実施例に係る制御方法は、基板2にゴム層3を被着する際に基板2に接着剤(図示せず)を塗布する工程を実施し、この工程は、基板2を接着剤槽(図示せず)に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより接着剤を乾燥させるガスケット1の製造過程において実施されるものであって、接着剤の乾燥工程において、基板2上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位(液溜まり)や薄い部位(薄膜部)が発生しないよう、接着剤の移動方向(矢印A方向)における上流側(図では上側)に位置する塗布厚みの厚くなり易い部位から下流側(図では下側)に位置する塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具(制御用治具)31を橋渡し状に配置することにより、塗布厚みの厚くなり易い部位から薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫時設定し、この流路を介して一部の接着剤を移動させることによって基板2上における接着剤の塗布状態を制御する。
【0050】
図17のB部では、図18に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図29参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0051】
また、図17のC部では、図19に拡大して示すように、ポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図30参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0052】
また、図17のD部では、図20に拡大して示すように、下向き凸状の舌片部7を有するポート穴5の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、ポート穴5の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図31参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0053】
また、図17のE部では、図21に拡大して示すように、シリンダ用穴4の上部内周縁部に塗布厚みの厚い部位12が発生し易く、シリンダ用穴4の下部内周縁部に塗布厚みの薄い部位11が発生し易いことは上記したとおりであるので(図32参照)、この両部位の間に治具31を橋渡し状に配置する。
【0054】
尚、上記図18ないし図21の何れにおいても、治具31は、その構成要素として板状の差し込み片33を有しているので、この差し込み片33を上記指摘の各部位に配置する。すなわち、図17ないし図21にその正面方向の配置状態を示すとともに図22の側面図に示すように、治具31は、基板2と平行に配置される治具ベース32(図22参照)の一面上に突設された板状の差し込み片33を多数有しているので、これらの差し込み片33をそれぞれ上記指摘の各部位に差し込むことによって配置する。図18では、この差し込み片33がポート穴5内に6片平行に並べられている。図19では、この差し込み片33がポート穴5内に4片平行に並べられている。図20では、この差し込み片33がポート穴5内に3片平行に並べられている。また図21では、各シリンダ用穴4において、差し込み片33が5片平行に並べられており、各片33において、その上端部および下端部はそれぞれシリンダ用穴4の内周縁部に対して直交するよう放射状に設定されている。これらの差し込み片33は予め基板2の平面形状に従って多数がベース32上に並べられているので、1枚の基板2に対して1つの治具31をセットすると、1枚の基板2における塗布厚みの厚くなり易い部位および塗布厚みの薄くなり易い部位間の全てに対して差し込み片33が差し込まれる。差し込まれた差し込み片33は、基板2の板厚面に接触し、よって塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へとつながる接着剤の流路が形成される。
【0055】
差し込み片33の形状は、図22に示したように四角形の平板形状が基本とされるが、上記したように差し込み片33は多数が一度に基板2に差し込まれることからこれらの位置精度が良くないと一部の差し込み片33が基板2と干渉して差し込めないといった事態の発生が懸念される。そこで、この場合には、差し込み片33に可撓性を持たせ、この可撓性による弾性を利用して差し込み片33を基板2の形状に沿って追随変形させ、もって差し込み易くすることが考えられる。このように差し込み片33に可撓性を持たせるには、例えば図23に示すように、平板状の差し込み片33に複数のスリット34を形成して差し込み片33の上部および下部をそれぞれ弾性片35とし、これにより差し込み片33に上下方向の可撓性を設定する。また図示するように、差し込み片33の先端縁部に差し込み案内用の傾斜面36を設けたり、あるいは、差し込み片33の後端縁部に差し込み量規制用の段差部37を設けたりするのも有効である。
【0056】
何れにしても、一枚の基板2に多数の差し込み片33が差し込まれると、その状態は図17または図24に示すようになり、塗布厚みの厚くなり易い部位上の余分な接着剤は、基板2上を流下して差し込み片33へ伝わり、この差し込み片33から塗布厚みの薄くなり易い部位へと移動する。したがって、基板2上に接着剤の塗布厚みの厚い部位および薄い部位が発生するのを防止することが可能となり、延いては基板2上に接着剤をほぼ均一に塗布することが可能となる。したがって、基板2に対するゴム層3の接着強度が低下するの未然に防止することができ、外観上も好ましいガスケット製品を提供することができる。
【0057】
尚、図1に示したように、当該第三実施例では、基板2の上縁部に塗布厚みの薄い部位が発生しないよう、ここにも差し込み片33が一列に並んで設けられている。また、基板2の下縁部に塗布厚みの厚い部位が発生しないよう、ここにも差し込み片33並んで設けられている。
【0058】
上記各実施例に共通して、図25に示すように、治具ベース32が基板2の周りを取り囲む周縁部39を有する場合には、この周縁部39の内面に一部の差し込み片33を内側へ向けて設けるようにしても良い。図では、基板2の下縁部の更に下側に上向きの差し込み片33が設けられるとともに、基板2の上縁部の更に上側に下向きの差し込み片33が設けられている。図26(A)および(B)に拡大して示すように、この差し込み片33は四角形の平板形状に形成されているが、上記と同様に、差し込み案内用の傾斜面(図示せず)を設けたり、あるいは、同図(C)に示すように差し込み量規制用の段差部37を設けたりしても良い。また図27に示すように、その立ち上がりの一部に正面U字形の屈曲部40を設けることにより上記可撓性を設定するようにしても良い。
【0059】
また、上記各実施例では、各差し込み片33は、基板2に差し込まれた状態において、基板2の板厚面に接触することにより流路を形成する構成とされているが、差し込み片33は、基板2に接触しなくても基板2の板厚面との間隔が狭ければ接着剤を流すことができるので、接着剤を流すことができる範囲内(例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下)であれば差し込み片33は基板2に対して非接触の構造であっても良い。このように一部または全部の差し込み片33を非接触構造とすると、これらを基板2に差し込み易くなる。
【0060】
また、基板2を接着剤槽に浸漬する際には、基板支え板(図示せず)を用い、この支え板によって基板2を支持した状態で接着剤槽に浸漬するのが一般的であるが、本発明の治具31はこの支え板と併用される。また、この支え板と治具31は両者を一体化しても良く、あるいはベース部分のみを共有化するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図2】図1におけるB部拡大図
【図3】図1におけるC部拡大図
【図4】図1におけるD部拡大図
【図5】図1におけるE部拡大図
【図6】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図7】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図8】同治具の縦断面図であって図1におけるF−G−H−I線断面図
【図9】本発明の第二実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図10】図9におけるB部拡大図
【図11】図9におけるC部拡大図
【図12】図9におけるD部拡大図
【図13】図9におけるE部拡大図
【図14】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図15】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図16】同治具の縦断面図であって図9におけるJ−K−L−M線断面図
【図17】本発明の第三実施例に係る制御方法の実施に使用する制御用治具における差し込み片の配置説明図
【図18】図17におけるB部拡大図
【図19】図17におけるC部拡大図
【図20】図17におけるD部拡大図
【図21】図17におけるE部拡大図
【図22】同治具の一部縦断面図であって同差し込み片の側面図
【図23】同差し込み片の他の例を示す側面図
【図24】同治具の縦断面図であって図17におけるN−O−P−Q線断面図
【図25】制御用治具の他の例を示す縦断面図
【図26】同治具における差し込み片の形状示す側面図および正面図
【図27】同差し込み片の他の例を示す側面図および正面図
【図28】ガスケットの一例を示す正面図
【図29】図28のB部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図30】図28のC部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図31】図28のD部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【図32】図28のE部における液溜まり発生状況を示す拡大図
【符号の説明】
【0062】
1 ガスケット
2 基板
3 ゴム層
4 シリンダ用穴
5 ポート穴
6 通し穴
7 舌片部
8 つなぎ部分
11 塗布厚みの薄い部位
12 塗布厚みの厚い部位
31 治具
32 治具ベース
33 差し込み片
34 スリット
35 弾性片
36 傾斜部
37 段差部
39 ベース周縁部
40 屈曲部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように前記基板の外周部または前記基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、前記基板から前記治具へまたは前記治具から前記基板へと接着剤を伝わらせることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項2】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から前記治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を逃がすことにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項3】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより前記治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を供給することにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項4】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具を橋渡し状に配置することにより前記塗布厚みの厚くなり易い部位から前記塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を移動させることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いる治具であって、
基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成することを特徴とする接着剤塗布状態の制御用治具。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れかに記載した製造方法の実施に用いる治具であって、
基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成し、かつ前記差し込み片は前記基板に差し込み易いよう可撓性を有することを特徴とする接着剤塗布状態の制御用治具。
【請求項1】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように前記基板の外周部または前記基板に設けた穴部の内周部に治具を配置し、前記基板から前記治具へまたは前記治具から前記基板へと接着剤を伝わらせることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項2】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位における接着剤の移動方向の下流側に治具を配置することにより前記部位から前記治具へと伝わる接着剤の逃がし流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を逃がすことにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項3】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの薄い部位が発生しないように塗布厚みの薄くなり易い部位における接着剤の移動方向の上流側に治具を配置することにより前記治具から前記部位へと伝わる接着剤の供給流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を供給することにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項4】
ガスケット基板にゴム層を被着する際に前記基板に接着剤を塗布する工程を実施し、前記工程は、前記基板を接着剤槽に浸漬し、その後大気中で垂直にまたは角度を設定して所要時間経過することにより前記接着剤を乾燥させるガスケットの製造過程において、
前記接着剤の乾燥工程時に、前記基板上を重力により移動する接着剤に塗布厚みの厚い部位や薄い部位が発生しないように塗布厚みの厚くなり易い部位から塗布厚みの薄くなり易い部位へかけて治具を橋渡し状に配置することにより前記塗布厚みの厚くなり易い部位から前記塗布厚みの薄くなり易い部位へと伝わる接着剤の流路を暫定的に設定し、前記流路を介して一部の接着剤を移動させることにより前記基板上における接着剤の塗布状態を制御することを特徴とするガスケット製造過程における接着剤塗布状態の制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載した制御方法の実施に用いる治具であって、
基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成することを特徴とする接着剤塗布状態の制御用治具。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れかに記載した製造方法の実施に用いる治具であって、
基板に対して直角に差し込まれる板状の差し込み片を所要数有し、前記差し込み片を前記基板の板厚面に接触せしめることにより、あるいは接着剤が伝わる程度に前記基板に接近配置することにより流路を暫定的に形成し、かつ前記差し込み片は前記基板に差し込み易いよう可撓性を有することを特徴とする接着剤塗布状態の制御用治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
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【図27】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−40508(P2007−40508A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228268(P2005−228268)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
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